OEK定期公演2017/2018シーズン開幕。井上道義指揮による総決算の「田園」。神尾真由子と四つに組んだ壮大なスケール感のあるヴァイオリン協奏曲。拍手からも熱さが伝わってくる演奏会でした #okejp
この演奏会ですが,やはり井上さんとOEKの「田園」は最高だなぁと思いました。ベートーヴェンの交響曲については,OEKの演奏で何回も聞いており,井上さん指揮の「田園」も聞くのは3回目ですが(確か),その度にこの曲に対する「愛」のようなものを感じます。
第1楽章の冒頭から,「田園に着いたばかりの新鮮な気持ち」が溢れ,何回聞いても新鮮な気分を味わわせてくれます。第2楽章は,ベースとなる「流れるような」雰囲気も素晴らしいのですが,その上で絡み合うOEKの各パートの音の動きを聞いているだけで飽きません。この楽章を聞くたびに,隠されている自然の音を発見する喜びがあると感じます。
第3楽章以降は,音による祭り・自然・感謝の気持ちの描写音楽です。1年前のラ・フォル・ジュルネ金沢の時も同様だったのですが,3楽章途中に「嵐」のメンバー6人(ジャニーズではなくトランペット2名,トロンボーン2名,ティンパニ,ピッコロ奏者の皆さんです)が上手側から入って来て,視覚的にもドラマを印象付けていました。
第4楽章から第5楽章に掛けては,前回聞いた時よりもスマートな感じに思えましたが,第5楽章の途中,曲想が盛り上がってきて,井上さんが大きく両手を広げるのを見ると,「井上さんの田園だなぁ」と熱い気分になります。そして最後の部分の名残り惜しさ。繰り返しになりますが,井上さんの「田園」はやっぱりいいなぁと思います。
前半はまず,ペルトのベンジャミン・ブリテンへの追悼歌が演奏されました。振り返ってみると,井上さんは,ペルトの曲を取り上げる機会も多かったですね。神秘的な和音がベルの音に合わせて最初から最後まで続いているだけ,といった曲なのですが,演奏会の最初に演奏されると,日常生活の空気から,アートの空気へと切り替える,緩衝地帯になっているような気がしました。この古いのか新しいのか分からないムードは癖になりそうです。
前半では,金沢でがすっかりおなじみのヴァイオリン奏者,神尾真由子さんとの共演で,ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。神尾さんについては,先月8月19日,ほぼ1カ月前にOEKとメンデルゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏したばかり。さらには,11月21日には,ロシア国立ウリャノフスク交響楽団との共演でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏します。この短期間の間に金沢で,いわゆる「3大ヴァイオリン協奏曲」を1人の奏者が全部演奏する,というのは(たまたまこうなったのだと思いますが),「金沢史上初」なのではないかと思います。
今回のベートーヴェンについても,井上/OEKと神尾さんとがじっくりと四つに組んで,じっくりと聞かせてくれる聞きごたえのある演奏でした。雰囲気としては,1カ月前に聞いたメンデルスゾーン同様,「演歌的」と言って良いほど,滴るような音を聞かせてくれる演奏で,個人的にはロマンティック過ぎるかな(結構,チャイコフスキー的なベートーヴェンだな,と思ったりしました)と思ったのですが,「さすが神尾さん」とも思いました。
神尾さんの場合,音や歌いまわしを聴けば「神尾さんの演奏だ」と分かる,しっかりとした個性を持っていると思います。どの楽章もゆっくり目のテンポで,存分にこの曲の中に潜んでいる「情感」と「歌」をしっかりと引き出していました。井上/OEKによる,非常に気合いの入った充実した演奏と組み合わさることで,この曲のもつスケールの大きさ(45分以上かかっていたと思います)をしっかりと体感させてくれました。
この日のお客さんの拍手からは,いつもにも増して熱いものが伝わって来ました。今シーズンは,この公演を含めて,井上さんは3回OEKの定期公演に登場します。本日の演奏を聞いて,その1回1回で,総決算のような演奏が期待できると感じました。
このプログラムと同様の内容で,次のとおり国内演奏旅行が行われます。是非お近くの方は,お聞きになってください。
名古屋定期公演 9月22日(金) 19:00開演 三井住友海上しらかわホール
大阪定期公演 9月23日(土) 14:00開演 ザ・シンフォニーホール
三原公演 9月24日(日) 14:00開演 三原市芸術文化センター ポポロ
※三原公演のみ,ヴァイオリン独奏は,三浦文彰さんです。
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