OEKのCD

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2019/07/18

#パトリック・ハーン 指揮OEK定期公演は,弦楽合奏を中心とした,シンメトリカルな構成のOEKならではのプログラム。#辻井伸行 #ルシエンヌ と共演したショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は,美しさだけではなく,凄みのある鮮やかさを実感できる素晴らしい演奏。 #oekjp

本日はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2018/2019シーズンの最後となる,フィルハーモニー定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。指揮は,定期公演初登場のパトリック・ハーンさん,ピアノ独奏は,お馴染みの辻井伸行さん,トランペット独奏は,ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリさんでした。

6月以降のOEKの定期公演では,若い指揮者が次々登場しているのですが,ハーンさんはまだ24歳。定期公演に登場する指揮者としては異例の若さです。ルシエンヌさんに至っては,まだ10代(のはず)。何と辻井さんがいちばん年輩という,若いアーティストたちとOEKの共演ということになりました。この3人のコラボレーションが本当に素晴らしいものでした。人気の辻井さんが登場するとあって,会場は大入り満員(心なしか,いつもよりホールの残響が少なく感じるほどでした)。シーズンの最後は大いに盛り上がりました。

プログラムは,3曲演奏されたうち,最初と最後に,弦楽合奏によるディヴェルティメントとセレナードを配し,その間にショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を入れるというシンメトリカルな構成になっていました。ショスタコーヴィチの曲も弦楽オーケストラのための曲で,そこにピアノとトランペットが加わる形になります。

どの曲についても,ハーンさんの指揮ぶりには,安心感がありました。熟練の指揮ぶりといった感じでした。バルトークもチャイコフスキーも,冒頭部分を大げさに演奏できる曲ですが,両曲とも,しっかりと抑制された感じで始まりました。その一方,細かなニュアンスの変化が非常に丁寧に付けられており,全曲に渡って,目の詰んだ高級な着物を観ているような,職人技の素晴らしさのようなものを感じることができました。バルトークの第2楽章での,充実した響きが特に素晴らしいと思いました。

チャイコフスキーは,音楽自体に常に推進力があり,落ち着いた雰囲気で始まった,段々とノリ良く音楽が進んでいく心地よさがありました。対照的に,儚げな美しさに溢れた第3楽章の美しさも印象的でした。第2楽章ワルツでの,ちょっと粋な感じの歌わせ方も印象的でした。ハーンさんは,楽章の最後の部分など,大げさなタメを作って締めるのではなく,それを避けるように,すっきりと締めていました。この辺に20代前半の指揮者ならではの,新鮮さを感じました。

そして,協奏曲も素晴らしい演奏でした。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は,過去,OEKは何回も演奏してきましたが,その中でも特に素晴らしい演奏だったと思います。まず,第1楽章の最初の部分での,辻井さんのピアノの深々とした音が素晴らしかったですね。その後,めまぐるしく曲想を変えていくのですが,この最初の部分の迫力のある雰囲気があったので,全曲に安定感があったと思いました。ショスタコーヴィチの音楽については,どこかひねくれた気分を感じるのですが,辻井さんの率直さのある演奏で聞くと,ロシアのピアノ協奏曲の伝統を引く曲なのだな,と感じさせてくれる部分もあると思いました。

辻井さんのピアノに絡む,ルシエンヌさんのトランペットの音も見事でした。非常に柔らかい音で,しっかりと存在感を示しながらも,ピアノやオーケストラと見事に溶け合っていました。これだけしっかりとコントロールされたトランペットの音というのは,なかなか聞けないのではと思いました。

緩徐楽章では,いつもどおり,辻井さんのピアノのタッチの美しさを堪能できました。以前,OEKと共演した,ラヴェルのピアノ協奏曲の時よりも,さらに深い音楽を聞かせてくれたと思いました。ショスタコーヴィチの音楽の持つ,ひんやりとした感じにぴったりの音楽を聞かせてくれました。

第4楽章は,ショスタコーヴィチならではの,皮肉やユーモアを交えた,故意にドタバタしたムードにした音楽なのですが,辻井さんのピアノは,とにかく鮮やかで,テンポが上がっても慌てた感じになりません。楽々と演奏するルシエンヌさんのピアノと合わせて,非常にクールな演奏を聞かせてくれました。若い世代による,格好良い,ショスタコーヴィチという感じでした。

アンコールでは,ガーシュインのプレリュード第1番(オリジナルはピアノ独奏曲)が,辻井さんとルシエンヌさんのデュオで演奏されました。この曲では,ルシエンヌさんは大変伸びやかな音で演奏し,辻井さんはしっかりとベースを支えていました。

演奏後,ルシエンヌさんと辻井さんは,手に手を取って,ステージと袖の間を往復していましたが,その姿が何とも言えず微笑ましく感じました。本日と同様のプログラムで,OEKは国内ツァーを行いますが,是非,大勢の人に楽しんでもらいたいものです。

というわけで,今シーズンのOEK定期公演は,3人の実力十分の若手の饗宴で締めくくられました。8月は,OEK単独の公演はお休みですが,9月以降の新シーズンでも,若手とベテランとがうまく組み合わされた,多彩な公演に期待したいと思います。

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