2021年OEKの演奏会を振り返ってみました。ミンコフスキさん,スダーンさんの復活+井上道義さん,秋山和慶さん,鈴木雅明さんなどベテラン指揮者による「代役」公演の充実感...1年間楽しませていただきました。
2021年もコロナ禍が続き,クラシック音楽の演奏会も影響を受け続けました。演奏会の聴衆の数も戻っていない状況ですが,その中でもコロナ禍に対応しながら,今できる最善の形を目指して,演奏会を行ってきた1年だったと思います。その1年をOEKの公演を中心に振り返ってみたいと思います。
まず,OEKの芸術監督のマルク・ミンコフスキさん,プリンシパル・ゲストコンダクターのユベール・スダーンさんの2人が定期公演に戻ってきたことがいちばんの話題でしょう。特にミンコフスキさんは,7月以降,ベートーヴェン全交響曲チクルスで4回登場しました。その「音楽を皆で楽しもう」という基本姿勢から,スリリングな演奏が続きました。奇数番号の鮮烈な演奏もすごかったのですが,個人的には,色々な音が聞こえてきた「田園」が特に印象に残っています。
スダーンさんの方は,吉田誠さんのバセットクラリネットとの共演によるモーツァルトの協奏曲に加え,ハイドンとシューベルトの交響曲という「得意分野」をビシッと聞かせてくれました。このハイドン(96番)とシューベルト(2番)の組み合わせですが,7月の井上道義さん指揮による定期公演も同様の組み合わせ(ハイドンの102番とシューベルトの4番)。神尾真由子さんとのプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番の完成度の高さと合わせ,「OEKらしさ満点」の公演を楽しませてくれました。井上さんは10月のNHK音楽祭公演でも,まだ10代のピアノスト奥井紫麻さんと一緒に,美しさと楽しさ溢れるオール・モーツァルトプログラムを聞かせてくれました。
「OEKらしさ」といえば,4月末のアビゲイル・ヤングさんの弾き振り,藤田真央さんのピアノによるモーツァルト・プログラムも印象的でした。初期のセレナードがあれほど生き生きとした曲で,充実感のある曲だと思いませんでした。藤田さんのモーツアルトは,北國新聞赤羽ホールでのソナタ・シリーズも進行中。タッチの美しさとひらめきに満ちた表現を聴けるのが毎回楽しみですね。
ミンコフスキさんとスダーンさんの「留守中」,OEK公演の中心となっていたパーマネント・ゲストコンダクターの川瀬賢太郎さんは2月と9月の2回登場。モーツァルト抜きで「モーツァルト」を感じさせてくれたり,シューマンの知られざる「交響曲」的作品を聞かせてくれたり,こだわりのプログラムを楽しませてくれました。9月公演では,おなじみ菊池洋子さんが大活躍。スケールの大きなシューマンでしたね。
そして忘れられないのが,それぞれミンコフスキさんとスダーンさんの代役として登場した,鈴木雅明さんと秋山和慶さんです。鈴木さんはミンコフスキさんの代役としてベートーヴェンの2,8,5,6番を2回に分けて演奏。7月のミンコフスキさんの公演との大変贅沢な「聴き比べ」となりました。自信にあふれた熱い表現の連続で,ただただすごいと思いました。
秋山和慶さんは,OEKの公演以外にも,5月の楽都音楽祭では,大阪フィルとレスピーギの「ローマ三部作」を全部指揮。個人的には今年の「コンダクター・オブ・ザ・イヤー」だと思いました。11月定期での前橋汀子さんとのレジェンド共演に加え,ハイドンの交響曲(9月の岩城メモリアルでの「軍隊」と11月定期での「時計」)での折り目正しい美しさに感服しました。
それ以外にも,1月ニューイヤーコンサート(大雪の日でした)での鈴木優人さん,1月末定期での三浦文彰さん(この公演以降,指揮活動を活発化されている感じ)12月定期で原田慶太楼さん(ピアノの横山幸雄さんともども,定期公演には初登場)と今話題のアーティストとの共演が続きました。
その他の公演では,11月3日に垣内悠希さん石川県民オーケストラとOEKの合同で行われた,ストラヴィンスキーのバレエ全曲版「火の鳥」の滅多に聞けない大編成での演奏。色彩感溢れる演奏は聴きごたえ十分でした。
というわけで,定期公演については,延期はあったものの,全部行われたことに感謝したいと思います。その他,2020年はコロナ禍の影響で中心になったカレッジ・コンサート,1年前は合唱抜きだったメサイア公演なども通常通り行われました。2022年,コロナがどういう状況になるかまだまだ分かりませんが,「こんな感じ」で徐々に普通に戻っていって欲しいと思います。皆様良いお年をお迎えください。
最近のコメント