大雪の中,金沢市アートホールで,アンサンブル・ミリムによるバッハのモテット全曲演奏会を聞いてきました。「言葉」がしっかりと伝わってくる,聞き応え十分の演奏。そしてモテットの世界は多彩だと思いました。
本日の金沢は,朝からずっと雪が降り続き,「このまま降り続くと大雪になりそう」という状況で,出かけようかどうか迷ったのですが,バッハのモテット全曲を精鋭を集めた声楽アンサンブルの演奏で聞く機会は滅多にないことなので,がんばって(?)聞いてきました。
登場したのは,指揮者を含め12人編成の声楽アンサンブル,アンサンブル・ミリムです。アンサンブル・ミリムは,バッハ・コレギウム・ジャパン,東京混声合唱団,新国立劇場合唱団など,東京にあるプロの合唱団のメンバーによるアンサンブルということで,根本卓也さんの指揮のもと,美しさと強さを兼ね備えたような,大変質の高い音楽を聞かせてくれました。最初の「一声」を聴いただけで,パッと目が覚めるような鮮やかさがありました。
バッハのモテットの全曲をまとめて聴くのは今回初めてだったのですが,6曲を連続して聴いてみて感じたのは,「色々なタイプの曲があるなぁ」ということでした。最後に演奏された「主に向かって新しい歌をうたえ」の凜とした華やかさ,11曲からなる「イエスよ,わが喜び」のシンメトリーな感じの構成感。この2曲以外も,それぞれに生き生きとした表情を持っており,退屈することなく楽しむことができました。
アンサンブル・ミリムのメンバーは,個々のメンバーの声が素晴らしいので,各曲のクライマックスの部分などでは,ちょっとした声の饗宴に参加するような趣がありました。色々な声部の声が飛び交い,絡み合いながら,大きく盛り上がっていく感じが素晴らしいと思いました。この日の会場の,金沢市アートホールで聞くのにピッタリのボリューム感でした。
プログラムの中で,指揮の根本さんは「今夜お聞きいただく演奏は古楽に慣れた人々の耳からすれば荒っぽくもあり,合唱に慣れた人々の耳からすれば滑らかさに欠けるかも知れません。しかしそれは,全てバッハが語りたかった抑揚で皆さんに語りかけるための挑戦」といったことを書れていました。確かに(ドイツ語が分かるわけではないのですが),非常に明確に言葉が伝わってくるな,と感じました。
バッハの曲自体,強調したい語句を何回も何回も繰り返していたので,「言葉をしっかり伝える」という意味で,「バッハに忠実」な演奏なのだなと思えました。そういえば,「ミリム」という単語自体,ヘブライ語の「言葉」という意味だということも思い出しました。
アンサンブル・ミリムのメンバーは,12人中3人が石川県出身ということで,これからも「第2の故郷」という感じで,金沢公演を期待したいと思います。数年前のラ・フォル・ジュルネ金沢びテーマが「バロック音楽」だったのですが,例えば,その時聞いた,モンテヴェルディの声楽曲など,是非,もう一度聞いてみたいものです。いずれにしても...次回は,もう少し気候の良い時に聞いてみたいものです。(自分を含め)皆様お疲れ様でした。
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