いしかわミュージックアカデミーフェスティバル・コンサート。OEKにIMA出身者が加わった特別編成オーケストラによるロシア音楽。古海行子さんのピアノも大変美しく誠実な演奏 #oekjp
本日の午後は,現在石川県立音楽堂などを中心に行われている,いしかわミュージックアカデミー(IMA)関連で行われた,IMAフェスティバル・コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。
このコンサートの目玉はIMA出身の弦楽奏者がOEKと一緒にロシア音楽を演奏するという点です。OEKの弦楽セクションに次の皆さんが参加する形で,ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とチャイコフスキーの交響曲第5番が演奏されました。
(ヴァイオリン)伊藤亮太郎,入江真歩、城戸かれん、坂口昌優、関 朋岳、坪井夏美、毛利文香、吉江美桜
(チェロ)上村文乃、増山頌子、松本亜優
この中で,現在,NHK交響楽団のコンサートマスターの伊藤亮太郎さんが今回のコンサートマスターも務めました。
その他,OEKメンバーの青木恵音さん,ソンジュン・キムさんもIMA出身者です。
「特別編成」と書かれていましたが,「大編成」というわけではなく,通常のOEKの弦楽セクションに2名ずつ追加されたような形になっていました。その効果は特にチャイコフスキーの交響曲第5番に随所に出てくる,甘いメロディの部分で効果的で,いつも以上に濃厚なカンタービレを楽しむことができた気がします。
ただし...演奏全体としては,指揮者の黄維明さんのテンポ設定が遅めで,音楽の流れがどこか停滞しているように感じました。第4楽章はめくるめくように曲想が変わり,次々と違う景色が見えてくる...ような演奏を期待していたのですが,ずっと同じ景色が続く...といった印象を持ちました。
もちろん弦楽セクションはしっかりと鳴り,管楽器も輝かしい音を出し,ティンパニが要所でくさびを打ち込んでいたのですが,どうも音楽が熱く盛り上がらない気がしました。音楽の枠組みは大きく,美しく,強い部分も沢山あるのだけれども,どこか物足りない,そういった印象を持ってしまいました。
前半のラフマニノフも堂々たる音楽でした。この曲では独奏の古海行子さんのピアノが素晴らしかったと思いました。古海さんもIMAの出身者で,第4回高松国際ピアノコンクールで優勝し,注目を集めている若手ピアニストです。OEKとは,池辺晋一郎さんによる「ベスト100」企画のソリストとして既に共演済で,その時から注目をしていました。実は,今回は古海さんによる協奏曲演奏の全曲を聞けるのを楽しみに聞きに来た面もあります。
古海さんのピアノは第1楽章冒頭の「鐘」の音のような和音の部分から響きが美しかったですね。フェスティバルオーケストラの低弦の音にも透明感があり,非常に良くマッチしていました。古海さんの演奏は,大変誠実で,特に抒情的なメロディの甘くなりすぎないじっくりとした歌わせ方が良いと思いました。スケールの大きなピアノ,という感じはしませんでしたが,第3楽章などでも,地にしっかりと足のついた,ハッタリのない真面目な音楽を聞かせてくれました。ラフマニノフ以外の作品も今後聞いてみたいと思いました。オーケストラの音では,特にチェロ・パートの熱く盛り上がるような歌がこの曲に合っているなぁと思いました。
昨年まで行っていたIMAの講師とOEKメンバーによる室内楽企画が,今年は行われなかったのは残念でしたが,IMAの同窓生とOEKとの合同演奏企画というのは,良いアイデアだと思います。”フェスティバルオーケストラ”という名前にしては,会場の雰囲気は地味目でしたが,これからも継続していって欲しい企画だと思いました。
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