OEKのCD

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2018年12月

2018/12/30

今年もあとわずか。2018年のOEKの公演を定期公演を中心に振り返ってみました。 #oekjp

2018年もあとわずかです。今年も石川県立音楽堂で行われたOEKの定期公演を中心に,数多くの演奏会を楽しむことができました。この時期,音楽雑誌では,ベストコンサートを決める企画もありますが,私の場合,何事につけ「これがいちばん」を決めるのが苦手なので(正直なところ,記憶がどんどん薄れていくので...),全体的な印象を振り返ってみたいと思います。

今年のOEKの定期公演のうち,9月最初の川瀬賢太郎さん指揮のものだけは聞きに行けなかったのですが(その代わり,同一内容の大阪公演を聞きに行きました),それ以外はすべて聞くことができました。フィルハーモニーとマイスターの定期公演をタイプ分けすると,次のような感じになると思います。

A OEKのレパートリーの根幹,古典派~初期ロマン派の作品中心のプログラム
B バロック音楽など古楽系の指揮者による声楽が加わるプログラム
C 編成を少し大きくしてのロマン派プログラム
D 指揮者のこだわりのプログラム
E オペラ

OEKの定期会員に入っていれば,これらをバランス良く楽しますね。フル編成のオーケストラの定期公演の場合より,A,Bが多い分,プログラムの多様性や工夫があるのがOEKの良さです。そして,近年は,以前にも増して,世界的に著名なアーティストによる,OEK独自企画的な公演が多かったと思います。ちょうど1年前の1月にマルク・ミンコフスキさんがOEKの芸術監督になることが発表されましたが,このことがその象徴だと思います。そして,このことは,OEKの試行錯誤の30年の歴史の成果だったのではないかと思います。

そのミンコフスキさん指揮による,7/30の「ペレアスとメリザンド」定期公演は,記念碑的な公演でした。通常のオペラとは一味違う,演劇的で象徴的なオペラの魅力を理想的なキャストと見事なプロジェクションマッピングとともに伝えてくれました。その他のオペラ公演では,11/25の「リゴレット」も,金沢初演でした。青山貴さん,森麻季さんを中心に,イタリア・オペラの中でも特に魅力的な作品をしっかり楽しむことができました。

ただし,オペラというのは,やはり総合芸術なので,OEKファンとしては,上記のタイプAのOEKの根幹プログラムを色々な指揮者で楽しむことができたのが,いちばん嬉しかったですね。井上道義さんの音楽監督として最後のステージとなった3/17公演でのハイドンの「朝・昼・晩」,9月からOEKの指揮者団に加わったユベール・スダーンさん指揮による10/13公演でのハイドンの103番,シューベルトの5番,川瀬賢太郎さんによる9月定期でのハイドンの90番,ベートーヴェンの5番。その他,急遽代役で2/24公演に登場したマティアス・バーメルトさんによるシューベルトの6番,7/7の公演に登場したリープライヒさん指揮によるベートーヴェンの1番。こういった曲を,色々な解釈で楽しむことができました。

ちなみにモーツァルトの方は,5月の楽都音楽祭で,たっぷりと楽しむことができました。一見,名曲中心の「どなたでも楽しめます」といった内容でしたが,今年の場合,「室内オーケストラの競演」のようになっていたのがとても面白かったですね。

上記のタイプBの古楽型については,3/10の北谷直樹さんとラ・フォンテ・ヴェルデによる公演が,非常にスリリングでした。オリジナリティの点では,今年最高だったと思いますた。11/01の鈴木雅明さんとRIAS室内合唱団による公演は,バロック音楽ではなくメンデルスゾーンの珍しい宗教音楽がメインで演奏されました。素晴らしい合唱の力と共に,隠れた名曲を再発見するような公演になったと思います。

合唱団と共演した公演では,8/26に富山で行われた山下一史さん指揮によるベートーヴェンのミサ・ソレムニスも聞き応えがありました。前年のヴェルディに続いての「夏のミサ」公演も定着しつつあるようですね。

タイプCのロマン派的な公演については,定期公演ではありませんが,1/23に行われた佐渡裕さん指揮による兵庫PACオケとの合同公演が楽しめました。「1812年」では,立派な大砲も登場しましたね。6月の定期公演に登場した,川瀬さんは,金沢ではシューマンの「ライン」,小松ではチャイコフスキーの5番を楽しませてくれました。武満徹「系図」での谷花音さんの見事なナレーションも鮮烈な印象が残っています。

10月の小松公演では田中祐子さん指揮によるフランス・プログラム。サン=サーンスの2番はOEKにピッタリの曲でした。そして,番外編が,2/26のミンコフスキさん指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーブルによるメンデルスゾーンの3番,4番。古楽器によるちょっと不自由な感じが魅力になっているような演奏でした。

最後にタイプDの「こだわりの選曲」については,どの公演も「こだわり」なのですが,特に井上道義さん指揮による,2/3公演でのショスタコーヴィチにチェロ協奏曲とヒンデミットの「画家マティス」の組み合わせが印象的でした。クニャーゼフさんのチェロは今年登場したソリストの中でも最も強烈な印象を残してくれた気がします。
井上さんの指揮では,11/7に邦楽ホールで行われた,邦楽洋楽コラボレーション公演も井上さんらしさ満載,本領発揮といった内容でした。

6/21の下野竜也さん指揮による定期は,後半にロッシーニの序曲が並ぶ下野さんならではの選曲。吉野直子さんのハープによる,ニーノ・ロータの曲も良い曲でしたね。11/29の定期には,オリ・ムストネンさんが初登場。ムストネンさん自身の作品とヒンデミット,シベリウスなどの作品を組み合わせる,何が出てくるか分からないようなプログラム。全身アーティストといった感じのムストネンさんの魅力をたっぷうり味わうことができました。

OEKと共演したソリストでは,上記の人たちに加え,フルートのジャスミン・チェイさん,ピアニストの反田恭平さん,小山実稚恵さん,ヴァイオリンの堀米ゆず子さんなど,若手からベテランまで実力者との共演が続きました。

その他,ピアニストの平野加奈さん,OEKのフルート奏者,松木さやさんなど地元の若手奏者との共演もありました。音楽堂室内楽シリーズでは,OEKの奏者たちによる室内楽公演も楽しむこともできましたが,今後も地元のアーティストやOEK内の名手たちとの共演に期待したいと思います。聴衆からの距離の近いアーティストについては,世界的に活躍するアーティストとは違った,「応援しながら聞く」という最高の楽しみがあるのではないかと思っています。

先日,天皇誕生日の記者会見の中で天皇陛下は,平成の時代が戦争のない時代として終わりそうであることに言及されていましたが,世の中が平和であることが,芸術活動の前提だと私は思っています。来年は5月に元号が変わりますが,新しい時代も戦争のない時代が続くことを心から願っています。

2018/12/27

今年最後の「演奏会通い」は,太田弦指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演。チェイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたこだわりのプログラムを楽しませてくれました。

今年最後の「演奏会通い」は,金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演でした。今回は,金大フィル初登場となる,太田弦さんの指揮で,チャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたプログラムが演奏されました。この曲が金沢で演奏されるのは,私の記憶にある限りでは初めてのことです。今回は,この曲と太田弦さんの指揮ぶりを楽しみに聞きに行くことにしました。

最初に演奏されたのは,シューベルトの「ロザムンデ」序曲でした。ゆっくりとした序奏の後,軽快なリズムに乗って,美しいメロディが次々出てくる曲で,個人的にとても好きな曲の一つです。太田さんはとても落ち着いた指揮ぶりで,この魅力的な作品を,すっきりと聞かせてくれました。

次に演奏されたのは,スメタナの連作交響詩「わが祖国」の中の第3曲「シャールカ」でした。「わが祖国」といえば,「モルダウ」が定番中の定番ですが,それを敢えて外すあたり,今回のプログラミングは,「一捻りあるなぁ」といったところです。この曲の演奏ですが,まず冒頭の一撃が大変鮮やかでした。非常に集中力の高い音で,一気にボヘミアの伝説に出てくる「復讐を誓った乙女」の激しい世界に引き込んでくれました。このドラマティックな雰囲気に続いて,行進曲調になったり,クラリネットの意味深なソロが出てきたり,次々と場面が変わって行きます。

太田さんの指揮は,要所要所をビシッと引き締めるメリハリの効いたもので,各部分が鮮やかに描き分けられていました。曲の最後の部分は,ホルンの不気味な信号に続いて,一気に戦闘開始という感じになり,爽快さの漂う雰囲気で締められました。実演では聞く機会はそれほど多くない曲ですが,楽しめる曲だなぁと思いました。

後半は,チャイコフスキーの交響曲第3番1曲だけでした。全体で45分ぐらいかかる大曲です。チャイコフスキーの交響曲の中では,5楽章形式であること,長調である点で,一味違った作品となっています。「ポーランド」というニックネームは,最終楽章がポロネーズになっている,という以上の意味はないようです。

第1楽章と第5楽章が堂々とした交響曲的楽章。その間に舞曲的な楽章と緩徐楽章が3つ入る構成の作品です。頻繁に演奏される後期3大交響曲に比べると,緊密感の点ではやや薄い気はしましたが,チャイコフスキーお得意のバレエ音楽を思わせるような,親しみやすさや鮮やかさのある作品だと感じました。

第1楽章,ほの暗い序奏に続き,折り目正しく進む主部に入っていきます。金大フィルの演奏は,所々でアラの見える部分はありましたが,前半の演奏以上にスケールの大きな演奏を聞かせてくれました。中間の3つの楽章は,管楽器がソリスティックに活躍する部分も多く,それぞれ楽しませてくれました。特に,軽快だけれども,とても難しそうな音の動きの続く第4楽章は,どこかメンデルスゾーンの曲の雰囲気があり面白いなと感じました。

第5楽章は,最初に出てくるテーマの颯爽とした雰囲気が良かったですね。その後,フーガ風になった後,最後は華やかに盛り上がります。太田さんの指揮ぶりからは,落ち着いた冷静さを感じました。熱狂的に聞かせるというよりは,すっきりと整理された音楽が,くっきりと盛り上がってくる語り口の上手さのようなものを感じました。

チャイコフスキーの管弦楽曲の最後の部分については,交響曲第4番に代表されるように,何回もジャンジャンジャンジャン...と連打されるパターンが多いのですが,この第3番はその中でも特に連打回数が多い曲なのでは?と思いました。ティンパニの強打がワンランク上がる中,気合いのこもった音が10回ぐらい(多分)続きました。それでもしつこさよりは,爽やかさを感じさせてくれるのが,学生オーケストラの良さだと思います。

演奏会の方は,アンコールなしでお開き。こちらも方もすっきりとしていました。金大フィルや石川県学生オーケストラの演奏会では,考えてみると,ロシアや北欧方面の交響曲が演奏される機会が多いのですが,今後もこの路線で色々な交響曲を取り上げていって欲しいものです。期待しています。

2018/12/20

本日は石川県立音楽堂の #夜コン ...には行かず,西田哲学館で行われたクリスマスコンサートへ。OEKメンバーが挑んだ,ヤナーチェクの「ないしょの手紙」をはじめとした,充実の弦楽四重奏曲3曲 #oekjp

本日は石川県立音楽堂コンサートホールで行われていた(はず)の「夜クラ」第2回目に行くという選択肢もあったのですが,プログラムの素晴らしさに惹かれ,石川県西田幾多郎記念哲学館で行われた,OEKメンバーによる「かほく市クリスマスコンサート2018」を聞いてきました。

この演奏会も恒例イベントになっているのですが,「クリスマスコンサート」という楽しげな名称とは関係なく(?),30分程度の弦楽四重奏曲をたっぷりと聞かせてくれる,大変マニアックな内容の演奏会でした。登場したのは,OEKメンバーによる室内楽ではおなじみの,ヴァイオリンの松井直さん,上島淳子さん,ヴィオラの石黒靖典さん,そして,チェロの大澤明さんでした。

演奏された曲は,モーツァルトの弦楽四重奏曲第16番変ホ長調,K.428,ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番ヘ長調,op.18でした。今回も,大澤さんのトークを交えての内容でしたが,どの曲の選曲にもこだわりがあったと思います。

大澤さんのお話によると,モーツァルトの弦楽四重奏曲は,有名な「ハイドンセット」の中の1曲だけれども「その中でも演奏される頻度の少ない曲」。ヤナーチェクについては,タイトルとは裏腹に結構支離滅裂な部分もあるけれども,素晴らしい作品。ベートーヴェンについては,「遠くからだと子猫に見えるが,実は虎」という作品,ということで,超有名作はなかったのですが,各楽器の音が生々しく聞こえるホールで聞いたこともあり,どの曲も迫力に満ちていました。

モーツァルトとベートーヴェンについては,古典派音楽の到達点といった趣きのある作品で,各楽章とも主要な主題が,きっちりと展開し,絡み合うような緻密さを感じました。モーツァルトの方は,音の動きに半音階的な動きを感じさせる部分が多く,どこか古典派音楽を超えるような部分もありました。

ベートーヴェンの方は,まさに大澤さんの言葉どおりの作品で,第1楽章の冒頭,清澄な感じのユニゾンで始まった後,中期の作品を思わせるようなモチーフの積み重ねが続きました。クライマックスでは,切実な声を上げるように感情が爆発する部分もあり,やはりベートーヴェンだなぁと思いました。

前述のとおり各楽器の音が生々しく聞こえるホールだったので,少々疲れる部分はありましたが,第2ヴァイオリンとヴィオラの内声部の音の動きがしっかり聞こえ,第1ヴァイオリンがしっかりと歌い上げ,チェロがビシッと引き締め...という感じで臨場感たっぷりの演奏を楽しむことができました。

2曲目に演奏された,ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番の方は,かっちりとまとまった古典派音楽とは対照的に,どの楽章についても狂気に満ちた,この世から一歩踏み外したような世界が広がっていました。ヤナーチェクの音楽は,モーツァルト,ベートーヴェンに比べると,確かにとっつきにくかったのですが,音楽というよりは,常に何かのストーリーを語っているような表現力の多彩さを感じました。

最晩年のヤナーチェクの恋愛がモチーフになった作品で,技巧面でも一筋縄では行かない難曲であることは確かですが,OEKメンバーの演奏には,その難曲に正面から挑むような迫力がありました。聞いているうちに,クリスマス気分も吹っ飛びそうでしたが,こういうスタンスも良いですね。

ただし,今回の演奏会では、開始前のプレコンサートとして賛美歌が演奏され,さらにアンコールではバッハの「主よ人の望みの喜びよ」が演奏されました。しっかりとクリスマス直前であることを思い出すこともできました。

この演奏会も恒例になっているようですが,今後もマニアック路線で,色々な弦楽四重奏を楽しませて欲しいと思います。

2018/12/09

「金沢でメサイアを歌い続けて70年」#北陸聖歌合唱団 と #柳澤寿男 指揮 #OEK によるメサイア全曲公演。70年に相応しい充実感のある演奏 #oekjp

本日は,「金沢でメサイアを歌い続けて70年」となる北陸聖歌合唱団と,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)による,年末恒例のヘンデル作曲オラトリオ「メサイア」公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。記念の年ということで,全曲が演奏されました。指揮は,「メサイア」を指揮するのは2回目の登場となる柳澤寿男さんでした。

北陸聖歌合唱団と柳澤さんのつながりは,過去の歴代指揮者の中でも特に強いようで,今回の全曲演奏も見事な演奏でした。柳澤さんの作る音楽は正統的で,全曲を通じて,がっちりと引き締まった充実感を感じました。テンポ設定も中庸だったと思いますが,この曲の合唱部分によく出てくる,メリスマ風の細かい音の動きの続く部分などでは,妥協しないような速いテンポでした。合唱団の皆さんは大変だったと思いますが,その緊迫感が一つの聞き所になっていたと思いました。

その一方,70年記念ということで,合唱団の人数は120名編成でしたので,スケール感を感じさせる余裕のある声を聞かせてくれました。ハレルヤ・コーラスでの,クライマックスに向かって,充実感を高めていく構成も良かったのですが,最後のアーメン・コーラスでの染み渡るような清澄な気分も素晴らしいと思いました。宗教音楽のクライマックスにぴったりの表現だったと思いました。

今回は全曲演奏だったのですが,休憩の方は第2部の途中に1回入るだけでした。2枚組CDの「メサイア」と同じような分け方だったと思います。その分,第1部と第2部,第2部と第3部に切り替わる部分が入ってしまうのですが,連続的に聞くことで,その空気感の違いが実感できました。特にイエスの生誕を描いたクリスマス気分の溢れる第1部と受難を描いた第2部については,急に湿気を沢山含んだ曇り空(本日の金沢の空のことですが)に切り替わったようなコントラストを感じました。

ソリストの方については,特に女声が充実していたと思います。ソプラノの朝倉あづささんは,70年記念公演には「外せない」ですね。プログラムのプロフィールを読むと,この公演に登場するのは27回目とのことで,平成になってからはほぼフル出演という感じだと思います。その声の雰囲気がずっと変わらないのは,本当に素晴らしいと思います。北陸聖歌合唱団の「メサイア」公演に無くてはならない存在だと改めて思いました。

ソプラノの出てくる曲は,どの曲も良いのですが,特に第3部の最初の曲(全曲演奏以外だとカットされることもあるのですが)が好きです。この曲を聞くと,「メサイアも終わりに近づいてきたな,今年も終わりに近づいてきたな」と少ししんみりとした気分になります。

メゾ・ソプラノは田中展子さんでした。メサイア公演には初登場の気がしますが,今回のソリスト4人の中で,特に素晴らしい声を聞かせてくれたと思いました。まず声にしっとりとした落ち着きと品の良い美しさがあり,どの曲を聞いても,美しいなぁと思いました。いちばんの聞かせどころの,第2部の最初のアリアも深さと同時に,厳しさが伝わってきました。メサイアの中には,オーケストラの伴奏部に付点音符が入った音型が連続する箇所が結構あるのですが,柳澤さん指揮は,この付点音符の部分については,例年に増して,厳しく引き締まった感じで演奏していたように思えました。このアリアでの田中さんの声をさらに引き立てていたと感じました。

テノールの志田雄啓さんも,「メサイア」公演ではお馴染みの方で,大らかな表現を聞かせてくれましたが,今回は全体的に高音部が苦しそうな感じだったのが,少々気になりました。バスの大塚博章さんがこの公演に登場するのは今回が初めてだったと思います。どの曲も美しく安定感のある歌を聞かせてくれましたが,少々ソツがなさ過ぎるかな,と贅沢なことを感じました。

さすがに全曲公演となると,休憩時間を合わせると3時間コースになり,少々疲れましたが,70年記念に相応しい充実した公演だったと思います。

PS. 本日は「70年の公演記録」をまとめたリーフレットも配布されました。そのうち何回行っているのか,カウントしてみたところ,丁度20回でした。私にとっても記念の公演ということになります。

2018/12/08

本日は,#松井慶太 指揮OEK&#ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリ さんよる #PFU クリスマス・チャリティコンサートを聞いてきました。OEKにぴったりの選曲。ルシエンヌさんのトランペットはクールでした #oekjp

本日は午後から,毎年恒例のPFUクリスマス・チャリティコンサートを聞いてきました。今年のテーマは,「ラッパが鳴り響くところ」ということで,ハイドンのトランペット協奏曲,ヘンデルの「水上の音楽」第2組曲を中心に,バロック音楽から古典派音楽が演奏されました。演奏は,松井慶太さん指揮OEKで,ハイドンの独奏者として,若手トランペット奏者のルシエンヌ・ルノダン=ヴァリが登場しました。

演奏会は,ヘンデルの「水上の音楽」第2組曲で始まりました。この組曲は,ラッパ特にトランペットとホルンが活躍する曲集です。今回は古楽奏法という感じではなく,弦楽器などは,ほぼ通常の人数でした(第1ヴァイオリンは8人でした)。松井さん指揮OEKの演奏にも大らかさがありました。次の曲は,この日唯一管楽器の入らない,バッハのブランデンブルク協奏曲第3番でした。ヘンデルの「水上の音楽」第2番は,特にトランペットの負担が大きい曲なので,「中休み」といったところでしょうか。

この曲を実演で聞く機会は,以外に少ないのですが,CDなどで聞くより,実演で聞く方が楽しめる作品だと思いました。編成が,ヴァイオリン3人,ヴィオラ3人,チェロ3人+コントラバス1人という独特の編成で,ノリの良いリズムに乗って,合奏する部分と,次々に色々な人がソロを取っていく部分が交錯します。特に実演で聞くと,ヴィオラのダニイル・グリシンさんの迫力が際立つと思いました。

第2楽章は,楽譜的には「2つの和音だけ」のはずですが,本日はチェンバロの辰巳美納子さん(プログラムには記載が無かったのですが,メンバー表が欲しかったですね)が,センスの良い見事なソロを聞かせてくれました。チェンバロの音もしっかりと聞こえてくるのが,石川県立音楽堂コンサートホールの良さだと思います。

ちなみにこの曲ですが,3つの弦楽器のパートが3人ずつ。番号も第3番ということで,3へのこだわりを感じさせる作品ですね。バッハの生誕333年の年に聞くのにぴったりの作品といえます。

前半の最後は,この日のハイライトといってもよい,ルシエンヌさんの独奏によるハイドンのトランペット協奏曲が演奏されました。ルシエンヌさんは,まだ10代の女性トランペット奏者で,来年の7月のOEKの定期公演に出演し,辻井伸行さんとともにショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を演奏する予定の注目のアーティストです。

とても小柄な方で(指揮者の松井さんが非常に長身だったので,そう見えたのかもしれませんが),ステージでの動作も「今どきの若者」という感じでしたが,その音は大変柔らかく,演奏のスタイルもセンスの良さを感じさせるものでした。「ハイドン×トランペット」といえば,明るく健康的という印象がありますが,ルノシエンヌさんの演奏には,少し憂いを含んだような抑制した感じがあり,しっかりと「らしさ」を持っている奏者だと思いました。もちろん伸びやかさもあるのですが,所々で,フッと陰りを見せるようなサラリとした感触を見せるのが大変威力でした。

アンコールでは,デューク・エリントンの曲をブルーなムードたっぷりに演奏しましたが,ハイドンの方も,ちょっとブルーさのあるクールなハイドンだったと思います。来年7月のショスタコーヴィチも大変楽しみです。

後半はハイドンの交響曲第104番「ロンドン」が演奏されました。この曲については,特にトランペットが大活躍...というわけではありませんが,OEKの編成にピッタリのお得意の曲です。松井さんの作る音楽は,コンパクトに引き締まっており,古典派音楽にぴったりの雰囲気がありました。第2楽章は短調の部分が時々挟まる,ハイドンのお得意のパターンですが,軽やかさの中に落ち着きと深さがあり,大変聞き応えがありました。

新鮮さのある第3楽書に続き,キビキビと展開していく第4楽章へ。毎回思うのですが,OEKのハイドンは良いですねぇ。OEKの良さがしっかり引き出された,とても気持ちの良いハイドンでした。

アンコールではオーケストラとチェンバロのために編曲された,「きよしこの夜」が演奏されてお開きになりました。演奏会の長さはやや短めでしたが,とても気持ちよく楽しめた演奏会でした。

2018/12/04

#浅井隆宏 ピアノリサイタル@金沢市アートホール シューベルトのピアノ・ソナタ第21番を核とした素晴らしいプログラム。期待通りの充実感のある演奏会でした。

本日は,ピアニストの浅井隆宏さんのリサイタルが金沢市アートホールで行われたので,聞いてきました。浅井さんは,OEKのヴァイオリン奏者,青木恵音さん,チェリストの富田祥さんとTrio RFR(アルファ)を結成し,室内楽の分野で活躍されていますが,金沢でソロ・リサイタルを聞くのは今回が初めてです。

今回聞きに行こうと思ったのは,何と言ってもプログラムの素晴らしさです。後半にシューベルトの最後のピアノ・ソナタ,第21番。前半はハイドンのピアノ・ソナタ,ブラームスの4つのバラードop.10にベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番。特にシューベルトとベートーヴェンの最晩年の作品の組み合わせというのに,惹かれました。

浅井さんは,大変立派な体格の方ですが,その雰囲気どおりの安定感のある音楽を聞かせてくれました。ピアノの音には力と輝きがあり,一見シンプルなハイドンの音楽からも十分な聞き応えがありました。

ブラームスの4つのバラードは,ブラームスの若い時代の作品ですが,音楽自体は非常に充実しています。浅井さんの演奏にも,落ち着いた語り口で叙事詩を読み聞かせるような大らかさを感じました。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番は,変奏曲となっている第3楽章が特に聞きものでした。プログラムの解説によると,バッハのゴルトベルク変奏曲との関連性のある楽章とのことでした。浅井さんの演奏には,一本筋が通ったような安定感があり,多彩な変奏が続いた後に主題が再現すると,「確かにゴルトベルクに似ているかも」と実感しました。特にクライマックスとなっていた第6変奏での,力強いトリルを中心とした盛り上がりが素晴らしいと思いました。

後半はシューベルトのピアノ・ソナタ第21番のみが演奏されました。この曲を実演で聞くのは2回目のことですが,やはり,シューベルトの晩年のソナタには,天国的と言っても良い魅力があると感じました。

浅井さんのテンポ設定は,第1楽章などは比較的速めで,個人的には,もう少し遅いテンポで,耽美的な雰囲気がある演奏が好みだったのですが,停滞することなく,美しく率直に音楽が流れるシューベルトも良いなぁと思いました。途中,少々音楽が止まりそうな部分はありましたが(やはり難曲なのだと思います),大曲をじっくりと味わうことができました。

第2楽章以降も停滞することはなく,叙情的な気分の中から,時折,美しい音がキラリと光るような魅力的な音楽を聞かせてくれました。第4楽章は,最後のコーダの部分だけ,急にテンポが速くなって,唐突に終わる感じはあるのですが,それもまた,若くして亡くなったシューベルトの性急さを体現しているようにも感じられました。

というわけで,金沢では滅多に実演では聞くことのできない,シューベルトの21番を中心に,充実のプログラムを期待どおりに楽しむことができました。浅井さんには,今回のような路線で,金沢でリサイタルを定期的に行い,息長く,熟成していって欲しいなぁと思います。個人的には,シューベルトのピアノ・ソナタ第18番を一度,実演で聞くのが夢なので(この曲,何故か中学生の頃から大好きなのです),是非,浅井さんに期待したいと思います。

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