今晩は上野星矢フルートリサイタル@金沢市アートホールへ。三大ソナタを集めた充実のプログラム。気持ちの良いフルートの音に満たされてきました。先行発売のCDも購入。サイン会も大盛況
昨晩から金沢では,この冬一番の寒波を受け,雪が少し積もりました。が,このくらいならば,支障はないですね。そんな中,金沢市アートホールで行われた上野星矢フルート・リサイタルを聞いてきました。金沢でフルートの演奏会が行われることは少ないのに加え,「三大ソナタ」というキャッチフレーズに妙に惹かれ,聞きに行くことにしました。
上野さんの演奏を聴くのは今回が初めてだったのですが,まず,そのフルートの音に感激しました。非常に落ち着いた雰囲気で気負った感じは全くないのに,そこから出てくる音には力がありました。音量も豊かなのですが,ぎゅっと引き締まっており,その音に浸っているだけで充実感を感じました。
演奏後,上野さんは「フルートとしてはこれ以上ないぐらいの重いプログラムに挑戦しました」と語っていたとおり,カール・フリューリングの幻想曲に続いて,フランク(有名なヴァイオリン・ソナタのフルート版),プロコフィエフ,ライネッケのフルート・ソナタが演奏されるという構成でした。この3つのソナタはいずれも20分~30分ぐらいの曲で,「3大ソナタ」(この呼称は今回初めて知ったのですが)という名にふさわしく,どの曲がメインプログラムになってもおかしくないような聴きごたえがありました。
この日はライネッケのフルート・ソナタ「ウンディーネ」が最後に演奏されました。実演では初めて聞く曲でしたが,「ウンディーネ=水の精」ということで,どこか流動的でしっとりとした気分のある第1楽章から魅力的な音楽が続きました。湿度の高い,金沢の冬の気分にもぴったりかもと思いました。
フランクのソナタは,先日,ルドヴィート・カンタさんのチェロで聴いたばかりです。ヴァイオリン以外で聴いても名曲は名曲です。上野さんのフルートの音はとても健康的で,息長くしっかりと歌われるので,音楽に包み込まれるような感じになります。第2楽章,第4楽章の終結部の盛り上がりも素晴らしいものでした。平然と演奏しているけれども,この日のピアノの内門卓也さんと一体となって,音楽が自然に熱気をまとってくる感じを味わえるのは,やはりライブならではだと思いました。
プロコフィエフのソナタの方は,フランクとは反対に,オリジナルがフルート・ソナタで,ヴァイオリン用に編曲した版もよく演奏されるという曲です。以前から親しみやすい雰囲気の曲だなと思っており,一度実演で聴いてみたいと思っていた作品でした。古典的な雰囲気で始まった後,プロコフィエフらしく,段々とヒネリが入ってくる感じなのですが,上野さんの演奏は,シニカルな感じにならず,どの楽章を取っても精気に富んだ美しい音楽になっているのが良いなぁと思いました。
今回の公演(金沢以外にも全国でツァーを行っています)は,この3曲を収録した新譜CD(1月に発売とのことです)のプロモーションも兼ねている感じでしたが,本日はそれ以外にカール・フリューリングという作曲家の幻想曲という初めて聞く作品も演奏されました。この曲もとても魅力的な作品でした。というわけで,15分の休憩を入れてほぼ2時間の充実した内容の公演でした。
さらにアンコール!ここでは,クロード・ボーリングという作曲家の「ジャズ組曲」から「センチメンタル」という,とても親しみやすいう曲が演奏されました。ジャズというよりは,ポップス的な曲(1970年代のカーペンターズの曲にありそうな感じ)でしたが,重いプログラムを締めるには絶好の曲でした。
終演後はCD購入者には,上野さんと内門さんがサインを行ってくれる,ということで嬉しくなって参加してきました。会場のお客さんはフルート愛好家が大勢集まっている感じで,サイン会も大盛況。これから年末にかけて,このCDの方もしっかりと楽しみたいと思います。
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