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2017年7月9日 - 2017年7月15日

2017/07/15

#大阪フェスティバルホール で #井上道義 指揮大阪フィル他による #バーンスタイン の「ミサ」全曲を聞いてきました。ジャンルを超えた多彩な音楽に浸りながら,平和と権威のはかなさを実感。深く刺激的な作品でした

本日は大阪フェスティバルホールまで遠征し,大阪フィル70周年記念及びフェスティバルシティ・オープン記念として行われた,レナード・バーンスタン作曲の「ミサ」の全曲公演を聞いてきました。

この公演を聞きに行こうと思ったのは,何といってもSNSでの広報の力です。春頃から繰り返し,充実した公演情報や出演者のインタビュー動画などの情報が流れてきて,「四半世紀に1回ぐらいのビッグイベントかも」という気分が自然に盛り上がってしまいました。もちろんOEK音楽監督でもある,井上道義さんが本気で取り組んでいる難曲であること,そして金沢でもお馴染みの若手の歌手たちが大勢出演していること,そして...3連休初日であることもその理由です。さらには新しくなった大阪フェスティバルホールに行ってみたいという気持ちもありました。

このバーンスタインの「ミサ」は,大まかに言うと,ミサを取り仕切る司祭の苦悩とミサの自体の崩壊。そして回復。これらを歌あり,踊りありの約2時間のシアターピースのスタイルで描いています。いちばんの特徴は,クラシック音楽の枠に留まらない多彩な音楽を使っている点です。バーンスタインの生まれたアメリカは,民族的に多様なルーツを持つ国です。民族面と同様の音楽面での多彩さを表現した作品と言えます。

録音された無調音楽,親しみやすいミュージカル風の曲,ロック,ブルース,行進曲,荘重なクラシック音楽,慰めるような音楽,扇情的な音楽....。演奏の編成についても,独唱,合唱,少年合唱と多彩です。オーケストラのうち弦楽器と打楽器はピットに入り,木管楽器,金管楽器がそれぞれ下手袖,上手袖にバンダのような感じで配置。ステージ上中央に祭壇。その両脇にロックバンドとブルースバンド。そしてステージ奥に合唱団が配置していました。

歌手については,役が決まっているのは司祭役ぐらいで,その他の歌手は,アンサンブルで歌を歌ったり,ダンスや演技をしたりするストリートコーラスということになっていました。

というわけで,「こんな作品他にない」という構成・編成の作品でした。この曲が滅多に演奏されないのは,まず,このことが理由でしょう。それに加え,「ミサ」というタイトルでありながら,キリスト教を冒涜するような場面が出てくることも演奏回数が少ない理由となっているようです。

曲全体として,明確なストーリーはありません。伝統的な権威の象徴である司祭が,民衆たちからの激しい突き上げに合って,ミサ自体が崩壊してしまいます。最後はボーイソプラノの声が象徴する大きな存在の力(この辺はよくわかりませんが)で,平和は回復されるのですが,宗教的な儀式を司祭が放棄してしまう,という展開は前代未聞だったようです。

司祭がミサを放棄した理由については,初演当時のアメリカの抱えていた社会問題を象徴的に表現しているようですが,今回の井上道義さん演出(今回は指揮だけではなく,全体も取り仕切っていました)による公演を観て,もっと普遍的な理由を感じました。現代人の多くが共通して抱えている心の中に秘めた葛藤のようなものが,多彩な音楽の積み重ねを通じて,段々と高まって行くような印象を持ちました。そして,作曲者レナード・バーンスタイン自身の心の葛藤を描いていたと感じました。

実際,今回の司祭役の大山大輔さんは,レナード・バーンスタインがよく首に巻いていたマフラーをつけていました。大山さんの声には,司祭にふさわしい立派さだけではなく,弱さを持った等身大の人間らしい優しさと柔らかさを持った歌を聞かせてくれました。特にアニュスデイでの「狂乱の場」は,音楽自体の異様な迫力(照明も結構すごいことになっていました)も相俟って,客席にいながら,「これは大変な場に遭遇してしまったな」と思いました。

最後の「平和の回復」の部分でも,シアターピースならではの,「見せる演出」がありました。ステージ奥の高いところにフルート奏者が登場。いつの間にかそこに滑り台(!)ができていました。ボーイソプラノの少年が1人滑り降り,取り壊された祭壇の下から出てきた白いピアノの上へ。そこで文字通り「天使のような歌」を聞かせてくれました。今回の公演の成功は,この最後の歌と演出に負うところが大きかったと思います。ブラーヴォ。

もちろん,前半の多彩な音楽が次々と登場するのも魅力的でした。特にストリート・コーラスのメンバーが,ビートを聞かせたエレキ・ギターや電子オルガン(この音を聞くと,どこか1960~70年代のアメリカといった気分になりますね)などと一緒に歌う曲は,通常のクラシック音楽にはない魅力を感じました。

それにしても,今回のメンバーは豪華メンバーでした。私がこれまで金沢で実演を聞いたことのある人を列挙すると,小川里美、小林沙羅、鷲尾麻衣(先週聞いたばかり!)、藤木大地、久保和範、与那城 敬、ジョン・ハオ...記念公演ならではの,華やかさでした。

背後で歌っていた大阪フィルハーモニー合唱団の皆さんは,「民衆の声」という感じで,ドラマの要所要所で音楽を盛り上げてくれました。特にグローリアの中のトロープス(この公演のプロモーション動画で使っていた曲)の力強さが印象的でした。余談ですが...この曲を聞くと,どうも「ひょっこりひょうたん島」のテーマ曲を思い浮かべてしまいます。私だけでしょうか?
http://blog.osakafes.jp/archives/2453

全曲を振り返ってみると,司祭が最初に歌っていた「シンプルソング」の美しさが,懐かしく思いだされます。べートーヴェンの第9の4楽章ではありませんが,こういったシンプルな曲が音楽の原点なのかもしれません。そして,最後,ボーイソプラノの声で救済されたことも意味深だと思います。ボーイソプラノという声自体,非常に儚いものだからです。世界の平和は儚さの上に成り立っている,,,ということになります。司祭が語っていた「何事もすぐに崩れやすい」とやすい,という言葉はやはり解決されないのだな,と思いました。深い作品だなと思いました。

音楽の性格としては,本当のミサではなく,「ミサ」というタイトルの「ほとんどミュージカル」といった作品だと思います(キリスト教を題材にし,ロックを使ったミュージカルという点では,「ジーザス・クライスト・スーパースター」と共通する部分もあるかもしれません)。音楽自体に魅力があるので,レパートリーとして定着していってもよい作品だと思いました。
PS 久しぶりに出かけた大阪フェスティバルホールは,大変豪華な雰囲気がありました。赤じゅうたんと大階段がそのまま残っていたのも嬉しかったですね。今回は,”安い”席を最近買ったので,最後列(いちばん”高い”席)になりました。この席からだと,まさに”神”のような視点で,全体を見渡すことができました。音もよく聞こえたし,今回の公演には,最適のホールだった気がしました。

2017/07/13

OEK第2ヴァイオリン奏者の若松みなみさんのヴァイオリン・リサイタル。フランクのソナタを中心にどの曲も爽快に聞かせてくれました。

先週の土曜日から,5日間で4日目となるのですが,本日は,OEKの第2ヴァイオリン奏者,若松みなみさんのリサイタルが行われたので聴いてきました。若松さんはOEKの中でも,最も若い世代の奏者で,今回が初めてのリサイタルとのことでした。というわけで,OEKファンとしては応援しないわけにはいきません。

今回のプログラムは,フランクのヴァイオリン・ソナタ,ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ,モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第25番を中心に,若松さんの演奏したい曲がしっかりと並んでいました。若松さんのヴァイオリンは,どの曲も,本当に音がしっかりと鳴っており,聴いていて惚れ惚れとしました。音が大変豊かで,音を聞くだけで幸福感を感じました。神経質な部分はなく,どの曲にも演奏する喜びが素直に表れていると感じました。

特に最後に演奏されたフランクのソナタの爽快な演奏には,若手奏者ならではの魅力が溢れていました。このところ,湿気が高く,疲労がたまり気味でしたが,週末金曜日まで働くエネルギーが湧いてきまいした。

後半の最初に,同じOEKのチェロ奏者,ソンジュン・キムさんのチェロとの二重奏で,マルティヌーのヴァイオリンとチェロのための二重奏曲第2番が演奏されました。この曲だけは,やや苦み走ったような気分があり,プログラム全体の中で,絶妙のアクセントになっていました。

前半最後に演奏された,サラサーテの「序奏とタランテラ」は,そのタイトルどおりの曲です。最初の音を聞いた瞬間,スペインの陽光が溢れてくるような気分になり,とても良い曲だと思いました。後半のタランテラの部分での技巧的な部分も気持ちよく楽しまてくれました。

ピアノのジュヌゥ・パクさんの演奏には,マイルドな包容力が感じられ,若松さんをしっかりとサポートしていました。

終演後の拍手も大変暖かいものでした。若松さんは,OEK入団後,「金沢が大好きになりました」と語っていましたが,金沢のOEKファンにもしっかりと愛されているなぁと実感しました。今後もソロや室内楽での活躍にも期待したいと思います。

2017/07/12

石川県立音楽音楽堂 室内楽シリーズ。2017年度第1回は,OEKメンバーによる七重奏曲×2曲。ベートーヴェンと「ほぼジャズ」のマルサリスの曲の組み合わせは最高。ジャズも演奏できてしまうOEKメンバーに感服 #oekjp

石川県立音楽音楽堂で行われる室内楽公演シリーズ。2017年度の第1回は,OEKメンバー等による,七重奏曲2曲が演奏されました。もともとこのシリーズでは,「大きめの室内楽」が取り上げられることが多いのですが,管・弦・打が全部揃った室内楽となると,司会の柳浦さんが語っていたとおり,「オーケストラの最少のエッセンス」のように感じられ,大変聞きごたえがありました。

前半に演奏された,ベートーヴェンの七重奏曲は,各パート1人ずつの「超室内オーケストラ」的な響きのする曲です。若い時期のベートーヴェンの作品らしく,どの楽章にも生き生きとした推進力と,前向きの明るさがありました。

この演奏で良かったのは,各メンバーの存在感がしっかりと発揮されていたことです。第1ヴァイオリンの活躍が目立つ曲なので,坂本さんが全体を引っ張っていましたが,大澤さんのチェロ,今野さんのコントバスなど,要所要所で熱い響きを聴かせてくれました。

そして,金星さんが演奏していた,バルブの付いていないホルンも威力満点でした。スケルツォをはじめとして,要所で野趣たっぷりの音を聞かせたり,ゲシュトップフト奏法による,不思議な響きを聞かせたり,これまでに聞いたことのない雰囲気を味わわせてくれました。この響きと対照的だったのが,遠藤さんのクラリネットで,大変気持ちよく,流れるような歌を聞かせてくれました。

後半に演奏された,ウィントン・マルサリス作曲の「フィードラーズ・テール」の演奏は,「OEKが本格的なジャズを演奏してしまった!」という点で画期的な演奏だったと思います。もともとは,ストラビンスキーの「兵士の物語」の組曲版と組み合わせるためにマルサリスが作曲した作品ということで,「兵士の物語」と全く同じ楽器編成(7人編成)です。ストーリー展開も,兵士の物語のパロディのような感じになっています。

「兵士の物語」でもヴァイオリンが活躍していたので,オリジナルの風味も残っていたのですが,曲が進むにつれて,マルサリス色,というかジャズ色が強くなっていくように感じました。ベートーヴェンの七重奏曲の時同様に,各奏者のソリスティックな活躍が印象的でしたが,特に藤井さんのトランペットの,マルサリスに成り切ったような,濃い演奏が最高でした。多彩なリズムを刻んでいた渡邉さんのドラムスも見事でした。

全員で演奏すると,ちょっとしたビッグバンド風に聞こえるのも面白いところでした。皆さん,当然のことながら,楽譜を見て演奏されていましたが,譜面通り演奏すると「ジャズ」になってしまうマルサリスの曲もすごいと思いました。そして,何よりも,しっかりジャズも演奏できてしまう,OEKのメンバーの適応力の高さにも感服しました。よくぞこの曲を選んでくれた,と感謝したくなりました。

アドリブがなかったのが,やはりクラシック音楽だったのかもしれませんが,今回の演奏は,是非,ジャズ音楽のファンにも聴いてもらいたかったと思います。お客さんと演奏者との距離の近さもジャズに通じる部分があると思いました。

というわけで,今後,ジャズ・ファンとクラシック音楽ファンの相互乗り入れ可能な演奏会というのを企画しても面白いかもと感じました。

2017/07/11

本日は,第1回ベストオブアンサンブル in Kanazawaでグランプリを受賞したTrio RFR(トリオアルファ)の演奏会へ。ピアノ三重奏の世界は良いです。3曲を正攻法で楽しませてくれました

本日は,昨年行われた「第1回ベストオブアンサンブル in Kanazawa(BOE)」でグランプリを受賞した,桐朋学園大学院大学での同期生3人によるピアノ三重奏団「Trio RFR(トリオアルファ)」の演奏会が行われたので聴いてきました。先週末から頻繁に演奏会に出かけているので,「どうしようかな」と迷っていたのですが,金沢でピアノ三重奏の演奏会が行われることは多くないこと,そして,昔から好きな曲だった,シューベルトのピアノ三重奏曲第1番が演奏されることを目当てに聞きに行くことにしました。

プログラムは,ハイドン,ベートーヴェン,シューベルトというウィーン古典派から初期ロマン派の作曲家によるピアノ三重奏曲を集めた大変聞きごたえのあるものでした。Trio RFRの演奏は,BOEのグランプリらしく,正攻法の誠実な演奏で,各曲を楽しませてくれました。

ヴァイオリンの青木さんの力感のある響き,ピアノの浅井さんのクリアで煌めきのある音にチェロの富田さんの柔らかみのある音が加わり,室内楽的な密度の高さと同時に,外に広がって行くような開放感も感じさせてくれました。

最初に演奏されたハイドンの曲は,曲の最初,朝礼とかでお辞儀をする時の「チャン・チャン・チャン」というような和音で始まり,思わず嬉しくなりました。その後も明るく,どこか可愛らしい雰囲気があり,気持ちよく楽しむことができました。第2楽章は大変美しいメロディでした。ベートーヴェン,シューベルトと引き継がれるウィーン風の伝統のようなものを感じました。

続くベートーヴェンのop.70-2の三重奏曲を聞くのは初めてのことでした。ベートーヴェンの三重奏曲といえば「大公」が有名で,この曲については,「傑作の森」の真ん中にあるけれども「イマイチの作品」などと(失礼なことを)書かれている解説を読んだことがあるのですが,今回,初めて実演で効いてみて,「そんなことはない」良い作品だなとと思いました。

全曲を通して深刻な感じはなく,とても健康的な雰囲気がありました。特に(アンコールでももう一度演奏されたのですが)第3楽章の親しみやすいメロディが印象的でした。この楽章の途中に出てくる,「ヴァイオリン+チェロ」と「ピアノ」とが対話をするように進んでいく辺りでの絶妙の「間」の取り方も良いなと思いました。

後半は,シューベルトのピアノ三重奏曲第1番が演奏されました。冒頭からキビキビとした感じで進んだあと,これぞシューベルトという感じのメロディが出てきます。第2楽章は昔から特に好きな楽章です。テンポはやや速目でしたが,しっかり熱く歌われていました。好みとしては,もう少し耽美的な感じが好みですが,十分に堪能させてくれました。

第3楽章スケルツォの後の第4楽章は,シューベルトらしく(?)同じフレーズが何回も繰り返される最終楽章です。このしつこい繰り返しが,シューベルトの器楽作品の魅力の一つかもしれませんね。

年季を積んだ室内楽グループに比べると,どこか「真面目すぎるかな」という部分はありましたが,これまで金沢では実演で聴く機会の少なかった,ピアノ三重奏曲の世界をじっくりと楽しませてくれました。ピアノ三重奏というのは,同じ室内楽でも弦楽四重奏などに比べると,ソリスティックな部分が多く,外向的な感じがします。それと「何でも表現できる最小限の編成」といったオールマイティな性格もあると思います。

Trio RFRのメンバーは,実は金沢出身者が含まれていないのですが,そういうメンバーが金沢で演奏活動を始めたというのは,とても嬉しいですね。是非,これからの活動に期待したいと思います。昨年はTBSドラマ「カルテット」が話題になりましたが...次は「ピアノ・トリオ」の時代かもしれないですね。

PS. 演奏会の後,外に出てみると...ホール内の調和の取れた世界とは全く別のものすごい豪雨。傘を持ってこなかったので,ひどい目に会って帰宅することになってしまいました。やはり梅雨ですね。

2017/07/09

ルドヴィート・カンタ バースディ・リサイタル。バッハの無伴奏チェロ組曲全6曲を聴いてきました。熟成されたスロバキアワインの味わい。全曲通すことで,各曲の個性も際立っていました。

OEK首席チェロ奏者ルドヴィート・カンタさんによる,バッハの無伴奏チェロ組曲の全曲演奏会が石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。実は,7月9日,まさに本日がカンタさんの60歳の誕生日でした。チェロ奏者としての活動の総決算となるような,素晴らしい内容の「バースデイ・リサイタル」となりました。

バッハの無伴奏チェロ組曲は,プロのチェロ奏者ならば必ず演奏する,バイブルのような曲集です。カンタさん自身も,過去何回か演奏しており,全曲のCD録音も行っています。今回は2回の休憩をはさみ,約3時間の演奏会となりましたが,まさに熟成されたスロバキアワインといった趣きのある,味わい深い演奏を聞かせてくれました。そして,改めてこの曲集は面白いと実感できました。

この6曲は,アルマンド-クーラントーサラバンドージーグというバロック時代の組曲の「定番の配列」の最初に,いろいろな形にプレリュードが加わり,サラバンドとジーグの間に,少し新しいタイプのメヌエット,ブーレ,ガヴォットという舞曲が加わるという構成になっています。

一見したところ,どれも同じように思えるのですが,今回のような形で,じっくり最初から聞いて行くと,各曲の個性が際立って聞こえました。それが全曲演奏会の面白さです。個人的な印象としては,ト長調の第1番が「春」のイメージ,ニ短調の第2番が「秋」のイメージ,ハ長調の第3番が「夏」のイメージだなと思いました。

第4番は,プログラムの解説にあったとおり,弦楽器には珍しい♭系の変ホ長調で書かれていることもあり,異次元の曲といった感じがありました。一面雪の別世界とすれば,これが「冬」でしょうか。

最後の第5番と第6番については,4番までとは別格の曲だと思いました。今回は2曲ごとに休憩が入ったのですが,最後に第5番と第6番を連続してきくと,ハ短調からニ長調への暗と明の対比が鮮やかでした。

カンタさんの演奏は,ベテラン奏者らしく,バリバリと演奏するような部分はなく,どの曲についても,スッと自然に音楽に入り込み,余裕をもってバッハの音楽を粋に表現していました。その要所要所で,ぐっと沈み込むような深さがあったり,不思議な浮遊感があったり,変化に富んだ音楽を聞かせてくれました。

特に今回印象に残ったのは,やはり最後の第5番と第6番でした。第5番からは,これぞバッハという感じの深さ,渋さを。第6番からは,突き抜けた感じの明るさを感じました。第6番は,特に難技巧の作品で,ずっと前にカンタさんの演奏で聞いた時は,相当苦闘しているような印象を持ったのですが,今回は常に高みを目指す高揚感が伝わってくる,感動的な演奏でした。

個々の楽章では,やはり各曲のサラバンドの味わいが素晴らしいと感じました。第2番のサラバンドの深く自分の意識の奥の中に入り込んでいくようでした。第6番のサラバンドは,無伴奏ヴァイオリン・パルティ―タの中の有名な「シャコンヌ」とちょっと似ていると感じました。対照的に,シンプルな「線の音楽」の第5番のサラバンドのしみじみとした味も印象的でした。

途中,30分の休憩があり,スロバキアワイン飲み放題(?)だったのですが,あれだけ大勢の人がワインを飲んでいる光景を見るのも珍しいことです。OEKメンバーも大勢参加しており,とても暖かな雰囲気がありました。

全6曲を演奏した後,最後は「ハッピバースディ」の合唱が自然と沸き起こりました。こちらも「無伴奏」の合唱でした。その光景を見ながら,こういう風に年齢を重ねることができたら,いいなぁとしみじみ思いました。今月は18日にカンタさんとOEKが共演し,サン=サーンスのチェロ協奏曲を演奏しますが,そちらの方も大変楽しみですね。

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