OEKのCD

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2021年7月

2021/07/23

五輪開会式と同時間帯に行われた2020/21シーズン最後のOEK定期公演は,正真正銘の「巨匠・井上道義」と神尾真由子さんの神技による聴きごたえ十分のプログラム。シューベルト4番とハイドン102番の2曲の交響曲の立派さ,プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番の底知れぬ魅力。堪能しました。#oekjp

7月23日東京オリンピック2020の開会式とほぼ同時間帯に行われた(22:45現在,まだまだ開会式は続行中ですが),OEK定期公演を聞いてきました。指揮は前音楽監督の井上道義さん,ヴァイオリン独奏は神尾真由子さんでした。

このお二人は「代役」としての登場で,それと連動して,プログラムも全面的に変更になったのですが,その新たなプログラムはシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」,プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番,ハイドンの交響曲第102番というかなり地味なもの。一般的な知名度の低い曲ばかりだったのですが,まず,このプログラミングが大変魅力的でした。OEKにぴったりの曲ばかりを並べた,聴きごたえのある演奏の連続。さすが井上道義さんという選曲でした。

シューベルトとハイドンの交響曲はどちらも大変堂々とした演奏。考えてみると,私自身,井上道義さんが交響曲を指揮するのを聴くのは,2018年3月の「最後の定期公演」以来のことでしたが,まさに巨匠の風格と余裕を感じさせる見事な指揮ぶりでした。もちろん,井上さんらしい,ユーモアやアイデアも随所に盛り込まれていましたが,両曲とも第1楽章冒頭の序奏部から,非常に構えが大きく,ずしっと耳に迫ってくる音楽を聞かせてくれました。

各曲の第2楽章なども,ブルーノ・ワルターなどの往年の大巨匠の演奏を思わせるような,滋味深さを感じさせるような深い味わい。両曲とも第1楽章の呈示部の繰り返しも行っておらず,あえて,「古いスタイル(しかし,思う存分やりたいことをやった)」の演奏を取っているような感もありました。最終楽章には,若々しい気分もありましたが,OEKとの絶妙の呼吸を聞かせてくれた,ハイドンの第4楽章の終結部の緩急自在の味わいなど,名人芸としか言いようのない,リラックスした楽しさがありました。

最初に演奏されたシューベルトの交響曲第4番は,OEKが演奏するのは本当に久しぶりだと思いますが,演奏会の最後に演奏しても満足できるような聴きごたえがありました。

そして,この日の白眉は,2曲目(後半1曲目ですが)に演奏された,神尾真由子さんの独奏によるプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番でした。OEKは,プロコフィエフの2番は頻繁に演奏しているのですが,第1番を実演で聴くのは私自身初めて。そして...名曲の名演奏だと思いました。曲の最初のヴィオラのトレモロの部分など,CDだとよく分からないのですが,実演で聴くととてもリアルで一気に曲の魅力に引き込まれました。

神尾さんのヴァイオリンには,その名のとおり”神”がかりの”神”技といって良い雰囲気がありました。神尾さんは以前からこの曲を得意にしているとのことですが,両端楽章での夢幻的でポエティックな気分,急速な第2楽章でのゾクゾクさせるスリリングな魅力。井上さんの共感度抜群のバックアップの上で,多彩な表情を表現し尽くしているようでした。これまで,井上さんと神尾さんのコンビで色々な協奏曲を聞いてきましたが,その中でも「最高」の演奏だったのでは,と思いました(この2人のコンビでCD録音を期待したいところです)。

というわけで,井上さん自身,事前のインタビュー動画の中で「オタッキー」と呼んでいたプログラムでしたが,OEKの新たなレパートリーを切り開く,素晴らしい内容だったと思います。会場のお客さんからも盛大な拍手が続き,大いに盛り上がりました。「巨匠・井上道義」と「神尾真由子の神技」による誰もが満足できる公演でした。

2021/07/15

#マルク・ミンコフスキ 指揮OEKベートーヴェン・チクルス3回目は,感動に溢れた6番「田園」と,いきなり巻き込まれてしまった感じの高速の5番。大げさかもしれませんが,生きていて良かった,と思わせるような会心の演奏の連続でした。

今晩は今週火曜日に続いて行われた,マルク・ミンコフスキ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるベートーヴェン・チクルスの3回目を聞いてきました。演奏されたのは,6番「田園」と5番という超有名曲2曲。OEKが何回も演奏してきた曲ですが,改めてミンコフスキさんのアーティストとしての素晴らしさを実感できる,素晴らしい公演となりました。少々大げさかもしれませんが,あれこれ活動が制限されているコロナ禍の中,生きていて良かったと思わせるような実感と感動を味わうことができまいした。両曲へのアプローチは正反対のようなところもありましたが,ミンコフスキさんの曲に対する真摯で自由な姿勢がとても新鮮な演奏につながっていた点が共通していると思いました。

前半に演奏された第6番「田園」は,一昨日の2番と8番の狂気さえ感じさせる演奏とは正反対の落ち着いたテンポ設定。しかし,そこに溢れる音楽は大変瑞々しく,「こんな音,聞いたことがない?」と思わせるようなフレーズがあふれ出てくるような面白さがありました。この日も,第2ヴァイオリン~コントラバスの人数を増員していたこともあり,低弦から内声の響きが大変豊かで,鮮やかでした。

特に第2楽章が素晴らしかったですねぇ。ミンコフスキさんは演奏前のインタビュー動画で「田園はとても複雑な曲」と語っていましたが,色々な楽器が次々と浮き上がってきたり,主旋律以外の伴奏的な音型がくっきりと繰り返されたり,なるほどその通りと思いました。ブルックナーの交響曲など通じる要素があるのでは,と思ったりしました。そして至るところで,深い情感が込められていました。楽章最後の鳥の鳴き声の部分なども,大変表情豊かでした。

後半の楽章もそれぞれに生きた音楽を聞かせてくれたのですが,やはり最後の第5楽章が実に感動的でした。楽章の後半に向かうにつれて,音楽に込められた感動がじわじわと盛り上がっていきました。それを振り切って,決然と終わった終結部も爽快でした。

後半の第5番の方は,お客さんの拍手が鳴りやむか止まないうちにスパッとスタート。何か,「いきなり音楽に巻き込まれてしまった!」という感じででした。前のめりの勢いがあると同時に,細かい音型でのキレの良さ。ヤングさんとOEKならではの凄さだと思いました。第2楽章では,しっかりとした呼吸の深さを感じました。特にコントラバスの「ズン」という深い低音が見事でした。この低音を出す時,ミンコフスキさんは指揮棒をものすごく低く下げていましたが,そのイメージどおりの音が出てきて,「すごい」と思いました。

第3楽章も思い切りの良さのある演奏。ホルンの強烈な響き,コントラバスパートからスタートする,猛スピードのフーガ。目が覚めるような演奏でした。第4楽章は,正々堂々と王道を行くような,大変率直な気分でスタート。しかし,その後は音楽の流れに乗って,テンポが速くなったり,即興的な気分もありました。呈示部の繰り返しを行っていましたが,2回目では,さらに輝きと勢いのある音楽になっており,繰り返しを行う必然性のようなものを感じました。

この楽章で満を持して加わるトロンボーンやトランペットなどの金管楽器の音も爽快でした。コーダの部分は,高速,かつ,前のめりのテンポで,どんどんアッチェレランドしていく感じ。音楽できる喜びが爆発しているような祝祭感のあるフィナーレでした。この部分を聞きながら,ベートーヴェン・チクルス最終回の第9のフィナーレを予告する感じかも,と期待を膨らませてしまいました。

というわけで,チクルス3回目の演奏も,ミンコフスキ&OEKは,集中力十分,乗りに乗った会心の演奏。長い長いインターバルを置いた結果,双方の結束がさらに高まり,芸術監督のミンコフスキさんの真価が存分に発揮された,個性的かつ説得力十分の見事なベートーヴェンでした。コロナ禍の記憶と同時に,蘇ってくるようなOEK演奏史に残るような演奏だったかもしれませんね。

2021/07/13

#マルク・ミンコフスキ 指揮OEKベートーヴェン・チクルス2回目は2番と8番。「明るい狂気」と言っても良いような,これまでに聞いたことのないようなスピード感。OEKの皆様,大変お疲れさまでした,と言いたくなるようなハードな演奏。曲ごとに「違うベートーヴェン」を楽しませてくれますねぇ。明後日の3回目ではどういう側面を聞かせてくれるのでしょうか。

今晩は先週の土曜日に続いて行われた,マルク・ミンコフスキ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるベートーヴェン・チクルスの2回目を聞いてきました。演奏されたのは,2番と8番という偶数番号の2曲でしたが...これまで聞いたこともないような「明るい狂気」が漂うような,ミンコフスキさんならではのベートーヴェンとなっていました。

まず両曲とも,最終楽章を中心に狂ったようなスピード感!ミンコフスキさんによる,事前のインタビュー動画では,この2曲について「クレイジー」という言葉を使っていましたが,それを鮮やかに体現したような演奏だったと思います。

最初に演奏された第2番の冒頭から,非常に引き締まった響き。一気呵成の若々しい推進力と同時に(1楽章呈示部の繰り返しは行っていなかったと思います),どこか思いつめた雰囲気。第2楽章は一息ついて,暖かな気分になりましたが,次第に深く,孤独な世界に入り込んでいく感じ。そして第3楽章から第4楽章に掛けては,再度,狂気を持ったスピード感。最終楽章のコーダでの切れ味の鋭さと爆発力。甘さを廃した,辛口の第2番だったと思いました

後半の第8番にも同様の気分が感じられ,この2曲を並べた意図を感じました。第1楽章は,第2番同様,引き締まった速目のテンポで始まった後,第2主題でテンポをぐっと落として,別世界へ。ただし,すぐにまた元に戻り,第2番同様,狂気が爆発するような雰囲気に。第2楽章も優雅さよりは,前のめりに進んでいく感じ。

第3楽章では,トリオでのチェロ・パートのゴツゴツとした表情が大変印象的でした。これまでに聞いたことのない雰囲気がありました。第4楽章は,ここまでの総決算という感じの狂気の速さ。バロックティンパニの乾いた音など,曲の至るところ出てくるそわそわとした感じ。コーダの部分は強烈なビートを聞かせた,ロック音楽のような世界。OEKの皆様,大変お疲れさまでした,と言いたくなるようなハードな演奏だったと思います。

というわけで,先週の1番,3番とは全く違ったベートーヴェンの世界が広がっていました。個人的には,この2曲については,健全さや優雅さのある演奏が好みではあるのですが,今回のミンコフスキさんの演奏は,過激でクレージーな側面を強調して,一味違ったイメージを伝えてくれた気がします。チクルス第3回の第6番,第5番では,一体,ベートーヴェンのどういう面を聞かせてくれるのか,さらに期待が広がりました。

2021/07/10

#ミンコフスキ がベートーヴェンとともに金沢に帰ってきました。再始動した交響曲チクルス1回目は1番と3番「英雄」。OEKへの信頼に溢れた鮮やかで熱い演奏。OEKの日常も戻りつつあるなぁと実感。来週の2公演も聞き逃せません。#oekjp

ミンコフスキが金沢に帰ってきました。そして,コロナ禍の影響で予定が大幅に狂っていた「ベートーヴェン交響曲全集」のチクルスが仕切り直しで再始動しました。

考えてみれば最後にミンコフスキさんを金沢で見たのは...2019年10月。記憶がかなり薄れつつあるのですが,千曲川が氾濫して北陸新幹線の車両が水に浸かってしまった,「あの時」以来になります。

チクルスの1回目は,交響曲第1番と第3番「英雄」。シリーズのスタートに相応しい曲目だと思います。1番の1楽章の序奏部は暖かみと豊かさを感じさせる音。そしてどこをとってもクリア。ミンコフスキさんは,ビデオメッセージの中で,コンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんのことを総理大臣とたとえていましたが(ミンコフスキさんは大統領),緻密な音楽を作り上げるヤングさんとOEKへの強い信頼とミンコフスキさんの暖かみのあるキャラクターとが見事に合体したような音だと思いました。

基本的に「大げさなこと」「変わったこと」はしない,堂々たるベートーヴェンでしたが,要所要所にミンコフスキさんのこだわりがあり,「おっ」と思わせるような瞬間が沢山ありました。この日は木管楽器にエキストラの方が多かったのですが,交響曲第1番の時は「トップ奏者」を担当していました。第3楽章の中間部の木管合奏が続く部分が大好きなのですが,ニュアンス豊かな音楽が続き,幸せな気分にさせてくれました。

ミンコフスキさんは,時々片腕を高~く差し上げるのですが(個人的にはウルトラマンに変身する動作に見えます(古いか)),その動作に合わせて,音楽が巨大に盛り上がる瞬間があります。そのライブならではの高揚感は何物にも変えられないものです。ミンコフスキさんは,ビデオメッセージの中で交響曲第1番にもついても「巨大な交響曲」と語っていましたが,1曲目からとても聴きごたえのある音楽でした。

後半の「英雄」はさらに巨大な音楽になっていました。第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバスを増員しており,弦楽合奏が対位法的に絡み合うような部分での聴きごたえが増していました。特徴的だったのは,コントラバスの位置でした。ステージ正面のいちばん後ろ(指揮者の真正面)に3人並んでいました。第2楽章の最初の部分など,低音がグインと迫ってくる感じで効果満点だったと思いました。

第1楽章は大変軽やかに開始。「英雄」が颯爽と活躍しているような気分。基本的な流れが良い分,時々出てくる変則的なリズムやこだわりのニュアンスの変化が生きていました。ちなみにコーダの部分のトランペットは途中でメロディが消え,リズムだけになるような感じ。最近はこういう形が多いのですが,リズムに躍動感があり,物足りなさはありませんでした。

続く第2楽章は上述のコントラバスの音に続いて,大変じっくりと聞かせる深い音楽。第1楽章とのコントラストが鮮明で,どこかオペラを思わせるようなドラマを感じました。加納さんのオーボエには美しさと虚無感が合体したような気分があり,オペラの主役を思わせる鮮やかさがありました。

楽章の後半になると上述のとおり弦楽パートの絡み合いが素晴らしく(この日のヴィオラパートにはダニール・グリシンさんに加え,川本嘉子さんも参加しており超強力),荘厳が宗教音楽を思わせる気分がありました。

第3楽章もキビキビとした主部と野性味溢れる中間部の対比が楽しめました。第4楽章も変奏が進むにつれて熱気が増していき,音楽の表現の深みが増していくようでした。松木さんの鮮やかなフルート,チェロパート(だと思います)のニュアンスの豊かさなど,OEKの各パートがしっかりと活躍していました。コーダの部分は非常に軽快な雰囲気になり,ちょっとしたお祭り気分。颯爽と締めてくれました。

演奏後,ミンコフスキさんとヤングさんが「ひじで握手」する光景を見ながら,「ようやく日常が戻りつつあるなぁ」と未来への希望を持ちました。オーケストラのメンバーが引っ込んだ後も拍手が続いていたので,最後にミンコフスキさんが再登場して,一言感謝の言葉。来週のベートーヴェンチクルス2回目,3回目もしっかりと聴きに行きたいと思います。

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