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2022/01/23

本日は鈴木大拙の人生を描いた新作オペラ「禅 ZEN」を金沢歌劇座で鑑賞。2020年から延期になっていた悲願の公演は,何といっても渡辺俊幸さんの熟練の音楽が見事。大拙役の伊藤達人,妻ビアトリス役のコロンえりか,西田幾多郎役の今井俊輔,そして,代役で登場した鈴木恵里奈指揮OEKの演奏,最初から最後まで楽しめました

本日は午後から,渡辺俊幸作曲,松田章一台本による新作オペラ「禅 ZEN」を金沢歌劇座で観てきました。石川県出身の宗教学者,哲学者である鈴木大拙と西田幾多郎の生誕150年を記念して(同じ県出身の同い年というのがすごいですね)企画されたプロジェクトでしたが,東京五輪・パラ同様,コロナ禍の影響で延期。現在も,まだまだコロナ禍が続いている影響で,指揮者や出演者も交代。関係の皆様にとっては,悲願の公演だったのではないかと思います。

「禅の心」をテーマにした作品ということでしたが,ベースになっているのは,鈴木大拙の生涯でした。2時間半ぐらいの作品ですので,大拙の人生のポイントとなる出会いと別れを3幕に分けて描いた作品となっていました。明治生まれで,96歳まで長生きした大拙の人生は考えてみると,戦争続きだった日本現代史に重なり合います。大拙の人生を描きつつ,時代のうねりをしっかりと描いていました。

作品の方は,何といっても渡辺俊幸さんの音楽が素晴らしかったですね。過去,OEKのポップス系の演奏会で何度も客演されている渡辺さんの「アイデア」と「メロディ」満載の作品で,最初から最後まで全く退屈するところはありませんでした。松田章一さんの台本は,ちょっと説明的すぎるかなという部分はあったのですが,渡辺さんの音楽とうまくマッチしており,とてもバランスの良い雰囲気に感じられました。

ちなみにこのオペラは,日本語で歌われる部分と英語で歌われる部分が混ざっており,両方の字幕がずっと舞台上部に出ていました。2階席奥でも声はクリアに聞こえたのですが,この字幕もとても読みやすいものでした。

渡辺さんの音楽は,「禅」的なムードを作る部分については音数を少なくし,静寂さを生かした深さ,大拙がアメリカでビアトリスに会って結婚する辺りは,さわやかなロマンティックな気分を持ったミュージカルのような気分。学習院の乃木院長が登場する部分は,荘重な気分...と見事に場面が描き分けられていました。

特に,凛々しい声を持ったテノールの伊藤達人さんによる大拙と暖かい包容力を持ったソプラノのコロンえりかさんによるビアトリスのデュオは最高でした。オペラを観たなぁという高揚感を感じさせてくれる歌唱でした。鳥木弥生さんによるビアトリスのお母さんが,「ちょっと待った」とクレームを付ける部分がありましたが,それを乗り越える説得力のある音楽であり歌唱でした。

西田幾多郎の方は,大拙に比べると地味な描き方で,キャラクターが分かりにくい面はありましたが,バリトンの今井俊輔さんの風貌には幾多郎の雰囲気がしっかり漂っており,その歌唱からも誠実な性格がしっかりと伝わってきました。

第2幕の最後は,大拙・ビアトリスと教え子が絡み合うコミカルな場面でしたが,軽快なテイストに変わりながらも品の良さがありました(ただし,ジョークっぽく終わる幕切れの部分は,ちょっと分かりにくかったかなという感じでした)。

第3幕はビアトリスの死,幾多郎の死,終戦ということで,人の死がテーマになったような部分でした。ビアトリスの死の部分は,どこかプッチーニのオペラに通じるような,はかなくも美しい場面。背景に月が出ていたので,先日のニューイヤーコンサートでハイライトを聴いた,沼尻竜典さんのオペラ「竹取物語」などを思い出してしまいました。

終戦後の場では,「東京ブギウギ」の一節が歌われるなど,「お客さんへのサービス」のような場になっていました。戦後の日本の扱いについて,マッカーサーが大拙に意見を尋ねるという設定は「架空」で,賛否はありそうですが,禅の精神を再確認し,世界に広めるといった点で重要な場になっていました。

最後の場は,ニルヴァーナ(鎮魂歌)ということで,主要登場人物が再登場し,禅を象徴する円形に座り,作品全体のテーマ曲と言っても良い「ワンダフル(円を描くような3拍子)」の合唱曲が再度歌われました(この曲,とても親しみやすい雰囲気だったので,単独でも歌われそうですね)。この場面は,オペラの最初に場面に対応する感じで,このオペラ全体も円を描いて最初に戻っていくようでした。

今回の舞台は四角い額縁のような枠の中で演技をするような感じで,床面にはチラシのビジュアルにも使われている毛筆で書かれた円が描かれていました。このシンプルでクリアな美しさを持った幾何学的な感じも,「禅」のイメージに通じると思いました。

指揮者は,ヘンリク・シェーファーさんから副指揮者だった鈴木恵里奈さんに変更になったのですが,鈴木さんは渡辺さんの音楽の持つ爽やかでロマンティックな気分をベースに,大拙の人生を彩るドラマティックな雰囲気をしっかり伝えてくれました。この渡辺さんの音楽だけを取り出した組曲版のようなものを作っても面白いのではと思いました。

宗教学者の人生を描いたオペラという冒険的な試みでしたが,予想以上に分かりやすく親しみやすい作品に仕上がっており,プロデューサーの狙いどおりの作品に仕上がっていたのが素晴らしいと思いました。

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