OEKのCD

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2019年8月

2019/08/31

#若林工房 創立15周年記念 #イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル(富山県民会館ホール)。CDの公開録音を兼ねた無料公演で,非常に完成度の高い内容。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

本日は午後から富山市に出かけ,イリーナ・メジューエワさんのピアノ・リサイタルを聞いてきました。会場は富山県民会館ホールでした。このリサイタルですが,通常のリサイタルとは違い,若林工房という富山県にあるCD制作会社の公開録音を兼ねたものでした。入場料自体は無料(要整理券)だったのですが,本日の演奏を収録したライブCDを会場で先行予約できるなど(実演販売ですね),CD制作・販売とリサイタルを連動させることで,アーティストと聴衆とのつながりを深める効果があると感じました。「これは面白い」と思いました。

そして何より,メジューエワさんの演奏が素晴らしかったですね。CD収録だからということもあったと思いますが,非常に完成度の高い演奏の連続で,こんなに素晴らしいピアニストだったのか,と感嘆しました。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

逆に言うと,そういうアーティストだからこそ,レコーディング向きと言えます。本日のプログラムの巻末に,若林工房制作のディスコグラフィが付いていましたが,15年の間に(本日は若林工房創立15周年記念イベントでした)100セット以上のタイトルを発売しており壮観でした。その核となっているアーティストがメジューエワさんです。

今回のプログラムは,前半がモーツァルトとメンデルスゾーン,後半がショパンとスクリャービンという構成でした。20分以上の曲はなく(15分程度のモーツァルトのピアノ・ソナタK.280がいちばん長い曲だったと思います),5~10分程度の小品中心だったのですがよく考えられた選曲になっており,それほど知名度の高い曲はなかったにも関わらず,聴きごたえ十分の充実感が感じられました。

メジューエワさんについては,ジャケット等の写真の印象からすると,柔らかく軽やかな演奏をされるのかなと予想していたのですが,むしろカッチリとした剛性感とクリアさのある演奏に特徴があると思いました。速いパッセージでも乱れる部分は皆無,曖昧な部分や甘い部分はなく,限りなくパーフェクトに近づこうという意志の強さを感じさせる演奏だったと思いました。

ただし,堅苦しくピリピリ張り詰めたような緊張感はなく,あくまでも自然体でバシッと決めてくれる,気持ちの良さがありました。演奏する時の雰囲気は常に平静で,全体に優雅なオーラも持っています。左手が空いている時,指揮をするような感じで手を動かすのが「癖」のようでしたが,音楽と奏者とがしっかり一体化しているような集中度の高さを感じました。

メジューエワさんについてはジャケットの顔写真でのしっかりとしたまなざしが印象的ですが,そのイメージどおり,「この方に任せておけば間違いない」と感じさせる安定感があると思いました。

今回演奏曲は,次のとおりでした。
モーツァルト/幻想曲ニ短調,K.397
モーツァルト/ピアノ・ソナタへ長調,K.280
メンデルスゾーン/無言歌(6曲)
ショパン/2つのノクターン, op.27
ショパン/スケルツォ第2番,op.31
スクリャービン/左手のための2つの小品, op.9
スクリャービン/2つの詩曲, op.32
スクリャービン/練習曲, op.42から2曲
スクリャービン/焔に向かって, op.72

どの曲も素晴らしかったのですが,特にショパンとスクリャービンを並べた後半が面白かったですね。演奏された曲は,基本的には古い曲→新しい曲の順に並んでいましたが,ショパンとスクリャービンを続けて演奏すると,スクリャービンの曲のムードが「ショパンそっくり」の雰囲気から,だんだんと神秘的になり,最後はメロディ中心の音楽から脱却していく変化を実感できました。

ショパンの曲については,しっかりと強く歌われるメロディが印象的でした。スクリャービンでは,最後に演奏された「焔に向かって」が凄い曲でした。実演で聞くのは初めてでしたが,その狂気に満ちた気分に魅力を感じてしまいました(危険かも?)。ただし,メジューエワさんの演奏は,完全にのめり込んでしまっているのではなく,燃える焔を外から描いているような冷静さがまだ残っていると思いました。その辺が,聞きやすさとなっていた気がしました。

アンコールは3曲も演奏されたのですが,最後にショパンのノクターンop.9-2をスクリャービンの後に改めて聞くと,何とシンプルで清々しい歌なのだろうと,ショパンの良さも再発見できました。

前半に演奏された,モーツアルトとメンデルスゾーンについても,軽やかに流れていく感じの演奏ではなく,それぞれに確固たるメッセージが込められている感じで,聴きごたえがありました。

というわけで...若林工房さんの戦略どおり,「会場限定!本日のライブ音源収録CDを特別価格で先行予約」に飛びついてしまいました。もともと入場無料でしたので,CD特別価格2000円でも安いぐらいです。来年1月に郵送されてくる予定ですが,それを再度聞くのが非常に楽しみです。

さらに...予約者には「非売品」のメジューエワさんの録音をCD-Rプレゼントという,マニアックな特典もありました。今回配布されたプログラムも(恐らく,そのままCDの解説に使う内容だと思います),大変分かりやすい内容でした。

その他,今回の使用ピアノは「1925年製スタインウェイCD135」というヴィンテージ物だという点をアピールするなど,色々な点でお客さんを喜ばせようという工夫がありました。もちろん,終演後メジューエワさんのサイン会もあり参加。

若林工房さんの活動については,今後も注目していきたいと思います。

2019/08/25

いしかわミュージックアカデミーフェスティバル・コンサート。OEKにIMA出身者が加わった特別編成オーケストラによるロシア音楽。古海行子さんのピアノも大変美しく誠実な演奏 #oekjp

本日の午後は,現在石川県立音楽堂などを中心に行われている,いしかわミュージックアカデミー(IMA)関連で行われた,IMAフェスティバル・コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。

このコンサートの目玉はIMA出身の弦楽奏者がOEKと一緒にロシア音楽を演奏するという点です。OEKの弦楽セクションに次の皆さんが参加する形で,ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とチャイコフスキーの交響曲第5番が演奏されました。

(ヴァイオリン)伊藤亮太郎,入江真歩、城戸かれん、坂口昌優、関 朋岳、坪井夏美、毛利文香、吉江美桜
(チェロ)上村文乃、増山頌子、松本亜優

この中で,現在,NHK交響楽団のコンサートマスターの伊藤亮太郎さんが今回のコンサートマスターも務めました。

その他,OEKメンバーの青木恵音さん,ソンジュン・キムさんもIMA出身者です。

「特別編成」と書かれていましたが,「大編成」というわけではなく,通常のOEKの弦楽セクションに2名ずつ追加されたような形になっていました。その効果は特にチャイコフスキーの交響曲第5番に随所に出てくる,甘いメロディの部分で効果的で,いつも以上に濃厚なカンタービレを楽しむことができた気がします。

ただし...演奏全体としては,指揮者の黄維明さんのテンポ設定が遅めで,音楽の流れがどこか停滞しているように感じました。第4楽章はめくるめくように曲想が変わり,次々と違う景色が見えてくる...ような演奏を期待していたのですが,ずっと同じ景色が続く...といった印象を持ちました。

もちろん弦楽セクションはしっかりと鳴り,管楽器も輝かしい音を出し,ティンパニが要所でくさびを打ち込んでいたのですが,どうも音楽が熱く盛り上がらない気がしました。音楽の枠組みは大きく,美しく,強い部分も沢山あるのだけれども,どこか物足りない,そういった印象を持ってしまいました。

前半のラフマニノフも堂々たる音楽でした。この曲では独奏の古海行子さんのピアノが素晴らしかったと思いました。古海さんもIMAの出身者で,第4回高松国際ピアノコンクールで優勝し,注目を集めている若手ピアニストです。OEKとは,池辺晋一郎さんによる「ベスト100」企画のソリストとして既に共演済で,その時から注目をしていました。実は,今回は古海さんによる協奏曲演奏の全曲を聞けるのを楽しみに聞きに来た面もあります。

古海さんのピアノは第1楽章冒頭の「鐘」の音のような和音の部分から響きが美しかったですね。フェスティバルオーケストラの低弦の音にも透明感があり,非常に良くマッチしていました。古海さんの演奏は,大変誠実で,特に抒情的なメロディの甘くなりすぎないじっくりとした歌わせ方が良いと思いました。スケールの大きなピアノ,という感じはしませんでしたが,第3楽章などでも,地にしっかりと足のついた,ハッタリのない真面目な音楽を聞かせてくれました。ラフマニノフ以外の作品も今後聞いてみたいと思いました。オーケストラの音では,特にチェロ・パートの熱く盛り上がるような歌がこの曲に合っているなぁと思いました。

昨年まで行っていたIMAの講師とOEKメンバーによる室内楽企画が,今年は行われなかったのは残念でしたが,IMAの同窓生とOEKとの合同演奏企画というのは,良いアイデアだと思います。”フェスティバルオーケストラ”という名前にしては,会場の雰囲気は地味目でしたが,これからも継続していって欲しい企画だと思いました。

2019/08/18

甲子園の星稜対仙台育英戦を途中までテレビ観戦ご,IMAライジングスター・コンサート2019へ。今年も水準の高い演奏の連続。特に印象的だったのは #荒井里桜 さんと #ジュヒ・イム さんの演奏。甲子園同様,若い人たちの持つエネルギーの大きさを実感できました

本日の午後は,夏の高校野球の準々決勝,星稜対仙台育英の試合を見終わった後,いしかわミュージックアカデミー(IMA)のライジングスターコンサートを聞きに行こうと思っていたのですが...予想以上に星稜高校の打線が好調だったせいか,なかなか試合が終わりません。10点差ぐらいになったところで,「このまま勝てそう」と思い,石川県立音楽堂に出かけました。

IMAは,「専門的な演奏技術と音楽性を学び取る国際性あふれる音楽セミナー」として,1998年から金沢市で行われているもので,今年で22年目となります。そのライジングスターコンサートは,過去IMA音楽賞・奨励賞を受賞した受講生や,国内外のコンクールで入賞経験のある優秀な受講生が出演するコンサートです。

ほとんど毎年聞いているのですが,そのレベルは非常に高く,その後,ソリストやプロのアーティストとして活躍している人も沢山います(例えば,ヴァイオリンの辻彩奈さんとか)。今年もまた,高度な技と鮮やかな表現力の饗宴のような演奏を楽しんできました。

出演したのは次の皆さんでした。
竹内鴻史郎,前田妃奈,荒井里桜,ウンジュン・パク(ヴァイオリン),江口友理香(チェロ),小竹島紗子,ジュヒ・イム(ピアノ)

どの演奏も安心して楽しむことができましたが,特に印象的だったのは,ヴァイオリンの荒井里桜さんとピアノのジュヒ・イムさんの演奏でした。このコンサートですが,ヴァイオリンについては,実は,毎年同じような曲が繰り返し演奏されています。具体的に言うと,サラサーテやフバイのカルメン幻想曲,サン=サーンスのヴァイオリン曲,ショーソンの詩曲です。技巧的な面を楽しむか,表現力を楽しむかで分かれる感じなのですが,毎年のように聞いていると,やはり,ショーソンの詩曲の方に聞き応えを感じます。

今年は,荒井里桜さんが,この「詩曲」を演奏しました。交流ホールならではのリアルさのある音から,熱く歌い上げるような「情」がしっかり乗った音まで,臨場感たっぷりの音楽を聞かせてくれました。荒井さんは,既に日本音楽コンクールで第1位を取っている方ですが,これからさらに海外での活躍が増えてくるのではないかと思います。

ピアニストの方では,ジュヒ・イムさんが演奏した,ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」(一部でしたが)が素晴らしい演奏でした。グリッサンドが頻繁に出てくる,非常に華やかな演奏でしたが,とにかく,技巧の切れ味と硬質な音色に圧倒されました。「カスチェイ王の踊り」から終曲までを演奏したのですが,曲想に応じた音の質感の変化が素晴らしく,スケールの大きさを感じました。

チェロは一人だけだったのですが,1週間ほど前に石川県立美術館で,ルドヴィート・カンタさんの演奏で聞いたばかりの,シューマンのアダージョとアレグロが演奏されたのが,個人的には面白かったですね(ピアノの方は,どちらも鶴見彩さん)。江口友理香さんの演奏には,丁寧に楷書で書かれた書を見るような清々しさがありました。

今年のIMAでは,過去IMAに参加した弦楽器奏者がOEKに加わって,チャイコフスキーやラフマニノフの曲を演奏するという楽しみな演奏会があります。IMAについては,非常に水準が高いの割に金沢市民にはまだまだ定着していないところがありますので,この公演をきっかけに地元での注目度がもう少し高まって欲しいものだと思います。

2019/08/12

おなじみの #ルドヴィート・カンタ さんと #鶴見彩 さんによる #フランス近代絵画と珠玉のラリック展 記念コンサート@ #石川県立美術館 展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。それにしても美術館は避暑にぴったり。カンタさんは連日の大活躍です。

本日は,石川県立美術館で行われている「フランス近代絵画と珠玉のラリック展」に合わせて,「移りゆく時代,挑戦する作曲家」と題して行われた無料コンサートを聞いてきました。演奏は,お馴染みのルドヴィート・カンタさんのチェロと鶴見彩さんのピアノによるデュオでした。

# それにしてもカンタさんは,連日,兼六園周辺で大活躍です。

演奏会のコンセプトは,展覧会の出展内容に合わせ,ドビュッシー,サティ,フォーレなど19世紀から20世紀初頭のフランスの作品が中心でしたが,もう少し幅を広げ,同時代に活躍した瀧廉太郎,成田為三,山田耕筰といった日本人作曲家の作品も取り上げていました。展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。

県立美術館のホールは,ややデッドですが,非常に音がクリアに聞こえますので,室内楽の演奏会にはぴったりです。曲想に応じて,2人の奏者の音の変化の面白さをしっかり楽しむことができました。

ドビュッシー最晩年のチェロ・ソナタには,楽章ごとにちょっとひねったようなキャラクターのある曲です。カンタさんの演奏は,枯れたような味,ユーモアを持った味から伸びやかな気分まで,色々な音を聞かせてくれました。サティの「ジムノペディ第1番」は,空調のよく効いた室内で効く快適音楽という感じでした。鶴見さんのクリアですっきりとした演奏は,猛暑の中の清涼剤になっていました。サティのジュ・トゥ・ヴの方は,チェロとピアノによるデュオで演奏されました。珍しい組み合わせだと思いますが,これが良かったですね。どこか2人の男女が粋な会話をしているようなムードがありました。

そしてお馴染みの日本歌曲,3曲。過去にもカンタさんの演奏で聞いたことがありますが,何というかカンタさんの十八番といっても良いと思います。落ち着きと味わい深さのある,誰もが納得という演奏でした。

最後のコーナーでは,イザイの無伴奏チェロの中の1楽章が暗くじっくり演奏された後(カンタさんは「暗い曲,イザイもそんな人」と言っていましたが,好きな曲なのだと思います),カサドの「愛の言葉」で熱く締めてくれました。どこかラテンの気分があり,夏の気分にもぴったりでした。

アンコールでは,フォーレのシチリアーノが演奏されました。一般的にはフルートのイメージのある曲ですが,チェロで演奏するとよりしっとり感が増す感じです。

それ以外に,テーマから外れる形でシューマンの「アダージョとアレグロ」が演奏されました。これもまた素晴らしい演奏でした。チェロの音は人間の声に近いと言われていますが,まさにそういう演奏で,前半は秘めた思いがしっかりと歌われ,後半ではそれが一気に湧き上がってきました。お二人の息もぴったりでした。

展覧会の方は,既に別の日に観ていたのですが,印象派,エコール・ド・パリなどの絵画作品に加え,ルネ・ラリックによるガラス工芸作品が多数展示されているのが特徴です。それにしても,夏の美術館は,避暑にも最適ですね。石川県立美術館は21美ほど混雑していないのも良いですね。

2019/08/01

#鈴木雅明 オルガン・リサイタル:真夏のバッハ どの季節に聴いてもバッハの音楽の素晴らしさには揺らぎがありません。立派さだけでなく甘美さもあるのがオルガン音楽の魅力だと実感 #石川県立音楽堂

梅雨が明け,連日,金沢でも暑い日が続いています。その中,「真夏のバッハ」と題した鈴木雅明さんによるオルガン・リサイタルが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。真夏といっても,ホールの中は空調が効いていて快適。バッハはどの季節に聴いてもバッハ。ということで,”バッハの権威”による,夏の暑さにも負けない,バッハのオルガン音楽の揺るぎない素晴らしさに浸って来ました。

今回演奏されたのは,タイトルどおりバッハの音楽ばかりでしたが,有名なトッカータとフーガ,小フーガといった曲は入っておらず,鈴木さんが本当に演奏したい曲が選ばれていた印象でした。最後に演奏された,パッサカリアとフーガは,有名な作品ですが,それ以外は,聴いたことのない作品ばかりでした。

今回は,鈴木さんのトークと合わせての演奏会でした。各曲について,しっかりと解説をしていただきましたが,それが全く邪魔にならず,バッハの音楽を聴いた印象だけがしっかりと残ったのがとても良かったと思いました。

プログラムの構成は,複数楽章からなるガッチリした感じの作品とコラール風の作品とがうまく組み合わされていました。個人的には,「プレリュード,トリオとフーガ,BWV.545+529//2」のような,急緩急の構成の作品がいちばんしっくりと来ると思いました。鈴木さんは,ヨーロッパを中心に世界各地のオルガンで演奏されていますが,その土地土地での経験を踏まえた,揺るぎのない自信に満ちた音楽を聴かせてくれました。

輝きのある生命力に溢れたプレリュードとオーケストラ曲を思わせる華麗さのあったフーガの間で,しっとりとトリオが演奏されましたが,この部分での「一人で室内楽」といった感じが絶品だと思いました。どこか甘美な気分を感じました。

後半最初に演奏された,パストラーレBWV.590も初めて聴く作品でしたが,クリスマスの気分にぴったりの気分を持った組曲で,すっかり気に入りました。バグパイプを思わせる楽章に続いて,繊細の愛らしさのある第2楽章,声楽曲のような美しさのあった第3楽章。そして,ブランデンブルク協奏曲第6番の終楽章を思わせるような第4楽章。とても魅力的な作品でした。

ファンタジアというタイトルの曲は2曲演奏されましたが,ドイツの重厚な音楽とは一味違う透明感のある美しさを感じました。特にBWV.562(フーガの部分がないので,全体的に静かな曲でした)の落ち着いた澄んだ響きが特に気に入りました。個人的には...夜,アルコールを飲みながら聴くのに丁度良さそうな曲だと思いました。

コラール作品では,前半,コラール・パルティータというかなり長い作品が演奏されました。鈴木さんの選んだ音は,派手過ぎることはなく,シンプルな美しさがありました。演奏会全体を通じても,音量に圧倒されるような威圧的な感じがなかったのがとても良いと思いました。

さすがにコラール・パルティータについては,昼間の疲れが出て(本日は暑い中,野外で活動していたもので...),少々ウトウトしかけたのですが,後半に演奏されたコラール「おお人よ,汝の罪の大いなるを嘆け」では,一つ一つの音が染みこむように耳に入ってきました。ヴィブラートが掛かったような音が大変魅力的でした。

最後はパッサカリアとフーガで締められました。恐らく,この曲はオルガン・リサイタルの「トリ」の曲の定番だと思います。鈴木さんの演奏は,深々と落ち着いた雰囲気で主題が演奏された後,全く揺らぐことのないテンポで一つ一つの変奏が演奏されて行きました。これが素晴らしかったですね。その揺るぎのなさが,ヒタヒタと終末に近づいていくような迫力を生んでいると思いました。最後の,世界が大きく広がるようなフーガの華麗さも素晴らしいと思いました。

パイプオルガンの演奏会は,ここ何年かは少なかったのですが,昨年ぐらいから少しずつ公演が増えてきていると思います。このことを歓迎したいと思います。夏でも冬でも,季節を問わずに楽しめるバッハのオルガン曲は定番ですが,鈴木さんがトークの中で「フランスのオルガンは少し鼻にかかったような音がする」とおっしゃられるのを聴いて,「フランスのオルガン」の特集(音楽堂のオルガンで表現できるか分からないのですが)も聴いてみたいものだ思いました。

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