コロナ禍に向き合い続けた2020年。困難な状況の中でライブ演奏を送り続けてくれた,OEKをはじめとしたアーティストの皆様,関係者の皆様に感謝をしつつ,1年を振り返ってみました。ありがとうございました。#oekjp
コロナ禍の影響を受け続けた2020年も大みそか。私自身,富山県に2回出かけた以外は,ずっと石川県内にとどまっていた異例の1年になりました。クラシック音楽界も多大な影響を受けました。その1年を振り返ってみたいと思います。
まず何といっても3~7月中旬までライブに全く行かなかったというのが私にとっては異例でした。ここ数年,年間50回以上生演奏を聴いていたのですが(楽都音楽祭の中身を「ばらばら」に数えるともっと増えるかも),今年は30回程度でした。室内オーケストラであるOEKは,他の通常編成のオーケストラに比べると影響は少なかったと思いますが,それでも,「休憩なし」「座席数半分」「チケットのもぎりのセルフ化」など「新様式」の公演に切り替わり,通常に戻りつつはあるものも,現在も継続しています。
特に声楽関係の公演(特に合唱団の出演する公演)への影響は大きく,年末恒例「メサイア」公演が「合唱団抜き」になったり,予定していた新作オペラ公演の初演が延期になったり,お客さん以上に,主催者側・アーティスト側にとって試練の年になりました。アマチュア団体の公演もほとんど行われていない状況が続いています。その中で,例年春の連休中に行っていた「楽都音楽祭」については,「中止」とはせず,「秋の陣」として,縮小しつつも9~12月に分散実施したことは大きな意義があったと思いました。
2020年,芸術監督のマルク・ミンコフスキさん指揮のOEKの公演はゼロ,プリンシパル・ゲスト・コンダクターのユベール・スダーンさんはニューイヤーコンサートのみに出演。まず,このことが異例で,7月の公演再開後は,代役の日本人指揮者による公演が中心となりました。
7月26日に行われた田中祐子さん指揮OEKによる「スペシャルコンサート:いま届けたいクラシック」は,ライブで音楽を聴けるありがたみを再認識させてくれる内容で,特に感慨深いものとなりました。9月以降の公演では,代役で登場した三ツ橋敬子さん指揮による,元気でしなやかなモーツァルトが印象的でした。その他にもOEK定期初登場だった園田隆一郎さん,久しぶりの登場だった高関健さんも,それぞれに安定感たっぷりの音楽を楽しませてくれました。
そして,ミンコフスキさんの公演の代役として登場した井上道義さん。25年以上前のCD「スウィート」に収録された曲を再演する「サプライズ公演」となりました。スダーンさんの代役で「岩城メモリアル」公演に登場した川瀬賢太郎さん。延々と生き生きとした音楽が続くようなシューベルトの「ザ・グレート」を聞いて大いに勇気づけられました。個人的には,この2つが今年特に印象に残った公演でした。
独奏者では, 北村朋幹さんのピアノ,成田達輝さん,渡辺玲子さんのヴァイオリンなど,それぞれの強い思いのこもった演奏をしっかりと楽しむことができました。7月26日の「復活公演」に登場した神尾真由子さんは,OEKと共に成長しているアーティストという気がします。楽都音楽祭に登場した藤田真央さんのピアノも毎回聞き逃せませんね。
「コロナ前」には作曲家として新曲を初演,「コロナ中」の12月にはOEKを使った「シンフォニック・ジャズ」を楽しませてくれた挾間美帆さんには,「コロナ後」の共演にも期待しています。
この1年で,大勢の人が集まること,さらには密な状態で声を出すことに対して大きな注意が必要な世の中に変貌してしまうとは,誰も予想していなかったと思います。そうなってしまったからには仕方がないのですが,そのことを根拠に,様々なものが「不要不急」となってしまったことが残念です。対案としてインターネットを活用したライブ配信の動きも出てきましたが,「ホールの空気の振動を感じること」「パフォーマンスに対して拍手を送ること」は,ライブ・パフォーマンスのいちばんの魅力であり,ライブ以外の方法が出てきたとしても,私はライブの方を選びたいと思います。
2021年もコロナ禍は継続することになりそうです。「コロナと折り合いをつけつつ,不要不急を克服できるのか」このことが課題になってくると思います。2020年,困難な状況の中でライブ演奏を送り続けてくれた,OEKをはじめとしたアーティストの皆様,関係者の皆様に感謝をしていと思います。ありがとうございました。
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