OEKのCD

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2018/04/14

#クリストフ・エッシェンバッハ 指揮 #トンヨン・フェスティバル・オーケストラ アジアツァー 最終日の金沢公演。スケールの大きく,新鮮さのある「新世界」 #ツィモン・バルト との共演による深すぎるガーシュイン 聞き応え十分でした

韓国のトンヨンを中心に,世界のトップアーティストが集うトンヨン国際音楽祭という音楽祭が毎年行われています。その音楽祭の中心を担うオーケストラとして結成されたのがトンヨン・フェスティバル・オーケストラです。このオーケストラのアジア・ツァーの最終日の公演が金沢の石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聴いてきました。指揮はクリストフ・エッシェンバッハでした。

このオーケストラは,2015年にもクリストフ・ポッペン指揮で金沢公演を行っているのですが,今回の注目は何と言っても,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のメンバーが大々的に参加していることです。その他,香港シンフォニエッタのメンバーも加わっています。今回のツァーでは,これらのオーケストラの出身国を巡る形で,韓国,香港,金沢で演奏会が行われました。

もう一つの注目は,現代を代表する巨匠指揮者と言ってもよい,エッシェンバッハさんがアジアの多国籍オーケストラとどういう音楽を作るのだろうか,という点です。エッシェンバッハさんは,昨年はNHK交響楽団に客演し,ブラームスの全交響曲やベートーヴェンの第九を指揮されましたが,本日演奏されたドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」もそれらに連なるような大変スケールの大きな演奏だったと思います。

「新世界」については,超人気の名曲過ぎて,奏者側からすると新鮮味が薄く感じられる可能性があります(OEKの場合は,室内オーケストラなので,滅多に演奏しませんが)。今回のトンヨン・フェスティバル・オーケストラの演奏は,一期一会的な音楽祭用のオーケストラということもあり,響きが大変新鮮だと思いました。エッシェンバッハさんの指揮については,かなり大仰な演奏になるのでは,と予想していたのですが,第2楽章,第3楽章については,むしろ速目のテンポで,大変前向きな感じのする演奏でした。

第1楽章の最初の序奏部から提示部に掛けては,所々で,深く思いに耽るような意味深い間のようなものがあり,「エッシェンバッハさんらしいなぁ」と思いましたが(特に第1楽章提示部の繰り返しをする瞬間,大見得を切るようにテンポを落としていたのが,特徴的でした),楽章が進むにつれて,次第にシンフォニックな充実感を持った,スケールの大きな音楽へと発展していくようでした。

第4楽章では力強さと同時に,途中,ファンタジーの世界に飛翔するような雰囲気がありました。最後の部分で大きく盛り上がった後,澄んだ音を長く伸ばし,フッと終了。この何とも言えない清潔感と儚さも素晴らしいなぁと思いました。

個性的な演奏という点では,ツィモン・バルトさんをソリストに迎えてのガーシュインのピアノ協奏曲が大変個性的でした。実演で聴くのは初めての曲でしたが,軽い音楽と思われがちなガーシュインをこれだけ濃く深く演奏し尽くしたバルトさんの力量に感服しました。気軽に楽しく楽しみたいという人には,重過ぎる演奏だったかもしれませんが,ここまで徹底すると,「もしもブラームスがジャズの影響を受けたら...」といった趣が感じられ,すごいと思いました。エッシェンバッハさんの演奏の方向性ともよく合ったピアニストだと思いました。このコンピならではのガーシュインだったと思います。

アンコールでは,スコット・ジョップリンのラグタイム音楽の中から「イージー・ウィナー」が演奏されました。あまりにも重厚なラグタイムで,最初はミスマッチかなと思ったのですが,次第にそれがユーモアとなって感じられました。

この2曲以外にも,トンヨン出身の作曲家ユン・イサンの「Bara」という,かなり前衛的な作品が最初に演奏されました。トンヨン国際音楽祭は,現代音楽も積極的に取り上げているようで,今回の演奏についても,確かにとっつきにくかったのですが,点描的な音を持つ,意味深さのようなものを感じることができました。

このオーケストラのメンバーの中には,元OEKのティンパニ奏者だった,トム・オケーリーさんが加わっていたのですが,相変わらず迫力十分の演奏で,各曲とも演奏全体を引き締めていたのも印象的でした。「新世界」の2楽章のイングリッシュ・ホルンの演奏も,OEKの水谷さんが担当するなど,要所要所でOEKメンバーがしっかりと活躍していたのが嬉しかったですね。

個人的には,3年前の時のように,金沢では滅多に聞けない,マーラーの交響曲辺りを取り上げて欲しいなという思いもあったのですが,聞き慣れた名曲を新鮮な響きとスケールの大きな表現で楽しむことができたのは良かったと思います。この音楽祭には,毎回,有名指揮者やソリストとが登場していますが,今後,さらにアジアを代表する音楽祭へと発展し,金沢公演の方も継続して欲しいと思います。

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