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2022年3月

2022/03/25

OEKメンバーによる金澤弦楽四重奏団のデビュー公演&ベートーヴェンチクルス第1回目を金沢市アートホールで聴いてきました。今回は1,8,12番の3曲。これから一緒に全曲制覇したくなるような,緻密で真摯で聴きごたえたっぷりの演奏の連続。充実の時間を過ごしました。#oekjp

ようやく金沢にも春がやってきたかな,と思わせる3月末の金曜日の夜,金沢市アートホールで行われた,金澤弦楽四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲チクルスの第1回公演を聞いてきました。この金澤弦楽四重奏団という,素晴らしい名前のクワルテットは,青木恵音,若松みなみ(ヴァイオリン),古宮山由里(ヴィオラ),ソンジュン・キム(チェロ)という,金沢の音楽ファンにはおなじみの,OEKの弦楽器メンバー4人から構成されています。プログラムに書かれているプロフィールによると,2019年結成となっていますが,演奏会を行なうのは今回が初めてです。

「全16曲あるベートーヴェンの弦楽四重奏曲を演奏する目的で結成」と書かれているとおり,今回を皮切りに,全曲演奏に挑戦するようです。その記念すべき第1回公演で演奏されたのは,第1番,第8番「ラズモフスキー第2番」,第12番の3曲でした。私自身,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全曲を生で聴いたことはないのですが,今回の素晴らしい演奏を聴いて,「いっしょに全曲制覇したいな」という気持ちになりました。

まず,どの曲も,慌てることのないテンポでくっきりと演奏されていたのが演奏されていたのが素晴らしいと思いました。いつも室内オーケストラの中で一緒に演奏しているメンバーということで,その音のバランスもとても良いと思いました。弦楽四重奏というと第1ヴァイオリンが中心になることが多いのですが,青木さんの音は安定感抜群でしっかりとした音を聞かせながらも一人だけが目立つことはなく,4人が一体となったような練られたサウンドとパート間の緻密な音の受け渡しを楽しむことができました。金沢市アートホールで聴くと,しっかり内声部の音も楽しむことができるので,4人の「音の職人」がベートーヴェンの音楽に真摯に取り組んでいる様をしっかり感じ取ることができました。

今回演奏された3曲は,前期,中期,後期から1曲ずつ選ばれていましたが,それぞれ30分前後かかる「大曲」で,終演時間は9:15頃になりました。上述のとおりとてもじっくりと真正面から取り組んでいるような演奏ばかりでしたので,大変充実した時間を過ごすことができました。

第1番はいちばん古典的な作品でしたが,「ベートーヴェンは最初からすごい」と感じさせる緻密さがありました。第2楽章は「ロメオとジュリエット」の墓場の場面から構想を得たと解説に書かれていたとおり,ひんやりとした悲しみがじわじわ伝わってきました。音の動きが特徴的な第3楽章,軽く鮮やかな第4楽章と,非常に均整のとれた音楽を楽しむことができました。

第8番は「ラズモフスキー」と呼ばれる四重奏曲の第2番です。冒頭の鋭い和音2つを聴いて,まずビシッと気合を入れられました。第2楽章は平穏さの中に緻密な緊張感も漂う感じ。どこか思わせぶりの第3楽章の後,ガッチリとしたリズムの上で颯爽と第1ヴァイオリンが弾むような第4楽章。ベートーヴェンの「傑作の森」の曲らしいなぁと思いました。

第12番は,「変わった曲」揃いの後期の弦楽四重奏曲の中では,いちばんオーソドックスな曲かもしれません。第1楽章冒頭の和音には,広々とした空気感を感じさせる厚みがありました。静かで誠実な雰囲気のある第2楽章の後は生き生きとした第3楽章スケルツォ。第4楽章は,プログラムの解説に「田園」交響曲の終楽章を思わせる大合奏と書かれていたとおりの雰囲気(恐らく,メンバーの方が書かれたものだと思いますが,とても分かりやすい曲目解説でした)。曲の最後の方,一音一音をしっかりと演奏しながら,感情がじわじわと高まっていく感じが素晴らしいと思いました。「いい音楽をきいたなぁ」という終わり方でした。

というわけで,私もこのクワルテットの演奏を聞きながら,一緒にべートーヴェン制覇に挑戦したいとと思います。次回は12月25日クリスマスとのことです。

2022/03/17

川瀬賢太郎指揮 #oekjp 定期公演。深い感動を感じさせてくれた杉山洋一さんの新曲。20歳の亀井聖矢さんによる美しく完成されたショパン。そして清々しく思い切りの良いスコットランド。充実感溢れる公演でした

今晩は川瀬賢太郎さん指揮,亀井聖矢さんのピアノによる,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)定期公演フィルハーモニー・シリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。前回3月5日の鈴木雅明さん指揮による定期公演は,ベートーヴェンの第九のみという短めの公演でしたが,本日の公演はアンコールが2曲演奏されたこともあり,対照的に終演時間は9:15を過ぎるかなり長い公演。演奏された各曲も充実感溢れる演奏ばかりでした。

今回のプログラムは,基本的には,川瀬さんが前回登場した2021年9月の定期公演同様,メンデルスゾーンとショパンの曲を並べた「同世代&初期ロマン派」プログラムでしたが,本日はその前に,OEKの「2021~2022年コンポーザー・オブ・ザ・イヤー」である杉山洋一さん作曲による「揺籃歌(自画像Ⅱ):オーケストラのための」が演奏されました。もちろん世界初演です。まず,この曲が大変充実した作品でした。

コロナ禍をモチーフにしており,Covid-19の「懸念される変異株」が発見された国(中国,英国,南アフリカ,ブラジル,インド)の「寝かせ歌」を盛り込んだ曲となっていました。全体として,ずっと晴れないような不安気な不協和音に包まれたような雰囲気なのですが,その複雑な和音の持続と遷移が,妙に耳に染みました。常に苦みを感じさせるような重みのある雰囲気を持った曲を聞いた後には,何とも言えない感動が残りました。現代音楽らしく(?)とっつきにくい部分も多いのですが,その中から,各国の「寝かせ歌」のメロディの断片が見え隠れすると,かすかな希望のようなものを感じました。管楽器を中心にソロが活躍する部分も多く,聴きどころの多い作品となっていました。

この作品は,「自画像II」ということで,コロナ第1波の時に書いた「自画像」に続く作品とのことです。「自画像III」があるとすれば,コロナ禍後を描いた作品ということになって欲しいものです。

続いて,20歳のピアニスト,亀井聖矢さんとの共演でショパンのピアノ協奏曲第1番が演奏されました。ショパンがこの曲を書いたのも20歳頃(ちなみに石川県立音楽堂も現在20歳)なのですが,今回の亀井さんの演奏を聞いて,とてもリアルなショパンだと思いました。亀井さんのピアノは,タッチが非常に美しく,荒っぽい感じが全くしませんでした。情感の動きを鮮やかに伝えるような繊細な表現,速いパッセージでの音の粒立ちの良さ,そして瑞々しさを感じさせる切れ味の良い技巧。

ショパン本人が現代に蘇って,現代のコンサートホールで演奏したらこんな感じかも,と勝手に想像を膨らませながら聴いてしまいました。特に第1楽章の第2主題や第2楽章などでの,静けさの中に色々な思いが溢れてくるような表現。OEKのバックアップともども,しみじみと聞き入ってしまいました。第3楽章の生き生きとしたリズム感と安定感も素晴らしいと思いました。思わず,ショパン・コンクールのファイナルでの「慣例」のように,ピアノのパートが終わった瞬間に拍手を入れたくなる衝動にかられてしまいました。

演奏前後,お客さんに挨拶する感じは,結構堅い感じで,「やはり20歳のピアニストだな」とちょっとホッとしたのですが,全曲を通じて,若々しさと同時に,きっちりと完成された充実の音楽を聴かせてくれたのが本当に見事だったと思いました。亀井さんの活動にはこれからも注目していきたいと思います。

プログラム後半で演奏されたのは,メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」でした。川瀬さん指揮OEKの演奏を聴くといつも,竹を割ったような清々しさを感じます。そのキャラクターにぴったりの曲であり演奏でした。第1楽章冒頭でのしっとりとした情感に続いて出てくる,生き生きとした動き。第2楽章でのキビキビとしたリズムの上に息の長~いがメロディが続いたり,自然体だけれども思い切りの良い表現が次々と出てきました。この楽章を中心に,全曲を通じて遠藤さんのクラリネットが大活躍でした。

第3楽章ではアビゲイル・ヤングさんを中心とした第1ヴァイオリンの音が美しかったですね(確かヤングさんはスコットランド出身だったはず)。大きく歌い上げる感じも素晴らしいと思いました。第4楽章はキリっとした表情で開始。激しく音をぶつけてくるような厳しさとノスタルジックな気分が交錯する音楽が大変魅力的でした。

お楽しみのコーダの部分は,中音域を中心に大らかに始まった後,ホルン4本が締まった音でバシッと加わり,音楽にさらに精彩が加わります。最後は,「やっぱりスコットランドは良いなぁ」と旅情に通じるような余韻を感じさせるようにゆったりと終結。最後にアンコールとして,バッハのアリアが演奏されたのは意図がやや分かりにくかったのですが(ロシアのウクライナ侵攻の犠牲者追悼?),どの曲の演奏にも充実感があり,OEKらしさ満載のフルコースを堪能したような満足感を味わうことができた演奏会でした。

2022/03/05

鈴木雅明指揮 #oekjp による第9公演。個人的には...過去実演で聴いた第9の中でも最高でした。プロの合唱団の素晴らしさ,そして4人のソリストによるオペラのような声の饗宴。その中から平和を希求するメッセージが伝わってきました。 #森谷真理 #池田香織 #小堀勇介 #大西宇宙 #東京混声合唱団

本日は鈴木雅明さん指揮によるOEK定期公演を石川県立音楽堂で聴いてきました。本来は,OEK芸術監督のマルク・ミンコフスキさん指揮による,ベートーヴェン全交響曲チクルスの「締め」の公演となるはずでしたが,今年もまた,コロナ禍の影響で指揮者は鈴木さんに交代となりました。

演奏されたのはベートーヴェンの第九 1曲のみ。その演奏は...個人的に過去実演で聴いた第9中,最高の演奏でした(比較できるほど何回も第9を聴いてはいるわけではないのですが...)。ソプラノ:森谷真理,アルト:池田香織,テノール:小堀勇介,バリトン:大西宇宙という素晴らしい4人のソリストに加え,合唱は東京混声合唱団。プロの合唱団による第9を聴くこと自体がまず大変貴重なことですが,すべてが高次元・異次元の第9を聴かせていただいた気がしました。

この日のOEKの編成は,かなり大きく,弦楽器は第1ヴァイオリン10,第2ヴァイオリン8,ヴィオラ6,チェロ6,コントラバス4という特別編成。そのこともあり,どの部分を取っても音に力がありました。鈴木雅明さんのテンポは,第1楽章冒頭から,全く弛緩することのない,ぐいぐい迫ってくるようなやや速目の設定。各パートがくっきりと聞こえ,そこには,意志の強さを感じさせる熱気が常に漂っていました。この日も,アビゲイル・ヤングさん,水谷晃さん,松井直さんの3人のコンサートマスターが揃っていましたが,いつもにも増して,表現の幅が広く,力強い弦の響きを聞かせてくれました。

第2楽章も,キビキビとしたテンションは継続。この日はバロック・ティンパニを使っていましたが,全楽章を通じて力感のある見事な音で,OEKの音を引き締めていました。トリオの部分での流れるようなスピード感も印象的でした。そして,後半,通常カットされることの多い,繰り返しも行っており,「おおっ」と思ったのですが,全く弛緩することはありませんでした。

第3楽章では,弦楽器の歌いっぷりが印象的でした。テンポはやや速目ぐらいだったと思いますが,しっかりとした歌を堪能した感じでした。途中,ホルンが音階のようなフレーズを演奏する部分が印象的です。この音も爽快。その後,テンポが少し上がって,さわやかな感じになる部分が好きなのですが,その期待どおりの演奏でした。楽章最後に警告するように加わるトランペットのピリッとした感じも良かったですね。

そして,第4楽章。やはり,この日の最大の聴きものでした。まず,合唱団の皆さんですが,この楽章に入る時に「特製マスク?」を着用。この時点では4人のソリストは入っていませんでした。これまでの楽章同様,オーケストラは気合十分の音で(ただし荒れ狂う感じではなく),始まった後,「歓喜の歌」が低音パートにさらっとした感じで登場。それが段々盛り上がったところで,いよいよバリトンなのですが...どこ?

ここで上手のドアがパッと開いて,大西宇宙さんが登場。「O Freunde...」と歌っては歩き,歌っては歩きという感じでステージ中央へ。大西さんにパッとスポットライトが当たったような鮮やかな出方でした。そして,声がまた素晴らしく,「この場の主役!」というオペラの一場面を観るような雰囲気になりました。そして,その他の3人の歌手も入場。

この日出演した4人の歌手は,今日本で最も活発に活動されている歌手ばかりということで,4人で歌う部分には,まさに声の饗宴のような華やかさがありました。ステージにいちばん近い場所で,歌っていたこともあり,「お客さんにしっかりメッセージを伝えよう」という気分がビシビシと伝わってきました。続いて,テノールのソロへ。小堀さんは,大変軽やか,そして,よく通る声で,会場は清々しい気分に。トルコ行進曲風の部分もとても爽快でした。

「歓喜の合唱」が力強く出てくる部分は,怒涛のような(?)素晴らしさ。何だか分からないけれども,凄いものが伝わってくるぞ,という「さすがプロ」という合唱でした。その後,満を持してトロンボーンが登場し,再度気分が変わりますが,この部分での合唱も見事でした。アマチュアの合唱団だと,どうしても「高音部が大変そう」という感じになりますが,美しさと輝きのある余裕の合唱でした。フーガの部分になると,宗教音楽を思わせる雰囲気に。そういえば,この宗教音楽は鈴木さんの専門の世界だったなぁと改めて思い出しました。

この部分が終わると,再度,4人のソリストによるオペラのアンサンブルのような気分に。第9の4楽章は,この日のプログラムで飯尾洋一さんが書かれていたとおり,多様式な音楽なのですが,本日の演奏は,そのことを生き生きと感じさせてくれました。

全曲の最後は,十分盛り上げつつも,しっかりと噛みしめるような落ち着きも感じられました。鈴木さんは,今回の公演について,「平和を希求する第9に」といったコメントを述べられていますが,ただのお祭り騒ぎではない,力強いメッセージが伝わってくるような終結部でした。

今回の第9については,昨年末の第5波が収まっていた時点では,「コロナ禍収束記念の第9にならないかな」と個人的には期待していたのですが,そういうわけには行きませんでした。そして,ロシアのウクライナ侵攻という,新たな世界的な危機を迎える中で演奏されることになりました。OEKがこの曲を本拠地で演奏する機会は他のプロオーケストラに比べると非常に少ないのですが,それだからこそ,色々なことを感じさせてくれる公演になったと思いました。

PS. ミンコフスキさん指揮OEKによる第9...これは本当にコロナ明けにリベンジで聴いてみたいものです。

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