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2019年11月

2019/11/29

岩城宏之さんの遺産の一つ,ジュリアン・ユー編曲による室内オケ版「展覧会の絵」は,多彩で大胆な響きの連続。大変楽しめました。津田裕也さんの「平然と美しい」ピアノによるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番も絶品でした。

昨日のリハーサル見学に続き,本日はオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演マイスター・シリーズを聞いてきました。指揮は,常任客演指揮者の川瀬賢太郎さん,ピアノは津田裕也さんでした。

本日の公演の面白さは,まず選曲にありました。最初にオリバー・ナッセンがムソルグスキーの作品をオーケストレーションした「ムソルグスキー・ミニアチュアズ」,次にショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番。最後にムソルグスキー作曲,ジュリアン・ユー編曲による室内オーケストラのための「展覧会の絵」が演奏されました。現代の作曲家がアレンジした,「ひねりの効いた」ムソルグスキーの作品と,いつもとは一味違って「結構,素直な感じの」ショスタコーヴィチという,川瀬さんこだわりのプログラムでした。そして,その狙いどおりの,大変面白い演奏会になりました。

最初の「ムソルグスキー・ミニアチュアズ」は小品2曲ということで,フルコースの前菜のような感じの位置づけでした。ムソルグスキーというよりは,メンデルスゾーンといった趣きのある,愛らしい曲2曲。この曲を聞きながら,作曲者の故オリバー・ナッセンさんは,大変体格が立派な方だったなぁということを思い起こしました。大きなナッセンさんが作った,珠玉の小品といった作品でした。

続く,ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番は,昨日,リハーサルを聞いたばかりだったので,特に面白く聞くことができました。古典的といって良いような明快さのある曲想で,両端楽章の生き生きとした表情がまず印象的でした。冒頭,ファゴットが軽快なメロディを演奏するのですが,飯尾洋一さんのプログラム解説に書かれていたとおり,「なるほど,チャイコフスキーの「悲愴」交響曲の第3楽章の主題とよく似ているなぁ」と思いました。

それを受けて出てくる津田裕也さんのピアノは非常にクリアで,力んだところのない,心地良い音を聞かせてくれました。派手なパフォーマンスはなく,平然と地に足のついたタッチで鮮やかな音楽を楽しませてくれました。初めて実演で聞く曲でしたが,「絶品!」と思いました。

第2楽章は,川瀬さんが「ショスタコーヴィチのすべての曲の中でも特に美しい部分」とおっしゃられていたとおりの楽章でした。ショスタコーヴィチの緩徐楽章は,美しさと同時に冷たさとか不気味さが漂うのが定番ですが,この楽章については,素直に美しく,ほのかにロマンティックな気分も漂っていました。息子(指揮者として有名なマキシム・ショスタコーヴィチ)のために書いた曲という点が反映しているのだと思います。津田さんのスタイルにぴったりの楽章でした。

第3楽章は再度軽快な雰囲気に戻りますが,途中,ピアノ練習曲の定番「ハノン」のパロディ風パッセージが出てくるあたりが面白いところです。津田さんは,この部分も平然と鮮やかに演奏しており,お客さんは唖然として聞いているといった感じでした。

アンコールで演奏されたショパンのマズルカのしっとりとした落ち着きも絶品でした。金沢の冬の空気にピッタリでした。

後半の「展覧会の絵」は,数あるこの曲の編曲の中でも特に型破りなものだと思います。OEKは故岩城宏之さんとこの曲を演奏しており,CD録音も残していますが,実演で聞くとそれを遙かに上回るような面白さを体感できました。多彩で大胆な響きの連続でした。

岩城さんの録音と違うのは,弦楽器の人数をOEKの通常の編成で演奏していることです。特にジュリアン・ユーの楽譜には人数についての指示はなく,岩城さんは弦楽器各1名という「超室内オケ」編成で演奏していたのですが,今回は編成を大きくすることで,より響きの多様性が表現されていたと思いました。

「展覧会の絵」といえば,まず「プロムナード」のメロディが印象的ですが,ジュリアン・ユー版では,ヴィオラが演奏します。ラヴェル版でのトランペットとはあえて正反対の音を使ったという感じです。この日は,おなじみダニール・グリシンさんが担当していましたが,あらためて「素晴らしい音だ」と思いました。大きく浮遊するような,不思議な大らかさが漂っていました。基本的にプロムナードが出てくるたびにグリシンさんが活躍していたので,絵を見て回っている「お客さん」役を担当していたとも言えます。

その次に活躍が目立ったのが,エキストラの河野玲子さんをはじめとする打楽器奏者の皆さんでした。シロフォンなどの鍵盤打楽器が加わって,急に「中国風」の雰囲気になったり,多種多様な音を楽しませてくれました。

その他の楽器(というが,すべてのパートだと思います)も,特殊奏法続出で,次から次へと音色やテクスチュアが変化していきました。ピアノ版だと素直に一続きのメロディを,複数の楽器に分けて,妙なぎこちなさを強調したり,管楽器の方々に「音」を出さずにヒューという息の音だけを出させたり,SF映画の音楽のようになったり...「技のデパート金沢支店(?)」という感じでした。恐らく,バランス良くまとめるのは難しかったと思うのですが,川瀬さんは非常に精緻,かつ生き生きと各曲を聞かせてくれました。

最後の「キエフの大門」も独特でした。最後の最後の部分は...最近では「珍百景」の音楽ですが...大げさに盛り上がるのを避け,室内楽的な雰囲気のまま進んでいきました。そして最後,チャイムの音の余韻をしっかりと響かせて静かに終了。諸行無常の響きあり,といったところでしょうか。

実は,昨日のリハーサルの時,川瀬さんは「お客さんには,最後の音の余韻をしっかり持ち帰って欲しい。アンコールはなしにしましょう」といったことを語っていました。「なるほど,アンコールなしで正解」と思いました。

色々なアイデアの詰め込まれた,OEKの遺産を発掘した今回の演奏会は大成功だったと思います。演奏会全体の時間的にはやや短めでしたが,新鮮な「展覧会の絵」を中心に,OEK以外では聞けないようなプログラムをしっかりと楽しめた演奏会でした。

2019/11/27

川瀬賢太郎指揮OEK定期公演の前日リハーサルと川瀬さん+OEK楽団員との交流会に参加。音楽作りのプロセスの一端とメンバーの素顔に接してきました。

本日は,うまい具合に午後から仕事を休むことができたので,石川県立音楽堂楽友会主催による,OEK定期公演のリハーサル見学会+楽団員との交流会に参加してきました。この企画は4回目なのですが,今回は指揮者の川瀬賢太郎さんも参加されていたのが,「スペシャル」な点でしょうか。

まず,明日の定期公演のリハーサルが,13:30から石川県立音楽堂コンサートホールでスタート。インスペクターのオーボエの加納さんが,日程の確認をさっと行った後,ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番のリハーサルが始まりました。ピアニストはOEKと初共演となる津田裕也さんでした。

まずリハーサルで感じたことは,残響がとても長く感じるということです。お客さんが入っていないので当然なのですが,非常に贅沢な雰囲気をあじわうことができました。前日までのリハーサルとは違い,本日のリハーサルは,楽章単位で最後まで通した後,気になる点をチェックするという感じでした。

ここで面白かったのが,OEKのメンバーが「ハイッ!」と手を上げて,「○小節目はどうしますか?」「もう一度お願いします」という感じで,川瀬さんと意見交換を行っていた点です。OEKの人数は,ほぼ学校の1クラス分(40人程度)ですので,「主体的で対話的な授業」を川瀬さんを中心に行っている,という感じにも見えました。

指揮者の役割は,メンバーに解釈や方向性を示すことだと思いますが,実はメンバーの方もいくつかの表現方法の選択肢を持っており,そのすり合わせを行っているという感じでした。指揮者の仕事というのは,実力のあるアーティスト集団の中から最上のものを引き出す「コーチ」的な存在とも言えるのかもしれないですね。

リハーサルは順調に進み,45分程度で終了しました。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番は20分程度の曲なので,その2倍ぐらいの長さで終わっていた感じです。川瀬さんは,とても丁寧な言葉遣いで,とても効率よく指示をされており,現代の指揮者の「リハーサル力」は,ビジネスの世界にもそのまま使えそうと思いました。

その後,カフェ・コンチェルトに場所を移し,川瀬さんとOEKメンバー6名との交流会になりました。ケーキ2個+飲み物飲み放題で,7つのテーブルに分かれて立食形式で和やかに歓談をしました。

交流会で役だったのが,楽友会の幹事さん特製の「プロフィールシート」でした。一般的なプロフィール紹介だけでなく,「へぇ」というような「会話のネタ」がうまく盛り込まれていました。例えば,ヴィオラの古宮山さんのところには,「今はまっているのはオキシ漬け」と書かれており,「一体これは何だ?」というところから会話が広がっていました。

ちなみに本日参加されたOEKメンバーは次の方々でした。

  • ヴァイオリン:トロイ・グーキンズさん(当初出席予定だった原三千代さんの代理)
  • ヴィオラ:古宮山由里さん
  • チェロ:早川寛さん
  • フルート:岡本えり子さん
  • オーボエ:加納律子さん
  • クラリネット:遠藤文江さん

私も,ケーキとコーヒーを手にして,各テーブルを回り,全員とお話することができました。指揮者の川瀬さんには,次のようなことを尋ねてみました。

リハーサルの進め方はいつも今日のような感じなのでしょうか。
昨日までみっちりやっていたので,本日は通した後,気になるところを確認する感じだった。

プログラムは川瀬さんが考えたのでしょうか?
ムソルグスキー生誕180年の年にちなんで考えた。ジュリアン・ユー編曲の「展覧会の絵」は岩城さんが残した録音を聞いて,再演しようと思った。

弦楽器の編成はCDよりも増やしているようですね
岩城さんのCDでは,弦楽器は各パート1名で演奏しているが,実は楽譜では,特に1人で演奏せよという指示はない。ソロとトゥッティといった指示があり,通常の編成でも良いと考えられるので,今回は通常の編成で演奏することにした。

ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番はとても良い曲でしたね
ショスタコーヴィチが自分の息子のために書いた曲で,ある意味,いちばんショスタコーヴィチらしさが出ている曲である。この曲は何回も演奏している好きな曲である。

OEKが演奏するのは今回が初めてです。
ホルンが4本入るなど,OEKにとっては編成がやや大きいことと,演奏時間が演奏会に入れるにはやや短いので,意外に実演で演奏される機会は少ないのかもしれない。

ピアニストの津田さんはこの曲が得意なのでしょうか。
津田さんは,同世代の馴染みの演奏家。この曲を演奏するのは,津田さんは初めて。川瀬さん自身は,過去何回も共演しており,今回はこの曲と取り上げることにした。

・・・といったお話をさせていただきました。とても良い作品でしたので,明日の演奏が大変楽しみになりました。

その他,「特製プロフィールシート」をもとに各テーブルを回ってみました。少々緊張する面もありましたが,とても和やかに歓談をすることができました。

最後にサイン入り色紙のもらえる抽選会が行われて(私は見事ハズレでしたが),お開きとなりました。今回のような交流会は,演奏会への期待を高め,メンバーへの親近感が一気に増す好企画だと思いました。川瀬さん+OEKメンバーの皆様,ありがとうございました。

2019/11/23

能美市根上総合文化会館で行われたNHK-FM「古楽の楽しみ」の公開収録に参加。メゾ・ソプラノの波多野睦美さん,司会・チェンバロの大塚直哉さんを中心にイタリア古典歌曲,英国のバロック歌曲など美しい曲を沢山楽しんできました。

本日はNHK-FM「古楽の楽しみ」の公開収録が能美市根上総合文化会館で行われたので聞いてきました。この収録ですが,NHK金沢のローカルニュースの時に流れていた「お知らせ」を見て,入場整理券を抽選で入手して参加できたものです。実は「古楽の楽しみ」は聞いたことはなかったのですが,大昔,「バロック音楽の楽しみ」というタイトルだった頃は,朝の目覚まし時計代わりによく聞いていました。出演者は,番組の司会者の一人である,チェンバロ奏者の大塚直哉さんに加え,メゾ・ソプラノの波多野睦美さん,バロック・ヴァイオリンの大西律子さん,宮崎蓉子さん,池田梨枝子さん,バロック・チェロの山根風仁さんの合計6人でした。

今回は2回分を収録したのですが,テーマの方は1回目が「イタリア古典歌曲を中心に」,2回目が「イギリスのバロック歌曲を中心に」ということで,波多野さんによる歌がメインでした。短めの曲が多かったので,各回ともトークを交えて,9曲ずつ演奏されたのですが,日頃,聞く機会の少ないバロック時代の美しい歌曲やアリアをしっかりと聞くことができ,大変充実感のある時間を過ごすことができました。

私自身,バロック以前の音楽を聞くのは少々苦手で(正直なところ,良いと思うけれども,あまり区別がつかないのです),特にCDや放送などで聞いた場合,BGMのような感じで聞き流してしまいます。今回の会場は,根上総合文化会館という室内楽を聞くのに最適のホールだったこともあり,バロック音楽の良さを気持ちよく味わうことができました。

特に波多野さんの声が素晴らしいと思いました。叫ぶような感じは全くなく,会場の空気と一体となったような,非常に自然で透明感のある声を聞かせてくれました。ヴィブラートが少なく,スッと耳に入ってくるのですが,心地良い暖かみがあり,曲の内容に応じたドラマを伝えてくれました。どの曲も素晴らしかったのですが,「2回目」の収録の最後の方で歌われた,パーセルの歌劇「ディドとエネアス」のアリアに,真っ直ぐに耳に飛び込んでくるような切実な美しさがあり特に印象的でした。ちなみにこのアリアですが,11月7日に行われたオーケストラ・アンサンブル金沢の小松定期公演で,小泉詠子さんの歌で聞いたばかりだったので,思わぬ形で聞き比べができました。どちらも良かったのですが,オーケストラ伴奏版よりはさらにインティメートな雰囲気が感じられました。

この波多野さんの声と,バロック・ヴァイオリン,バロック・ヴィオラ,バロック・チェロ+チェンバロの声の取り合わせも最高でした。現代の楽器よりも少しテンションが低いのですが,その分,しっかりと耳に絡んでくる...といった優しさを感じました。この波多野さんと古楽器の組み合わせの雰囲気は,「癖になる」かもしれません。

今回は歌曲が中心だったのですが,もう一つのテーマは「チェロとチェンバロが演奏する,バスの動き」でした。しつこく繰り返されるオスティナート・バスにも,色々なタイプがあることを,大塚さんが丁寧に説明をされました。この説明があるかないかで,曲の楽しみ方は大きく違うと思いました。大塚さんは,司会をしながらチェンバロを弾かれており大変だったと思いますが,演奏もトークもとても丁寧で,安心感を感じました。チェンバロの方は,石川県の輪島さんという方が作られているものを使っていましたが,この音も素晴らしく,聞いていて爽やかさを感じました。

収録の方は,55分の番組を2回ということで,休憩時間も合わせると,約3時間かかりましたが,大変充実した内容だったと思いました。本日の収録は,12月18日(水)と19日(木)にNHK-FM 6:00~6:55で放送される予定ですので,関心のある方は是非お聞きになってみてください。

PS.収録に先だって,「拍手の練習」がありました。数年前,NHKの別の番組の公開収録にも参加したことがあるのですが(朝ドラ「まれ」の感謝祭です),その時同様,「NHK推奨の拍手」の説明がありました。普通よりも,拍手を速く叩いて欲しいとのことでした。その方が大きく盛り上がっているように聞こえるとのことでした。私自身,結構,拍手についてはのんびり叩いていたので,最初は慣れなかったのですが,終わるころには,こちらの方になじんで締まった感じです。

 

2019/11/19

アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック第2回 今回は宮田大さんがゲスト。リラックスした気分の中,チェロの音に酔ってきました。週末だったら...本当に酔いたかったところです。

今晩は,仕事が終わった後,夕食をサッと食べて,石川県立音楽堂で行われた,19:15開始の「アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック(夜クラ)第2回」を聞いてきました。このコンサートのコンセプトどおり,開始時間が15分遅いだけで,結構,ゆったりとした気分になるものです。

今回のアーティストは,チェロの宮田大さん,司会は加羽沢美濃さん,ピアノは,ジュリアン・ジュルネさんでした。演奏された曲は,「夜クラ」らしく,仕事帰りの大人向けの曲にぴったりの,ちょっと粋な感じの曲が並んでいました。カサド,ガーシュイン,ピアソラということで...お酒を飲みながら聞くのにぴったりの,ラテン系+アメリカの音楽が並んでいました。

宮田大さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが(トークによると,宮田さん自信,金沢に来るのは今回が初めてだったそうです),まず,その音が素晴らしいと思いました。あいさつ代わりに演奏されたカサドの「親愛なる言葉」での,明るく,引き締まった音に一気に引きつけられました。チェロの音の密度が高く,その音に浸っているだけで,充実した幸福感のようなものを感じました。

その後,加羽沢さんとのトークになったのですが,実は加羽沢さんは熱烈な宮田さんのファンで,プログラムに書いてなかったカッチーニのアヴェ・マリアが息長く,しっとりと演奏されました。

この日のメインのプログラムは,チェロとピアノ用に編曲されたガーシュインの「パリのアメリカ人」でした。オリジナルのオーケストラ版の沸き立つような雰囲気感じはなかったのですが,小粋で品の良い雰囲気が出ていたと思いました。中間部のブルースのような雰囲気が特に素晴らしいと思いました。

加羽沢さんによる,宮田さんに捧げるピアノ曲が演奏された後(どこかドビュッシーの曲を思わせるような,とても魅力的な空気感の漂う作品),最後にピアソラの「ブエノスアイレスの冬」と「ブエノスアイレスの秋」が演奏されました。抒情的でほのかに甘い雰囲気が漂う「冬」と,野性味や躍動感が溢れる「秋」。そのコントラストが面白いと思いました。

アンコールでは,加羽沢さんと宮田さんのデュオでポンセの「エストレリータ」が演奏されました。オリジナルはヴァイオリン用の曲ですが,チェロで演奏すると...夜の星という感じになりますね。このコンサートにぴったりの(アルコールを飲みたくなるような)気分を残しつつ,演奏会を締めてくれました。

終演後,宮田大さんとジュリアン・ジュルネさんのサイン会が行われましたが,コンサートの魅力に寄ったお客さんで大盛況でした。まだ火曜日ということで,真っすぐに家に戻ったのですが,とてもリラックスした気分にさせる演奏会でした。宮田さんのチェロは,また是非実演で聞いてみたいと思います。

2019/11/13

洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景。渡邊荀之助ファミリーとコンスタンチン・リフシッツさんを中心とした,アートの素晴らしさを讃えるような「展覧会の絵」。石川県立音楽堂邦楽ホールの機能を使いまくっていました。

今晩は,「洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景」という石川県立音楽堂ならではの演奏会(というよりはパフォーマンスといったところでしょうか)が行われたので聞いてきました。石川県立音楽堂には,洋楽用,邦楽用の2つのホールがありますが,その2つの要素をコラボさせようという試みです。同様のコンセプトの演奏会は,ホールの開館以来,毎年のように行われて来ましたが,今回の「能」と「ピアノ」を中心としたコラボレーションは,特に素晴らしい内容だったと思います。

演奏会の構成は,謡と囃子による居囃子「松風」,ピアノ独奏によるヤナーチェクの「草かげの小径にて」第2集,能舞とピアノのコラボによるバッハのパルティータ第6番のサラバンド。そして,能舞,モダンバレエ,ピアノ,笛によるムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」全曲というものでした。

最初の居囃子からステージの照明効果が素晴らしく,非常にドラマティックな雰囲気が出ていました。逆に言うと正統的な邦楽の世界とは別世界になっていたのですが,新しい切り口で邦楽を聞かせようという今回の演奏会のコンセプトにはぴったりでした。

その後の曲については,コンスタンチン・リフシッツさんのピアノと渡邊荀之助ファミリーの能舞が中心となっていました。何と言っても,後半に演奏された「展覧会の絵」が素晴らしかったですね。渡邊荀之助さん,茂人さん,さくらさんの親子孫3代に川瀬隆士さんが加わった4人による舞が実に華やかでした。そこに,中村香耶さんのモダン・バレエが絡み,和洋が渾然一体となって,芸術を賛美するようなパフォーマンスとなっていました。

リフシッツさんのピアノは,冒頭のプロムナードから大変堂々とした歩みでスタート。私がこれまで聞いたこの曲の演奏でも特に遅いテンポでしたが,その中に精緻な表現から豪快な表現まで,多彩な音楽が詰まっていました。「バーバヤガーの小屋」の前の「カタコンベ」の部分では,意表を突いて謡も加わり,死者の霊を弔うような,何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていました。

最後の「キエフの大門」は,出演者総出演の壮麗な「大団円」という感じでした。その点では,本来の能とは全く違う,能のキャラクターを活かした総合芸術といった趣きでしたが,その辺に他では見たことのないオリジナリティを感じました。

邦楽ホールのステージは,色々な部分が,「上がったり,下がったり」させることができるのですが,それを駆使して,次は誰がどこから出てくるのだろう,というわくわくとした気分にさせてくれました。邦楽ホールでしか実現できない,金沢ならではのパフォーマンスだったと思います。

この「華やかなステージ」と対照的だったのが,バッハのサラバンドのステージでした。渡邊荀之助さんは出家した尼さんのような面+衣装で登場。リフシッツさんの演奏する,悲しみと甘美さに満たされたようなピアノ演奏の雰囲気そのままの舞を見せてくれました。
以上以外にも,リフシッツさんの独奏でヤナーチェクのピアノ曲が演奏されました。どこかジャズのピアノ曲を聞くような自在さが感じられると同時に,精緻で多様なタッチの素晴らしさを堪能できる演奏でした。

邦楽ホールの機能を使い尽くしたような,工夫に溢れたパフォーマンスに触れながら,石川県立音楽堂の素晴らしさも実感できた演奏会でした。

2019/11/07

オーケストラ・アンサンブル金沢小松定期公演・秋に,ブザンソン指揮者コンクールで優勝したばかりの沖澤のどかさんが登場。ディーリアスに始まり,フォーレで終わる,こだわりの「なつかしさ」のあるプログラム。小泉詠子さんの新鮮なメゾ・ソプラノとの相性もぴったりでした。#oekjp

このところ2週連続で,木曜日の夜に富山市まで出かけて演奏会を聞いていたのですが,本日(木曜日)は,小松市まで出かけ,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の小松定期公演秋を聞いてきました。今回の注目は,つい先日,ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝したばかりの,沖澤のどかさんが指揮者として登場することでした。

ただし,この演奏会自体は,このニュースの前からしっかり決まっていたもので,予定どおり,沖澤さんこだわりの,しっとりとした美しさのある曲が並ぶプログラムが演奏されました。もしも優勝することが分かっていたならば,もう少し華やかな雰囲気の曲が演奏された気がしないでもありませんでしたが,これまでのOEKの演奏会で演奏されたことのない曲が並ぶ,OEKファンなら大喜び(?)といった感じのプログラムでした。それに加え,石川県出身のメゾ・ソプラノ。小泉詠子さんの素晴らしい声を楽しむことができました。

今回のプログラムで意表を突いたのは,後半最後に演奏された曲が,フォーレの組曲「マスクとベルガマスク」だったことです。OEKが演奏するのは初めてだったかもしれません。沖澤さんは,OEKのキャラクターにあった曲を選んだとのことですが,まさにその通りの,小粋で変化にとんだ美しい作品でした。個人的には「オーケストラの演奏会の最後は,やっぱり交響曲かな」とは思うのですが,今回の場合,沖澤さんのトークを聞いて納得しました。

本日のプログラムの最初に演奏された,ディーリアスの「春初めてのカッコウを聞いて」と対応させる形で,フォーレの「マスクとベルガマスク」の終曲のパストラールを配置したとのことでした。説明を聞いてからこの曲を聞くと,なるほどディーリアスと非常によく雰囲気が似ており,「なつかしい」気分にさせてくれました。

この「なつかしさ」というのが今回のプログラムのポイントだったのですが,曲の雰囲気自体「なつかしさ」があるのと同時に,プログラムの最後で最初に演奏された曲を思い出させるという二重の意味での「なつかしさ」にこだわっていたことになります。この選曲のセンスが素晴らしいと思いました。

沖澤さんの指揮については,今年の6月,シューベルトの交響曲第5番などを聞いたことがありますが,オーケストラを強く引っ張っていくというよりは,オーケストラが自発的に作り出す音楽に乗りながら,気づいてみれば,自然と沖澤さんの考える音楽へと導かれている。そういう感じの音楽だなと思いました。

今回演奏された曲で面白かったのは,後半に演奏されたシュニトケの「古典様式による組曲」でした。この曲もOEKが演奏するのは初めてでしょうか?曲の雰囲気としては,レスピーギの「古風な舞曲とアリア」ような感じで,一見,とても心地良く聞きやすい音楽なのですが,所々,隠し味のような感じで,「ちょっと違和感があるな」という毒が混ざったような響きが混ざってきます。それがわざとらしくなく,とてもスマートに品良くユーモアを感じさせてくれたのが良かったと思いました。

そして,この日のもう一人の主役が小泉詠子さんでした。小泉さんは,パーセル,モーツァルト,ロッシーニのオペラのアリアを歌いました。まずソプラノではなくメゾ・ソプラノという点が,まず,沖澤さんが考えた,ちょっと地味目のプログラムの雰囲気にぴったりだったと思います。

モーツァルトのケルビーノのアリア2曲はお馴染みの曲でしたが,パーセルの「ディドとエネアス」のアリア,ロッシーニの「アルジェのイタリア女」のアリアなど,魅力的なアリアを4曲聞かせてくれました。小泉さんの声には瑞々しさと,品の良さがあり,沖澤さんが作る自然体の音楽ともしっかりマッチしていました。

今回は沖澤さんと小泉さんの曲目解説を交えての演奏だったのですが,まず,パーセルの作品での痛切な響きと,低音楽器が半音ずつ下行していくラメント進行が印象的でした。このお二人を中心とした,バロックオペラの企画などあれば(ヘンデルの「メサイア」の全曲でも良いですね),聞いてみたいものだと思いました。

ロッシーニのアリアは,女性の2面性を描いたようなアリアでした。曲の前半での滑らかな美しさと,曲の後半での男を騙すしたたかさ。そのキャラクターをデフォルメしたような感じはありませんでしたが,古典的な雰囲気を保ちながら,鮮やかな歌い分けを楽しませてくれました。

というようなわけで,トーク以外の実質的な演奏時間はかなり短めの演奏会でしたが,その分,それぞれの曲をじっくりと楽しむことができました。今回の演奏会を聞いて,沖澤さんの指揮で,これまでOEKが取り上げてこなかったような作品を色々と聞いてみたいなと思いました。今後の活躍に大いに期待しています。

2019/11/02

今週末も富山に出かけ,岡田博美ピアノ・リサイタルを聞いてきました。平静かつ完成度の高い,凄い演奏の連続に感動しました。

先週の金曜日に続いて,仕事が終わった後,車で富山市まで出かけ,ピアニスト,岡田博美さんのリサイタルを聞いてきました。岡田さんについては,1980年代前半,日本音楽コンクールで1位になった頃から注目をしていたピアニストですが,金沢ではその演奏を聞く機会はありませんでした。先週同様,富山市で岡田さんのリサイタルのチラシをたまたま見つけたのをきっかけに,「これは行かねば」と思い,聞いてきました。ちなみに,岡田さんは富山県出身。「そういえば,そうだったな」と思い出しました。

今回,岡田さんの演奏を初めて聞いて,その凄さに感嘆しました。岡田さんはステージ上での動作は非常にさり気なく,ピアノに向かうとすぐに演奏をはじめ,表情を変えることも,大きな身振りで身体を動かすこともありません。常に平常心・自然体で演奏する中から,前向きな音楽が広がって来ました。

岡田さんのピアノの音には,常にバランスの良い暖かみと,弱音でもしっかりと聞こえる明確さがありました。ピアノの音の鳴り方も素晴らしく,大きな身振りはないのに,曲のクライマックスでは,どの曲でも力と余裕のある音に包まれました。驚くほど完成度の高い演奏の連続に感動しました。

前半演奏されたのは,ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4番とブラームスのパガニーニ変奏曲でした。岡田さんの演奏で聞くと,どの曲でも曲の姿がストレートに伝わってくるのですが,特にソナタ形式の楽章を持つ作品については,ステージ上に彫刻が立っているような,存在感を感じさせてくれました。

ブラームスのパガニーニ変奏曲は,特に技巧的な作品でしたが,岡田さんは,この曲でも多彩な技巧と音色を平然と聞かせてくれました。非常に鮮やか,かつ,力強い演奏で,この曲の持つ迫力を,ハッタリなしで,ストレートに伝えてくれる素晴らしい演奏でした。

後半の最初は,三善晃のアン・ヴェールという作品でした。今回のプログラムの中では唯一の現代曲でしたが,他の曲同様,曲の魅力がストレートに伝わってきました。決して親しみやすい雰囲気の作品ではなかったのですが,岡田さんのピアノの音の明快さ,透明感。演奏全体に漂う,ピリッと締まった雰囲気などが相俟って,物語性のようなものを感じました。

最後にショパンのピアノソナタ第2番が演奏されました。前半のベートーヴェンやブラームスに比べると,ロマン派の曲らしい感情の揺れのようなものが伝わって来たのですが,甘いムードに溺れるような部分はなく,前半同様のガッチリとした構築感を感じました。

この曲で特に印象的だったのは,後半の2つの楽章でした。有名な葬送行進曲については,その和音の響きが美しく,暗く落ち込むような感じでなはく,弔いの鐘が美しく響いているように感じました。中間部のデリケートな歌も素晴らしいと思いました。

この楽章の後に続く第4楽章は,メロディが全然ない,非常に不思議な楽章なのですが,今回の演奏は,寒々とした雰囲気というよりは,繊細で軽やかなヴェールに会場全体が覆われたような独特の美しさに覆われました。曲の最後の和音も非常に立派な響きで,満ち足りた雰囲気をもった「葬送」のような印象を持ちました。

上述のとおり,どの曲についても,曲の魅力がストレートに伝わって来ました。この日,会場では,岡田さんがレコーディングした沢山のCDを販売していましたが,音楽にストレートに向き合う岡田さんのレパートリーの広さを改めて実感しました。岡田さんが富山で演奏会を行うのは9年ぶりとのことですが,「1回も聞き逃せない」ピアニストではと思いました。機会があれば,また聞きに行きたいと思います。

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