石川県立音楽堂で行われたルドヴィート・カンタ チェロ・リサイタル。沼沢淑音さんのピアノと一体となったスケールの大きなプロコフィエフ&ラフマニノフのチェロ・ソナタ。堪能しました。そして驚きのアンコール7曲。演奏できる喜びに溢れた公演でした。
本日の午後は石川県立音楽堂コンサートホールで,ルドヴィート・カンタさんのチェロ・リサイタルを聴いてきました。カンタさんは,OEK時代から活発にソロ活動を行っており,リサイタル以外でも,色々な機会で演奏を聴いてきたのですが,コロナ禍の影響もあり,私自身カンタさんの演奏を聴くのは,1年ぶり以上のような気がします。カンタさんも,コンサートホールでリサイタルを開けたことをとても喜んでいたようでした。
今回のプログラムは,プロコフィエフとラフマニノフのチェロ・ソナタを中心のスラブの風味のある内容でした。カンタさんは,これまでチェロの主要作品を「百科事典を作るように」網羅してきているのですが,本日の2曲は特にカンタさんにぴったりだと感じました。
前半,まずラフマニノフのチェロの小品2曲が演奏されたのですが,最初の一音からカンタさんの音が素晴らしいと思いました。オリエンタルで,ちょっと艶っぽいメロディも大変魅力的でした。
2曲目のプロコフィエフのソナタでは,さらにスケールの大きな演奏を楽しむことができました。この日のピアノはモスクワ音楽院で勉強をしていた沼沢淑音さんでしたが,沼沢さんのピアノとカンタさんのチェロとが一体となって,大変充実した音楽を作っていました。この日は特に,カンタさんのチェロの低音が特にしっかりと響いていると思いました。全体的に上機嫌な感じの作品で,コロナ禍の中でも,しっかりとリサイタルを開催できたことの喜びのようなものを感じながら聴いていました。
後半のラフマニノフのソナタはさらに規模の大きな作品でした。カンタさん自身によるプログラムの曲目解説では,ラフマニノフのことを「王様のような作曲家」と書いていましたが,まさにその気分のある曲であり演奏でした。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番と同時期に書かれた作品ということもあり,随所にラフマニノフならではの熱いメロディがあふれる曲でした。その曲をカンタさんは,強い共感を持って,ただし,大げさになりすぎずに,情感がしっかりとこもった密度の高い音で聴かせてくれました。そして,この曲でも沼沢さんの深々とした広さを感じさせるようなピアノが素晴らしかったですね。ピアニストでもあったラフマニノフの曲らしく,ピアノの方が華やかかつ力強く活躍する部分も多く,曲のスケール感を何倍にも広げていたように感じました。カンタさんは,沼沢さんのピアノに惚れて,今回ご指名で共演したようですが,今後もこの2人でスラブ系の作品などを聴いてみたいものです。
そしてこの日の演奏会で凄かったのは,この後でした。何とアンコールが7曲も演奏されました。私自身が体験した最大数かもしれません。ラフマニノフの雰囲気に合わせるかのように,ノクターン系の曲が続いた後,「荒城の月」が出てきたり,ハバネラ(ラヴェルのハバネラと言っていたと思います)が出てきたり,最後はジョプリンのラグタイムが出てきたり,コロナ禍であちこち出かけられないかわりに,世界各国の音楽を楽しんだような感じになりました。
最初から譜面を沢山持って来ていたので,複数曲を演奏されるのかなとは思っていたのですが,ここまでサービスしていただけるとは思ってもいませんでした。カンタさんと沼沢さんの音楽に酔わせていただいた後,カンタさんファン感謝祭的な雰囲気で締められた,演奏できる喜びに溢れた公演でした。
« 梅干野安未オルガン・リサイタルを石川県立音楽堂で聴いてきました。これまで馴染みの薄かった,フランスのオルガン音楽の楽しさに触れることができました。また聴いてみたいと思いました。 | トップページ | 川瀬賢太郎さん指揮OEK定期公演は,酒井健治さんの新曲「ジュピターの幻影」で始まる「モーツアルト不在のモーツァルト」プログラム。サン=サーンスが15歳で作った交響曲で締めるなど,マイナーでひねりの効いたプログラムを考え,それを気持ちよく聞かせてくれた川瀬さんらしさ満載のプログラムでした »
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