OEKのCD

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2018年3月4日 - 2018年3月10日

2018/03/10

OEK定期公演M テーマはドレスデンとパスティッチョ,#北谷直樹 さんらしく,刺激とサプライズに満ちた素晴らしい選曲と演奏。そして #ラフォンテヴェルデ の透明な声を交えた晴れ晴れとした祈りの音楽 #oekjp

OEK定期公演3月のマイスターシリーズには,北谷直樹さんが指揮・チェンバロで登場しました。北谷さんも,OEKの古楽担当という感じですっかり常連になっています。毎回,意外性のある選曲と知的で熱い演奏を聞かせてくれていますが,この日の公演も,その期待どおりの素晴らしい内容でした。

今シーズンのマイスター定期は,「ドイツ音楽紀行」ということで,毎回,ドイツの都市がテーマになっています。今回はドレスデンがテーマでした。これまでのマイスターシリーズでは,それほど「お題」に忠実な感じはしませんでしたが,さすが北谷さん。しっかりドレスデンにちなんだ曲を並べてきました。

ドレスデンが音楽都市として知られるようになったのは,17~18世紀のザクセン公,アウグスト2世の存在が大きいということで,このアウグスト2世の時代のドレスデンにちなんだ作品がプログラムの柱になっていました。

ヴェラチーニ,ゼレンカといった知り人ぞしるという作曲家の曲が,前半の最初に演奏されましたが,それぞれ大変楽しめる作品でした。ゼレンカの2つのオーボエ,ファゴットと通奏低音のためのソナタ第5番は,ほとんど「室内楽」の演奏でしたが,プログラムの解説に書いてあったとおり,超絶技巧が延々と続くようなパッセージがあるなど,大変充実した作品でした。こういう新たなレパートリーを発掘してくれるのは,OEKファンとしてもうれしいですね。いずれにしても,水谷さん,加納さん,柳浦さん,お疲れ様でした。

続くヴィヴァルディの協奏曲も大変魅力的な作品でした。最初のヴェラチーニ同様,ト短調で統一感が図られており,曲の最初の部分を聞いただけで,ちょっとロマンティックな気分を感じさせるほど,魅力的な雰囲気がありました。弱音で始まった後,一気に音が爆発するようなコントラストも印象的でした。

前半ではOEKのメンバー立ったまま演奏していましたが(もしかしたら曲ごとに編成が違っていたので,その影響もあったのかもしれません),オーセンティックな雰囲気と同時に,演奏全体にダイナミックさがあると思いました。

前半の最後は,「焼き直されたヴィヴァルディ」ということで,非常に凝った作りになっていました。自分または他人の作品を寄せ集めて新しい作品を作ることを「パスティッチョ」というとのことですが,北谷さんの感性でヴィヴァルディを再構成するとこうなるといった,面白い試みになっていました。

まず,バッハがヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲をオルガン独奏曲に編曲したものの第1楽章を,北谷さんがさらにチェンバロ協奏曲にアレンジしたものが演奏されました。ここでは北谷さんのチェンバロの涼しげで鮮やかな妙技を楽しむことができました。

続いて,ヴィヴァルディのオペラのアリアを北谷さんが,オルガンと弦楽のための曲に編曲したものが演奏されました。今度は北谷さんは小型のオルガンを演奏しながらの指揮でした。オルガンが加わることで,しっとりとした哀感がさらに深まっていたと思いました。

さてその後ですが,マックス・リヒターという現代の作曲家が,ヴィヴァルディの「四季」にインスパイアされて「改造」した曲の中から3つの楽章が演奏されました。おなじみのフレーズの一部を,繰り返し繰り返し演奏し,ヴィヴァルディがミニマルミュージック化したようなスリリングな面白さがありました。曲の終わり方は,予定調和的ではなく,スパっと断ち切れるようになっていたのが現代的でした。ここでは,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんのソロが圧倒的でした。自然に熱気が高まっていくような迫力たっぷりの演奏でした。

後半は,バッハのロ短調ミサの抜粋が演奏されました。最初プログラムを見た時,「なぜ抜粋なのだろう?」と疑問に思ったのですが,もともとこの曲は,ドレスデン王のために書かれたパスティッチョ的な作品ということで,最晩年のバッハが自分の過去の作品を寄せ集めて作ったような作品です。寄せ集めと言いつつ,非常に完成度が高いのですが,今回は,北谷さん自身がそれを再構成したプログラムと言えます。

演奏された曲は「グローリア」の一部,「サンクトクス」,「アニュスデイ」がベースでした。合唱の方は大編成の合唱団ではなく,声楽アンサンブル,ラ・フォンテヴェルデのメンバーを中心に古楽界で活躍する歌手を16名集めた精鋭でした。OEKの演奏同様,すっきりとした透明感のある素晴らしい合唱でした。

トランペット3本が加わる,グローリアの最初から祝祭的な気分がありましたが,北谷さんの選曲の意図としては,声楽を聞かせるだけではなく,OEKメンバー,特に管楽器メンバーを協奏曲的に活躍させようという意図も感じました。フルート2本が活躍する曲,オーボエ3本が入る曲,そして,狩のホルンが大活躍する曲など,オーケストラの定期公演に相応しい形に再構成されていたと思いました。

最後の曲は,オリジナルの全曲の最後でもある「Dona nobis pacem」(私たちに平和を与えたまえ)でした。平和そのものを感じさせてくれるような澄んだ響きの合唱に落ち着きのあるOEKの響きが加わり,現在,平和に暮らしていることのありがたみをしみじみとかみしめました。

2011年3月11日,北谷さんは当初,福島にいるはずだったのですが,たまたまスケジュールを変更し東京に居たとのことです。「今生かされているという感覚とそれに感謝する気持ち」とプログラムに書かれていましたが,そのことがしっかりと伝わってくる演奏だったと思います。

北谷さんは,古楽演奏の専門家ですが,学究的な冷たさはなく,演奏の透明感をベースとしつつ,常にお客さんを楽しませよう,演奏を盛り上げようという,熱い前向きな気持ちが伝わってきます。今回も,その通りの気分が伝わってくる,素晴らしい公演だったと思います。

2018/03/06

#サカリ・オラモ 指揮 #BBC交響楽団 金沢公演。ほれぼれとするくらい堂々としたブラームスの交響曲第1番。アリーナ・ポゴストキーナさんのほの暗いヴァイオリンも魅力的でした。

この時期恒例の東芝グランドコンサートが石川県立音楽堂で行われたので聞いてきました。今年は,サカリ・オラモ指揮BBC交響楽団でした。2月の後半から,「コンサートに行き過ぎ」なのですが,これまで聞いたことのないオーケストラが来ると,やはり行きたくなります。

プログラムの方は,チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第1番がメインということで,やや「名曲過ぎる」プログラムでしたが,終わって見ると,「やっぱりブラームスは良い」「チャイコフスキーも良い」と大満足の内容でした。何より,もったいぶったところのないオラモさんの音楽作りと,BBC交響楽団のバランスの良さと芯の強さのあるサウンドが素晴らしいと思いました。

最初に演奏されたのは,ブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ」の「4つの産みの間奏曲」と「パッサカリア」でした。初めて聞く曲だったこともあり,やや取っつきにくいところはあったのですが,大編成オーケストラによる多彩な響きを楽しむことができました。

続いて,アリーナ・ポゴストキーナさんの独奏で,チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。ポゴストキーナさんの演奏は,非常に正統的で,センチメンタルな気分に溺れるようなところはありませんでした。音程も技巧も確かで,音楽が崩れることはなく,全体に安定感がありました。ただし,まじめで堅苦しい演奏というわけではなく,音色自体にほの暗い情感が常に漂っていました。そこが大変魅力的でした。オラモさん指揮の大船に乗ったような安心感のある演奏と共に,さりげないけれども,深さの残る演奏を聞かせてくれました。

後半はブラームスの交響曲第1番が演奏されました。金沢でこの曲を聞く場合,OEK+αぐらいの編成で聞くことが多いので,コントラバスが8本も入るプロの大編成オーケストラで聞くこと自体,私にとっては新鮮なことです。BBC交響楽団の音は,重厚なサウンドという感じではなく,しっかりとした芯のまわりに適度に肉が付いているような,バランスの良さを感じました(例によって,3階席で聞いていたせいもあるかもしれなせん)。

オラモさんのテンポは,全く慌てる部分はなく,全曲に渡って,非常に堂々とした音楽を聞かせてくれました。現代ではかえって珍しいほどの,惚れ惚れするほど構えの大きな演奏だったと思います。ただし,音楽が盛り上がる部分でも,これ見よがしに大げさな表現を取るような感じではなく,常に颯爽とした爽やかさも同居していました。

第1楽章冒頭のティンパニの連打の部分から,安定感と同時にエネルギーを感じさせる演奏でした。弦楽器の清々しい響き,管楽器のソリスティックな活躍も印象的でした。特にソリストが演奏しているように雄弁なフルートの音が特に素晴らしいと思いました。

第4楽章の終盤をはじめとして,音楽のどの部分を取っても,もったいぶったようなところはなく,変わったことはしていないのに,音楽を気持ちよく表現し切ったような爽快さが常に感じられました。

オラモさんの指揮からは,巨匠指揮者のような風格と安心感を感じました。第4楽章のコーダの部分で,金管楽器を中止にコラール風のメロディを演奏する部分では,本当に堂々と聞かせてくれました。「待ってました。たっぷりと!」と声を掛けたくなる感じでした。

上述のとおり「名曲過ぎる」プログラムでしたが,その名曲の名に相応しい,堂々たる演奏を楽しむことのできた演奏会でした。

2018/03/04

OEKと石川県内の大学オーケストラメンバーによる合同公演 #カレッジコンサート。今年は #田中祐子 さん指揮による,とても気っ風の良い,ボロディン,プロコフィエフ,ドヴォルザークを楽しみました。春らしい気分にさせてくれました #oekjp

非常に春らしい好天になった本日,OEKと石川県内の大学オーケストラのメンバーとが共演するカレッジコンサートを石川県立音楽堂で聞いてきました。このコンサートも14回目となります。今回の指揮者は,4月からOEKの指揮者(「指揮者」という肩書きです)に就任する田中祐子さんでした。

田中さんは,過去何回かOEKを指揮されていますが,私にとっては田中さんの指揮に接するのは今回が初めてでした。そのお披露目を兼ねたような公演だったかもしれません。

今回のプログラムは,前半の合同演奏がボロディンの「ダッタン人の踊り」,後半の合同演奏がドヴォルザークの交響曲第8番。その間にOEKの単独演奏でプロコフィエフの古典交響曲が演奏されました。

ボロディンの方は,OEKメンバーが首席ということで,随所に出てくる木管楽器の音をはじめ,色彩的で躍動感のある演奏を聞かせてくれました。この曲については,管弦楽版で演奏されることが多いのですが,今回は特別にOEK合唱団メンバーを加えての,オリジナル版で演奏されました。

合唱団のメンバーは,やや男声が少ないかなという印象はありましたが,その声には生々しい迫力があり,盛大に加わる打楽器群とともに,エキゾティックなムードをさらに盛り上げてくれました。田中さんの指揮ぶりは,大変明快で,滅多に聞くことのできない合唱版を存分に楽しませてくれました。

ドヴォルザークの交響曲第8番の方は,大学オーケストラのメンバーが首席奏者になっていました。この曲は大学オーケストラが比較的よく演奏する曲で,数年前のラ・フォル・ジュルネ金沢で,井上道義さん指揮京都大学交響楽団によるみごとな演奏を聞いたことを思い出します。

本日の演奏も素晴らしいものでした。田中さんの指揮はここでも明快で,じっくり演奏する部分と熱く燃える部分とのメリハリがしっかりと付けられていました。各楽章ごとにしっかりと盛り上がりがあり,豊かな歌と硬質に引き締まった若々しいサウンドを楽しませてくれました。

やはり最終楽章が特に楽しめました。演奏前のトークで,OEKのチェロの大澤さんからチェロパートに向けて「3席に居る好きな女性に届くように弾いてみよう」という素晴らしいアドバイスがあったことが紹介されましたが,チェロで演奏される主題は,「なるほど」と思わせる雄弁さでした。フルートの難しいソロも,急速なテンポだったにも関わらず,しっかりと吹ききってくれました。

この楽章については,チェロたフルート以外にも,冒頭のトランペットの爽快なファンファーレ,ホルンの強烈なトリル,童謡「黄金虫」を思わせる部分...など色々とチェックポイントがあるので,冬季五輪のフィギュアスケートの演技を見るように,「ここもクリア,次は4回転...」という感じで,がんばれと応援しながら聞いてしまいました(私だけだと思いますが)。最後の熱気を込めたコーダに至って,充実した響きで締めくくられた時には,プーさんのぬいぐるみ(?)でも投げ込みたいような気分になりました。

田中さんの指揮ぶりは大変分かりやすく,全曲を通じて,気っ風の良い音楽を聞かせてくれました。演奏前に学生指揮者の方へのインタビューがあったのですが,そこでの話の引き出し方もとても面白く,学生オーケストラとの相性は抜群だと思いました。

この両曲の間に,OEKの単独演奏でプロコフィエフの古典交響曲が演奏されました。この曲については,OEKの十八番ということで,安心して楽しむことができました。コンパクトな交響曲という印象のある曲ですが,比較的じっくりしたテンポで,細部にいたるまで明快に聞かせてくれました。最終楽章は急速なテンポでしたが,この楽章では,フルートをはじめとして,OEKの各パートがソリスティックに活躍し,オーケストラのための協奏曲的な,華やかさを感じました。

演奏時間的には比較的短い演奏会でしたが,ようやく春らしくなってきた季節にぴったりの新鮮さ溢れる演奏でした。今後,田中祐子さんがOEKを指揮する機会はどんどん増えてくると思います。その期待が膨らんだ演奏会でした。

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