OEKのCD

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2020/01/25

マキシム・パスカル指揮OEK定期公演。理詰めだけれども雄弁なベルクの室内協奏曲。輝かしさと堂々たる聞きごたえのあった挟間美帆さんの「南坊の誓い の世界初演。そして記念の年のスタートに相応しい生きの良さのあったベートーヴェンの交響曲第2番。若い世代による新鮮さ溢れる公演 #oekjp

本日は午後から,フランスの若手指揮者,マキシム・パスカルさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演を聞いて来ました。プログラムは,前半は,ベルクの室内協奏曲と挟間美帆さんの新曲,後半はベートーヴェンの交響曲の中でも比較的演奏される機会の少ない第2番という非常に冒険的な内容。若い世代のアーティストたちによる新鮮さ溢れる公演となりました。

ベルクの室内協奏曲をOEKが演奏するのは今回が初めてかもしれません。。ピアノとヴァイオリンがソリスト的,それ以外は13管楽器という変則的な編成で,その名のとおり,協奏曲的要素と室内楽的要素が混ざったような作品でした。新ウィーン楽派のベルクの作品ということで,モチーフの設定やその組み合わせ方は理詰めで(ベルク,シェーンベルク,ウェーベルンの名前を読み込んだモチーフなどは,ちょっとショスタコーヴィチを思わせる感じかも),単純に感情移入するのは難しい曲ではあるのですが,パスカルさんの作る音楽には,明晰さと同時にしなかやかさがあり,どこか詩的な気分やドラマが漂っているように感じました。ユージュン・ハンさんのヴァイオリン,アルフォンセ・セミンさんのピアノは,技巧的に鮮やかであると同時に,音で対話をするような雰囲気があり,とっつきにくい音楽ではあったのですが,曲の最後の部分など,どこか意味深く,ミステリアスな雰囲気を持っていました。

続いて,OEKのコンポーザー・オブ・ザ・イヤーの挟間美帆さんの「南坊の誓い」が世界初演されました。この作品は,安土桃山時代に加賀藩に滞在していたことのあるキリシタン大名,高山右近をモチーフにした作品で,タイトルの「南坊」というのも,高山右近が名乗っていた名前とのことです。挟間さんは,最新のアルバムがグラミー賞にノミネートされているとおり,現在最も注目度の高いジャズ作曲家の一人です。実は,もう少しジャズ的な要素のある軽い感じの作品になるのでは,と予想していたのですが,本日初演された曲は,爽快で輝かしい部分と内省的な部分のメリハリがしっかりと付けられた,分かりやすさと同時に堂々たる聞きごたえを持ったオーケストラ作品でした。OEKの編成ぴったりで演奏できる辺りも含め,OEK側の期待どおりの作品に仕上がっていたのではないかと思いました。

曲は3つのパートに分かれているように思いました。両端部分はがっちりとした感じ+生き生きとした感じ,中間部がしっとりとした感じでしたので,ガーシュインの「パリのアメリカ人」の金沢版といった趣きがあると思いました("Ukon in Kanazawa"といったところでしょうか)。最初の部分で,同じリズムパターンが何回も繰り返されたり,ポリフォニックに絡んだりする辺りも面白かったのですが,中間部でヴィオラが深々とした歌を聞かせる辺りが,個人的には特によいなぁと思いました。終演後のサイン会の時に挟間さんにこのことを話してみたところ,「ヴィオラで高山右近を描いた」とおっしゃられていました。やっぱり主役だったんですね。

最後の部分は,輝かしい響きで締められ,演奏後は盛大な拍手に包まれました。とても演奏効果の上がる曲だったので,今後,この曲はOEKの基本レパートリーとして,国内の演奏旅行などで再演しても面白いのでは,と思いました。

後半はベートーヴェンの交響曲第2番が演奏されました。パスカルさんの作る音楽は,全曲を通じて若々しいものでした。第1楽章の主部や第4楽章などは,かなりのスピード感で,一気に駆け抜けていく感じでした。両楽章ともアビゲイル・ヤングさんを中心とした弦楽器が,いつもどおりの切れ味の良い演奏でしっかりとこたえていました。対照的に,第1楽章の序奏部や第2楽章では,しっかりと歌い込まれた,豊かなニュアンスを持った演奏を聞かせてくれました。特に停滞することなく,伸び伸びと歌い込まれた2楽章が良いなぁと思いました。

両端楽章については,個人的には,ちょっと慌て過ぎに感じたのですが,ベルクの時とはまた違った,率直な音楽を聞かせてくれました。ベートーヴェン生誕250年の記念の年のスタートに相応しい生きの良い演奏だったと思います。

挟間美帆さんがノミネートされているグラミー賞は,アメリカ時間の1月26日に発表されるので,公演後,挟間さんはロサンゼルスに移動するとのことでした。今回の定期公演は,その前祝い公演だったのではと思っています。大相撲初場所の優勝の行方も気になっていますが,グラミー賞の結果発表も益々楽しみになってきました。

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