音楽堂室内楽シリーズ:OEKチェンバー・コレクションⅡで,木管五重奏の多彩な世界を堪能してきました。みなさま,お疲れ様でした。 #oekjp
「音楽堂室内楽シリーズ:OEKチェンバー・コレクションⅡ」が石川県立音楽堂交流ホールで行われたので聞いてきました。今年度のこのシリーズでは,OEKの各パートをしっかり活用した「やや大きめの室内楽曲」が取り上げられることが多いようです。今回は,木管五重奏曲と木管五重奏+ピアノの曲ばかりが並んだ,充実のプログラムでした。
登場したのは,次の皆さんでした。
- ファゴット:柳浦 慎史
- ホルン:金星 眞
- フルート:松木 さや
- オーボエ:加納 律子
- クラリネット:遠藤 文江
- ピアノ:鶴見彩
余談ですが,プロフィールを読みながら「東京芸大の出身者が6人中5人だなぁ」と変なところに注目してしまいました。この日は,上の階(コンサートホール)では,神尾真由子さん,平野加奈さんとロシアの交響楽団がチャイコフスキーの協奏曲を共演する演奏会が行われていましたので,そちらに敢えて行かなかったお客さんばかりということになります(私の場合,経済的な理由もありますが)。今回のメンバーとプログラムの「豪華さ」を理解するお客さんばかりということで,とても暖かな雰囲気があったと感じました。
木管五重奏は,弦楽器を中心とした室内楽曲に比べるとあまり親しまれていないと思いますが,今回のプログラムを聞いて,その多彩さをしっかり感じることができました。司会のOEKファゴット奏者の柳浦さんが「プログラムのメインになるような曲を4つ並べた。演奏する方も聞く方も大変です」と語ったとおり,充実感のあるプログラムでした。
今回演奏されたのは,次の4曲でした。
- ヒンデミット:小室内音楽
- トゥイレ:六重奏曲
- ニールセン:木管五重奏曲
- プーランク:六重奏曲
このうち,トゥイレとプーランクには,ピアノが入りました。4曲の中では,いちばん知られていない作曲家,トゥイレの曲がいちばん聞きやすく,オーソドックスなまとまりのある曲だったと思いました。この曲を聞くのは2回目ですが,ブラームスの曲を思わせるようなシンフォニックな気分がありました。4楽章構成で全体で30分ほどかかりましたが,爽やかな空気に満たされたような気持ち良さがあり,全く退屈することなく楽しむことができました。この分野では,屈指の名曲ではないかと思いました。
ヒンデミットの作品は,タイトルどおり,もう少し小さく凝縮されたような雰囲気の音楽でした。一つのモチーフが何回も繰り返されて,がっちりと積み重ねられていく感じが,ヒンデミットらしいなと思いました。
ニールセンの曲については,柳浦さんは晩年はやや精神を病んでいたと言われていたと語っていたのですが,曲の中にもそのことが反映されていた気がしました。のどかな気分かと思ったら急に激しく叫ぶような感じになったり,少々捉えどころのない作品でした。最後の楽章の変奏の部分なども,かなり感情の変化の起伏が大きかったのですが,逆にその点に現代性を感じました。個人的に妙に引かれる作品でした。
最後に演奏されたプーランクの六重奏曲は,今回のプログラムの中でいちばん有名な曲で,私自身,唯一CDを持っている曲です。冒頭の部から,生き生きした音の動きと,ちょっと野性味を持った迫力と,甘く夢見るような雰囲気とが交錯し,プーランクの作品の中でも特に素晴らしい作品だと思います。生演奏で聞くと,特にその音の動きの面白さが生々しく伝わってきます。キラキラするようなフルート,オーボエ,クラリネットの高音も印象的でしたが,低音からグッと盛り上がってくるようなホルンやファゴットの音も良いなと思いました。
曲の最後の部分は,テンポをぐっと落とし,余韻をたっぷりと楽しむ雰囲気になりました。もしかしたら,演奏する方にとっても非常に大変だった今回のプログラムの余韻を皆さんしっかりと噛みしめていたのかもしれませんね。みなさま,お疲れ様でした。
アンコールでは,ラヴェルの「クープランの墓」の終曲の一部が演奏されましたが,木管五重奏の世界はまだまだレパートリーがありそうなので,是非続編に期待したいと思います。とりあず,「クープランの墓」の全曲に期待したいと思います。
今回の編成と同じ室内楽グループでは,「レ・ヴァン・フランセ(フランスの風)」が有名ですが,この際,何かグループ名を付けて活動して欲しいぐらいです。「金沢の空(Le ciel de Kanazawa)」とかどうでしょうか。
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