OEKのCD

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2022年1月

2022/01/29

#oekjp と初共演の #鈴木秀美 さん指揮による定期公演は,ソリストなしてハイドンの交響曲2曲と2人のバッハの曲を聞かせる「知・情・意」揃った充実のプログラム。特に何が出てくるか分からないような,C.P.E.バッハのシンフォニア,とても楽しめました

本日は,コロナ禍の影響で来日の見通しが立たなくなったエンリコ・オノフリさんに代わって登場した鈴木秀美さん指揮OEKの定期公演を聴いてきました。オノフリさんによる公演を聞けなかったのは残念ですが,鈴木秀美さんとOEKの共演は今回が初めてということで,どういう演奏を聞かせてくれるのか,大変楽しみな公演となりました。

プログラムはソリストなし。ハイドンの交響曲2曲と「2人のバッハ」の管弦楽曲を聞かせる,鈴木さんらしさ,そしてOEKらしさをしっかりと味わえる内容となりました。鈴木さんは古楽奏法のスペシャリストということで,ヴァイオリンなどは,ほぼノン・ヴィブラートで演奏していましたが,その表現には奇をてらったところはなく,どの曲にも安定感・安心感がありました。

その上で,お客さんを楽しませようというアイデアや,ぐいぐいと前に進んでいくような積極性も感じられ,「知・情・意」のすべてが高レベルで整っているのが素晴らしいと思いました。

最初に演奏された,バッハの管弦楽組曲第3番は,トランペット3本が活躍する堂々とした祝祭感と,第2曲「エア」での透明感溢れるしっとりとした歩みとの対比が見事でした。ハイドンの交響曲第44番「悲しみ」は,繰り返しなどを全部行っていたこともあり,大交響曲を聴いたような聞きごたえがありました。短調作品ならではのくっきりとした切迫感に加え,ハイドンの葬儀に使われたという第3楽章での柔らかく高貴な表現も素晴らしいと思いました。

後半は,この日の「目玉」といっても良い,C.P.E.バッハのシンフォニア ロ短調 Wq. 182-5が演奏されました。演奏前に鈴木さんは,この曲について「音楽で言葉を交わしているような曲。予想して聞くとことごとく裏切られるような,とても変わった作品」と説明されていましたが,まさにその通りの作品。暗い表情を持ちながら,次々と生き生きとしたアイデアが溢れてくるような面白さがありました。C.P.E.バッハはこれまでOEKはほとんど演奏してこなかったと思いますが,これから注目したい作曲家となりました。

プログラム最後は,ハイドンの交響曲第94番「驚がく」。C.P.Eバッハに比べると,改めて「古典的だなぁ」と思わせる,生き生きと美しい第1楽章に続き,お楽しみの第2楽章。飯尾洋一さんのプログラム解説に書かれていたとおり,この時点で「ネタばれ」ともいえるのですが,本日の「驚がく」はとても新鮮でした。さりげなく始まった後,段々デクレッシェンドし,バンと一撃が入るのですが,心なしか前のめり気味に物凄く強い一撃。菅原淳さんのティンパニ(この日はバロックティンパニを使っていました)は強く引き締まっており,その素晴らしい音に「びっくり」しました。その後の変奏も大変鮮やかでした。

第3楽章,第4楽章と音楽の推進力が素晴らしかったのですが,上述のとおりすべてがしっかりとコントロールされており,「やりすぎ」という感じにはなっていませんでした。

鈴木さんとOEKが共演するのは,今回が初めてでしたが,既に長年つれそっているような親密感もあり,大人の音楽を聴いたなぁという充実感がありました。2021年,OEKは鈴木雅明さん,優人さん親子とそれぞれ共演しましたが,2022年は雅明さんの弟の秀美さんとの共演。今回初めて聞いた,C.P.E.バッハ特集など,OEKとのこれからの共演を期待したいと思いました。

2022/01/23

本日は鈴木大拙の人生を描いた新作オペラ「禅 ZEN」を金沢歌劇座で鑑賞。2020年から延期になっていた悲願の公演は,何といっても渡辺俊幸さんの熟練の音楽が見事。大拙役の伊藤達人,妻ビアトリス役のコロンえりか,西田幾多郎役の今井俊輔,そして,代役で登場した鈴木恵里奈指揮OEKの演奏,最初から最後まで楽しめました

本日は午後から,渡辺俊幸作曲,松田章一台本による新作オペラ「禅 ZEN」を金沢歌劇座で観てきました。石川県出身の宗教学者,哲学者である鈴木大拙と西田幾多郎の生誕150年を記念して(同じ県出身の同い年というのがすごいですね)企画されたプロジェクトでしたが,東京五輪・パラ同様,コロナ禍の影響で延期。現在も,まだまだコロナ禍が続いている影響で,指揮者や出演者も交代。関係の皆様にとっては,悲願の公演だったのではないかと思います。

「禅の心」をテーマにした作品ということでしたが,ベースになっているのは,鈴木大拙の生涯でした。2時間半ぐらいの作品ですので,大拙の人生のポイントとなる出会いと別れを3幕に分けて描いた作品となっていました。明治生まれで,96歳まで長生きした大拙の人生は考えてみると,戦争続きだった日本現代史に重なり合います。大拙の人生を描きつつ,時代のうねりをしっかりと描いていました。

作品の方は,何といっても渡辺俊幸さんの音楽が素晴らしかったですね。過去,OEKのポップス系の演奏会で何度も客演されている渡辺さんの「アイデア」と「メロディ」満載の作品で,最初から最後まで全く退屈するところはありませんでした。松田章一さんの台本は,ちょっと説明的すぎるかなという部分はあったのですが,渡辺さんの音楽とうまくマッチしており,とてもバランスの良い雰囲気に感じられました。

ちなみにこのオペラは,日本語で歌われる部分と英語で歌われる部分が混ざっており,両方の字幕がずっと舞台上部に出ていました。2階席奥でも声はクリアに聞こえたのですが,この字幕もとても読みやすいものでした。

渡辺さんの音楽は,「禅」的なムードを作る部分については音数を少なくし,静寂さを生かした深さ,大拙がアメリカでビアトリスに会って結婚する辺りは,さわやかなロマンティックな気分を持ったミュージカルのような気分。学習院の乃木院長が登場する部分は,荘重な気分...と見事に場面が描き分けられていました。

特に,凛々しい声を持ったテノールの伊藤達人さんによる大拙と暖かい包容力を持ったソプラノのコロンえりかさんによるビアトリスのデュオは最高でした。オペラを観たなぁという高揚感を感じさせてくれる歌唱でした。鳥木弥生さんによるビアトリスのお母さんが,「ちょっと待った」とクレームを付ける部分がありましたが,それを乗り越える説得力のある音楽であり歌唱でした。

西田幾多郎の方は,大拙に比べると地味な描き方で,キャラクターが分かりにくい面はありましたが,バリトンの今井俊輔さんの風貌には幾多郎の雰囲気がしっかり漂っており,その歌唱からも誠実な性格がしっかりと伝わってきました。

第2幕の最後は,大拙・ビアトリスと教え子が絡み合うコミカルな場面でしたが,軽快なテイストに変わりながらも品の良さがありました(ただし,ジョークっぽく終わる幕切れの部分は,ちょっと分かりにくかったかなという感じでした)。

第3幕はビアトリスの死,幾多郎の死,終戦ということで,人の死がテーマになったような部分でした。ビアトリスの死の部分は,どこかプッチーニのオペラに通じるような,はかなくも美しい場面。背景に月が出ていたので,先日のニューイヤーコンサートでハイライトを聴いた,沼尻竜典さんのオペラ「竹取物語」などを思い出してしまいました。

終戦後の場では,「東京ブギウギ」の一節が歌われるなど,「お客さんへのサービス」のような場になっていました。戦後の日本の扱いについて,マッカーサーが大拙に意見を尋ねるという設定は「架空」で,賛否はありそうですが,禅の精神を再確認し,世界に広めるといった点で重要な場になっていました。

最後の場は,ニルヴァーナ(鎮魂歌)ということで,主要登場人物が再登場し,禅を象徴する円形に座り,作品全体のテーマ曲と言っても良い「ワンダフル(円を描くような3拍子)」の合唱曲が再度歌われました(この曲,とても親しみやすい雰囲気だったので,単独でも歌われそうですね)。この場面は,オペラの最初に場面に対応する感じで,このオペラ全体も円を描いて最初に戻っていくようでした。

今回の舞台は四角い額縁のような枠の中で演技をするような感じで,床面にはチラシのビジュアルにも使われている毛筆で書かれた円が描かれていました。このシンプルでクリアな美しさを持った幾何学的な感じも,「禅」のイメージに通じると思いました。

指揮者は,ヘンリク・シェーファーさんから副指揮者だった鈴木恵里奈さんに変更になったのですが,鈴木さんは渡辺さんの音楽の持つ爽やかでロマンティックな気分をベースに,大拙の人生を彩るドラマティックな雰囲気をしっかり伝えてくれました。この渡辺さんの音楽だけを取り出した組曲版のようなものを作っても面白いのではと思いました。

宗教学者の人生を描いたオペラという冒険的な試みでしたが,予想以上に分かりやすく親しみやすい作品に仕上がっており,プロデューサーの狙いどおりの作品に仕上がっていたのが素晴らしいと思いました。

2022/01/08

#oekjp ニューイヤー・コンサート2022は沼尻竜典さん指揮によるシューマン「ライン」と自作「竹取物語」の抜粋を中心としたプログラム。どの曲も安心して楽しめると同時に沼尻さんの多才さを実感。砂川涼子さんの正統的な美しさのあるソプラノも見事。そして新年名物,OEKどら焼き!

本日は,私とっての2022年初めてのコンサート,OEKのニューイヤー・コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。今年の指揮は沼尻竜典さんで,前半はソプラノの砂川涼子さんの歌を交えた,沼尻さん自身の作曲によるオペラ「竹取物語」セレクションを中心としたプログラム。後半は,シューマンの交響曲第3番「ライン」が演奏されました。

沼尻さんの熟練の指揮による大らかな響き,とても耳馴染みの良いオペラ,正統的な美しさをもった砂川さんの声,色々な楽しみどころのある公演となりました。

前半はこの「竹取物語」をベースにプログラムが組まれていました。キーワードは「月」。そのつながりで,ドヴォルザークの歌劇「ルサルカ」の「月に寄せる歌」が歌われました。さらにその前にモーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」第4幕,暗闇の中で歌われるスザンナのアリア「とうとう嬉しい時がきた~恋人よ,早くこへ」も歌われましたが,夜の静けさの中で歌われる感じが共通しており(多分,月も出てたのかもと勝手に想像),とても取り合わせの良い選曲でした。

砂川さんの歌を石川県立音楽堂コンサートホールで聴くのは初めてだと思いますが(確か,富山市で一度聴いたことはあります),まず,そのクリアでバランスの良い声が素晴らしいと思いました。衣装は,月明かりの下で輝いているような白いドレス。この雰囲気と相俟って,ステージは優雅でロマンティックな空気に変わっていました。スザンナのアリアは,結婚したばかりの新妻の歌なのですが,そのしっとりとした感じにすっかり魅了されてしまいました。

「月に寄せる歌」の方は,序奏部のハープをはじめ,ドヴォルザークによる音楽が魅力的で,砂川さんの声と一体となって,感動的な雰囲気を作っていました。静かな月夜だけれども,心は熱いという歌でした。

この2曲の前に「フィガロの結婚」序曲も演奏されました。OEKは何回も演奏している曲ですが,沼尻さんの指揮は大らかでありながら,細かいニュアンスの変化が豊かで,「さすが沼尻さん」と思いました。曲の最初の方で音楽がバーンと爆発する部分の,お祭り騒ぎ的な指揮の動作が曲の雰囲気に合っているなぁと思いました。

前半最後では「竹取物語」からの5曲が演奏されました。演奏前の沼尻さんによる大変分かりやすい解説によると,「オペラには昭和歌謡のテイストを入れた」ということでしたが,今回の抜粋部分ではそういう雰囲気はあまりなく,どちらかというとプッチーニとミュージカルの間のような雰囲気を感じました。「姫の告白」では,銅鑼の音が入ったりしたので,「ちょっとトゥーランドットの気分かも」と思いました。

最後の「告別のアリア」と「帝へ捧げるアリア」は,多分,オペラを最初から全部観たら「涙が止まらないかも」と思わせる,熱い思いの溢れる曲でした。砂川涼子さんの歌は凜とした美しさに加え,最後の曲では大きく歌い上げており,大変立派な歌唱だなぁと思いました。

沼尻さんが「ドリフターズのテイストを入れた」と紹介していた「走るおじいさんの間奏曲」は,聴いた感じドリフ感はなく(もしかしたら視覚面がないと分かりにくいのかもしれません),スマートで粋な感じの曲だと思いました。

最初の「月の間奏曲」は,とても素直な感じのワルツ(沼尻さんは「シューベルトの即興曲風」と紹介していました)で,これもまたストレートに耳に入ってくる曲。改めて,沼尻さんの多才さを感じさせてくれる作品でした。

このオペラは今月,びわ湖ホールで上演されるそうですが,機会があれば金沢でも全曲を取り上げて欲しいものです。初演には池辺晋一郎さんも関わっていたとのことなので,大いに期待しています。

後半のシューマンの「ライン」は,トロンボーン3本,ホルン4本が入る曲ということで,OEKの定期公演で演奏される機会はあまり多くない作品ですが,室内オーケストラ編成だとあまり重苦しくならないので,この曲の持つ開放的な気分には合っていると思いました。
沼尻さんの指揮ぶりは,全曲を通じてあわてることはなく,第1楽章冒頭から大らかな流れを感じさせてくれました。第2楽章の「きわめて中庸に」というスケルツォ,第3楽章での弦楽器と木管楽器の対話では,OEKならではの親密な気分がありました。

第4楽章は満を持してトロンボーン3本が登場。ケルン大聖堂での式典のイメージを持った曲ですが,同じモチーフが色々な楽器で演奏されて飛び交う立体感が素晴らしかったですね。ただし崇高で近寄りがたいというよりは,言葉を掛け合うような暖かみがあったのは沼尻さんらしさなのかなと思いました。第5楽章はがっしりとした音楽。楽章最後は,もっと激しく盛り上げる演奏もありますが,本日の演奏は力強く堅固な雰囲気で締めてくれました。

沼尻さんとOEKは,OEKの設立当初からつながりがありますが,今回の熟練の指揮ぶりを聴いて,音楽の立派さをそのまま伝えてくれる素晴らしい指揮者になられたなぁと改めて思いました。今年の楽都音楽祭にも登場されるので,そこでのドイツ・オーストリア系の作品の演奏にも期待したいと思います。

さて,どら焼きです。恒例の茶菓工房たろうさん提供による,OEKどら焼きのプレゼントが今年もありました。すっかりニューイヤーを彩る名物になりましたね。夕食後に味わってみたいと思います。

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