OEKのCD

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コンサート

2017/08/11

オペラ版「死神」を落語版と2本立てで鑑賞。特に沢崎恵美さんの死神は,カルメンを思わせる悪女の魅力。千変万化の合唱団も大活躍でしたね。8/11も同一公演があります。涼しくなりたい方はどうぞ #oekjp

今晩は,落語「死神」をオペラ版「死神」と合わせて楽しむという,石川県立邦楽ホールならではの企画があったので聞いてきました。

もともと落語「死神」の方は三遊亭圓朝の落語で,ブラックユーモアの味わいのある名作なのですが,これをもとに映画監督として有名だった今村昌平さんが脚本を書き,お馴染み池辺晋一郎さんが音楽を付けてオペラ化したのが,オペラ版です。

そのいちばんの違いは,オペラ版では,死神が艶っぽい女性になっていた点です。そのことによって,ドラマ全体に華やかさが増し,人間の生命力(特に女性の生命力)が強調されたいたように感じました。

池辺さんによるオペラ版や約2時間かかるもので,死神役のソプラノの沢崎恵美さんと葬儀屋役のバリトンの泉良平さんを中心に物語が進みます。儲からない(?)葬儀屋をたぶらかし,死神の言う通りにやっているうちに葬儀屋は,「難病でも治す名医」のようになりお金持ちになっていきます。その展開は落語と共通するのですが,オペラ「カルメン」を観るように,どんどんと風采の上がらない男性が女性にのめり込んでいく感じはオペラならではの面白さでした。

何といっても死神役の沢崎さんのシュッして妖艶な感じが,このキャラクターにぴったりでした。第2幕の最初に1つアリアがありましたが(この曲以外は特にアリアはなかったと思います),この曲を中心に魅力を発散していました。瑞々しさのある声も大変魅力的でした。ただし,本当の悪女というよりは,落語が原作という味も残っており,どこかユーモラスな雰囲気も出していました。

泉さんの方は,凶暴な(?)妻に支配されてい,風采のあがらない。「○○○な」(この部分が大人向けの理由でしょうか)葬儀屋役で,前半はそのとおりの雰囲気があったのですが,死神と接しているうちに,段々と自信が出てきて,格好良く見えてくる辺りが面白いと思いました。泉さんの堂々たる声は,オリジナルが落語と思えない,スケール感を作品に加えていました。

最後,死神の手先になっていることへの罪悪感に目覚めるあたりは,「落語」にない部分です。さらに,色っぽい死神のお蔭(?)で○○○は治ったようで,妻に「子ども」が出来ていました。ただし,この「子ども」の父親は,妻が若い葬儀屋との間の子ども(?)という可能性もあり,謎を残した形になっていました。

この辺の葬儀屋の妻の「たくましさ」というのは,考えてみると死神と同様とも言え,やはり男性より女性の方が絶対に生命力はあるなぁと感じました。この葬儀屋の妻約の二渡加津子さんの迫力のある歌と演技も印象的でした。

このオペラ全体としては,合唱団が大活躍していました。色々な職業の人を含む街の人びと,ヤクザ役,医者役,看護婦役,キャバレーのシーン...これだけ多彩な役柄で登場することも珍しいのではないかと思います。

池辺さんの音楽は,特に沢崎さんの歌う曲などには,ちょっとシュプレッヒシュティンメを思わせる難解な感じの曲が多かったのですが,合唱団の曲には,「ふしぎだな,ふしだな」など,親しみやすく分かりやすい曲が比較的多く,オペラ全体が暗くなるのを防いでいたと思いました。それと,今村さんの脚本自身がそうなのだと思いますが,「どこか昭和」な雰囲気が感じられ(例えば,交通事故の件数などは,現在よりずっと多かったはずです),それが味となって感じれました。

池辺さんの音楽には,現代音楽風のシリアスさと昭和風の分かりやすさが混在させることで(途中,懐メロが1曲入りましたね),オペラ全体を観やすくかつ,深みのあるものにしていたと思いました。松井慶太さん指揮の小編成のOEKも,打楽器やピアノなど多彩な楽器が加わることで,ドラマに彩りと緊迫感を加えていました。

そして,最後の場ですが,やはり,落語同様,沢山のろうそくが出てきました。人間の生命をロウソクに例えるというのは,やはり,外すわけにはいきませんね。この部分での背景に「死神マスク」がうごめく中での「ロウソク沢山」という雰囲気は,やはりこのオペラのいちばんの見せ場だと思いました。

このオペラは,何回も色々な編成で再演されてきているそうですが,人間の生命力のはかなさと逞しさの両方を感じさせてくれる点で,落語同様に名作といっても良いのではないかと思います。

前半の古今亭志ん輔さんによるオリジナル版も素晴らしいものでした。志ん輔さんの声は,口跡が良く,落語を滅多に聞かない私のようなものにも,この落語のストーリーがくっきりと伝わってきました。語り口に軽さと渋みとが両立しており,死を扱っているにも関わらず,重苦しくなくなることなく,生命のはかなさのようなものを実感できました。

というわけで,オリジナルのシンプルな味,オペラ版のスケール感の両方を楽しめた今回のような機会は大変貴重だったのではないかと思います。少々終演時間が遅くなりましたが(21:45頃,「夏休み前」特別公演といったところでしょうか),落語にぴったりの,石川県立音楽堂邦楽ホールならではの好企画だったと思いました。

PS.ロウソクは生命のたとえによく使われるのですが,実際に染色体の一部に「テロメア」というロウソクのような部分があるそうです。次のような番組で取り上げられています。個人的に,結構感心があります。

2017/07/18

OEKの今シーズン最後は井上道義指揮,ティエリー・エスケシュのオルガンによる,OEKらしいプログラム。エスケシュの自作自演の新作はオルガンのイメージを変えるような,不思議な音世界。おなじみカンタさんのチェロ独奏によるサン=サーンスも安心して楽しめました #oekjp

OEKの2016/2017定期公演フィルハーモニーシリーズのトリは,井上道義音楽監督の指揮による,石川県立音楽堂のパイプオルガンを大々的に使ったプログラムでした。プログラムの中心は,OEKの今シーズンのコンポーザー・オブ・ザ・イヤーで,オルガン奏者でもあるティエリー・エスケシュ作曲によるオルガン協奏曲第3番という新作でした。

これまで,新曲は前半に演奏されることが多かったのですが,30分以上かかる未知の曲を最後に持ってくるというのは,余程,エスケシュさんに対する信頼がないとできないことです。実際,最後の曲に相応しいスケール感とストーリーを持った作品でした。

まず,「オルガン=重厚」というイメージを壊してくれました。冒頭から,どこか可愛らしさのある高音が印象的でした。曲の方は,打楽器を大々的に使っている点も特徴で,特に金属系の打楽器とオルガンの音が重なりあうことで,「この音は一体何の音だろう?」という,電子音を思わせるような不思議な響きが続出していました。

曲は4つの部分から成っており,古い時代から現代へと,音楽の歴史を辿るといったコンセプトを持っていました。聴けば何時代の音楽か分かる...というほどの明快さはありませんでしたが,各部分ごとに違った雰囲気で作られており,全曲を通して,壮大なスケール感を感じました。

エスケシュさんの使うオルガンの音には,どこか透明感があると思いました。オルガンの音だけが盛大に目立つことはなく,オーケストラの各楽器の音と一体となって,「これまでにない音」をブレンドしているように感じました。OEKの編成自体も,いつもよりもやや大きめでしたが(トロンボーンが加わっていました),オルガンが加わることで,室内オーケストラというよりは,フル編成オーケストラのような音になっているように感じました。

エスケシュさんは,演奏会の最初に,井上道義さんが提示した主題(交響曲「未完成」をもとにした主題)による即興演奏も行いましたが,本当に多彩な音のパレットを持ったオルガン奏者だと思いました。それと音の使い方のセンスがとても良いと思いました。

今回,エスケシュさんとOEKは,中部地方を中心に,パイプオルガンを持つホールをめぐるツァーを行います。各会場のオルガンの性能や音色に応じた形で,どういう即興演奏を行うのか,楽しみですね。追っかけるわけではないので,聞き比べはできませんが,画期的な企画と言えそうです。

その他,前半ではシューベルトの「未完成」交響曲とサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。

「未完成」交響曲については,名曲中の名曲ということで,今回,井上道義さんは,ステージ下手側に弦楽器,上手側に管楽器を集めるという,非常に変則的な配置を取っていました。ただし,この配置については,数年前の北陸新人門登竜門コンサートの時に「未完成」を演奏した時も同様でした。「「未完成」については,この配置の方が良い」という確信に基づく配置だったと思います。

実際,冒頭から正面奥の高い場所に配置したチェロやコントラバスの音がとてもよく響いていました。また,弦の刻みもしっかりと聞こえてきました。管楽器の方は,上手側に集めることで,管楽器パート全体としての存在感が明確になっていたように聞こえました。「未完成」の場合,オーボエ,クラリネット,フルート,ホルンなどが第2楽章を中心に活躍しますが,その響きがとても美しく厚いと感じました。

そして何よりも,井上さんのじっくりとしたテンポ設定が印象的でした。シューベルトの晩年の作品ならではの,天国に一歩,近づいたような美しさがありました。あらためて「未完成」は良い曲だなぁと再認識しました。
前半最後は,OEKの首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんの独奏で,サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。全曲を通じて,生き生きとした音楽と流れと,ノーブルなチェロの音色を楽しむことができました。第1楽章では,一瞬,カンタさんのチェロが乱れる部分がありました。例えば私だったら(ものすごく変な例えですが...何事につけ),動揺して,その後,ムタムタ(金沢弁)になってしまう気がするのですが,カンタさんは,その後,平然と気持ち良い音楽を聞かせてくれえました。その辺のリカバリー力に,ベテラン奏者のすごさを感じました。

これでOEKの2016/2017シーズンも終了です。最後に実にOEKらしいプログラムを楽しむことができました。

2017/07/13

OEK第2ヴァイオリン奏者の若松みなみさんのヴァイオリン・リサイタル。フランクのソナタを中心にどの曲も爽快に聞かせてくれました。

先週の土曜日から,5日間で4日目となるのですが,本日は,OEKの第2ヴァイオリン奏者,若松みなみさんのリサイタルが行われたので聴いてきました。若松さんはOEKの中でも,最も若い世代の奏者で,今回が初めてのリサイタルとのことでした。というわけで,OEKファンとしては応援しないわけにはいきません。

今回のプログラムは,フランクのヴァイオリン・ソナタ,ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ,モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第25番を中心に,若松さんの演奏したい曲がしっかりと並んでいました。若松さんのヴァイオリンは,どの曲も,本当に音がしっかりと鳴っており,聴いていて惚れ惚れとしました。音が大変豊かで,音を聞くだけで幸福感を感じました。神経質な部分はなく,どの曲にも演奏する喜びが素直に表れていると感じました。

特に最後に演奏されたフランクのソナタの爽快な演奏には,若手奏者ならではの魅力が溢れていました。このところ,湿気が高く,疲労がたまり気味でしたが,週末金曜日まで働くエネルギーが湧いてきまいした。

後半の最初に,同じOEKのチェロ奏者,ソンジュン・キムさんのチェロとの二重奏で,マルティヌーのヴァイオリンとチェロのための二重奏曲第2番が演奏されました。この曲だけは,やや苦み走ったような気分があり,プログラム全体の中で,絶妙のアクセントになっていました。

前半最後に演奏された,サラサーテの「序奏とタランテラ」は,そのタイトルどおりの曲です。最初の音を聞いた瞬間,スペインの陽光が溢れてくるような気分になり,とても良い曲だと思いました。後半のタランテラの部分での技巧的な部分も気持ちよく楽しまてくれました。

ピアノのジュヌゥ・パクさんの演奏には,マイルドな包容力が感じられ,若松さんをしっかりとサポートしていました。

終演後の拍手も大変暖かいものでした。若松さんは,OEK入団後,「金沢が大好きになりました」と語っていましたが,金沢のOEKファンにもしっかりと愛されているなぁと実感しました。今後もソロや室内楽での活躍にも期待したいと思います。

2017/07/12

石川県立音楽音楽堂 室内楽シリーズ。2017年度第1回は,OEKメンバーによる七重奏曲×2曲。ベートーヴェンと「ほぼジャズ」のマルサリスの曲の組み合わせは最高。ジャズも演奏できてしまうOEKメンバーに感服 #oekjp

石川県立音楽音楽堂で行われる室内楽公演シリーズ。2017年度の第1回は,OEKメンバー等による,七重奏曲2曲が演奏されました。もともとこのシリーズでは,「大きめの室内楽」が取り上げられることが多いのですが,管・弦・打が全部揃った室内楽となると,司会の柳浦さんが語っていたとおり,「オーケストラの最少のエッセンス」のように感じられ,大変聞きごたえがありました。

前半に演奏された,ベートーヴェンの七重奏曲は,各パート1人ずつの「超室内オーケストラ」的な響きのする曲です。若い時期のベートーヴェンの作品らしく,どの楽章にも生き生きとした推進力と,前向きの明るさがありました。

この演奏で良かったのは,各メンバーの存在感がしっかりと発揮されていたことです。第1ヴァイオリンの活躍が目立つ曲なので,坂本さんが全体を引っ張っていましたが,大澤さんのチェロ,今野さんのコントバスなど,要所要所で熱い響きを聴かせてくれました。

そして,金星さんが演奏していた,バルブの付いていないホルンも威力満点でした。スケルツォをはじめとして,要所で野趣たっぷりの音を聞かせたり,ゲシュトップフト奏法による,不思議な響きを聞かせたり,これまでに聞いたことのない雰囲気を味わわせてくれました。この響きと対照的だったのが,遠藤さんのクラリネットで,大変気持ちよく,流れるような歌を聞かせてくれました。

後半に演奏された,ウィントン・マルサリス作曲の「フィードラーズ・テール」の演奏は,「OEKが本格的なジャズを演奏してしまった!」という点で画期的な演奏だったと思います。もともとは,ストラビンスキーの「兵士の物語」の組曲版と組み合わせるためにマルサリスが作曲した作品ということで,「兵士の物語」と全く同じ楽器編成(7人編成)です。ストーリー展開も,兵士の物語のパロディのような感じになっています。

「兵士の物語」でもヴァイオリンが活躍していたので,オリジナルの風味も残っていたのですが,曲が進むにつれて,マルサリス色,というかジャズ色が強くなっていくように感じました。ベートーヴェンの七重奏曲の時同様に,各奏者のソリスティックな活躍が印象的でしたが,特に藤井さんのトランペットの,マルサリスに成り切ったような,濃い演奏が最高でした。多彩なリズムを刻んでいた渡邉さんのドラムスも見事でした。

全員で演奏すると,ちょっとしたビッグバンド風に聞こえるのも面白いところでした。皆さん,当然のことながら,楽譜を見て演奏されていましたが,譜面通り演奏すると「ジャズ」になってしまうマルサリスの曲もすごいと思いました。そして,何よりも,しっかりジャズも演奏できてしまう,OEKのメンバーの適応力の高さにも感服しました。よくぞこの曲を選んでくれた,と感謝したくなりました。

アドリブがなかったのが,やはりクラシック音楽だったのかもしれませんが,今回の演奏は,是非,ジャズ音楽のファンにも聴いてもらいたかったと思います。お客さんと演奏者との距離の近さもジャズに通じる部分があると思いました。

というわけで,今後,ジャズ・ファンとクラシック音楽ファンの相互乗り入れ可能な演奏会というのを企画しても面白いかもと感じました。

2017/07/08

OEK定期Mは,「しゃべって振れる」 #辻博之 さん指揮による,モーツァルト作品集。#鳥木弥生 さん,#鷲尾麻衣 さんの華やいだ声と雰囲気とともに,名曲から珍しい曲までを堪能しました #oekjp

OEKの2016/2017定期公演マイスターシリーズでは,モーツァルトの作品を取り上げてきました。その「トリ」は,辻博之さん指揮による,モーツァルトのオペラのアリアを中心としたプログラムでした。今回の特徴は,有名アリアではなく,ソプラノとメゾ・ソプラノによる二重唱を中心とした,比較的知られていないアリアを集めていた点にあります。特にモーツァルトが14歳の時に書いた,歌劇「ポントの王ミトリダーテ」の中の二重唱で締めるというのは,考えてみると,とても大胆でした。

辻さんによる明るく,分かりやすい解説に加え,鷲尾麻衣さん,鳥木弥生さんという「華のある」2人の歌手が加わり,辻さんが語っていた「初めてモーツァルトを聞く人でも,何十年も聞いて来た人とでも楽しめるプログラム」という意図はしっかり実現されていたと思います。

演奏会の前半では,モーツァルトの交響曲第25番が演奏されました。6月末には,アビゲイル・ヤングさんの弾き振りで29番を聞いたばかりでしたが,その時同様に,室内オーケストラらしからぬ,力強さを感じさせてくれる演奏でした。辻さんは,トークの時などは大変にこやかで饒舌でしたが,この曲については,指揮棒を大きく振り下ろした瞬間に,シリアスでビシっと締まった音楽が始まり,「すごい!」と思いました。

2楽章の不安な静けさに溢れた音楽。第3楽章も悪夢に取り憑かれたような不安な気分がありましたが,トリオの部分では,完全に木管メンバーに任せ,現実にふっと戻ったような気分にさせてくれました。そして,すごく速いテンポの第4楽章,

この振幅の大きさは,実に「アマデウス的」だなぁと思いました。辻さんは,ネットで調べてみるとまだ30代前半ということです。「しゃべって振れる」指揮者ということで,今後活躍の場を広げていくのではないかと思います。

後半は「ドン・ジョヴァンニ」序曲で始まりました。辻さんとOEKは,今年の秋,映画『アマデウス』を生演奏付きで上映するという,注目の企画に参加しますが,この曲と交響曲第25番については,まさに「予告編」といったところでした。

続いて,鳥木さんと鷲尾さんが登場し,モーツァルトのオペラの中の二重唱を2曲歌いました。最初の「フィガロ」の中の「けんかの二重唱」については,どうしても,数年前に井上道義さん指揮,野田秀樹演出で観た例の和風「フィガ郎」を思い出してしまいます。その時の過激な和訳を思い出すと,今回の2人の重唱は,「女の戦い」を大変優雅に表現していたと思いました。きっと今回の方が本来の歌なのだと思います。

ちなみに今回の字幕についても,辻博之さんが担当されていました。イタリア語は分からないのですが,「超訳」といった感じの,大変分かりやすい訳だったと思います。

「コジ・ファン・トゥッテ」の中の二重唱「私あの栗色のほうがいいわ」の方は,「女子会トーク」(予告の解説の文言です)といった趣きがありました。コンサートホールで聞くお2人の声には,たっぷりとした余裕とみずみずしさがあり,2人の声がしっかり絡み合うにつれで,どこか艶っぽい気分にさせてくれました。機会があれば,是非,この2人で「コジ」の全曲を期待したいと思います。

後半の後半では,スネアドラムなどが活躍する,コントルダンス「雷雨」が間奏曲的に演奏された後,鷲尾さんによる「コジ」の中のデスピーナのアリア,鳥木さんによる,「皇帝ティートの慈悲」の中のアリアが歌われました。特に特に鳥木さんの歌ったアリアの方は,OEKのクラリネット奏者の遠藤さんによるオブリガートが,鳥木さんのドラマを秘めた声としっかり絡んでいました。これだけクラリネットが大々的に活躍するアリアも珍しいと思います。演奏会用アリアという感じの聞きごたえのある歌を楽しませくれました。

最後,上述のとおり,「ポントの王、ミトリダーテ」の中の二重唱「私が生きることがかなわなくても」が演奏されました。辻さんが「いちばん好きな二重唱」と語っていた通り,14歳の作品とは思えない立派な曲でした。段々と,2人の歌手によるコロラトゥーラの応酬のような感じになり,充実した気分で全曲を締めてくれました。

個人的には,やはり「交響曲で終わる」定期演奏会というのが好みですが,こういう「知られざる曲」を再発見させてくれる企画も面白いと思います。例えば,5月の「新音楽祭」のワクの中にあると,ぴったり来るのでは?と思わせるような演奏会でした。
というわけで,辻さんについては,企画力も含め,今後のOEKとの共演に期待したいと思います。とりあえずは11月の「アマデウスLive」が大変楽しみです。

2017/06/24

音楽堂室内楽シリーズ2017。今年は本格的な室内楽中心。最後はNAXOSでお馴染みの指揮者登場

日,OEKの定期公演に行った時,2017年度の音楽堂室内楽シリーズのチラシが置いてありました。今年は次の4回で,例年よりは「こだわりの室内楽」「やや大きめの編成の室内楽」を楽しめそうです。

以下のとおりです。

7月12日(水)19:00~ 石川県立音楽堂交流ホール
OEKチェンバー・コレクションI
マルサリス:フィドラーズ・テール
ベートーヴェン:七重奏曲
*マルサリスの曲は,ジャズ・トランペット奏者のウィントン・マルサリスが「兵士の物語」に触発されて作った曲です。OEKのメンバーを中心に,次のメンバーが登場します。
坂本久仁雄(ヴァイオリン),石黒靖典(ヴィオラ),大澤明(チェロ),今野淳(コントラバス),渡邉昭夫(打楽器),遠藤文江(クラリネット),柳浦慎史(ファゴット),金星眞(ホルン),村岡俊昴(トロンボーン)

8月22日(火)19:00~ 石川県立音楽堂交流ホール
IMA&OEKチェンバーコンサート
ラヴェル:弦楽四重奏曲
ラヴェル:序奏とアレグロ
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
フランク:ピアノ五重奏曲
*フランス系の室内楽で統一された魅力的なプログラムです。次の方々が出演します。レジス・パスキエ,ロラン・ドガレイユ,ファン・モンラ,神谷美千子,原田幸一郎(ヴァイオリン),毛利伯郎(チェロ),ハエスン・パイク(ピアノ)+OEKメンバー,平尾祐紀子(ハープ)

11月21日(火)19:00~ 石川県立音楽堂交流ホール
OEKチェンバー・コレクションII
ニールセン:木管五重奏曲
プーランク:ピアノ六重奏曲
*OEKの管楽器メンバーを中心としたプログラムです。次の方々が出演します。
松木さや(フルート),加納律子(オーボエ),遠藤文江(クラリネット),柳浦慎史(ファゴット),金星眞(ホルン),鶴見彩(ピアノ)

2月25日(日)14:00~ 石川県立音楽堂コンサートホール
ビートルズ・ゴー・バロック
ビートルズ合奏協奏曲ほか
*NAXOSレーベルにビートルズやエルヴィス・プレスリーの曲をバロック音楽風に編曲した企画ものがありますが,その編曲をしたピーター・ブレイナーさんをゲストに招き,このCDと同様の内容の演奏会が行われます。

第1回~第3回は1回2500円,第4回は3500円ですが,お得な4回セット券というのもあります。こちらは7000円です。3回以上行くならば,こちらの方が得ですね。
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アビゲイル・ヤングさんのリードによるOEK定期公演。OEK真の実力を発揮した,理想的な演奏の連続でした。全員起立での演奏は繊細かつダイナミック! #oekjp

6月のOEK定期公演マイスターシリーズの方は,OEKならではの「指揮者なし,アビゲイル・ヤングさんのリード」による公演でした。プログラムの方は,ショスタコーヴィチの室内交響曲とモーツァルトの交響曲第29番の間に,ヤングさんの独奏によるツィガーヌ。そして,ヤングさんの「お国もの」であるイギリスの作曲家,バターワースによる「青柳の堤」が演奏されました。

指揮者なしということも含め,一見,聞く前は地味なプログラムに思えましたが,逆にOEKの実力そのものをストレートに出し切った,自信に溢れた充実感を堪能させてくれるような内容となっていました。ヤングさんとOEKのつながりも,15年以上になると思います。お互いにやりたいことを知り抜いたような信頼感溢れるアンサンブルで,どの部分にも,ヤング&OEKらしい,自然なニュアンスが加わっていました。

この日のOEKは,チェロ以外は,全奏者が立って演奏していました。指揮者がいない分,全員が伸び伸びと(?)ソリストになったような気分で,ダイナミックな演奏を聞かせてくれました。心なしか,音もよく鳴っていたと感じました。

というわけで,室内オーケストラしい細かいニュアンスの豊かさと同時に,力強さが加わった,このコンビの集大成のような演奏の連続でした。

最初のショスタコーヴィチの室内交響曲は,過去,何回か聞いたことのある作品ですが,今回の演奏では,意味深な深さだけでなく,オーケストラそのものの音の豊かさと透明感としっとりとした品の良さなどをしっかりと楽しむことができました。途中出てくる「ユダヤ風のメロディ」や,強くノックするような3連音とか,強烈な部分も印象的な曲ですが,暴力的になり過ぎることはなく,「20世紀のスタンダード」と言っても良いような,強いけれども音楽的な美しさのある,まとまりの良い演奏を聞かせてくれました。

それにしても...1カ月の間に「室内交響曲」という名前の作品を2曲聞くというのは,かなり珍しい経験だったと思います。

ラヴェルのツィガーヌでは,ソリストとしてのヤングさんの力量を存分に楽しむことができました。この曲については,いしかわミュージックアカデミー(IMA)の若い奏者たちの,やる気満々の演奏で何回も聞いたことがありますが,ヤングさんの演奏は,一言でいうと,貫禄のある大人の演奏でした。曲芸のように軽快に聞かせるのではなく,全体にテンポを遅めにとって,オーケストラのメンバーと対話をするように,じっくりと聞かせてくれました。

ただし,この曲は,テンポが結構変化する作品なので,指揮者がいてくれた方が良かったかもしれません。全体にテンポが重い気はしました。

その一方で,オーケストラ伴奏版だと(IMAのときはピアノ伴奏版),ラヴェルならではの色彩感たっぷりの音を聞けるのも楽しみですね。ヴァイオリン独奏による序奏に続いて,ハープが加わってくるあたり,待ってましたという華麗さでした。ちなみにこの曲については,OEKメンバーは着席して演奏していました。

後半の最初は,バターワースの「青柳の堤」という作品が演奏されました。遠藤さんのクラリネット独奏で曲がスーッと始まった後,弦楽器による実に清冽な音楽が心地よく流れていきました。途中,木管楽器がやはりソリスティックに活躍する辺りは,田園詩的でした。初めて聞く曲でしたが,OEKがイギリス音楽をあまり取り上げてこなかったので,ヤング/OEKの「お薦め曲」的にこれからも,知られざる逸品を演奏していって欲しいと思います。

最後は,モーツァルトの交響曲第29番で締められました。この曲で締めるというのは,やや冒険的な部分があったかもしれませんが,個人的な思いとしては「理想のモーツァルト」を楽しませてくれ,まったく不満はありませんでした。上述のとおり,繊細で自然な表情の変化と伸び伸びとした躍動感のバランスが理想的で,第1楽章が始まった瞬間,「このテンポ感だ」とぴったり波長が合いました。

第2楽章では,弱音器をつけたマイルドな夢見心地を伝えてくれました。この世の世界ではないような,はかなさが大変魅力的な演奏でした。楽章の最後に出てくるオーボエの「一声」で現実に戻されるようになるのも好きです。この部分での加納さんの品の良い音も見事でした。

第3楽章から第4楽章に掛けての,躍動感のあるキレの良い演奏も見事でした。この時期のモーツァルトの作品には,ホルンに高音が出てくることが多く,「実は大変」だと思うのですが,見事な音で,弦楽器との対比を聞かせてくれました。

モーツァルトの後期の交響曲については,実は,この29番がいちばん気に入っています(ただし,現時点での順位です)。その大好きな曲を,大変爽快かつ生き生きと聞かせてくれ,演奏会全体を見事に締めてくれました。

プログラムの演奏時間的には,やや短めだったこともあり,鳴り止まない拍手に応え,アンコールとして,アーノルド(この方もイギリスの作曲家です)のシンフォニエッタ第1番の中の第3楽章が演奏されました。

「この楽しい曲は一体何という曲?」と思わせる,ちょっとラテン的な変拍子を持った曲で,ホルンも大活躍していました。この曲は...是非,全曲を演奏して欲しいものです。

というわけでこの日の演奏会を聞いて思ったのは...ヤング/OEKを指揮する指揮者には,相当の覚悟が必要なのでは,ということです。それだけ水準の高い演奏の連続でした。

2017/06/17

快晴の下,芝生の緑の美しい金沢市民芸術村でOEKメンバーによる「ふだん着ティータイムコンサート」を聞いてきました。今年の室内楽コンサートは聞いたことのない曲の連続でしたが,どの曲も楽しめました。飲み物サービスもサポート #oekjp

毎年恒例の,OEKメンバーの自主企画による無料コンサート「ふだん着ティータイムコンサート」を聞いてきました。本日の金沢は,梅雨時とは思えない(まだ入っていない?)爽やかな天候だったこともあり,会場の金沢市民芸術村は芝生や水辺で遊んだ後,コンサートに突入,といった親子連れを中心に沢山のお客さんが入っていました。
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前半の「子どものためのコンサート」は特に盛況で,オープンスペースには立ち見のお客さんもいるほどでした。
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私の方は...飲み物サービスのお手伝いをしながら聞いていました。オープンスペースの上部で,楽友会メンバーとOEKメンバーで飲み物サービスを行うのが恒例なのですが,本日は「冷たい飲み物」の準備が遅れ気味になっており,少々バタバタしていましたので,ついつい色々とお手伝いをしました。オーボエの加納さんと一緒に,ホット・コーヒーをポットに移す作業したのですが,良い思い出(?)になりました。

コンサートの方は,例年の内容とほぼ同じ形で,ファゴットの柳浦さんの司会で,楽器紹介を交えて,親しみやすい曲が演奏されて行きました。今回の注目は...チェロの早川さんが,なぜかトロンボーン奏者として出演されていたことでしょうか。
1分間指揮者コーナーでは,今年も色々な「飛び入り指揮者」が登場し,色々なテンポで,ラデツキー行進曲とベートーヴェンの「運命」が演奏されました。意外なことに,最初に登場した,幼稚園児がいちばん「オーソドックス」なテンポだったと思います。ブラーボ!最後に「てのひらを太陽に」を皆で歌って,最初のコーナーは終了しました。

休憩後は,ミュージック工房に場所を変え,「室内楽コンサート」が行われました。2回休憩をはさみ,約2時間半行われたのですが,何と演奏された曲全部,初めて聞く曲でした。私も色々演奏会に出かけていますが,これだけ渋い曲が並ぶのも珍しいことです。ちなみに次のとおりです。
  • マーズ/ディヴェルティメントから(松木(フルート),遠藤(クラリネット),柳浦(ファゴット)
  • ヴィトマン/デュオ(ドゥミヤック(ヴァイオリン),大澤(チェロ)
  • ドホナーニ/弦楽三重奏曲「セレナ-デ」(若松(ヴァイオリン),古宮山(ヴィオラ),キム(チェロ)
  • パーカッション二重奏 3曲(渡邉,望月(パーカッション))
  • ファッシュ/ソナタ ヘ長調(加納,水谷(オーボエ),渡邉,柳浦(ファゴット))
  • シュルホフ/コンチェルティーノより(松木(フルート),石黒(ヴィオラ),今野(コントラバス))
  • クンマー=シューベルト/ウィリアム・テルの主題によるデュオコンチェルタンテ(坂本(ヴァイオリン),大澤(チェロ))
  • ヒンデミット/小室内楽(松木(フルート),加納(オーボエ),遠藤(クラリネット),柳浦(ファゴット),金星(ホルン))
こういった曲を,前半のコンサートからの流れでお子さんも一緒に聞いている,という光景が素晴らしかったですね。それと,一見,難解そうに思えるラインナップですが,予想以上に分かりやすい曲が多く,どの曲も楽しむことができました。室内楽といっても,いちばんの定番である弦楽四重奏が入っていないのも面白いところです。
毎回感じるのですが,至近距離で聞くプロの演奏は,曲の知名度に関わらず,聞く人を引き付ける迫力を持っていると思いました。
個人的には,最後に演奏されたヒンデミットの曲の見事にがっちりとまとまった聞きごたえのある響きが特に印象に残りましたが,本当にどの曲にも聞きどころがありました。「打楽器小ネタ集」という趣きのあった渡邉さんと望月さんのステージ,ピッコロとヴィオラとコントラバスという奇想天外の編成のシュルホフの作品,異様にきらびやかで華麗だけどどこかB級の味わいもある,坂本さんと大澤さんによるクンマーなど,この演奏会ならではの楽しめる作品が並んでいました。
というわけで,天気同様,大変気持ちの良く過ごすことのできた土曜日の午後でした。
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2017/06/02

OEK定期公演にハインツ・ホリガーさん初登場。迷いのない表現が徹底した,冷静で熱い表現の詰まった演奏会。1回で終わるにはもったいないかも #oekjo

6月のOEK定期公演には,恐らく,現在世界で最も有名なオーボエ奏者,ハインツ・ホリガーさんが登場しました。ホリガーさんは,昨年の定期公演に登場したイェルク・ヴィトマンさん同様,マルチ・タレントなアーティストです。ヴィトマンさんの時同様,管楽器奏者兼指揮者兼作曲家による,定期公演ということで,その「3つの顔」を反映した,非常にチャレンジングなプログラムでした。

ホリガーさんは,1939年生まれということで70代後半ですが,ステージに登場した雰囲気には,全く老いた雰囲気はなく,ホリガーさんらしさが,隅々まで徹底した,4曲を聞かせてくれました。

プログラムの最初で演奏された,ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」は,少々ぶっきらぼうなぐらいの速目のテンポで第1楽章序奏が始まった後,所々で独特の意味深さを感じさせてくれる,不思議な魅力を持った音楽を聞かせてくれました。テンポをぐっと遅くする部分もありましたが,ロマンティックで甘い雰囲気になることは全くなく,どこか,現代音楽を聞いているような雰囲気のあるハイドンだと思いました。

次に演奏されたフィアラのコンチェルタンテは,オーボエとイングリッシュホルンのソロをまじえた古典派時代の二重協奏曲的な作品でした。ホリガーさんのオーボエの音は,音質も音の動きも大変軽やかでした。さすがに抜けるような音,という感じではなく,やや枯れた感じもありましたが,イングリッシュホルンのマリー=リーゼ・シュプバッハさんとの音のバランスが素晴らしく,音楽全体に豊かさが溢れていました。

アンコールで,ホリガーさんの自作による,オーボエとイングリッシュホルンのための「エア」という小品が演奏されました。いわゆる「現代音楽」風の作品だったのですが,そのすべての音が生きている感じで,大変雄弁でした。

後半もまず,ホリガーさんの自作のメタ・アルカという弦楽合奏のための作品が演奏されました。最初の方を聞いた感じでは,武満徹の作品を思わせるような,詩的て異様なムードを感じましたが,次第に色々な特殊奏法が出てきて,次々と曲のテクスチュアが変化していきました。自作自演ということで(他の作品でも同様でしたが),表現の迷いが全くなく,難解さはあったものの,どこかスカッと割り切れているような心地よさを感じました。

この日のゲストコンサートマスターは,東京フィルの荒井英治さんでした。この曲ではソロも担当しており,エネルギーをしっかり秘めた,怪しい美しさを持った素晴らしい演奏を聞かせてくれました。

最後に演奏された,シェーンベルクの室内交響曲第1番は,シェーンベルクが12音技法を用いるようになる前の初期の作品です。ただし,弦5部1名ずつにかなり充実した木管楽器群が加わる独特の編成で,薄いのか厚いのか分からない面白い響きを楽しむことができました。

15人程度の編成ということで,曲の最初の部分から透明感がありました。全奏者がソリストのように,音が前へ前へと出てくる感じで,大変生き生きした演奏を聞かせてくれました。この曲については,複雑な音の動きが難解さにつがなっている部分もありましたが,その複雑さを複雑のままクリアに表現しており,大変聞きごたえがありました。

演奏後,ホリガーさんは,全奏者と一人ずつ握手をして,その苦労(?)を労っていました。一緒に難曲に取り組んだ「同志」といった感じの熱さを演奏の背後に感じました。ホリガーさんについては,クールで神経質な雰囲気かなと勝手に予想していたのですが,実際には,出てくる音楽は確かに冷静で確固たるものがあるけれども,その背後には熱いエネルギーに満ち溢れているのでは,と感じました。
今回の定期公演は,大変チャレンジングな内容でしたが,結果として,狙いどおり,いくつもの顔を持つホリガーさんらしさを多面的に楽しむことができました。この日の定期公演1回の演奏で終わらせるには,もったいないぐらいの充実感のある演奏会だったと思いました。

2017/05/14

第16回北陸新人登竜門コンサート<ピアノ部門> 川畑夕姫さん,尾田奈々帆さんが井上道義指揮OEKと共演。万全のシューマンとサン=サーンスを楽しみました。 #oekjp

毎年,4~5月頃に行われている北陸地方の新人演奏家発掘のための新人登竜門コンサート。第16回目となる今回はピアノ部門が行われ,尾田奈々帆さん(石川県出身)と川畑夕姫さん(富山県出身)のお2人が登場し,井上道義指揮OEKと共演しました。
新しく始まった「ガル祭」が終了して1週間ほどで行われた演奏会でしたが,ピアノを習っている子供連れのお客さんなどが多い感じで,お客さんの方にもどこか若々しい気分がありました。
お2人が演奏したのは,川畑さんがシューマンのピアノ協奏曲,尾田さんがサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」でした。どちらも大変立派な演奏でした。井上道義さんが途中のトークで「若い人の伸びは素晴らしい!」語っていたとおり,この演奏会に向けて万全の仕上がりの演奏を楽しむことができました。
シューマンの方は,昨年からOEKが2回別のピアニストと演奏していますが,今回の川畑さんとの演奏は,それとは違った魅力がありました。第1楽章などは,全般にゆったりとしたテンポで,どこかおっとりとした優雅さが感じられました。速いパッセージが続く第3楽章の最後の方は,特に好きな部分です。今回の川畑さんの演奏を聞きながら,じわじわと熱くなってきました。演奏全体を通じて,OEKと一体となって,若々しく華やいだロマンの世界を伝えてくれました。
尾田さんの方は,OEKが過去ほとんど演奏したことのない,サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を演奏しました。尾田さんは,東京芸術大学で勉強中の大学生なのですが,まったく物怖じすることなく,演奏効果満点の曲を堂々と弾き切ってくれました。本当に伸び盛りといった雰囲気のある演奏でした。
第2楽章のエキゾティックなムード(この辺は正真正銘のエジプト風というよりは,サン=サーンスが感じた自称「エジプト風」のようですが),は音による「世界の車窓から」といったムード満点がありました。それに続く第3楽章での元気のある演奏は,お客さんを魅了したのではないかと思います。曲の最後の部分の華やかなパッセージの鮮やかさが特に印象的でした。
尾田さんは,とても小柄で,演奏後はとてもニコニコしていたので,聞いている方も幸せな気分にさせてくれました。「明日から仕事...」と思いがちな日曜の午後に聞くにはぴったりの演奏だったと思います。
この2曲だけだと,演奏時間が短いので,前半最初にはメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」序曲,後半最初にはサン=サーンスの交響詩「死の舞踏」が演奏されました。どちらも「大変よく出来た曲」です。約2カ月ぶりに井上さんの指揮を聞きましたが,その魅力を十全に楽しませてくれました。
メンデルスゾーンの序曲は,本当にこの時期にぴったりの空気感を持った作品です。この演奏会には,自転車で行ったのですが,明るい緑の中を風を切って走るようなムードを感じました。サン=サーンスの方は,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんが大活躍でした。独特の調律をしたヴァイオリンを使った演奏で大変雄弁な演奏を楽しませてくれました。
この新人登竜門コンサートですが,入場料1000円の演奏会ということで,「オーケストラの演奏会をちょっと聞いてみたいのですが」という人にぴったりな気もします。久しぶりに井上さんの「踊るような」(今年のラ・フォル・ジュルネのテーマ)指揮にも接することができ,大満足の演奏会でした。

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