OEKのCD

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2019年10月

2019/10/31

ラルフ・ゴトーニ指揮OEK定期公演は,ハイドンとべートーヴェンの交響曲を中心とした暖かみとユーモアと味わい深さのある内容。OEKらしさを楽しませてくれる演奏会でした。#oekjp

本日は,5年ぶりの登場となる,ラルフ・ゴトーニさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演を聞いてきました。前回のマルク・ミンコフスキさんの時同様,ソリストが登場しない演奏会でしたが(今回,協奏曲は1曲あったのですが,ゴトーニさんの弾き振りでした),オーケストラの編成は対照的で,ほぼOEKのスタンダード編成(コントラバスが1名増強されていただけ)による,古典派の交響曲を中心とした演奏会となりました。

前回の「フル編成オーケストラ」的OEKの演奏も良かったのですが,今回のスタンダードOEKによる,熟練のハイドンやベートーヴェンを聞いて,改めて古典派の交響曲の楽しさを実感しました。

ゴトーニさんについては,クールな音楽作りの印象を持っていたのですが,本日の演奏を聞いて,旧知の仲間と一緒に暖かみとユーモアのある音楽を作っているような,アットホームな雰囲気を感じました。メインで演奏された,ベート-ヴェンの交響曲第8番はいろいろなキャラクターを持った曲で,解釈によっては大変立派で豪快な雰囲気にもなりますが,今回の演奏は,基本的にすっきりと端正に聞かせながらも,神経質な雰囲気はなく,非常に伸びやか。そして,所々,かなり大胆なルバートを入れるなど,「遊び」の感覚があると思いました。本日の演奏は,若々しく張り切ったような生きの良い演奏...というよりは,速すぎないテンポで,きっちりと切れよく演奏しつつも,随所でしみじみとした味わいを感じさせてくれました。ゴトーニさんの演奏の円熟味のようなものを感じました。

前半に演奏された,ハイドンのピアノ協奏曲ニ長調と交響曲第83番「めんどり」にも同様の雰囲気はありましたが,よりスッキリと古典的な清潔感を感じさせてくれました。ピアノ協奏曲の方では,ゴトーニさんのピアノの,軽快でありながら暖かみのある演奏が印象的でした。最終楽章,「途中でハンガリー風になる」というのは,「ハイドンあるある」といった感じでした。

交響曲第83番は,ト短調の曲ということで,オッと思わせるようなドラマティックで引き締まった音で始まるのですが,第2主題になると,すっと穏やかな気分になり,「コッコ,コッコ...」というフレーズが弦楽器やオーボエに出てきて「めんどり」的気分になります。ハイドンの交響曲には,正直を言うと「意味不明」のニックネームがありますが,この曲については,「納得のめんどり」だと思います。

このシリアスさとリラックスした感じの自然なコントラストが良いなと思いました。第2楽章も「めんどり」に通じるような,「同音連打」で始まりましたが,途中,急に音量がアップする部分があったので,「驚愕」を先取りするような雰囲気もあるなと思いました。いずれにしても,OEKのハイドンは,指揮者によって,毎回毎回,味わいが違い,聞くのが楽しみです。

本日のプログラムは古典的な曲が中心でしたが,後半の最初に1曲だけプロコフィエフ作曲,ルドルフ・バルシャイ編曲による「束の間の幻影」の抜粋が演奏されました。1分前後の短いピアノ曲による組曲をバルシャイが弦楽オーケストラ用に編曲した作品で,美しさと同時に,「怪しさ」のようなものが漂っていました。本当に短い曲が多く,「束の間の幻影」というタイトルにピッタリでした。演奏会の流れの中で,不思議な時空間を作っているようでした。

というわけで,編成的にもプログラム的にも,非常にOEKらしい内容の演奏会だったと思います。パワーや華やかさでアッと言わせるような内容ではありませんでしたが,心地良い充実感が後に残るような,非常に味わい深い内容だったと思います。

2019/10/25

とやま室内楽フェスティバル2019 スペシャルコンサート。”ほぼ東京カルテット”+練木繁夫+毛利伯郎でシューマンのピアノ五重奏曲。豊かな音楽に感激。レジェンドの皆さんからサインもいただいてしまいました。若手奏者たちの演奏も素晴らしいものでした。

本日は仕事が終わった後,北陸自動車道で富山市まで行き,とやま室内楽フェスティバル2019のスペシャルコンサートを聞いてきました。9月上旬に富山市に行った時に,このコンサートのことを知ったのですが,原田幸一郎,池田菊衛,磯村和英という元東京クヮルテットのメンバー3人+チェロの毛利伯郎さん,ピアノの練木繁夫さんという,いわば,室内楽のレジェンドが揃って,シューマンのピアノ五重奏曲を演奏するということで,これは聞かねばなるまいと思い出かけてきました。

その演奏ですが...期待をはるかに上回る,素晴らしいものでした。冒頭からどっしりと重厚。枯れた雰囲気もあるけれども,音楽が大きく息づいていているような豊かさを感じさせる部分が随所にありました。テンポはゆっくり目でしたが,音楽の裏には常に熱い情熱があり,レジェンドたちの心意気が感じられました。

前半は,レジェンドたちから指導を受けている,若手奏者による室内楽曲が3曲(いずれも抜粋)演奏されました。こちらも素晴らしい演奏の連続でした。今回の会場の富山市民プラザ アンサンブルホールに来たのは初めてでしたが,その名のとおり,室内楽の「アンサンブル」にぴったりのホールで,各楽器が音が非常によく聞こえる一方,天井が高いこともあり,適度な残響もあり音楽が伸びやかに聞こえます。若手奏者たち演奏には,音楽の緻密さと生きの良さが同居しており,集中して楽しむことができました。

特に最初に,クァルテット・インテグラが演奏した,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番の抜粋は,4人が一体となって有機的な音楽を作り上げており,素晴らしいと思いました(全曲を聞いてみたかったところです)。

この「とやま室内楽フェスティバル」は,若手アーティストに対しての教育プログラムも行っているせいか,すべてが無料公演というのが特徴です。今回の公演も,無料というのが信じられないぐらいのレベルの高い演奏でした(さすがに入場整理券が必要でしたが)。

本日は17:30ぐらいに金沢を出発したので,間に合うか微妙なところでしたが,無事開演5分前にホールに到着。高速料金は,金沢森本IC~富山IC片道1260円(軽自動車),それに駐車料金500円(意外に安かったです)ということで,総額約3000円ぐらい掛かったのですが,来年度も同様な感じで聞きに行っても良いかなと思いました。

さらに,「何とかサインをもらおう」と思い,「出待ち」をして,伝説の元東京カルテットの3人から,うまい具合にサインをいただけました。こちらもまた良い思い出になりました。

2019/10/24

若松みなみ ソンジュン・キム ジヌウ・パク ピアノトリオの夕べ。ピアノ三重奏曲4曲が盛り込まれた,聴きごたえ十分の演奏会でした。

今晩は石川県立音楽堂では,楽都音楽祭「秋の陣」の「声楽の日」コンサートも行われていたのですが...そちらの方は断念し,金沢市アートホールで行われた,OEKのヴァイオリン奏者,若松みなみさん,同じくチェロ奏者のソンジュン・キムさん,そして,ジヌウ・パクさんのピアノによるピアノトリオの夕べの方を聞いてきました。金沢でピアノ三重奏曲をこれだけまとめて聞ける機会は少ないと思い,こちらを選択したのですが,期待以上にボリューム感満点の演奏会となりました。

演奏されたのは,ベートーヴェン,ブラームス,ドビュッシーのピアノ三重奏曲のそれぞれ「第1番」でした(ドビュッシーの曲は,「1番」ではないのですが,これ1曲しか作っていません)。いずれも若い時の作品ですが,今回の3人の演奏にも若々しさがありました。

今回,ゲストのような形で参加したジヌゥ・パクさんのピアノには,速いパッセージになるほど精気が増してくるような鮮やかさがありました。ベートーヴェンの1番(この曲は,作品1の1ということで,「1尽くし」です)は特に若々しい気分のある曲で,特にその演奏が冴え渡っていました。

最後に演奏されたブラームスの1番の方は,ソンジュン・キムさんの朗々とした伸びやかさのあるソロで始まった後,若松みなみさんのヴァイオリンを加えて,気持ちよくぐいぐいと進んで行きました。最終楽章のほの暗い熱さのある演奏が特に印象的でした。

ドビュッシーの曲については,そもそもピアノ三重奏曲があったことを今回初めて知ったのですが,「こんな素直で分かりやすい曲を作っていたのだなぁ」と思わせるほど,親しみやすい作品でした。ヴァイオリンとチェロを中心とした「しあわせ感」たっぷりの響きが,本当に心地よく響いていました。

この3曲とも,25分以上はかかる作品だったのですが,さらにもう1曲,間奏曲のような形で,シューベルトのノットゥルノが演奏されました。この曲は対照的にシューベルト最晩年の作品で,美しく透明感のあるハモリの中に不思議な寂しさが漂っていました。

ピアノ三重奏というスタイルは,室内楽でありながら,ヴァイオリンとチェロがソリスティックに活躍したり,二重奏のように美しくハモったり,各楽器が名人芸を聞かせたり...他の室内楽にはない,華やかさがあると感じました。演奏会の最後で,若松さんは,「ピアノ三重奏曲には名曲が沢山あります。これからもこの3人で演奏していきたい」といったことを語っていました。是非,今後も続けていって欲しいと思います。

ソンジュン・キムさんが最後に「本日は好きな曲を盛り込みすぎたので,アンコールはありません」と語っていましたが,その言葉どおり,充実の4曲を充実の演奏で楽しませてくれました。この3人による,ピアノ三重奏曲シリーズには,今後も期待したいと思います。

2019/10/22

風と緑の楽都音楽祭の延長戦企画 #ガル祭:秋の陣の #ピアノの日公演。#山田ゆかり さん,#竹田理琴乃 さん,#木米真理恵 さんによるピアノ協奏曲をたっぷりと楽しんできました。次年度以降も色々な楽器で定着していって欲しい企画です

本日は,毎年,春の連休中に行われている「風と緑の楽都音楽祭(ガル祭)」の延長戦企画といっても良い「ガル祭:秋の陣」を聞いてきました。この音楽祭については,ここ数年,秋にも実施する形に変わって来ているのですが,今年は「ピアノの日」「声楽の日」というネーミングを付けて,2日に分けて,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と地元アーティストとが共演する形になっています。

本日は「ピアノの日」で,松井慶太指揮OEKと,金沢市出身の山田ゆかりさん,竹田理琴乃さん,木米真理恵さんの3人のピアニストが共演をしました。OEKと地元アーティストの共演といえば,北陸新人登竜門コンサートがありますが,3人とのその出身者です。このコンサートへの出演をきっかけとして,ガル祭を中心とした,地元での活躍が広がるという流れができつつありますが,今回の「秋の陣」はその総決算と言っても良い内容でした。

3人が演奏した曲は,山田さんがモーツァルトのピアノ協奏曲第23番,竹田さんがショパンのピアノ協奏曲第1番,木米さんがリストのピアノ協奏曲第1番でした。いずれも大変魅力的な作品。それを一気に3曲楽しめた,豪華さのあるプログラムとなっていました。

もちろん演奏内容も安心して楽しめるものでした。3人とも金沢を中心にOEKメンバーとの共演を含め,頻繁に演奏会を行っていますので,いわばずっと応援している「ご当地アイドル(?)」の晴れ舞台を見るようなワクワク感のようなものを感じていました。

山田さんのモーツァルトは,非常に軽やかな演奏でしたが,常に落ち着いた雰囲気がある,大人のモーツアルトだと思いました。特に第2楽章のシンプルな明るさの裏に常に深い思いが潜んでいるような雰囲気が良いなぁと思いました。

竹田さんのショパンは十八番と言っても良いのではないかと思います。新人登竜門コンサートでは,確か第2番の方を演奏しましたが,今回の第1番も素晴らしい技巧に支えられた,美しい演奏を聞かせてくれました。特にロマンティックな気分と瑞々しさの両立した第2楽章と非常にノリの良い鮮やかな音楽を聞かせてくれた第3楽章の対比が素晴らしいと思いました。

木米さんのリストは,楽器編成的にOEKが演奏する機会が少ない曲です。そういった作品を堂々たる演奏で楽しむことができました。金管楽器のパリッとした響きをがっしりと受け止め,浮ついた感じになることなく,正攻法で弾ききっていました。

というわけで,初めての試みである「秋の陣:ピアノの日」は大成功だったと思います。是非,今度は「弦の日」「管の日」にも期待したいと思います。

今回少し気になったのは,前半の演奏時間の長さでしょうか。モーツァルトとショパンが前半だったので,1時間以上かかり,少々疲れていたお客さんがいたような気がしました。竹田さんの演奏中,盛大にくしゃみをしている人がいましたが...ホール内が少々寒かったかもしれませんね。

というわけで,この際ゆったりと休憩2回でも良いのかなと思いました。

いずれにして,今年になってからOEKと地元ピアニストが共演する協奏曲公演が続いているのが嬉しいですね。ガル祭での,グリーグのピアノ協奏曲(平野加奈さんとの共演),岩城メモリアル公演でのベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番(鶴見彩さんとの共演),そして今回の3人。音楽祭の名前に「楽都」という単語が入っていますが,確実にそうなりつつあるなぁと実感をしているところです。

さて,今回は10月24日に「声楽の日」も行われ,是非行ってみたいのですが...この日はOEKのヴァイオリン奏者,若松みなみさんとチェロ奏者,ソンジュン・キムさんを中心とした室内楽公演もありますね。こちらも非常に充実したプログラムなので,どちらに行くか迷っているところです。

2019/10/12

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として #室生犀星記念館 主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサート@金沢21世紀美術館へ。詩と音楽のどちらも楽しめました。金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として室生犀星記念館主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサートが金沢21世紀美術館で行われたので,夕方から参加してきました。行けるかどうか,微妙な状況でしたが,金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

個人的には,オンド・マルトノという楽器を一度,生で見てみたい,聞いてみたい。しかも演奏は原田節さん。というあたりが注目ポイントだったのですが,谷川賢作さん作曲による,犀星・朔太郎・中也の詩につけた曲を原田さんが,オンド・マルトノを弾きながら,味わい深く歌うというのが実に良かったですね。

企画の趣旨としては,「犀星の詩」が主役で,「動物詩集」の詩につけられた,ユーモアあふれる曲を聞きながら,日本版「動物の謝肉祭」が作れるかも,と思いました。その他の詩人の曲では,ちょっと自虐的な感じのする,中也の「詩人は辛い」が面白かったですね。クラシック音楽の鑑賞にも通じるような内容だったので,じっくりと読んでみたいと思いました。

谷川さんの父上の俊太郎さんの詩,武満徹の曲による「ぽつねん」も,聞かせる曲でした。老婆を描いた作品で,ユーモアと同時に身につまされるような,怖さのようなものもありました。

谷川さんの曲は,ジャズ,タンゴ,クラシック,シャンソンなど色々なテイストが合わさったもので,多彩な詩の雰囲気にぴったりでした。そこに原田さんのオンド・マルトノの音が重なります。この楽器の音を生で聞くのは初めてでしたが,妙に艶めかしいヴィブラートがかかったり,邪悪な激しさがあったり,とても表現力が豊かで,人間の声に近い表情を持った楽器だと思いました。もちろんこれは,原田さんの技巧によるものだと思います。自分の声の一部になったような感じで,自由自在に多彩な音を出していました。

そして,原田さんの歌。「日本版トム・ウェイツ」と谷川さんは紹介されていましたが(実は...よく分からないのですが),不思議な味と力のある歌でした。最後のコーナーでは,原田さんはフランス語で色々な曲(夢見るシャンソン人形,いつものように(マイウェイのオリジナル版))を歌ったのですが,正真正銘,人生の悲哀を感じさせるシャンソンだなぁと思いました。
谷川さんと原田さんによる,CDを販売していたので,記念に買ってみようかな...と思ったのですが...うっかりほとんどお金を持っていないことに気付き,何も買わずにおきました(駐車場料金だけは確保しておかないといけないので)。

谷川さんは,大変おしゃべりの好きな方で,実は東京の自宅のことが大変気になっていますということでした。谷川さんの自宅に限らないことですが,何とか今晩を切り抜け,災害が少しでも少なくなることを祈っております。

マルク・ミンコフスキ指揮OEK マイスター定期は増強した編成によるドヴォルザーク特集。スラヴ舞曲op.72全曲と「新世界から」は,どちらも「ドヴォルザーク愛」にあふれた,熱くて深い演奏。外の雨とは「別世界」でミンコフスキさん音楽に浸ってきました。

本日は台風が関東・東海地方に迫る中,OEKの芸術監督,マルク・ミンコフスキ指揮によるマイスター定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。プログラムは協奏曲なしのミンコフスキさんの指揮を楽しむプログラム。前半がドヴォルザークのスラヴ舞曲作品72(全曲),後半がドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」というドヴォルザーク特集でした。

ミンコフスキさんとドヴォルザークという組み合わせは,意外な気はしましたが,前半後半とも,ミンコフスキさんの「ドヴォルザークへの愛」が伝わってくるような,素晴らしい演奏でした。

前半のスラヴ舞曲集は,CDはかなり出ていますが,実演でこれだけまとまって演奏されることは珍しいと思います。特に,作品46の「続編」である,作品72の8曲の方は,超有名曲の72-2以外は,知る人ぞ知るといった曲が多いのではないかと思います。私自身,作品72の全曲を実演で聞くのは初めてでしたが,「スラヴ組曲」といった感じの多様性を感じさせる,聴きごたえのある演奏になっていたと思います。

もともとスラヴ舞曲の方は,速いテンポの舞曲とゆったりしたテンポの曲がバランス良く混ざっています。今回のOEKは弦楽器をかなり増強しており,12-10-8-8-4というフルオーケストラに近い編成でした。そのことにより音の重量感が増していました。その一方で,ミンコフスキの指揮は演奏全体にエネルギーを与えるような感じで,重量感とキレの良い動きが見事に合体していました。

曲の中では,最後の第8番が特に素晴らしい演奏だったと思います。夢見心地のようなしっとりとした気分のある演奏で,第1番~第7番までの生き生きとした世界を美しく,懐かしく振り返っていました。

後半はお馴染みの「新世界から」。ホールの外は,雨が降り続いていましたが,ホールの中は「別世界」。ミンコフスキさんの指揮にもお馴染みの曲に,新たなエネルギーを注入したような,気合い十分の演奏。「別世界から」という演奏だったと思いました。

前半のスラヴ舞曲同様,どの部分にもミンコフスキさんの「ドヴォルザーク愛」が感じられ,それがOEKの演奏のエネルギーになっていました。この日のコンサートミストレスは,アビゲイル・ヤングさんでしたが,そのお隣には水谷晃さん。チェロの首席奏者の方は客演の辻本玲さん。演奏全体を通じて,各パートが競い合いながらも一体となって盛り上がるような「熱気」がありました。

その一方,静かな楽章では,じっくりと間を取る部分があり,その「静けさ」に凄みを感じました。OEKにとって,「新世界から」は頻繁に演奏できる曲ではありません。恐らく,ミンコフスキさんにとっても,新たなレパートリーなのではないかと思います。その新鮮さが,「熱さ」と「深さ」につながっていた気がしました。

というわけで,雨の中出かけてきて,本当に良かったと思いました。この日の演奏会は北陸朝日放送が収録を行っていましたが,そろそろ,ミンコフスキさん指揮OEKによるCD録音を期待したいと思わせるような素晴らしい演奏会でした。

2019/10/06

石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会。バーンスタイン,スターウォーズ組曲,マーラーの「巨人」という素晴らしいプログラム。大編成オーケストラの魅力をしっかり楽しめました。

本日は,2019ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一貫で行われた,石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。本日は同じ時間帯に,話題のピアニスト,藤田真央さんのリサイタルが市内で行われるなど,いくつか演奏会が競合しており(ついでに言うと大相撲金沢場所もやっていましたね),どれに行くか迷ったのですが,マーラーとジョン・ウィリアムズに惹かれて,石川フィルの演奏会を選びました。公演パンフレットにも書かれていたとおり,石川フィルさんは,通常の定期公演とビエンナーレの特別公演の場合とで方針を変えているようで,今回は大編成の難曲に挑戦する形になりました。

プログラムの前半は,バーンスタインのキャンディード序曲とウィリアムズのスターウォーズ組曲でした。キャンディード序曲は,長年,開幕にぴったりの充実感のある演奏でした。最初の元気のよい部分も良かったのですが,中間部に出てくる「求婚のテーマ」にも落ち着いた味があって特に印象的でした。それにしても...この曲は結構長い間「題名の音楽会」のテーマ曲だったので,曲が始まると,佐渡裕さんの顔が浮かんできてしまいますね。

「スターウォーズ」の音楽については,ベルリン・フィルが取り上げたり,グルターヴォ・ドゥダメルが取り上げたり,徐々にクラシック音楽化して来ている印象もあるのですが,金沢で「メインタイトル」以外の曲をまとめて聞く機会は少ないと思います。今回演奏された組曲は,作曲者自身が選曲した5曲で,1970年代から1980年代に公開された最初の三部作の音楽から成っていました。

メイン・タイトルについては,最初のファンファーレが鳴った途端,サントラと同じだと嬉しくなりました。途中,ホルストの「惑星」のような感じになっていくのですが,この辺は実演で聞くと,特に良いですね。組曲を通じて,フルートが素晴らしい演奏だったと思いました。SFにぴったりのクールな音でした。

「レイア姫のテーマ」と「ヨーダのテーマ」は,しっかり意識して聞いたことはなかったんですが,プログラムの解説を読みながら聞くと,「なるほど」と思いました。ライトモチーフをしっかりと組み合わせて,意味を込めていたり,素直な調性にして,健全な響きを出していたり,という作曲者の意図がよく伝わってきました。

「ダース・ベイダーのテーマ」は,「帝国のマーチ」ということで,メイン・タイトルの次に有名な曲ですね。指揮者の花本さんは,指揮棒を指揮台の下に用意してあったライトセイバー(それとも,日本刀のおもちゃ?遠くからだと判別できませんでした)に持ち替えての指揮でした。弦楽器のトップ奏者の頭を叩けそうな感じでした。この曲は,結構,色々な場所で聞くようになってきたので,曲想とは別に,聞くと妙に嬉しくなってしまうところがあります(個人の感想です)。

最後は,「王座の間」の音楽でした。この音楽には,落ち着きと華やかさがあり,映画同様,組曲の最後に聞くとしっかりと締まりますね。5曲セットで,小型交響曲を聞いたような充実感のある演奏でした。

後半のマーラーの交響曲第1番「巨人」が演奏されました。石川フィルは11年前にもこの曲を演奏しており,花本さんの指揮で聞いたことがあるのですが,熟練の指揮ぶりで,第4楽章のクライマックスに向けて大きく盛り上がる音楽を聞かせてくれました。

プレトークで,第1楽章の冒頭は弦楽器のフラジオレットを使っていること,第3楽章にはコントラバスとテューバという低音楽器による珍しいソロがあること,などオーケストラのメンバーを交えて紹介をしてくれました。プログラムの解説もとても充実しており,曲をさらに楽しむことができました。

第1楽章では,楽章の後半で,一気に目が覚めて,「自然」が動き出すような感じが鮮やかに表現されていると思いました。ホルン全員で力強く演奏する部分がバシッと決まっていて良かったですね。第2楽章は落ち着いたテンポのレントラー舞曲でした。トリオでの弦楽器の優しい音も非常に魅力的でした。第3楽章のコントラバス・ソロからは,素直な民謡風のメロディから,自然に哀愁がにじみ出ていました。テューバのソロは,実はこれまであまり意識して聞いたことはなかったのですが,良い味を出しているなぁと思いました。

第4楽章は,まず冒頭のシンバルの強烈の響きが良かったですね。その後は,プログラムの解説に書いてあった,「半音階で下がっていく不吉なモチーフ」に注目してみたのですが,このモチーフが結構しつこく何回も出てくるのが分かり大変面白く聞くことができました。途中対照的に弦楽器による美しいメロディが出てきますが,こちらの方は非常にねっとりと演奏されており,「マーラーの音だ!」と思いました。このメロディを聞くといつもずっと浸っていたいと思います。その辺の対比が続いた後,最後の大きな盛り上がりへとつながっていきます。

この日は,前半のジョン・ウィリアムズの時から「トランペットが大変」というプログラムということもあって,7人もトランペットがいましたが,この最後の部分では全員一斉に演奏していました(多分)。ティンパニ2台を中心とした打楽器の激しい連打と一体となって,滅多に味わえないような強烈な響きで全曲を締めてくれました。こういう響きを聞くと,アマチュアオーケストラの熱い演奏はいいねぇと思います。

マーラーの交響曲の後だったので,アンコールはないかも,とも思ったのですが,何と「花の章」(「巨人」のオリジナル版にあった楽章)が演奏されました。そうなってくると,最初から「花の章付き」で演奏しても良かった気もしましたが,今回の演奏を聞いて,アンコールにぴったりの曲だと思いました。

とてもリラックスした感じの曲なので,大曲の演奏の後にぴったりでした。トランペットが大活躍する曲なので,「お疲れのところ,もうひと頑張り」という感じもあったのですが,今回は7人も奏者がいたので,「花の章」のトランペットのパートを全員で分担して演奏していました。こういうのもとても良いと思いました。

というわけで,大編成のオーケストラ作品を,熱い演奏で気持ちよく楽しめた演奏会でした。

2019/10/03

念願の #イ・ムジチ合奏団 with #小松亮太 金沢公演。2つの「四季」を中心に,お客さんは大喜び。昭和時代からの念願がようやく叶い,イ・ムジチの魅力を体感できた演奏会でした。終演後の大サイン会も大盛況

本日はイ・ムジチ合奏団の来日公演の金沢公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。ゲストはバンドネオン奏者の小松亮太さんでした。

イ・ムジチ合奏団は,私がクラシック音楽を聞き始めた昭和時代から,クラシック音楽やバロック音楽の定番中の定番でした。特にヴィヴァルディの「四季」については,イ・ムジチの名前とセットになって,日本に定着していったのではないかと思います。その後,古楽器による演奏や古楽奏法によるバロック音楽の演奏が定着していく中で,イ・ムジチについては,やや影が薄くなって来た印象を持っていたのですが,本日の演奏を聞いて,「さすが,イ・ムジチ。永遠に不滅かも」という実感を持ちました。

あえて元号で言うと,昭和時代,皆で同じものを聞いて楽しんでいた時代の良さのようなものを思い出させてくれる気がしました。もちろん,イ・ムジチの「四季」についても,コンサートマスターが変わるたびに,演奏のスタイルがどんどん変化してきており,今回の演奏も,私が最初に聞いた,フェリックス・アーヨの時代のロマンティックと言っても良いような甘さが漂う演奏とは全く違うのですが,お客さんに対する姿勢というのはずっと一貫しているのでは,と思いました。イ・ムジチの演奏を聞くのは,実は今回が初めてだったので,「長年の念願がかなった!」といううれしさと同時に,明るく健康的なイタリア音楽を品良く楽しませてくれる,というスタイルが一貫していることが何よりも素晴らしいと思いました。

イ・ムジチについては,来日直前にコンサートマスターのアントニオ・アンセルミさんが亡くなるという予期せぬ出来事があり,今回のコンサートマスターはマッシモ・スパダーノさんが担当していました。その交代によって演奏のスタイルに変化があったのかは分からないのですが,近年の古楽奏法を取り入れたような解釈や,くっきりとメリハリをつけた,モダンな感覚があり,時代とともにマイナーチェンジを続けているのだなと思いました。

それが過激にはならず,健全でバランスの良い品の良さに支えられているのがイ・ムジチの良さだと思います。今回の「四季」も,たっぷりと歌わせるというよりは,やや速めのテンポの演奏で,しっかりと抑制を聞かせながらも,スパダーノさんを中心とした名技をしっかり聞かせ,全体として,明るくスタイリッシュに楽しませてくれるような演奏だったと思いました。

前半は,バンドネオンの小松亮太さんとの共演でした。小松亮太さんは,石川県立音楽堂ができて間もないころ,一度,OEKと共演していた記憶がありますが,演奏を聞くのはその時以来です。イ・ムジチの「四季」とバランスを取るかのように,ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」を中心にラテン系の曲を聞かせてくれました。

ピアソラの「四季」の方は,オリジナルは室内楽的な編成のはずですが,クラシック音楽の演奏会で演奏される機会も増えて来ています。特にイ・ムジチとの共演で聞くと,後半のヴィヴァルディと全く違和感なく,クラシック音楽として楽しむことができました。その分,ギラギラとした生々しさのようなものは消えていたのかもしれませんが,「本家・四季」からのれん分けした,新たなブランドを楽しむような面白さを感じました。

それにしても,小松さんのバンドネオンの音は耳と心に染みます。まっすぐな純真さとちょっと怪しげな空気が同居しているような魅力を感じました。ピアソラの曲以外に,小松さん自身による「夢幻鉄道」という作品が演奏されましたが,そのタイトルどおりの気分に惹かれました。

そして,この演奏会では,アンコールが大変充実していました。

前半では,小松さんがアンセルミさんを偲んでピアソラの「オビリビオン」を演奏しました。亡き人を静かに,しかし強く偲ぶような深い音楽でした。

後半でも,アンセルミさんを偲んでのヴェルディのアヴェ・マリア(「4つの聖歌」の中の1曲を弦楽合奏にアレンジしたもの)が素晴らしい演奏でした。美しいハーモニーにいつまでも浸っていたいと思いました。

そして,それ以外に何と3曲もアンコールが演奏されました。「夕焼け小焼け」を弦楽合奏用にアレンジした曲は,日本公演向け(もしかしたら定番曲なのでしょうか)のアンコールですが,お客さんも大喜びでした。最後の「1分で終わる」(チェロの方の紹介の言葉です)アンコールの後は,イ・ムジチの皆さんが客席に向かって手を振り,多くのお客さんがステージに向かって手を振り返すという,しあわせ感一杯の雰囲気で終了。

さらに,メンバー全員+小松亮太さんによるサイン会も行われました。これまで何回もサイン会に参加してきましたが,総勢13人がずらっと並ぶサイン会というのは...前例がないかもしれません。イ・ムジチ合奏団の日本での人気の高さは,こういう部分にもあるのかなと思いました。

何というか...昭和時代からの念願がようやくかなったような演奏会でした。

2019/10/01

今晩は,石川県立音楽堂で アンサンブル・ウィーン=ベルリン と アンサンブル金沢 の饗宴による贅沢なモーツァルト尽くしを楽しんで来ました。最後に演奏された,名優のセリフが延々と続くような協奏交響曲を聞いて,満腹しました。さすがのアンサンブルでした

今晩は,ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一環で行われた,アンサンブル・ウィーン=ベルリンとユベール・スダーンさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるモーツァルト尽くしの演奏会を聞いてきました。

アンサンブル・ウィーン=ベルリンは,ウィーン・フィルとベルリン・フィルの首席管楽器奏者を中心とした木管五重奏団です。管楽器のソリストとOEKの共演ならば,過去何回もありましたが,管楽アンサンブルとOEKとの共演というのは初めてのことかもしれません。超有名な2つのヴィルトーゾ・オーケストラの首席奏者たちとOEKの共演ということで,お客さんだけではなく,OEKメンバーにとってもスリリングな公演だったのではないでしょうか。

まず,5人の奏者を歓迎するように,OEKお得意のモーツァルトの「ハフナー」交響曲がビシっと演奏されました。今回はバロック・ティンパニを使っていたこともあり,スダーンさんが指揮するモーツァルトには,古楽奏法を思わせるような響きがありました。ビシッと引き締まった雰囲気の中,さらっと流れるような雰囲気もあり,開演にぴったりの華やかさと軽やかさがありました。

続いて,アンサンブル・ウィーン=ベルリンの5人が登場し,モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」」の中の5つの曲を木管五重奏に編曲したものが演奏されました。当初はモーツァルトの木管五重奏曲(弦楽五重奏を木管で演奏する編曲)の予定でしたが,演奏時間的に見ると,「コジ・ファン・トゥッテ」の方が丁度良いのではないかと思いました。

この演奏を聞いて,まず5人の奏者が作り出す,スケール感が素晴らしいと思いました。5人による演奏にも関わらず,「オーケストラが演奏を始めた?」と思わせる,豊かさを感じました。途中の曲では,5人の奏者それぞれが対話をするように進んだり,各奏者の華やかな見せ場があったり,全く退屈しませんでした。複数のオーケストラのメンバーによるアンサンブルとは思えないほど,演奏全体に安定感とまとまりがあるのに加え,上述のようなスケール感もあり,安心してモーツァルトのオペラの世界に身を任すことができました。

後半はOEKとアンサンブル・ウィーン=ベルリンとの共演になりました。最後に演奏される協奏交響曲K.297b(モーツァルトの作品なのか疑われているけれども,とても良い曲で,有名な作品)には,オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルンのみが参加するということで,まず,フルート協奏曲第1番が演奏されました。

カール=ハインツ・シュッツさんの演奏からは,どこまでも広がっていくような,伸びやかな自由さを感じました。音自体は引き締まっており,古典派の作品らしい,まとまりの良さがあるのも良いなぁと思いました。

演奏会の最後に演奏された,協奏交響曲には,トリに相応しい華麗な気分がありました。くっきり,バシッと決まったジョナサン・ケリーさんのオーボエ,明るく楽天的な心地よさのあったアンドレアス・オッテンザマーさんのクラリネット,楽々と柔らかい音を操るシュテファン・ドールさんのホルン,そして,存在感たっぷりだけれども,しっかりと全体を包み込むようなリヒャルト・ガラーさんのファゴット。闊達に対話をするように演奏する一方で,しっかり,OEKと溶け合うようなオーケストラ的な音を聞かせてくれました。

最終楽章は変奏曲形式ですが,この4人の奏者による名人芸やアンサンブルが,これでもかこれでもかと続く贅沢さがあり,すっかり満腹という感じになりました。この日のお客さんの数は,もったいないことにあまり多くなかったのですが,盛大な拍手が続き,皆さん大満足といった感じで演奏会は終了しました。

ベルリン・フィルやウィーン・フィルのメンバーとOEKとは,ヴェンツェル・フックスさんをはじめとして,結構頻繁に共演をしていますが,木管アンサンブルとオーケストラの共演には,また格別の面白さと贅沢さがあると感じました。

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