OEKのCD

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2019年6月

2019/06/19

#コリヤ・ブラッハー さんの弾き振りによるOEK定期公演。前回とはがらっと変わって,「今日のOEKはベルリン・フィル化していた?」と思わせるような強靱な響きのベートーヴェンの4番とブラームスの協奏曲。初めて聴くブリテンの変奏曲も大変魅力的でした。 #oekjp

本日は,今月2回目となるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演フィルハーモニー・シリーズを聞いて来ました。リーダー&ヴァイオリンは,元ベルリン・フィルのコンサートマスター,コリヤ・ブラッハーさん。OEK名物といっても良い,弾き振りによるコンサートでした。

6月の定期公演では,10日ほど前に,フランス音楽特集を聴いたばかりですが,今回はブラッハーさんのリードの下,同じオーケストラとは思えないほど強靱な響きのドイツ音楽を聴かせてくれました。この適応力の高さがOEKの素晴らしさだと思います。

この日はブラッハーさんの隣に,ゲスト・コンサートマスターの水谷晃さんも座っていらっしゃいましたが,この2人を中心に,弦楽器の各パートのボウイングの動きが,いつもよりかなり大きく見えました。演奏された3曲とも,非常にパワフルで伸びやかな音を聴かせてくれました。聴いたことがないので推測で書くのですが,ベルリン・フィルが室内オーケストラ編成で演奏したらこんな感じなのかも,と勝手に思いながら聞いていました。

特に最後に演奏された,ベートーヴェンの交響曲第4番は,惚れ惚れするような立派な演奏でした。第1楽章の序奏部から主部に移行する部分,じ~っくりと力感を増していき,力強く主部が始まるあたりの鮮烈さにはシビれました。どの楽章も弛緩することなく自身に溢れた音楽を聞かせてくれました。第4楽章も十分速いテンポでしたが,各楽器がしっかりと弾き切れるようなテンポ感で演奏しており,一つ一つの音の迫力が素晴らしいと思いました。

2曲目に演奏された,ブラームスのヴァイオリン協奏曲は,OEKの定期公演に登場する機会の少ない作品です(弾き振りも滅多にないと思います)。まず,ブラッハーさんの凜とした音と堂々たる弾きぶりが素晴らしく,ソロとオーケストラが一丸となって,密度の高い音楽を聞かせてくれました。これ見よがしのケレン味や大げさな身振りのない演奏で,ブラームスの曲自体の立派さがストレートに伝わってきました。

この2曲に加え,演奏会の最初に演奏された,ブリテンの「フランク・ブリッジの主題による変奏曲」もまた,素晴らしい演奏でした。最初,プログラムの並びを見た時,「それほど長い曲ではないかな?」と思ったのですが,実際には20分以上ある変化に富んだ作品で,後半に演奏された曲同様,OEKの弦楽セクションのゴージャスさにしっかり浸ることができました。ちなみに「変奏曲」と言いながら,「主題」が結構わかりにくいのも,英国的なのかもしれませんね。むしろ,最後の部分でくっきりと出てくるあたりも面白いと思いました。

というわけで,前半後半ともに大変充実した演奏の連続でした。OEKは,ヴェンツェル・フックスさん,安永徹さんをはじめ,ベルリン・フィル関係者とつながりが大きいオーケストラだと思いますが,ブラッハーさんには,是非また客演していただきたいものです。

 

2019/06/15

第32回県教弘クラシックコンサート #沖澤のどか さん指揮OEKによるシューベルトの交響曲第5番は,ストレートに曲の美しさが伝わってくる理想的な演奏。#新垣隆 さんのピアノによる自作の協奏曲「新生」も現代的感覚とロマンティックな情熱とが合わさったような聴きごたえのある作品 #oekjp

本日は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の設立当初からこの時期に行われている,県教弘クラシックコンサートを聞いてきました。今回で32回目ということになります。無料の演奏会なのですが,応募して整理券をもらう必要があることもあり,実はこれまでほとんど行ったことのない演奏会でした。

今年は,昨年の東京国際音楽コンクール(指揮者)で第1位を取った注目の若手指揮者・沖澤のどかさんが登場すること,そして,才能豊かな作曲家,新垣隆さんの作品が自身のピアノで演奏されるということで,整理券を応募し,聞きに行くことにしました。実は,沖澤さんについては,井上道義さんによる指揮講習会の受講生だったころに一度聞いたことがあります。新垣さんについては,ガル祭の常連になりつつありますので,お二人とも金沢との縁が強いアーティストといえます。

非常にすっきりと心地良いテンポ感で演奏された,モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲に続き,前半は,新垣隆作曲によるピアノ協奏曲「新生」が演奏されました。この曲は,新垣さんと佐村河内さんをめぐる「ゴーストライター事件」後に,新垣さんが作曲家としての新しいスタートを切るのに際して作られた作品です。

この事件の後,新垣さんは,この事件さえ「ネタ」にするような感じで,バラエティ番組なども含め,非常に精力的に活動の場を広げています。そのしたたかさは,本当に素晴らしいと,個人的に思っています。そして,新垣さんを応援する人が多いのは,新垣さんの音楽的な才能と誠実な人柄あってのことなのだと思います。

今回演奏された「新生」を聞いて,そのことを再確認できました。曲は20分ぐらいで,3つの楽章から成っているのですが,続けて演奏されますので,単一楽章とも言えます。無機的で重苦しい雰囲気(ちょっとバルトークの曲を思わせる感じ)で始まった後,暗い情熱を秘めた,少しロマンティックな気分のあるような音楽になっていきます。途中,抒情的な雰囲気になった後,最後はピアノの名技性をしっかり聞かせるような,活力のある音楽になります。明るく晴れ渡る感じにはなりませんが,「新生」というタイトルどおり,力強く立ち上がるような感じで曲は締められました。

現代的で不気味な部分とロマンティックで親しみやすい気分とがバランス良く合わさっているのがさすがだと思いました。弦五部以外の管楽器については,各パート1名ずつという室内オーケストラ編成でしたので,まさにOEKと共演するのにぴったりの曲でした。

そして,新垣さんのピアノが素晴らしかったですね。クールでキレの良い打鍵も素晴らしかったのですが,抒情的な部分での透明感のある音も素晴らしいと思いました。そのうち,新垣さんには,OEKのコンポーザー・オブ・ザー・イヤーに就任してもらい,ピアノ協奏曲第2番を作ってもらいたいぐらいだと思いました。

アンコールでは,新垣さんによる自作のピアノ曲が演奏されました。何となくサティの「ジュ・トゥ・ヴ」を思わせるような「いい曲だなぁ」と思って聞いていたのですが,後半最初の部分でのトークによると,くまモンをイメージして作った,「小熊のワルツ」とのことでした。途中,即興的に色々な「ユーモア」を入れるあたりも,新垣さんならではでした。

後半の最初では,沖澤さんと新垣さんによる対談が行われました。沖澤さんは,指揮の雰囲気同様,とても明快で爽やかな語り口で,新垣さんから色々興味深い話題を引き出していました。これについては,後日,別途ご紹介しましょう。

後半に演奏されたシューベルトの交響曲第5番は,OEKがたびたび演奏してきた作品です。まず,平成元年の第1回定期公演で,天沼裕子さん指揮で演奏されています。令和元年の最初は,沖澤のどかさん指揮ということで,ちょっと不思議な縁のようなものを感じます。

個人的に大好きな曲なのですが,沖澤さんの作る音楽は,本当に率直で,スーッと音楽の魅力が伝わってきました。シューベルトやモーツァルトの曲を聞いていると,明るく純粋であるほど,ほのかに哀しさが漂ってくることがありましたが,そういう魅力的な瞬間が随所に出てくるような演奏で,この曲の理想的な演奏なのではと思いました。弦楽器の瑞々しい響きに,フルートを中心とした管楽器が美しく絡み,さりげないけれども華やいだ気分にさせてくれました。

第2楽章の緩徐楽章も重苦しくなることはないのに,音楽が進むにつれて,「懐かしい思い」がどんどん募ってくるように感じました。第3楽章も短調の部分と長調の部分が交錯します。その移行が大変自然でした。

というわけで,全曲どこを取っても,瑞々しくストレートな美しさに溢れた素晴らしい演奏だったと思いました。アンコールでは,チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレが暖かみのある音で丁寧に演奏されました。もともとは弦楽四重奏で演奏される曲ですが,コントラバス入りの弦楽合奏での演奏ということで,控えめながらゴージャスさも感じられました。

シューベルトの交響曲では,楽章ごとに拍手が入るなど,定期公演の時とは,違った客層だったようですが,誰もが「良いなぁ」と感じられるとても気持ちの良い演奏会だったと思います。これから,お二人の活躍の場が広がっていくことを確信した演奏会でした。

2019/06/08

本日のOEK定期公演は,日本初登場となる #ピエール・ドゥモソー さん指揮による「ドビュッシーとラヴェル抜き」のフランス音楽特集。音のブレンドが素晴らしく,演奏会全体がフランスの音に。ルーセルの「蜘蛛の饗宴」の静かで精緻なドラマが特に印象的でした。#oekjp

6月のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)定期公演マイスター・シリーズの指揮者は,OEK初...どころか日本初登場となる,フランスの若手,ピエール・ドゥモソーさんでした。ドゥモソーさんは,OEKの芸術監督のマルク・ミンコフスキさんのアシスタント等として経験を積みながら,歌劇場を足掛かりに活動の場を広げている指揮者です。

そのプログラムは,「ドビュッシーとラヴェルを外した」フランス音楽特集という冒険的なものでした。時代的には1902年~1921年という,第1次世界大戦前後に初演された作品ばかりで,フォーレ以外には,クラ,ルーセル,オネゲルという,一般的にはあまり知られていないフランスの作曲家の作品が並びました。しかも,最初に演奏されたクラの「子供の心」以外は,静かに終わる曲ばかり,ということで,一見,非常に渋い内容だったのですが,まず,ドゥモソーさんとOEKの作り出す見事にブレンド音が素晴らしく,少々,短めのプログラムだったにも関わらず,充実感たっぷりの演奏を楽しませてくれました。

本日演奏された曲は,どの曲も弦楽器のちょっとくすんだような音の上に,管楽器が活躍するような感じのサウンドが中心だったのですが,その音の微妙な溶け合い方が素晴らしく,刺激的に突出するようが部分がありませんでした。管楽器などは,ソリスティックに活躍しているのに,しっかり一つの方向性に音がまとまっており,ホール全体に「フランスの音」のフィルターが掛かったような,素晴らしさを感じました。

クラの「子供の心」は,フォーレの組曲「ドリー」と同様,もともとはピアノ連弾(3人の連弾ですが)用の曲を自身でオーケストレーションした曲で,優しい気分をベースとしつつも,豊かな情感の溢れる音楽を楽しませてくれました。

フォーレの「ペレアスとメリザンド」は,前奏曲から非常に深い響きで,メランコリックな気分があふれ出てくるようでした。加納さんのオーボエ,松木さんのフルートなども伸びやかに演奏する中にフッと憂いが漂う感じで,昨年観たドビュッシーのオペラ同様,美しさと悲しさが共存したドラマを感じさせてくれました。終曲の後の深い余韻も素晴らしいものでした。

後半はオネゲルの「夏の牧歌」から始まりました。この曲では,まず,金星さん演奏する,けだるい感じの柔らかいホルンの音が印象的でした。音による風景画といった気分のある,素晴らしい演奏でした。

最後に演奏された,ルーセルの「蜘蛛の饗宴」は,蜘蛛がゾロゾロ出てくるわけではなく,ファーブルの「昆虫記」にインスパイアされて作られた曲ということで,蟻,蝶々,カゲロウなどが次々出てくるという設定のバレエ音楽(からの抜粋)でした。続けて演奏されたので,例えば,どこでカゲロウが出てくるかまでは正確には分かりませんでしたが(「蟻」や「葬送の音楽」の部分は分かりました),各部分の描写が非常に精緻で,庭の中の虫たちによる静かなドラマを見事に描いているなぁと思いました。絵に例えると,厚く塗った油彩ではなく,細めの筆で描かれた細密画を見るような趣きがあると感じました。

20分ぐらいの長さの曲でしたが,リズムの変化に加え,ダイナミクスの変化もあり,演奏会全体を締める,充実感を感じました。ドゥモソーさんの指揮からは強い表現意欲が伝わってきました。OEKもしっかりとそれに反応し,生き生きとした表情を作っていたのが素晴らしいと思いました。

演奏会全体としては,90分程度で終わったので,アンコールが演奏されました。「フランス物」の場合,ビゼーがアンコールというパターンが結構多いのですが,今回もそのとおりで,「アルルの女」の中から前奏曲が演奏されました。その演奏がまた,非常にドラマティックでした。弦楽器を中心とした強靱な音と,オペラ劇場でも活躍されている指揮者らしい音楽の盛り上げ方が強烈なインパクトを残してくれました。

指揮台での動作は,若手指揮者らしく,少々バタバタとした感じがありましたが,是非,ドゥモソーさんの指揮で,フランス・オペラなどを観てみたいものだと思いました。

2019/06/05

OEK小松定期公演・春は,#茂木大輔 さんのトークと指揮によるベートーヴェンの英雄交響曲を中心としたプログラム。分かりやすいトークに加え,剛毅な演奏を楽しませてくれました。前半のプロメテウスの創造物には英雄と同じ主題が登場。OEKメンバーのソロも存分に楽しめました #oekjp

今晩は小松市うららで行われた,OEK小松定期公演・春を聞いてきました。「平日夜の小松ということで,仕事の後,金沢から出むくのは少々大変でしたが,茂木大輔さんのトークと指揮を楽しみに出かけてきました。

茂木さんのお話によると,3月にNHK交響楽団の首席オーボエ奏者を定年退職された後,4月以降は,指揮者一本で活動されているそうですが,指揮者として依頼を受けて指揮台に立つのは本日が初めてとのことでした。少々大げさですが「第2の人生(?)」の門出の演奏会といえそうです。

その記念すべき演奏会ということもあり,今回のプログラムは,以前から茂木さんが「やってみたかった」ものでした。ベートーヴェンの「英雄」交響曲と同じくベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」(抜粋)を組み合わせ,茂木さんの解説付きで楽しもうという内容でした。

私が中学生の頃,NHK-FMでは,音楽評論家の金子建志さんが「ちょっと聞いてみましょう」と曲の部分を聞きながら解説をするような,クラシック音楽の番組があったのですが,そういう雰囲気とちょっと似た感じがあったと思いました(「英雄」の第2楽章の解説の時,ゴセックの葬送行進曲という珍しい曲を参考音源として聞かせていただきましたが,こういう聞き比べは大好きです)。

私自身,そういう放送を聞きながら,クラシック音楽に「ハマって」いったので,本日のトーク&演奏を聞いて,クラシック音楽って面白いものだな,と思った若い人も出てきて欲しいと思いました(お客さんには地元の中学or高校生がかなり沢山いました)。

まずこの2曲のつながりなのですが,「英雄」の最終楽章に,「プロメテウス」の終曲のメロディが大々的に登場することによります。ベートーヴェンのお気に入りのメロディということになります。「プロメテウス」の方は,バレエの終曲(ベートーヴェン作曲のバレエというのも,かなり意外性がありますが)ということで,何回も同じメロディが繰り返し出てくる感じです。「英雄」を聞いた後だと,「なかなか先に進まない」感もなきにしもあらずでしたが,オリジナルの形を聞けたのは大変貴重な機会でした。

「プロメテウス」の中では,第5曲「アダージョ」が特に聞きものでした。ベートーヴェンの曲の中で唯一ハープが出てくる曲という「トリビア」を得ることができましたが,このハープとからむように,フルート,ファゴット,クラリネットそしてチェロが大活躍します。OEKのメンバーを全部覚えているようファン(私のことです)にとっては,大変うれしい演奏でした。茂木さんが語っていたとおり,カンタさんのチェロが美しかったですね。

後半に演奏された「英雄」の方は,かなり速いテンポで演奏されました。一言でいうと「剛毅」な「英雄」だったと思います。茂木さんの書かれた解説によると,第1楽章は「戦場の英雄」ということで,あちこち戦況を見回っている英雄という感じがしました。個人的には,大河のように悠々と流れるような第1楽章も好きなのですが,血気盛んな若々しい英雄も良いなと思いました。

第2楽章も速目のテンポでしたが,中盤以降,ティンパニやトランペットを交えての盛り上がりが素晴らしく(小松のホールだと特に音がよく聞こえます),全曲のクライマックスがこの辺にあったように感じました。

いかにもドイツ風の雰囲気のあった第3楽章に続き,「プロメテウス」の再登場したような第4楽章に。やはり,いつも馴染んでいるこちらの方が良いですね。こちらも全体的に速目のテンポでしたが,コーダの部分は慌てることなく,威厳たっぷりに締めてくれました。

個人的には,まだ週のはじめの火曜日なのに,少々疲れ気味だったのですが,バシッとしまった「英雄」を聞いて,一気に気力が回復しました。今後,茂木さんとOEKが共演する機会があると良いと思います。演奏会の企画面でも(ファンタスティックシリーズとかどうでしょうか?)協力していただけると良いのでは,と思いました。

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