いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017 秋の陣 を聞いてきました。 前半は石川公美,水上絵梨奈,近藤洋平,門田宇,OEKエンジェルコーラス,白河俊平(Pf)の皆さんによるベートーヴェン物語。後半は菊池洋子さんの公開レッスン+地元奏者との連弾+ソナタ第13番
この音楽祭のテーマは,ベートーヴェンということで,公演の前半は「ベートーヴェン物語」と題して,北陸を中心に活躍する若手声楽家,ピアニストとOEKエンジェルコーラスの皆さんがベートーヴェンとその前後の作曲家たちの作品を演奏しました。「~物語」とあるとおり,ベートーヴェンの生涯を石川公美さんの語りを交えてたどりながら,声楽曲やピアノ曲を聞くという構成になっていました。
石川公美さんの語りはとても分かりやすく,全体の流れもとてもスムーズでした。ソナタの全曲を聞くという形ではなかったので,「ベートーヴェン入門編」のような感じで,「石川県のクラシック音楽のすそ野を広げる」といったことを意図するような公演と感じました。
ただし,この日の演奏は,どの曲も素晴らしく,しかも,意外に演奏される機会のない,ベートーヴェンの声楽曲を楽しむことができました。テノールの近藤洋平さんによる「アデラーデ」,バリトンの門田宇さんによる「君を愛す」,石川公美さん,水上絵梨奈さん,,近藤さん,門田さんによる「自然における神の栄光」など,どの曲も若手歌手たちの瑞々しい声を間近で楽しむことができました。
OEKエンジェルコーラスの方は,少々お行儀が良過ぎのような気もしましたが,ウィーンの音楽に児童合唱はぴったりだと思いました。
白河俊平さんのピアノの音は,とても滑らかで美しいものでした。ベートーヴェンの「悲愴」2楽章,「月光」1楽章,シューベルトの即興曲op.90-3の雰囲気にぴったりでした。特にシューベルトの即興曲は個人的に大好きな曲だったので(この曲が演奏されると知らなかったので),得した気分になりました。
前半最後は4人の声楽家によって「歓喜の歌」が歌われて,締められました。
後半はモーツァルトのピアノ曲ばかりが演奏されました。金沢でもお馴染みの菊池洋子さんによる公開レッスン及び菊池さんと地元奏者による連弾の後,菊知さんのソロで,ピアノ・ソナタ第13番が演奏されました。
後半のステージも,「地元の子供たち」を絡めた企画ということで,「クラシック音楽のすそ野を広げる」ような内容でしたが,こちらも大変面白いものでした。
最初にモーツァルトの4手のためのピアノ・ソナタK.381の第1楽章について,菊池さんが公開レッスンを行いました。最初に2人の子供たちの連弾で演奏されたのですが...これが本当にしっかりとした演奏で驚きました。これ以上,どう指導されるのだろうか?と思ったのですが,さすが菊池さん。「2人の演奏はしっかり仕上がっている。これは一つの考え方だけれども...」と前置きをした後,もしかしたらモーツァルト演奏の「ツボ」につながるようなアドバイスをされました。次のような感じです。
- どの音もきっちりと弾き過ぎているかも。
- モーツァルトについては,軽やかさの欲しい部分がある。力を抜くところは抜く。
- トレモロについてはそれほどしっかり弾く必要はなく,響きを作る感じで。
- 軽やかに弾くときは,それに合った指使いに変えると良い。
- モーツァルトの場合,ひじを回して演奏する必要はあまりない。
抽象的なアドバイスではなく,技術的なアドバイスになっているのが素晴らしいと思いました。
その後,菊池さんと地元のピアニストによる,4手のためのソナタが2曲演奏されました。こちらは,菊池さんが低音に加わることで,どこか大船に乗ったような幸福感が感じられました。
ちなみに,今回レッスンに使われたK,381の第1楽章ですが,一瞬,「フィガロの結婚」のケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」を思わせるメロディがふっとよぎり,ちょっと嬉しくなります。今回の演奏を聞いて,好きな曲になりました。
最後は,K.333のピアノソナタが菊池さんのソロで演奏されました。やはり連弾で演奏する場合よりは,自由度が高く,より柔軟で流れるような気持ち良さと健やかさをもった演奏を聞かせてくれました。平穏な世界が段々と深まって行くような第2楽章。クッキリとした明快で陰影のある世界が広がる第3楽章。この曲も良い曲だな,と思いました。
アンコールで,ちょっとアドリブ的な音が入った「トルコ行進曲」が快適なテンポで演奏されて,演奏会は終了しました。
菊池さんのトークによると,「来年の音楽祭のテーマは...モーツァルトなのかもしれませんね」とのことでした。こじんまりとした感じで行われた「秋の陣」でしたが,来春のエリア・コンサートはこれで万全と思わせるような内容でした。
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