OEKのCD

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コンサート

2021/09/12

石川県立音楽堂開館20周年記念 #oekjp & #仙台フィル 合同公演は #山田和樹 & #川瀬賢太郎 の2人の指揮者による「らしさ」に溢れたプログラム。弦チェレ,古典交響曲,ご当地大河2曲,武満徹「波の盆」...岩城さんも大満足かも。最後は「オルガン付き」で締め。アンコールでは...何と2人で指揮の「夕焼け小焼け」。20周年に改めて感謝

本日は石川県立音楽堂コンサートホールで行われた,石川県立音楽堂開館20周年記念事業OEK&仙台フィル合同公演「楽都の響」を聴いてきました。

実は,私自身,演奏会のレビューを書き溜めるようになったのも,石川県立音楽堂の完成がきっかけの一つだったので,感慨深いものがあります。20年間,少なく見積もっても月2,3回は音楽堂に出かけていましたので,12ヶ月×2回×20年=480回となりますが...500回以上出かけているのは確実です。自宅,職場の次に長い時間を過ごしている場所ということになります。

そのプログラムですが,「音楽堂らしさ」「石川県らしさ」そして音楽堂の設立に多大な力のあった「岩城宏之さんらしさ」がポイントだったと思います。その記念公演を一緒に祝ってくれたのが,仙台フィル(SPO)。10年前の東日本大震災直後以来の合同公演です。指揮者は,山田和樹さん,川瀬賢太郎さんの2人。この2人の指揮者が,「らしさ」溢れる記念公演を大きく盛り上げてくれました。

まず,OEKとSPOの弦楽セクションが左右に分かれて配置して演奏されたのがバルトークの「弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽」でした(ピアノ,チェレスタ,打楽器類は真ん中に配置)。この選曲は,岩城さんへのオマージュの意味もあったと思います。ピアノには,岩城さんの奥さんの,木村かをりさんも参加していました。

山田和樹さんの指揮は,熟練の指揮ぶりでした。緊張感の高さ,密度の高さを維持しつつ,堅苦しくなりすぎることはなく,所々,余裕を持って遊ぶような部分もありました。いかにも岩城さん好みのこの作品ですが,いつの間にか,私自身,以前よりもこの曲の面白さが分かるようになって来た気がします。

第1楽章,2群に分かれたオーケストラの各パートが,ゆっくりとしたフーガのように絡んでいく感じ。じわじわと浸みてくるのが,しみじみ良いなぁと思いました。打楽器が加わると,音に変化が加わり,さらにチェレスタやハープが加わると色が加わりました。ティンパニのグリッサンド,よくよく見ると結構変わった奏法をしていたシンバル,シロフォンの冴えた音,そしてバチンと強烈に弾くコントラバスのピチカート...どんどん,バルトークの語法にはまっていく感じが快感でした。この演奏では,木村かをりさんがピアノで参加されていましたが,しっかりと全体を支える支柱になっているようでした。

休憩後は,記念公演に相応しい,もう少しリラックスした雰囲気の曲目が並びました。まず,各オーケストラの単独演奏のステージが続きました。最初はOEKの単独演奏で,川瀬賢太郎さん指揮による「十八番の一」のプコロフィエフの古典交響曲。7月に聴いたばかりの曲ですが,非常に新鮮に響いていました。終楽章のキリッとした雰囲気など,「これから新しい20年が始まる」といった感じの生きの良さを感じました。

その後,音楽堂完成直後にNHK大河ドラマのテーマ曲を演奏することになった「利家とまつ」のメインテーマが演奏されました。こちらも何回も何回も聴いてきた曲ですが,川瀬さんの指揮ぶりは大変のびやか。利家が20歳ぐらい若返った感じでした。

続いて山田和樹さん指揮SPOのコーナー。「利家のまつ」に呼応するように,1987年のNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」のテーマが演奏されました。両オーケストラそれぞれに,ご当地テーマ曲があるというのが,大変面白いところです。しかも,この曲を作曲したのが,石川県立音楽堂洋楽監督でもある池辺晋一郎さん。この日も池辺さんが司会でしたので,「これしかない,やるしかない」という曲でした。

この曲も過去数回実演で聴いたことがありますが,正統派大河ドラマという堂々とした押し出しの良さのある曲です。個人的には,曲の最初の方,半音階で金管楽器が下降していく部分が印象に残っています。そしてオンドマルトノの音も特徴的です。今回はシンセサイザーで代用していました(ただし,私の席(3階)からだと音があまり鮮明に聞こえませんでした)。

その後,岩城さんの盟友,武満徹作曲のドラマ「波の盆」の音楽。この曲は,武満さんの死後,どんどん人気が高まっている曲ですね。自然な息遣いの感じられる,美しく柔らかな演奏でした。

演奏会の最後は,石川県立音楽堂コンサートホールのパイプオルガンにちなんで,サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」の第2楽章後半の合同演奏で締められました。音楽堂のオルガンといえば,「この楽器をいちばん頻繁に演奏されている」黒瀬恵さんですね。黒瀬さんの演奏するオルガンの音がバーンと飛び込んできました。これがまず爽快でした。

せっかくの「オルガン付き」だったので,全曲聴きたいなと思っていたのですが,いきなりオルガンの音が入ってくるのも良いなと思いました。川瀬さんの爽快な明快な指揮の下で,気持ちよく全曲を締めてくれました。

その後,「お客さんもハミングで参加してください」という呼びかけの後,「夕焼け小焼け」が演奏されました。コロナ禍で合唱曲があまり演奏されない中,会場が幸せな空気に包まれました。指揮者は...何と山田さんと川瀬さんの2人。最初は川瀬さんが「合唱指揮」でしたが,最後の部分では,2人が仲良く(?)並んでオーケストラを指揮。「20年に一度か?」と思わせる珍しい光景でした。

お土産は20周年を祝う紅白饅頭のプレゼント。こういう時に和菓子が出てくるのも金沢らしいところだと思います。

さて20年後は,一体どんな世の中になっているのでしょうか?2041年ということで,仕事の多くにAIが入り込んでいることでしょう。音楽堂の案内もAI内蔵ロボット...という時代になっているのかもしれないですね。

とりあえずは(当面の願いは),何とかコロナ禍に収まってもらいたいですね。そして,その後は,これまで同様,毎日毎日,1回1回の公演を楽しんで行きたい,と個人的には思っています。音楽堂の関係者の皆様に改めて感謝をしたいと思います。

2021/09/04

9月になりOEKの新シーズン開始。#岩城宏之 メモリアルコンサートは #秋山和慶 さんが登場。やはりベテラン指揮者のハイドンは最高です。岩城宏之音楽賞を受賞した #小泉詠子 さんの整った歌はどれも見事でした。特に「ファウストのの劫罰」のアリア。静かで熱い思いが伝わってきました #oekjp

9月になりオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の新シーズンが始まりました。毎年,この時期に行われている岩城宏之メモリアルコンサートが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。当初,指揮者はマルク・ミンコフスキさんの予定でしたが,コロナの影響で再来日はかなわず,秋山和慶さんが登場しました。

秋山さんは,今年の「楽都音楽祭」では,大阪フィルと「ローマ三部作」の全曲を指揮されるなど,音楽祭全体の「目玉」として活躍されました。その一方,OEKを指揮する機会は意外に少なかったので,今回の代役は多くのOEKファンにとっても待ち望んでいたものかもしれません。

このコンサートのもう一つの注目は,その時の岩城宏之音楽賞受賞者が登場することです。今年は,石川県津幡町出身のメゾ・ソプラノ,小泉詠子さんが登場しました。小泉さんはOEKの色々な公演で既に何回も共演されている方です。ミンコフスキさんが指揮したロッシーニの「セビリアの理髪師(演奏会形式)」公演にも出演されているなど,その受賞は全く異存がなかったのではないかと思います。

前半は,岩城さんの盟友でもあった外山雄三さんの曲に続いて(この曲はちょっと短すぎたので,もう少し長い曲でも良かったかも),小泉さんと歌とモーツァルトの序曲が交互に演奏される形でした。

小泉さんは,最初,カストラートが歌ったというヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ」の中のアリアを歌いましたが,シュッとした声の感じがとても気持ちよく,この曲の持つ,爽やかな祝祭感にぴったりだと思いました。モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」のアリアは凜としたたたずまいと暖かみのある声で,とてもノリの良い歌を聴かせてくれました。前半最後に歌われた,ベルリオーズ「ファウストの劫罰」の中のマルグリートのアリアは初めて聞く曲でしたが,しっとりとした雰囲気から,次第に熱い熱い思いへと盛り上がっていく感じに魅了されました。この「ファウストの劫罰」は,中々演奏されない曲ですが,機会があれば,ミンコフスキさん指揮+小泉さんのマルグリートで実演を聴いてみたいものです。

小泉さんの声には,密度の高さがあり,きっちり整った歌には常に安心感が感じられるのが素晴らしいと思いました。

前半その他,モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」「後宮からの誘拐」の序曲も演奏されましたが,それぞれに充実した演奏。無理のないテンポ感からズシッとした手応えを感じさせてくれました。「後宮からの誘拐」の楽器編成が,後半演奏されるハイドン「軍隊」交響曲と同じで,絶好の「予告編」になっていたのも良いアイデアでした。

その後半の「軍隊」も大変充実していました。定期公演のメインプログラムに持ってきても相応しいような味と貫禄のある演奏でした。第1楽章序奏部は大変こってり演奏していたのですが,主部に入ると急に可愛らしい雰囲気に一転,どんどん音楽のノリが良くなり,各楽器ががっちりと組み合わさった聴きごたえのある音楽へと盛り上がって行きました。

第2楽章の鳴り物入りの部分も,大げさに盛り上げてはいないのに,ズシッと聴かせてくれました。後半に出てくるトランペットの信号の部分は,藤井さんが立派な音を聴かせてくれました。第3楽章のメヌエットは力感溢れる音楽。トリオの部分と鮮やかにコントラストが付けられていました。

そして軽快な第4楽章。プログラムの解説で,飯尾洋一さんは,「ネタの念押しのように,最後,軍楽隊の楽器が再登場」,と書かれていましたがと,確かにその表現どおりだと思いました。分かっているけど,鳴り物が出てくると嬉しくなります。ハイドンの「軍隊」についてや,大げさに演奏しなくても,十分に盛り上がるし,余裕のある演奏の方が,ユーモアが漂う,といったことを思わせる秋山さんの指揮ぶりでした。

というわけで,やや演奏時間的には短かったものの,通常の定期公演と同様の充実感のある演奏を聴かせてくれました。唯一残念だったのは...「ファウストの劫罰」のアリアの後,大活躍したイングリッシュ・ホルンのエキストラだった上原朋子さんを立たせてくれなかった点です。きっと「うっかり忘れてしまった」に違いないと思いました。しっとりとした音が小泉さんの声にぴったりマッチしていました。

2021/07/23

五輪開会式と同時間帯に行われた2020/21シーズン最後のOEK定期公演は,正真正銘の「巨匠・井上道義」と神尾真由子さんの神技による聴きごたえ十分のプログラム。シューベルト4番とハイドン102番の2曲の交響曲の立派さ,プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番の底知れぬ魅力。堪能しました。#oekjp

7月23日東京オリンピック2020の開会式とほぼ同時間帯に行われた(22:45現在,まだまだ開会式は続行中ですが),OEK定期公演を聞いてきました。指揮は前音楽監督の井上道義さん,ヴァイオリン独奏は神尾真由子さんでした。

このお二人は「代役」としての登場で,それと連動して,プログラムも全面的に変更になったのですが,その新たなプログラムはシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」,プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番,ハイドンの交響曲第102番というかなり地味なもの。一般的な知名度の低い曲ばかりだったのですが,まず,このプログラミングが大変魅力的でした。OEKにぴったりの曲ばかりを並べた,聴きごたえのある演奏の連続。さすが井上道義さんという選曲でした。

シューベルトとハイドンの交響曲はどちらも大変堂々とした演奏。考えてみると,私自身,井上道義さんが交響曲を指揮するのを聴くのは,2018年3月の「最後の定期公演」以来のことでしたが,まさに巨匠の風格と余裕を感じさせる見事な指揮ぶりでした。もちろん,井上さんらしい,ユーモアやアイデアも随所に盛り込まれていましたが,両曲とも第1楽章冒頭の序奏部から,非常に構えが大きく,ずしっと耳に迫ってくる音楽を聞かせてくれました。

各曲の第2楽章なども,ブルーノ・ワルターなどの往年の大巨匠の演奏を思わせるような,滋味深さを感じさせるような深い味わい。両曲とも第1楽章の呈示部の繰り返しも行っておらず,あえて,「古いスタイル(しかし,思う存分やりたいことをやった)」の演奏を取っているような感もありました。最終楽章には,若々しい気分もありましたが,OEKとの絶妙の呼吸を聞かせてくれた,ハイドンの第4楽章の終結部の緩急自在の味わいなど,名人芸としか言いようのない,リラックスした楽しさがありました。

最初に演奏されたシューベルトの交響曲第4番は,OEKが演奏するのは本当に久しぶりだと思いますが,演奏会の最後に演奏しても満足できるような聴きごたえがありました。

そして,この日の白眉は,2曲目(後半1曲目ですが)に演奏された,神尾真由子さんの独奏によるプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番でした。OEKは,プロコフィエフの2番は頻繁に演奏しているのですが,第1番を実演で聴くのは私自身初めて。そして...名曲の名演奏だと思いました。曲の最初のヴィオラのトレモロの部分など,CDだとよく分からないのですが,実演で聴くととてもリアルで一気に曲の魅力に引き込まれました。

神尾さんのヴァイオリンには,その名のとおり”神”がかりの”神”技といって良い雰囲気がありました。神尾さんは以前からこの曲を得意にしているとのことですが,両端楽章での夢幻的でポエティックな気分,急速な第2楽章でのゾクゾクさせるスリリングな魅力。井上さんの共感度抜群のバックアップの上で,多彩な表情を表現し尽くしているようでした。これまで,井上さんと神尾さんのコンビで色々な協奏曲を聞いてきましたが,その中でも「最高」の演奏だったのでは,と思いました(この2人のコンビでCD録音を期待したいところです)。

というわけで,井上さん自身,事前のインタビュー動画の中で「オタッキー」と呼んでいたプログラムでしたが,OEKの新たなレパートリーを切り開く,素晴らしい内容だったと思います。会場のお客さんからも盛大な拍手が続き,大いに盛り上がりました。「巨匠・井上道義」と「神尾真由子の神技」による誰もが満足できる公演でした。

2021/07/15

#マルク・ミンコフスキ 指揮OEKベートーヴェン・チクルス3回目は,感動に溢れた6番「田園」と,いきなり巻き込まれてしまった感じの高速の5番。大げさかもしれませんが,生きていて良かった,と思わせるような会心の演奏の連続でした。

今晩は今週火曜日に続いて行われた,マルク・ミンコフスキ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるベートーヴェン・チクルスの3回目を聞いてきました。演奏されたのは,6番「田園」と5番という超有名曲2曲。OEKが何回も演奏してきた曲ですが,改めてミンコフスキさんのアーティストとしての素晴らしさを実感できる,素晴らしい公演となりました。少々大げさかもしれませんが,あれこれ活動が制限されているコロナ禍の中,生きていて良かったと思わせるような実感と感動を味わうことができまいした。両曲へのアプローチは正反対のようなところもありましたが,ミンコフスキさんの曲に対する真摯で自由な姿勢がとても新鮮な演奏につながっていた点が共通していると思いました。

前半に演奏された第6番「田園」は,一昨日の2番と8番の狂気さえ感じさせる演奏とは正反対の落ち着いたテンポ設定。しかし,そこに溢れる音楽は大変瑞々しく,「こんな音,聞いたことがない?」と思わせるようなフレーズがあふれ出てくるような面白さがありました。この日も,第2ヴァイオリン~コントラバスの人数を増員していたこともあり,低弦から内声の響きが大変豊かで,鮮やかでした。

特に第2楽章が素晴らしかったですねぇ。ミンコフスキさんは演奏前のインタビュー動画で「田園はとても複雑な曲」と語っていましたが,色々な楽器が次々と浮き上がってきたり,主旋律以外の伴奏的な音型がくっきりと繰り返されたり,なるほどその通りと思いました。ブルックナーの交響曲など通じる要素があるのでは,と思ったりしました。そして至るところで,深い情感が込められていました。楽章最後の鳥の鳴き声の部分なども,大変表情豊かでした。

後半の楽章もそれぞれに生きた音楽を聞かせてくれたのですが,やはり最後の第5楽章が実に感動的でした。楽章の後半に向かうにつれて,音楽に込められた感動がじわじわと盛り上がっていきました。それを振り切って,決然と終わった終結部も爽快でした。

後半の第5番の方は,お客さんの拍手が鳴りやむか止まないうちにスパッとスタート。何か,「いきなり音楽に巻き込まれてしまった!」という感じででした。前のめりの勢いがあると同時に,細かい音型でのキレの良さ。ヤングさんとOEKならではの凄さだと思いました。第2楽章では,しっかりとした呼吸の深さを感じました。特にコントラバスの「ズン」という深い低音が見事でした。この低音を出す時,ミンコフスキさんは指揮棒をものすごく低く下げていましたが,そのイメージどおりの音が出てきて,「すごい」と思いました。

第3楽章も思い切りの良さのある演奏。ホルンの強烈な響き,コントラバスパートからスタートする,猛スピードのフーガ。目が覚めるような演奏でした。第4楽章は,正々堂々と王道を行くような,大変率直な気分でスタート。しかし,その後は音楽の流れに乗って,テンポが速くなったり,即興的な気分もありました。呈示部の繰り返しを行っていましたが,2回目では,さらに輝きと勢いのある音楽になっており,繰り返しを行う必然性のようなものを感じました。

この楽章で満を持して加わるトロンボーンやトランペットなどの金管楽器の音も爽快でした。コーダの部分は,高速,かつ,前のめりのテンポで,どんどんアッチェレランドしていく感じ。音楽できる喜びが爆発しているような祝祭感のあるフィナーレでした。この部分を聞きながら,ベートーヴェン・チクルス最終回の第9のフィナーレを予告する感じかも,と期待を膨らませてしまいました。

というわけで,チクルス3回目の演奏も,ミンコフスキ&OEKは,集中力十分,乗りに乗った会心の演奏。長い長いインターバルを置いた結果,双方の結束がさらに高まり,芸術監督のミンコフスキさんの真価が存分に発揮された,個性的かつ説得力十分の見事なベートーヴェンでした。コロナ禍の記憶と同時に,蘇ってくるようなOEK演奏史に残るような演奏だったかもしれませんね。

2021/07/13

#マルク・ミンコフスキ 指揮OEKベートーヴェン・チクルス2回目は2番と8番。「明るい狂気」と言っても良いような,これまでに聞いたことのないようなスピード感。OEKの皆様,大変お疲れさまでした,と言いたくなるようなハードな演奏。曲ごとに「違うベートーヴェン」を楽しませてくれますねぇ。明後日の3回目ではどういう側面を聞かせてくれるのでしょうか。

今晩は先週の土曜日に続いて行われた,マルク・ミンコフスキ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるベートーヴェン・チクルスの2回目を聞いてきました。演奏されたのは,2番と8番という偶数番号の2曲でしたが...これまで聞いたこともないような「明るい狂気」が漂うような,ミンコフスキさんならではのベートーヴェンとなっていました。

まず両曲とも,最終楽章を中心に狂ったようなスピード感!ミンコフスキさんによる,事前のインタビュー動画では,この2曲について「クレイジー」という言葉を使っていましたが,それを鮮やかに体現したような演奏だったと思います。

最初に演奏された第2番の冒頭から,非常に引き締まった響き。一気呵成の若々しい推進力と同時に(1楽章呈示部の繰り返しは行っていなかったと思います),どこか思いつめた雰囲気。第2楽章は一息ついて,暖かな気分になりましたが,次第に深く,孤独な世界に入り込んでいく感じ。そして第3楽章から第4楽章に掛けては,再度,狂気を持ったスピード感。最終楽章のコーダでの切れ味の鋭さと爆発力。甘さを廃した,辛口の第2番だったと思いました

後半の第8番にも同様の気分が感じられ,この2曲を並べた意図を感じました。第1楽章は,第2番同様,引き締まった速目のテンポで始まった後,第2主題でテンポをぐっと落として,別世界へ。ただし,すぐにまた元に戻り,第2番同様,狂気が爆発するような雰囲気に。第2楽章も優雅さよりは,前のめりに進んでいく感じ。

第3楽章では,トリオでのチェロ・パートのゴツゴツとした表情が大変印象的でした。これまでに聞いたことのない雰囲気がありました。第4楽章は,ここまでの総決算という感じの狂気の速さ。バロックティンパニの乾いた音など,曲の至るところ出てくるそわそわとした感じ。コーダの部分は強烈なビートを聞かせた,ロック音楽のような世界。OEKの皆様,大変お疲れさまでした,と言いたくなるようなハードな演奏だったと思います。

というわけで,先週の1番,3番とは全く違ったベートーヴェンの世界が広がっていました。個人的には,この2曲については,健全さや優雅さのある演奏が好みではあるのですが,今回のミンコフスキさんの演奏は,過激でクレージーな側面を強調して,一味違ったイメージを伝えてくれた気がします。チクルス第3回の第6番,第5番では,一体,ベートーヴェンのどういう面を聞かせてくれるのか,さらに期待が広がりました。

2021/07/10

#ミンコフスキ がベートーヴェンとともに金沢に帰ってきました。再始動した交響曲チクルス1回目は1番と3番「英雄」。OEKへの信頼に溢れた鮮やかで熱い演奏。OEKの日常も戻りつつあるなぁと実感。来週の2公演も聞き逃せません。#oekjp

ミンコフスキが金沢に帰ってきました。そして,コロナ禍の影響で予定が大幅に狂っていた「ベートーヴェン交響曲全集」のチクルスが仕切り直しで再始動しました。

考えてみれば最後にミンコフスキさんを金沢で見たのは...2019年10月。記憶がかなり薄れつつあるのですが,千曲川が氾濫して北陸新幹線の車両が水に浸かってしまった,「あの時」以来になります。

チクルスの1回目は,交響曲第1番と第3番「英雄」。シリーズのスタートに相応しい曲目だと思います。1番の1楽章の序奏部は暖かみと豊かさを感じさせる音。そしてどこをとってもクリア。ミンコフスキさんは,ビデオメッセージの中で,コンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんのことを総理大臣とたとえていましたが(ミンコフスキさんは大統領),緻密な音楽を作り上げるヤングさんとOEKへの強い信頼とミンコフスキさんの暖かみのあるキャラクターとが見事に合体したような音だと思いました。

基本的に「大げさなこと」「変わったこと」はしない,堂々たるベートーヴェンでしたが,要所要所にミンコフスキさんのこだわりがあり,「おっ」と思わせるような瞬間が沢山ありました。この日は木管楽器にエキストラの方が多かったのですが,交響曲第1番の時は「トップ奏者」を担当していました。第3楽章の中間部の木管合奏が続く部分が大好きなのですが,ニュアンス豊かな音楽が続き,幸せな気分にさせてくれました。

ミンコフスキさんは,時々片腕を高~く差し上げるのですが(個人的にはウルトラマンに変身する動作に見えます(古いか)),その動作に合わせて,音楽が巨大に盛り上がる瞬間があります。そのライブならではの高揚感は何物にも変えられないものです。ミンコフスキさんは,ビデオメッセージの中で交響曲第1番にもついても「巨大な交響曲」と語っていましたが,1曲目からとても聴きごたえのある音楽でした。

後半の「英雄」はさらに巨大な音楽になっていました。第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバスを増員しており,弦楽合奏が対位法的に絡み合うような部分での聴きごたえが増していました。特徴的だったのは,コントラバスの位置でした。ステージ正面のいちばん後ろ(指揮者の真正面)に3人並んでいました。第2楽章の最初の部分など,低音がグインと迫ってくる感じで効果満点だったと思いました。

第1楽章は大変軽やかに開始。「英雄」が颯爽と活躍しているような気分。基本的な流れが良い分,時々出てくる変則的なリズムやこだわりのニュアンスの変化が生きていました。ちなみにコーダの部分のトランペットは途中でメロディが消え,リズムだけになるような感じ。最近はこういう形が多いのですが,リズムに躍動感があり,物足りなさはありませんでした。

続く第2楽章は上述のコントラバスの音に続いて,大変じっくりと聞かせる深い音楽。第1楽章とのコントラストが鮮明で,どこかオペラを思わせるようなドラマを感じました。加納さんのオーボエには美しさと虚無感が合体したような気分があり,オペラの主役を思わせる鮮やかさがありました。

楽章の後半になると上述のとおり弦楽パートの絡み合いが素晴らしく(この日のヴィオラパートにはダニール・グリシンさんに加え,川本嘉子さんも参加しており超強力),荘厳が宗教音楽を思わせる気分がありました。

第3楽章もキビキビとした主部と野性味溢れる中間部の対比が楽しめました。第4楽章も変奏が進むにつれて熱気が増していき,音楽の表現の深みが増していくようでした。松木さんの鮮やかなフルート,チェロパート(だと思います)のニュアンスの豊かさなど,OEKの各パートがしっかりと活躍していました。コーダの部分は非常に軽快な雰囲気になり,ちょっとしたお祭り気分。颯爽と締めてくれました。

演奏後,ミンコフスキさんとヤングさんが「ひじで握手」する光景を見ながら,「ようやく日常が戻りつつあるなぁ」と未来への希望を持ちました。オーケストラのメンバーが引っ込んだ後も拍手が続いていたので,最後にミンコフスキさんが再登場して,一言感謝の言葉。来週のベートーヴェンチクルス2回目,3回目もしっかりと聴きに行きたいと思います。

2021/06/26

第33回県教弘クラシックコンサートは #角田鋼亮 さん指揮OEKと殺陣の共演。コロナ禍の中,全く後腐れなくチャンバラの世界を楽しんでしまいました。改めて「利家とまつ」の音楽はOEKの財産だなと実感

本日はこの時期恒例の日本教育公務員弘済会石川支部主催の「県教弘クラシックコンサート」を聞いてきました。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)設立時から続いている演奏会ですが,昨年度はコロナ禍の影響で中止。今年も5月に石川緊急事態宣言が発出された時にはどうなるかと思ったのですが,本日無事行われました。

内容は昨年度予定した内容を1年延期したもので,「OEK×The殺陣」という副題が付いていました。過去,OEKはファンタジックオーケストラコンサートとして,同様の公演を既に行っていますが,私自身は初体験。興味津々という感じで,整理券を申し込み,聴いてきました。

まずプログラムを見て「おっ」と思ったのが,ベートーヴェンの交響曲第7番が前半になっていたことです。OEKが演奏する交響曲を聞くのは3月以来で,「久しぶりに交響曲を生で聞きたい」という思いもこの公演を選んだ理由でした。が。殺陣との共演の方は,いわばオーケストラとダンサーが共演するバレエ公演のようなものですので,その点では,やはり後半が殺陣になる方が相応しいと思いました。そして,実際そのとおりでした。

後半はまず,大昔のテレビ時代劇「大江戸捜査網」の音楽で開始。この曲は,時代劇の音楽の中でも「いちばん格好良い曲」と以前から思っていたのですが,それをいきなり聞けてテンションが上がりました。そして,お馴染み「暴れん坊将軍」のテーマ。ここで,赤,黄,緑,水色の着物を着た殺陣師たちが乱入してきて,色々なパターンの絡みを披露。

時代劇の中のように,切られたらそのまま横になっているのではなく,あくまでも「舞い」ということで,動きは止まっても,倒れることはなく,そのまま音楽に乗って次の動作に続いていったり,見得を切ったり...という感じで進んでいきました。緊張感と素速い動きとの流れの良さは見ていて不思議と飽きませんでした。

その後は,NHK大河ドラマ「利家とまつ」の音楽が組曲のように続きました。こうやってきくと,渡辺俊幸さんの音楽は非常に分かりやすく,「大河ドラマ」の王道を行く音楽だなぁと改めて思いました。「利家とまつ」が放送されて20年近くになりますが,今でも古びることなく,演奏されている点で,OEKにとって大きな財産となっている曲だと思いました。

途中,殺陣師の皆さんによる,「刀の入ったことわざ」実演コーナーがありました。このコーナーも楽しかったですね。トークになると,急に皆さん明るい雰囲気になり,着物の色合い的にも「笑点」の世界に近いムードでした。「切羽詰まる」「シノギを削る」「ソリが合わない」「元の鞘に収まる」など,実演付きで見ると,「なるほど」と思いました。

最後は,「利家のまつ」のメインテーマ「颯流」でした。金沢ではすっかりお馴染みの曲ですが,この日の公演の締めにぴったりの音楽でした。前半ゆったりとした音楽が続いた後,テンポアップした後半で4人の殺陣師がわさわさと登場。ここもぴったりでしたが,最後の最後,シンバルが入る部分で突き刺され,最後の「ババーン」と音が伸ばされた部分で全員が見得を切る...納得のエンディングという感じでした。

前半に演奏された,ベートーヴェンの交響曲第7番はOEK十八番の曲。角田鋼亮さんの指揮の下,古典的な交響曲としてのまとまりの良さ,要所要所での切れ味の良さを感じさせてくれる演奏を聞かせてくれました。熱狂的になりすぎなかったのは,やはり前半での演奏だったからかなと思いました。

というわけで,「殺陣とオーケストラのコラボ」を初めて見ましたが,リアルな部分とダンス的な部分とのバランスがとても良く,後腐れのない,爽快感すらある,チャンバラの世界にはまってしまいました。

アンコール(西部劇の音楽でしたね)の後,指揮者の角田さんが4人の殺陣師に取り囲まれるという小芝居。指揮棒を振ると,4人は見事退散というのも楽しかったですね。というわけで,会場の老若男女(結構,お子さんも多かった印象です)のお客さんはしっかりと楽しんでいました(客席はそういう雰囲気)。コロナ禍の中,こういう時間も必要だなぁと改めて思いました。

2021/04/23

アビゲイル・ヤングさんのリードによるOEK定期。藤田真央さんとの共演によるモーツァルトの20番は音の美しさが際立った室内楽的な演奏。藤田さんのカデンツァも魅力的でした。後半はモーツァルトのセレナード第4番。知られざる名曲を発見した喜びがありました。ヤング&OEKの恐るべき底力を実感させてくれる素晴らしい公演でした。#oekjp

今晩はアビゲイル・ヤングさんのリード,藤田真央さんのピアノによる,OEK定期公演フィルハーモニー・シリーズを聴いてきました。当初はOEKの首席客演指揮者,ユベール・スダーンさんが登場予定でしたが,コロナ禍のため来日できず,指揮者なし(ヤングさんのリード)となったものです。プログラムには変更はなく,モーツァルトのピアノ協奏曲第20番とセレナード第4番「コロレド卿」が演奏されました。

スダーンさんの指揮から,ヤングさんの弾き振りに切り替わった時点で,「ヤング&OEKは,「指揮者あり」の時とは一味違う演奏聞かせてくれるはず」という確信はあったのですが,その期待を遥かに上回る素晴らしい演奏を聞かせてくれました。過去,OEKはモーツァルトの作品を何回も演奏してきましたが,その歴史にしっかりと痕跡が残るような公演だったと思いました。

前半は藤田さんとの共演で,モーツァルトのピアノ協奏曲第20番が演奏されました。ヤングさんの弾き振りの時は,「全員起立」で演奏することがあるのですが,まさか協奏曲の時もこのスタイルだとは思いませんでした。特に弦楽器の場合,腕を大きく動かすので,立つか座るかでかなり音が違うのではないかと思います。ヤング&OEKは,力強い音からしなやかな音まで,音のニュアンスの変化が明確な演奏を聞かせてくれました。オーケストラだけによる序奏部から,彫りの深い,陰影の濃さを感じさせる素晴らしい演奏を聞かせてくれました。

藤田さんのピアノには,OEKの強力な音に挑むというよりは,一緒になって音楽を作っていこうという連帯感のようなものを感じました。最初の一音をはじめ,シンプルな音になるほど音の美しさが際立ち,OEKと競い合うというより,音で会話をしているような,室内楽的な緻密さを感じました。その一方,藤田さん自身による各楽章のカデンツァは非常に技巧的であったり,キラキラしたちょっとロマンティックな気分があったり,しっかり藤田さんが主役になっていました。このバランスが素晴らしいと思いました。

それにしても藤田さんのタッチのさりげなさ,柔らかさと音の純度の高さは素晴らしいと思いました。第2楽章の最初の部分などシンプルなピアノの音を聴くだけで,どこか別世界に連れていかれたような感覚を持ちました。藤田さんとOEKのモーツァルト。個人的にはピアノ協奏曲第23番などもぴったりなのではと思います。続編を期待しています。

後半に演奏されたセレナード第4番はK.203 ,モーツァルト18歳の時の作品で,これまで実演はおろか,CDでも聞いたことのない作品でしたが,まず,その曲の素晴らしさに感嘆しました。全8楽章からなる大曲で,2~4楽章はヴァイオリン協奏曲的な部分があります。編成はかなり大きく,交響曲的な編成。メヌエットが3つ入るなど,独特の構成の曲でした。といった作品ですが...どの楽章にもモーツアルトの才能があふれるように詰め込まれており,8つの楽章を全く退屈することなく楽しむことができました。モーツァルトの主要なオーケストラ作品はほとんど聞いていたつもりでしたが,こういう素晴らしい曲が「まだあった!」ことに感激をしています。

そしてこの演奏でも,「全員起立」のヤング&OEKの演奏が見事でした。前半と同じことが言えるのですが,この曲では特に音の迫力,切れ味の良さが素晴らしいと思いました。交響曲的な雰囲気にヤングさんのパリっと引き締まったヴァイオリンの独奏による協奏曲が合わさったような贅沢さ。さらには,メヌエット楽章のトリオでの加納さんのオーボエ,松木さんのフルートの瑞々しさ。弦楽パートの首席奏者たちによる室内楽的気分...色々なタイプの音楽が8つの楽章の中にぎっしり詰め込まれたような豪華さがありました。

OEKの皆さんは前半も後半も「立ちっぱなし」で大変だったと思いますが,体の動きがそのまま音の動きになったような自然さが素晴らしいと思いました。その音の動きはお客さんまで伝わっていた感じで,終演後は盛大な拍手。モーツァルトのセレナード第4番は,大半のお客さんは聞いたことはなかったはずですが,その知られざる名曲で熱く盛り上がれたことが嬉しかったですね。

今回の演奏を聴きながら,OEKを指揮する指揮者には大きなプレッシャーがかかるだろうなぁと感じました。それだけすべての面で充実した演奏でした。スダーンさんには,セレナード第4番を選曲してくれたことに感謝したいと思います。そして,いつかどういう解釈で聞かせてくれるのか,スダーンさんの指揮でも聞いてみたいと思いました。

2021/04/09

今晩は渡邉康雄さんのピアノ・指揮OEK+地元のピアニストたちによる ガル祭 2021 プレコンサートを聞いてきました。渡邉さんの貫禄のサン=サーンスは聴きごたえ十分でした。#oekjp

今晩は,いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2021のプレコンサートとして行われた,渡邉康雄さんのピアノ・指揮+地元のピアニストたちによる,スペイン,フランスの作曲家による演奏会を聞いてきました。

前半,山岸奈央さんによるグラナドス/演奏会用アレグロ,松永みなみさんによるラヴェル/水の戯れ,北林多香子と本多春奈さんの連弾によるサン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」~バッカナールが演奏されました。この日は,「とてもよい席」で聴けたこともあり,ラテン系の音楽ならではの華やかさと,しっとりとした音の流れを楽しむことができました。特に,松永さんの演奏した,「水の戯れ」には,くっきりとした明るい音と異国情緒があふれている感じで,やっぱりラヴェルの音楽は良いなぁと思わせてくれました。

休憩の後は,以前からOEKと頻繁に共演し,CD録音も行っている渡邉康雄さんが登場し,渡邉さんの弾き振りでサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」が演奏されました。ロマン派以降のピアノ協奏曲の弾き振りは,比較的珍しいのですが,ベテラン・ピアニストらしい貫禄に溢れた,どっしりとした音楽を聞かせてくれました。第3楽章の最後,ピアノが音階を上がっていく部分などでは,千両役者がどうだと見得を切るような充実感がありました。サン=サーンスといえば,どちらかというと軽い印象のある作曲家なのですが,ピアノの音が突出しすぎることなく,地に足の着いたような音楽を聞かせてくれました。OEKの方も,弦楽パートの豊かな音の上に木管楽器群が随所で彩りを加えており,南欧よりもさらに南の「地中海~アフリカ」に掛けてのエキゾティックな気分を思わせるような演奏を聞かせてくれました。

アンコールでは,南欧から離れて,ストラヴィンスキーのペトルーシュカの中の「ロシアの踊り」をがっちりと聞かせてくれました。ちょっと不器用な感じのリズムがとても魅力的な演奏でした。この日の公演は,プログラム的にも演奏的にも,楽都音楽祭の気分を盛り上げるための「プレコンサート」にふさわしい内容でした。ここ数日,石川県でもコロナ感染者が徐々に拡大しているのが少々気がかりですが,無事に開催できることを祈っています。

 

2021/03/18

鈴木雅明指揮OEKのベートーヴェン交響曲シリーズ。最終楽章でのスケールの大きな雰囲気が印象的だった第6番「田園」。生き生きとした推進力と雄弁さのあった第5番。どちらも弦楽器の澄んだ美しさと各楽器のニュアンスの豊かさが印象的。充実の3月の定期公演でした。

3月のOEKの定期公演は鈴木雅明さん指揮によるベートーヴェンの交響曲4曲。3月13日の2番,8番に続いて,本日は5番,6番の「超有名曲」2曲を聴いてきました。

この2曲の組み合わせですが...私自身,聴くのは初めてかもしれません。初演の時と同じ組み合わせということになりますが,こうやって並べて聞くと,この2曲は「セットなのだな」ということを感じました。後半の楽章が連続していること,トロンボーンやピッコロが入ることが共通する一方で,同じモチーフを使いまくり,力強く盛り上がる5番と標題音楽的で穏やかな気分のある6番というのは,好対照です。

鈴木さんは,OEKが何回も演奏してきたこの2曲から,大変新鮮な響きを引き出していました。最初に演奏された「田園」の冒頭から,響きがクリアで特に弦楽器を長~く伸ばした時のヴィブラートの入らない真っすぐ澄んだ音がとても印象的でした。両曲とも,第1楽章の第1主題には,フェルマータが入るのですが,その部分の響きが本当に瑞々しいと感じました。その一方で,前回の2番・8番の時同様,どの部分を取ってもニュアンスが豊かで,とても雄弁な演奏でした。「田園」の第2楽章の木管楽器の美しさ,第3楽章でのちょっと意表を突くような感じのアクセントの入れ方が印象的でした。

第4楽章も切れの良いコントラバス,表情豊かなティンパニなど,しっかり聞かせる音のドラマとなっていました。そして,大変じっくりと演奏された第5楽章。じわじわと感動があふれてくるような表現で,スケール感たっぷりの演奏を聞かせてくれました。

後半に演奏された第5番の方も,音のクリアさ美しさが印象的でした。第1楽章から,生き生きとした推進力と音の美しさが両立していました。第2楽章では落ち着きがあるけれども,停滞しないテンポで始まり,途中力強い歩みを聞かせてくれました。第3楽章も超高速のコントラバスの演奏を中心に生き生きとした表現を聞かせてくれました。楽譜のことはわからないのですが,第1楽章,第4楽章に加え,第3楽章も前半部分を繰り返していたようで,いつもと少し違った感じに聞こえました。

そして若々しい第4楽章。奇をてらうことのない颯爽とした雰囲気がありました。それでいて,全力を使い切ったような熱さ。コンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんの力強い演奏姿を見るといつも,「我々も頑張らなければなぁ」と思います。この曲には,コントラファゴットが入り,お馴染みの柳浦さんが演奏されていましたが,いつもに増して,その音がしっかりと聞こえてくるのも新鮮でした。

今回,鈴木雅明さんはミンコフスキさんの代役で登場したのですが,体の内側からエネルギー溢れ出てくるような演奏は,ベートーヴェンにぴったりだと思いました。というわけで,4曲演奏したからには,他の曲も鈴木さんの指揮で聴いてみたいものだと思いました。期待をしています。

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