OEKのCD

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2022/02/17

雪の中,井上道義指揮 #oekjp 定期公演へ。メンバーへのねぎらいの気分の溢れたハイドンの「告別」,こんなに面白い曲だったのかと魅力を再認識させてくれたショスタコーヴィチの15番。素晴らしい公演でした

本日の金沢は一日中,雪が降ったり止んだりという天候でしたが,幸い大雪という感じではなく,予定通り,井上道義指揮OEK定期公演フィルハーモニー・シリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。

コロナ禍後,井上さんが代役でOEKに登場する機会が増えているのですが,この公演は当初から井上さんが登場予定で,お得意のショスタコーヴィチとハイドンの交響曲を組み合わせた,井上さんこだわりのプログラムを楽しむことができました。

前半演奏された,ハイドンの交響曲第45番「告別」は,演奏されるならば,演奏会の最後ということの多い作品ですが,今回は前半に演奏されました。そこには井上さんの意図があり,「お別れ」というよりは,団員とお客さんへの「感謝」の気持ちが込められていました。

ハイドンの「シュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)」時代の作品ということで,第1楽章から暗くキリッと締まった表情が印象的でしたが(そういえば,前回の鈴木秀美さん指揮の定期公演では,44番「悲しみ」が演奏されたことを思い出しました。続き番号というのも珍しいことかもしれません),終楽章の後半の「告別」のパフォーマンスの部分では,気分が一転しました。

この曲の時は第1楽章の最初から,譜面台のところに本物の火のついたロウソクがセットされていましたが,4楽章途中,ステージ上の照明が消え,ロウソクの火だけに。この雰囲気が実に暖かで,音楽の気分とマッチしていました。各奏者が自分の出番が終わると,立ち上がって退出するというおなじみの趣向でしたが,井上さんはその各奏者を丁寧にねぎらっていました。この団員に感謝をするパフォーマンスが狙いだったように感じました。

最後はコンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんと第2ヴァイオリン首席奏者の江原千絵さんの2人だけで演奏。最後の音とロウソクが消えると井上さんだけに。拍手とともに,全メンバーが呼び戻され,ステージ最前列にずらっと並んで,お客さんの方に向かって挨拶。この全員が並ぶという光景がとても新鮮で,見ていて嬉しくなりました。この「お客さんへの感謝」というのも,もう一つの意図でした。

後半はショスタコーヴィチの交響曲第15番が演奏されました。恐らく,石川県で演奏されるのは今回が初めてではないかと思います。この日は演奏会の時間がやや短めでしたので,井上さんがこの曲について語る15分近くのプレトークがありました。まず,この内容が「最高」でした。曲の構成と聴きどころが生き生きと説明され,謎めいた引用だらけのこの曲への期待がさらに高まりました。

第1楽章最初,グロッケンの音がくっきりと鮮やかな音で聞こえてくると,一気にショスタコーヴィチの人生に入り込んでいく感じでした。その後,松木さんによるフルート,柳浦さんのファゴットと井上さんのプレトークどおり,生き生きとした会話が続くような音楽が続きました。編成自体は結構大きい曲ですが,全員で演奏するよりは,ソロが活躍する部分が多い曲で,OEKファンには特に楽しめたのではないかと思います。ちなみに,クラリネットには先日土岐公演でOEKとモーツアルトのクラリネット協奏曲を共演したばかりの吉田誠さんが参加。遠藤さんと一緒に,ものすごく存在感のある音を聴かせていました。

第2楽章は金管合奏で開始。第1楽章とは一転して,深い表情を持った葬送行進曲。ここでは,客演首席奏者の山本裕康さんのチェロの雄弁さも印象的でした。途中,トロンボーンの客演奏者の藤原功次郎さんによる気だるい雰囲気のあるソロ。さらに7人も奏者がいた打楽器を交えての壮大な盛り上がり。最後は井上さんが「天使のような」と語っていたチェレスタが出てくるなど,静かな空気感に包まれました。

いかにもショスタコーヴィチらしい悪魔的な感じの第3楽章スケルツォに続いて,ワーグナーの「神々の黄昏」のモチーフの引用で始まる第4楽章へ。金管合奏が活躍する点で,第2楽章の再現のような感じがありました。その後に続く,ヴァイオリン演奏するメロディは清冽な美しさ。この日は,ヤングさんに加え,水谷晃さん,松井直さんと「3人のコンサートマスター」が揃う豪華メンバーでしたが,その威力が発揮された美しさでした。

井上さんのプレトークで,ハイドンの「ロンドン」交響曲の冒頭のモチーフが出てくることも紹介されたのですが,「なるほど」という感じでした。「交響曲の父」へのオマージュの意味もあるのかなと思いました。

そして曲の最後の部分は打楽器チームの見せ場。時を刻むような精緻な音がクールに長く続きました。この曲を実演で聴くのは2回目なのですが,「こんなに面白い曲だったのか」とショスタコーヴィチの人生を締めくくる作品の魅力をしっかり伝えてくれました。

演奏後のお客さんの拍手も盛大でした。井上さんは,ソロを取った奏者を順に立たせていましたが,何か前半の「告別」の最終楽章での「ねぎらい」と重なるようでした。

というようなわけで,井上さんの得意のレパートリーで曲の魅力を鮮やかに伝えると同時に,OEKメンバーとの結びつきの強さを感じさせてくれた,素晴らしい公演でした。

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