本日は夏休みをとって「ランチタイムコンサート:#oekjp の名手たちによる木管アンサンブルの調べ」を石川県立音楽堂で聴いてきました。心地よい華やかさのある響きに包まれた充実の1時間でした。
本日の金沢は台風の接近に伴うフェーン現象気味で午前中から猛暑。その中,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の3人の木管楽器奏者(フルート:松木さや,オーボエ:加納律子,クラリネット:遠藤文江)と倉戸テルさんのピアノによるランチタイム・コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。
実は,今回,「夏休み」をわざわざ取って聴いてきました。その理由は,今年の春の「楽都音楽祭」でこの3人による室内楽公演を聞き逃した「無念さ」があったからです。そのリベンジの思いで聴いてきました。
ただし公演内容は全く違うものでした。,楽都音楽祭の時は,各楽器のソロだったのに対し,今回はすべて,3つの木管楽器が入る室内楽曲でした。演奏されたのは,フマガッリの演奏会用大三重奏曲, ボールの4つの舞曲,そして,サン=サーンスのデンマークとロシアの歌による奇想曲...知らない曲ばかり,しかも,フマガッリとボールについては,作曲者名自体聴くのは初めてでした。
言ってみれば,演奏者の方がやってみたい曲を集めた,”攻めた”プログラムだったのですが,聴いているとどれも親しみやすい曲ばかりで,大変充実した時間を過ごすこともできました。暑さにもかかわらず,お客さんは良い感じで入っており,私同様,「この3人の演奏なら悪いはずはない」という期待感と満足感が合わさった雰囲気の演奏会となりました。
まず,フマガッリの作品の冒頭の3楽器のハモリを聴いただけで華やかな気分になりました。素晴らしいバランス,素晴らしい音響(本日は1階席の真ん中で聴きました)。イタリア・オペラの幕が開いたようなワクワク感がありました。その後,各楽器のソロが出てきたり,絡み合って盛り上がっていったり...大変良くできた作品でした。3人の奏者の余裕のある技巧と美音に彩られた,とても気持ちの良い作品でした。
2曲目のボールの作品では,ピアノは入らず,純粋に木管三重奏となりました。ボールという人は20世紀の英国の指揮者・作曲家ということでしたが,フマガッリ以上に親しみやすさのある作品でした。曲は,第1曲「陽気なダンス」,第2曲「叙情的なダンス」,第3曲「輪舞」,第4曲「スクェア・ダンス」の4曲から成っていました。
2曲目がゆったりとした音楽(加納さんのオーボエがエキゾティック),3曲目がはねるようなスケルツォ的な音楽,でしたので,全体的な構成としては4楽章の交響曲に近い面もあったかもしれません。4曲目は遠藤さんのクラリネットがなんともユーモラスで,ラグタイムなどに通じるような素朴な楽しさがありました。曲の終わり方も常套的な「チャン,チャン」という感じだったのも楽しかったですね。
3曲目の作品は,演奏前の加納さんのトークによると,デンマークとロシアの王室の友好を意図して作られた作品とのことでした。その気分で聴いたせいか,冒頭から「ロイヤル!」な気分がっただよい,倉戸さんのピアノのフレーズなど,ベートーヴェンの「皇帝」を思わせる優雅な華やかさがありました。デンマーク民謡とロシア民謡をそれぞれ展開させた作品ということで,松木さんによる主題の提示部分(どっちがどっちかは分からなかったのですが)から魅力的でした。
最後の方で,ユニゾンで演奏する部分が出てきたのが印象的でしたが,戦争がまだ継続している昨今,「ウクライナとロシアの歌による○○」といった曲があれば聴いてみたいものだと思いました。
演奏後のアンコールはなかったのも良かったと思います。トークを合わせて,1時間弱の公演でしたが,3人の奏者の作り出す,軽やかな華やかさに包まれた,心地の良い公演でした。外に出ると...急にムッとした空気に包まれ,現実に戻されてしまいましたが。
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