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2020年12月

2020/12/31

コロナ禍に向き合い続けた2020年。困難な状況の中でライブ演奏を送り続けてくれた,OEKをはじめとしたアーティストの皆様,関係者の皆様に感謝をしつつ,1年を振り返ってみました。ありがとうございました。#oekjp

コロナ禍の影響を受け続けた2020年も大みそか。私自身,富山県に2回出かけた以外は,ずっと石川県内にとどまっていた異例の1年になりました。クラシック音楽界も多大な影響を受けました。その1年を振り返ってみたいと思います。

まず何といっても3~7月中旬までライブに全く行かなかったというのが私にとっては異例でした。ここ数年,年間50回以上生演奏を聴いていたのですが(楽都音楽祭の中身を「ばらばら」に数えるともっと増えるかも),今年は30回程度でした。室内オーケストラであるOEKは,他の通常編成のオーケストラに比べると影響は少なかったと思いますが,それでも,「休憩なし」「座席数半分」「チケットのもぎりのセルフ化」など「新様式」の公演に切り替わり,通常に戻りつつはあるものも,現在も継続しています。

特に声楽関係の公演(特に合唱団の出演する公演)への影響は大きく,年末恒例「メサイア」公演が「合唱団抜き」になったり,予定していた新作オペラ公演の初演が延期になったり,お客さん以上に,主催者側・アーティスト側にとって試練の年になりました。アマチュア団体の公演もほとんど行われていない状況が続いています。その中で,例年春の連休中に行っていた「楽都音楽祭」については,「中止」とはせず,「秋の陣」として,縮小しつつも9~12月に分散実施したことは大きな意義があったと思いました。

2020年,芸術監督のマルク・ミンコフスキさん指揮のOEKの公演はゼロ,プリンシパル・ゲスト・コンダクターのユベール・スダーンさんはニューイヤーコンサートのみに出演。まず,このことが異例で,7月の公演再開後は,代役の日本人指揮者による公演が中心となりました。

7月26日に行われた田中祐子さん指揮OEKによる「スペシャルコンサート:いま届けたいクラシック」は,ライブで音楽を聴けるありがたみを再認識させてくれる内容で,特に感慨深いものとなりました。9月以降の公演では,代役で登場した三ツ橋敬子さん指揮による,元気でしなやかなモーツァルトが印象的でした。その他にもOEK定期初登場だった園田隆一郎さん,久しぶりの登場だった高関健さんも,それぞれに安定感たっぷりの音楽を楽しませてくれました。

そして,ミンコフスキさんの公演の代役として登場した井上道義さん。25年以上前のCD「スウィート」に収録された曲を再演する「サプライズ公演」となりました。スダーンさんの代役で「岩城メモリアル」公演に登場した川瀬賢太郎さん。延々と生き生きとした音楽が続くようなシューベルトの「ザ・グレート」を聞いて大いに勇気づけられました。個人的には,この2つが今年特に印象に残った公演でした。

独奏者では, 北村朋幹さんのピアノ,成田達輝さん,渡辺玲子さんのヴァイオリンなど,それぞれの強い思いのこもった演奏をしっかりと楽しむことができました。7月26日の「復活公演」に登場した神尾真由子さんは,OEKと共に成長しているアーティストという気がします。楽都音楽祭に登場した藤田真央さんのピアノも毎回聞き逃せませんね。

「コロナ前」には作曲家として新曲を初演,「コロナ中」の12月にはOEKを使った「シンフォニック・ジャズ」を楽しませてくれた挾間美帆さんには,「コロナ後」の共演にも期待しています。

この1年で,大勢の人が集まること,さらには密な状態で声を出すことに対して大きな注意が必要な世の中に変貌してしまうとは,誰も予想していなかったと思います。そうなってしまったからには仕方がないのですが,そのことを根拠に,様々なものが「不要不急」となってしまったことが残念です。対案としてインターネットを活用したライブ配信の動きも出てきましたが,「ホールの空気の振動を感じること」「パフォーマンスに対して拍手を送ること」は,ライブ・パフォーマンスのいちばんの魅力であり,ライブ以外の方法が出てきたとしても,私はライブの方を選びたいと思います。

2021年もコロナ禍は継続することになりそうです。「コロナと折り合いをつけつつ,不要不急を克服できるのか」このことが課題になってくると思います。2020年,困難な状況の中でライブ演奏を送り続けてくれた,OEKをはじめとしたアーティストの皆様,関係者の皆様に感謝をしていと思います。ありがとうございました。

2020/12/24

コロナの年のクリスマス・イブ,垣内悠希指揮OEK&エコール・ドゥ・ハナヨバレエ他による「くるみ割り人形」(全2幕)を石川県立音楽堂で楽しんできました。総力を結集したような公演に胸が熱くなりました。

コロナ禍に明け暮れた2020年のクリスマス・イブの夜に,風と緑の楽都音楽祭2020 秋の陣として行われた,チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」(全2幕)を石川県立音楽堂で鑑賞してきました。バレエは地元のバレエスクール,エコール・ドゥ・ハナヨバレエ等のダンサー+ゲストダンサー,演奏はオーケストラ・アンサンブル金沢,指揮は垣内悠希さんでした。

まず,大好きなこの作品の全曲上演をコロナの年に楽しめたことに感謝したいと思います。第1幕のねずみや兵隊,第2幕のキャンディなどのお菓子役など,ステージに子どもたちが大勢出演していたのに加え,客席にも親子連れが多かったのが嬉しかったですね。色々と気を遣うことが多い状況の中,大勢の出演者を束ねて,見事な公演を作り上げた関係者の方々に感謝をしたいと思います。総力を結集したような公演に胸が熱くなりました。

今回の公演はとても正統的で,イメージ通りの「くるみ割り人形」の世界が石川県立音楽堂のステージ上に広がっていました。第1幕前半に出てくるクリスマスツリーはしっかり巨大化し,第1幕中盤の戦闘シーンではステージ全体が赤い色に変化。第1幕後半の粉雪のワルツの部分では,背景のスクリーンに雪の映像を投影。第2幕のディヴェルティスマンの部分では,色々な国のダンスがしっかりと描き分けられていました。今回の公演全体を通じて,衣装が素晴らしかったのですが,この部分ではどれもイメージどおりでした。あまりにも次々と,色々な衣装を着たダンサーたちが出てきたので,「舞台裏はどうなっているのだろう?」と気になるほどでした。

第2幕後半の「パ・ド・ドゥ」もたっぷりと魅せてくれました。「アダージョ」の音楽は,コロナ禍の中で聞くと,特に感動的でした。抑圧されていた思いを大きく開放してくれるような音楽であり,ダンスだと思いました。その後,ヴァリアシオン1,ヴァリアシオン2(有名な「こんぺい糖の精の踊り」),コーダ...と続くと,「バレエを観ているなぁ」という気分がどんどん高まりますね。

「パ・ド・ドゥ」の次に出てくる「終幕のワルツ」では,第2幕に出てきたキャラクターが勢ぞろいし,皆で踊ります。この部分も大好きです。が,音楽が進むにつれて「もうすぐ,このバレエも終わりだ」とちょっと寂しい気分にもなります。

垣内さん指揮OEKの演奏は,踊りやすい安定感のあるテンポ設定でした。クリスマスツリーが巨大化する部分での分厚いサウンド,第1幕切れのワルツでの透明感(さすがに今回は児童合唱抜きでした)など,「生チャイコフスキー」ならではの魅力も楽しめました。そういえば...今回はアビゲイル・ヤングさんがコンサートミストレスでした。これは,OEKファンにとっては大きなクリスマス・プレゼントだったのではないかと思います。

終演後のカーテンコールについては,恐らく,長くなるのを避けるためか,アンコール的に「メール・シゴンニュとポリシネルたちの踊り」が演奏され,手拍子の中,次々と出演者がご挨拶をしていました。途中,曲が3拍子っぽくなるので,手拍子がし辛い部分もあったのですが,この趣向も良いと思いました。

気が付けば21時過ぎ。時間を忘れて鑑賞していた感じです。繰り返しになりますが,コロナ禍の中,今回のような総力を結集したような公演を楽しませてくれたことに敬意を表したいと思います。

2020/12/22

#加羽沢美濃 さんの司会による #夜クラ @ #石川県立音楽堂 。今回のゲストはピアニストの #金子三勇士 さん。このシリーズは毎回楽しいのですが,これまででいちばんの充実感だったかもしれません。金子さんの圧倒的なピアノを楽しめました。ステージ背景のツリーは「くるみ割り人形」公演の準備?

今晩は,「アフターセブンコンサート2020:夜のクラシック第6回」を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。ゲストは,ピアニストの金子三勇士さん,司会はいつもどおり加羽沢美濃さんでした。

このシリーズは,毎回,現在もっとも旬なアーティストたちによるレベルの高い演奏が楽しめること,加羽沢さんとゲストの方のトークがとても自然でリラックスして楽しめること,加羽沢さんによる即興演奏コーナーやゲストとの共演コーナーがあること...など楽しみどころが満載なのですが,この日の公演は,特に充実していたと感じました。終演後のお客さんからは盛大な拍手が続いていました。その理由は何といっても金子さんの「圧倒的!」と言ってもよいようなピアノの素晴らしさにありました。

プログラムは,ショパンの革命,ノクターンop.9-2,小犬のワルツ,べーーヴェンのエリーゼのために,リストの愛の夢,ハンガリー狂詩曲第2番...と誰もが知っているような名曲がずらっと並んでいたのですが,最初に演奏された革命のエチュードから,思わず背筋が伸びるような,聞きごたえ十分の演奏の連続。革命での強烈なタッチの後,次のノクターンではとろけるような柔らかい音に急変。この表現の幅が素晴らしいと思いました。

バルトークやリストなどの民族的な音楽では,躍動感と野性味の溢れる切れ味の良いリズムの連続。曲の最後の部分では,一気に車のアクセルを踏み込むように,テンポが急変。すごみのある迫力を漂わせていました。それでいて,荒っぽい感じは皆無で,どの部分もしっかりと磨き上げられていました。金子さんのお母さんはハンガリー人ですが,これらの音楽を聞きながら,自分のルーツの国の音楽をとても大切にしているなぁと感じさせてくれました。

加羽沢さんの即興コーナーでは,金子さんとのトークの中で出てきた,クリスマスの話題やスパイスの効いたカレーなどの料理の話題などをしっかりと盛り込み,「優雅でカレーなワルツ・クリスマス風」といった趣きのある演奏を楽しませてくれました。

コロナ禍の中で,金子さん自身,演奏会のあり方について色々と考えたとおっしゃられていましたが,そんな金子さんの演奏やトークからは,まじめで前向きな姿勢が常に感じられました。何回も演奏されて来た,場合によっては「通俗的」と呼ばれてしまうこともあるような作品から,新鮮味のある生き生きとした音楽を引き出していたのが本当に素晴らしいと思いました。

演奏会の最後は,加羽沢さんのアレンジによるサティのジュ・トゥ・ヴの連弾版。マスクをして,密にならないように気にしながらの連弾というのは,ある意味,今年を象徴するようなスタイルだったかもしれません。ますます好調のこのシリーズ。来年度はどなたが登場するか,今から楽しみです。

2020/12/11

#挟間美帆 + OEK + #山下洋輔 +#エリック宮城 によるシンフォニック・ジャズ・ホリデー@石川県立音楽堂。忘年会代わりの「コロナの年」の憂さ晴らしのような爽快な公演。エリックさんのピリッとくるハイトーンとエネルギーには感服

例年,12月10日過ぎの金曜日といえば,忘年会に行くのがお決まりでしたが,今年はコロナ禍の影響で職場関係をはじめ,忘年会はほとんどゼロといった状況(私の場合ですが)。今晩行われた,挟間美帆さん指揮・編曲によるOEKシンフォニック・ジャズ・ホリデーは,「コロナの年」の憂さを晴らすような,忘年会がわりのような公演になりました。会場には学校の吹奏楽部関係と思われる若いお客さんも大勢入っていました。吹奏楽にとっても試練の年でしたが,その憂さも,ゲスト奏者のエリック宮城さんの,強烈なハイトーンでかなりの程度晴らしてくれたのではないかと思います。

前半は,挟間さんが編曲した,「ニューヨーク,ニューヨーク」「ホワイト・クリスマス」「A列車で行こう」というお馴染みのスタンダード・ナンバーでスタート。今回,まず素晴らしかったのは,挟間さんの編曲でした。ビッグバンド・ジャズといえば,サクソフォーン,トロンボーンといった楽器が沢山入るのが定番ですが,この日の編成は,ほぼOEKの通常編成でした。その編成で,しっかりジャズを聞かせてくれたのが嬉しかったですね。通常のビッグ・バンドよりは,ゆったりとしたゴージャズ感が出ており,まさにこの日の公演のタイトル通りの「シンフォニック・ジャズ」の世界でした。

前半は,もう一人のゲスト,ピアニストの山下洋輔さんが登場しました。ここで演奏されたのが,山下さんが元々はピアノと弦楽四重奏のために書いた「サドン・フィクション」という組曲の中の4曲でした。今回演奏されたのは,「ジャズの歴史」をたどるように,「ニュー・オーリンズ」「バップ」「スウィング」と言ったジャズのスタイルを示す曲と「幻燈辻馬車」という,元々は映画音楽として書いた作品が,挟間さんのアレンジで演奏されました。

山下さんのピアノには,かつてのような荒れ狂うような前衛的な気分はなく,譜面を見て弾いている曲もありました。かなり枯れた味わいのある演奏でしたが,挟間さんのアレンジによるOEKのバックアップによって,多彩な音とスタイルを持った音楽を鮮やかに楽しませてくれました。特に「幻燈辻馬車」は,馬車の気分を表すようなウッドブロックのリズムの上に何とも言えず怪しく,魅惑的な世界が広がっており,気に入りました。

そして後半は(この日は休憩時間を入れて2時間ぐらいの長さでした。座席数の制限もしていなかったので,久しぶりに通常の形の演奏会に参加したことになります),エリック宮城さんのトランペット・ソロを随所にフィーチャーした「くるみ割り人形」組曲のジャズ版を全部演奏。元々はデューク・エリントンとストレイホーンが彼らのビッグバンドのためにアレンジしたものでしたが,それを挟間さんがさらにOEKとエリック宮城さん用にアレンジしたものが今回演奏されました。

曲順はチャイコフスキーのオリジナル版とは違うのですが,曲はきっちり入っており,さらに「間奏曲(序曲と似た感じでしたが)」が加わっています。編成は,フル編成のOEK(ハープが入っていました。パーカッションはティンパニを入れて3名でした)に,エリックさんのトランペット,須川崇志さんのベース,高橋信之介さんのドラムスが加わるものでしたが,上述のとおり,ほぼ通常のオーケストラの編成でエリントンの世界を描いていたのが素晴らしいと思いました。

どの曲も須川さんのベースと高橋さんのドラムスがしっかりとリズムを刻む上にエリックさんを中心に色々な楽器の演奏が展開していく感じでした。何といっても,エリックさんのトレードマークである,ピリッと来るようなハイトーンが強烈でした。オペラのアリアのクライマックスに出てくる高音を「来るぞ来るぞ」と待ち構えて聞くのと同様の期待感。そして,それを上回るような迫力を味わうことができた満足感。エリックさんの出番は「ものすごく」多く,その体力(唇力というのでしょうか)にも感服しました。

演奏前の挟間さんとエリックさんのお話だと,サックスやトロンボーンが入っていない代わりに,トランペットで多彩な音を出してもらうことにした,ということで,エリックさんはトランペット2本(1本はフリューゲルホルンかも?)とミュート各種を駆使しての演奏でした。ハイトーン以外にも,多彩な音色やムードを楽しませてくれ,「エリックさんでないと弾き通せないのでは?」と思わせるほどの,見事な演奏の連続でした。

シンフォニックジャズの場合,弦楽器が加わるのがビッグバンドジャズとのいちばんの違いだと思います。この日コンサートマスターだった水谷晃さんをはじめ,OEKのメンバーは非常に楽しそうに演奏していたのが印象的でした。管楽セクションの方も,クラリネットの遠藤さんをはじめソロが多く,OEKメンバーにとっても非常に演奏し甲斐のある曲になっていたと思いました。

というわけで,この「挟間美帆&OEKによるシンフォニック・ジャズ」というのは,OEKの新しい「売り」にできるのでは,と思いました。特に,今回のエリックさんとの「くるみ割り人形」は,「OEK用のアレンジ」ということなので,この曲で全国ツァーなどしても面白いのではと思いました。個人的に期待してしまうのが...シンフォニックジャズ版「展覧会の絵」。実現しないでしょうか?

そして,盛大な拍手に応えて演奏されたアンコールが,映画「天使にラブソングを2」で使われている,「ジョイフル,ジョイフル」。これを山下洋輔さんも含めて,全員で演奏。この曲のオリジナルは第9の「歓喜の合唱」ということで,「日本の師走」に聞くには誠にふさわしい作品。OEKは12月に第9をほとんど演奏しない稀有な日本のオーケストラですが,その代わりに「ジョイフル,ジョイフル」を演奏するのを恒例にしても面白いかもと思わせるほど,浮き浮きとした気分の演奏でした。お客さんもOEKメンバーもしっかり楽しんでいたと思います。

挟間さんとOEKは,昨年度のコンポーザ・オブ・ザ・イヤーだったことからつながりが始まりましたが,本日の大盛り上がりの演奏を聞いて,OEKシンフォニック・ジャズ・ホリデーの続編に期待したいと感じました。「ホリデー」は,クリスマスのことを指すとも解釈できるので,年末恒例でも面白いかもしれませんね。

2020/12/06

栁澤寿男指揮OEKによる「合唱なし」のメサイア公演@石川県立音楽堂を聞いてきました。4人のソリストの大活躍に拍手。第1部12曲目の合唱曲の代わりの「きよしこの夜」も感動的でした。

本日は,12月上旬恒例,OEKのクリスマス・メサイア公演を聞いてきました。この公演についてもコロナ禍の影響を受け,「合唱なしメサイア」という異例の形になりましたが,「メサイアの伝統は続く」公演のサブタイトルのとおり,北陸聖歌合唱団が70年以上に渡って継続してきた,年末メサイア公演の伝統はしっかりと引き継がれました。

「合唱なし」で「メサイア」を演奏するというのは,異例ではあったのですが,指揮の栁澤さんが公演前のプレトークで語っていたとおり,「合唱なしでも,ストーリーはほぼつながる!」というのも新たな発見でした。第2部と第3部の「締め」の音楽である,「ハレルヤコーラス」と「アーメンコーラス」を4人で歌ってもらう以外は,独唱曲ばかりでしたが,すっきりとまとまったメサイアを聞いたという手応えがしっかり残りました。

もちろん「ハレルヤ」も「アーメン」も,華麗な雰囲気よりは,質実な雰囲気に変わりましたが,この華やか過ぎない,室内楽的気分は,むしろ今年1年の雰囲気に相応しいと感じました。お客さんの多くは,それぞれの心の中で音楽を膨らませて,「メサイア」を聞ける喜びを噛みしめていたのではないかと思います。

今回の演奏は休憩なしで,全体で70分ほどに納まっていました。栁澤さんのテンポ設定は比較的速めで,折り目正しくキビキビと音楽を進めていく感じで,いつもにも増して,弦楽器を中心にOEKの清々しい音を楽しむことができました。

そして何と言っても,今回の主役は4人のソリストたちだったと思います。上述のとおり,2つの合唱曲も歌っていましたので,のんびりとしている暇はなかったかもしれません。ソプラノの韓錦玉さんの天使のような軽やかさ,メゾソプラノの小泉詠子さんの抑制された落ち着きのある声,テノールの青柳素晴さんの柔らかな声,そしてバリトンの与那城敬の声の輝きと威力。それぞれの担当曲に相応しい歌を聞かせてくれました。中でも特に印象的だったのは,バリトンの与那城さんの歌った2曲でした。"Why do the nations"はスピード感あふれるテンポ感が格好良かったですね。

プレトークで,栁澤さんが「今回の選曲で,1カ所だけストーリーのつながらないところがあります。それは,第1部12曲目のイエス生誕の場の合唱が抜けていることで。その代わりに,例年アンコールで歌ってきた「きよしこの夜」を,13曲目「ピファ(田園交響曲)」の後に入れるので,会場の皆さんもハミングで参加してください」というお願いがありました。

確かに第12曲("ワンダフル"という歌詞が出てくる曲)のない「クリスマス公演」というのは,物足りなかったのですが,今回の「きよしこの夜」を入れるというのは素晴らしいアイデアでした。音楽的にも違和感がなかったし,何よりもハミングという形ではあれ,会場に居た合唱団の皆さんが参加する機会を作ってくれたことが良かったと思いました。この歌詞のない「きよしこの夜」は,多くの人にとって忘れられない瞬間になったのではないかと思います。

特に北陸聖歌合唱団の皆さんにとっては,大変残念な公演だったと思いますが,その思いはしっかりと受け継がれたと思います。「コロナの年」を象徴するような,これまでにない「メサイア」公演だったと思います。プレトークの最後に,栁澤さんは,コロナ禍の後に再度共演したいとおっしゃられていましたが,その日を楽しみにしています。

2020/12/05

OEK初の有料ライブ配信 PFUクリスマス・チャリティ・オンラインコンサート。三ツ橋敬子さん指揮による明るくしなやかなベートーヴェンの8番。川久保賜紀,遠藤真理,三浦友理枝の3人のソリストによる緊密で親密な三重協奏曲。オンライン公演の展望を考えつつ,自宅リビングで楽しませていただきました。

本日は午後から,PFUクリスマス・チャリティ・オンラインコンサートをストリーミングによるライブ配信で視聴しました。OEK設立当初から続いている,PFU主催のチャリティ・コンサートも今年はコロナ禍の影響で,オンラインコンサートという形を取ることになりました。試聴するための権利を購入して自宅のリビングで観るというスタイルは,私自身初めての経験でしたが,「拍手がない」「拍手をしても届かない」という寂しさは大いにありましたが,オンデマンドにはないライブ感は感じられ,こういう形もありかもという感想を持ちました。

今回のプログラムは,ベートーヴェン生誕250年の年にちなんで,ベートーヴェンの交響曲第8番と三重協奏曲の2曲が演奏されました。ソリストが3人揃う,三重協奏曲の方がメインプログラムという配列になっていました。

最初に演奏された交響曲第8番は,9月の定期公演に続いての登場となった三ツ橋敬子さん指揮によるOEKの慌てるところのない演奏。伸びやかで美しい響きを存分に味わうことができました。今回のコンサートミストレスは松浦奈々さんでしたが,松浦さんの表情豊かなリードがそのまま全体に広がっているような明るさがありました(こういう部分が分かるのはオンラインの良さでしょうか)。

第3楽章のトリオの部分では,ホルン,クラリネット,チェロを中心としたじっくりと聞かせる室内楽のようになるのもOEKらしいところだと思います。第4楽章も速すぎないテンポで,細かい音型などもくっきりと演奏。律義さの中からユーモアが伝わってくるようでした。最後の部分のティンパニの見せ場も力感たっぷりでした。

後半の三重協奏曲のソリストは,ヴァイオリン:川久保賜紀,チェロ:遠藤真理,ピアノ:三浦友理枝の3人。考えてみると,指揮者も女性,コンサートミストレスも女性。特に男女の区別を意識する必要のない時代ではありますが,これだけ女性中心というのも珍しいかもしれません。

この曲は,ピアノ三重奏+協奏曲という独特の編成ということで,滅多に演奏されることがない曲です。第1楽章の序奏部から,「いかにもベートーヴェン」という「来るぞ,来るぞ」感じが良いですね。3人の演奏は,トリオを作って10年目というだけあって,息がぴったりで,密度の高いアンサンブルをじっくりと楽しむような雰囲気がありました。ただし,曲の雰囲気としては,三重奏+協奏曲という「二重の制約」がある感じで,自由自在に羽ばたくいう感じが出しにくいような曲という気もしました。

その点で,冒頭の遠藤真理さんのソロをじっくりと堪能できた,第2楽章がいちばん聞きごたえがあった気がしました。ヴァイオリン,ピアノもそれぞれに聞かせどころがあり,じわりと広がる幸福感に浸ることができました。第3楽章は,軽快だけれどもじっくりと演奏されたポロネーズ風の楽章。ベートーヴェンが同時期に書いた「傑作の森」と呼ばれる他の曲に比べると,大きく盛り上がるという感じの曲ではないのですが,堂々と締めてくれました。

終演後は,オーケストラメンバーから拍手。演奏後にライブなのに拍手を送れないというのは,やはり寂しいですね。

ベートーヴェンの2曲の後,三ツ橋さんと3人のソリストによるトーク。そして,クリスマスを意識したアンコール曲として坂本龍一による映画「戦場のメリークリスマス」の音楽がピアノ三重奏で演奏されました。最初の三浦友理恵さんのピアノのクリアな音を聞きながら,坂本さんの音楽だなぁと実感。途中,力強く盛り上がる部分があったり,大変聞きごたえのあるアンコールでした。

というわけで,初めての「有料ライブ配信」を楽しませてもらいました。期間限定ですが,「何回も視聴できる」というのもこの方式のメリットですね。今後のアイデアですが,年数回,実際の「お客さんを入れた定期公演」について「有料ライブ」を行うというのも面白い気がします(お客さんの拍手が入るので)。いずれにしても,新しいファン層を広げるための試みとしても注目だと思います。

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