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2021年12月

2021/12/30

2021年OEKの演奏会を振り返ってみました。ミンコフスキさん,スダーンさんの復活+井上道義さん,秋山和慶さん,鈴木雅明さんなどベテラン指揮者による「代役」公演の充実感...1年間楽しませていただきました。

2021年もコロナ禍が続き,クラシック音楽の演奏会も影響を受け続けました。演奏会の聴衆の数も戻っていない状況ですが,その中でもコロナ禍に対応しながら,今できる最善の形を目指して,演奏会を行ってきた1年だったと思います。その1年をOEKの公演を中心に振り返ってみたいと思います。

まず,OEKの芸術監督のマルク・ミンコフスキさん,プリンシパル・ゲストコンダクターのユベール・スダーンさんの2人が定期公演に戻ってきたことがいちばんの話題でしょう。特にミンコフスキさんは,7月以降,ベートーヴェン全交響曲チクルスで4回登場しました。その「音楽を皆で楽しもう」という基本姿勢から,スリリングな演奏が続きました。奇数番号の鮮烈な演奏もすごかったのですが,個人的には,色々な音が聞こえてきた「田園」が特に印象に残っています。

スダーンさんの方は,吉田誠さんのバセットクラリネットとの共演によるモーツァルトの協奏曲に加え,ハイドンとシューベルトの交響曲という「得意分野」をビシッと聞かせてくれました。このハイドン(96番)とシューベルト(2番)の組み合わせですが,7月の井上道義さん指揮による定期公演も同様の組み合わせ(ハイドンの102番とシューベルトの4番)。神尾真由子さんとのプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番の完成度の高さと合わせ,「OEKらしさ満点」の公演を楽しませてくれました。井上さんは10月のNHK音楽祭公演でも,まだ10代のピアノスト奥井紫麻さんと一緒に,美しさと楽しさ溢れるオール・モーツァルトプログラムを聞かせてくれました。

「OEKらしさ」といえば,4月末のアビゲイル・ヤングさんの弾き振り,藤田真央さんのピアノによるモーツァルト・プログラムも印象的でした。初期のセレナードがあれほど生き生きとした曲で,充実感のある曲だと思いませんでした。藤田さんのモーツアルトは,北國新聞赤羽ホールでのソナタ・シリーズも進行中。タッチの美しさとひらめきに満ちた表現を聴けるのが毎回楽しみですね。

ミンコフスキさんとスダーンさんの「留守中」,OEK公演の中心となっていたパーマネント・ゲストコンダクターの川瀬賢太郎さんは2月と9月の2回登場。モーツァルト抜きで「モーツァルト」を感じさせてくれたり,シューマンの知られざる「交響曲」的作品を聞かせてくれたり,こだわりのプログラムを楽しませてくれました。9月公演では,おなじみ菊池洋子さんが大活躍。スケールの大きなシューマンでしたね。

そして忘れられないのが,それぞれミンコフスキさんとスダーンさんの代役として登場した,鈴木雅明さんと秋山和慶さんです。鈴木さんはミンコフスキさんの代役としてベートーヴェンの2,8,5,6番を2回に分けて演奏。7月のミンコフスキさんの公演との大変贅沢な「聴き比べ」となりました。自信にあふれた熱い表現の連続で,ただただすごいと思いました。

秋山和慶さんは,OEKの公演以外にも,5月の楽都音楽祭では,大阪フィルとレスピーギの「ローマ三部作」を全部指揮。個人的には今年の「コンダクター・オブ・ザ・イヤー」だと思いました。11月定期での前橋汀子さんとのレジェンド共演に加え,ハイドンの交響曲(9月の岩城メモリアルでの「軍隊」と11月定期での「時計」)での折り目正しい美しさに感服しました。

それ以外にも,1月ニューイヤーコンサート(大雪の日でした)での鈴木優人さん,1月末定期での三浦文彰さん(この公演以降,指揮活動を活発化されている感じ)12月定期で原田慶太楼さん(ピアノの横山幸雄さんともども,定期公演には初登場)と今話題のアーティストとの共演が続きました。

その他の公演では,11月3日に垣内悠希さん石川県民オーケストラとOEKの合同で行われた,ストラヴィンスキーのバレエ全曲版「火の鳥」の滅多に聞けない大編成での演奏。色彩感溢れる演奏は聴きごたえ十分でした。

というわけで,定期公演については,延期はあったものの,全部行われたことに感謝したいと思います。その他,2020年はコロナ禍の影響で中心になったカレッジ・コンサート,1年前は合唱抜きだったメサイア公演なども通常通り行われました。2022年,コロナがどういう状況になるかまだまだ分かりませんが,「こんな感じ」で徐々に普通に戻っていって欲しいと思います。皆様良いお年をお迎えください。

2021/12/18

今晩は上野星矢フルートリサイタル@金沢市アートホールへ。三大ソナタを集めた充実のプログラム。気持ちの良いフルートの音に満たされてきました。先行発売のCDも購入。サイン会も大盛況

昨晩から金沢では,この冬一番の寒波を受け,雪が少し積もりました。が,このくらいならば,支障はないですね。そんな中,金沢市アートホールで行われた上野星矢フルート・リサイタルを聞いてきました。金沢でフルートの演奏会が行われることは少ないのに加え,「三大ソナタ」というキャッチフレーズに妙に惹かれ,聞きに行くことにしました。

上野さんの演奏を聴くのは今回が初めてだったのですが,まず,そのフルートの音に感激しました。非常に落ち着いた雰囲気で気負った感じは全くないのに,そこから出てくる音には力がありました。音量も豊かなのですが,ぎゅっと引き締まっており,その音に浸っているだけで充実感を感じました。

演奏後,上野さんは「フルートとしてはこれ以上ないぐらいの重いプログラムに挑戦しました」と語っていたとおり,カール・フリューリングの幻想曲に続いて,フランク(有名なヴァイオリン・ソナタのフルート版),プロコフィエフ,ライネッケのフルート・ソナタが演奏されるという構成でした。この3つのソナタはいずれも20分~30分ぐらいの曲で,「3大ソナタ」(この呼称は今回初めて知ったのですが)という名にふさわしく,どの曲がメインプログラムになってもおかしくないような聴きごたえがありました。

この日はライネッケのフルート・ソナタ「ウンディーネ」が最後に演奏されました。実演では初めて聞く曲でしたが,「ウンディーネ=水の精」ということで,どこか流動的でしっとりとした気分のある第1楽章から魅力的な音楽が続きました。湿度の高い,金沢の冬の気分にもぴったりかもと思いました。

フランクのソナタは,先日,ルドヴィート・カンタさんのチェロで聴いたばかりです。ヴァイオリン以外で聴いても名曲は名曲です。上野さんのフルートの音はとても健康的で,息長くしっかりと歌われるので,音楽に包み込まれるような感じになります。第2楽章,第4楽章の終結部の盛り上がりも素晴らしいものでした。平然と演奏しているけれども,この日のピアノの内門卓也さんと一体となって,音楽が自然に熱気をまとってくる感じを味わえるのは,やはりライブならではだと思いました。

プロコフィエフのソナタの方は,フランクとは反対に,オリジナルがフルート・ソナタで,ヴァイオリン用に編曲した版もよく演奏されるという曲です。以前から親しみやすい雰囲気の曲だなと思っており,一度実演で聴いてみたいと思っていた作品でした。古典的な雰囲気で始まった後,プロコフィエフらしく,段々とヒネリが入ってくる感じなのですが,上野さんの演奏は,シニカルな感じにならず,どの楽章を取っても精気に富んだ美しい音楽になっているのが良いなぁと思いました。

今回の公演(金沢以外にも全国でツァーを行っています)は,この3曲を収録した新譜CD(1月に発売とのことです)のプロモーションも兼ねている感じでしたが,本日はそれ以外にカール・フリューリングという作曲家の幻想曲という初めて聞く作品も演奏されました。この曲もとても魅力的な作品でした。というわけで,15分の休憩を入れてほぼ2時間の充実した内容の公演でした。

さらにアンコール!ここでは,クロード・ボーリングという作曲家の「ジャズ組曲」から「センチメンタル」という,とても親しみやすいう曲が演奏されました。ジャズというよりは,ポップス的な曲(1970年代のカーペンターズの曲にありそうな感じ)でしたが,重いプログラムを締めるには絶好の曲でした。

終演後はCD購入者には,上野さんと内門さんがサインを行ってくれる,ということで嬉しくなって参加してきました。会場のお客さんはフルート愛好家が大勢集まっている感じで,サイン会も大盛況。これから年末にかけて,このCDの方もしっかりと楽しみたいと思います。

2021/12/15

#oekjp 定期初登場の原田慶太楼さん指揮による力強く引き締まったビゼー,意外なことに定期初登場だった横山幸雄さんとのモーツァルト24番の美しさ。弦楽器総立ちで演奏していた吉松隆のアトム・ハーツ・クラブのダイナミックな楽しさ。原田さんの作る世界をしっかり楽しみました。

本日は,本来5月29日に予定されていた,OEK定期公演マイスターシリーズの延期公演を石川県立音楽堂で聴いてきました。当初の指揮者はジャン=クロード・カサドシュさん,ピアノがトーマス・エンコさんだったのですが,コロナ禍の影響で,指揮が原田慶太楼さん,ピアノが横山幸雄さんに交代。その後,5月に入って感染拡大が急拡大し,公演自体が延期...ということでコロナに振り回された公演がついに実現した待望の公演といえます。

今回登場した原田さんも横山さんもOEKの定期公演に出演するのは初めてでした。横山さんの方は楽都音楽祭などには出演されていたので,少々意外でしたが,コロナ禍が生んだ初共演ということになります。原田さんの方は,近年「題名のない音楽会」やNHK交響楽団への客演などで,テレビに登場する機会がとても多いので,こちらも初めてのような気がしなかったですが,私自身,原田さんの指揮に生で接するのは今回が初めてでした。

プログラムは,前半の協奏曲がハ短調,後半の交響曲がハ長調ということで,暗→明の対比が楽しめる構成。そして,最初に演奏されたのは,OEKが演奏するのは,恐らく今回初めての,吉松隆「アトム・ハーツ・クラブ組曲I」(弦楽合奏版)でした。まず,このインパクトの強い作品を1曲目に持ってきた点が原田さんの素晴らしさだと思いました。

プログレッシブ・ロックを弦楽合奏で演奏したような組曲で,とっても分かりやすい音楽でしたので,会場は最初から大盛り上がりでした。OEKのメンバーはチェロ以外は立って演奏。この日のコンサートマスター,水谷晃さんや首席ヴィオラ奏者,川本嘉子さんを中心に体いっぱいに使ったようなダイナミックな動きの連続。音響面での強烈なリズム感だけではく,見た目でも激しさが伝わってきました。バルトークが長生きして,プログレッシブ・ロックに関心を示したらこういう感じの曲を書いていたかも,という面白さも感じられました。最後の曲の最後の部分は全員がアドリブで演奏しているようなカオスの饗宴といった音楽。チェロ奏者まで立ち上がって終了ということで,OEKメンバーもすっかり原田さんに乗せられて,ロックにはまっているような楽しさでした。

続いて,横山さんのピアノとの共演で,モーツァルトのピアノ協奏曲第24番が演奏されました。原田さんとOEKの作る,ベートーヴェンを思わせる堅固な雰囲気に対して,横山さんのピアノは,力んだところのない,クリアな美しさに溢れていました。横山さんは,どこを取っても楽々と演奏している感じで,個人的には,音楽にソツがなさすぎると感じてしまうところもあったのですが,その音楽の純度の高さとバランスの良さはさすがだと思いました。

アンコールで演奏されたのは,グノーのアヴェ・マリアをピアノ独奏用に編曲したもの。どなたの編曲か分からないのですが,静かに始まった後,どんどんキラキラ感が増していく,すごい編曲で,少し早めのクリスマスプレゼントといった趣きがありました。

後半は,OEKの得意のレパートリーの一つであるビゼーの交響曲が演奏されました。演奏会全体の時間がやや短かかったこともあるのか,この曲に先立って,ビゼーの師匠であるグノーの交響曲の第1楽章が演奏されました(思わぬところで,「グノー」がキーパーソンになっていました)。ビゼーの交響曲が,グノーの交響曲の多大な影響を受けていることを耳で確認してもらおう,という原田さんの意図どおり,大変面白い試みでした。調性は違っていましたが,「ジャン!」という力強い和音で始まるあたり,そっくりでした。それと...グノーの交響曲も純粋に良い曲だなぁと思いました(この曲は,以前,OEKの定期公演で聴いたこともあるはずです)。

ビゼーの交響曲は,過去何回かOEKの演奏で聴いてきましたが,今回の原田さんの指揮による演奏は,大変力感に溢れたものでした。他の曲でもそうでしたが,弦楽器の音が強く引き締まっており,音楽全体として密度の高さを感じました。指揮ぶりも大変エネルギッシュで,筋肉質のビゼーという感じでした。その一方,第2楽章は非常に遅いテンポで,加納さんのオーボエをたっぷりと聞かせてくれました。ただ...この楽章については,個人的には,「ちょっと遅すぎるかな。息の長いメロディを演奏するのは大変そう」などと思ってしまいました。

第4楽章の最初の一撃は物凄い強烈さ。そして,その後に出てくる主題は,ぎゅっと引き締まった物凄い速さ。ビゼーのこの曲については,もっと手を抜いた(?)感じで,軽く流れるような演奏も好きなのですが,今回の演奏では,OEKの弦楽セクションを初めとした名人芸を楽しむことができました。

というわけで,OEK定期公演初登場にして原田慶太楼さんらしさを存分に感じさせてくれる充実の演奏会でした。OEKが吉松隆さんの曲を演奏する機会は...非常に少なかったのですが,今回の演奏を聴いて,原田さんとOEKで新しいレパートリーを聴いてみたいなと思いました。今後の再共演に期待をしています。

2021/12/12

年末恒例,#北陸聖歌合唱団 & #松井慶太 指揮 #oekjp によるクリスマス・メサイア公演。じっくりとしたテンポ設定から,2年ぶりに合唱できる感動がじわじわと伝わってきました。ソリストも皆さん素晴らしい歌唱。#韓錦玉 #小泉詠子 #鈴木准 #青山貴

本日は年末恒例の,北陸聖歌合唱団とOEKによるクリマス・メサイア公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。昨年は,コロナ禍の影響で「合唱なしのメサイア」という異例の公演でしたので,合唱入りは2年ぶり。半世紀以上,メサイアを歌い続けている北陸聖歌合唱団の皆さんにとっても,感慨深い公演になったと思います。

今回は,第1部を中心としたハイライト公演で,指揮は松井慶太さんでした。松井さんのテンポ設定は全体的にやや遅めで,特に合唱曲については,しみじみとした「思い」がしっかりと伝わってきました。合唱団の皆さんは,全員マスク(通常のマスクではなく,合唱用マスクといった感じのものかもしれません。顔の下半分を覆う感じのマスクでした)着用での歌唱ということで,少しこもった発声に聞こえましたが,その分,柔らかさがあり,感動を内に秘めたような奥深さを感じました。

今回素晴らしかったのは,独唱者の皆さんでした。特にバリトンの青山貴さんの歌唱には圧倒されました。青山さんといえば,最近はびわこホールでのワーグナー作品でお馴染みですが,その本領を発揮したような,威厳のある豊かで美しい声をホール中に響かせてくれました。テノールの鈴木准さんについては,個人的に松本隆詞にはよるシューベルトの三大歌曲で注目していた方ですが,声質がバロック音楽の宗教音楽にもぴったりで,リリカルで芯の強さのある歌唱を存分に楽しませてくれました。

女声は,金沢でもすっかりおなじみの2人でした。慈愛に満ちた優しさのあるソプラノの韓錦玉さん,落ち着きと品のあるメゾ・ソプラノの小泉詠子さん。それぞれの声にぴったりの歌唱を聞かせてくれました。特に小泉さんの歌った,第2部最初の長大なアリアが素晴らしかったですね。中間部では言葉を吐き捨てるような強い表現が印象的でした。

OEKは,合唱曲の時はフル編成で,独唱曲の時は首席奏者中心による小編成での演奏でした。小編成の演奏の時は,弦楽器はノン・ヴィブラートで演奏しており,すっきりとした清涼感が伝わってきました。第3部のバリトンのアリアでの藤井さんのトランペットには,染み渡るような輝かしさがあり,じっくり味わうメサイアにぴったりの雰囲気がありました。

第2部最後のハレルヤコーラスは,率直な表現で,2年ぶりに合唱で歌う,喜びがストレートに伝わってきました。この曲に入る直前,松井さんが客席の方を向いて「皆さん,立ち上がりませんか?」といった表情。その効果か,今年はとても大勢のお客さんが起立していました。私の座席の回りの人もみんな立ち上がったので,例年は,気恥ずかしくて着席したまま聞いていた私も立ち上がってみることにしました。その結果ですが...立ち上がった方が音がよく聞こえることが判明。単純に気持ちよいなぁと思いました。

最後のアーメン・コーラスもじっくりとしたテンポで,派手に歌い上げるよりは,感動をしみじみと噛みしめるようでした。まだまだコロナ禍の影響は続いていますが,本日の演奏を聴いて,ようやく年末気分が実感できた気がします。来年こそ,新しいスタートを切れる年になって欲しいものです。

2021/12/03

#宮谷理香 デビュー25周年記念ピアノリサイタル 未来への前奏曲@北國新聞赤羽ホール。前半は,じっくりと演奏された前奏曲尽くし。後半は弦楽六重奏との共演による正統派のショパンの2番の協奏曲。小林仁さんとの対談を交えた充実の演奏会でした。

今晩は,金沢市出身のピアニスト宮谷理香さんの「デビュー25周年記念ピアノリサイタル:未来への前奏曲」を北國新聞赤羽ホールで聴いてきました。実は,石川県立音楽堂では楽都音楽祭秋の陣公演でOEKの演奏会も行っていたのですが,「デビュー25周年」「前奏曲尽くしの前半」「弦楽六重奏との共演によるショパンのピアノ協奏曲第2番」といった点に強く惹かれ,こちらを選ぶことにしました。

宮谷さんは1995年のショパン国際ピアノコンクールで5位入賞後,1996年に金沢でデビュー・リサイタルを行いました。「あれから25年になるのか」という感慨を持ちつつ,最初に演奏されたバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番の前奏曲を聴いてびっくり。おおっと思わせるほどゆったりとしたテンポで開始。深く沈潜する雰囲気は,これまでの宮谷さんの演奏にはなかった境地では,と感じました。

続いて,同じハ長調のショスタコーヴィチの24の前奏曲第1番。バッハと連続して演奏しても全く違和感なくつながるのが面白かったのですが,段々とショスタコーヴィチらしく,ちょっとひねった気分に。その後もドビュッシーの前奏曲集,ラフマニノフの前奏曲「鐘」と続いていきました。というわけで,前半全体として,宮谷さんが再構成した新しい曲を聴くような面白さがありました。そして,どの曲についても宮谷さんのピアノのタッチの美しさを味わえました。

トークの中で宮谷さんは,「コロナ禍の閉塞感におおわれた時期を力を蓄えるための時間ととらえている。今回演奏する前奏曲は,その後に続く未来への前奏曲です」といったことを語っていました。その深く考えられた演奏からも,そのことが伝わってきました。25周年に続く,これからの宮谷さんの演奏活動がますます楽しみになる前半でした。

前半の最後は,ショパンの24の前奏曲集の最後の5曲。ラフマニノフの「鐘」嬰ハ短調の後,20番ハ短調が演奏されたのですが,この2曲の雰囲気が結構似ているなぁと新たな発見がありました。この曲集は,長調と短調が交互に出てきますが,その曲想のコントラストも面白かったですね。24番前奏曲は壮絶な雰囲気な演奏もありますが,宮谷さんの演奏は毅然として未来に立ち向かうような感じでした。

後半は小林仁さん編曲による,ショパンのピアノ協奏曲第2番の弦楽六重奏との共演版が演奏されました。その前に行われた,小林さんと宮谷さんによる対談も興味深いものでした。宮谷さんは1995年のショパン・コンクールで5位,小林さんの方は1960年のショパン・コンクールで入賞。宮谷さんが出場した1995年は小林さんが審査員だったという因縁があります。「ショパン・コンクール今昔」といった感じで,次々と面白いエピソードが出てきました。お話を伺いながら,このコンクールが長年,世界的権威のあるコンクールとして継続しているのは,ポーランド市民の「ショパン愛」の大きさの反映なのだなと感じました。

このピアノ協奏曲第2番の演奏ですが,オーケストラ伴奏に近い雰囲気と室内楽的な雰囲気とが交錯していたのが面白かったですね。OEKの客員コンサートマスターとしてもおなじみの水谷晃さんを中心とした,初期ロマン派の気分たっぷりの六重奏と宮谷さんの凛としたピアノ。大ホールで聴く協奏曲とは違った魅力を感じました。宮谷さんのピアノからは,正統派ショパンといった「高貴なロマン」を感じました。

宮谷さんも小林さんもショパンコンクールに出場した際は,第2番を演奏したとのことですが(今年,インターネットで観たコンクールの様子を考えると,お二人ともファイナルまで進んで協奏曲を演奏していること自体,「すごいなぁ」と感じました),特に弦楽六重奏版にぴったりの曲だと思いました。

今回の前半のプログラムは宮谷さんの新譜CDの選曲と重なっていましたので,25周年のご祝儀のような感じで会場でCDも購入。宮谷さんの直筆サイン入り色紙が特典として付いており,良い記念になりました。宮谷さんは,ほぼ満席の客席を観て感激されていましたが,アフターコロナの時代の宮谷さんも応援していきたいと思います。

#宮谷理香 デビュー25周年記念ピアノリサイタル 未来への前奏曲@北國新聞赤羽ホール。前半は,じっくりと演奏された前奏曲尽くし。後半は弦楽六重奏との共演による正統派のショパンの2番の協奏曲。小林仁さんとの対談を交えた充実の演奏会でした。

今晩は北國新聞赤羽ホールで行われた,金沢市出身のピアニスト宮谷理香さんの「デビュー25周年記念ピアノリサイタル:未来への前奏曲」を聴いてきました。実は,石川県立音楽堂では楽都音楽祭秋の陣公演でOEKの演奏会も行っていたのですが,「デビュー25周年」「前奏曲尽くしの前半」「弦楽六重奏との共演によるショパンのピアノ協奏曲第2番」といったことに強く惹かれ,こちらの公演を選ぶことにしました。

宮谷さんは1995年のショパン国際ピアノコンクールで5位入賞後,1996年に金沢でデビュー・リサイタルを行っています。「あれから25年になるのか」という感慨を持ちつつ,最初に演奏されたバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番の前奏曲を聴いてびっくり。おおっと思わせるほどゆったりとしたテンポで開始。深く沈潜するような雰囲気は,これまでの宮谷さんの演奏にはない境地では,と感じました。

続いて,同じ調性のショスタコーヴィチの24の前奏曲第1番。バッハの後,連続して演奏しても全く違和感なくつながるのが面白かったのですが,段々とショスタコーヴィチらしく,ちょっとひねった気分になってきました。その後もドビュッシーの前奏曲集,ラフマニノフの前奏曲「鐘」と続いていきました。宮谷さんが再構成した新しい曲を聴くような面白さがありました。そして,どの曲も宮谷さんのピアノのタッチの美しさを味わえました。

トークの中で宮谷さんは,「コロナ禍の閉塞感におおわれた時期を,力を蓄えるための時間ととらえている。今回演奏する前奏曲は,その後に続く未来への前奏曲です」といったことを語っていましたが,その深く考えられた演奏からも,そのことが伝わってきました。25周年に続く,これからの演奏活動がますます楽しみになる「前奏曲集」でした。

前半の最後は,ショパンの24の前奏曲集の最後の5曲。ラフマニノフの「鐘」嬰ハ短調の後,20番ハ短調が演奏されたのですが,この2曲の雰囲気が結構似ているのが面白かったですね。この曲集は,長調と短調が交互に出てきますが,その曲想のコントラストも面白かったですね。24番前奏曲は壮絶な雰囲気な演奏もありますが,宮谷さんの演奏は毅然として未来に立ち向かう感じでした。

後半は小林仁さん編曲による,ショパンのピアノ協奏曲第2番の弦楽六重奏との共演版が演奏されました。その前に行われた,小林さんと宮谷さんによる対談も興味深いものでした。宮谷さんは1995年のショパン・コンクールで5位,小林さんの方は1960年のショパン・コンクールで入賞。宮谷さんが出場した1995年は小林さんが審査員だったという因縁があります。「ショパン・コンクール今昔」といった感じで,次々と面白いエピソードが出てきました。お話を伺いながら,このコンクールが長年,世界的権威のあるコンクールとして継続しているのは,ポーランドの人たちの「ショパン愛」の大きさの反映なのだなと感じました。

このピアノ協奏曲第2番の演奏ですが,オーケストラ伴奏に近い雰囲気と室内楽的な雰囲気とが交錯していたのが面白かったですね。OEKの客員コンサートマスターとしてもおなじみの水谷晃さんを中心とした,初期ロマン派の気分たっぷりの六重奏と宮谷さんの凛としたピアノ。大ホールで聴く協奏曲とは違った魅力を感じました。宮谷さんのピアノからは,正統派ショパンといった「高貴なロマン」を感じました。

宮谷さんも小林さんもショパンコンクールに出場した際は,第2番を演奏したとのことですが(今年,インターネットで観たコンクール様子を考えると,お二人ともファイナルまで進んで協奏曲を演奏していること自体,「すごい」と感じます),特に弦楽六重奏版にぴったりの曲だと思いました。

今回の前半のプログラムは宮谷さんの新譜CDの選曲と重なっていましたので,25周年のご祝儀のような感じで会場でCDも購入。宮谷さんの直筆サイン入り色紙が特典として付いており,良い記念になりました。宮谷さんは,ほぼ満席の客席を観て感激されていましたが,アフターコロナの時代の宮谷さんも応援していきたいと思います。

#宮谷理香 デビュー25周年記念ピアノリサイタル 未来への前奏曲@北國新聞赤羽ホール。前半は,じっくりと演奏された前奏曲尽くし。後半は弦楽六重奏との共演による正統派のショパンの2番の協奏曲。小林仁さんとの対談を交えた充実の演奏会でした。

今晩は北國新聞赤羽ホールで行われた,金沢市出身のピアニスト宮谷理香さんの「デビュー25周年記念ピアノリサイタル:未来への前奏曲」を北國新聞赤羽ホールで聴いてきました。実は,石川県立音楽堂では楽都音楽祭秋の陣公演でOEKの演奏会も行っていたのですが,「デビュー25周年」「前奏曲尽くしの前半」「弦楽六重奏との共演によるショパンのピアノ協奏曲第2番」といったことに強く惹かれ,こちらの公演を選ぶことにしました。

宮谷さんは1995年のショパン国際ピアノコンクールで5位入賞後,1996年に金沢でデビュー・リサイタルを行っています。「あれから25年になるのか」という感慨を持ちつつ,最初に演奏されたバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番の前奏曲を聴いてびっくり。おおっと思わせるほどゆったりとしたテンポで開始。深く沈潜するような雰囲気は,これまでの宮谷さんの演奏にはない境地では,と感じました。

続いて,同じ調性のショスタコーヴィチの24の前奏曲第1番。バッハの後,連続して演奏しても全く違和感なくつながるのが面白かったのですが,段々とショスタコーヴィチらしく,ちょっとひねった気分になってきました。その後もドビュッシーの前奏曲集,ラフマニノフの前奏曲「鐘」と続いていきました。宮谷さんが再構成した新しい曲を聴くような面白さがありました。そして,どの曲も宮谷さんのピアノのタッチの美しさを味わえました。

トークの中で宮谷さんは,「コロナ禍の閉塞感におおわれた時期を,力を蓄えるための時間ととらえている。今回演奏する前奏曲は,その後に続く未来への前奏曲です」といったことを語っていましたが,その深く考えられた演奏からも,そのことが伝わってきました。25周年に続く,これからの演奏活動がますます楽しみになる「前奏曲集」でした。

前半の最後は,ショパンの24の前奏曲集の最後の5曲。ラフマニノフの「鐘」嬰ハ短調の後,20番ハ短調が演奏されたのですが,この2曲の雰囲気が結構似ているのが面白かったですね。この曲集は,長調と短調が交互に出てきますが,その曲想のコントラストも面白かったですね。24番前奏曲は壮絶な雰囲気な演奏もありますが,宮谷さんの演奏は毅然として未来に立ち向かう感じでした。

後半は小林仁さん編曲による,ショパンのピアノ協奏曲第2番の弦楽六重奏との共演版が演奏されました。その前に行われた,小林さんと宮谷さんによる対談も興味深いものでした。宮谷さんは1995年のショパン・コンクールで5位,小林さんの方は1960年のショパン・コンクールで入賞。宮谷さんが出場した1995年は小林さんが審査員だったという因縁があります。「ショパン・コンクール今昔」といった感じで,次々と面白いエピソードが出てきました。お話を伺いながら,このコンクールが長年,世界的権威のあるコンクールとして継続しているのは,ポーランドの人たちの「ショパン愛」の大きさの反映なのだなと感じました。

このピアノ協奏曲第2番の演奏ですが,オーケストラ伴奏に近い雰囲気と室内楽的な雰囲気とが交錯していたのが面白かったですね。OEKの客員コンサートマスターとしてもおなじみの水谷晃さんを中心とした,初期ロマン派の気分たっぷりの六重奏と宮谷さんの凛としたピアノ。大ホールで聴く協奏曲とは違った魅力を感じました。宮谷さんのピアノからは,正統派ショパンといった「高貴なロマン」を感じました。

宮谷さんも小林さんもショパンコンクールに出場した際は,第2番を演奏したとのことですが(今年,インターネットで観たコンクール様子を考えると,お二人ともファイナルまで進んで協奏曲を演奏していること自体,「すごい」と感じます),特に弦楽六重奏版にぴったりの曲だと思いました。

今回の前半のプログラムは宮谷さんの新譜CDの選曲と重なっていましたので,25周年のご祝儀のような感じで会場でCDも購入。宮谷さんの直筆サイン入り色紙が特典として付いており,良い記念になりました。宮谷さんは,ほぼ満席の客席を観て感激されていましたが,アフターコロナの時代の宮谷さんも応援していきたいと思います。

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