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ガル祭

2022/05/03

#ガル祭 2022 本日の金沢は音楽祭日和といった感じの快晴。そして待望の本公演スタート。まずは #oekjp 弦楽メンバーによるシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」@金沢市アートホール。じっくりとした味わいのある第2楽章を中心に生で聴く室内楽の楽しさが伝わってくるような演奏。本日はゆったりとしたスケジュールで開始です。

本日の金沢は「音楽祭日和」といった感じの快晴。そして,いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 2022は本日から本公演です。私の方は,今年は本公演3日目中心にチケットを購入していますので,本日は,とりあえず,音楽堂の2ホール,アートホールのそれぞれ1つずつ,合計3公演にとどめています(体力温存のためです)。

まずは10:30から金沢市アートホールで,OEK弦楽メンバー(松井直さん,上島淳子さん,丸山萌音揮さん,大澤明さん)によるシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」を聞いてきました。この曲を実演で聴くのは久しぶりですが,改めて良い曲だなぁと思いました。

特にじっくりとした味わいのある第2楽章が大変聴きごたえがありました。長年OEKメンバーとして一緒に演奏してるメンバーならではの,絶妙の空気感のようなものを感じることができました。CDなどで聴いていてもよく分からないのですが,小ホールでの公演だと,各楽器の音が和音となって組み合わさったり,線となって絡み合ったり,まさに有機的に変化していく感じがよく分かりました。

第2楽章以外は,切迫感のある雰囲気が中心ですが,あまり声高になることはなく,落ち着いた威厳のようなものを感じさせてくれました。演奏されたのはこの1曲でしたが,充実の40分(ぐらい)でした。

本日は一旦,昼食を食べるに自宅に戻った後,今度は石川県立音楽堂会場の方に行く予定。金沢市の場合,自転車の移動でもそれほど時間がかからないのが良い点です。本日は自宅とホールを行ったり来たりということで,健康的に過ごそうと思います。

2022/05/01

#ガル祭 2022 本日はエリア・プレイベントとして行われた #岡本潤 さんなど北陸ゆかりの若手奏者を中心としたシューベルト/ピアノ五重奏「ます」他を北國新聞赤羽ホールで鑑賞。アンサンブル楽しさが生き生きと伝わってくるような素晴らしい演奏でした #篠原悠那 #荒井結 #平野加奈 #中村翔太郎

#ガル祭 2022 本日5月1日は「吹奏楽の祭典」を金沢歌劇座で行っていたはずですが(悪天候のためしいのき緑地から変更になったはず),今年はこちらには行けず,石川県出身のコントラバス奏者岡本潤さんなど北陸縁の若手奏者を中心としたシューベルト/ピアノ五重奏「ます」他を北國新聞赤羽ホールで聴いてきました。この曲は,シューベルトの作品の中でも特に親しみやすい曲ですが,本日の5人の演奏からは,アンサンブルする楽しさが生き生きと伝わってくる感じでした。

本日の奏者の中で北陸新人登竜門コンサートに出演したことのある奏者は,コントラバスの岡本潤さん,ヴァイオリンの篠原悠那さん,チェロの荒井結さん,ピアノの平野加奈さんの4人。いずれもその時の演奏を聞いたことがあるので,私にとっては,その成長をしっかり確認することのできた公演となりました。ちなみにヴィオラの中村翔太郎さんだけは,石川県との関係はなく,岡本さん同様,NHK交響楽団に所蔵しているというつながりがあります。6年前,金沢蓄音器館で,岡本さんが出演する「ます」公演を聴いたことがあるのですが,その時もヴィオラとして中村さんが参加していましたので,「盟友」といった感じですね。

「ます」の演奏ですが,第1楽章から,岡本さんのコントラバスを中心にどっしりとした落ち着きがあると同時に,生き生きとした流れの良い音楽が続きました。平和な気分に包まれた第2楽章に浸っていると,しみじみと「仲間とアンサンブルできる」喜びが伝わってきました。第3楽章はキリっとしたテンポ。途中,コントラバスとチェロが強い音で「ダダダダ」を気合(?)入れる部分がありますが,この部分はいつ聞いても楽しいですね。

有名な第4楽章は静かな気分で始まった後,次々と各メンバーが活躍。特に平野さんのピアノの息もつかせぬパッセージがお見事でした(「ます」が無呼吸で泳いでいるといったイメージでしょうか)。変奏の最後の部分で,各楽器がちょっとタメを作るように演奏する部分があるのですが,この部分もとても楽しそうでした。第5楽章のちょっとエキゾティックな舞曲が延々と続く感じは,シューベルトならではですね。最後の部分は胸のすくような気持ちよい雰囲気で締めてくれました。

「ます」の前に,ヴァイオリン,ヴィオラ,コントラバスの三人で,ドホナーニの三重奏曲が演奏されました。こちらは全体に渋い雰囲気を持った作品でしたが,「ます」同様,5楽章構成で,変化に富んだ楽想をじっくりと楽しませてくれました。

ちなみにこの日の衣装の色は,「ます寿司」をテーマにしたとのこと。平野さんは見るからに「ます」でしたが,言われてみると,岡本さんと篠原さん方も,やや「ます」かなという感じ。中村さんは,「ごはん」役ということで白。荒井さんは黒っぽい色でしたが,こうなってくると,「緑」にしてもらって,「笹」役を担当してもらえれば,パーフェクトだったかもしれません。

今回のメンバーのうち何名かは,今後も音楽祭の本公演の方で色々登場されるとのこと。こちらも楽しみにしたいと思います。

2022/04/29

#ガル祭 2022オープニングコンサート。テーマ #ロマンのしらべ にあわせてロマン派作品が10曲以上並んだガラコンサート。昭和の香りもする親しみやすい公演でした。#田中祐子 #金子三勇士 #クリストフ・コンツ #小林沙羅 #コンスタンティン・インゲンパス #北野友里夏 #木村綾子 #高柳圭 #oekjp

本日午後は,石川県立音楽堂コンサートホールで行われた,いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2022のオープニングコンサートを聞いてきました。演奏は田中祐子さん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢祝祭管弦楽団,ということでいつもより増強された編成による演奏でした。

内容は,今年のテーマ「ロマンのしらべ」に合わせて,ドイツ~オーストリア系のロマン派の作曲家の作品を10曲以上並べたるガラコンサートでした。公演時間は75分程度でしたので,一部の曲は省略されていましたが,ピアニストの金子三勇士さん,ヴァイオリンのクリストフ・コンツさん,ソプラノの小林沙羅さん,バリトンのコンスタンティン・インゲンパスさんが登場する華やかさ。さらには,北野友里夏さんによるバレエも加わっていましたので,今年の音楽祭全体を圧縮したような充実感がありました。

演奏された曲は,小中学校の音楽室の壁に貼ってあるような音楽家の作品が次々登場する感じでした。本日は「昭和の日」ですが,印象としては「ロマンの香り」に加え,「昭和の音楽室の香り」も漂うような名曲集だったと思います。

最初に演奏されたウェーバーの「舞踏への勧誘」と最後のリストのハンガリー狂詩曲第2番は,どちらも有名曲ですが,OEKが演奏する機会は非常に少ないと思います。久しぶりにLPレコードを取り出して聞いたような懐かしさを感じました。リストの方は最後の音のタイミングが少々ずれてしまいましたが,その辺もご愛敬という感じでした。

ブラームスの「大学祝典序曲」は,50代以上の人には,ラジオ講座のテーマ曲としてお馴染み(私も該当しますが...番組の方は聞いていなかったですね)。ファゴットで演奏されるテーマを聞くと,やはり昭和の香りがする感じです。ただし,曲の最初の部分が省略されていたのは残念でした。OEKが演奏する機会は非常に珍しい曲なので(もしかしたら初めて?),どうせなら全曲聴きたかったですね。

登場したソリストたちの演奏もそれぞれ楽しめました。過去,何回もOEKと共演をしている小林沙羅さんによるメンデルスゾーンの「歌の翼」はゆったりとした暖かみのある歌唱。シューベルトの「ます」は,クラリネットの伴奏が楽し気な雰囲気を作る中,最後の方,少しドラマティックな気分に盛り上がる感じが良かったですね。

コンスタンティン・インゲンパスさんの歌を聞くのは初めてでしたが,とても品の良い美しさがあり,ドイツ・リートにぴったりだと思いました。歌った曲は,シューベルトの菩提樹と魔王。岩城さん指揮OEKとヘルマン・プライさんが共演した懐かしのアレンジでしたが,瑞々しい気分があり,「風と緑の5月」に聴くのにぴったりでした(シューマンの「詩人の恋」にもぴったりかも)。

ヴァイオリンのクリストフ・コンツさんは,弾き振りでクライスラーの「美しいロスマリン」を演奏。キリっとした表情とリラックスしたムードが合わさった美しい演奏。本日のコンツさんの出番は,この2分程度だけという贅沢さでした。本公演に向けての絶好のPRになりました。

金子三勇士さんの方も,シューマンの「トロイメライ」だけの出演。最後,ゆったりと眠りに入っていくような深さを感じさせる演奏でした。5月3日のOEKとの共演の方も大変楽しみです。

北野友里夏さんが躍ったのは,ショパンの「レ・シルフィード」の中の前奏曲。これもまた昭和の時代からお馴染みの「太田胃散」のCMでお馴染みのあの曲です(ちなみに,胃腸調ならぬイ長調です)。しっとりとしていながら軽やかな,風の精そのものの踊りを観て,正真正銘ロマンの世界だなぁ,感じ入りました。

その他,ワーグナーとメンデルスゾーンの結婚行進曲の聴き比べもありました。ワーグナーの方はやはり,合唱がないと少し寂しいかもしれません。最後アンコールで,レハールの「メリーウィドウ・ワルツ」がインゲンパスさんと小林さんのデュオを交えて演奏されてお開きとなりました。この曲ですが,本来はテノール+もう少し重い声質のソプラノが歌う曲なので,この日の司会を務めていた,高柳圭さんと木村綾子さんに歌っても良かったのではと思いました。とてもスムーズでユーモアを交えての司会ぶりだったので,本職の歌の方も聞いてみたかったなと思いました。

音楽祭の方は既にプレイベントが色々と行われていますが,明日以降,本格的に石川県立音楽堂を中心に160もの公演が行われます。3年ぶりにほぼフルスペックで開催される音楽祭をのんびりと楽しんでみたいと思います。本日は雨でしたが,特に本公演の方は晴れて欲しいですね。

PS. 今年もオープニングコンサートに先立って,オープニング・セレモニーが行われましたが,その顔ぶれが1年前と大きく変わっていたのが新鮮でした。ラ・フォル・ジュルネ時代から10年以上,谷本石川県知事でしたが,今年は馳知事に。そして金沢市長も村山さんに交替。村山金沢市長は,フルート奏者として4月24日に行われた「市民オーケストラ」公演に出演者として登場済。さらには,これからもエリアイベントに登場とのこと。この展開は,選挙の時には予想できなかったことですが,「楽都金沢」にとっては良いことかもしれません。

PS2.本日,春の叙勲の発表があったのですが,実行委員長の池辺晋一郎さんが受章。この発表もオープニングセレモニーであり,馳知事から花束などを贈呈。さらにはウクライナから日本に避難している,タチアナ・ラヴロワさんと娘のヤナさんによるチェロの二重奏も演奏されました。というわけで,いつもにも増して,盛沢山なオープニング・セレモニーでした。ちなみに,ラヴロワさん母娘(遠くからだと姉妹のように見えました)は,セントラル愛知交響楽団に加わって演奏するとのことです。

2021/04/29

いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2021 オープニングコンサート。今年のテーマ「南欧の風」にちなみ,日本からシルクロード,ペルシャ経由での南欧までの音楽の旅を楽しんできました。特に笛田博昭さんの「オー・ソレ・ミオ」(本日の金沢は朝からずっと雨ですが)にはしびれました。フラメンコに便乗してガルちゃんも登場していました。

いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2021のオープニングコンサートが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。毎年,4月29日にこのコンサートが行われ,音楽祭が本格的にスタートというのがこの10年ほどの金沢の春の大型連休の恒例でしたが,昨年度はコロナ禍の影響で中止。2年ぶりに行われたことになります。

今年についてもコロナ禍は全く納まっておらず,金沢でも感染者数的には昨年を上回るような状況ではあるのですが,「コロナ感染の要所」が分かってきていることも確かです。今年については,感染拡大防止策のガイドラインに従った上で,「お祭り騒ぎにならないようにお祭りを開幕する」ということになりました。

音楽祭の今年のテーマは「南欧の風:イタリア・スペイン・フランス」ということで,オープニングコンサートもそういう曲が並ぶのかな...と思っていたら,趣向が凝らされていました。日本からシルクロード,ペルシア経由で南欧に行くという「旅」がイメージされていました。司会の木村綾子さん,原田勇雄さんはお二人とも歌手ということで,とてもクリアで美しい声。とてもゴージャスなアテンダントのアナウンスを聞いている気分になりました。

スタート地点・日本の曲として,池辺晋一郎編曲による「春の海」(石川県箏曲連盟の箏合奏とOEKの共演),続いてシルクロードをイメージさせる曲としてNHK「シルクロード」のテーマ(李彩霞さんの二胡とOEKの共演),そして,ペルシャの曲として,ケテルビーの「ペルシャの市場にて」が演奏されました。考えてみると,ものすごく「ベタな曲」ばかりでしたが,この分かりやすさが,懐かしいと同時に(小学校時代の音楽鑑賞や1980年代のNHKの番組の雰囲気)新鮮でした。誰もが同じイメージを持てる曲をみんなで楽しむというのは,「コロナ禍1年」の中,とても貴重なことではと改めて思いました。

この中では二胡の音がすごいなぁと思いました。どこから音が出ているのだろうという不思議な気分になります。弦楽器なので当然ではあるのですが,息が長く歌われたメロディを聞きながら,「南欧に行かなくても,シルクロードでゆっくりしていっても良いかも」と一瞬思いました。

イタリアの曲としては,何と言ってもナポリ民謡の代表曲「オー・ソレ・ミオ」での笛田博昭さんの,力と熱量が自然に備わったような声が素晴らしかったですね。何というかイタリア直送の食材をそのまんま丸ごと食べているような(何の料理か?と尋ねられると困るのですが),ゴージャスさを感じました。ちなみにオーケストラの演奏は,冒頭のティンパニ+弦楽器の響きから例の「3大テノール」版の「オー・ソレ・ミオ」の雰囲気そのままでした。この日の指揮者は,田中祐子さんでしたが,熱さを感じさせつつ,笛田さんの歌にぴたりと付けていました。

その後,司会の3人の共演で「サンタ・ルチア」が大らかに歌われました。テノールとバリトンがハモると,「どこかヴェルディ」といった感じになるなぁと思いながら聞いていました。

続いてスペインに移り,北陸フラメンコ協会のフラメンコのステージとなりました。音楽は「エスパニア・カーニー」。聞けばすぐ,闘牛の気分になるあの曲です。赤いドレスを着た8名のダンサーが,オーケストラの前とオルガンのステージに並び,大いに会場の気分を上げてくれました。このダンスを見ながら,そういえば,北陸フラメンコ協会の皆さんが,自粛期間中,この曲を踊る映像(お寺の本堂とかで踊っていましたね)をYouTubeで見たなぁということを思い出しました。時が経つのは速いものです。

「カルメン」前奏曲では,ダンサーたちに交じって,音楽祭のキャラクターガルガンチュアも登場。フラメンコの衣装は来ていませんでしたが,さらに音楽祭気分を盛り上げてくれました。

その後,おなじみルドヴィート・カンタさんが登場し,カザルスの「鳥の歌」を演奏しました。華やかな曲が続いた後にちょっと気分を落ち着けるような感じで,しみじみと深く沈潜するようなチェロの歌を聞かせてくれました。

「終点」はフランスで,ビゼーの「アルルの女」組曲第2番から,メヌエットとファランドールが演奏されました。メヌエットでは,松木さんの聞き応えたっぷりのフルートを存分に楽しんだ後,だんだんとオーケストラに明るい音色が広がっていくのが素晴らしいと思いました。一つ残念だったのは...松木さんに拍手できなかったことです。ファランドールに入る前に,拍手をすれば良かったかなと後悔しています。

ファランドールでは,南フランスの気分を感じさせる,カラッとした音のする「あの太鼓」(渡邉さん担当)のリズムを中心にストレートに盛り上がり,爽快に締めてくれました。

アンコールは何かと思ったら,アルフレッド・リードが石川県のために書いた行進曲「ゴールデン・イーグル」。途中,「石川県民の歌」のメロディが出てくるのですが...この曲の知名度が高くないのが少々残念な点でしょうか。最後は石川県に戻って,コンサートは終了しました。

今年の音楽祭の雰囲気を分かりやすく集約したような曲ばかりで,「色々聞いてみたいなぁ」と思わせるのに十分のオープニングとなりました。今年の場合,上述のとおり,「お祭り気分にならないように祭りを楽しむ」といったところがあるのですが,せめて,心の中でも南欧気分に浸りたいと思います。

2020/12/24

コロナの年のクリスマス・イブ,垣内悠希指揮OEK&エコール・ドゥ・ハナヨバレエ他による「くるみ割り人形」(全2幕)を石川県立音楽堂で楽しんできました。総力を結集したような公演に胸が熱くなりました。

コロナ禍に明け暮れた2020年のクリスマス・イブの夜に,風と緑の楽都音楽祭2020 秋の陣として行われた,チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」(全2幕)を石川県立音楽堂で鑑賞してきました。バレエは地元のバレエスクール,エコール・ドゥ・ハナヨバレエ等のダンサー+ゲストダンサー,演奏はオーケストラ・アンサンブル金沢,指揮は垣内悠希さんでした。

まず,大好きなこの作品の全曲上演をコロナの年に楽しめたことに感謝したいと思います。第1幕のねずみや兵隊,第2幕のキャンディなどのお菓子役など,ステージに子どもたちが大勢出演していたのに加え,客席にも親子連れが多かったのが嬉しかったですね。色々と気を遣うことが多い状況の中,大勢の出演者を束ねて,見事な公演を作り上げた関係者の方々に感謝をしたいと思います。総力を結集したような公演に胸が熱くなりました。

今回の公演はとても正統的で,イメージ通りの「くるみ割り人形」の世界が石川県立音楽堂のステージ上に広がっていました。第1幕前半に出てくるクリスマスツリーはしっかり巨大化し,第1幕中盤の戦闘シーンではステージ全体が赤い色に変化。第1幕後半の粉雪のワルツの部分では,背景のスクリーンに雪の映像を投影。第2幕のディヴェルティスマンの部分では,色々な国のダンスがしっかりと描き分けられていました。今回の公演全体を通じて,衣装が素晴らしかったのですが,この部分ではどれもイメージどおりでした。あまりにも次々と,色々な衣装を着たダンサーたちが出てきたので,「舞台裏はどうなっているのだろう?」と気になるほどでした。

第2幕後半の「パ・ド・ドゥ」もたっぷりと魅せてくれました。「アダージョ」の音楽は,コロナ禍の中で聞くと,特に感動的でした。抑圧されていた思いを大きく開放してくれるような音楽であり,ダンスだと思いました。その後,ヴァリアシオン1,ヴァリアシオン2(有名な「こんぺい糖の精の踊り」),コーダ...と続くと,「バレエを観ているなぁ」という気分がどんどん高まりますね。

「パ・ド・ドゥ」の次に出てくる「終幕のワルツ」では,第2幕に出てきたキャラクターが勢ぞろいし,皆で踊ります。この部分も大好きです。が,音楽が進むにつれて「もうすぐ,このバレエも終わりだ」とちょっと寂しい気分にもなります。

垣内さん指揮OEKの演奏は,踊りやすい安定感のあるテンポ設定でした。クリスマスツリーが巨大化する部分での分厚いサウンド,第1幕切れのワルツでの透明感(さすがに今回は児童合唱抜きでした)など,「生チャイコフスキー」ならではの魅力も楽しめました。そういえば...今回はアビゲイル・ヤングさんがコンサートミストレスでした。これは,OEKファンにとっては大きなクリスマス・プレゼントだったのではないかと思います。

終演後のカーテンコールについては,恐らく,長くなるのを避けるためか,アンコール的に「メール・シゴンニュとポリシネルたちの踊り」が演奏され,手拍子の中,次々と出演者がご挨拶をしていました。途中,曲が3拍子っぽくなるので,手拍子がし辛い部分もあったのですが,この趣向も良いと思いました。

気が付けば21時過ぎ。時間を忘れて鑑賞していた感じです。繰り返しになりますが,コロナ禍の中,今回のような総力を結集したような公演を楽しませてくれたことに敬意を表したいと思います。

2020/09/22

4連休最終日は #ガル祭 秋の陣 #藤田真央 さんのピアノ独奏,小松長生指揮中部フィルによるベートーヴェンの4番。曲の最初から最後まで,藤田さんの魔法のようなタッチと音色に魅了され続けました。 

9月の4連休の最終日は,「ガル祭」秋の陣として行われた,藤田真央さんのピアノ独奏,小松長生さん指揮中部フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番とエグモント序曲の公演を聞いてきました。

この公演,まず何よりも藤田さんのピアノの音色とタッチに魅了されました。技術的なことは分からないのですが,ピアノ協奏曲第4番の冒頭の一音から,柔らかで温かみのある音の世界に引き込まれました。ピアノを叩くという感じは全くなく,「どこへ連れて行ってくれるのだろうか?」というファンタジーの世界を開いてくれるような開始でした。

曲のテンポはどちらかといえば遅めでしたが,全体の印象は軽やか。速いパッセージでは鮮やかな技巧を聞かせてくれましたが,それが本当に自然で,藤田さんが自由自在に作り出す音の世界にオーケストラも聴衆も魅了されている,そんな感じのベートーヴェンだったと思いました。

第2楽章は深刻なムードで始まりますが,こちらも藤田さんの「マジック・タッチ」から出てくる癒やしの音で,平静な世界に落ち着いていくようでした。そして,第3楽章。ここでも慌てることなく,落ち着きのある柔らかさと鮮やかな愉悦感にあふれた音楽を聞かせてくれました。

前回,藤田さんを聞いた時は,チャイコフスキーコンクールに出場する直前だったのですが,コンクール受賞後は,「題名のない音楽会」をはじめ,テレビの音楽番組に出演する機会が一気に増えました。ステージでの印象もその明るい雰囲気のままでした。少々言葉は悪いかもしれませんが,ヘラヘラした感じでステージに登場した後,全く緊張することなく演奏を始めると,柔らかな音が会場いっぱいに広がり,お客さんを陶酔させるてしまう...という感じで,ただただ凄いなぁと思いました。

藤田さんが,これからどういうピアニストとして成長していくのか,目が離せないですね。個人的な希望としては,OEKとの共演で,モーツァルトのピアノ協奏曲などを聞かせて欲しいなぁと思いました。

オーケストラのことを書くのを忘れていましたが,OEKの方は大阪出張中ということで,今回は小松長生さん指揮中部フィルとの共演でした。初めて聞くオーケストラでしたが,エグモント序曲では,まとまりの良い響きと,コーダの部分での爽快な音の流れを楽しませてくれました。

この連休は,北村朋幹さんの「皇帝」で始まり,藤田真央さんの4番で締めた感じです。まったく違うタイプだけれども,どちらも大変瑞々しい演奏でした。コロナ禍のことを忘れ,ベートーヴェンのアニバーサリーイヤーだということを思い出させてくれる2人の演奏でした。

2019/10/22

風と緑の楽都音楽祭の延長戦企画 #ガル祭:秋の陣の #ピアノの日公演。#山田ゆかり さん,#竹田理琴乃 さん,#木米真理恵 さんによるピアノ協奏曲をたっぷりと楽しんできました。次年度以降も色々な楽器で定着していって欲しい企画です

本日は,毎年,春の連休中に行われている「風と緑の楽都音楽祭(ガル祭)」の延長戦企画といっても良い「ガル祭:秋の陣」を聞いてきました。この音楽祭については,ここ数年,秋にも実施する形に変わって来ているのですが,今年は「ピアノの日」「声楽の日」というネーミングを付けて,2日に分けて,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と地元アーティストとが共演する形になっています。

本日は「ピアノの日」で,松井慶太指揮OEKと,金沢市出身の山田ゆかりさん,竹田理琴乃さん,木米真理恵さんの3人のピアニストが共演をしました。OEKと地元アーティストの共演といえば,北陸新人登竜門コンサートがありますが,3人とのその出身者です。このコンサートへの出演をきっかけとして,ガル祭を中心とした,地元での活躍が広がるという流れができつつありますが,今回の「秋の陣」はその総決算と言っても良い内容でした。

3人が演奏した曲は,山田さんがモーツァルトのピアノ協奏曲第23番,竹田さんがショパンのピアノ協奏曲第1番,木米さんがリストのピアノ協奏曲第1番でした。いずれも大変魅力的な作品。それを一気に3曲楽しめた,豪華さのあるプログラムとなっていました。

もちろん演奏内容も安心して楽しめるものでした。3人とも金沢を中心にOEKメンバーとの共演を含め,頻繁に演奏会を行っていますので,いわばずっと応援している「ご当地アイドル(?)」の晴れ舞台を見るようなワクワク感のようなものを感じていました。

山田さんのモーツァルトは,非常に軽やかな演奏でしたが,常に落ち着いた雰囲気がある,大人のモーツアルトだと思いました。特に第2楽章のシンプルな明るさの裏に常に深い思いが潜んでいるような雰囲気が良いなぁと思いました。

竹田さんのショパンは十八番と言っても良いのではないかと思います。新人登竜門コンサートでは,確か第2番の方を演奏しましたが,今回の第1番も素晴らしい技巧に支えられた,美しい演奏を聞かせてくれました。特にロマンティックな気分と瑞々しさの両立した第2楽章と非常にノリの良い鮮やかな音楽を聞かせてくれた第3楽章の対比が素晴らしいと思いました。

木米さんのリストは,楽器編成的にOEKが演奏する機会が少ない曲です。そういった作品を堂々たる演奏で楽しむことができました。金管楽器のパリッとした響きをがっしりと受け止め,浮ついた感じになることなく,正攻法で弾ききっていました。

というわけで,初めての試みである「秋の陣:ピアノの日」は大成功だったと思います。是非,今度は「弦の日」「管の日」にも期待したいと思います。

今回少し気になったのは,前半の演奏時間の長さでしょうか。モーツァルトとショパンが前半だったので,1時間以上かかり,少々疲れていたお客さんがいたような気がしました。竹田さんの演奏中,盛大にくしゃみをしている人がいましたが...ホール内が少々寒かったかもしれませんね。

というわけで,この際ゆったりと休憩2回でも良いのかなと思いました。

いずれにして,今年になってからOEKと地元ピアニストが共演する協奏曲公演が続いているのが嬉しいですね。ガル祭での,グリーグのピアノ協奏曲(平野加奈さんとの共演),岩城メモリアル公演でのベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番(鶴見彩さんとの共演),そして今回の3人。音楽祭の名前に「楽都」という単語が入っていますが,確実にそうなりつつあるなぁと実感をしているところです。

さて,今回は10月24日に「声楽の日」も行われ,是非行ってみたいのですが...この日はOEKのヴァイオリン奏者,若松みなみさんとチェロ奏者,ソンジュン・キムさんを中心とした室内楽公演もありますね。こちらも非常に充実したプログラムなので,どちらに行くか迷っているところです。

2018/11/10

#石川県立音楽堂 で #左手のピアニストの為の公開オーディション を聞いてきました。6人の個性と左手のみによる表現の幅広さを実感てきました。#ガル祭 での再会を楽しみにしています

本日は,いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2019の関連企画として行われた「左手のピアニストの為の公開オーディション」を聞いてきました。このオーディションは,「ピアニストを目指していたが,右手の病気や障がいなどで両手での演奏が困難になった人を対象に。世界に呼びかけ開かれた未来を創るお手伝いをする」ことを趣旨として行われたもので,優秀者は,来春の楽都音楽祭で,オーケストラと協奏曲を共演またはソリストとして出演することができます。位置づけとしては,オリンピックに対してのパラリンピックに該当するようなオーディションということになります。

音楽の世界とスポーツの世界が同様なのかは,人によって考え方は違うと思いますが,レパートリーが限られる「左手のピアニスト」のために機会を提供することは意義のあることだと思います。ただし,今回審査委員長を務めた,舘野泉さんの講評にも出てきたとおり,左手のピアニストということを過度に強調する必要もありません。左手のピアニストだからこその,「思いの強さ」であるとか「表現意欲」というものが感じられるのでは...と思い,今回聞きに行くことにしました。

今回登場したのは6人のピアニストでした。国際的に参加者を募集をしていたこともあり,地元出身は1名で,海外からの参加者も1名ありました。そのこともあり,大変水準の高い演奏ばかりだったと思います。

課題曲はマグヌッソン「アイスランドの風景」という組曲の中の「鳥の目から見た高地」「オーロラの舞」の2曲。それに各自が選んだ自由曲を加え,合計15分程度で演奏するというものです。自由曲の方は,「左手のためのピアノ曲」の定番である,スクリャービンのop.9-2を演奏した人が3人いました。それ以外の方は,シュールホフ,吉松隆,サンカンの作品を自由曲で演奏しました。

ほとんど聞いたことのない作品ばかりを連続して聞くことになったのですが,全く退屈することがありませんでした。左手だけで弾くことによるシンプルなメロディの美しさと,両手で演奏している?と思わせるような幅広い音域を使った急速のパッセージの対比など,大変変化に富んだ演奏を楽しむことができました。

課題曲は6回同じ曲を聞き,スクリャービンも3回聞いたのですが,それぞれの個性というか演奏の味わいの違いがあるのも面白かったですね。オーディションをテーマにしたミュージカルに「コーラスライン」という名作があります。このミュージカルでは,それぞれ名も無い応募者たちが,自分の過去を語っていくシーンがありますが,今回,プログラムのプロフィールに書かれた「左手で演奏する理由」という項目を読みながら,6人の奏者の「人生」を思い浮かべ,それと重ね合わせて聞いてしまいました。

今回面白かったのは(これはオーディションやコンクール全般に言えるのかもしれませんが),審査員の講評を生の声で聞けたことです。今回の審査員は,舘野泉さんに加え,作曲家の一柳慧さん,吉松隆さんという豪華メンバーでしたが,それぞれの「聴き方」が分かり,「へぇ,そうなのか」と感じる部分がありました。特に舘野さんは,「細かい部分にこだわりすぎず,大きな音楽を作って欲しい」ということを語っており,そのことが審査にも反映していたようです。

今回の結果ですが,車椅子に座ったまま演奏された,月足さおりさん(音がとても美しいと思いました)と瀬川泰代さん(明るい笑顔にぴったりの演奏でした)が最優秀に選ばれ。次点のような感じで,児島顕一郎さんが最優秀審査員賞(個人的にはこの方の自由曲の演奏がいちばん印象に残りました),Stefan Warzyckiさんが優秀賞に選ばれました。

それ以外にも「左手のため」の「この作品」については,誰にも負けないという思いの強さを感じる箇所がいくつかありました。選考された結果については,私が感じた結果とは少し違っていたのですが,来春のガル祭でどういう演奏を聞かせてくれるのか楽しみにしたいと思います。「左手のための協奏曲」も演奏されるようですが,どの協奏曲が演奏されるのかも楽しみですね。

2017/10/21

いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017 秋の陣 を聞いてきました。 前半は石川公美,水上絵梨奈,近藤洋平,門田宇,OEKエンジェルコーラス,白河俊平(Pf)の皆さんによるベートーヴェン物語。後半は菊池洋子さんの公開レッスン+地元奏者との連弾+ソナタ第13番

今年の春の連休期間中に行われた「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」の関連公演として「秋の陣」と題した演奏会が石川県立音楽堂邦楽ホールで行われたので聞いてきました。


この音楽祭のテーマは,ベートーヴェンということで,公演の前半は「ベートーヴェン物語」と題して,北陸を中心に活躍する若手声楽家,ピアニストとOEKエンジェルコーラスの皆さんがベートーヴェンとその前後の作曲家たちの作品を演奏しました。「~物語」とあるとおり,ベートーヴェンの生涯を石川公美さんの語りを交えてたどりながら,声楽曲やピアノ曲を聞くという構成になっていました。

石川公美さんの語りはとても分かりやすく,全体の流れもとてもスムーズでした。ソナタの全曲を聞くという形ではなかったので,「ベートーヴェン入門編」のような感じで,「石川県のクラシック音楽のすそ野を広げる」といったことを意図するような公演と感じました。

ただし,この日の演奏は,どの曲も素晴らしく,しかも,意外に演奏される機会のない,ベートーヴェンの声楽曲を楽しむことができました。テノールの近藤洋平さんによる「アデラーデ」,バリトンの門田宇さんによる「君を愛す」,石川公美さん,水上絵梨奈さん,,近藤さん,門田さんによる「自然における神の栄光」など,どの曲も若手歌手たちの瑞々しい声を間近で楽しむことができました。

OEKエンジェルコーラスの方は,少々お行儀が良過ぎのような気もしましたが,ウィーンの音楽に児童合唱はぴったりだと思いました。

白河俊平さんのピアノの音は,とても滑らかで美しいものでした。ベートーヴェンの「悲愴」2楽章,「月光」1楽章,シューベルトの即興曲op.90-3の雰囲気にぴったりでした。特にシューベルトの即興曲は個人的に大好きな曲だったので(この曲が演奏されると知らなかったので),得した気分になりました。

前半最後は4人の声楽家によって「歓喜の歌」が歌われて,締められました。

後半はモーツァルトのピアノ曲ばかりが演奏されました。金沢でもお馴染みの菊池洋子さんによる公開レッスン及び菊池さんと地元奏者による連弾の後,菊知さんのソロで,ピアノ・ソナタ第13番が演奏されました。

後半のステージも,「地元の子供たち」を絡めた企画ということで,「クラシック音楽のすそ野を広げる」ような内容でしたが,こちらも大変面白いものでした。

最初にモーツァルトの4手のためのピアノ・ソナタK.381の第1楽章について,菊池さんが公開レッスンを行いました。最初に2人の子供たちの連弾で演奏されたのですが...これが本当にしっかりとした演奏で驚きました。これ以上,どう指導されるのだろうか?と思ったのですが,さすが菊池さん。「2人の演奏はしっかり仕上がっている。これは一つの考え方だけれども...」と前置きをした後,もしかしたらモーツァルト演奏の「ツボ」につながるようなアドバイスをされました。次のような感じです。
  • どの音もきっちりと弾き過ぎているかも。
  • モーツァルトについては,軽やかさの欲しい部分がある。力を抜くところは抜く。
  • トレモロについてはそれほどしっかり弾く必要はなく,響きを作る感じで。
  • 軽やかに弾くときは,それに合った指使いに変えると良い。
  • モーツァルトの場合,ひじを回して演奏する必要はあまりない。

抽象的なアドバイスではなく,技術的なアドバイスになっているのが素晴らしいと思いました。

その後,菊池さんと地元のピアニストによる,4手のためのソナタが2曲演奏されました。こちらは,菊池さんが低音に加わることで,どこか大船に乗ったような幸福感が感じられました。

ちなみに,今回レッスンに使われたK,381の第1楽章ですが,一瞬,「フィガロの結婚」のケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」を思わせるメロディがふっとよぎり,ちょっと嬉しくなります。今回の演奏を聞いて,好きな曲になりました。

最後は,K.333のピアノソナタが菊池さんのソロで演奏されました。やはり連弾で演奏する場合よりは,自由度が高く,より柔軟で流れるような気持ち良さと健やかさをもった演奏を聞かせてくれました。平穏な世界が段々と深まって行くような第2楽章。クッキリとした明快で陰影のある世界が広がる第3楽章。この曲も良い曲だな,と思いました。

アンコールで,ちょっとアドリブ的な音が入った「トルコ行進曲」が快適なテンポで演奏されて,演奏会は終了しました。

菊池さんのトークによると,「来年の音楽祭のテーマは...モーツァルトなのかもしれませんね」とのことでした。こじんまりとした感じで行われた「秋の陣」でしたが,来春のエリア・コンサートはこれで万全と思わせるような内容でした。

2017/05/02

5月2日夜は #ガル祭 の目玉企画「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏」第1夜へ。九人九様の演奏を楽しめました。横山幸雄さんの「ワルトシュタイン」の安定感はさすがでした」

風と緑の楽都音楽祭(ガル祭)もいよいよ後半の本公演に入っていきます。その前夜祭のような形で,「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏」企画の第1夜が行われたので聞いてきました。

今回のベートーヴェン企画については,交響曲全曲,ピアノ協奏曲全曲もすごいのですが,ボリューム的には,やはりこの「4日間でピアノ・ソナタを全部」がいちばんすごいのではないかと思います。人生の中でも,こういう企画に出会うことはそうないだろうと考え聞きに行くことにしました。
今回演奏されたのは,ピアノ・ソナタ第2番,9番,12番「葬送」,第16番,第21番「ワルトシュタイン」,第22番,第26番「告別」,第27番,第28番の9曲でした。この9曲が9人のピアニストによって演奏されました。この9人のうち,横山幸雄さん以外は全員,北陸地方を中心に活躍している地元のピアニストばかりでした。

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まず,この9人で9曲という点が面白かったですね。「ワルトシュタイン」を弾いた横山幸雄さんを中心に据えて,九人九様のベートーヴェンを楽しむことができました。
何といっても横山さんの演奏の安定感と,聞かせ方の上手さが見事でした。平然と始まった後,曲の山場ではビシッと決め,曲の最後のクライマッスに向けてさらに高まって行くというスケールの大きさを感じました。

この曲の最終楽章の終盤,オクターブ・グリッサンドという技が出てくるのですが,2階席からだと,その奏法がとてもよく見えました。この曲を実演で聞くこと自体,金沢だと滅多にないのですが,CDなどで聞いていても印象的な「この部分」は,こんなに軽々と演奏できるのか,と感心しました。ちなみにポリーニによる「実演」の映像がYou Tubeに乗っていました(正式な動画かわからないのですが)。

https://www.youtube.com/watch?v=imaUhABlejA

その他の曲についても大変楽しめました。トリを務めた田島睦子さんによる第28番の,軽やかで自在にインスピレーションが広がるような演奏。「告別」を弾いた鶴見彩さんによる,ストレートで目の覚めるような鮮やかな演奏。金沢で大活躍されているこのお2人の演奏は,いつものことながら素晴らしいと思いました。

曲の中では,これまでほとんど聞いたことのなかった16番が「良い曲だなぁ」と思いました。これは,石本えり子さんの演奏の力も大きかったと思います。第2楽章など,ベートーヴェンらしからぬ(?),イタリアンな感じの歌をたっぷりと楽しむことができました。

その他,第2番,第12番「葬送」も,もともと好きな作品だったのですが,それぞれ平野加奈さん,山田ゆかりさんの演奏で,イメージどおりの演奏を実演で楽しむことができました。

この演奏会は,18:30に始まり,21:40頃に終わっていましたので(休憩20分を含む),約3時間かかりました。これと同様の演奏会がさらに3回行われるということで,「体力が持つだろうか?」という恐怖感もあるのですが,新音楽祭の目玉をしっかりと堪能したいと思います。

この全曲演奏シリーズですが,邦楽ホールで行われたこともあり,落語の時に使うような...名前は何と言うのか知らないのですが...名札を,解説の潮博恵さんが1曲ごとに日めくりカレンダーのようにめくっていました。このアイデアはなかなか良いと思いました。
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