本日は石川県立音楽堂の #夜コン ...には行かず,西田哲学館で行われたクリスマスコンサートへ。OEKメンバーが挑んだ,ヤナーチェクの「ないしょの手紙」をはじめとした,充実の弦楽四重奏曲3曲 #oekjp
本日は石川県立音楽堂コンサートホールで行われていた(はず)の「夜クラ」第2回目に行くという選択肢もあったのですが,プログラムの素晴らしさに惹かれ,石川県西田幾多郎記念哲学館で行われた,OEKメンバーによる「かほく市クリスマスコンサート2018」を聞いてきました。
この演奏会も恒例イベントになっているのですが,「クリスマスコンサート」という楽しげな名称とは関係なく(?),30分程度の弦楽四重奏曲をたっぷりと聞かせてくれる,大変マニアックな内容の演奏会でした。登場したのは,OEKメンバーによる室内楽ではおなじみの,ヴァイオリンの松井直さん,上島淳子さん,ヴィオラの石黒靖典さん,そして,チェロの大澤明さんでした。
演奏された曲は,モーツァルトの弦楽四重奏曲第16番変ホ長調,K.428,ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番ヘ長調,op.18でした。今回も,大澤さんのトークを交えての内容でしたが,どの曲の選曲にもこだわりがあったと思います。
大澤さんのお話によると,モーツァルトの弦楽四重奏曲は,有名な「ハイドンセット」の中の1曲だけれども「その中でも演奏される頻度の少ない曲」。ヤナーチェクについては,タイトルとは裏腹に結構支離滅裂な部分もあるけれども,素晴らしい作品。ベートーヴェンについては,「遠くからだと子猫に見えるが,実は虎」という作品,ということで,超有名作はなかったのですが,各楽器の音が生々しく聞こえるホールで聞いたこともあり,どの曲も迫力に満ちていました。
モーツァルトとベートーヴェンについては,古典派音楽の到達点といった趣きのある作品で,各楽章とも主要な主題が,きっちりと展開し,絡み合うような緻密さを感じました。モーツァルトの方は,音の動きに半音階的な動きを感じさせる部分が多く,どこか古典派音楽を超えるような部分もありました。
ベートーヴェンの方は,まさに大澤さんの言葉どおりの作品で,第1楽章の冒頭,清澄な感じのユニゾンで始まった後,中期の作品を思わせるようなモチーフの積み重ねが続きました。クライマックスでは,切実な声を上げるように感情が爆発する部分もあり,やはりベートーヴェンだなぁと思いました。
前述のとおり各楽器の音が生々しく聞こえるホールだったので,少々疲れる部分はありましたが,第2ヴァイオリンとヴィオラの内声部の音の動きがしっかり聞こえ,第1ヴァイオリンがしっかりと歌い上げ,チェロがビシッと引き締め...という感じで臨場感たっぷりの演奏を楽しむことができました。
2曲目に演奏された,ヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番の方は,かっちりとまとまった古典派音楽とは対照的に,どの楽章についても狂気に満ちた,この世から一歩踏み外したような世界が広がっていました。ヤナーチェクの音楽は,モーツァルト,ベートーヴェンに比べると,確かにとっつきにくかったのですが,音楽というよりは,常に何かのストーリーを語っているような表現力の多彩さを感じました。
最晩年のヤナーチェクの恋愛がモチーフになった作品で,技巧面でも一筋縄では行かない難曲であることは確かですが,OEKメンバーの演奏には,その難曲に正面から挑むような迫力がありました。聞いているうちに,クリスマス気分も吹っ飛びそうでしたが,こういうスタンスも良いですね。
ただし,今回の演奏会では、開始前のプレコンサートとして賛美歌が演奏され,さらにアンコールではバッハの「主よ人の望みの喜びよ」が演奏されました。しっかりとクリスマス直前であることを思い出すこともできました。
この演奏会も恒例になっているようですが,今後もマニアック路線で,色々な弦楽四重奏を楽しませて欲しいと思います。
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