OEKのCD

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2020/07/26

2月以来久しぶりのOEKスペシャル公演は,新様式でのスタートとなる公演。石川県立音楽堂コンサートホールの中でオーケストラの生音を聴けただけで満足。 #神尾真由子 さんのチャイコフスキー,#田中祐子 さん指揮による古典交響曲等,たっぷりと聴かせてくれました。

2月の定期公演以来,久しぶりの公演となる,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のスペシャルコンサート「いま,届けたいクラシック!」を石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。OEKが出来てから30年あまり,これだけ長い期間,オーケストラの音を生で聴けなかったのは初めてのことです。

今回の公演は,様々なガイドラインを踏まえての「新スタイル」での演奏会でした。まず,「オーケストラの生の音を聴きたい」というシンプルな願いを,多くの方々の努力と工夫により,満たしてくれたことに感謝したいと思います。

この日の公演は,様々な点で通常の公演とは違っていました。入口での体温チェック,チケットはセルフもぎり,公演は休憩無しの1時間余り,座席は半分のみ使用,掛け声禁止,カフェなし,クロークなし...しばらくは定期公演もこのスタイルになるので,その試行のような感じでした。お客さんの数が少ない分,拍手の量は少ないのですが,その質は変わっていないと感じました。

最初に演奏された曲は,ペルトのカントゥス(ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌)。久しぶりにホールに響いた最初の一音は,打楽器の渡邉さんによる鐘の音でした。そこに弦楽器による繰り返し音型が加わり,次第に暖かい響きに包まれていきました。田中祐子さん指揮OEKの演奏は,コロナ禍で亡くられた方への追悼であると同時に,音楽できることへの感謝の気持ちが溢れたような演奏だったと思います。「普通の音楽」とは一味違う分,「耳を慣らす」にも最適の音楽だと思いました。

2曲目は,OEKとも過去何回か共演をしているヴァイオリニストの神尾真由子さんが登場し,チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏しました。今回の演奏を聴いて,「神尾さんは,堂々とした存在感を感じさせる,スケールの大きな演奏を聴かせてくれるアーティストに成長したなぁと思いました。テンポは全般に遅め(かなり遅かったと思います),弱音での情感たっぷりのヴィブラートから力強く盛り上がる部分での強烈な音まで。音の美しさ以上に,表現の幅の広さが強く印象に残りました。特に第3楽章のコーダの部分の重音の部分での,もの凄い激しさ。素晴らしい迫力でした。こういった幅広い表現のすべてがチャイコフスキーにぴったりマッチしていました。堂々とした押しの強さに加え,迷いのない安定感もあり,大曲を聴いたという充実感が残りました。

最後に演奏されたプロコフィエフの古典交響曲は,OEKが1988年末に創設されて以降,岩城宏之さん指揮で繰り返し演奏してきた曲です。今回の公演をこの曲で締めてくれたことも,とても良かったと思いました。OEKは,これから少なくとも1年ぐらいは(もっと?),新様式で定期公演を続けることになります。その新様式への試金石のような曲と言えると思います。

田中祐子さんのテンポ設定は大変ゆったりとしたものでした。この日のOEKは,これまでの公演よりも奏者間の距離をたっぷり取っており(1人1譜面台),ステージにぴったり納まるぐらいの配置でした。見た目的には,違和感はなく,「この方がぴったりかも」と感じるぐらいでした。このことは,他のフル編成オーケストラの場合とは違う点で,コロナ対応の点からすると,OEKの強みと言えると思います。

演奏の方もしっかりと音と音の「距離感」を取っている感じで,すべての声部がくっきりと聞こえてくるような心地よさやどっしりとした聞き応えを感じました。プログラムの最後の曲に相応しい堂々とした聞き応えのある演奏になっていました。この曲の魅力である,小粋な感じについては,特に最終楽章で発揮されていました。キラキラしたフルートの音をはじめ,各パートが瑞々しく絡み合う,「新しいスタートへの期待」を象徴するような演奏になっていました。

恐らく,半年前,世界全体がこういう状況になることを予想していた人は誰もいなかったでしょう。それでも,人間が自然界に棲む生物である限りは,その変化に対応する努力をしながら,生きていかざるを得ないと思います。多少の戸惑いはありますが,これからしばらくは新しいスタイルでのOEKの生演奏を楽しんでいきたいと思います。

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