#oekjp と初共演の #鈴木秀美 さん指揮による定期公演は,ソリストなしてハイドンの交響曲2曲と2人のバッハの曲を聞かせる「知・情・意」揃った充実のプログラム。特に何が出てくるか分からないような,C.P.E.バッハのシンフォニア,とても楽しめました
本日は,コロナ禍の影響で来日の見通しが立たなくなったエンリコ・オノフリさんに代わって登場した鈴木秀美さん指揮OEKの定期公演を聴いてきました。オノフリさんによる公演を聞けなかったのは残念ですが,鈴木秀美さんとOEKの共演は今回が初めてということで,どういう演奏を聞かせてくれるのか,大変楽しみな公演となりました。
プログラムはソリストなし。ハイドンの交響曲2曲と「2人のバッハ」の管弦楽曲を聞かせる,鈴木さんらしさ,そしてOEKらしさをしっかりと味わえる内容となりました。鈴木さんは古楽奏法のスペシャリストということで,ヴァイオリンなどは,ほぼノン・ヴィブラートで演奏していましたが,その表現には奇をてらったところはなく,どの曲にも安定感・安心感がありました。
その上で,お客さんを楽しませようというアイデアや,ぐいぐいと前に進んでいくような積極性も感じられ,「知・情・意」のすべてが高レベルで整っているのが素晴らしいと思いました。
最初に演奏された,バッハの管弦楽組曲第3番は,トランペット3本が活躍する堂々とした祝祭感と,第2曲「エア」での透明感溢れるしっとりとした歩みとの対比が見事でした。ハイドンの交響曲第44番「悲しみ」は,繰り返しなどを全部行っていたこともあり,大交響曲を聴いたような聞きごたえがありました。短調作品ならではのくっきりとした切迫感に加え,ハイドンの葬儀に使われたという第3楽章での柔らかく高貴な表現も素晴らしいと思いました。
後半は,この日の「目玉」といっても良い,C.P.E.バッハのシンフォニア ロ短調 Wq. 182-5が演奏されました。演奏前に鈴木さんは,この曲について「音楽で言葉を交わしているような曲。予想して聞くとことごとく裏切られるような,とても変わった作品」と説明されていましたが,まさにその通りの作品。暗い表情を持ちながら,次々と生き生きとしたアイデアが溢れてくるような面白さがありました。C.P.E.バッハはこれまでOEKはほとんど演奏してこなかったと思いますが,これから注目したい作曲家となりました。
プログラム最後は,ハイドンの交響曲第94番「驚がく」。C.P.Eバッハに比べると,改めて「古典的だなぁ」と思わせる,生き生きと美しい第1楽章に続き,お楽しみの第2楽章。飯尾洋一さんのプログラム解説に書かれていたとおり,この時点で「ネタばれ」ともいえるのですが,本日の「驚がく」はとても新鮮でした。さりげなく始まった後,段々デクレッシェンドし,バンと一撃が入るのですが,心なしか前のめり気味に物凄く強い一撃。菅原淳さんのティンパニ(この日はバロックティンパニを使っていました)は強く引き締まっており,その素晴らしい音に「びっくり」しました。その後の変奏も大変鮮やかでした。
第3楽章,第4楽章と音楽の推進力が素晴らしかったのですが,上述のとおりすべてがしっかりとコントロールされており,「やりすぎ」という感じにはなっていませんでした。
鈴木さんとOEKが共演するのは,今回が初めてでしたが,既に長年つれそっているような親密感もあり,大人の音楽を聴いたなぁという充実感がありました。2021年,OEKは鈴木雅明さん,優人さん親子とそれぞれ共演しましたが,2022年は雅明さんの弟の秀美さんとの共演。今回初めて聞いた,C.P.E.バッハ特集など,OEKとのこれからの共演を期待したいと思いました。
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