3月のOEK定期公演は鈴木雅明さん指揮によるベートーヴェンの交響曲シリーズ。その前半,2番と8番。知・情・意のすべてが高いレベルで統合されたような,熱量と情報量が非常に大きい,聴きごたえのある演奏。感服しました。
OEKの3月の2つの定期公演には当初,芸術監督のマルク・ミンコフスキさんが登場する予定でしたが,コロナ禍による入国制限が続いているため来日ができず,代役として鈴木雅明さんが登場することになりました。プログラムはそのままで,ベートーヴェンの交響曲を4曲。本日は,その中の第2番,第8番の2曲を聴いてきました。
その演奏ですが,期待通りの素晴らしい演奏でした。鈴木さんは,昨年末のNHK交響楽団の公演でもブロムシュテットさんの代役で指揮をされており,ハイドン,モーツァルト,シューベルトの交響曲の演奏をNHKで観たのですが,それらの演奏と共通する,知・情・意のすべてが高いレベルで統合されたような,熱量と情報量が非常に大きい,聴きごたえのある演奏。感服しました。
考えてみると,生誕250年と言われていた割に,昨年1年間は実演ではベートーヴェンの交響曲を1曲も聞いていなかったので(皇帝は2回聞きましたが),久しぶりにベートーヴェンの交響曲を聴いて,妙に元気が出た気がしました。
第2番も第8番もベートーヴェンの9つの交響曲の中では,ややマイナーな位置づけではあるのですが,個人的には年々好きになってきている2曲です。鈴木さんの指揮の下,この両曲の斬新さやキャラクターを改めて浮き彫りにしてくれるような演奏だったと思います。
第2番の方は,冒頭の引き締まった力強い響きと澄んだ弦の響きのコントラストが印象的でした。アビゲイル・ヤングさんのリードの下,細かい部分までニュアンスの変化が付けられており,鈴木さんのプランが鮮やかに表現されていました。その一方,ライブならではの感情が爆発するような,アクセントの強さも随所にあり,非常にスリリングでした。第4楽章の終結部の切れ良く,強烈な弦の響きには痺れました。
休憩の後(定期公演で20分の休憩が入るのは,コロナ後初でしょうか)の第8番も同様に,強烈な部分と流れるような部分の対比が鮮やかで,充実感がありました。第2楽章のメトロノーム風のリズムを刻む部分は,木管楽器のきっちり整った端正さと,弦楽器の表情豊かな歌が見事に溶け合い,何とも言えず幸福な時が流れていました。第3楽章の揺らぎのある音楽の後の第4楽章は速過ぎるテンポではないけれども,切れ味十分で,前曲にふさわしい熱い音楽を聞かせてくれました。
というわけで,来週木曜日3月18日の公演も聞き逃せません。
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