いしかわミュージックアカデミー

2018/08/21

#IMA × OEKチェンバーコンサート。前半は,#ロラン・ドガレイユ,#レジス・パスキエ,#毛利伯郎 といったIMA講師陣による,知られざる名曲の名演。後半は #ピオトル・パレチニ 先生とOEKメンバーによる室内楽版,ショパンの協奏曲1番

8月恒例の,いしかわミュージックアカデミー(IMA)が今年も石川県立音楽堂を中心に行われています。このIMAの講師とオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)メンバーとが共演する室内楽公演が行われたので聞いてきました。

毎年この公演では,ピアノの入るやや大きめの室内楽曲がメインで演奏されるのですが,今年は,ショパンのピアノ協奏曲第1番の室内楽版が演奏されました。滅多に演奏される機会がない曲であることに加え,ソリストはIMAの講師で,ショパン国際ピアノコンクールの審査委員でありショパン音楽大学教授である,ピオトル・パレチニさんということで,まずは,この曲を目当てに聞きに行きました。

前半に演奏される曲は...実はよく分かっていなかったのですが,この2曲が本当に素晴らしい曲・演奏でした。

最初に演奏された,トゥリーナのピアノ三重奏曲第2番は,ロラン・ドガレイユさんのヴァイオリン,毛利伯郎さんのチェロ,草冬香さんのピアノによる演奏でした。まず,トゥリーナという作曲者自体,よく知らない人だったのですが(ギター曲を作っていたはず...ぐらいの知識),とても良い作品でした。スペインの作曲家ということもあるのか,短調の作品であるにも関わらず,どこか陽光が差してくるような明るさがありました。メロディも大変親しみやすく,ドガレイユさんを中心に3人の奏者も大変楽しそうに演奏されていました。各楽器の「対話」と「ハモリ」が素晴らしく,熟練の室内楽の楽しさを満喫させてくれるような演奏でした。

次に演奏された,エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番も初めて聞く曲でした。ルーマニアの民俗様式でというサブタイトルがあったので,ルーマニア狂詩曲のような,楽しげな曲かなと予想していたのですが,曲が進むにつれて,どんどん狂気が増してくるような,すごい作品でした。これは,大ベテラン・ヴァイオリニスト,レジス・パスキエさんのすごさにもよると思います。曲全体として,ミステリアスな雰囲気が漂い,楽章の中で緩急の変化が大きい点で,ヤナーチェクやバルトークの曲と似た感じもあったのですが,それともひと味違う,迫力と魅力のある作品でした。

パスキエさんの演奏は,時々音がかすれたり,揺れたりしていましたが,それがまたこの曲の雰囲気にぴったりで,第3楽章の最後などでは,三又瑛子さんのピアノと一体となって(この曲のピアノ・パートも大変難しいのではないかと思いました),スリリングな盛り上がりを作っていました。

というわけで,まず,IMA講師による前半の2曲だけで大満足でした。

後半に演奏されたショパンのピアノ協奏曲第1番(室内楽版)の方は,やはり,管弦楽版に親しみ過ぎているせいか,個人的には結構違和感を感じてしまいました。ここはファゴットが伴奏しているはず,ホルンが出てこない,トランペットが聞こえない...という感じで,ついつい頭の中で音を補いながら聞いてしまいました。

パレチニさんは,見るからに「立派な先生」という雰囲気の方で,その演奏にも堂々たる貫禄がありました。室内楽版ということで,ピアノを激しく叩くような感じはなく,弦楽五重奏(弦楽四重奏+コントラバス)とバランスの取れた演奏を聞かせてくれました。速いパッセージでのショパンならではのキラキラした音の美しさ,第2楽章でのノクターン風の気分など,イメージどおりのショパンを聞かせてくれました。

「協奏曲」ということでOEKメンバーは,がっちりとした演奏を聞かせてくれたのですが,交流ホールの場合,かなり音がデッド(というかダイレクトに聞こえすぎる)なので,弦楽五重奏の音がかなり硬く聞こえました。その分,ピアノに弦楽器の音が薄く重なるような部分(2楽章など)では,ちょうど良い感じに聞こえました。

というわけで,この室内楽版については,コンサートホールで聞いたらまた印象が変わるのではないかと思いました。実は,9月16日に金沢出身のピアニスト,木米真理恵さんが,石川県立音楽堂コンサートホールで,この曲を弦楽四重奏との共演で演奏する公演が行われます。たまたま,同じ曲の競演ということになってしまったのだと思いますが,個人的には,是非,聞き比べをしてみたいなと思っています。

というわけで,今年のIMA関連の室内楽公演も,充実した選曲&演奏を楽しむことができました。

2017/08/22

IMA&OEKチェンバーコンサート 4曲のフランス系の室内楽作品をたっぷり楽しみました。特にレジス・パスキエさんの気迫がこもったフランクのピアノ五重奏曲が感動的

いしかわミュージックアカデミー(IMA)期間中に行われる,アカデミーの講師たちとOEKメンバーによる室内楽公演もすっかり定着しました。毎年,熱のこもった,講師の面目躍如たる演奏を楽しむことができるのですが,今年のプログラムは特に素晴らしい演奏の連続だったと思います。

今年はフランス音楽中心のプログラムで(後半に演奏されたフランクはベルギー生まれですが,フランスで活躍した人なのでフランスの作曲家といっても間違いはない気はします),演奏会全体としての統一感があったのに加え,IMAの講師であるヴァイオリン奏者たちが4曲に分散しており,それぞれの個性を楽しむことができました。

1曲目のラヴェルの弦楽四重奏曲は,原田幸一郎さん中心の演奏でした。原田さんといえば,東京クワルテットの初代第1ヴァイオリンとして知られていますが,弦楽四重奏のメンバーとして聞く機会は,近年は意外に少ない気がします。冒頭から柔らかな響きが素晴らしかったのですが,特に弱音器を付けたヴァイオリンの音の何とも表現できないような,くすんだ音が素晴らしいと思いました。キビキビとした若々しい表現との対比も鮮やかでした。

2曲目は,ロラン・ドガレイユさんと鈴木慎崇さんによる,ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタでした。この曲では,ドガレイユさんの音の引き出しの多さに感激しました。最初の音から,フランスの香りと言ってもよさそうな。高級感がありました。その一方,強い音を出す時には,ほとんど飛び跳ねるように演奏し,ダイナミックで切れ味の良さを感じさせてくれました。それでいて声高に叫ぶような感じにはならず,常に微笑みをたたえているような暖かみがありました。お見事!という感じの演奏でした。

前半最後は,ラヴェルの「序奏とアレグロ」が演奏されました。弦楽四重奏にハープ,フルート,クラリネットが加わった7人編成の曲で,この日演奏された曲の中ではいちばん大きな編成でしたが,印象としては,いちばん静かな感じでした。

この曲では,各楽器の音の溶け合い方が本当に素晴らしいと思いました。フルートの岡本さんとクラリネットの遠藤さんがハモるような部分が多かったのですが,違う楽器だとは思えないほど,しっかりと溶け合っていました。第1ヴァイオリンはホァン・モンラさんでしたが,神谷美千子さんの第2ヴァイオリンやOEKの石黒さん,大澤さんと一体となった繊細で心地よい響きを作ってくれました。

そして,この曲では何といってもハープの平尾祐紀子さんの上品なきらびやかさが印象的でした。初めて聞く曲でしたが,ミステリアスで詩的な雰囲気があり,どこかドビュッシーや武満徹の曲を思わせるムードがあるのが面白いと思いました。

後半演奏された,レジス・パスキエさんを中心としたフランクのピアノ五重奏曲は,特に熱気のある演奏でした。パスキエさんはかなり高齢なはずですが,ビシッと締まった硬質の音が素晴らしく,冒頭の和音から一気に聴衆をフランクの世界に引き込んでくれました。「魂のヴァイオリン」といった趣きがあり...感動しました。

この日は,非常に前の方の席で聞くことができたのですが,パスキエさんの使っている譜面の紙は古く,ボロボロ。この曲を若い頃から弾き込んでいるのだな,ということが伝わってきました。他の奏者たちも,このパスキエさんの気迫にしっかりと応えていました。

ユニゾンで演奏する部分での音の迫力,所々入れていた大きな間での緊迫感。最初から最後まで,緊張感が途切れず,曲の終盤に行くほど,大きく盛り上がっていくのが素晴らしいと思いました。

その一方,全体を支えるハエスン・パイクさんのピアノの音には,どこか艶っぽい美しさがあり,曲全体のイメージに膨らみを持たせているようでした。

というわけで,違った編成の4曲のそれぞれの魅力を最大限に楽しませてくれた演奏会でした。そして,間近で聞く室内楽の面白さ(CDで聞くのとは全く違った印象)をしっかりと味わうことができました。IMA受講生によるライジングスターコンサートも凄かったのですが,講師による室内楽公演はそれとは別の方向で,素晴らしいと思いました。

2017/08/20

IMAライジングスターコンサート2017 今回も水準の高い演奏の連続。ヴァイオリンの弦が切れるハプニングもありましたが,奏者ごとの多彩な表現力とエネルギーを間近で味わってきました。

今年で20周年となる,いしかわミュージックアカデミー(IMA)のライジングスターコンサートを聞いてきました。このコンサートは,前年度のIMA音楽賞受賞者を中心とした若手奏者が続々と登場するコンサートです。IMA音楽賞受賞者からは,毎年必ず,国際的な音楽コンクールでの上位入賞者を輩出しています。恐らく,今日聞いた人の中からも,世界的に活躍する奏者が出てくることでしょう。

今回は次の皆さんが出演しました。
  • ヴァイオリン:外村理紗, ドンミン・イム, シューハン・リー, ナキョン・カン
  • チェロ:金子遥亮
  • ピアノ:ユリ・ノ
  • IMA受講生によるスペシャルトリオ(吉江美桜(ヴァイオリン),牟田口遥香(チェロ),渡邉朋恵(ピアノ))
今回も水準の高い演奏の連続でした。どの奏者も,技巧的に不安定なところはなく,表現力,技の切れ味,音の迫力...といった一段階上のレベルで聴き比べをするような聴きごたえ十分の演奏会でした。

今回の奏者の中では,韓国のドンミン・イム(ヴァイオリン)さん,台湾のシューハン・リー(ヴァイオリン)さんについては,演奏した曲自体,技巧が前面に出る曲だったこともあり,その音の迫力と技巧の切れ味の良さ間近で体感できました。2人とも平然と弾いているところが心憎いところです。特にドンミン・イムさんの方は,途中で弦が切れるハプニングがあり,再度,途中から弾き直すハプニングがありましたが,これもまた,演奏の強靭さを裏付けているように感じました。非常に激しくビブラートを掛けていましたので,切れても不思議でないかなと思わせるほどでした。

ただし,強靭だから良いというわけでもなく,金子遥亮さんの自然な表情の動きを持ったチェロの演奏を聞いて,実に人間的だなぁと感じました。最初に演奏した,外村理沙さんのヴァイオリン独奏によるバッハの無伴奏ソナタ第1番にも,内面から溢れてくる,しみじみとした味わいと暖かみが感じられました。各奏者が,演奏した曲に応じて,適切な表現で演奏しているのが素晴らしいと思いました。

後半に登場したナキョン・カンさんは,15歳に満たない方でしたが,全ての点でバランス良く,高い水準でまとまっているのが凄いと思いました。この方だけは,過去のIMA音楽賞受賞者ではないのですが,今後,「天才少女」として注目を集めるようになるのかもしれません。

ピアニストとしては,韓国のユリ・ノさんだけが登場しましたが,この方のラヴェル「ラ・ヴァルス」もお見事でした。前半のミステリアスな雰囲気から,華麗なワルツに変化し,ダイナミックに盛り上がっている曲想を非常にクリアに再現していました。

演奏会の最後は,吉江美桜さん(ヴァイオリン),牟田口遥香さん(チェロ),渡邉朋恵さん(ピアノ)による,ブラームスのピアノ三重奏曲第1番の第1楽章でした。ソロ演奏が続いた後,最後に室内楽で締めるというのは落ち着きますね。ヴァイオリンとチェロの2トップの音のハモリが大変心地よく,ピアノがそれをしっかりと支えていました。若々しさと同時に落ち着きを感じさせてくれる,トリに相応しい演奏だったと思います。

IMAのコンサートについては,22日に講師の先生方とOEKメンバーによる室内楽コンサートが行われます。それとの比較も大変楽しみです。

2017/08/19

明日8/20に行われるIMAライジングスターコンサート2017の内容が分かったのでお知らせします。 #いしかわミュージックアカデミー

毎年,若手奏者たちによる水準の高い演奏の競演となっている,「IMAライジングスターコンサート」ですが,本日のコンサートで配布されたパンフレットに内容が書いてありましたのでお知らせしましょう。

# 印刷されているのならば,Webサイトの方にも掲載できるはずだと思うのですが...以下のページには相変わらず情報がないですね。

http://ishikawa-ma.jp/concert.html

日時:2017年8月20日(日)18:00~
場所:石川県立音楽堂交流ホール

外村理紗(ヴァイオリン)
バッハ, J.S./無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調,BWV.1001

ドンミン・イム(ヴァイオリン)
ヴィェニャフスキ/創作主題による変奏曲, op.15

シューハン・リー(ヴァイオリン)
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調,op.35~第3楽章

金子遥亮(チェロ)
ベートーヴェン/魔笛の主題による7つの変奏曲変ホ長調, WoO.46

ナキョン・カン(ヴァイオリン)
フバイ/カルメンによる華麗な幻想曲,op.3-3

ユリ・ノ(ピアノ)
ラヴェル/ラ・ヴァルス

IMA受講生によるスペシャルトリオ(吉江美桜(Vn),牟田口遥香(Vc),渡邉朋恵(Pf))
ブラームス/ピアノ三重奏曲第1番ロ長調, op.8~第1楽章

#IMA いしかわミュージックアカデミー20回目を記念したスペシャルコンサートを聞いてきました。#新倉瞳 #辻彩奈 #神尾真由子 3人の卒業生による個性的で堂々たる演奏を楽しんできました。

夏休み期間中,金沢市で行われている若手演奏会のための講習会「いしかわミュージックアカデミー(IMA)」も今年で20回目となります。それを記念して「スペシャルコンサート」が行われたので,聞いてきました。

IMAは,ヴァイオリン奏者を中心に,世界的な音楽コンクールでの上位入賞者を続々と輩出していますが,今回はその”代表”として,チェロの新倉瞳さん,ヴァイオリンの神尾真由子さん,辻彩奈さんという3人の「卒業生」が登場し,IMA全体の監督でもある,原田幸一郎さん指揮OEKと協奏曲を共演しました。

この日は最初,IMAの実行委員会会長でもある谷本石川県知事のあいさつがあった後,原田さんと神尾さんのインタビューがありました。

その後,新倉瞳さんが登場し,ハイドンのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。新倉さんは,IMAを8回受講されたとのことで,「8月=金沢」という青春時代(?)を過ごされたことになります。この日は,3人の若い女性ソリスト3人が登場するとあって,ドレスの競演のようなところもありました。新倉さんは,水色の涼し気なドレスで登場しました。

ハイドンのこの曲は一見地味なのですが,第3楽章をはじめ,非常に技巧的な曲です。新倉さんは,原田さん指揮OEKの安定感のある演奏と一体となって,技巧を誇示することなく,ナチュラルでしなやかな演奏を聞かせてくれました。第2楽章での艶のある美音も魅力的でした。第3楽章は快適なビート感のある演奏で,速いパッセージがとても心地よく感じられました。

続いて,今年度の受講生でもある辻彩奈さんが登場しました。辻さんも,IMAに参加するのは,今年で8回目ということです。ちなみにドレスの色は,紫でした。ただし,時々,色合いが青?に変化する不思議な色でした。辻さんの演奏の方も,このドレス同様に,大変ニュアンス豊かでした。

辻さんの音には,真摯さと同時に密度の高さがあります。そして,ヴァイオリンの歌わせ方に,常にテンションの高さが秘められているのが素晴らしいと思います。今回のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番でも,昨年までライジングスターコンサートで聞いて来た難技巧の独奏曲と同様の充実感のある演奏を聞かせてくれました。

モーツァルトのシンプルな曲の中に,絶妙のニュアンスの変化が付けられており,プロの奏者によるモーツァルトだなぁと実感しました。第2楽章での陶酔感のある美音も印象的でした。第3楽章は,中間部で「トルコ風」に変化しますが,この部分を中心として,ドラマを感じさせるような雄弁な演奏を楽しませてくれました。

前半の2曲は,OEKの方は,実は全く同じ編成(弦五部+オーボエ2+ホルン2)でした。演奏後の新倉さんと辻さんへのインタビューの時に,「原田先生と一緒に演奏できることがうれしい」とお2人は語っていましたが,両曲とも,その雰囲気通りのどっしりとした暖かみと包容力のある演奏を聞かせてくれました。ちなみにこの日のコンサートミストレスは,松浦奈々さんでしたが,松浦さんもIMA出身者です。

後半は神尾真由子さんが登場し,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。神尾さんは,OEKとは何回か共演していますが,メンデルスゾーンをOEKと演奏するのを聞くのは今回が初めてです。

神尾さんは,IMAの講師としても参加しているのですが,今回の演奏も,既に若手奏者による演奏という雰囲気ではなく,女王様的な貫禄のある聞きごたえたっぷりの演奏となっていました。裾の長い,鮮やかな青のドレスで登場した神尾さんの雰囲気は,大物女優的なオーラを漂わせているようでした。

第1楽章の冒頭部から,通常聞くこの曲とはかなり違った雰囲気の歌わせかたをしていました。ヴィブラートをしっかり聞かせ,かなり弱い音から入っていたので,どこかギクシャクした感じに聞こえたのですが,次第に音量がアップし,神尾さん独特の凛とした鋭い響きが出てきたり,スケール感たっぷりの雰囲気になってきました。

メンデルスゾーンのこの曲については,個人的には叙情的にサラリと演奏する方が良いような気もするので,強弱を変化を強調し,クライマックスで大見得を切るような演奏は,「やり過ぎ」のような気もしましがた,聴衆の耳をぐっと引き付けるアピール力は素晴らしいと思いました。

反対に第2楽章は抑制した美しさ,第3楽章は軽やかな躍動感を感じさせてくれました。ただし,どの楽章のどの部分について,「神尾さんの意識」が隅々まで行きわたっている感じで,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲というよりは,神尾さんのヴァイオリン協奏曲といった演奏に感じられました。

少々好みが分かれる演奏だった気はしましたが,神尾さんの音の迫力と個性の強さを感じることのできる演奏だったと思います。

アンコールでは,お得意のパガニーニのカプリースの中から,いちばん有名な第24番が鮮やかに演奏されました。

この日は夏休み中ということもあり,親子連れのお客さんや中高生のグループが大勢聞きにきていました。今日の演奏を機会に,未来のIMA受講生が出てくることを期待したいと思います。

2016/08/21

IMA講師とOEKメンバーによる室内楽コンサート。今年はチェコ特集。ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタ,ドヴォルザークのピアノ五重奏など迫力十分の演奏

毎年8月下旬に行われている,いしかわミュージック・アカデミーの講師たちと,OEKメンバーによる室内楽コンサートが行われたので聞いてきました。今年はドヴォルザークとヤナーチェクの室内楽ということで,チェコの音楽特集ということになります。数年前までは,特にテーマを決めていませんでしたが,こういう形で統一テーマがある方が演奏会全体としての充実感は増す気がします。

前半は小編成の曲,後半は大編成の曲というのは,例年通りの構成でした。最初にホァン・モンラさんと,OEKの若松みなみさん,ヴィオラの石黒泰典さんで,ドヴォルザークの三重奏曲が演奏されました。初めて聞く曲でしたが,弦楽四重奏からチェロを引いた編成ということで,同一系統の楽器3台による陶酔的な響きを楽しむことができました。特にホァン・モンラさんの滴るような音が印象的でした。

2曲目のヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタは,ロラン・ドガレイユさんのヴァイオリンと鈴木慎崇さんのピアノで演奏されました。この曲は,以前から,ちょっと東洋風の独特の怪しい雰囲気が好きだったのですが,この日の演奏を聞いてさらに好きになりました。野性味と鬼気迫るような表情を持ったヴァイオリンとクールなピアノの響きとが絶妙のバランスで,全く別の世界に誘ってくれました。

後半のドヴォルザークのピアノ五重奏曲は,特に聞きごたえがありました。ピアノ五重奏曲には名作が多いのですが,この曲は親しみやすいメロディがいかにもドヴォルザークらしく,特に好きな作品です。

冒頭から,ハエスン・パイクさんのピアノ冴えた音と毛利伯郎さんの抑制の効いた清潔感のある音が印象的でした。その後,レジス・パスキエさんのヴァイオリンなどの楽器が加わって,ダイナミックに盛り上げっていくのが,ソリスト集団らしいと思いました。

じっく~と聞かせるドゥムカ風の第2楽章,予想外(?)の若々しさに溢れた第3楽章,楽し気に大らかに合わせた第4楽章とどの楽章も音楽する喜びにあふれていました。

前日に聞いた,受講生によるライジングスターコンサートも聞きごたえ十分でしたが,講師陣による,迫力十分の味わいに溢れた演奏もまた,聞きごたえがあります。受講生も大勢聞きに来ていましたが,色々な点で勉強になったのではないかと思います。

2016/08/20

金沢城公演 玉泉院丸庭園でOEKメンバーの弦楽四重奏に合わせてライトアップ。IMAとハシゴしてしまいました。やはり金沢は自転車移動がいちばんです。

本日の夜は,IMAのライジングスターコンサートが行われていたのですが,20:00頃からは金沢城公演の玉泉院丸庭園の方では,OEKメンバーによる弦楽四重奏に合わせてライトアップする,といる野外公演の行われていました。

IMAの公演が,20:00少し過ぎに終わったので,「もしかしたら見られるかも?」と思い,自転車で駆け付けたところ...やっていました。何ごともチャレンジしてみるものです。最初の曲には間に合わなかったような感じでしたが,OEKメンバーが演奏するボロディンのノクターンに合わせてライトアップが行われていました。

この日の夕方は少し雨が降ったようで(ライジングコンサートの間に降ったようです),演奏場所は屋根のある部分に変更になったのですが,庭園に行ってみると,しっかりと弦楽四重奏のロマンティックなメロディが響き渡っていました。

私のカメラだと,よく分からないかもしれませんが,次のような感じでした。この庭園も,段々と新しい名所として,親しまれつつあるようですね,

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2014/08/26

IMA環日本海交流コンサート ライジング・スターたちによる若手奏者たちによる華麗なガラ・コンサート。やはり神尾真由子さんの「揚げひばり」が絶品でした。 #oekjp

いしかわミュージックアカデミーも今年で20回目となります。それを記念して過去の受講生を含む若手奏者とOEKが共演する「IMA環日本海交流コンサート」が行われたので聞いてきました。

前半は昨年のIMA音楽賞を受賞した周防亮介さん,ミンギョン・キムさん,須藤梨菜さんの演奏,後半は金沢出身で昨年の日本音楽コンクールに3位入賞した竹田理琴乃さん,そして,最後に,IMA出身者で,昨年まで講師としても参加していた日本を代表するヴァイオリン奏者の一人,神尾真由子さんが登場しました。

演奏された曲は,ツィガーヌ,序奏とロンドカプリツィオーソ,ツィゴイネルワイゼン...など,ゆっくりした序奏の後に華麗に盛り上がる曲が中心で,若手奏者たちによる華麗なガラ・コンサートとなりました。

昨年のIMA音楽賞受賞者では,この前,ライジングスターコンサートで聞いたばかりの,ミンギョン・キムさんの,序奏とロンドカプリツィオーソが特に素晴らしいと思いました。艶のある音,鮮やかな盛り上げ方...新人らしからぬ安定度抜群の演奏でした。 周防亮介さんのツィガーヌも素晴らしい演奏でしたが,キムさんの方が聞かせ方の点では一枚上手という気がしました。

須藤梨菜さんのピアノによる,アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズは,前半の透明感あふれる雰囲気と後半の構えの大きな演奏との対比が鮮やかでした。竹田理琴乃さんの「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲も,装飾的な音が華麗でしたが,やはり曲の格からすると,「アンダンテスピアナート...」の方がやはりゴージャス感があるかなと感じました。

そして最後に登場した,神尾真由子さんの演奏では, ヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」がお見事でした。この曲を実演で聞くのは,「もしかしたら初めて?」でしたが,「絶品!」と思いました。念入りに抑制された息の長い弱音が本当に素晴らしく,OEKの作り出す景色を背景にして,集中力に溢れる音の風景画を楽しませてくれました。

最後に演奏されたツィゴイネルワイゼンは,音量が一気に増し,脂の乗り切った音を聞かせてくれました。中間部でのしっとりとした部分で濃厚なヴィブラートを聞かせた後,再度は超高速で弾ききっていました。この部分ではOEKとの駆け引きがなかなかスリリングでした。

IMAについては,ラ・フォル・ジュルネ金沢ほどには,石川県民に知られてはいないのですが,20年に渡って継続的に実施し,成果を上げていることはもう少しアピールしても良いと思います。今回は,夏休みの平日の午後に行われたこともあり,親子連れのお客さんが多かったのですが,その意味で,もう少し大人が聞きに行きやすい時間帯にしてもらった方が良かったかなとも思いました(と書きつつ,今回はうまく休みが取れたのですが)。

それと,このコンサートに併せて今年のIMA音楽賞を発表しても良いのではないかと思いました。

2014/08/22

IMAライジングスターコンサート2014 今年も若いアーティストたちの充実の演奏を間近で楽しむことができました

いしかわミュージックアカデミー(IAM)の恒例の演奏会となっているライジングスターコンサートを聞いてきました。例年はかなり長いコンサートになるのですが,今年は出演者数がやや少な目で,2時間強の長さでした。

登場したのは若手のヴァイオリン,チェロ,ピアノ奏者と弦楽四重奏,ピアノ三重奏でした。会場の交流ホールは奏者を間近に感じることができるので,気力十分の若手奏者たちの演奏をじっくり楽しむことができました。

今回は8人・グループ,9曲が演奏されました。技術的な面については,私が書くまでもなく見事な演奏ばかりでしたが,その印象がそれぞれに違うのが面白いところです。特に印象に残ったのは,次の演奏です。

ミンギョン・キムさんによる老練といってよいほどの落ち着きと押し出しの強さのあったサン=サーンスのハバネラ,周防亮介さんによる思い切りよく引ききったミルシテインのパガニーニアーナ,若々しい伸びやかさに満ちた上野通明さんによるブラームスのチェロ・ソナタ第2番,ジヨン・イムさんによる丁寧さと強靭さが鮮やかに切り替わる序奏とロンド・カプリチオーソ

その中でいちばん完成度が高いと感じたのが最後に演奏された,ヴァイオリンの毛利文香さんを中心としたモーツァルトのピアノ三重奏曲第5番でした。古典派の曲らしい端正な雰囲気の中に瑞々しさが溢れていました。他の曲に比べると地味目の曲でしたが,全く物足りないところはなく,曲の良さがしっかり伝わってきました。

8月26日には今回登場した周防亮介さん,ミンギョン・キムさんを含む若手アーティストに加え神尾真由子さんが登場し,OEKと共演します。この日はうまい具合に休めそうなので,こちらも聞きに行ってみたいと思います。

2013/08/25

音楽堂室内楽シリーズIMA講師チェンバーコンサートは,聞きごたえ十分の室内楽の連続。最後のシューマンのピアノ五重奏曲は変化に富んだスケール感たっぷりの演奏。今年のIMAをしっかり締めてくれました。

いしかわミュージックアカデミーも本日で終了ということで,そのエンディングとなる室内楽コンサートが石川県立音楽堂邦楽ホールで行われました。コンサートのタイトルは,「IMA×OEK」となっているものもありましたが,OEKからはヴィオラの石黒さんだけが参加していましたので,IMAチェンバーコンサートというのが正確なところかもしれません。

演奏された曲は,ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲「街の歌」,モーツァルト/弦楽五重奏曲第4番ト短調 ,シューマン/ピアノ五重奏曲変ホ長調 ということで,古典派からロマン派に掛けてのドイツ・オーストリア系の室内楽の本流をしっかり聞かせてくれるようなプログラムでした。

講師陣勢ぞろいということで,どの曲も素晴らしい演奏でした。大げさな身振りはないのに味が染みている「街の歌」,今回,IMA初登場(だと思います)のフランチェスコ・マナーラさんの透き通るようなヴァイオリンを中心に,バランスの良い「せつなさ」を感じさせてくれたモーツァルトの弦楽五重奏曲。どちらも堪能させてくれました。

後半に演奏されたシューマン/ピアノ五重奏曲変ホ長調は,演奏効果のあがる名曲だけあって, 特に聞き映えがしました。レジス・パスキエさんの熱のこもったヴァイオリンの歌いぶり,それに応えるジャン・ワンさんの威厳のある第2主題...第1楽章から名俳優が競い合って演技をするような面白さがありました。

どの楽章も曲想が鮮やかに描き分けられていたのですが,特に最後の楽章の終結部で,すべてのパートが全開になって,「全員が主役」みたいな感じで盛り上がっていたのが素晴らしかったですね。

会場は満席ではなかったのが残念でした。IMAの受講生を応援しつつ,こういう正統的で聞きごたえのある室内楽プログラムを楽しむような市民が増えてきてくれると良いのになぁと聞きながら考えていました。

さて,IMAが終わると,OEKの新シーズンも間近です。演奏会の帰り際に,「打ち水」のような感じのにわか雨に遭遇してしまいましたが,聞きごたえのある室内楽公演を聞いて,植物同様に息を吹き返した感じです。とても良い演奏会だったと思います。

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