今年最後の「演奏会通い」は,太田弦指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演。チェイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたこだわりのプログラムを楽しませてくれました。
今年最後の「演奏会通い」は,金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演でした。今回は,金大フィル初登場となる,太田弦さんの指揮で,チャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたプログラムが演奏されました。この曲が金沢で演奏されるのは,私の記憶にある限りでは初めてのことです。今回は,この曲と太田弦さんの指揮ぶりを楽しみに聞きに行くことにしました。
最初に演奏されたのは,シューベルトの「ロザムンデ」序曲でした。ゆっくりとした序奏の後,軽快なリズムに乗って,美しいメロディが次々出てくる曲で,個人的にとても好きな曲の一つです。太田さんはとても落ち着いた指揮ぶりで,この魅力的な作品を,すっきりと聞かせてくれました。
次に演奏されたのは,スメタナの連作交響詩「わが祖国」の中の第3曲「シャールカ」でした。「わが祖国」といえば,「モルダウ」が定番中の定番ですが,それを敢えて外すあたり,今回のプログラミングは,「一捻りあるなぁ」といったところです。この曲の演奏ですが,まず冒頭の一撃が大変鮮やかでした。非常に集中力の高い音で,一気にボヘミアの伝説に出てくる「復讐を誓った乙女」の激しい世界に引き込んでくれました。このドラマティックな雰囲気に続いて,行進曲調になったり,クラリネットの意味深なソロが出てきたり,次々と場面が変わって行きます。
太田さんの指揮は,要所要所をビシッと引き締めるメリハリの効いたもので,各部分が鮮やかに描き分けられていました。曲の最後の部分は,ホルンの不気味な信号に続いて,一気に戦闘開始という感じになり,爽快さの漂う雰囲気で締められました。実演では聞く機会はそれほど多くない曲ですが,楽しめる曲だなぁと思いました。
後半は,チャイコフスキーの交響曲第3番1曲だけでした。全体で45分ぐらいかかる大曲です。チャイコフスキーの交響曲の中では,5楽章形式であること,長調である点で,一味違った作品となっています。「ポーランド」というニックネームは,最終楽章がポロネーズになっている,という以上の意味はないようです。
第1楽章と第5楽章が堂々とした交響曲的楽章。その間に舞曲的な楽章と緩徐楽章が3つ入る構成の作品です。頻繁に演奏される後期3大交響曲に比べると,緊密感の点ではやや薄い気はしましたが,チャイコフスキーお得意のバレエ音楽を思わせるような,親しみやすさや鮮やかさのある作品だと感じました。
第1楽章,ほの暗い序奏に続き,折り目正しく進む主部に入っていきます。金大フィルの演奏は,所々でアラの見える部分はありましたが,前半の演奏以上にスケールの大きな演奏を聞かせてくれました。中間の3つの楽章は,管楽器がソリスティックに活躍する部分も多く,それぞれ楽しませてくれました。特に,軽快だけれども,とても難しそうな音の動きの続く第4楽章は,どこかメンデルスゾーンの曲の雰囲気があり面白いなと感じました。
第5楽章は,最初に出てくるテーマの颯爽とした雰囲気が良かったですね。その後,フーガ風になった後,最後は華やかに盛り上がります。太田さんの指揮ぶりからは,落ち着いた冷静さを感じました。熱狂的に聞かせるというよりは,すっきりと整理された音楽が,くっきりと盛り上がってくる語り口の上手さのようなものを感じました。
チャイコフスキーの管弦楽曲の最後の部分については,交響曲第4番に代表されるように,何回もジャンジャンジャンジャン...と連打されるパターンが多いのですが,この第3番はその中でも特に連打回数が多い曲なのでは?と思いました。ティンパニの強打がワンランク上がる中,気合いのこもった音が10回ぐらい(多分)続きました。それでもしつこさよりは,爽やかさを感じさせてくれるのが,学生オーケストラの良さだと思います。
演奏会の方は,アンコールなしでお開き。こちらも方もすっきりとしていました。金大フィルや石川県学生オーケストラの演奏会では,考えてみると,ロシアや北欧方面の交響曲が演奏される機会が多いのですが,今後もこの路線で色々な交響曲を取り上げていって欲しいものです。期待しています。
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