OEKのCD

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« 1年前,コロナ禍で中止となったOEKと石川県学生オーケストラによる合同公演「カレッジコンサート」のリベンジ公演。OEKが首席になる形の合同演奏で,壮麗かつ丁寧なショスタコーヴィチを聞かせてくれました。久しぶりに大編成オーケストラの響きを浴びてきました #oekjp | トップページ | 3月のOEK定期公演は鈴木雅明さん指揮によるベートーヴェンの交響曲シリーズ。その前半,2番と8番。知・情・意のすべてが高いレベルで統合されたような,熱量と情報量が非常に大きい,聴きごたえのある演奏。感服しました。 »

2021/03/09

伝統芸能&室内オペラ「おしち」公演@石川県立音楽堂邦楽ホール。池辺晋一郎作曲のオペラ版と立川談笑さんによる落語版,どちらもひねりがある展開。オペラ版の方は幸田浩子さん,高柳圭さんの2人を中心とした純愛オペラの気分が良かったですね。合唱団も大活躍でした。

今晩は,伝統芸能&室内オペラ「おしち」公演を石川県立音楽堂邦楽ホールで観てきました。落語や講談と日本人作曲家による室内オペラを組み合わせる企画もすっかり定着してきましたが,今回の池辺晋一郎作曲の「おしち」は,特にオペラ向きの作品だと思いました。熱い純愛ものオペラをしっかりと堪能した実感が残りました。

恋人に再び会いたい一心で放火し,火刑になる「八百屋お七」の物語は,江戸時代の実話に基づくようですが,その後,色々なバリエーションが作られており,今回の室内オペラ版,立川談笑さんによる落語版は,ともにひねりが入っていました。

ヒロインが火に包まれて終わるオペラといえばワーグナーの「神々の黄昏」のブリュンヒルデを思い出すのですが...今回のオペラ版「おしち」では,相手役の吉三郎が重要な役割を果たしており,ブリュンヒルデのような感じではありませんでした。実はこの辺が少々釈然としなかったのですが...クライマックスに向けての音楽の流れには説得力があり,「こういうのもありか」という思いにもなりました。

主役のおしちは,ソプラノの幸田浩子さんでした。幸田さんの歌を実演で聴くのは今回が初めてだったのですが,最初の方の純真な町娘風の雰囲気から,狂乱の場を思わせるような「火付け」の部分まで,一貫して芯の強さを感じさせながらも,「おしち」の持つ色々なキャラクターを聞かせてくれました。

吉三郎役の高柳圭さんは,「金沢オリジナル・オペラ」ではすっかりおなじみの方です。その明るく伸びやかな声は,おしちの相手役にぴったりでした。幸田さん,高柳さんともに軽やかな声なので,最初の出会いの場で名前を名乗り合うシーンなどは,「ラ・ボエーム」に通じるような瑞々しさがあるなと思いました。「夢の中でのニ重唱」での高揚感も良いなぁと思いました。

最後の火刑執行人役で登場した森雅史さんの凄みのある声,途中ドラマの展開を説明するような瓦版売り役の門田宇さんの軽妙な雰囲気もオペラの展開を盛り上げていました。

そして色々な役柄でドラマの展開を支えていた12人の合唱団(それ以外にも歌唱のみの合唱団の方もいらっしゃいました)の皆さんは,ええじゃないかを踊ったり,金色の扇子を持って踊ったり,火付け改め方になったり...大活躍でした。

音楽は,本当に色々なタイプの音楽が次々と出てきて,「さすが池辺さん」という感じでした。個人的には,おしちが火付けをして回る時の,不規則な感じのリズムの曲が,焦燥感のようなものが出ていた良いなぁと思いました。松井慶太さん指揮OEKは通常の半分ぐらいの人数でしたが,邦楽ホールで聴くにはちょうど良い感じでした。2人の打楽器奏者が色々な楽器を持ち替えて効果音的な音を含む多彩な音を聞かせたり,コンサートマスターの松井さんのソロが随所に出てきたり,変化に富んだ音楽を聞かせてくれました

舞台の方は,中央に橋のようなものがあり,ドラマの要所要所のクライマックスで効果的に使われていました。

というわけで,音楽・美術・演技・物語の展開...と色々な面で楽しむことができました。終演後の拍手も大変盛大でした。

落語の方は「八百屋お七:比翼塚の由来」という,立川談笑さんが昨年作った新作でした。ややサイドの席だったせいか,少し聞きにくい部分もあったのですが,最後の部分には「エーッ?」という感じの設定。プログラムの裏面には,「八百屋お七」を素材として,さまざまな作品が作られてきたことが紹介されていましたが,そこにまた一つ新たな「お七」が加わったのだなぁと思いました。

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