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2021年10月

2021/10/21

マルク・ミンコフスキ指揮OEK ベートーヴェン全交響曲チクルス第4回は4番と7番。リズムへのこだわりと増強した低弦の威力が冴えていた4番。爽快な熱狂といった印象の7番。今回も「らしさ」満載。演奏後,袖に引っ込まず指揮台横で一休みするなど,ステージマナーの方も新様式を楽しんでいるようでした。#oekjp

マルク・ミンコフスキ指揮OEKによるベートーヴェン全交響曲チクルスの4回目が石川県立音楽堂で行われたので聞いてきました。演奏されたのは,第4番と第7番。個人的には1980年代,カルロス・クライバーがバイエル国立管弦楽団との来日公演でこの組み合わせの公演を行い,FMで放送された時のことを思い出します。飯尾洋一さんがプログラムの解説に書かれていたとおり,楽章の構成やリズムへのこだわりという点で共通性のある,魅力的なカップリングと言えます。

OEKの編成は,チクルスの過去3回同様,弦楽器の各パートについて1,2名程度編成を増強していました。コントラバスがステージ奥の中央に並んでいたのも同様でした。まず,この効果が前半に演奏された第4番の序奏部から発揮されていました。神妙だけれどもゆとりのある弦の響きで始まった後,音楽がぐっと盛り上ってくる迫力が印象的でした。主部に入る部分は大仰な感じになる演奏も多いのですが,ミンコフスキさんの指揮ぶりは自然で,もったいぶったところがありませんでした。軽快に推進力のある音楽が続きました。第2楽章もしっかりと刻まれるリズムとその上でしっとりと流れる歌との対比が印象的でした。

比較的さらっとした感じの第3楽章の後は,予想通りの急速なテンポの第4楽章に。弾むリズムの上を中心に生き生きとした音楽が流れていました。前半の楽章では,管楽器のミスがちらほらと目立ったのですが,この楽章の見せ場である,ファゴットの高速のパッセージは,くっきり・鮮やか!演奏後,金田さんはミンコフスキさんからまず最初に立たされていました。

後半の第7番の方は,第1楽章序奏部から非常に雄大な雰囲気でしたが,木管楽器はしっかりと独特のリズムで弾んでいました。この辺はミンコフスキさんらしいところだと思います。主部に移行する部分での松木さんの雄弁なフルートも聞きものでした。この楽章では呈示部の繰り返しを行っていましたが(第4番の1楽章は繰り返しなし。この「読めない」感じもミンコフスキさんらしさ),2回目では音楽の盛り上がりが更に一段アップするようなところがミンコフスキさんの特徴ですね。一気にテンションが上がり,お祭り気分になっていました。

第2楽章は一転して透明感溢れる音楽。弦楽器の各パートの絡み合いがとても美しかったですね。音楽が熱くなってくるとヴィブラートをしっかりと効かせて演奏するなど,変幻自在な演奏でした。楽章途中で弦楽器の内声部がしっかりと聞こえてくる感じも良いなぁと思いました。第3楽章は中間部で「ターララ,ターララ」というフレーズを執拗に聞かせ,段々音楽が巨大化していく感じがすごいと思いました。

第4楽章は急速なテンポ。「ワンツー,ワンツー」とリズムを効かせて,前に進んでいくロックな感じが続きました。そして楽章後半はさらにパワーアップ。この曲ではホルン3本で演奏していましたが,随所でテンションの高い音を聞かせて盛り上げてくれました。コーダではコントラバスを中心にオスティナートをじっくりと効かせた後,速いテンポが一段さらにアップ。気合のこもった力強さで全曲を締めてくれました。ものすごく急速なテンポでありながら,荒れ狂った感じにはならず,どこか清々しい風が吹き抜けたような,「爽快な熱狂」といった印象の残る演奏でした。

そしてアンコールがありました。演奏されたのは7番の第2楽章。これは,「この曲の初演時のエピソードを再現してみました」という趣向ですね。ミンコフスキさんも一度やってみたかったのだと思います。

というわけで,今回もまた,色々と新しい発見をさせてくれるようなベートーヴェンを楽しませてくれましたが,今回は,ステージマナーの方でも色々と変わったことをしていました。次のような感じです。

  • ミンコフスキさんが指揮台に登場する時,下手側の弦楽器メンバーがさっと左右に広がって通り道を開け,ミンコフスキさんは両手を広げて悠々と登場。
  • 曲の後,ミンコフスキさんは袖まで引っ込まず,指揮台の横に置いてあった椅子(ピアノの椅子でしょうか)に座って一休み。出入りするのも大変なので,これは結構合理的かもしれません。奏者と一緒に立ったり座ったりする指揮者というのも面白いですね。
  • そして,完全に引っ込む時は,メンバーと一緒に退出。
  • 7番の後は,メンバーを送り出した後,ミンコフスキさんが退出していたので,自然にミンコフスキさん一人だけが呼び出される形に

というわけで,相変わらず色々面白いことを考えるなぁと思いました。これからもOEKの定期公演で,あれこれ試していって欲しいですね。

2021/10/12

OEKヴァイオリン奏者,原田智子さんと小林道夫さんのピアノによる,心にしみるモーツァルト,シューベルト,ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ3曲。じっくりと楽しみました。ストイックでありながら親密な雰囲気が素晴らしいと思いました。

今晩はオーケストラ・アンサンブル金沢のヴァイオリン奏者,原田智子さんと小林道夫さんのピアノによる演奏会に行ってきました。会場の金沢市アートホールは,しばらく改装工事をしていたこともあり,来るのは本当に久しぶりのことでした(調べてみると約2年ぶり)。

原田さんと小林さんは以前にも金沢で共演をされたことがありますが,今回のプログラムは,モーツァルト,シューベルト,ベートーヴェンによる,ヴァイオリンとピアノのためのソナタ3曲という大変楽しみな内容。私自身,原田さんのヴァイオリンの落ち着いた音がとても好きなので,これはぴったりかもと思い,今回の公演に臨みました。

そして,今回のもう一つの大きな期待が,小林道夫さんのピアノでした。小林さんは,岩城宏之さんとほぼ同世代ということで,何と今年米寿ということになります。ただし,ステージ上の姿はこれまでと全然変わらないと思いました。この「ずーっと変わらない,ずーっと活躍している」という点で,指揮者の秋山和慶さんと双璧だと思います。

演奏された曲は,モーツァルトのソナタ ト長調,K.379,シューベルトのソナチネ第2番イ短調,ベートーヴェンのソナタ第10番ト長調ということで,ト長調の曲の2曲の間にイ短調の曲が入るというシンメトリカルな構成。モーツァルトもベートーヴェンも最終楽章が変奏曲形式という点も共通。3曲とも華やかに盛り上がるというよりは,親密さやしみじみとした情感を感じさせる点に魅力があり,プログラム全体を通じた統一感がありました。

そして,お二人の演奏が素晴らしいものでした。原田さんも小林さんも,一見クールな印象がありますが,一音一音を非常に大切に演奏されており,曲に対するリスペクトがしっかりと伝わってきました。原田さんのヴァイオリンの音には,甘く感傷的な感じは全くなく,どこかストイックな感じがします。どの部分にも一本筋が通った強さがあると同時に一人一人に語りかけてくるような親密さがあります。そして常に自然体で落ち着きがあるのが素晴らしいと思います。小林さんのピアノも派手な感じはなく,落ち着いたムードでしっかりと原田さんを支えていまいした。堀朋平さんによるプログラムの解説も,とても分かりやすく,深い内容を持ったもので,原田さんの演奏の雰囲気にぴったりでした。

今回のような,ちょっと控えめな感じのするヴァイオリン・ソナタ3曲といったプログラムは,金沢で聴く機会は少ないのですが,原田さんには是非この路線で,今後もリサイタルを行っていって欲しいと思います。期待をしています。

PS.モーツァルトのソナタの変奏曲形式の第2楽章を聞きながら,「ピアソラの「ブエノスアイレスの〇(忘れました)」の最後の方に出てくる,古典的なの雰囲気の部分とそっくり」と感じました。何にも書いてないので自信はないのですが...この曲のパロディなのかもしれないですね。

2021/10/09

#NHK音楽祭 2021は,石川県立音楽堂で行われた井上道義指揮 #oekjp によるオール・モーツァルト・プログラムで開幕。17歳の奥井紫麻さんのセンス抜群のピアノとの共演による協奏曲23,王道を行くような松木さやさんのフルート。井上さんの曲への愛が溢れるような交響曲第29番。存分に楽しめました。11/7 21:00 Eテレをお楽しみに

本日は,NHKが毎年秋頃に行っている「NHK音楽祭」の開幕公演を,石川県立音楽堂で聞いてきました。登場したのは,井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢でした。従来は,海外からの著名アーティストやオーケストラが東京のNHKホールで演奏するという音楽祭でしたが,コロナ禍の影響が続いている中,今年は全国各地のオーケストラが全国各地で演奏するという形になりました(今年の8~9月にかけて日本オーケストラ連盟が行っていた「オーケストラ・キャラバン」と似た感じ)。その最初の公演が金沢でした。

プログラムは,序曲,協奏曲,交響曲から成る,オール・モーツアルトプログラム。OEKが最も頻繁に取り上げてきた,得意のレパートリーを存分に楽しませてくれました。最初に演奏されたのは,OEKが過去何回も演奏してきた,「フィガロの結婚」序曲。ただし,大半はアンコールとして演奏されて来たので,コンサートの最初に聴くのは意外に珍しいことかもしれません。井上道義さんが元気よくステージに登場し,オーケストラの方に振り向いた途端に開始。息をつかせぬ音の流れ,しっかりとパンチを聞かせた爆発力。「正しいフィガロ」という感じでした。

続いて奥井紫麻(おくい・しお)さんというまだ17歳のピアニストが登場し,ピアノ協奏曲第23番が演奏されました。私自身,今回初めて名前を知った方だったのですが,既に国際的な注目を集めている方で,今回のNHK音楽祭に抜擢されました。

奥井さんは,白いドレスを着ていましたが,その演奏も演奏も無垢な感じで始まりました。しかし,曲が進むにつれて,どんどん内面の世界に入っていくような奥深さが出てきました。荒っぽい音はなく,少し陰りを持った弱音が随所で出てきました。暗さはあるけれども,ウェットな感じにならないところに,奥井さんのセンスの良さを感じました。

この内向的な感じは,第2楽章も同様でしたが,その表情に何とも言えない優しさと静かな強さが感じられました。OEKの方は,一瞬,木管楽器から変な音が聞こえてきてドキッとする部分はあったのですが,共感に満ちたバックアップを聞かせてくれました。第3楽章にも,OEKと一体となった自然な闊達さがありました。

現在,奥井さんはロシアで勉強されているということで,アンコールではラフマニノフの作品が演奏されました。その最初の音を聞いて「ロシアだ!」という感じに会場の空気が変わりました。その和音の透明感。素晴らしいと思いました。今回,1階席のややサイドで聞いていたこともあり,音がダイレクトに聞こえてこない感じもあったのですが(もう少し音量があった方が良いかもと感じました),今後どのように成長していくのかが大変楽しみなピアニストだと思いました。

後半はOEKのフルート奏者,松木さやさんがソリストとして登場し,フルートと管弦楽のためのアンダンテが演奏されました。松木さんの実力は,OEKファンならば誰でも知っていますが,まさに王道を行くような堂々とした演奏でした。これ以上何を望む?世は満足じゃという感じでした。本当に頼もしい奏者だと思います。

演奏会の最後は,交響曲第29番。この曲でも井上さんは振り向きざまにも演奏をスタート。慌てないテンポ感だけれども,そこには,井上さんの「この曲が好きでたまらない」といったことがしっかりと伝わってくるような熱さが籠っていました。井上さんが古典派の交響曲を指揮するときは,基本的な骨格はオーソドックスでありながら,自然に「思い」や「ユーモア」が滲み出てきます。全楽章を通じて,井上さんの人間味が伝わってくるような素晴らしい演奏でした。

第2楽章の最後にオーボエがピシッと出てくるところが好きなのですが,この部分で井上さんはスーツの襟を整えるような指揮の動作をされていました。まさに,加納さんのオーボエで襟元を正すという感じでした。ホルンの高音も続出する曲ですが,高貴な音を聞かせてくれた金星さんの演奏もお見事でした。

最後にアンコールが演奏。今回はNHK音楽祭ということで,11月7日にEテレで全国放送されるのですが,その辺を意識してか,井上&OEKの十八番といっても良い,武満徹の映画「他人の顔」のワルツが表情豊かに演奏されました。この演奏は,やはりアビゲイル・ヤングさんのリードの力も大きいですね。最後,井上さんとヤングさんはしっかりと握手(例の「拳骨」ではなく,本当の握手)をされていました。

終演後,オーケストラが全員引っ込んだ後,井上さんだけが呼び戻されました。OEKの音楽監督として,金沢の音楽文化を豊かにしてくれた井上さんらしさを存分に楽しむことのできた公演でした。

2021/10/02

#ユベール・スダーン さん健在!1年9ヶ月ぶりにOEK定期公演に登場し,ハイドンとシューベルトの古典的な交響曲を清澄かつ強靱に聴かせてくれました。#吉田誠 さんのバセットクラリネット(見るからに長そう)は表現力もダイナミックレンジも豊か。楽器2台が対話しているような面白さ。#oekjp

全国的にコロナ関連の警報が解除された10月。爽やかな気候の土曜日の午後,ユベール・スダーンさん指揮によるOEK定期公演を石川県立音楽堂で聴いてきました。スダーンさんが金沢に来られるのは...2020年1月のニューイヤーコンサート以来,1年9ヶ月ぶりということになります。

今回のプログラムは,前半がハイドンの交響曲第96番「奇跡」とモーツァルトのクラリネット協奏曲。後半がシューベルトの交響曲第2番という,スダーンさんが得意とする,ウィーン古典派~初期ロマン派に掛けての作品が集められました。全曲を通じて,スダーンさんの指揮ぶりや解釈は,以前と全く変わらず「スダーンさん健在!」と実感できました。

ハイドンの96番は,スダーンさんらしく,キビキビとしたテンポ感で演奏されつつも全体の軸がぶれない安定感。清澄な響きと強靱な響きが絶妙にブレンドしたOEKのサウンドを聴いて,「やっぱり古典派はよいな」と思いました。

続いてのモーツァルトのクラリネット協奏曲。今回の目玉は,OEKと初共演となる吉田誠さんがバセットクラリネットで演奏したことです。吉田さんが登場した時,「結構長いなぁ」と思いながら見ていたのですが,そのイメージどおりで,通常のクラリネットより低音部の響きに充実感がありました。吉田さんの演奏も大変表情豊かでした。のびやかな高音部とちょっとミステリアスな気分さえ感じさせる低音部との切り替え,弱音から強音までのダイナミックレンジの広さ...とてもスケールの大きな演奏に感じました。その多彩な音を味わいながら,2つの楽器を1人で操っているような,すごさを感じました。推進力溢れるスダーンさん指揮OEKも万全のバックアップでした。

アンコールではクラリネット独奏曲が演奏されました。曲名は不明ですが,モーツァルトのクラリネット協奏曲のカデンツァのような雰囲気があり,この曲の残像がチラつくようでした。アンコールにぴったりの曲だと思いました。

後半は,シューベルトの交響曲第2番が演奏されました。考えてみると,前半がハイドンの後期の曲,後半がシューベルトの初期曲という構成は,7月の井上道義さん指揮の定期公演と同じ。OEKならではの組み合わせと言えます。

シューベルトの2番を実演で聴くのは久しぶりでしたが,色々な「諸先輩方」の影響を感じさせつつも,シューベルトらしい歌が要所要所で湧き出てくる魅力的な曲です。基本的には,前半のハイドンと同様,キビキビした感じと安定感と強靱さが同居した演奏。まとまりの良さと充実感がありました。オーボエの加納さんをはじめとした,OEKメンバーんのソリスティックな活躍もしっかり楽しめました。勢いのある熱さで締められた最終楽章もお見事でした。

というわけで,スダーンさん指揮OEKによる古典派交響曲。これからまだまだ聴いていきたいですね。期待しています。

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