#宮谷理香 デビュー25周年記念ピアノリサイタル 未来への前奏曲@北國新聞赤羽ホール。前半は,じっくりと演奏された前奏曲尽くし。後半は弦楽六重奏との共演による正統派のショパンの2番の協奏曲。小林仁さんとの対談を交えた充実の演奏会でした。
今晩は北國新聞赤羽ホールで行われた,金沢市出身のピアニスト宮谷理香さんの「デビュー25周年記念ピアノリサイタル:未来への前奏曲」を聴いてきました。実は,石川県立音楽堂では楽都音楽祭秋の陣公演でOEKの演奏会も行っていたのですが,「デビュー25周年」「前奏曲尽くしの前半」「弦楽六重奏との共演によるショパンのピアノ協奏曲第2番」といったことに強く惹かれ,こちらの公演を選ぶことにしました。
宮谷さんは1995年のショパン国際ピアノコンクールで5位入賞後,1996年に金沢でデビュー・リサイタルを行っています。「あれから25年になるのか」という感慨を持ちつつ,最初に演奏されたバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番の前奏曲を聴いてびっくり。おおっと思わせるほどゆったりとしたテンポで開始。深く沈潜するような雰囲気は,これまでの宮谷さんの演奏にはない境地では,と感じました。
続いて,同じ調性のショスタコーヴィチの24の前奏曲第1番。バッハの後,連続して演奏しても全く違和感なくつながるのが面白かったのですが,段々とショスタコーヴィチらしく,ちょっとひねった気分になってきました。その後もドビュッシーの前奏曲集,ラフマニノフの前奏曲「鐘」と続いていきました。宮谷さんが再構成した新しい曲を聴くような面白さがありました。そして,どの曲も宮谷さんのピアノのタッチの美しさを味わえました。
トークの中で宮谷さんは,「コロナ禍の閉塞感におおわれた時期を,力を蓄えるための時間ととらえている。今回演奏する前奏曲は,その後に続く未来への前奏曲です」といったことを語っていましたが,その深く考えられた演奏からも,そのことが伝わってきました。25周年に続く,これからの演奏活動がますます楽しみになる「前奏曲集」でした。
前半の最後は,ショパンの24の前奏曲集の最後の5曲。ラフマニノフの「鐘」嬰ハ短調の後,20番ハ短調が演奏されたのですが,この2曲の雰囲気が結構似ているのが面白かったですね。この曲集は,長調と短調が交互に出てきますが,その曲想のコントラストも面白かったですね。24番前奏曲は壮絶な雰囲気な演奏もありますが,宮谷さんの演奏は毅然として未来に立ち向かう感じでした。
後半は小林仁さん編曲による,ショパンのピアノ協奏曲第2番の弦楽六重奏との共演版が演奏されました。その前に行われた,小林さんと宮谷さんによる対談も興味深いものでした。宮谷さんは1995年のショパン・コンクールで5位,小林さんの方は1960年のショパン・コンクールで入賞。宮谷さんが出場した1995年は小林さんが審査員だったという因縁があります。「ショパン・コンクール今昔」といった感じで,次々と面白いエピソードが出てきました。お話を伺いながら,このコンクールが長年,世界的権威のあるコンクールとして継続しているのは,ポーランドの人たちの「ショパン愛」の大きさの反映なのだなと感じました。
このピアノ協奏曲第2番の演奏ですが,オーケストラ伴奏に近い雰囲気と室内楽的な雰囲気とが交錯していたのが面白かったですね。OEKの客員コンサートマスターとしてもおなじみの水谷晃さんを中心とした,初期ロマン派の気分たっぷりの六重奏と宮谷さんの凛としたピアノ。大ホールで聴く協奏曲とは違った魅力を感じました。宮谷さんのピアノからは,正統派ショパンといった「高貴なロマン」を感じました。
宮谷さんも小林さんもショパンコンクールに出場した際は,第2番を演奏したとのことですが(今年,インターネットで観たコンクール様子を考えると,お二人ともファイナルまで進んで協奏曲を演奏していること自体,「すごい」と感じます),特に弦楽六重奏版にぴったりの曲だと思いました。
今回の前半のプログラムは宮谷さんの新譜CDの選曲と重なっていましたので,25周年のご祝儀のような感じで会場でCDも購入。宮谷さんの直筆サイン入り色紙が特典として付いており,良い記念になりました。宮谷さんは,ほぼ満席の客席を観て感激されていましたが,アフターコロナの時代の宮谷さんも応援していきたいと思います。
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