OEKのCD

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コンサート

2019/10/12

マルク・ミンコフスキ指揮OEK マイスター定期は増強した編成によるドヴォルザーク特集。スラヴ舞曲op.72全曲と「新世界から」は,どちらも「ドヴォルザーク愛」にあふれた,熱くて深い演奏。外の雨とは「別世界」でミンコフスキさん音楽に浸ってきました。

本日は台風が関東・東海地方に迫る中,OEKの芸術監督,マルク・ミンコフスキ指揮によるマイスター定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。プログラムは協奏曲なしのミンコフスキさんの指揮を楽しむプログラム。前半がドヴォルザークのスラヴ舞曲作品72(全曲),後半がドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」というドヴォルザーク特集でした。

ミンコフスキさんとドヴォルザークという組み合わせは,意外な気はしましたが,前半後半とも,ミンコフスキさんの「ドヴォルザークへの愛」が伝わってくるような,素晴らしい演奏でした。

前半のスラヴ舞曲集は,CDはかなり出ていますが,実演でこれだけまとまって演奏されることは珍しいと思います。特に,作品46の「続編」である,作品72の8曲の方は,超有名曲の72-2以外は,知る人ぞ知るといった曲が多いのではないかと思います。私自身,作品72の全曲を実演で聞くのは初めてでしたが,「スラヴ組曲」といった感じの多様性を感じさせる,聴きごたえのある演奏になっていたと思います。

もともとスラヴ舞曲の方は,速いテンポの舞曲とゆったりしたテンポの曲がバランス良く混ざっています。今回のOEKは弦楽器をかなり増強しており,12-10-8-8-4というフルオーケストラに近い編成でした。そのことにより音の重量感が増していました。その一方で,ミンコフスキの指揮は演奏全体にエネルギーを与えるような感じで,重量感とキレの良い動きが見事に合体していました。

曲の中では,最後の第8番が特に素晴らしい演奏だったと思います。夢見心地のようなしっとりとした気分のある演奏で,第1番~第7番までの生き生きとした世界を美しく,懐かしく振り返っていました。

後半はお馴染みの「新世界から」。ホールの外は,雨が降り続いていましたが,ホールの中は「別世界」。ミンコフスキさんの指揮にもお馴染みの曲に,新たなエネルギーを注入したような,気合い十分の演奏。「別世界から」という演奏だったと思いました。

前半のスラヴ舞曲同様,どの部分にもミンコフスキさんの「ドヴォルザーク愛」が感じられ,それがOEKの演奏のエネルギーになっていました。この日のコンサートミストレスは,アビゲイル・ヤングさんでしたが,そのお隣には水谷晃さん。チェロの首席奏者の方は客演の辻本玲さん。演奏全体を通じて,各パートが競い合いながらも一体となって盛り上がるような「熱気」がありました。

その一方,静かな楽章では,じっくりと間を取る部分があり,その「静けさ」に凄みを感じました。OEKにとって,「新世界から」は頻繁に演奏できる曲ではありません。恐らく,ミンコフスキさんにとっても,新たなレパートリーなのではないかと思います。その新鮮さが,「熱さ」と「深さ」につながっていた気がしました。

というわけで,雨の中出かけてきて,本当に良かったと思いました。この日の演奏会は北陸朝日放送が収録を行っていましたが,そろそろ,ミンコフスキさん指揮OEKによるCD録音を期待したいと思わせるような素晴らしい演奏会でした。

2019/10/01

今晩は,石川県立音楽堂で アンサンブル・ウィーン=ベルリン と アンサンブル金沢 の饗宴による贅沢なモーツァルト尽くしを楽しんで来ました。最後に演奏された,名優のセリフが延々と続くような協奏交響曲を聞いて,満腹しました。さすがのアンサンブルでした

今晩は,ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一環で行われた,アンサンブル・ウィーン=ベルリンとユベール・スダーンさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるモーツァルト尽くしの演奏会を聞いてきました。

アンサンブル・ウィーン=ベルリンは,ウィーン・フィルとベルリン・フィルの首席管楽器奏者を中心とした木管五重奏団です。管楽器のソリストとOEKの共演ならば,過去何回もありましたが,管楽アンサンブルとOEKとの共演というのは初めてのことかもしれません。超有名な2つのヴィルトーゾ・オーケストラの首席奏者たちとOEKの共演ということで,お客さんだけではなく,OEKメンバーにとってもスリリングな公演だったのではないでしょうか。

まず,5人の奏者を歓迎するように,OEKお得意のモーツァルトの「ハフナー」交響曲がビシっと演奏されました。今回はバロック・ティンパニを使っていたこともあり,スダーンさんが指揮するモーツァルトには,古楽奏法を思わせるような響きがありました。ビシッと引き締まった雰囲気の中,さらっと流れるような雰囲気もあり,開演にぴったりの華やかさと軽やかさがありました。

続いて,アンサンブル・ウィーン=ベルリンの5人が登場し,モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」」の中の5つの曲を木管五重奏に編曲したものが演奏されました。当初はモーツァルトの木管五重奏曲(弦楽五重奏を木管で演奏する編曲)の予定でしたが,演奏時間的に見ると,「コジ・ファン・トゥッテ」の方が丁度良いのではないかと思いました。

この演奏を聞いて,まず5人の奏者が作り出す,スケール感が素晴らしいと思いました。5人による演奏にも関わらず,「オーケストラが演奏を始めた?」と思わせる,豊かさを感じました。途中の曲では,5人の奏者それぞれが対話をするように進んだり,各奏者の華やかな見せ場があったり,全く退屈しませんでした。複数のオーケストラのメンバーによるアンサンブルとは思えないほど,演奏全体に安定感とまとまりがあるのに加え,上述のようなスケール感もあり,安心してモーツァルトのオペラの世界に身を任すことができました。

後半はOEKとアンサンブル・ウィーン=ベルリンとの共演になりました。最後に演奏される協奏交響曲K.297b(モーツァルトの作品なのか疑われているけれども,とても良い曲で,有名な作品)には,オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルンのみが参加するということで,まず,フルート協奏曲第1番が演奏されました。

カール=ハインツ・シュッツさんの演奏からは,どこまでも広がっていくような,伸びやかな自由さを感じました。音自体は引き締まっており,古典派の作品らしい,まとまりの良さがあるのも良いなぁと思いました。

演奏会の最後に演奏された,協奏交響曲には,トリに相応しい華麗な気分がありました。くっきり,バシッと決まったジョナサン・ケリーさんのオーボエ,明るく楽天的な心地よさのあったアンドレアス・オッテンザマーさんのクラリネット,楽々と柔らかい音を操るシュテファン・ドールさんのホルン,そして,存在感たっぷりだけれども,しっかりと全体を包み込むようなリヒャルト・ガラーさんのファゴット。闊達に対話をするように演奏する一方で,しっかり,OEKと溶け合うようなオーケストラ的な音を聞かせてくれました。

最終楽章は変奏曲形式ですが,この4人の奏者による名人芸やアンサンブルが,これでもかこれでもかと続く贅沢さがあり,すっかり満腹という感じになりました。この日のお客さんの数は,もったいないことにあまり多くなかったのですが,盛大な拍手が続き,皆さん大満足といった感じで演奏会は終了しました。

ベルリン・フィルやウィーン・フィルのメンバーとOEKとは,ヴェンツェル・フックスさんをはじめとして,結構頻繁に共演をしていますが,木管アンサンブルとオーケストラの共演には,また格別の面白さと贅沢さがあると感じました。

2019/09/17

#朝日新聞 プレゼンツ「オーケストラ・アンサンブル金沢 おしゃべりクラシック」#松木さや #永野光太郎 フルート,チェンバロ,ピアノによる優雅な時間。リーズナブルで贅沢な演奏会でした

本日は午後から休みを取って,「朝日新聞プレゼンツ オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK) おしゃべりクラシック」を聞いてきました。出演したのは,OEKのフルート奏者,松木さやさんとピアノ,チェンバロ奏者の永野光太郎さんでした。この「おしゃべりクラシック」シリーズには以前から関心があったのですが,なかなか行くことができなかったのですが,まだ「夏休みモード」が残っている時期ということで,休暇を取って,約1時間,石川県立音楽堂交流ホールでゆったりと楽しんできました。

チラシの感じだと,松木さんが主役,というイメージだったのですが,実は永野さんの方も大活躍で,フルートとチェンバロのための作品2曲,フルートとピアノのための作品1曲に加え,ピアノ独奏のための小品が2曲演奏されました。というわけで永野さんの方が出ずっぱりでした。

今回,フルートで演奏された作品は,モーツァルトとJ.S.バッハ(不確実なのですが)のソナタとフランスのヴィドールによる組曲でした。標題のついた曲がなかったので一見地味目でしたが,松木さんのフルートには,いつもどおりの余裕たっぷりの美しさが溢れていました。不自由な部分が全くないような健康的な気分と優雅な世界を満喫することができました。音量の小さなチェンバロとの共演の曲でも,しっかりと音量的なバランスが取れており,伸びやかさだけでなく抑制された美しさも味わうことができました。

特にモーツァルトのソナタK.14(モーツァルト8歳!の時の作品)の最終楽章では,チェンバロは,非常に繊細な音を使っており,フルートの音色とあいまって,小さな宝物を丁寧に扱うような美しさを味わうことができました。

伝バッハの曲も「オブリガートチェンバロのための作品(右手パートもしっかり楽譜に書かれている作品)」ということで,チェンバロとフルートのコラボレーションを楽しむことができました。この曲では,第2楽章のシチリアーノのかげりのあるメロディが大変有名です。松木さんの息の長い,流麗さのある演奏でたっぷりと楽しむことができました。

その後,永野さんのピアノ独奏でショパンのピアノ小品が2曲演奏されました。チェンバロの音も良いのですが,やはりピアノの音を聞くと,落ち着きます。特に「やさしい雨」が降り注いでいるような感じの「雨だれ」は,平日の午後に聞くのにぴったりだと思いました。

最後に演奏されたのは,松木さんお気に入りのヴィドールの組曲でした。組曲というタイトルになっていますが,楽章の構成的にはソナタと同様だと思いました。初めて聞く曲でしたが,各楽章のキャラクターの違いが鮮明で,大変親しみやすい作品でした。どの楽章もメロディが美しく,隠れた名曲(もしかしたらフルート界では有名な曲なのかもしれませんが)だと思いました。チェンバロとの共演の時と比べ,音域的にも広くなり,演奏全体の伸びやかさもさらにアップしている感じでした。

アンコールでは,ドビュッシーの「小組曲」の中の「小舟にて」がじっくりと演奏されました。この曲はオーケストラ版では何回も聞いたこともありますが,今回の演奏では,いつもにも増して,松木さんのフルートの美しさを堪能できました。

というわけで,聴きごたえ十分でした。ホテルのレストランがランチタイムの時だけ,夜の時間帯よりもリーズナブルな価格設定でメニューを提供する,というのは良くありますが,今回の公演の料金は,何と500円。その雰囲気のある演奏会だと思いました。お客さんもとてもよく入っていました。というわけで,今後も平日午後の公演も「要チェック」と言えそうです。機会があれば,また,このシリーズを聞きにきたいと思います。

2019/09/07

オーケストラ・アンサンブル金沢 高岡特別公演 with #合唱団OEKとやま #山下一史 さんの指揮でコダーイのミサ・ブレヴィス,ブダ城のテ・デウムなど挑戦的なレパートリーを楽しんできました。「歌いたい」という意欲がしっかり伝わる演奏でした。 #oekjp

本日は富山県の高岡市で行われた,オーケストラ・アンサンブル金沢 高岡特別公演 with 合唱団OEKとやまを聞いてきました。この公演は,過去2回は,8月末に富山市で行われていましたが,今回は少し時期が遅くなり,場所を高岡市に変えて行われました。

この合唱団の前身の「合唱団おおやま」との共演の時は,あまり知られていない作曲家による「知る人ぞ知るレクイエム」の名作を取り上げるのが恒例でしたが,一昨年,「合唱団OEKとやま」の名称に変わってからは,ヴェルディのレクイエム,ベートーヴェンのミサ・ソレムニスとメジャーな路線に変更した感じでした。今年はどうなるのかな...と思っていたのですが,今年度はしっかり(?)当初のマイナー路線に戻ってくれました。

メインで演奏されたのは,20世紀ハンガリーの作曲家,コダーイによる,ミサ・ブレヴィス(小ミサ曲)でした。コダーイは,有名な作曲家ですが,そのミサ曲となると,北陸地方で演奏される機会はほとんどないと思います。選曲については,いつも合唱団側から出されているようですが,最初,指揮の山下一史さんが「本当にできる?」と言ってしまったぐらいに難しい作品とのことです。

この作品が後半に演奏されましたが,非常に良い曲だと思いました。そして,「歌いたい」という意欲が伝わってくる素晴らしい演奏だったと思いました。「小ミサ曲」ということで,ミサ曲にしては,やや小ぶりでしたが,それでも30分以上はありました。楽器編成的には,ミサ曲には定番のトロンボーン3本に加え,テューバも入っていました。トランペット3本,ホルンも4本ということで,OEKの編成は金管楽器がかなり増強されていたことになります。こういった楽器が加わることで,OEKは冒頭からパイプオルガン的な響きを出していました。

曲の雰囲気的は,予想していたよりもオーソドックスな感じでした。ハンガリー風という感じはそれほどしませんでした。グローリア,クレドといった曲の最初の一節はテノールが語るように歌うあたり,本物のミサ(参加したことはないのですが)の気分がありました。歌詞の内容に沿って,曲想が変わっていく感じもオーソドックスな部分がありましたが,やはり20世紀の作品ということで,音のダイナミックレンジが広く,変化に富んだサウンドを楽しむことができました。

合唱団の方は,自身で選曲しただけあって,「歌いたい」という意欲がしっかりとした声となって伝わってきました。大編成のオーケストラに負けない力を感じました。OEKとのバランスの良さは,22回も共演している,この合唱団とOEKのつながりの強さによると思いました。

この曲は第2次世界大戦の末期に書かれ,演奏されているのですが,終盤の楽章に出てくる「平和への祈り」が特に切実なものに感じられました。「アニュス・デイ」で終わるのも良いのですが,この曲では「イテ・ミサ・エスト」という「平和を与えてくれた神に感謝」する楽章で終わっていました。作曲当時の状況を考えると,少し不安で不穏な雰囲気を持ちながらも,希望を感じさせ,聞き手を励ますような歌だったと感じました。

こういう素晴らしい曲を実演で聞けたことに感謝したいと思います。

前半でも,もう1曲コダーイ作曲による「ブダ城のテ・デウム」という作品が演奏されました。こちらの方はもう少しコンパクトな作品でしたが,ミサ・ブレヴィスと全く同じ編成で,充実した響きに満たされた,聴きごたえのある作品でした。何よりも,全体の雰囲気がとても格好良いと思いました。

この2曲のコダーイの作品には,4人のソリストも登場しましたが,それぞれ,瑞々しさがあり,宗教音楽に相応しい雰囲気があると思いました。特に,「テ・デウム」の最後の部分に出てきた,ソプラノの金川睦美さんのソロが印象的でした。曲の最後がソロになることで,祈りの気分がより切実なものに感じられました。金川さんの声には,あふれるような感動がこめられていました。

コダーイの2曲については,機会があれば再度聞いてみたいと思いました。

演奏会の最初には,富山県出身の作曲家,岩河三郎さんによる「富山に伝わる三つの民謡」という合唱とオーケストラのための作品が演奏されました。民謡を素材にした曲ということで,コダーイの曲と組み合わせるのにぴったりだと思いました。

この作品は,簡単に言うと富山県の3つの民謡を合唱曲に編曲したものなのですが,民謡本体の前に,イメージを含ませるような序奏的な部分が付いているのが特徴です。オリジナルの歌詞も付いているので,ジャズのスタンダードナンバーで言うところの「ヴァース」のような感じのイメージに近いと思いました。

全体の雰囲気は,少し懐かしさを感じさせるぐらい親しみやすさがあり,各曲とも気持ちよく盛り上がります。聞いていても心地良かったのですが,歌っていても気持ちの良い作品なのでは,と思いました。富山県の合唱団にとっては,特に大切な作品なのではと思いました。石川県にも,こういう合唱曲が欲しいな,とも思ったのですが,「越中おわら」と「こきりこ」に匹敵するような有名な民謡は石川県にはないかもしれないですね(山中節ぐらい?)。

ちなみに,この日のOEKは,金管楽器をはじめとして客演の方が多かったのですが,コンサートマスターがベルリン・フィルの町田琴和さん,ヴィオラのトップが東京フィルの須田祥子さん,チェロのトップがルドヴィート・カンタさんと,お馴染みの有名ソリストが集まっている感じで,万全の演奏だったと思います。ティンパニも常連の客演奏者の菅原淳さんが担当していましたが,特にコダーイの2曲では,パイプオルガンのペダルのような音をしっかり表現しており,素晴らしいと思いました。

今回の会場の高岡文化ホールに行くのは初めてだったのですが,大きさ的にはOEKにぴったりのサイズでした。多目的ホールということで,もう少し残響があると良いかなと思いましたが,その分,各楽器の音がしっかりと聞こえて来て,特に管楽器のソロなどをしっかり楽しむことができました(「こきりこ」の部分での,松木さんのフルートソロなどが特に印象的でした)。

本日は実験的に北陸自動車道も国道8号線も使わず,「山の方」から車で高岡に行ってみたのですが,我が家からは70分ほどで到着しました。駐車料金も掛からなかったので,今後も機会があれば,高岡には来てみたいなと思いました。

この公演が終わると,「夏の終わり」の気分になります。ここ数日,再度,夏の暑さが復活してきているのですが,行き帰りのドライブも含め,気持ちよく夏の最後の休日を楽しむことができました。

2019/07/18

#パトリック・ハーン 指揮OEK定期公演は,弦楽合奏を中心とした,シンメトリカルな構成のOEKならではのプログラム。#辻井伸行 #ルシエンヌ と共演したショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は,美しさだけではなく,凄みのある鮮やかさを実感できる素晴らしい演奏。 #oekjp

本日はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2018/2019シーズンの最後となる,フィルハーモニー定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。指揮は,定期公演初登場のパトリック・ハーンさん,ピアノ独奏は,お馴染みの辻井伸行さん,トランペット独奏は,ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリさんでした。

6月以降のOEKの定期公演では,若い指揮者が次々登場しているのですが,ハーンさんはまだ24歳。定期公演に登場する指揮者としては異例の若さです。ルシエンヌさんに至っては,まだ10代(のはず)。何と辻井さんがいちばん年輩という,若いアーティストたちとOEKの共演ということになりました。この3人のコラボレーションが本当に素晴らしいものでした。人気の辻井さんが登場するとあって,会場は大入り満員(心なしか,いつもよりホールの残響が少なく感じるほどでした)。シーズンの最後は大いに盛り上がりました。

プログラムは,3曲演奏されたうち,最初と最後に,弦楽合奏によるディヴェルティメントとセレナードを配し,その間にショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を入れるというシンメトリカルな構成になっていました。ショスタコーヴィチの曲も弦楽オーケストラのための曲で,そこにピアノとトランペットが加わる形になります。

どの曲についても,ハーンさんの指揮ぶりには,安心感がありました。熟練の指揮ぶりといった感じでした。バルトークもチャイコフスキーも,冒頭部分を大げさに演奏できる曲ですが,両曲とも,しっかりと抑制された感じで始まりました。その一方,細かなニュアンスの変化が非常に丁寧に付けられており,全曲に渡って,目の詰んだ高級な着物を観ているような,職人技の素晴らしさのようなものを感じることができました。バルトークの第2楽章での,充実した響きが特に素晴らしいと思いました。

チャイコフスキーは,音楽自体に常に推進力があり,落ち着いた雰囲気で始まった,段々とノリ良く音楽が進んでいく心地よさがありました。対照的に,儚げな美しさに溢れた第3楽章の美しさも印象的でした。第2楽章ワルツでの,ちょっと粋な感じの歌わせ方も印象的でした。ハーンさんは,楽章の最後の部分など,大げさなタメを作って締めるのではなく,それを避けるように,すっきりと締めていました。この辺に20代前半の指揮者ならではの,新鮮さを感じました。

そして,協奏曲も素晴らしい演奏でした。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は,過去,OEKは何回も演奏してきましたが,その中でも特に素晴らしい演奏だったと思います。まず,第1楽章の最初の部分での,辻井さんのピアノの深々とした音が素晴らしかったですね。その後,めまぐるしく曲想を変えていくのですが,この最初の部分の迫力のある雰囲気があったので,全曲に安定感があったと思いました。ショスタコーヴィチの音楽については,どこかひねくれた気分を感じるのですが,辻井さんの率直さのある演奏で聞くと,ロシアのピアノ協奏曲の伝統を引く曲なのだな,と感じさせてくれる部分もあると思いました。

辻井さんのピアノに絡む,ルシエンヌさんのトランペットの音も見事でした。非常に柔らかい音で,しっかりと存在感を示しながらも,ピアノやオーケストラと見事に溶け合っていました。これだけしっかりとコントロールされたトランペットの音というのは,なかなか聞けないのではと思いました。

緩徐楽章では,いつもどおり,辻井さんのピアノのタッチの美しさを堪能できました。以前,OEKと共演した,ラヴェルのピアノ協奏曲の時よりも,さらに深い音楽を聞かせてくれたと思いました。ショスタコーヴィチの音楽の持つ,ひんやりとした感じにぴったりの音楽を聞かせてくれました。

第4楽章は,ショスタコーヴィチならではの,皮肉やユーモアを交えた,故意にドタバタしたムードにした音楽なのですが,辻井さんのピアノは,とにかく鮮やかで,テンポが上がっても慌てた感じになりません。楽々と演奏するルシエンヌさんのピアノと合わせて,非常にクールな演奏を聞かせてくれました。若い世代による,格好良い,ショスタコーヴィチという感じでした。

アンコールでは,ガーシュインのプレリュード第1番(オリジナルはピアノ独奏曲)が,辻井さんとルシエンヌさんのデュオで演奏されました。この曲では,ルシエンヌさんは大変伸びやかな音で演奏し,辻井さんはしっかりとベースを支えていました。

演奏後,ルシエンヌさんと辻井さんは,手に手を取って,ステージと袖の間を往復していましたが,その姿が何とも言えず微笑ましく感じました。本日と同様のプログラムで,OEKは国内ツァーを行いますが,是非,大勢の人に楽しんでもらいたいものです。

というわけで,今シーズンのOEK定期公演は,3人の実力十分の若手の饗宴で締めくくられました。8月は,OEK単独の公演はお休みですが,9月以降の新シーズンでも,若手とベテランとがうまく組み合わされた,多彩な公演に期待したいと思います。

2019/07/06

OEK定期公演にマルク・ミンコフスキさん登場。ブラームスのセレナード第1番という一見地味目の作品を,生気に溢れる演奏で楽しませてくれました。クリストフ・コンツさんとの共演によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲も申し分のない素晴らしさ

本日は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の芸術監督,マルク・ミンコフスキさん指揮によるマイスター定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いて来ました。

ミンコフスキさんは,実質的には,昨年7月末に行われた,ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」公演で芸術監督に就任したのですが,その後,約1年間出番がありませんでした。今回は,待望の公演ということになります。前回はオペラ公演での指揮でしたので,通常のオーケストラのみによる演奏会となると,さらに久しぶりということになります。

今回は,ブラームスのセレナード第1番ニ長調がメインプログラム。前半は,その気分にあわせるかのように,同じ調性で書かれたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。どちらも重厚で暗いイメージのある両作曲家の作品の中では,明るく穏やかな性格を持つ曲です。本日の素晴らしい演奏を聞いて,満を持して登場したミンコフスキさんが,「OEKにぴったり」と考えて選曲したプログラムだったのだな,と改めて思いました。両曲とも45分程度かかる曲でしたので,聴きごたえも十分でした。

前半に演奏されたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲では,ソリストとしてクリストフ・コンツが登場しました。コンツさんは,ウィーン・フィルの第2ヴァイオリンの首席奏者なのですが,近年は指揮者,ソリストとしても活躍の場を広げているとのことです。ミンコフスキさんは,自分が信頼する,若いアーティストを次々と金沢に連れてきていますが,コンツさんもその一人だと思います。

コンツさんの演奏には,どの部分にも瑞々しさがありました。演奏は,非常に丁寧で,「とても育ちの良い」雰囲気がありました。第1楽章と第2楽章は,正統的で堂々たる弾きっぷり,第3楽章は若々しくキリっと演奏していましたが,急速なテンポになっても乱雑な感じにならないのが素晴らしいと思いました。

ミンコフスキ指揮OEKの演奏も万全でした。ミンコフスキさんの指揮からは,音楽に生気を加えるようなエネルギーの大きさを感じました。そのオーラが,OEKの演奏だけでなく,コンツさんの演奏にも広がっていたと思いました。この曲では,ファゴットも結構活躍するのですが,この日のエキストラの奏者の方のくっきりとソリストに寄り添うような演奏が素晴らしいと思いました。

ちなみに,ミンコフスキさんは,結構,手を高く上げて指揮することがあったのですが...ポーズをしばらく止めることが何回かあったので...右手を斜め上に上げて止めるポーズはウルトラ・マン(?)に変身するときのポーズに似ているのでは...変なことを考えながら聞いていました(古い話題で失礼しました)。

後半のブラームスのセレナード第1番は,しばらく前に故オリバー・ナッセンさん指揮の定期公演でも聞いたことがありますが,今回のミンコフスキさん指揮の演奏は,さらに生気に溢れる演奏だったと思いました。

第1楽章は,低弦が支える上で,ホルンが鼻唄風のメロディを演奏して始まるのですが,まず,この雰囲気が素晴らしいと思いました。リアルに牧歌的だと思いました。この日は,コントラバスはステージ奥の高い場所に配置されていました。また,弦楽器メンバーは,各パート2名ずつ程度増強していました。その辺の効果がしっかり出ていたと思いました。

第1楽章は軽快に始まった後,楽章の最後の部分では,旅の気分が終わるのを惜しむかのように,深く沈みこむ感じがあったのが素晴らしいと思いました。その後,6楽章まであるのが,交響曲ではなく,セレナードらしいところです。

第3楽章はさすがに長く感じましたが,その長さが段々と心地良さとなって感じられて来ました。第5楽章でのホルン4本による力強い主題をはじめ,管楽器がソリスティックに活躍する部分が多く,退屈しませんでした。いつくしみような感じのメヌエットも印象的でした。最終楽章は,非常に生き生きとしたテンポで演奏され,力強く全曲を締めてくれました。

というわけで,前半後半ともミンコフスキさんの指揮の「熱さ」を感じさせてくれる演奏だったと思います。

9月からの,2019-2020のシーズンでは,ミンコフスキさんは2回登場しますが,今回のセレナード第1番に続き,第2番も演奏される予定になっています。もう一つの公演は,ドヴォルザークの「新世界から」。これまでのOEKとの共演では,古楽器オーケストラの専門家としてではなく,通常のオーケストラの指揮者として,古典派以降の曲を取り上げています。どんどん新しいレパートリーに取り組んでくれるのが嬉しいですね。ミンコフスキさんのネットワークで,次々と若く生きの良いアーティストが紹介されるのにも期待したいと思います。

2019/06/19

#コリヤ・ブラッハー さんの弾き振りによるOEK定期公演。前回とはがらっと変わって,「今日のOEKはベルリン・フィル化していた?」と思わせるような強靱な響きのベートーヴェンの4番とブラームスの協奏曲。初めて聴くブリテンの変奏曲も大変魅力的でした。 #oekjp

本日は,今月2回目となるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演フィルハーモニー・シリーズを聞いて来ました。リーダー&ヴァイオリンは,元ベルリン・フィルのコンサートマスター,コリヤ・ブラッハーさん。OEK名物といっても良い,弾き振りによるコンサートでした。

6月の定期公演では,10日ほど前に,フランス音楽特集を聴いたばかりですが,今回はブラッハーさんのリードの下,同じオーケストラとは思えないほど強靱な響きのドイツ音楽を聴かせてくれました。この適応力の高さがOEKの素晴らしさだと思います。

この日はブラッハーさんの隣に,ゲスト・コンサートマスターの水谷晃さんも座っていらっしゃいましたが,この2人を中心に,弦楽器の各パートのボウイングの動きが,いつもよりかなり大きく見えました。演奏された3曲とも,非常にパワフルで伸びやかな音を聴かせてくれました。聴いたことがないので推測で書くのですが,ベルリン・フィルが室内オーケストラ編成で演奏したらこんな感じなのかも,と勝手に思いながら聞いていました。

特に最後に演奏された,ベートーヴェンの交響曲第4番は,惚れ惚れするような立派な演奏でした。第1楽章の序奏部から主部に移行する部分,じ~っくりと力感を増していき,力強く主部が始まるあたりの鮮烈さにはシビれました。どの楽章も弛緩することなく自身に溢れた音楽を聞かせてくれました。第4楽章も十分速いテンポでしたが,各楽器がしっかりと弾き切れるようなテンポ感で演奏しており,一つ一つの音の迫力が素晴らしいと思いました。

2曲目に演奏された,ブラームスのヴァイオリン協奏曲は,OEKの定期公演に登場する機会の少ない作品です(弾き振りも滅多にないと思います)。まず,ブラッハーさんの凜とした音と堂々たる弾きぶりが素晴らしく,ソロとオーケストラが一丸となって,密度の高い音楽を聞かせてくれました。これ見よがしのケレン味や大げさな身振りのない演奏で,ブラームスの曲自体の立派さがストレートに伝わってきました。

この2曲に加え,演奏会の最初に演奏された,ブリテンの「フランク・ブリッジの主題による変奏曲」もまた,素晴らしい演奏でした。最初,プログラムの並びを見た時,「それほど長い曲ではないかな?」と思ったのですが,実際には20分以上ある変化に富んだ作品で,後半に演奏された曲同様,OEKの弦楽セクションのゴージャスさにしっかり浸ることができました。ちなみに「変奏曲」と言いながら,「主題」が結構わかりにくいのも,英国的なのかもしれませんね。むしろ,最後の部分でくっきりと出てくるあたりも面白いと思いました。

というわけで,前半後半ともに大変充実した演奏の連続でした。OEKは,ヴェンツェル・フックスさん,安永徹さんをはじめ,ベルリン・フィル関係者とつながりが大きいオーケストラだと思いますが,ブラッハーさんには,是非また客演していただきたいものです。

 

2019/06/15

第32回県教弘クラシックコンサート #沖澤のどか さん指揮OEKによるシューベルトの交響曲第5番は,ストレートに曲の美しさが伝わってくる理想的な演奏。#新垣隆 さんのピアノによる自作の協奏曲「新生」も現代的感覚とロマンティックな情熱とが合わさったような聴きごたえのある作品 #oekjp

本日は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の設立当初からこの時期に行われている,県教弘クラシックコンサートを聞いてきました。今回で32回目ということになります。無料の演奏会なのですが,応募して整理券をもらう必要があることもあり,実はこれまでほとんど行ったことのない演奏会でした。

今年は,昨年の東京国際音楽コンクール(指揮者)で第1位を取った注目の若手指揮者・沖澤のどかさんが登場すること,そして,才能豊かな作曲家,新垣隆さんの作品が自身のピアノで演奏されるということで,整理券を応募し,聞きに行くことにしました。実は,沖澤さんについては,井上道義さんによる指揮講習会の受講生だったころに一度聞いたことがあります。新垣さんについては,ガル祭の常連になりつつありますので,お二人とも金沢との縁が強いアーティストといえます。

非常にすっきりと心地良いテンポ感で演奏された,モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲に続き,前半は,新垣隆作曲によるピアノ協奏曲「新生」が演奏されました。この曲は,新垣さんと佐村河内さんをめぐる「ゴーストライター事件」後に,新垣さんが作曲家としての新しいスタートを切るのに際して作られた作品です。

この事件の後,新垣さんは,この事件さえ「ネタ」にするような感じで,バラエティ番組なども含め,非常に精力的に活動の場を広げています。そのしたたかさは,本当に素晴らしいと,個人的に思っています。そして,新垣さんを応援する人が多いのは,新垣さんの音楽的な才能と誠実な人柄あってのことなのだと思います。

今回演奏された「新生」を聞いて,そのことを再確認できました。曲は20分ぐらいで,3つの楽章から成っているのですが,続けて演奏されますので,単一楽章とも言えます。無機的で重苦しい雰囲気(ちょっとバルトークの曲を思わせる感じ)で始まった後,暗い情熱を秘めた,少しロマンティックな気分のあるような音楽になっていきます。途中,抒情的な雰囲気になった後,最後はピアノの名技性をしっかり聞かせるような,活力のある音楽になります。明るく晴れ渡る感じにはなりませんが,「新生」というタイトルどおり,力強く立ち上がるような感じで曲は締められました。

現代的で不気味な部分とロマンティックで親しみやすい気分とがバランス良く合わさっているのがさすがだと思いました。弦五部以外の管楽器については,各パート1名ずつという室内オーケストラ編成でしたので,まさにOEKと共演するのにぴったりの曲でした。

そして,新垣さんのピアノが素晴らしかったですね。クールでキレの良い打鍵も素晴らしかったのですが,抒情的な部分での透明感のある音も素晴らしいと思いました。そのうち,新垣さんには,OEKのコンポーザー・オブ・ザー・イヤーに就任してもらい,ピアノ協奏曲第2番を作ってもらいたいぐらいだと思いました。

アンコールでは,新垣さんによる自作のピアノ曲が演奏されました。何となくサティの「ジュ・トゥ・ヴ」を思わせるような「いい曲だなぁ」と思って聞いていたのですが,後半最初の部分でのトークによると,くまモンをイメージして作った,「小熊のワルツ」とのことでした。途中,即興的に色々な「ユーモア」を入れるあたりも,新垣さんならではでした。

後半の最初では,沖澤さんと新垣さんによる対談が行われました。沖澤さんは,指揮の雰囲気同様,とても明快で爽やかな語り口で,新垣さんから色々興味深い話題を引き出していました。これについては,後日,別途ご紹介しましょう。

後半に演奏されたシューベルトの交響曲第5番は,OEKがたびたび演奏してきた作品です。まず,平成元年の第1回定期公演で,天沼裕子さん指揮で演奏されています。令和元年の最初は,沖澤のどかさん指揮ということで,ちょっと不思議な縁のようなものを感じます。

個人的に大好きな曲なのですが,沖澤さんの作る音楽は,本当に率直で,スーッと音楽の魅力が伝わってきました。シューベルトやモーツァルトの曲を聞いていると,明るく純粋であるほど,ほのかに哀しさが漂ってくることがありましたが,そういう魅力的な瞬間が随所に出てくるような演奏で,この曲の理想的な演奏なのではと思いました。弦楽器の瑞々しい響きに,フルートを中心とした管楽器が美しく絡み,さりげないけれども華やいだ気分にさせてくれました。

第2楽章の緩徐楽章も重苦しくなることはないのに,音楽が進むにつれて,「懐かしい思い」がどんどん募ってくるように感じました。第3楽章も短調の部分と長調の部分が交錯します。その移行が大変自然でした。

というわけで,全曲どこを取っても,瑞々しくストレートな美しさに溢れた素晴らしい演奏だったと思いました。アンコールでは,チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレが暖かみのある音で丁寧に演奏されました。もともとは弦楽四重奏で演奏される曲ですが,コントラバス入りの弦楽合奏での演奏ということで,控えめながらゴージャスさも感じられました。

シューベルトの交響曲では,楽章ごとに拍手が入るなど,定期公演の時とは,違った客層だったようですが,誰もが「良いなぁ」と感じられるとても気持ちの良い演奏会だったと思います。これから,お二人の活躍の場が広がっていくことを確信した演奏会でした。

2019/06/08

本日のOEK定期公演は,日本初登場となる #ピエール・ドゥモソー さん指揮による「ドビュッシーとラヴェル抜き」のフランス音楽特集。音のブレンドが素晴らしく,演奏会全体がフランスの音に。ルーセルの「蜘蛛の饗宴」の静かで精緻なドラマが特に印象的でした。#oekjp

6月のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)定期公演マイスター・シリーズの指揮者は,OEK初...どころか日本初登場となる,フランスの若手,ピエール・ドゥモソーさんでした。ドゥモソーさんは,OEKの芸術監督のマルク・ミンコフスキさんのアシスタント等として経験を積みながら,歌劇場を足掛かりに活動の場を広げている指揮者です。

そのプログラムは,「ドビュッシーとラヴェルを外した」フランス音楽特集という冒険的なものでした。時代的には1902年~1921年という,第1次世界大戦前後に初演された作品ばかりで,フォーレ以外には,クラ,ルーセル,オネゲルという,一般的にはあまり知られていないフランスの作曲家の作品が並びました。しかも,最初に演奏されたクラの「子供の心」以外は,静かに終わる曲ばかり,ということで,一見,非常に渋い内容だったのですが,まず,ドゥモソーさんとOEKの作り出す見事にブレンド音が素晴らしく,少々,短めのプログラムだったにも関わらず,充実感たっぷりの演奏を楽しませてくれました。

本日演奏された曲は,どの曲も弦楽器のちょっとくすんだような音の上に,管楽器が活躍するような感じのサウンドが中心だったのですが,その音の微妙な溶け合い方が素晴らしく,刺激的に突出するようが部分がありませんでした。管楽器などは,ソリスティックに活躍しているのに,しっかり一つの方向性に音がまとまっており,ホール全体に「フランスの音」のフィルターが掛かったような,素晴らしさを感じました。

クラの「子供の心」は,フォーレの組曲「ドリー」と同様,もともとはピアノ連弾(3人の連弾ですが)用の曲を自身でオーケストレーションした曲で,優しい気分をベースとしつつも,豊かな情感の溢れる音楽を楽しませてくれました。

フォーレの「ペレアスとメリザンド」は,前奏曲から非常に深い響きで,メランコリックな気分があふれ出てくるようでした。加納さんのオーボエ,松木さんのフルートなども伸びやかに演奏する中にフッと憂いが漂う感じで,昨年観たドビュッシーのオペラ同様,美しさと悲しさが共存したドラマを感じさせてくれました。終曲の後の深い余韻も素晴らしいものでした。

後半はオネゲルの「夏の牧歌」から始まりました。この曲では,まず,金星さん演奏する,けだるい感じの柔らかいホルンの音が印象的でした。音による風景画といった気分のある,素晴らしい演奏でした。

最後に演奏された,ルーセルの「蜘蛛の饗宴」は,蜘蛛がゾロゾロ出てくるわけではなく,ファーブルの「昆虫記」にインスパイアされて作られた曲ということで,蟻,蝶々,カゲロウなどが次々出てくるという設定のバレエ音楽(からの抜粋)でした。続けて演奏されたので,例えば,どこでカゲロウが出てくるかまでは正確には分かりませんでしたが(「蟻」や「葬送の音楽」の部分は分かりました),各部分の描写が非常に精緻で,庭の中の虫たちによる静かなドラマを見事に描いているなぁと思いました。絵に例えると,厚く塗った油彩ではなく,細めの筆で描かれた細密画を見るような趣きがあると感じました。

20分ぐらいの長さの曲でしたが,リズムの変化に加え,ダイナミクスの変化もあり,演奏会全体を締める,充実感を感じました。ドゥモソーさんの指揮からは強い表現意欲が伝わってきました。OEKもしっかりとそれに反応し,生き生きとした表情を作っていたのが素晴らしいと思いました。

演奏会全体としては,90分程度で終わったので,アンコールが演奏されました。「フランス物」の場合,ビゼーがアンコールというパターンが結構多いのですが,今回もそのとおりで,「アルルの女」の中から前奏曲が演奏されました。その演奏がまた,非常にドラマティックでした。弦楽器を中心とした強靱な音と,オペラ劇場でも活躍されている指揮者らしい音楽の盛り上げ方が強烈なインパクトを残してくれました。

指揮台での動作は,若手指揮者らしく,少々バタバタとした感じがありましたが,是非,ドゥモソーさんの指揮で,フランス・オペラなどを観てみたいものだと思いました。

2019/06/05

OEK小松定期公演・春は,#茂木大輔 さんのトークと指揮によるベートーヴェンの英雄交響曲を中心としたプログラム。分かりやすいトークに加え,剛毅な演奏を楽しませてくれました。前半のプロメテウスの創造物には英雄と同じ主題が登場。OEKメンバーのソロも存分に楽しめました #oekjp

今晩は小松市うららで行われた,OEK小松定期公演・春を聞いてきました。「平日夜の小松ということで,仕事の後,金沢から出むくのは少々大変でしたが,茂木大輔さんのトークと指揮を楽しみに出かけてきました。

茂木さんのお話によると,3月にNHK交響楽団の首席オーボエ奏者を定年退職された後,4月以降は,指揮者一本で活動されているそうですが,指揮者として依頼を受けて指揮台に立つのは本日が初めてとのことでした。少々大げさですが「第2の人生(?)」の門出の演奏会といえそうです。

その記念すべき演奏会ということもあり,今回のプログラムは,以前から茂木さんが「やってみたかった」ものでした。ベートーヴェンの「英雄」交響曲と同じくベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」(抜粋)を組み合わせ,茂木さんの解説付きで楽しもうという内容でした。

私が中学生の頃,NHK-FMでは,音楽評論家の金子建志さんが「ちょっと聞いてみましょう」と曲の部分を聞きながら解説をするような,クラシック音楽の番組があったのですが,そういう雰囲気とちょっと似た感じがあったと思いました(「英雄」の第2楽章の解説の時,ゴセックの葬送行進曲という珍しい曲を参考音源として聞かせていただきましたが,こういう聞き比べは大好きです)。

私自身,そういう放送を聞きながら,クラシック音楽に「ハマって」いったので,本日のトーク&演奏を聞いて,クラシック音楽って面白いものだな,と思った若い人も出てきて欲しいと思いました(お客さんには地元の中学or高校生がかなり沢山いました)。

まずこの2曲のつながりなのですが,「英雄」の最終楽章に,「プロメテウス」の終曲のメロディが大々的に登場することによります。ベートーヴェンのお気に入りのメロディということになります。「プロメテウス」の方は,バレエの終曲(ベートーヴェン作曲のバレエというのも,かなり意外性がありますが)ということで,何回も同じメロディが繰り返し出てくる感じです。「英雄」を聞いた後だと,「なかなか先に進まない」感もなきにしもあらずでしたが,オリジナルの形を聞けたのは大変貴重な機会でした。

「プロメテウス」の中では,第5曲「アダージョ」が特に聞きものでした。ベートーヴェンの曲の中で唯一ハープが出てくる曲という「トリビア」を得ることができましたが,このハープとからむように,フルート,ファゴット,クラリネットそしてチェロが大活躍します。OEKのメンバーを全部覚えているようファン(私のことです)にとっては,大変うれしい演奏でした。茂木さんが語っていたとおり,カンタさんのチェロが美しかったですね。

後半に演奏された「英雄」の方は,かなり速いテンポで演奏されました。一言でいうと「剛毅」な「英雄」だったと思います。茂木さんの書かれた解説によると,第1楽章は「戦場の英雄」ということで,あちこち戦況を見回っている英雄という感じがしました。個人的には,大河のように悠々と流れるような第1楽章も好きなのですが,血気盛んな若々しい英雄も良いなと思いました。

第2楽章も速目のテンポでしたが,中盤以降,ティンパニやトランペットを交えての盛り上がりが素晴らしく(小松のホールだと特に音がよく聞こえます),全曲のクライマックスがこの辺にあったように感じました。

いかにもドイツ風の雰囲気のあった第3楽章に続き,「プロメテウス」の再登場したような第4楽章に。やはり,いつも馴染んでいるこちらの方が良いですね。こちらも全体的に速目のテンポでしたが,コーダの部分は慌てることなく,威厳たっぷりに締めてくれました。

個人的には,まだ週のはじめの火曜日なのに,少々疲れ気味だったのですが,バシッとしまった「英雄」を聞いて,一気に気力が回復しました。今後,茂木さんとOEKが共演する機会があると良いと思います。演奏会の企画面でも(ファンタスティックシリーズとかどうでしょうか?)協力していただけると良いのでは,と思いました。

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