OEKメンバーによる金澤弦楽四重奏団のデビュー公演&ベートーヴェンチクルス第1回目を金沢市アートホールで聴いてきました。今回は1,8,12番の3曲。これから一緒に全曲制覇したくなるような,緻密で真摯で聴きごたえたっぷりの演奏の連続。充実の時間を過ごしました。#oekjp
ようやく金沢にも春がやってきたかな,と思わせる3月末の金曜日の夜,金沢市アートホールで行われた,金澤弦楽四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲チクルスの第1回公演を聞いてきました。この金澤弦楽四重奏団という,素晴らしい名前のクワルテットは,青木恵音,若松みなみ(ヴァイオリン),古宮山由里(ヴィオラ),ソンジュン・キム(チェロ)という,金沢の音楽ファンにはおなじみの,OEKの弦楽器メンバー4人から構成されています。プログラムに書かれているプロフィールによると,2019年結成となっていますが,演奏会を行なうのは今回が初めてです。
「全16曲あるベートーヴェンの弦楽四重奏曲を演奏する目的で結成」と書かれているとおり,今回を皮切りに,全曲演奏に挑戦するようです。その記念すべき第1回公演で演奏されたのは,第1番,第8番「ラズモフスキー第2番」,第12番の3曲でした。私自身,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全曲を生で聴いたことはないのですが,今回の素晴らしい演奏を聴いて,「いっしょに全曲制覇したいな」という気持ちになりました。
まず,どの曲も,慌てることのないテンポでくっきりと演奏されていたのが演奏されていたのが素晴らしいと思いました。いつも室内オーケストラの中で一緒に演奏しているメンバーということで,その音のバランスもとても良いと思いました。弦楽四重奏というと第1ヴァイオリンが中心になることが多いのですが,青木さんの音は安定感抜群でしっかりとした音を聞かせながらも一人だけが目立つことはなく,4人が一体となったような練られたサウンドとパート間の緻密な音の受け渡しを楽しむことができました。金沢市アートホールで聴くと,しっかり内声部の音も楽しむことができるので,4人の「音の職人」がベートーヴェンの音楽に真摯に取り組んでいる様をしっかり感じ取ることができました。
今回演奏された3曲は,前期,中期,後期から1曲ずつ選ばれていましたが,それぞれ30分前後かかる「大曲」で,終演時間は9:15頃になりました。上述のとおりとてもじっくりと真正面から取り組んでいるような演奏ばかりでしたので,大変充実した時間を過ごすことができました。
第1番はいちばん古典的な作品でしたが,「ベートーヴェンは最初からすごい」と感じさせる緻密さがありました。第2楽章は「ロメオとジュリエット」の墓場の場面から構想を得たと解説に書かれていたとおり,ひんやりとした悲しみがじわじわ伝わってきました。音の動きが特徴的な第3楽章,軽く鮮やかな第4楽章と,非常に均整のとれた音楽を楽しむことができました。
第8番は「ラズモフスキー」と呼ばれる四重奏曲の第2番です。冒頭の鋭い和音2つを聴いて,まずビシッと気合を入れられました。第2楽章は平穏さの中に緻密な緊張感も漂う感じ。どこか思わせぶりの第3楽章の後,ガッチリとしたリズムの上で颯爽と第1ヴァイオリンが弾むような第4楽章。ベートーヴェンの「傑作の森」の曲らしいなぁと思いました。
第12番は,「変わった曲」揃いの後期の弦楽四重奏曲の中では,いちばんオーソドックスな曲かもしれません。第1楽章冒頭の和音には,広々とした空気感を感じさせる厚みがありました。静かで誠実な雰囲気のある第2楽章の後は生き生きとした第3楽章スケルツォ。第4楽章は,プログラムの解説に「田園」交響曲の終楽章を思わせる大合奏と書かれていたとおりの雰囲気(恐らく,メンバーの方が書かれたものだと思いますが,とても分かりやすい曲目解説でした)。曲の最後の方,一音一音をしっかりと演奏しながら,感情がじわじわと高まっていく感じが素晴らしいと思いました。「いい音楽をきいたなぁ」という終わり方でした。
というわけで,私もこのクワルテットの演奏を聞きながら,一緒にべートーヴェン制覇に挑戦したいとと思います。次回は12月25日クリスマスとのことです。
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