鈴木雅明指揮OEKのベートーヴェン交響曲シリーズ。最終楽章でのスケールの大きな雰囲気が印象的だった第6番「田園」。生き生きとした推進力と雄弁さのあった第5番。どちらも弦楽器の澄んだ美しさと各楽器のニュアンスの豊かさが印象的。充実の3月の定期公演でした。
3月のOEKの定期公演は鈴木雅明さん指揮によるベートーヴェンの交響曲4曲。3月13日の2番,8番に続いて,本日は5番,6番の「超有名曲」2曲を聴いてきました。
この2曲の組み合わせですが...私自身,聴くのは初めてかもしれません。初演の時と同じ組み合わせということになりますが,こうやって並べて聞くと,この2曲は「セットなのだな」ということを感じました。後半の楽章が連続していること,トロンボーンやピッコロが入ることが共通する一方で,同じモチーフを使いまくり,力強く盛り上がる5番と標題音楽的で穏やかな気分のある6番というのは,好対照です。
鈴木さんは,OEKが何回も演奏してきたこの2曲から,大変新鮮な響きを引き出していました。最初に演奏された「田園」の冒頭から,響きがクリアで特に弦楽器を長~く伸ばした時のヴィブラートの入らない真っすぐ澄んだ音がとても印象的でした。両曲とも,第1楽章の第1主題には,フェルマータが入るのですが,その部分の響きが本当に瑞々しいと感じました。その一方で,前回の2番・8番の時同様,どの部分を取ってもニュアンスが豊かで,とても雄弁な演奏でした。「田園」の第2楽章の木管楽器の美しさ,第3楽章でのちょっと意表を突くような感じのアクセントの入れ方が印象的でした。
第4楽章も切れの良いコントラバス,表情豊かなティンパニなど,しっかり聞かせる音のドラマとなっていました。そして,大変じっくりと演奏された第5楽章。じわじわと感動があふれてくるような表現で,スケール感たっぷりの演奏を聞かせてくれました。
後半に演奏された第5番の方も,音のクリアさ美しさが印象的でした。第1楽章から,生き生きとした推進力と音の美しさが両立していました。第2楽章では落ち着きがあるけれども,停滞しないテンポで始まり,途中力強い歩みを聞かせてくれました。第3楽章も超高速のコントラバスの演奏を中心に生き生きとした表現を聞かせてくれました。楽譜のことはわからないのですが,第1楽章,第4楽章に加え,第3楽章も前半部分を繰り返していたようで,いつもと少し違った感じに聞こえました。
そして若々しい第4楽章。奇をてらうことのない颯爽とした雰囲気がありました。それでいて,全力を使い切ったような熱さ。コンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんの力強い演奏姿を見るといつも,「我々も頑張らなければなぁ」と思います。この曲には,コントラファゴットが入り,お馴染みの柳浦さんが演奏されていましたが,いつもに増して,その音がしっかりと聞こえてくるのも新鮮でした。
今回,鈴木雅明さんはミンコフスキさんの代役で登場したのですが,体の内側からエネルギー溢れ出てくるような演奏は,ベートーヴェンにぴったりだと思いました。というわけで,4曲演奏したからには,他の曲も鈴木さんの指揮で聴いてみたいものだと思いました。期待をしています。
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