OEKのCD

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2018年11月4日 - 2018年11月10日

2018/11/10

#石川県立音楽堂 で #左手のピアニストの為の公開オーディション を聞いてきました。6人の個性と左手のみによる表現の幅広さを実感てきました。#ガル祭 での再会を楽しみにしています

本日は,いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2019の関連企画として行われた「左手のピアニストの為の公開オーディション」を聞いてきました。このオーディションは,「ピアニストを目指していたが,右手の病気や障がいなどで両手での演奏が困難になった人を対象に。世界に呼びかけ開かれた未来を創るお手伝いをする」ことを趣旨として行われたもので,優秀者は,来春の楽都音楽祭で,オーケストラと協奏曲を共演またはソリストとして出演することができます。位置づけとしては,オリンピックに対してのパラリンピックに該当するようなオーディションということになります。

音楽の世界とスポーツの世界が同様なのかは,人によって考え方は違うと思いますが,レパートリーが限られる「左手のピアニスト」のために機会を提供することは意義のあることだと思います。ただし,今回審査委員長を務めた,舘野泉さんの講評にも出てきたとおり,左手のピアニストということを過度に強調する必要もありません。左手のピアニストだからこその,「思いの強さ」であるとか「表現意欲」というものが感じられるのでは...と思い,今回聞きに行くことにしました。

今回登場したのは6人のピアニストでした。国際的に参加者を募集をしていたこともあり,地元出身は1名で,海外からの参加者も1名ありました。そのこともあり,大変水準の高い演奏ばかりだったと思います。

課題曲はマグヌッソン「アイスランドの風景」という組曲の中の「鳥の目から見た高地」「オーロラの舞」の2曲。それに各自が選んだ自由曲を加え,合計15分程度で演奏するというものです。自由曲の方は,「左手のためのピアノ曲」の定番である,スクリャービンのop.9-2を演奏した人が3人いました。それ以外の方は,シュールホフ,吉松隆,サンカンの作品を自由曲で演奏しました。

ほとんど聞いたことのない作品ばかりを連続して聞くことになったのですが,全く退屈することがありませんでした。左手だけで弾くことによるシンプルなメロディの美しさと,両手で演奏している?と思わせるような幅広い音域を使った急速のパッセージの対比など,大変変化に富んだ演奏を楽しむことができました。

課題曲は6回同じ曲を聞き,スクリャービンも3回聞いたのですが,それぞれの個性というか演奏の味わいの違いがあるのも面白かったですね。オーディションをテーマにしたミュージカルに「コーラスライン」という名作があります。このミュージカルでは,それぞれ名も無い応募者たちが,自分の過去を語っていくシーンがありますが,今回,プログラムのプロフィールに書かれた「左手で演奏する理由」という項目を読みながら,6人の奏者の「人生」を思い浮かべ,それと重ね合わせて聞いてしまいました。

今回面白かったのは(これはオーディションやコンクール全般に言えるのかもしれませんが),審査員の講評を生の声で聞けたことです。今回の審査員は,舘野泉さんに加え,作曲家の一柳慧さん,吉松隆さんという豪華メンバーでしたが,それぞれの「聴き方」が分かり,「へぇ,そうなのか」と感じる部分がありました。特に舘野さんは,「細かい部分にこだわりすぎず,大きな音楽を作って欲しい」ということを語っており,そのことが審査にも反映していたようです。

今回の結果ですが,車椅子に座ったまま演奏された,月足さおりさん(音がとても美しいと思いました)と瀬川泰代さん(明るい笑顔にぴったりの演奏でした)が最優秀に選ばれ。次点のような感じで,児島顕一郎さんが最優秀審査員賞(個人的にはこの方の自由曲の演奏がいちばん印象に残りました),Stefan Warzyckiさんが優秀賞に選ばれました。

それ以外にも「左手のため」の「この作品」については,誰にも負けないという思いの強さを感じる箇所がいくつかありました。選考された結果については,私が感じた結果とは少し違っていたのですが,来春のガル祭でどういう演奏を聞かせてくれるのか楽しみにしたいと思います。「左手のための協奏曲」も演奏されるようですが,どの協奏曲が演奏されるのかも楽しみですね。

2018/11/07

久しぶりに 石川県立音楽堂に登場した井上道義さん指揮OEK等による洋邦コラボレーションコンサート。ペルトのフラトレス,若林千春の新曲,ストラヴィンスキーのアポロ。新しいアートを作り出す楽しさと芸術の神への感謝の思いが伝わってくるような演奏会でした。

本日は,久しぶりに石川県立音楽堂に登場した,井上道義さん指揮OEKメンバー等による,「洋邦コラボレーション」と題された演奏会を聞いてきました。井上さんは,OEK初代音楽監督の岩城宏之さん同様,クラシック音楽と邦楽とが一体になったような演奏会を何回か行って来ましたが,本日の演奏会は,井上さんの「やりたいこと(orやりのこしたこと)」が隅々まで徹底した,総決算的な内容だったと思います。

演奏されたのは,茶道のお手前+能舞とペルトのフラトレスのコラボレーション,若林千春さん作曲による「ゆにわ/しま IV-b」という独奏フルート,独奏チェロ,能管,小鼓,大鼓のための作品(初演)。そして,ストラヴィンスキーの「ミューズを率いるアポロ」の3曲でした。特に前半の2曲は,通常のクラシック音楽のコンサートの雰囲気とは一味違う,シアターピース的な作品で,井上さんらしさが溢れていました。後半のストラヴィンスキーも素晴らしい作品の素晴らしい演奏でした。

最初に演奏されたペルトのタブラ・ラサは,2楽章構成の作品で,ステージ奥でOEKの弦楽合奏が静かで神秘的なムードを醸し出す中,山根一仁さんとアビゲイル・ヤングさんのヴァイオリンが,掛け合いをしていきます。繰り返しがとても多いので,次第に陶酔的な気分になっていく作品です。

その中で,上手側で渡邊荀之助さんが能を舞い,下手側で奈良宗久さんがお茶を煎れる動作をします。ステージの照明は暗目で,2人にスポットライトが当たるようになっていましたので,この2人の動作にどんどん引き込まれていきました。ただし...その意味まではよく分かりませんでした。

第1楽章の後半で,照明が点滅し,その後,渡邊さんが奈落の底に落ちていったり(ステージの床がエレベータのように下がっていくということですが),奈良さんの方は,茶道の道具を全部片付けた後,第2楽章になって再度登場して,お茶を煎れる動作をしたり...なかなか難解でした。曲が終わった後,井上さんが,表現していたストーリーを解説してくれて,「そういうことだったのか」と了解できた部分もあったのですが...少々懲りすぎだったかもしれません。

音楽の方は,第2楽章はさらにシンプルでゆっくりとした曲想になりました。井上さんによると「空」を表現していたということです。この時空の感覚がなくなるような感じはペルトの音楽ならではの魅力だと思いました。

次の若林さんの新曲の方は,音楽的にはかなり前衛的で,メロディが全くないような作品でしたが,武満徹の作品であるとか,能そのもののスタイルを思わせる雰囲気があり,とても楽しめました。

最初,大鼓と小鼓が静かに応答しあうような和の雰囲気で始まった後,途中,独奏チェロの細井唯さんと独奏フルートの松井さやさんが入場してきて,特殊奏法満載の不思議で強烈な世界が続きました。チェロの方は不協和音というよりは,故意にギシギシ言わせるような音が続出,フルートの方は息だけの音を使ったり,ウワオーという感じで半分声を出しながら演奏したり,伝統に刃向かうムードたっぷりの音楽が続きました。

ただし,このお二人による集中力のある演奏で聞くと,目が離せないという感じになり,強くひかれました。舞台奥の紗幕の後ろに,能に登場する邦楽器が3つ配置し,その前に少し距離を置いてチェロとフルートが,能のシテとワキといった感じで並んでいましたので,この舞台で能を表現しているように思いました。終了間際に能管が,ピーッと強く音を出していたのも能に通じると思いました。

邦楽器と洋楽器のコントラストを聞かせる二重協奏曲という点では,武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を思わせる要素もあると思いました。尺八がフルートに,琵琶がチェロに置き換わったようなイメージです。最初と最後が邦楽器中心で,中間部にチェロとフルートによる長いカデンツァが入っているようにも思えましたが,この構成もノヴェンバー・ステップスと似ていると思いました。何より「どういう楽譜になっているのだろう?」と思わせるほど不思議な音が続いていたのも同様でした。

タイトル自体も謎だったのですが,今回のテーマの洋と邦のコラボというテーマに相応しい作品だったと思いました。この作品は,井上さんが主催している「是阿観作曲家コンクール」の第1回優秀作品に選ばれた作品です。2021年に上演を計画している新作能に向けた,3年計画のコンクールということで,今後どういう作品が登場してくるのか期待したいと思います。

後半はストラヴィンスキーのバレエ音楽「ミューズを率いるアポロ」が,弦楽合奏で演奏されました。これは普通のクラシック音楽のコンサートのスタイルで演奏されましたが,井上さんの原点である,バレエを意識しての選曲となっていました。

実演で聞くのは初めての曲でしたが,ストラヴィンスキーの曲の中でも特に心地良い響きのする作品だと思いました。古代ギリシャの気分を伝えるような晴朗な気分にあふれていました。単純にシンプルなわけでなく,「実は複雑そう」という面もありましたが,「芸術の神アポロ」に対する素直な賛美,井上さんの「アートの世界」に対する信頼や演奏できることの喜びのようなものがストレートに伝わってきました。

特に前半のプログラムは,色々と冒険的な試みをしており,「一体どうなったのだろう?」といったスリリングな面もありましたが,「新しいアート」を作り出す楽しさを存分に伝えてくれるような演奏会だったと思います。

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