OEKのCD

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2017/11/08

#河瀬直美 演出,#広上淳一/OEK「#トスカ 」金沢公演。スケールの大きさと情感の豊かさ,そして,鮮やかな映像美を楽しめる素晴らしい公演でした。 #oekjp

OEKはほぼ年1回のペースで,「全国共同制作プロジェクト」という形でオペラ公演に参加しています。全国各地のコンサートホール等を使って行うオペラということで,セットなどはそれほど大規模ではありませんが,それを補う形で,色々と工夫のされた設定や,斬新な演出での上演されています。

今年は,映画監督の河瀬直美さん演出による「トスカ」でした。「トスカ」は,本来はローマを舞台とした作品ですが,河瀬さんの演出では,古代の「牢魔」という場所が舞台になっていました。1日の出来事を描くという点はオリジナルと同じでしたが,役名が「トス香」「カバラ導師」になるなど,舞台全体としては,和風~無国籍風のテイストがありました。

こういう一ひねりのある設定の「トスカ」でしたが,全曲を通じて,河瀬さんの美意識と作品に込められた豊かなドラマとがストレートかつ丁寧に表現された見事な舞台になっていたと感じました。

河瀬さんの演出は,映画監督らしく映像をふんだんに活用したものでした。舞台の背景あたりに巨大な暖簾のような形のスクリーンを設置し,そこに各幕ごとに美しい映像を投影していました。第1幕は富士山,第2幕は水のイメージ,第3幕(第2幕から連続していました)は月がメインになっており,各幕の気分が鮮やかに切り替わっていました。

このスクリーンは暖簾のようになっているので,そこをくぐる形で人物が出入りするのですが,ステージ奥から常に強い光が出ているので,登場するたびに,非常に大きなシルエットがスクリーンいっぱいに登場します。これも効果的でした。特に悪役スカルピアの登場の場は,音楽の迫力と相俟って,格好良さと怖さを兼ね備えた雰囲気を作り上げていました。

その他,曲の雰囲気に合わせて,急に花の絵に変わったり,トスカがスカルピアを殺害する瞬間は,花火の映像に切り替わったり,幕切れではスクリーン一面がローソクになったり,非常に効果的に映像を使っていました。

また演出の意図として,「悲惨で救いのない感じにならないように」という方向性があったようで,スカルピアとトスカの死については,リアリズムの演出とは一味違う,幻想味がありました(詳細はレビューで紹介しましょう)。この辺は賛否の分かれる部分だと思いますが,こういうのも「あり」と私は思いました。

音楽面では,何といっても広上淳一さん指揮OEKの作り出す,じっくりと丁寧に情感を描くような音楽が素晴らしいと思いました。「歌に生き恋に生き」「星はきらめき」の2大名曲は,どちらもこれまで聞いたこともないくらい,じっくりとしたテンポでスケール感たっぷりに歌われました。
ただし,「星はきらめき」の方は,背景に大きな大きな月が出ていたので,「月はきらめき」という感じでした。


主役トスカのルイザ・アルブレヒトヴァさんの声には,常にドラマを内面に秘めたような暗さと強さがあり,この役柄にぴったりだと思いました。カバラドッシ役のアレクサンドル・バディアさんの方は,やや声が薄い感じがして,存在感ではトスカに負けている気がしましたが,その分,悲運の青年といった感じがよく出ていたと思いました。

スカルピア役の三戸大久さんは,素晴らしく包容力のある,瑞々しさのある声で,素晴らしいと思いました。ドロドロした悪役というよりは,むしろ二枚目的な雰囲気のあると思ったのですが,これがとても新鮮でした。スタイリッシュな映像中心の「トスカ」にぴったりのスカルピアだと思いました。

脇役の歌手たちも,実力のある人が揃っており,安心して楽しむことができました。もしかしたら,それぞれにカバラドッシやスカルピアを演じられる人たちばかりだった気がしました。

合唱団の皆さんの出番では,やはり第1幕後半の「テ・デウム」の部分のスケール感が素晴らしいと思いました。最近絶好調の広上さんらしい,エネルギーが充満した巨匠的な迫力を秘めた幕切れでした。

今回の「トスカ」は,広上さんとOEKの作り出す,スケールの大きさと情感の豊かさを持った演奏と河瀬さんによる鮮やかなインパクトを残す映像が全体の基調を作り,その上で歌手たちが生き生きと活躍する,大変完成度の高い公演になっていたと思います。あと2公演残っていますので,お近くの方は是非,ご覧になってください。

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