OEKのCD

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2019/10/03

念願の #イ・ムジチ合奏団 with #小松亮太 金沢公演。2つの「四季」を中心に,お客さんは大喜び。昭和時代からの念願がようやく叶い,イ・ムジチの魅力を体感できた演奏会でした。終演後の大サイン会も大盛況

本日はイ・ムジチ合奏団の来日公演の金沢公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。ゲストはバンドネオン奏者の小松亮太さんでした。

イ・ムジチ合奏団は,私がクラシック音楽を聞き始めた昭和時代から,クラシック音楽やバロック音楽の定番中の定番でした。特にヴィヴァルディの「四季」については,イ・ムジチの名前とセットになって,日本に定着していったのではないかと思います。その後,古楽器による演奏や古楽奏法によるバロック音楽の演奏が定着していく中で,イ・ムジチについては,やや影が薄くなって来た印象を持っていたのですが,本日の演奏を聞いて,「さすが,イ・ムジチ。永遠に不滅かも」という実感を持ちました。

あえて元号で言うと,昭和時代,皆で同じものを聞いて楽しんでいた時代の良さのようなものを思い出させてくれる気がしました。もちろん,イ・ムジチの「四季」についても,コンサートマスターが変わるたびに,演奏のスタイルがどんどん変化してきており,今回の演奏も,私が最初に聞いた,フェリックス・アーヨの時代のロマンティックと言っても良いような甘さが漂う演奏とは全く違うのですが,お客さんに対する姿勢というのはずっと一貫しているのでは,と思いました。イ・ムジチの演奏を聞くのは,実は今回が初めてだったので,「長年の念願がかなった!」といううれしさと同時に,明るく健康的なイタリア音楽を品良く楽しませてくれる,というスタイルが一貫していることが何よりも素晴らしいと思いました。

イ・ムジチについては,来日直前にコンサートマスターのアントニオ・アンセルミさんが亡くなるという予期せぬ出来事があり,今回のコンサートマスターはマッシモ・スパダーノさんが担当していました。その交代によって演奏のスタイルに変化があったのかは分からないのですが,近年の古楽奏法を取り入れたような解釈や,くっきりとメリハリをつけた,モダンな感覚があり,時代とともにマイナーチェンジを続けているのだなと思いました。

それが過激にはならず,健全でバランスの良い品の良さに支えられているのがイ・ムジチの良さだと思います。今回の「四季」も,たっぷりと歌わせるというよりは,やや速めのテンポの演奏で,しっかりと抑制を聞かせながらも,スパダーノさんを中心とした名技をしっかり聞かせ,全体として,明るくスタイリッシュに楽しませてくれるような演奏だったと思いました。

前半は,バンドネオンの小松亮太さんとの共演でした。小松亮太さんは,石川県立音楽堂ができて間もないころ,一度,OEKと共演していた記憶がありますが,演奏を聞くのはその時以来です。イ・ムジチの「四季」とバランスを取るかのように,ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」を中心にラテン系の曲を聞かせてくれました。

ピアソラの「四季」の方は,オリジナルは室内楽的な編成のはずですが,クラシック音楽の演奏会で演奏される機会も増えて来ています。特にイ・ムジチとの共演で聞くと,後半のヴィヴァルディと全く違和感なく,クラシック音楽として楽しむことができました。その分,ギラギラとした生々しさのようなものは消えていたのかもしれませんが,「本家・四季」からのれん分けした,新たなブランドを楽しむような面白さを感じました。

それにしても,小松さんのバンドネオンの音は耳と心に染みます。まっすぐな純真さとちょっと怪しげな空気が同居しているような魅力を感じました。ピアソラの曲以外に,小松さん自身による「夢幻鉄道」という作品が演奏されましたが,そのタイトルどおりの気分に惹かれました。

そして,この演奏会では,アンコールが大変充実していました。

前半では,小松さんがアンセルミさんを偲んでピアソラの「オビリビオン」を演奏しました。亡き人を静かに,しかし強く偲ぶような深い音楽でした。

後半でも,アンセルミさんを偲んでのヴェルディのアヴェ・マリア(「4つの聖歌」の中の1曲を弦楽合奏にアレンジしたもの)が素晴らしい演奏でした。美しいハーモニーにいつまでも浸っていたいと思いました。

そして,それ以外に何と3曲もアンコールが演奏されました。「夕焼け小焼け」を弦楽合奏用にアレンジした曲は,日本公演向け(もしかしたら定番曲なのでしょうか)のアンコールですが,お客さんも大喜びでした。最後の「1分で終わる」(チェロの方の紹介の言葉です)アンコールの後は,イ・ムジチの皆さんが客席に向かって手を振り,多くのお客さんがステージに向かって手を振り返すという,しあわせ感一杯の雰囲気で終了。

さらに,メンバー全員+小松亮太さんによるサイン会も行われました。これまで何回もサイン会に参加してきましたが,総勢13人がずらっと並ぶサイン会というのは...前例がないかもしれません。イ・ムジチ合奏団の日本での人気の高さは,こういう部分にもあるのかなと思いました。

何というか...昭和時代からの念願がようやくかなったような演奏会でした。

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