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2017年9月

2017/09/20

OEK定期公演2017/2018シーズン開幕。井上道義指揮による総決算の「田園」。神尾真由子と四つに組んだ壮大なスケール感のあるヴァイオリン協奏曲。拍手からも熱さが伝わってくる演奏会でした #okejp

OEK定期公演2017/2018シリーズは,井上道義音楽監督指揮による,ベートーヴェン中心のプログラムで開幕しました。今年の春に行われた,ガル祭のテーマは,「ベートーヴェン」で,その時にヴァイオリン協奏曲と交響曲第6番「田園」も演奏されたのですが,井上さんは参加していませんでしたので,その「アンコール」を井上音楽監督の指揮で楽しむといった位置づけになるのかもしれません。ただし,「田園」については,1年前の「ナチュール」がテーマだった,最後の「ラ・フォル・ジュルネ金沢」の時に井上さんが取り上げていますので,そのアンコールとも言えます。

この演奏会ですが,やはり井上さんとOEKの「田園」は最高だなぁと思いました。ベートーヴェンの交響曲については,OEKの演奏で何回も聞いており,井上さん指揮の「田園」も聞くのは3回目ですが(確か),その度にこの曲に対する「愛」のようなものを感じます。

第1楽章の冒頭から,「田園に着いたばかりの新鮮な気持ち」が溢れ,何回聞いても新鮮な気分を味わわせてくれます。第2楽章は,ベースとなる「流れるような」雰囲気も素晴らしいのですが,その上で絡み合うOEKの各パートの音の動きを聞いているだけで飽きません。この楽章を聞くたびに,隠されている自然の音を発見する喜びがあると感じます。

第3楽章以降は,音による祭り・自然・感謝の気持ちの描写音楽です。1年前のラ・フォル・ジュルネ金沢の時も同様だったのですが,3楽章途中に「嵐」のメンバー6人(ジャニーズではなくトランペット2名,トロンボーン2名,ティンパニ,ピッコロ奏者の皆さんです)が上手側から入って来て,視覚的にもドラマを印象付けていました。

第4楽章から第5楽章に掛けては,前回聞いた時よりもスマートな感じに思えましたが,第5楽章の途中,曲想が盛り上がってきて,井上さんが大きく両手を広げるのを見ると,「井上さんの田園だなぁ」と熱い気分になります。そして最後の部分の名残り惜しさ。繰り返しになりますが,井上さんの「田園」はやっぱりいいなぁと思います。

前半はまず,ペルトのベンジャミン・ブリテンへの追悼歌が演奏されました。振り返ってみると,井上さんは,ペルトの曲を取り上げる機会も多かったですね。神秘的な和音がベルの音に合わせて最初から最後まで続いているだけ,といった曲なのですが,演奏会の最初に演奏されると,日常生活の空気から,アートの空気へと切り替える,緩衝地帯になっているような気がしました。この古いのか新しいのか分からないムードは癖になりそうです。

前半では,金沢でがすっかりおなじみのヴァイオリン奏者,神尾真由子さんとの共演で,ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。神尾さんについては,先月8月19日,ほぼ1カ月前にOEKとメンデルゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏したばかり。さらには,11月21日には,ロシア国立ウリャノフスク交響楽団との共演でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏します。この短期間の間に金沢で,いわゆる「3大ヴァイオリン協奏曲」を1人の奏者が全部演奏する,というのは(たまたまこうなったのだと思いますが),「金沢史上初」なのではないかと思います。

今回のベートーヴェンについても,井上/OEKと神尾さんとがじっくりと四つに組んで,じっくりと聞かせてくれる聞きごたえのある演奏でした。雰囲気としては,1カ月前に聞いたメンデルスゾーン同様,「演歌的」と言って良いほど,滴るような音を聞かせてくれる演奏で,個人的にはロマンティック過ぎるかな(結構,チャイコフスキー的なベートーヴェンだな,と思ったりしました)と思ったのですが,「さすが神尾さん」とも思いました。

神尾さんの場合,音や歌いまわしを聴けば「神尾さんの演奏だ」と分かる,しっかりとした個性を持っていると思います。どの楽章もゆっくり目のテンポで,存分にこの曲の中に潜んでいる「情感」と「歌」をしっかりと引き出していました。井上/OEKによる,非常に気合いの入った充実した演奏と組み合わさることで,この曲のもつスケールの大きさ(45分以上かかっていたと思います)をしっかりと体感させてくれました。

この日のお客さんの拍手からは,いつもにも増して熱いものが伝わって来ました。今シーズンは,この公演を含めて,井上さんは3回OEKの定期公演に登場します。本日の演奏を聞いて,その1回1回で,総決算のような演奏が期待できると感じました。

このプログラムと同様の内容で,次のとおり国内演奏旅行が行われます。是非お近くの方は,お聞きになってください。

名古屋定期公演 9月22日(金) 19:00開演 三井住友海上しらかわホール
大阪定期公演 9月23日(土) 14:00開演 ザ・シンフォニーホール
三原公演 9月24日(日) 14:00開演 三原市芸術文化センター ポポロ
※三原公演のみ,ヴァイオリン独奏は,三浦文彰さんです。

2017/09/16

#金沢ジャズ・ストリート2017 オープニングコンサート@石川県立音楽堂 伝説的なジャズピアニスト #秋吉敏子 さんのソロ,#マッズ・トーリング &村上寿昭/OEKの共演による独創性あふれる「ヴァイオリン協奏曲」を楽しんできました #oekjp

金沢市内で毎年9月に行っている「金沢ジャズ・ストリート2017」のオープニングコンサートにOEKが登場し,ジャズ・ヴァイオリン奏者のマッズ・トーリングと共演。さらには伝説的なジャズピアニスト,秋吉敏子も登場するということで,秋の3連休の初日の午後,石川県立音楽堂コンサートホールに聞きに行ってきました。

金沢ジャズ・ストリート(KJS)も今年で9回目で,ラ・フォル・ジュルネ金沢とほぼ同様の歴史を持っているのですが,実はこれまで1回も有料コンサートを聞いたことがありませんでしたが,OEKが出演するとなると,OEKファンとしては聞きにいかないわけにはいきません。

KJSは,ラ・フォル・ジュルネのように,45分単位でハシゴをするようなスタイルではなく,有料公演については通常の公演ぐらいの長さ(ジャズの演奏会の長さはよく知らないのですが...)があります。この日の公演も,前半が秋吉さんのソロ,後半がトーリングさんとOEKの共演から構成された,約2時間の公演でした。

前半に登場した秋吉敏子さんは,日本のジャズピアニストで初めて世界的に活躍された方です。年齢のことを言うのは失礼かもしれませんが,クラシック音楽のピアニストで言うと,イェルク・デームスあたりと同世代になります。80代のピアニストが現役で活躍されているというだけで,素晴らしいのですが,その演奏も味わい深いものでした。

秋吉さんは,トークをまじえつつ,全部で7曲演奏されました(配布されたプログラムは8曲になっていましたが,一部省略したようです)。今日は,3階で聞いたこともあり,やや音圧的には遠く感じ(ピアノの蓋をあまり開けていなかったせいもあるかもしれません),速いパッセージについてはスムーズでない部分はあった気はしましたが,特にしっとりとした雰囲気をもった曲での,淡々とした語り口が実に味があると思いました。

「毎回,演奏会の最後に演奏しています」という「ホープ」という曲(広島や長崎への原爆投下に関する秋吉さんの自作の曲でデューク・エリントンに捧げた長い曲の最後の部分,という説明をされていたと思います)が,今回も最後に演奏されたのですが,この曲での,どこか爽快さと前向きな気分のある演奏は素晴らしいと思いました。

後半は,デンマーク出身のヴァイオリニスト,マッヅ・トーリングさんが登場し,村上寿昭指揮OEKと共演しました。こちらの方は,OEKの定期公演で言うところの,ファンタスティク・オーケストラコンサートのような雰囲気があると思いました。トーリングさんはのヴァイオリンについては,バランスが悪くならない程度にPAを使っており,リラックスした余裕のある音がしっかりとホール全体に広がっていました。

演奏の技巧的にも素晴らしく,時折,「粋なポルタメント」のような奏法を交える以外では,通常のクラシックの演奏会と大きな違いはないと感じました。その点で,ジャズの本道(?)という感じではなく,クロスオーバー的な雰囲気がありました。

その点については,トーリングさん自身も意識しており,「餅アイスクリーム(どこで食べたのでしょうか?私も好きです)」のように,色々な音楽をフュージョンするのが私の音楽と語っていました(英語で言っていたので細かい部分は分かりませんが)。

特にデンマーク出身という北欧のテイストや民族音楽的な親しみやすさの要素が入っているのが大きな個性になっていると思いました。特に最後に25分ぐらいかかる「Begejstring(デンマーク語で「心からの喜び,熱狂」といった意味)というタイトルを持った,3楽章からなるヴァイオリン協奏曲的大曲が非常に面白い作品でした。

通常の協奏曲のように,堂々と始まった後,中間楽章で叙情的になり,最終楽章は大きく盛り上がるというクラシカルな構成でしたが,前述のとおり,色々なジャンルの要素を巧く盛り込んでおり,飽きることなく楽しめる作品となっていました。OEKの定期演奏会で演奏してもおかしくない曲かな,と思いつつ聞いていたのですが,最終楽章のカデンツァ風の部分になって,やはりこれは即興性を重視する何でもありのジャズだなと感じました。

トーリングさんの足元に何か機械が置いてあるのは気になっていたのですが,これを足で操作しながら,事前に仕込んでおいた音源(テンポが結構変化していました)が流れ,それに合わせて,トーリングさんが熱狂的に弾きまくります。各楽章ごとに面白い聴きどころがあったのです,やはりこの部分が全曲の見せ場だったかもしれません。

この曲はトーリングさん自身の作曲ということで,クラシック音楽の作曲家としても,とても面白い存在だと思いました。トークの雰囲気からもどこか知的な雰囲気を感じさせてくれ,今後さらに,国際的にもジャンル的にも,色々な境界を乗り越えて活躍するアーティストとして活躍していくのではないかと感じました。

そして,最後に秋吉さんが再度登場し,トーリングさんとの「50歳差デュオ」で大変リラックスした雰囲気のある演奏を聞かせてくれてお開きとなりました。

全体として,石川県立音楽堂コンサートホールは,ジャズを聞くホールとしてはやや大きすぎる印象でした。結構,お客さんはマジメというか,クラシック音楽のコンサートとほぼ同じ雰囲気だったと思いました。ジャズについては,お客さんの方がもっとリアクションを示しながら聞くのかと思っていたのですが,やはり,音楽堂という場所だとクラシックと同様になってしまうのかもしれませんね。特に秋吉さんの演奏については,聴衆との一体感が感じられるような場所の方が本当は良かったのかなと思いました。

ただし,私としては,いつものOEKの演奏会と同様の気分で2人のアーティストの演奏を楽しめた演奏会でした。

2017/09/03

北國新聞赤羽ホールで行われた「若き才能の輝き『いしかわ国際ピアノコンクール』から世界に羽ばたく」という演奏会で,4人の若手ピアニスト(塚田尚吾,中川真耶加,小嶋稜,竹田理琴乃)の力の入った演奏の競演を楽しんできました

本日は,北國新聞赤羽ホールで行われた「若き才能の輝き『いしかわ国際ピアノコンクール』から世界に羽ばたく」という4人の若手ピアニストが登場する演奏会を聞いてきました。登場したのは,過去,このコンクールに登場し,優秀な成績を収めたことのある,塚田尚吾 さん(富山出身),中川真耶加さん (愛知県出身),小嶋稜さん (大阪府出身),竹田理琴乃さん (石川県出身)の4人でした。

塚田さんと竹田さんについては,今年の春に行われたガルガンチュア音楽祭でのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏に参加するなど,金沢の音楽ファンにはお馴染みの方です。今回聞きに行こうと思ったのは,塚田さんや竹田さんと同世代の実力のある若手が一気に聞けることと,演奏された曲の渋さにあります。今回演奏された曲を並べると次のとおりだったのですが,「さすらい人」幻想曲を除くと,かなりマニアックな雰囲気の曲ばかりです(塚田さんの演奏した「死の舞踏」は,以前,塚田さんの演奏でどこかで聞いたことがあります)。

塚田尚吾 (富山)
メンデルスゾーン/幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」op.28
リスト/死の舞踏:怒りの日のパラフレーズによるS.525/R.188

中川真耶加 (愛知)
ショパン/マズルカ op.50
バーバー/ピアノソナタ

小嶋 稜 (大阪)
J.S.バッハ:トッカータ ホ短調
シューベルト:幻想曲 ハ長調 D.760「さすらい人」

竹田理琴乃 (金沢)
ヴェルディ=リスト/「アイーダ」より 神前の踊りと終幕の二重唱 S.436/R.269
ブラームス /7つの幻想曲 op.116~第1,2,3番

個人的には,未知の曲を開拓していくことと,未知の演奏者を聞くことが大好きなので,その両方を目当てに聞いてきました。

今回特徴的だったのは,各奏者が自分自身のことや選んだプログラムについて,5分程度のスピーチを行ったことです。このコンクールでも曲についてのスピーチを行ってもらっているようですが(他に例はあまりない?),スピーチとセットで聞くと,楽しみが増すなぁと思いました。お客さんが喜ぶような話をしたり,曲についての説明をすることは,一種,「常識的な発想」が必要になります。「アーティストは演奏の内容だけで勝負」というのが理想だとは思いますが,日常的にお客さんがほとんど予備知識を持っていないクラシック音楽(特に今回のようなマニアックなプログラムの場合)を聞かせるという場合,演奏者によるトークはかなり重要だと思います。今回の演奏を聞いて改めてそう思いました。

今回の演奏は,4人とも大変水準が高く,どの演奏も面白く聞くことができました。塚田さんの演奏では,最初に演奏されたメンデルスゾーンの「スコットランド・ソナタ」という曲がいいなと思いました。スコットランドのひんやりとした空気を感じさせてくれるような,良い曲だと思いました。「死の舞踏」の方は,もはや十八番という感じだと思いました。

中川さんは,しっとりとした落ち着きのある流れをもったマズルカに続いて,バーバーのピアノ・ソナタが演奏されました。中川さんのトークの解説の後に聞いたこともあり,一見,難解そうな作品(ホロヴィッツが演奏していた曲だそうです)をとても面白く聞くことができました。各楽章に際立った個性のある曲で,大変鮮やかな演奏だったと思います。今回の演奏会のいちばんの収穫でした。

小嶋さんの演奏は,かなり個性的な歌わせ方をするピアノだったと思います。シューベルトの「さすらい人」幻想曲は,シューベルトの曲の中でも特にダイナミックで技巧的な作品ということもあり,速いパッセージでは少々窮屈な感じに聞こえる部分がありましたが,第2楽章に当たる部分でのメロディの歌わせ方が素晴らしいと思いました。

最後の竹田さんについては,毎回毎回レベルの高い演奏を聞かせてくれて感心するばかりです。最初の曲は,ヴェルディの歌劇「アイーダ」の中のメロディをリストがパラフレーズしたものでした。初めて聞く曲でしたが,ちょっとエキゾティックなメロディを豊かな情感を伴って鮮やかに演奏しており,一気に曲の世界に引き込まれました。ブラームスのop.116の中からの3曲についても,一見地味な印象のある曲の中から,くっきりとした情感の動きが引き出されていました。

4人の演奏を聞いて,演奏者それぞれに,音楽の流れのようなものを持っているなぁと思いました。演奏者それぞれに,呼吸のタイミングのようなものがあり,それが演奏全体に反映していると感じました。それは曲によっても変わるし,誰が良いというものでもないのですが,その違いを楽しめることが,こういった複数の奏者が登場する演奏会の楽しみだと感じました。

いしかわ国際ピアノコンクールについては,やはり,もう少し広報に力を入れてもらい,ピアノに関心がない人にもピアノ演奏に目を向けてもらう機会になれば,良いなと思います。4人それぞれに30分以上演奏していたので,トータルで2時間30分ぐらいかかりましたが,定期的に行っても良い企画だと思いまいした。

PS. 演奏会のサブタイトルに「百万石歴史のみち交流祭」と書いてありました。これが少々謎でした。

2017/09/02

今年の岩城宏之音楽賞は受賞者なし。その分,岩城宏之メモリアル・コンサートの方は,井上道義+OEKらしさをたっぷりある楽しめる内容に。やっぱり「ジュピター」は良い曲です。 #oekjp

毎年この時期に行われている岩城宏之メモリアル・コンサートでは,その年の岩城宏之音楽賞受賞者とOEKが競演するのが恒例だったのですが,今回は受賞者は不在で,過去の受賞者の中から,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさん(10回岩城宏之音楽賞受賞者)と首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタ(第4回岩城宏之音楽賞受賞者)さんがソリストとして登場し,井上道義指揮OEKと共演しました。

演奏したのは,サン=サーンスの「ミューズと詩人」という曲でした。ヴァイオリン、チェロ、管弦楽のための二重協奏的作品で,OEKが演奏するのは今回初めてです。ほとんど知られていない作品ですが,何といってもサン=サーンス。メロディが美しく,とても気持ちよく楽しめる作品でした。ややセンチメンタルな雰囲気もあったのですが,ヤングさんとカンタさんが演奏すると,ちょっと抑えの効いた大人のロマンといった雰囲気になります。ハープの入った,品の良い色彩感のあるOEKの演奏と合わせて,曲の魅力をしっかり伝えてくれました。こういう知られざる佳曲の発掘というのは,是非,これからも継続していって欲しいと思います。

今回の公演のもう一つのポイントは,最初に演奏された,邦楽器とオーケストラが共演する,三木稔「序の曲」でした。OEKは岩城さんの時代から邦楽器との共演を伝統的に行ってきましたが,この曲では,尺八,二十五絃箏,太棹三味線という3つの楽器が登場しました。邦楽器とオーケストラによる協奏的作品というと,武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を思い出しますが,あの曲のような,緊迫感溢れる作品ではなく,「序の曲」というタイトルどおり,大きく盛り上がる前のイントロダクション的な雰囲気を持った作品でした。

実際,「序の曲」「破の曲」「急の曲」の三部作の最初の曲ということで,ちょっとインパクトが弱い印象はありましたが,まるでハープのようにオーケストラと溶け合って艶やかな気分を出していた野坂操壽さんの二十五絃箏。豊かさを感じさせてくれた本條秀慈郎さんの太棹三味線。そして,通常より大きめの楽器で曲全体にアクセントを付けていた三橋貴風さんの尺八(オーケストラも弦楽器だけだったので,唯一の管楽器でした)。これらが一体となって,スケール感と暖かみを感じさせる演奏を楽しませてくれました。

そして最後にモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」が演奏されました。いうまでもなく,モーツァルトの交響曲の総決算のような堂々たる作品です。そして,今回の演奏もこれまで築いてきた井上/OEKのつながりの強さをしっかり感じさせてくれるような,堂々たる構えと余裕を持った演奏でした。

冒頭部から,適度な柔らかさと芯の強さを持ったオーケストラの響きが最高でした。石川県立音楽堂に最適化された音という感じでした。きっちりと締めつつも,OEKの柔軟性も生かした演奏で,ちょっとした間の取り方,ニュアンスの変化など,この組み合わせならではの表情の豊かさがありました。井上さんは,アンコールの時,「希望を感じさせる曲だ」と仰っていましたが,まさにそういう演奏だったと思います。「ジュピター」を聞くのは,意外に久しぶりの気がしますが,改めて完成度の高い作品だと思いました。

そして,楽しく,爽快な,モーツァルトらしいアンコールが2曲演奏されました。このアンコールについては,後日レビューでご紹介しましょう。井上さんのトークを聞きながら,来年からは,こういう雰囲気を味わう機会が減ってしまうんだな,と少々淋しくなりました。

井上さんはアンコールの時のトークの中で「何事にも終わりがある。だからこそ,そこまでは一生懸命やりたい」(不正確かもしれません)といった言葉をおっしゃられていましたが,このことは,音楽についても言えるし,人生についても言えるし...井上さんとOEKとの関係についても言える言葉だと感じました。

色々な点で名残惜しさを感じた演奏会でした。

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