OEKのCD

2018年12月
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コンサート

2018/12/09

「金沢でメサイアを歌い続けて70年」#北陸聖歌合唱団 と #柳澤寿男 指揮 #OEK によるメサイア全曲公演。70年に相応しい充実感のある演奏 #oekjp

本日は,「金沢でメサイアを歌い続けて70年」となる北陸聖歌合唱団と,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)による,年末恒例のヘンデル作曲オラトリオ「メサイア」公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。記念の年ということで,全曲が演奏されました。指揮は,「メサイア」を指揮するのは2回目の登場となる柳澤寿男さんでした。

北陸聖歌合唱団と柳澤さんのつながりは,過去の歴代指揮者の中でも特に強いようで,今回の全曲演奏も見事な演奏でした。柳澤さんの作る音楽は正統的で,全曲を通じて,がっちりと引き締まった充実感を感じました。テンポ設定も中庸だったと思いますが,この曲の合唱部分によく出てくる,メリスマ風の細かい音の動きの続く部分などでは,妥協しないような速いテンポでした。合唱団の皆さんは大変だったと思いますが,その緊迫感が一つの聞き所になっていたと思いました。

その一方,70年記念ということで,合唱団の人数は120名編成でしたので,スケール感を感じさせる余裕のある声を聞かせてくれました。ハレルヤ・コーラスでの,クライマックスに向かって,充実感を高めていく構成も良かったのですが,最後のアーメン・コーラスでの染み渡るような清澄な気分も素晴らしいと思いました。宗教音楽のクライマックスにぴったりの表現だったと思いました。

今回は全曲演奏だったのですが,休憩の方は第2部の途中に1回入るだけでした。2枚組CDの「メサイア」と同じような分け方だったと思います。その分,第1部と第2部,第2部と第3部に切り替わる部分が入ってしまうのですが,連続的に聞くことで,その空気感の違いが実感できました。特にイエスの生誕を描いたクリスマス気分の溢れる第1部と受難を描いた第2部については,急に湿気を沢山含んだ曇り空(本日の金沢の空のことですが)に切り替わったようなコントラストを感じました。

ソリストの方については,特に女声が充実していたと思います。ソプラノの朝倉あづささんは,70年記念公演には「外せない」ですね。プログラムのプロフィールを読むと,この公演に登場するのは27回目とのことで,平成になってからはほぼフル出演という感じだと思います。その声の雰囲気がずっと変わらないのは,本当に素晴らしいと思います。北陸聖歌合唱団の「メサイア」公演に無くてはならない存在だと改めて思いました。

ソプラノの出てくる曲は,どの曲も良いのですが,特に第3部の最初の曲(全曲演奏以外だとカットされることもあるのですが)が好きです。この曲を聞くと,「メサイアも終わりに近づいてきたな,今年も終わりに近づいてきたな」と少ししんみりとした気分になります。

メゾ・ソプラノは田中展子さんでした。メサイア公演には初登場の気がしますが,今回のソリスト4人の中で,特に素晴らしい声を聞かせてくれたと思いました。まず声にしっとりとした落ち着きと品の良い美しさがあり,どの曲を聞いても,美しいなぁと思いました。いちばんの聞かせどころの,第2部の最初のアリアも深さと同時に,厳しさが伝わってきました。メサイアの中には,オーケストラの伴奏部に付点音符が入った音型が連続する箇所が結構あるのですが,柳澤さん指揮は,この付点音符の部分については,例年に増して,厳しく引き締まった感じで演奏していたように思えました。このアリアでの田中さんの声をさらに引き立てていたと感じました。

テノールの志田雄啓さんも,「メサイア」公演ではお馴染みの方で,大らかな表現を聞かせてくれましたが,今回は全体的に高音部が苦しそうな感じだったのが,少々気になりました。バスの大塚博章さんがこの公演に登場するのは今回が初めてだったと思います。どの曲も美しく安定感のある歌を聞かせてくれましたが,少々ソツがなさ過ぎるかな,と贅沢なことを感じました。

さすがに全曲公演となると,休憩時間を合わせると3時間コースになり,少々疲れましたが,70年記念に相応しい充実した公演だったと思います。

PS. 本日は「70年の公演記録」をまとめたリーフレットも配布されました。そのうち何回行っているのか,カウントしてみたところ,丁度20回でした。私にとっても記念の公演ということになります。

2018/12/08

本日は,#松井慶太 指揮OEK&#ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリ さんよる #PFU クリスマス・チャリティコンサートを聞いてきました。OEKにぴったりの選曲。ルシエンヌさんのトランペットはクールでした #oekjp

本日は午後から,毎年恒例のPFUクリスマス・チャリティコンサートを聞いてきました。今年のテーマは,「ラッパが鳴り響くところ」ということで,ハイドンのトランペット協奏曲,ヘンデルの「水上の音楽」第2組曲を中心に,バロック音楽から古典派音楽が演奏されました。演奏は,松井慶太さん指揮OEKで,ハイドンの独奏者として,若手トランペット奏者のルシエンヌ・ルノダン=ヴァリが登場しました。

演奏会は,ヘンデルの「水上の音楽」第2組曲で始まりました。この組曲は,ラッパ特にトランペットとホルンが活躍する曲集です。今回は古楽奏法という感じではなく,弦楽器などは,ほぼ通常の人数でした(第1ヴァイオリンは8人でした)。松井さん指揮OEKの演奏にも大らかさがありました。次の曲は,この日唯一管楽器の入らない,バッハのブランデンブルク協奏曲第3番でした。ヘンデルの「水上の音楽」第2番は,特にトランペットの負担が大きい曲なので,「中休み」といったところでしょうか。

この曲を実演で聞く機会は,以外に少ないのですが,CDなどで聞くより,実演で聞く方が楽しめる作品だと思いました。編成が,ヴァイオリン3人,ヴィオラ3人,チェロ3人+コントラバス1人という独特の編成で,ノリの良いリズムに乗って,合奏する部分と,次々に色々な人がソロを取っていく部分が交錯します。特に実演で聞くと,ヴィオラのダニイル・グリシンさんの迫力が際立つと思いました。

第2楽章は,楽譜的には「2つの和音だけ」のはずですが,本日はチェンバロの辰巳美納子さん(プログラムには記載が無かったのですが,メンバー表が欲しかったですね)が,センスの良い見事なソロを聞かせてくれました。チェンバロの音もしっかりと聞こえてくるのが,石川県立音楽堂コンサートホールの良さだと思います。

ちなみにこの曲ですが,3つの弦楽器のパートが3人ずつ。番号も第3番ということで,3へのこだわりを感じさせる作品ですね。バッハの生誕333年の年に聞くのにぴったりの作品といえます。

前半の最後は,この日のハイライトといってもよい,ルシエンヌさんの独奏によるハイドンのトランペット協奏曲が演奏されました。ルシエンヌさんは,まだ10代の女性トランペット奏者で,来年の7月のOEKの定期公演に出演し,辻井伸行さんとともにショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を演奏する予定の注目のアーティストです。

とても小柄な方で(指揮者の松井さんが非常に長身だったので,そう見えたのかもしれませんが),ステージでの動作も「今どきの若者」という感じでしたが,その音は大変柔らかく,演奏のスタイルもセンスの良さを感じさせるものでした。「ハイドン×トランペット」といえば,明るく健康的という印象がありますが,ルノシエンヌさんの演奏には,少し憂いを含んだような抑制した感じがあり,しっかりと「らしさ」を持っている奏者だと思いました。もちろん伸びやかさもあるのですが,所々で,フッと陰りを見せるようなサラリとした感触を見せるのが大変威力でした。

アンコールでは,デューク・エリントンの曲をブルーなムードたっぷりに演奏しましたが,ハイドンの方も,ちょっとブルーさのあるクールなハイドンだったと思います。来年7月のショスタコーヴィチも大変楽しみです。

後半はハイドンの交響曲第104番「ロンドン」が演奏されました。この曲については,特にトランペットが大活躍...というわけではありませんが,OEKの編成にピッタリのお得意の曲です。松井さんの作る音楽は,コンパクトに引き締まっており,古典派音楽にぴったりの雰囲気がありました。第2楽章は短調の部分が時々挟まる,ハイドンのお得意のパターンですが,軽やかさの中に落ち着きと深さがあり,大変聞き応えがありました。

新鮮さのある第3楽書に続き,キビキビと展開していく第4楽章へ。毎回思うのですが,OEKのハイドンは良いですねぇ。OEKの良さがしっかり引き出された,とても気持ちの良いハイドンでした。

アンコールではオーケストラとチェンバロのために編曲された,「きよしこの夜」が演奏されてお開きになりました。演奏会の長さはやや短めでしたが,とても気持ちよく楽しめた演奏会でした。

2018/11/29

#オリ・ムストネン さん,OEK定期に初登場。フィンランドの作品を中心として,ムストネンさんの多彩さを実感できる素晴らしい公演でした。作曲家としても素晴らしいと思いました。 #oekjp

本日は,OEK定期公演初登場となる,オリ・ムストネンさん指揮によるフィルハーモニー定期を聞いてきました。ムストネンさんといえば,フィンランドを代表するピアニストという印象を持っていたのですが,実は,指揮者としても,さらには作曲家としても活躍の場を広げています。本日の定期公演は,そのすべてを聞かせてくれる充実の内容となりました。チラシの宣伝文句に書かれていたとおりの「天才」的な雰囲気を持つアーティストだと思いました。

プログラムは,最初に演奏されたヒンデミットの「4つの気質」以外は,すべてフィンランドの作曲家の作品。メインとなるシベリウスの「ペレアスとメリザンド」組曲は,過去の定期公演で聞いたことはありますが,それ以外は,定期公演に登場するのは初めての作品。ということで,ムストネンさんのこだわりのプログラムと言えます。

# 訂正です。調べてみると、「4つの気質」については、河村尚子さんのピアノ、広上淳一さん指揮で一度取り上げていましたので、「OEK初」ではありませんでした。

最初に演奏された,ヒンデミットの「4つの気質」は,ピアノ協奏曲と変奏曲が合わさったような独特の作品でした。古代ギリシャのヒポクラテスの時代から伝わる「人間の典型的な気質」を変奏曲として表現した作品なのですが,他のヒンデミットの曲同様,ややとっつきにくいところがありました。ただし,ムストネンさんのピアノの音には,独特の透明感のようなものがあり,苦み走っているけれども,後味がとても良い,といったムードがありました。

ムストネンさんのピアノを聞くのは今回初めてでしたが,とても手を高く上げて演奏したり,独特の奏法だったと思います(専門的なことは分かりませんが)。速い部分での軽快な躍動感が素晴らしく,重苦しくなるところのない演奏でした。機会があれば,是非,別の作曲家の曲も聞いてみたいものです。

続いては,ムストネンさん自身が作曲した九重奏曲第2番の弦楽合奏版が演奏されました。これは今回が日本初演とのことでした。聞く前はどういう作品なのか想像もできなかったのですが,とても魅力的な作品でした。4楽章構成の作品で,どこかベートーヴェンの交響曲や弦楽四重奏曲を思わせるような,躍動感と神秘性を感じました。しかも古くさい感じはなく,ベートーヴェンを現代的で新鮮な感性でバージョンアップさせたようなような,オリジナリティを感じました。急速なパッセージが連続する最終楽章では,この日のコンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんのリードが光っていました。この曲については,オリジナルがどういう編成だったのも気になります。機会があれば,オリジナル版も聞いてみたいものです。それと,ムストネンさんの他の作品も聞いてみたいものです。

後半は,指揮者としてのムストネンさんの魅力を味わうことができました。

最初に演奏された,ラウタヴァーラのカントゥス・アルクティクスは,鳥の鳴き声を収録した音源とオーケストラとが共演する独特の作品です。聞くのは2回目ですが,ムストネンさんの指揮で聞くと,非常に清々しく感じられました。不思議なことに,音を聞いているうちに,ビジュアルが喚起されるところもありました。最後の部分では,ティンパニとシンバルが盛大に入り,スケール感たっぷりの盛り上がりを聞かせてくれました。

次に演奏された,シベリウスの「ペレアスとメリザンド」組曲もとても魅力的な作品でした。ドビュッシーの同名の曲の印象からすると,もう少し淡い感じの演奏を予想していたのですが,ムストネンさんの指揮には最初の曲から,グイグイと音楽を引っ張っていくような力強さがありました。アンコール曲としても時々演奏されることのある,「間奏曲」などでは,ムストネンさんのピアノ演奏に通じるような躍動感を感じました。

最後の「メリザンドの死」は,重苦しい感じで始まった後,最後の方で,どこかシベリウスの交響曲第2番を思わせるような大きな盛り上がりを作り,その余韻を残すように静かに終了。OEKの音もとても良く鳴っており,演奏会をしっかり締めてくれました。

その後,同じシベリウスのアンダンテ・フェスティーヴォが演奏されました。この選曲は,事前に組み込まれたアンコール曲的な位置づけだったと思いますが,本当に見事な演奏でした。他の曲同様,速めのテンポでくっきりと演奏されました。その音には光り輝くような壮麗さがありました。

プログラム的には,あまり知られていない曲が並んでいたので一見地味な印象を持ったのですが,実際には,多彩であると同時に,フィンランド的な風味で統一感のある見事なプログラミングだったと感じました。何よりも,ムストネンさんの多彩な才能をしっかり実感できました。ムストネンさんには,是非またOEKに客演して欲しいと思います。OEKメンバーとの室内楽公演なども期待したいと思います。

2018/11/25

#鈴木織衛 指揮OEK他によるヴェルディ #リゴレット 金沢初公演@金沢歌劇座。#青山貴 さんと#森麻季 さんを中心に聴き応え十分の人間ドラマ

本日の午後は,金沢で全曲を上演するのが今回が初めてとなる,ヴェルディの歌劇「リゴレット」の公演が金沢歌劇座で行われたので聴いてきました。金沢では,ここ数年,全国のいくつかの公共ホールとの共同企画によるオペラを毎年のように行ってきましたが,今回の公演は,金沢独自企画とのことです。プログラムに書かれていた山田正幸プロデューサの言葉によると「遠慮なく作品を選べた」ということで,個人的には大歓迎です。

「リゴレット」は,ヴェルディの出世作として知られていますが,今日の感覚からすると差別的な表現や役柄が出てくるせいもあるのか,国内ではなかなか上演されないとのことです。が,本日の公演を聴いて,主要キャストの重唱を中心に進んでいく,聴き応え十分の人間ドラマだと改めて実感しました。特にタイトルロールの青山貴さんの輝きのある威力十分の声,リゴレットの娘,ジルダ役の森麻季さんの丁寧でしなやかな声は,それぞれの役柄にぴったりのはまり役と感じました。

その他の役柄もキャラクターが分かりやすく,現代の演劇などに通じる「わかりやすさ」を感じました。特に殺し屋スパラフチーレは,数あるオペラの中でも,いちばんクールな役柄ではと思いました。高岡出身の森雅史さんが,グッと広がるような低音で存在感を示していました。

唯一の問題点は(というかかなり大きな問題だったのですが),マントヴァ公爵役のアレクサンドル・バディアさんの体調不良のため,かなり歌唱が不安定だった点です。第2幕の最初に山田プロデューサが「最後までつとめますので...」という異例のエクスキューズが入りました。特に第1幕の最初の方は,高音が出ない部分があったりして,かなり不安でした。その後,山田さんの言葉どおりの熱のこもった歌で,見せ場の「女心の歌」(かなり独特の歌い回しでした)が出てくる第3幕まで,何とか歌いきってくれました。

この作品については,虐げられた存在であるリゴレットと正反対のキャラとしてマントヴァ公爵が位置づけられており,何でも思いのままに楽々と生きている感じを出すことが作品の一つのポイントだと思うので,「苦労している公爵」というのは少々残念でした。機会があれば,「リベンジ」を期待したいものです。

それにしても,リゴレットとジルダのアリアは,聴き応えがありました。リゴレットには,他人を傷つける道化の面と愛情たっぷり(過剰?)な父親の2面がありますが,特に第2幕の「悪魔め鬼め」での深い表現が素晴らしいと思いました。ジルダの方は,コロラトゥーラ・ソプラノの名曲として有名な「慕わしい人の名は」での美しさも素晴らしかったのですが,やはり同じ第2幕に出てくる「日曜日に教会で見かけてから...」とこれまでの恋愛の一部始終を語るようなアリアでの情感の豊かさが素晴らしいと思いました。

そして,第3幕での四重唱。4人の思惑が絡まりつつ,音楽の方がワクワクと高まっていく感じが最高でした。その後,ジルダが「予定変更」で殺害されることになるのですが,実はその「キャスティング・ボード」を握っていたのが,殺人者の妹のマッダレーナでした。藤井麻美さんの声には,その重役に相応しい,聴き応えがありました。

ドラマの起点となるのが,第1幕の最初の方のモンテローネ伯爵の「呪い」なのですが,李宗潤さんの威力のある声も良かったと思います。ドラマの要所要所にくさびを打ち込んでいる感じでした。

鈴木織衛さん指揮OEKのオーケストラも雄弁で流れの良い音楽を聴かせてくれました。ヴェルディならではのオーケストレーションも面白く(スパラフチーレが出てくる時のヴィオラやチェロの伴奏,嵐の中の殺人の場でのフルートなどによる描写的な音楽...),名曲だなぁと思いました。

合唱団の方は,今回は男声合唱のみでしたが,公爵の宮殿の場での軽妙な感じ,,嵐の場の恐怖感をハミング(?)で盛り上げたり,大活躍だったと思います。何より「ヴェルディあるある」的な楽しげな行進曲が出てくると嬉しくなりますね。

舞台の方は,比較的簡潔で回り舞台の上に可動式のついたてのようなものを組み合わせて,色々な場面を作っていました。ジルダの場については,「籠の鳥」のような形で取り囲んだり,天井から「ブランコ」が降りてきたり,色々な工夫がありました。特にブランコについては,ジルダの「揺れる気持ち」を象徴しているようで,効果的だったと思いました。

このオペラのストーリーは,「リゴレットの悲劇」なのですが,自ら死を選んだ形になるジルダ側から見ると,「ジルダの自立」とも言えるのかなとも思いました。ストーリーの細部を見ると,「どこか変?」といった部分もあるのですが,音楽の持つ迫力と合わせて聞くと,色々と深読みをしたくなる作品だなぁと感じました。

というわけで,公演に携わった多くの皆さんに感謝をしたいと思います。

2018/11/07

久しぶりに 石川県立音楽堂に登場した井上道義さん指揮OEK等による洋邦コラボレーションコンサート。ペルトのフラトレス,若林千春の新曲,ストラヴィンスキーのアポロ。新しいアートを作り出す楽しさと芸術の神への感謝の思いが伝わってくるような演奏会でした。

本日は,久しぶりに石川県立音楽堂に登場した,井上道義さん指揮OEKメンバー等による,「洋邦コラボレーション」と題された演奏会を聞いてきました。井上さんは,OEK初代音楽監督の岩城宏之さん同様,クラシック音楽と邦楽とが一体になったような演奏会を何回か行って来ましたが,本日の演奏会は,井上さんの「やりたいこと(orやりのこしたこと)」が隅々まで徹底した,総決算的な内容だったと思います。

演奏されたのは,茶道のお手前+能舞とペルトのフラトレスのコラボレーション,若林千春さん作曲による「ゆにわ/しま IV-b」という独奏フルート,独奏チェロ,能管,小鼓,大鼓のための作品(初演)。そして,ストラヴィンスキーの「ミューズを率いるアポロ」の3曲でした。特に前半の2曲は,通常のクラシック音楽のコンサートの雰囲気とは一味違う,シアターピース的な作品で,井上さんらしさが溢れていました。後半のストラヴィンスキーも素晴らしい作品の素晴らしい演奏でした。

最初に演奏されたペルトのタブラ・ラサは,2楽章構成の作品で,ステージ奥でOEKの弦楽合奏が静かで神秘的なムードを醸し出す中,山根一仁さんとアビゲイル・ヤングさんのヴァイオリンが,掛け合いをしていきます。繰り返しがとても多いので,次第に陶酔的な気分になっていく作品です。

その中で,上手側で渡邊荀之助さんが能を舞い,下手側で奈良宗久さんがお茶を煎れる動作をします。ステージの照明は暗目で,2人にスポットライトが当たるようになっていましたので,この2人の動作にどんどん引き込まれていきました。ただし...その意味まではよく分かりませんでした。

第1楽章の後半で,照明が点滅し,その後,渡邊さんが奈落の底に落ちていったり(ステージの床がエレベータのように下がっていくということですが),奈良さんの方は,茶道の道具を全部片付けた後,第2楽章になって再度登場して,お茶を煎れる動作をしたり...なかなか難解でした。曲が終わった後,井上さんが,表現していたストーリーを解説してくれて,「そういうことだったのか」と了解できた部分もあったのですが...少々懲りすぎだったかもしれません。

音楽の方は,第2楽章はさらにシンプルでゆっくりとした曲想になりました。井上さんによると「空」を表現していたということです。この時空の感覚がなくなるような感じはペルトの音楽ならではの魅力だと思いました。

次の若林さんの新曲の方は,音楽的にはかなり前衛的で,メロディが全くないような作品でしたが,武満徹の作品であるとか,能そのもののスタイルを思わせる雰囲気があり,とても楽しめました。

最初,大鼓と小鼓が静かに応答しあうような和の雰囲気で始まった後,途中,独奏チェロの細井唯さんと独奏フルートの松井さやさんが入場してきて,特殊奏法満載の不思議で強烈な世界が続きました。チェロの方は不協和音というよりは,故意にギシギシ言わせるような音が続出,フルートの方は息だけの音を使ったり,ウワオーという感じで半分声を出しながら演奏したり,伝統に刃向かうムードたっぷりの音楽が続きました。

ただし,このお二人による集中力のある演奏で聞くと,目が離せないという感じになり,強くひかれました。舞台奥の紗幕の後ろに,能に登場する邦楽器が3つ配置し,その前に少し距離を置いてチェロとフルートが,能のシテとワキといった感じで並んでいましたので,この舞台で能を表現しているように思いました。終了間際に能管が,ピーッと強く音を出していたのも能に通じると思いました。

邦楽器と洋楽器のコントラストを聞かせる二重協奏曲という点では,武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を思わせる要素もあると思いました。尺八がフルートに,琵琶がチェロに置き換わったようなイメージです。最初と最後が邦楽器中心で,中間部にチェロとフルートによる長いカデンツァが入っているようにも思えましたが,この構成もノヴェンバー・ステップスと似ていると思いました。何より「どういう楽譜になっているのだろう?」と思わせるほど不思議な音が続いていたのも同様でした。

タイトル自体も謎だったのですが,今回のテーマの洋と邦のコラボというテーマに相応しい作品だったと思いました。この作品は,井上さんが主催している「是阿観作曲家コンクール」の第1回優秀作品に選ばれた作品です。2021年に上演を計画している新作能に向けた,3年計画のコンクールということで,今後どういう作品が登場してくるのか期待したいと思います。

後半はストラヴィンスキーのバレエ音楽「ミューズを率いるアポロ」が,弦楽合奏で演奏されました。これは普通のクラシック音楽のコンサートのスタイルで演奏されましたが,井上さんの原点である,バレエを意識しての選曲となっていました。

実演で聞くのは初めての曲でしたが,ストラヴィンスキーの曲の中でも特に心地良い響きのする作品だと思いました。古代ギリシャの気分を伝えるような晴朗な気分にあふれていました。単純にシンプルなわけでなく,「実は複雑そう」という面もありましたが,「芸術の神アポロ」に対する素直な賛美,井上さんの「アートの世界」に対する信頼や演奏できることの喜びのようなものがストレートに伝わってきました。

特に前半のプログラムは,色々と冒険的な試みをしており,「一体どうなったのだろう?」といったスリリングな面もありましたが,「新しいアート」を作り出す楽しさを存分に伝えてくれるような演奏会だったと思います。

2018/11/01

OEK初登場の #鈴木雅明 さん指揮による定期公演。「疾走する哀しみはとまらない」といった感じのモーツァルト40番。そして #RIAS室内合唱団 等との共演によるメンデルスゾーンの宗教音楽2曲。晴れやかな気分が残る,生きる力が湧いてくるような演奏でした。

今年も早くも11月です。11月最初のOEK定期公演は,OEK初登場となる鈴木雅明さんの指揮で,モーツァルトとメンデルスゾーンを中心としたプログラムが演奏されました。鈴木さんといえば,バッハ・コレギウム・ジャパンの音楽監督として世界的に有名な方です。今回は,バッハよりはもう少し時代的には新しい古典派から初期ロマン派にかけての作品が取り上げられましたが,「さすが」という説得力十分の演奏を聞かせてくれました。特に演奏会の後半,今回のもう一つの目玉である,RIAS室内合唱団との共演で演奏されたメンデルスゾーンの宗教音楽は,知られざる名曲を再発掘してくれるような,素晴らしい演奏だったと思います。

演奏会の最初は,「スウェーデンのモーツァルト(何となくキダ・タローさんを思わせるキャッチフレーズですが...)」と呼ばれることのある,クラウスという作曲家のシンフォニアで始まりました。実質的には,序奏部とフーガからなる序曲といった感じの作品でしがが,OEKの響きがすっかり「鈴木雅明仕様」に変わっていたのがすごいと思いました。

弦楽器の音は軽やかで透明。しかしサラサラと流れすぎる感じではなく,しっかりと各声部が絡み合う壮麗さのある音楽を聞かせてくれました。ヴィブラートも控えめですっきりとした感じでしたが,極端に過激な古楽奏法という感じではなく,現代のオーケストラによる古典派音楽の演奏に相応しいバランスの良さを感じました。この日のティンパニは菅原淳さんでしたが,そのバロック・ティンパニの引き締まった音も印象的でした。響きが軽くなる分,ビシッと曲を引き締めているようでした。

続いて演奏されたのは,おなじみのモーツァルトの交響曲第40番でした。今回は,クラリネットが入らない初稿で演奏されたのですが,そのこともあるのか,甘い感じは消え,弦楽器を主体としたシリアスさが際立っていました。今回の演奏で特徴的だったのは,そのテンポの速さです。どの楽章も大変速いテンポでした。

ただし,どの楽章も繰り返しをきっちりと行っていましたので(第4楽章の後半も繰り返すのは,かなり珍しいと思います),演奏時間的には30分ぐらい掛かっていたと思います。その結果,全4楽章を通じて,どこまで行ってもクールな哀しみがヒタヒタと迫ってくるような感じになっていました。「疾走する哀しみはとまらない」といった感じの演奏だったと思います。

その一方で,単純に走るだけの演奏ではなく,要所要所でテンポを落として,ドキッとするような陰影を感じさせてくれる部分がありました。特に第4楽章のシンコペーションのリズムの部分など,「押しの強さ」があり,独特の深さが後に残りました。

鈴木さんの指揮に接するのは今回が初めてだったのですが,大変エネルギッシュな指揮ぶりが印象的でした。透明感のある響きと,裏に秘めた熱さとのバランスがどの曲も素晴らしいと思いました。

後半は,どちらも初めて聞く,メンデルスゾーンの宗教曲2曲が演奏されました。タイトルだけを見ると,「難解そう?渋そう?」という印象を持ったのですが,さすがメンデルスゾーン。両曲とも,初めて聞いても「良い曲だなぁ」と実感できる作品でした。

オラトリオ「キリスト」については,構想としては,ヘンデルの「メサイア」同様,キリストの生涯を3部に分けて描くはずだったのですが,メンデルスゾーンが早逝してしまったため,「キリストの誕生」と「キリストの受難」までしかできていません。その点では「未完成」なのですが,音楽自体はしっかり完成していると思いました。

それほど長い作品ではなく,ヘンデルの「メサイア」第1部の要素とバッハの「マタイ受難曲」の要素とが,うまく合わさったような充実感を感じました。特に第2部の方は,「10分で楽しむマタイ受難曲」といった感じで,大変魅力的な合唱曲(そのまま,演歌としても行けそうな感じ?)の後,コラールで締められていました。オーケストラは,ほぼフル編成で,その響きには,ロマン派音楽的な雰囲気もありましたので,バッハやヘンデルの作品以上に親しみやすい作品になっていたと思いました。

テノールの櫻田亮さんの役割は,受難曲の福音史家同様レチタティーヴォ中心で,その凜とした声は,宗教音楽にぴったりでした。RIAS室内合唱団もまた,素晴らしい声を聞かせてくれました。「室内」という名称が付いているとおり,音量で圧倒するという感じではなかったのですが,その声はビシッと締まっており,十分なボリューム感と素晴らしい安定感がありました。特に輝きのある高音が印象的でした。

演奏会の最後に演奏された,同じくメンデルスゾーンの詩編42番「鹿が谷の水を慕いあえぐように」の方は,タイトル的にはさらに渋そうな感じでしたが,実際には大変聞きやすく,気持ちの良い作品でした。

この曲では,ソプラノのリディア・トイシャーさんも活躍していました。その清潔感と伸びやかさのある声は,櫻田さん同様,宗教曲にぴったりでした。加納さんのオーボエと絡むように歌われる曲がありましたが,どちらにも芯のある強さがあり,聞き応えがありました。

この曲は,「神を待ち望まん Harre auf Gott!」というフレーズがキャッチフレーズのように繰り返される曲で,終曲に向かって力強く盛り上がって終わります。オーケストラと合唱団が一体となった,晴れ渡ったような輝きが素晴らしく,「生きる勇気」を与えてくれるようでした。

この日は,後半に知名度の低い曲を持ってくる冒険的なプログラムでしたが,見事に締めてくれました。

今回,初めて鈴木雅明さんの指揮に接したのですが,予想したよりもエネルギッシュで,透明感と同時に根源的な力強さを持った音楽を聞かせてくれる方だと思いました。機会があれば金沢で,鈴木さんの指揮による,バッハの作品も聞いてみたいものだと思いました。

2018/10/13

#oekjp #ユベール・スダーン 指揮OEKの10月の定期公演は,シューベルト,モーツァルト,ハイドンの作品。「太鼓連打」の引き締まった力強さをはじめ,自信に溢れた立派な演奏。久しぶりの #堀米ゆず子 さんとは,モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番を共演。こんなに良い曲だった!と曲の魅力を再発見

ユベール・スダーン指揮OEKの10月のマイスター定期公演は,シューベルトの交響曲第5番,モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番,ハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」というウィーン古典派の作品集でした(シューベルトの5番も古典派と言っても良いでしょう)。9月の川瀬賢太郎さん指揮によるフィルハーモニー定期もウィーン古典派特集だったので,丁度セットになるようなプログラムだったと思います。

スダーンさんとOEKの組み合わせについては,9月上旬に行われた岩城メモリアルコンサートで,その相性の良さは証明済みでしたが,今回のプログラムでは,さらにスダーンさんらしさが徹底した充実した音楽を聞かせてくれたと思います。

最初に演奏された,シューベルトの交響曲第5番は,OEKのベーシックなレパートリーの1つで過去何回も演奏してきている曲です。今回の演奏は,基本的にテンポは速めでインテンポでしたので,コンパクトでかっちりとまとまった古典的な曲という印象が残りました。シューベルトの曲らしい叙情味を要所要所に聞かせてくれながら,曲全体としては,揺るぎない構築感を感じさせてくれる素晴らしい演奏でした。

2曲目は,ベテランのヴァイオリン奏者,堀米ゆず子さんをソリストに迎えてのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番でした。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲については,圧倒的に3番と5番。その次に4番が演奏される機会が多いのですが,第1番を実演で聞くのは...初めてのような気がします。

CDなどでは,やはり3,4,5番の印象が強く,どういう曲か覚えていなかったのですが,今回,堀米さんによる演奏を聞いて,良い曲だなぁと思いました。堀米さんがOEKと共演するのは,20数年ぶりのことです。その音色には自然に円熟味が漂っており,モーツァルト19歳の時の作品を,味わい深く聞かせてくれました。両端楽章などは,速いパッセージを鮮やかに聞かせてくれたのですが,そこには常に余裕がありました。第2楽章のアダージョは音楽自体に深みがあり,底光りするような美しさを感じさせてくれました。

今シーズン,OEKはフォルクハルト・シュトイデさんとの共演で,モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番も演奏しますが,この際,第2番もどなたかと演奏してもらい,「全集」にしてもらたいものです。

後半はハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」1曲でした。編成的には,実はこの曲がいちばん大きいので,今回のプログラムの場合,トリにぴったりでした。何よりも,スダーンさんの作る音楽に折り目正しさと同時に力感が溢れ,壮麗さすら感じさせる気分の中で演奏会を締めてくれました。

この曲については,ニックネームが付けられているとおり,第1楽章冒頭などに出てくる「太鼓連打」がまず聞き所になります。英語だと「Drum Roll」となりますが,まさに本日の演奏はバロック・ティンパニによる,コロコロコロ...といった心地良いロールのクレシェンド,デクレッシェンドで始まりました。第1楽章は,このロールにしっかり縁取られて,躍動感溢れる音楽を聞かせてくれました。

変奏曲形式の第2楽章も大変力強い歩みでした。その間にサイモン・ブレンディスさんによる鮮やかなソロが活躍していました。第3楽章のメヌエットもゴツゴツとした感じで始まりましたが,トリオの部分は対照的に夢見るような心地よさ。クラリネットの音がとろけるように響いていました。そしてホルンの信号で始まる,推進力のある第4楽章。改めて,ハイドンは良いなぁと思いました。どの曲を聞いても楽しめるというのは,実はとてもすごいのでは,と思っています。

というわけで,9月に続いて,スダーンさんとOEKの強い信頼感に結ばれたような充実の演奏を楽しむことができました。

ちなみに,この日は,客演の首席チェロ奏者として,マルタ・スドゥラバさんが参加していました。コントラバスのルビナスさん,ヴィオラのグリシンさんと合わせて,クレメラータ・バルティカ出身のメンバーで低弦が支えられていた形になります。今回,とても低音が充実して感じられたのは,このこともあったのかなと思いました。

2018/10/09

#石川県立音楽堂 室内楽シリーズ 木管アンサンブルの響き。OEKの木管メンバーを中心とした「木管祭り」。オリジナル・アレンジの「牧神の午後」,「スペイン奇想曲」をはじめ,木管アンサンブルの多彩な魅力を伝えてくれました。#oekjp

今晩は,石川県立音楽堂室内楽シリーズ「木管アンサンブルの響き」を聞いてきました。昨年度までの室内楽シリーズは,交流ホールで行われることが多かったのですが,今年度はコンサートホールで行う方針になったようで,ゆったりと楽しんで来ました。つくづく,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の木管パートの音色は美しいなぁと思いました。交流ホールの方がステージが近いメリットはありますたが,やはり,響きの美しさの点では,コンサートホールが上回っていますね。

今回の編成は,OEKの松木さん,加納さん,遠藤さん,柳浦さん,金星さんによる「木管五重奏」がベースで,そこに,クラリネット(各種)担当の松永彩子さん,アルト・サックスの角口圭都さん,ピアノの倉戸テルさんが加わっていました。

今回のプログラムで素晴らしかったのが,7曲全部,楽器編成が違っていた点です。最初のハイドンのディヴェルティメントは,基本メンバー5人。その後,クラリネットを中心としたメンデルスゾーンの曲,フルートのソロで始まるドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」の編曲版,オーボエを中心としたピアソラの「アディオス・ノニーノ」。そして後半は,ヤナーチェクの木管六重奏曲「青春」,最後に全員勢揃いのリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の編曲版。曲目の傾向もバラエティに富んでおり,木管アンサンブルの楽しさを味わうのに絶好の演奏会だったと思います。

今回の目玉だったのは,やはり今回の編成のために,松永彩子さんが編曲した「牧神の午後への前奏曲」と「スペイン奇想曲」だったと思います。通常の木管五重奏にアルト・サックスやバス・クラリネット。さらにはピアノやパーカッションも加わり,オリジナルのオーケストラ版とは一味違った,柔らかな響き,明快な躍動感...などを楽しませてくれました。

「牧神の午後」は,フルートの松木さやさんのソロで始まりましたが,その音を聞いただけで,別世界に連れて行ってくれるようでした。編曲者の松永さんへのインタビューでは,管楽器は弦楽器のようなロングトーンは苦手なので,いくつかの楽器に分担させた,といったことを語っていました。その色々な音の積み重ねや切り替わりも面白いと思いました。

ヤナーチェクの「青春」は,少々つかみ所のない雰囲気のない作品でしたが,管楽アンサンブル版の「スペイン奇想曲」は,オーケストラ版とは違った鮮やかさとまろやかさがあり,演奏会全体を楽しく締めてくれました。

最後,アンコールとして,ちょっとビッグ・バンド風の趣きのある,「アイ・ガット・リズム」が演奏されてお開きとなりました。この曲では,ソロを演奏した,角口圭都さんのアルト・サックスの柔らかく艶のある音も印象的でした。

このシリーズでは,メンバーのトークが入るのも楽しみですが,今回は「入れ替わり立ち替わり」だったのも,OEKファンには嬉しかったですね。そういったことも含め,「OEK木管祭り」といった明るい雰囲気に包まれ,会場全体にリラックスした空気があったのがとても良かったと思います。この木管シリーズは,是非,続編を期待したいと思います。

2018/10/06

OEK小松定期公演「秋」は #田中祐子 さん指揮によるフランス・プログラム。#サン=サーンス の2番,#松木さや さんの独奏によるイベールのフルート協奏曲といった隠れた名曲を凜々しい演奏で楽しみました。#辰巳琢郎 さんの語りによる絵本風 #動物の謝肉祭 も良い味わい #oekjp

半年に一度,春と秋に行われている小松定期公演の「秋」を聞いてきました。「春」の方は,川瀬賢太郎さん指揮によるチャイコフスキー・プログラムでしたが,今回は,田中祐子さん指揮によるフランス音楽プログラムでした。演奏されたのは,辰巳琢郎さんのナレーションを交えた,サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」,OEKのフルート奏者,松木さやさんの独奏によるイベールのフルート協奏曲,そして最後に,サン=サーンスの交響曲第2番イ短調が演奏されました。

今回の「動物の謝肉祭」は,絵本のような雰囲気のストーリーだったのに対し,他の2曲は金沢でも滅多に演奏されない曲ということで,「子供からマニア(?)まで」楽しめる内容ということになります。

最初に演奏された「動物の謝肉祭」は,少年が夢の中で動物園を一回りするという,「くるみ割り人形」を思わせるような,「夢落ち」のストーリーになっていました。田中祐子さんの指揮にも,元気の良さだけでなく,どこかファンタジーを思わせる気分がありました。

今回は,総勢十人程度の,オリジナルの室外楽編成による演奏でした。今回のメンバーは,ブレンディスさん,江原千絵さんのヴァイオリン,グリシンさんのヴィオラ,カンタさんのチェロ,ルビナスさんのコントラバス,岡本さんのフルート...ということで,各曲ごとにOEKメンバーのソロを楽しむことができました。お馴染み,田島睦子さんと松井晃子さんのピアノも息がぴったりで(例の「ピアニスト」では,故意にずらしていましたが),「OEKファミリー=気心の知れた仲間たち」による,謝肉祭を楽しむことができました。

やはり,聞きものの「白鳥」は,カンタさんならではの,しっとりとした詩的な演奏でした。今回のファンタジー風「謝肉祭」にぴったりでした。ピアノ2台伴奏による,オリジナルの「白鳥」は意外に聞く機会がないのですが,やはり,良いですねぇ。

辰巳さんの語りは,とても落ち着きのあるもので,子供向けファンタジー的な内容にも関わらず,大人が聞いても自然に楽しむことができました。「生の辰巳さん」を見るのは,初めてだったのですが(百万石まつりに出演されていたのを見たかも...),テレビで見るよりもずっとスマートで長身に見えました。辰巳さんもそろそろ「還暦」とのことでしたが,そうは見えず,「やさしいお父さん」が読み聞かせをするような若々しさを感じました。

後半はまず,イベールのフルート協奏曲から始まりました。実は,今回の公演のお目当てはこの曲でした。第1楽章の最初の方は,ちょっととっつきにくい感じもありましたが,ラヴェルの「パヴァーヌ」辺りに通じるようなしっとりとした気分のある第2楽章,無窮動のような第3楽章と,松木さんの安定感抜群のくっきりとした気持ちのよいフルートを楽しむことができました。田中祐子さんの生き生きとした指揮ぶりと合わせ,凜々しさを感じさせてくれる演奏だったと思います。

演奏会の最後は,サン=サーンスの交響曲第2番でした。演奏される機会の少ない作品ですが,OEKの編成とキャラクターにぴったりの作品で,演奏会全体をキリっと締めてくれました。サン=サーンスの曲らしく,短調でありながら,本気で暗くなるような感じはなく,古典的な構成の中で,心地良い躍動感と流動性を感じさせてくれました。

第2楽章の静かで豊かな歌,ちょっとフランス風味のある第3楽章スケルツォ,そして,タランテラを思わせるような最終楽章と,楽章ごとのキャラが大変分かりやすく,初めてこの曲を聞く人にも十分に楽しむことができたのではないかと思います。滅多に演奏されない曲ですが,数年に1回ぐらいは,OEKの定期公演で取り上げて欲しい曲だと思いました。

この日は,各曲の演奏時間自体はそれほど長くなかったので(3曲合わせても1時間程度だったと思います),その分,辰巳さんと田中さんのトーク,さらにはフルートの松木さんへのインタビューもありました。個人的には,松木さんがフルートを始めたきっかけのお話などが特に興味深く感じました。

というわけで,これで2回連続で小松定期公演を聞いたことになります。こまつ芸術劇場は,石川県立音楽堂コンサートホールよりもコンパクトなホールで,演奏者が身近に感じられますので,金沢での定期公演とはまた違った魅力があると思います。都合がつけば,是非,また聞きに期待と思います。

2018/09/23

9/20の定期に行けなかったので,本日は大阪 #ザ・シンフォニー・ホール まで遠征し #川瀬賢太郎 指揮OEKを聞いてきました。筋肉質で引き締まってクリア,全身全霊を込めたベートーヴェン「運命」。さすがとしか言えない #小山実稚恵 さんのモーツァルト。大満足です。 #oekjp

9月20日に石川県立音楽堂コンサートホールで行われた,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2018/19シーズンの開幕の定期公演に残念ながら行けませんでしたので,大阪への日帰り小旅行を兼ねて,ザ・シンフォニー・ホールでの大阪公演を聞いて来ました。指揮は,9月からOEKの常任客演指揮者に就任した川瀬賢太郎さん,ピアノ独奏は,日本を代表するピアニストの一人,小山実稚恵さんでした。

本当は,金沢の定期公演がそのまま大阪公演に振り替えてもらえるとともて良かったのですが,金沢公演のチケットを返却して音楽堂マネーに交換した上で,改めてチケットぴあで購入しました。その席ですが,私自身,これまで座った中でも「最高!」と思える席になってしまいました(自分で選んだのですが...)。図らずも,OEKの素晴らしさと同時に,日本初のクラシック音楽専用ホールの素晴らしさも実感できました。

今回のプログラムですが,常任客演指揮者に就任した川瀬さんの,ご挨拶がわりのプログラムであると同時に,OEKファンからすると,川瀬さんはOEKのコアなレパートリーであるウィーン古典派の作品でどういう解釈を聞かせてくれるのだろうか,という試金石のような内容でした。そしてその結果は...期待を上回るような,素晴らしさでした。

メインで演奏されたのは,クラシック音楽のコア中のコアである,ベートーヴェンの交響曲第5番でしたが,冒頭の「運命のモチーフ」からスリムに引き締まっており,無骨だけれども新鮮さのある音を聞かせてくれました。テンポはそれほど速い感じではなく,最終楽章などでは,じっくり,しっかりと音を鳴らし切りましょう,といったメッセージが指揮全体から伝わってきました。そして,実際,そのとおりの音が出ていました。

演奏後,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんが,疲れ切った感じで川瀬さんと握手をしていましたが,見ていて(今回,かなり近くの席だったのです),音に対する集中度の高さとそこから出てくる熱量の高さが凄いと思いました。それでいて,音楽全体としては,がっちりと無骨にまとまった古典派の交響曲を聞いたなぁという実感が残りました。

OEKメンバーの個人技を聞かせる部分もしっかり作り(オーボエの加納さんの演奏など,協奏曲のカデンツァを思わせるボリューム感がありました),要所要所では,パンチ力とスパイスを効かせていました。第4楽章のピッコロなど,ピリーッとしていましたね。

この作品については,「今さら「運命」?」と思われることもあるかもしれませんが(ただし,トロンボーン3本とコントラファゴットが入るので,OEKは比較的演奏していないかもしれません),改めて,OEKの中心レパートリーとなる重要な作品だなぁと思いました。

最初に演奏されたハイドンの交響曲第90番についても,基本的なコンセプトは,「運命」と同じで,例えば,第1楽章に出てくる「タタタタタタ」という基本モチーフが,緻密にクリアに演奏されて,音楽ががっちりかつ瑞々しく構築されていくのが心地良かったですね。この曲では,いつものことながら,フルートの松木さんの高級なシルクの肌触り(...何となく書いているのですが)といった感じの音が素晴らしかったですね,聞く人の気持ちを幸せにするような音でした。

そしてこの曲の最大のポイントは最終楽章です。ここではネタをばらしてしまいますが,「終わった!」と見せかけて,「まだ続くよー」というハイドンならではのユーモアが入っています。川瀬さんはご丁寧に「終わりましたよー」と客席を振り返る動作を見せ,しっかり拍手が入ったのを確認した後,「ノーノーノー...実はまだ続くんです」という動作を見せて,曲を再開。この時の,オーボエの水谷さんによる「引っかかりましたねヘッヘッヘー(私にはそう聞こえました)」という感じのユーモラスな演奏も最高でした。「川瀬さん,おぬしも人が悪いのぉ」と言いたくなるような役者ぶりでした。

さらに「今度こそおしまい」と思わせて,再度拍手が入ったのですが...再度「ノーノーノー」の動作。楽譜の指定がどうなっているのか知らないのですが,いつもより多めに騙された感じです。というわけで,今回のハイドンの90番にニックネームを付けるならば,「二度あることは三度ある」「三度目の正直」もしくは「人間不信」といったところでしょうか。大変楽しいパフォーマンスに1曲目から大きく盛り上がりました。

そして2曲目には,小山実稚恵さんのソロを交えてのモーツァルトのピアノ協奏曲第20番が演奏されました。小山さんについては,ラフマニノフの大曲などもバリバリ弾きこなすロマン派の大曲がレパートリーのメインのピアニストだと思っていたのですが,今回のモーツァルトもお見事でした。

モーツァルトならではのシンプルなメロディをさらりと弾くだけで味がありました。この曲については,ベートーヴェンがカデンツァを書いており,ほぼデフォルトになっています(この日もこのカデンツァでした)。曲全体にもベートーヴェンに通じる気分が漂っています。小山さんのしっかりとした強さのあるタッチは,そのムードにぴったりでした。第1楽章,第3楽章終盤のカデンツァから終結部にかけての,音の迫力が特に素晴らしいと思いました。

その一方,第2楽章で聞かせてくれた軽みのある清潔感のある歌も印象的でした。小山さんはアンコールで,バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の第1曲のプレリュードを本当に美しいタッチで聞かせてくれましたが,古典回帰,バロック回帰の新境地を築きつつあるのかもしれません。というわけで,この曲もまた大満足でした。

今回の公演では,ハイドン,モーツァルト,ベートーヴェンの3人の大作曲家の「持ち味」を聞かせつつ,その上に川瀬さんらしさ,小山さんらしさも楽しませてくれました。10月の定期公演でも,ユベール・スダーンさん指揮,堀米ゆず子さんのヴァイオリンで,ウィーン古典派の曲を中心としたプログラムが取り上げられます。ミンコフスキさん指揮による,フランス音楽なども楽しみですが,OEKで古典派の曲を聞き比べる楽しみも期待できそうです。

PS.大阪のザ・シンフォニー・ホールに来たのは...恐らく15年ぶりぐらいだと思います。日本初のクラシック音楽専用ホールとして1980年代前半に開館した後,とても良い感じでエイジングが進んでいると思いました。日常生活としっかりと切り離された,良い意味での「敷居の高さ」があるホールだなぁと思いました。

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