OEKのCD

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2018/07/31

#マルク・ミンコフスキ 指揮OEKの ドビュッシー #ペレアスとメリザンド 公演@石川県立音楽堂。ボルドー直輸入の映像の力が圧倒的。歌手も万全。謎は謎のままだけれども説得力十分の演奏。 #oekjp

9月からオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の芸術監督の就任する,マルク・ミンコフスキさん指揮による,ドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」の公演が石川県立音楽堂コンサートホール行われたので聞いてきました。この公演は,今年1月,ボルドー国立歌劇場で行われた公演を,ほぼそのまま持ってきた公演ということで,ミンコフスキさんの「就任記念」公演に相応しい内容でした。

今回は,「ステージ・オペラ形式」ということで,オーケストラがピットに入るのではなく,ステージに乗ったまま,その周辺で,歌手たちが歌い,演じるというスタイルでした。ボルドー公演の内容は知らないのですが,今回の公演は,映像を大々的に使っていた上,衣装の方は通常のオペラと同様でしたので,通常のオペラを観たのと同様の印象が残りました。「ペレアスとメリザンド」は,メーテルランクの象徴主義文学が原作ということで,具体的な大道具などを使って上演するのは,むしろ変な気がしますので,今回のような,半分抽象的な映像を使った演出は,この作品の性格にぴったりなのではと思いました。

何よりも,ステージ上で演奏することで,オーケストラの音や細かいニュアンスがしっかりと聞こえてくるのが良かったと思います(何と言っても「定期公演」なので)。さすがに長い作品でしたが,映像の力と相俟って,全く退屈することなく,ドビュッシーとメーテルランクの世界を楽しむことができました。

ミンコフスキさん指揮OEKは,冒頭の前奏部分から大変じっくりと演奏していました。映像を使っていたこともあり,場面ごとの切り替えに時間がかからず,音楽の流れも非常にスムーズでした。

スクリーンはステージ奥と,ステージ前(オーケストラの前)の2カ所にありました。前の方のスクリーンは,可動式の半透明(?)なので,オーケストラが透けて見えます。この2つを組み合わせることで,本当に多彩なイメージが広がっていました。映像の色合いは,基本的にモノトーンで,「森」「泉」「城」といった,メーテルランクの原作で象徴されているものが映像として投影されていました。映像の方は,動画になっており,時々揺らぎがあるのが面白い効果を出していました。

そして,公演ポスターのビジュアルにも使われていたとおり,人の顔(特に目の部分)のアップも随所に使われていました。ストーリーの中には,見つめ合うシーンや,覗いたりするシーンがありますが,そのことを象徴していたのかもしれません。

この映像については,音楽と連動して鮮やかに変化する部分もありました。特に印象的だったのは,第2幕第3場,洞窟の中に月明かりが刺すシーンで,音楽の効果と相俟って陶然としてしまいました。ドラマ展開のヤマ場と言っても良い,ゴローがペレアスを刺す場では,映像が赤く変わっていました。ここまでモノトーン中心だったので,非常にドラマティックに感じられました。

メリザンドが塔の上で髪の毛を垂らす場,ペレアスとメリザンドの「愛のシーン」などでは,「長い髪」が見事に映像化されていました。石川県立音楽堂コンサートホールのオルガンステージも効果的に使っており,「このホールにぴったりの演出(少し小林幸子風?)だな」と思いました。

今回の歌手の皆さんも素晴らしい歌を聞かせてくれました。主役のメリザンドとペレアスは,若いイメージの役柄です。特にメリザンドの方は,半分,妖精のようなイメージがあります。キアラ・スケラートさんの声には,瑞々しさの中に落ち着きがあり,安心して楽しむことができました。スタニスラフ・ドゥ・バルベラックさんによるペレアスは,より直線的で,大変瑞々しい声でした。2人とも,これから,どんどん活躍の場を広げていくことでしょう。

ゴローについては,この人が出てくるとドラマが巻き起こる感じで,意外にヴェリズモ・オペラに近いキャラクターなのではと思いました。アレクサンドル・ドゥハメルさんの声は説得力&迫力十分でした。国王アルケルについては,原作を読んだ感じでは,非常に老いたキャラクターだと思っていたのですが,ジェローム・ヴァルニエさんの歌は,どこか知的で,「いいこと言っているなぁ」という感じの賢者という印象を持ちました。その他の歌手たちも,オペラの雰囲気にぴったりだったと思います。

全曲を通じてみると,映像の力で分かりやすくなっていたとはいえ,色々と謎な部分はあります。メリザンドの死因は?その後,ゴローはどうなる?ゴローとペレアスの父はいるのか?...そういった謎を謎のまま残しつつも,音楽の方は安らかな和音で解決しているのが面白いところです。

それにしても,この最後の部分の雰囲気は素晴らしいと思いました。管楽器のデリケートな弱音が続くので,管楽器奏者の皆さんはプレッシャーだったと思いますが,精緻さと温かみが合わさったような音世界は,ミンコフスキさんならではなのかな,と思いました。

というわけで,初「ペレアスとメリザンド」をしっかりと楽しむことはできましたが,やはり,オペラは総合芸術ということで,音楽のウェイトが相対的に下がります。芸術監督就任後については,先日の記者会見で語っていたとおり,オペラ公演に期待する一方で,是非,次回はミンコフスキさん指揮による,古典派の交響曲などをストレートに聞いてみたいものだと思いました。

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コメント

7月30日、石川県立音楽堂での歌劇「ペレアスとメリザンド」を観賞しました。
衝撃的な感動でした。この素晴らしいオペラを拝見した後では、まさに管理人hsさんがTOPページで、「ドビュッシーのこの作品が金沢で演奏されること自体が事件」であるとのご指摘に、私も全く同感致します。

公演の内容については、管理人hsさんの OEKfan NEWS にあるご報告が、相変わらず詳細・適切にご報告いただいていると私などには思えますので、それ以上申し上げることはできませんが、あまりの感動に、不肖私も感想を発表したい衝動に負けました。(笑)
久しぶりに読ませていただいたhsさんのご報告に敬服し、またそれ以上に、こうして着実にご報告を積み重ねてきていただいていることに、OEKfan の一人として心から感謝申し上げます。ずっと、しばしば利用させていただいております。

私には元々オペラにはどこか馴染めないところがあります。本格的なクラシックファンはみんなオペラ好き、という言われ方も耳にしたこともあり、自分はやっぱりちょっと違うんだろうな、と思っています。しかし今回の「ペレアスとメリザンド」はとっても大好きです。しっくりきました。せっかくの機会だったのに、6月21日に開催されたという池辺晋一郎さんの解説も聞き逃し、何の予備知識も無くコンサートホールに足を運んで、「えっ、3時間?そうか、今回の定期はオペラだったんだ。」と、慌ててプログラム・ノートを走り読みしていました。

そして、hsさん仰るように、確かに「オペラは総合芸術ということで,音楽のウェイトが相対的に下がります」が、今回私にはそれでも、否それ故にこそ、その芸術性に心奪われました。
私は、日本の伝統芸能の中でも、能楽が好きです。あの、極端に捨象化された舞台と踊りが表現しているものは、我々が日常的に触れている景色ではなくて、それは「心象風景」です。そして、今回の「ペレアスとメリザンド」で表現されていた舞台もまさに、この心象風景でした。(門外漢がとても僭越な言い回しですが、)日本の能楽が、ヨーロッパでも特にフランスに於いて高く評価されてる大きな要因が分かったようにも思いました。

また、プログラムノートで飯尾洋一さんが紹介してくださった、ドビッシーが目指した「脱ワーグナー化」の結晶としての
「ペレアスとメリザンド」なのだということも、得心されました。
私はしかし、ドビッシーやラヴェルといったフランス作曲家の曲も、これまたどちらかというと従来苦手であって、最近漸く親しんできた感じでした。それなのに、今回の「ペレアスとメリザンド」は、ずっと、特に終盤に向かうほど親和感を持って聴くことができ、これも我ながらの大発見でした。

井上道義さんの音楽監督降板を残念に思っていた私でしたが、以上の経験から、新芸術監督マルク・ミンコフスキさんへの期待が大いに高まったところです。マルク・ミンコフスキ監督は遠隔地で大変と思いますが、OEKの益々の発展に夢を託します。

covariantさま
熱いメッセージをありがとうございます。今回は,オーケストラの定期公演としては異例の内容でしたが,すばらしい映像を使うことで,難解と言われている作品の「精神」のようなものがしっかり伝わってきたと思います。

オペラについては,やはり「言葉の制約」があるので,私にとっても,特に今回のような「歌の少ないオペラ」は楽しめるのだろうかとも思ったのですが,言葉を超えた視覚・聴覚で楽しむことができた気がします。

最近,人間の心の底にある「無意識」という存在に関心があるのですが,covariantさんが書かれた「心象風景」に通じる気がしました。いろいろと深読みできそうな点も,良かったと思いました。

こういうタイプのオペラが,今後も金沢ーボルドーの連携で上演されていくことを期待したいと思います。

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