OEKのCD

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2018/02/03

#井上道義 指揮OEK定期はショスタコーヴィチ,メンデルスゾーン,ヒンデミットを詰め込んだ充実のプログラム。特に #クニャーゼフ さんと共演したチェロ協奏曲第1番は底知れぬ凄みを持った記憶に残るような演奏 #oekjo

本日の午後は,井上道義さん指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演マイスターシリーズを聞いてきました。井上さんは,3月いっぱいで音楽監督を退任することが決まっていますので,音楽監督として最後のマイスターシリーズということになります。

そのことを反映してか,非常に盛りだくさんで,編成も多彩。聴き応え十分の定期演奏会となりました。最初にヒンデミットの「エロスとプシュケ」序曲が生き生きと演奏された後,ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番,メンデルスゾーンの八重奏曲,ヒンデミットの交響曲「画家マティス」が演奏されました。どの曲も30分ぐらいの長さで聴き応え十分。井上道義さんの一押しの曲をずらっと並べたプような充実プログラムでした。

特に2曲目に演奏された,チェロのアレクサンドル・クニャーゼフさんと共演したショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番は,OEKの定期演奏史に残るような凄い演奏だったと思います。

曲の最初,いきなりクニャーゼフさんのチェロがゴツゴツとした感じで登場。まず,その音の凄みに一気に引きつけられました。何というか根源的な強さを持ったような音で,一見泥臭い雰囲気の中から,底知れぬ奥深さのようなものが伝わってきました。

第2楽章後半から第3楽章にかけては,チェロ協奏曲としては異例なほど長いカデンツァ風の部分になります。ちょっとしたピツィカート一つ取っても意味深さがあり,クニャーゼフさん自身の人生であるとか,ソ連~ロシアの歴史のようなものまで連想させるようなスケールの大きさを感じました。この部分の最後では,「技巧を超えたような技巧」といった独特の凄みのある雰囲気になりました。

この演奏を盛り上げるOEKの演奏も素晴らしいものでした。特にホルンはチェロの次に出番が多い感じで,朗々とした音で曲にアクセントを付けていました。ホルンは1本だけでしたので,ピアノ協奏曲第1番のトランペット的な役割に近い気もしました。演奏は,エキストラの女性奏者でしたが,クニャーゼフさんと対照的な真っ直ぐな音を聞かせてくれました。要所要所で,バシッと入るティンパニも効果的だったと思います。

曲は第4楽章の後半からは,第1楽章の再現のようになって,力強く終了します。この曲を実演で聞くのは...調べてみると約20年ぶりのことでしたが,改めて名曲だと思いました。

演奏会の後半は,メンデルスゾーンの八重奏曲で始まりました。この演奏は指揮者なしで,オリジナルどおりの8人編成で演奏されました。この日のゲスト・コンサートミストレスは,ベルリン・フィルの町田琴和さんで,この演奏も町田さんのリードで演奏されました。この曲については,音楽堂の交流ホールなどでは何回か聞いたことがあります。間近で聞くと,編成の大きな室内楽だけあって,いつも「熱さ」を感じていたのですが,今回はコンサートホールでの演奏ということで,より伸びやさを感じました。演奏全体に余裕があり,「大人のメンデルスゾーン」といった気分を感じました(ちなみに,この作品はメンデルスゾーン16歳の時の作品,というのも驚くべきことです)。

井上道義さんは,「大編成の曲も小編成の曲も入れられるのがOEKの魅力」と語っていました。確かにそのとおりです。演奏会の「箸休め」...というには立派な演奏でしたが,ショスタコーヴィチとヒンデミットという,やや疲れる曲の間に聞くには絶好の選曲だと思いました。

# その一方,この曲については弦楽合奏版というのもあるので,それを聞いてみたかったという思いもありました。

最後に演奏されたヒンデミットの「画家マティス」は,曲名は有名なのですが,実演ではあまり演奏されない気がします。私自身,実演で聞いたのは今回が初めてでした。聞いた印象は,「CDで聞くより,ずっと楽しめる。ヒンデミットは聞き映えがする」というものでした。通常のOEKの編成にかなりの数のエキストラが加わっており(第2ヴァイオリン以下の弦楽器を2人ずつ増強,ホルンを4人に増強,トロンボーン3本,テューバ1本を追加,打楽器4人ぐらいでしょうか),強奏したときの音に安定感と芯の強さがありました。

曲は中世の宗教画からインスパイアされた3つの楽章から成っています。宗教画の雰囲気にふさわしく,ロマンティックになりすぎずに色彩感を感じさせてくれるたが良いと思いました。各楽章ともに違った雰囲気がありましたが,やはり,金管楽器を中心に華やかに盛り上がる第3楽章がいちばん聞き映えがしました。

ヒンデミットについては,もっと地味で難解な印象を持っていたのですが,オーケストラの響きに浸る喜びを感じさせてくれるような曲でした。さらに井上/OEKの演奏には,交響曲という名前に相応しい密度の高さもありました。伸びやかさだけではなく,和音の美しさであるとか,各楽器のソロの受け渡しであるとかに,バランスの良さがあるのが良いと思いました。

美しいメロディが次々出てくる,といった曲ではないので,確かに親しみにくい部分もあったのですが,もっと評価されて良い作曲家だと思いました。ヒンデミットの曲では「ウェーバーの主題による交響的変容」あたりも,そのうち聞いてみたいものです。

井上道義さんの音楽監督としての在任期間も残りわずかとなってきましたが,本日の演奏は,最高の置き土産になるような演奏ばかりだったと思います。

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コメント

o(*^▽^*)o
こんにちは。私も愛知から聞きに行きました。ショスタコーヴィッチのチェロ協奏曲は、前に聴いたのが、25年ほど前の東京サントリーホールでの井上さん指揮、ロストロポーヴィチさん独奏、新日本フィルの演奏でした。あの時は初めて聞いたので、凄い感動とショックを覚えました。今回は、井上さん指揮、クニャーゼフさんの演奏ということで、いてもたってもいられず、愛知から足を運びました。むせび泣きつつ、朗々と歌うようなチェロに魅了され、本当に感動しました。4月からは、井上さんが監督から離れられますが、今後ともOEKとつながりをもって、時々素晴らしい演目を提供してもらえるといいなと強く思いました。

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