OEKのCD

2017年10月
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コンサート

2017/10/18

OEK定期公演は#シュテファン・ヴラダー の弾き振りによるハ長調,ハ短調,ハ長調のオール・モーツァルト・プログラム。1カ月前の「ジュピター」と全く違う,ものすごく引き締まった演奏に感嘆。主張がすっきり伝わってくる素晴らしい公演 #oekjp

10月のOEKの定期公演フィルハーモニーシリーズは,「常連」になりつつあるシュテファン・ヴラダーさんによるモーツァルトのみによるプログラムでした。OEKの定期公演の場合,古典と現代曲を組み合わせることが多いので,「全部モーツァルト」というのは,意外に珍しいことです。今回はヴラダーさんが登場するということで,前半は弾き振りの形になっていました。

まずプログラムの並びが面白いと思いました。ピアノ協奏曲第21番→24番→交響曲第41番ということで,ハ長調→ハ短調→ハ長調という見事なシンメトリーになっていました。実は,「ジュピター」は,9月にも井上道義さん指揮OEKで聞いたばかりなので,2カ月連続の演奏だったのですが,これがまた,ガラッと違った雰囲気になっていました。

今回の公演はこの,指揮者によってガラッと変わってしまうOEKの適応力の素晴らしさに感動しました。この日のOEKは,バロック・ティンパニを使い,弦楽器のヴィブラートがほとんどない,古楽的な奏法が特徴的で,特に後半に演奏された「ジュピター」では,第1楽章の冒頭からハッとさせるような,体脂肪率ほとんどゼロといった感じの筋肉質で引き締まった演奏を聞かせてくれました。

井上さん指揮による「ジュピター」も,OEKによる演奏の一つの典型だった思いますが,それとは全く違うアプローチで,生気と力感に溢れる「ジュピター」を聞かせてくれたヴラダーさんの手腕は素晴らしいと思いました。

これはこの日演奏されたどの曲にも言えたのですが,指揮者の主張がスッと伝わってくるような論理的な明快さのようなものを感じました。情緒的に甘く溺れるようなところが全くなく,基本的に速目のテンポでビシッと引き締まった中に美しさのある音楽を聞かせてくれました。特に両端楽章は,これまでに聞いた「ジュピター」の中でも特に快速の演奏だったと思います。

ただし,第1楽章,第4楽章に加え,第2楽章も繰り返しを行っていたような感じで(多分),演奏時間は30分以上掛かっていたと思います。全く弛緩することのないクールさと明晰さに,ライブならではのスリリングさが加わった見事な演奏でした。第4楽章の最後の音が短くバシッと終わっていたのも実に爽快でした。

前半のピアノ協奏曲2曲も同様に速いテンポによる演奏でした。特に第21番はとても速いテンポだったと思います。個人的には,この曲については,第2楽章を中心に少々ロマンティックな甘さのある演奏が「デフォルト」になっているので,もっとおっとりとした演奏が好みではあるのですが,速いパッセージが続いても崩れることのない,一本筋のとおったような演奏も素晴らしいと思いました。

第24番の方は,よりベートーヴェン的な響きのする曲で,ヴラダーさんの演奏の硬質な感じにぴったりだと思いました。この曲も基本的に速いテンポで,甘さに溺れるようなところはありませんでした。それに加え,OEKの木管楽器とピアノとの「対話」が素晴らしく,短調と長調の陰影のコントラストだけではなく,ピアノと管楽器のコントラストも楽しむことができました。

ヴラダーさんはお客さんに背を向け,ピアノの蓋を全部取り外す形で演奏していました。そのせいもあるのか,ピアノの音は,オーケストラとしっかりと溶け合い,全体として室内楽的な雰囲気があると感じました。弾き振りならではの演奏だったと思います。

演奏後は,お客さんから盛大な拍手が起こると同時に,OEKメンバーも大歓迎しているようでした。OEKの音を,メンバーと一緒になって「自分の音」に変えたヴラダーさんの指揮者としての素晴らしさを楽しむことのできた演奏会でした。この日は,特にアナウンスはなかったのですが,ステージ上にマイクロフォンがかなり沢山並んでいました。もしかしたら何かの収録かレコーディングを行っていたのかもしれません。是非もう一度,聞いてみたい,完成度の高い演奏でした。

2017/09/20

OEK定期公演2017/2018シーズン開幕。井上道義指揮による総決算の「田園」。神尾真由子と四つに組んだ壮大なスケール感のあるヴァイオリン協奏曲。拍手からも熱さが伝わってくる演奏会でした #okejp

OEK定期公演2017/2018シリーズは,井上道義音楽監督指揮による,ベートーヴェン中心のプログラムで開幕しました。今年の春に行われた,ガル祭のテーマは,「ベートーヴェン」で,その時にヴァイオリン協奏曲と交響曲第6番「田園」も演奏されたのですが,井上さんは参加していませんでしたので,その「アンコール」を井上音楽監督の指揮で楽しむといった位置づけになるのかもしれません。ただし,「田園」については,1年前の「ナチュール」がテーマだった,最後の「ラ・フォル・ジュルネ金沢」の時に井上さんが取り上げていますので,そのアンコールとも言えます。

この演奏会ですが,やはり井上さんとOEKの「田園」は最高だなぁと思いました。ベートーヴェンの交響曲については,OEKの演奏で何回も聞いており,井上さん指揮の「田園」も聞くのは3回目ですが(確か),その度にこの曲に対する「愛」のようなものを感じます。

第1楽章の冒頭から,「田園に着いたばかりの新鮮な気持ち」が溢れ,何回聞いても新鮮な気分を味わわせてくれます。第2楽章は,ベースとなる「流れるような」雰囲気も素晴らしいのですが,その上で絡み合うOEKの各パートの音の動きを聞いているだけで飽きません。この楽章を聞くたびに,隠されている自然の音を発見する喜びがあると感じます。

第3楽章以降は,音による祭り・自然・感謝の気持ちの描写音楽です。1年前のラ・フォル・ジュルネ金沢の時も同様だったのですが,3楽章途中に「嵐」のメンバー6人(ジャニーズではなくトランペット2名,トロンボーン2名,ティンパニ,ピッコロ奏者の皆さんです)が上手側から入って来て,視覚的にもドラマを印象付けていました。

第4楽章から第5楽章に掛けては,前回聞いた時よりもスマートな感じに思えましたが,第5楽章の途中,曲想が盛り上がってきて,井上さんが大きく両手を広げるのを見ると,「井上さんの田園だなぁ」と熱い気分になります。そして最後の部分の名残り惜しさ。繰り返しになりますが,井上さんの「田園」はやっぱりいいなぁと思います。

前半はまず,ペルトのベンジャミン・ブリテンへの追悼歌が演奏されました。振り返ってみると,井上さんは,ペルトの曲を取り上げる機会も多かったですね。神秘的な和音がベルの音に合わせて最初から最後まで続いているだけ,といった曲なのですが,演奏会の最初に演奏されると,日常生活の空気から,アートの空気へと切り替える,緩衝地帯になっているような気がしました。この古いのか新しいのか分からないムードは癖になりそうです。

前半では,金沢でがすっかりおなじみのヴァイオリン奏者,神尾真由子さんとの共演で,ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。神尾さんについては,先月8月19日,ほぼ1カ月前にOEKとメンデルゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏したばかり。さらには,11月21日には,ロシア国立ウリャノフスク交響楽団との共演でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏します。この短期間の間に金沢で,いわゆる「3大ヴァイオリン協奏曲」を1人の奏者が全部演奏する,というのは(たまたまこうなったのだと思いますが),「金沢史上初」なのではないかと思います。

今回のベートーヴェンについても,井上/OEKと神尾さんとがじっくりと四つに組んで,じっくりと聞かせてくれる聞きごたえのある演奏でした。雰囲気としては,1カ月前に聞いたメンデルスゾーン同様,「演歌的」と言って良いほど,滴るような音を聞かせてくれる演奏で,個人的にはロマンティック過ぎるかな(結構,チャイコフスキー的なベートーヴェンだな,と思ったりしました)と思ったのですが,「さすが神尾さん」とも思いました。

神尾さんの場合,音や歌いまわしを聴けば「神尾さんの演奏だ」と分かる,しっかりとした個性を持っていると思います。どの楽章もゆっくり目のテンポで,存分にこの曲の中に潜んでいる「情感」と「歌」をしっかりと引き出していました。井上/OEKによる,非常に気合いの入った充実した演奏と組み合わさることで,この曲のもつスケールの大きさ(45分以上かかっていたと思います)をしっかりと体感させてくれました。

この日のお客さんの拍手からは,いつもにも増して熱いものが伝わって来ました。今シーズンは,この公演を含めて,井上さんは3回OEKの定期公演に登場します。本日の演奏を聞いて,その1回1回で,総決算のような演奏が期待できると感じました。

このプログラムと同様の内容で,次のとおり国内演奏旅行が行われます。是非お近くの方は,お聞きになってください。

名古屋定期公演 9月22日(金) 19:00開演 三井住友海上しらかわホール
大阪定期公演 9月23日(土) 14:00開演 ザ・シンフォニーホール
三原公演 9月24日(日) 14:00開演 三原市芸術文化センター ポポロ
※三原公演のみ,ヴァイオリン独奏は,三浦文彰さんです。

2017/09/16

#金沢ジャズ・ストリート2017 オープニングコンサート@石川県立音楽堂 伝説的なジャズピアニスト #秋吉敏子 さんのソロ,#マッズ・トーリング &村上寿昭/OEKの共演による独創性あふれる「ヴァイオリン協奏曲」を楽しんできました #oekjp

金沢市内で毎年9月に行っている「金沢ジャズ・ストリート2017」のオープニングコンサートにOEKが登場し,ジャズ・ヴァイオリン奏者のマッズ・トーリングと共演。さらには伝説的なジャズピアニスト,秋吉敏子も登場するということで,秋の3連休の初日の午後,石川県立音楽堂コンサートホールに聞きに行ってきました。

金沢ジャズ・ストリート(KJS)も今年で9回目で,ラ・フォル・ジュルネ金沢とほぼ同様の歴史を持っているのですが,実はこれまで1回も有料コンサートを聞いたことがありませんでしたが,OEKが出演するとなると,OEKファンとしては聞きにいかないわけにはいきません。

KJSは,ラ・フォル・ジュルネのように,45分単位でハシゴをするようなスタイルではなく,有料公演については通常の公演ぐらいの長さ(ジャズの演奏会の長さはよく知らないのですが...)があります。この日の公演も,前半が秋吉さんのソロ,後半がトーリングさんとOEKの共演から構成された,約2時間の公演でした。

前半に登場した秋吉敏子さんは,日本のジャズピアニストで初めて世界的に活躍された方です。年齢のことを言うのは失礼かもしれませんが,クラシック音楽のピアニストで言うと,イェルク・デームスあたりと同世代になります。80代のピアニストが現役で活躍されているというだけで,素晴らしいのですが,その演奏も味わい深いものでした。

秋吉さんは,トークをまじえつつ,全部で7曲演奏されました(配布されたプログラムは8曲になっていましたが,一部省略したようです)。今日は,3階で聞いたこともあり,やや音圧的には遠く感じ(ピアノの蓋をあまり開けていなかったせいもあるかもしれません),速いパッセージについてはスムーズでない部分はあった気はしましたが,特にしっとりとした雰囲気をもった曲での,淡々とした語り口が実に味があると思いました。

「毎回,演奏会の最後に演奏しています」という「ホープ」という曲(広島や長崎への原爆投下に関する秋吉さんの自作の曲でデューク・エリントンに捧げた長い曲の最後の部分,という説明をされていたと思います)が,今回も最後に演奏されたのですが,この曲での,どこか爽快さと前向きな気分のある演奏は素晴らしいと思いました。

後半は,デンマーク出身のヴァイオリニスト,マッヅ・トーリングさんが登場し,村上寿昭指揮OEKと共演しました。こちらの方は,OEKの定期公演で言うところの,ファンタスティク・オーケストラコンサートのような雰囲気があると思いました。トーリングさんはのヴァイオリンについては,バランスが悪くならない程度にPAを使っており,リラックスした余裕のある音がしっかりとホール全体に広がっていました。

演奏の技巧的にも素晴らしく,時折,「粋なポルタメント」のような奏法を交える以外では,通常のクラシックの演奏会と大きな違いはないと感じました。その点で,ジャズの本道(?)という感じではなく,クロスオーバー的な雰囲気がありました。

その点については,トーリングさん自身も意識しており,「餅アイスクリーム(どこで食べたのでしょうか?私も好きです)」のように,色々な音楽をフュージョンするのが私の音楽と語っていました(英語で言っていたので細かい部分は分かりませんが)。

特にデンマーク出身という北欧のテイストや民族音楽的な親しみやすさの要素が入っているのが大きな個性になっていると思いました。特に最後に25分ぐらいかかる「Begejstring(デンマーク語で「心からの喜び,熱狂」といった意味)というタイトルを持った,3楽章からなるヴァイオリン協奏曲的大曲が非常に面白い作品でした。

通常の協奏曲のように,堂々と始まった後,中間楽章で叙情的になり,最終楽章は大きく盛り上がるというクラシカルな構成でしたが,前述のとおり,色々なジャンルの要素を巧く盛り込んでおり,飽きることなく楽しめる作品となっていました。OEKの定期演奏会で演奏してもおかしくない曲かな,と思いつつ聞いていたのですが,最終楽章のカデンツァ風の部分になって,やはりこれは即興性を重視する何でもありのジャズだなと感じました。

トーリングさんの足元に何か機械が置いてあるのは気になっていたのですが,これを足で操作しながら,事前に仕込んでおいた音源(テンポが結構変化していました)が流れ,それに合わせて,トーリングさんが熱狂的に弾きまくります。各楽章ごとに面白い聴きどころがあったのです,やはりこの部分が全曲の見せ場だったかもしれません。

この曲はトーリングさん自身の作曲ということで,クラシック音楽の作曲家としても,とても面白い存在だと思いました。トークの雰囲気からもどこか知的な雰囲気を感じさせてくれ,今後さらに,国際的にもジャンル的にも,色々な境界を乗り越えて活躍するアーティストとして活躍していくのではないかと感じました。

そして,最後に秋吉さんが再度登場し,トーリングさんとの「50歳差デュオ」で大変リラックスした雰囲気のある演奏を聞かせてくれてお開きとなりました。

全体として,石川県立音楽堂コンサートホールは,ジャズを聞くホールとしてはやや大きすぎる印象でした。結構,お客さんはマジメというか,クラシック音楽のコンサートとほぼ同じ雰囲気だったと思いました。ジャズについては,お客さんの方がもっとリアクションを示しながら聞くのかと思っていたのですが,やはり,音楽堂という場所だとクラシックと同様になってしまうのかもしれませんね。特に秋吉さんの演奏については,聴衆との一体感が感じられるような場所の方が本当は良かったのかなと思いました。

ただし,私としては,いつものOEKの演奏会と同様の気分で2人のアーティストの演奏を楽しめた演奏会でした。

2017/09/02

今年の岩城宏之音楽賞は受賞者なし。その分,岩城宏之メモリアル・コンサートの方は,井上道義+OEKらしさをたっぷりある楽しめる内容に。やっぱり「ジュピター」は良い曲です。 #oekjp

毎年この時期に行われている岩城宏之メモリアル・コンサートでは,その年の岩城宏之音楽賞受賞者とOEKが競演するのが恒例だったのですが,今回は受賞者は不在で,過去の受賞者の中から,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさん(10回岩城宏之音楽賞受賞者)と首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタ(第4回岩城宏之音楽賞受賞者)さんがソリストとして登場し,井上道義指揮OEKと共演しました。

演奏したのは,サン=サーンスの「ミューズと詩人」という曲でした。ヴァイオリン、チェロ、管弦楽のための二重協奏的作品で,OEKが演奏するのは今回初めてです。ほとんど知られていない作品ですが,何といってもサン=サーンス。メロディが美しく,とても気持ちよく楽しめる作品でした。ややセンチメンタルな雰囲気もあったのですが,ヤングさんとカンタさんが演奏すると,ちょっと抑えの効いた大人のロマンといった雰囲気になります。ハープの入った,品の良い色彩感のあるOEKの演奏と合わせて,曲の魅力をしっかり伝えてくれました。こういう知られざる佳曲の発掘というのは,是非,これからも継続していって欲しいと思います。

今回の公演のもう一つのポイントは,最初に演奏された,邦楽器とオーケストラが共演する,三木稔「序の曲」でした。OEKは岩城さんの時代から邦楽器との共演を伝統的に行ってきましたが,この曲では,尺八,二十五絃箏,太棹三味線という3つの楽器が登場しました。邦楽器とオーケストラによる協奏的作品というと,武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を思い出しますが,あの曲のような,緊迫感溢れる作品ではなく,「序の曲」というタイトルどおり,大きく盛り上がる前のイントロダクション的な雰囲気を持った作品でした。

実際,「序の曲」「破の曲」「急の曲」の三部作の最初の曲ということで,ちょっとインパクトが弱い印象はありましたが,まるでハープのようにオーケストラと溶け合って艶やかな気分を出していた野坂操壽さんの二十五絃箏。豊かさを感じさせてくれた本條秀慈郎さんの太棹三味線。そして,通常より大きめの楽器で曲全体にアクセントを付けていた三橋貴風さんの尺八(オーケストラも弦楽器だけだったので,唯一の管楽器でした)。これらが一体となって,スケール感と暖かみを感じさせる演奏を楽しませてくれました。

そして最後にモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」が演奏されました。いうまでもなく,モーツァルトの交響曲の総決算のような堂々たる作品です。そして,今回の演奏もこれまで築いてきた井上/OEKのつながりの強さをしっかり感じさせてくれるような,堂々たる構えと余裕を持った演奏でした。

冒頭部から,適度な柔らかさと芯の強さを持ったオーケストラの響きが最高でした。石川県立音楽堂に最適化された音という感じでした。きっちりと締めつつも,OEKの柔軟性も生かした演奏で,ちょっとした間の取り方,ニュアンスの変化など,この組み合わせならではの表情の豊かさがありました。井上さんは,アンコールの時,「希望を感じさせる曲だ」と仰っていましたが,まさにそういう演奏だったと思います。「ジュピター」を聞くのは,意外に久しぶりの気がしますが,改めて完成度の高い作品だと思いました。

そして,楽しく,爽快な,モーツァルトらしいアンコールが2曲演奏されました。このアンコールについては,後日レビューでご紹介しましょう。井上さんのトークを聞きながら,来年からは,こういう雰囲気を味わう機会が減ってしまうんだな,と少々淋しくなりました。

井上さんはアンコールの時のトークの中で「何事にも終わりがある。だからこそ,そこまでは一生懸命やりたい」(不正確かもしれません)といった言葉をおっしゃられていましたが,このことは,音楽についても言えるし,人生についても言えるし...井上さんとOEKとの関係についても言える言葉だと感じました。

色々な点で名残惜しさを感じた演奏会でした。

2017/08/11

オペラ版「死神」を落語版と2本立てで鑑賞。特に沢崎恵美さんの死神は,カルメンを思わせる悪女の魅力。千変万化の合唱団も大活躍でしたね。8/11も同一公演があります。涼しくなりたい方はどうぞ #oekjp

今晩は,落語「死神」をオペラ版「死神」と合わせて楽しむという,石川県立邦楽ホールならではの企画があったので聞いてきました。

もともと落語「死神」の方は三遊亭圓朝の落語で,ブラックユーモアの味わいのある名作なのですが,これをもとに映画監督として有名だった今村昌平さんが脚本を書き,お馴染み池辺晋一郎さんが音楽を付けてオペラ化したのが,オペラ版です。

そのいちばんの違いは,オペラ版では,死神が艶っぽい女性になっていた点です。そのことによって,ドラマ全体に華やかさが増し,人間の生命力(特に女性の生命力)が強調されたいたように感じました。

池辺さんによるオペラ版や約2時間かかるもので,死神役のソプラノの沢崎恵美さんと葬儀屋役のバリトンの泉良平さんを中心に物語が進みます。儲からない(?)葬儀屋をたぶらかし,死神の言う通りにやっているうちに葬儀屋は,「難病でも治す名医」のようになりお金持ちになっていきます。その展開は落語と共通するのですが,オペラ「カルメン」を観るように,どんどんと風采の上がらない男性が女性にのめり込んでいく感じはオペラならではの面白さでした。

何といっても死神役の沢崎さんのシュッして妖艶な感じが,このキャラクターにぴったりでした。第2幕の最初に1つアリアがありましたが(この曲以外は特にアリアはなかったと思います),この曲を中心に魅力を発散していました。瑞々しさのある声も大変魅力的でした。ただし,本当の悪女というよりは,落語が原作という味も残っており,どこかユーモラスな雰囲気も出していました。

泉さんの方は,凶暴な(?)妻に支配されてい,風采のあがらない。「○○○な」(この部分が大人向けの理由でしょうか)葬儀屋役で,前半はそのとおりの雰囲気があったのですが,死神と接しているうちに,段々と自信が出てきて,格好良く見えてくる辺りが面白いと思いました。泉さんの堂々たる声は,オリジナルが落語と思えない,スケール感を作品に加えていました。

最後,死神の手先になっていることへの罪悪感に目覚めるあたりは,「落語」にない部分です。さらに,色っぽい死神のお蔭(?)で○○○は治ったようで,妻に「子ども」が出来ていました。ただし,この「子ども」の父親は,妻が若い葬儀屋との間の子ども(?)という可能性もあり,謎を残した形になっていました。

この辺の葬儀屋の妻の「たくましさ」というのは,考えてみると死神と同様とも言え,やはり男性より女性の方が絶対に生命力はあるなぁと感じました。この葬儀屋の妻約の二渡加津子さんの迫力のある歌と演技も印象的でした。

このオペラ全体としては,合唱団が大活躍していました。色々な職業の人を含む街の人びと,ヤクザ役,医者役,看護婦役,キャバレーのシーン...これだけ多彩な役柄で登場することも珍しいのではないかと思います。

池辺さんの音楽は,特に沢崎さんの歌う曲などには,ちょっとシュプレッヒシュティンメを思わせる難解な感じの曲が多かったのですが,合唱団の曲には,「ふしぎだな,ふしだな」など,親しみやすく分かりやすい曲が比較的多く,オペラ全体が暗くなるのを防いでいたと思いました。それと,今村さんの脚本自身がそうなのだと思いますが,「どこか昭和」な雰囲気が感じられ(例えば,交通事故の件数などは,現在よりずっと多かったはずです),それが味となって感じれました。

池辺さんの音楽には,現代音楽風のシリアスさと昭和風の分かりやすさが混在させることで(途中,懐メロが1曲入りましたね),オペラ全体を観やすくかつ,深みのあるものにしていたと思いました。松井慶太さん指揮の小編成のOEKも,打楽器やピアノなど多彩な楽器が加わることで,ドラマに彩りと緊迫感を加えていました。

そして,最後の場ですが,やはり,落語同様,沢山のろうそくが出てきました。人間の生命をロウソクに例えるというのは,やはり,外すわけにはいきませんね。この部分での背景に「死神マスク」がうごめく中での「ロウソク沢山」という雰囲気は,やはりこのオペラのいちばんの見せ場だと思いました。

このオペラは,何回も色々な編成で再演されてきているそうですが,人間の生命力のはかなさと逞しさの両方を感じさせてくれる点で,落語同様に名作といっても良いのではないかと思います。

前半の古今亭志ん輔さんによるオリジナル版も素晴らしいものでした。志ん輔さんの声は,口跡が良く,落語を滅多に聞かない私のようなものにも,この落語のストーリーがくっきりと伝わってきました。語り口に軽さと渋みとが両立しており,死を扱っているにも関わらず,重苦しくなくなることなく,生命のはかなさのようなものを実感できました。

というわけで,オリジナルのシンプルな味,オペラ版のスケール感の両方を楽しめた今回のような機会は大変貴重だったのではないかと思います。少々終演時間が遅くなりましたが(21:45頃,「夏休み前」特別公演といったところでしょうか),落語にぴったりの,石川県立音楽堂邦楽ホールならではの好企画だったと思いました。

PS.ロウソクは生命のたとえによく使われるのですが,実際に染色体の一部に「テロメア」というロウソクのような部分があるそうです。次のような番組で取り上げられています。個人的に,結構感心があります。

2017/07/18

OEKの今シーズン最後は井上道義指揮,ティエリー・エスケシュのオルガンによる,OEKらしいプログラム。エスケシュの自作自演の新作はオルガンのイメージを変えるような,不思議な音世界。おなじみカンタさんのチェロ独奏によるサン=サーンスも安心して楽しめました #oekjp

OEKの2016/2017定期公演フィルハーモニーシリーズのトリは,井上道義音楽監督の指揮による,石川県立音楽堂のパイプオルガンを大々的に使ったプログラムでした。プログラムの中心は,OEKの今シーズンのコンポーザー・オブ・ザ・イヤーで,オルガン奏者でもあるティエリー・エスケシュ作曲によるオルガン協奏曲第3番という新作でした。

これまで,新曲は前半に演奏されることが多かったのですが,30分以上かかる未知の曲を最後に持ってくるというのは,余程,エスケシュさんに対する信頼がないとできないことです。実際,最後の曲に相応しいスケール感とストーリーを持った作品でした。

まず,「オルガン=重厚」というイメージを壊してくれました。冒頭から,どこか可愛らしさのある高音が印象的でした。曲の方は,打楽器を大々的に使っている点も特徴で,特に金属系の打楽器とオルガンの音が重なりあうことで,「この音は一体何の音だろう?」という,電子音を思わせるような不思議な響きが続出していました。

曲は4つの部分から成っており,古い時代から現代へと,音楽の歴史を辿るといったコンセプトを持っていました。聴けば何時代の音楽か分かる...というほどの明快さはありませんでしたが,各部分ごとに違った雰囲気で作られており,全曲を通して,壮大なスケール感を感じました。

エスケシュさんの使うオルガンの音には,どこか透明感があると思いました。オルガンの音だけが盛大に目立つことはなく,オーケストラの各楽器の音と一体となって,「これまでにない音」をブレンドしているように感じました。OEKの編成自体も,いつもよりもやや大きめでしたが(トロンボーンが加わっていました),オルガンが加わることで,室内オーケストラというよりは,フル編成オーケストラのような音になっているように感じました。

エスケシュさんは,演奏会の最初に,井上道義さんが提示した主題(交響曲「未完成」をもとにした主題)による即興演奏も行いましたが,本当に多彩な音のパレットを持ったオルガン奏者だと思いました。それと音の使い方のセンスがとても良いと思いました。

今回,エスケシュさんとOEKは,中部地方を中心に,パイプオルガンを持つホールをめぐるツァーを行います。各会場のオルガンの性能や音色に応じた形で,どういう即興演奏を行うのか,楽しみですね。追っかけるわけではないので,聞き比べはできませんが,画期的な企画と言えそうです。

その他,前半ではシューベルトの「未完成」交響曲とサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。

「未完成」交響曲については,名曲中の名曲ということで,今回,井上道義さんは,ステージ下手側に弦楽器,上手側に管楽器を集めるという,非常に変則的な配置を取っていました。ただし,この配置については,数年前の北陸新人門登竜門コンサートの時に「未完成」を演奏した時も同様でした。「「未完成」については,この配置の方が良い」という確信に基づく配置だったと思います。

実際,冒頭から正面奥の高い場所に配置したチェロやコントラバスの音がとてもよく響いていました。また,弦の刻みもしっかりと聞こえてきました。管楽器の方は,上手側に集めることで,管楽器パート全体としての存在感が明確になっていたように聞こえました。「未完成」の場合,オーボエ,クラリネット,フルート,ホルンなどが第2楽章を中心に活躍しますが,その響きがとても美しく厚いと感じました。

そして何よりも,井上さんのじっくりとしたテンポ設定が印象的でした。シューベルトの晩年の作品ならではの,天国に一歩,近づいたような美しさがありました。あらためて「未完成」は良い曲だなぁと再認識しました。
前半最後は,OEKの首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんの独奏で,サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。全曲を通じて,生き生きとした音楽と流れと,ノーブルなチェロの音色を楽しむことができました。第1楽章では,一瞬,カンタさんのチェロが乱れる部分がありました。例えば私だったら(ものすごく変な例えですが...何事につけ),動揺して,その後,ムタムタ(金沢弁)になってしまう気がするのですが,カンタさんは,その後,平然と気持ち良い音楽を聞かせてくれえました。その辺のリカバリー力に,ベテラン奏者のすごさを感じました。

これでOEKの2016/2017シーズンも終了です。最後に実にOEKらしいプログラムを楽しむことができました。

2017/07/13

OEK第2ヴァイオリン奏者の若松みなみさんのヴァイオリン・リサイタル。フランクのソナタを中心にどの曲も爽快に聞かせてくれました。

先週の土曜日から,5日間で4日目となるのですが,本日は,OEKの第2ヴァイオリン奏者,若松みなみさんのリサイタルが行われたので聴いてきました。若松さんはOEKの中でも,最も若い世代の奏者で,今回が初めてのリサイタルとのことでした。というわけで,OEKファンとしては応援しないわけにはいきません。

今回のプログラムは,フランクのヴァイオリン・ソナタ,ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ,モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第25番を中心に,若松さんの演奏したい曲がしっかりと並んでいました。若松さんのヴァイオリンは,どの曲も,本当に音がしっかりと鳴っており,聴いていて惚れ惚れとしました。音が大変豊かで,音を聞くだけで幸福感を感じました。神経質な部分はなく,どの曲にも演奏する喜びが素直に表れていると感じました。

特に最後に演奏されたフランクのソナタの爽快な演奏には,若手奏者ならではの魅力が溢れていました。このところ,湿気が高く,疲労がたまり気味でしたが,週末金曜日まで働くエネルギーが湧いてきまいした。

後半の最初に,同じOEKのチェロ奏者,ソンジュン・キムさんのチェロとの二重奏で,マルティヌーのヴァイオリンとチェロのための二重奏曲第2番が演奏されました。この曲だけは,やや苦み走ったような気分があり,プログラム全体の中で,絶妙のアクセントになっていました。

前半最後に演奏された,サラサーテの「序奏とタランテラ」は,そのタイトルどおりの曲です。最初の音を聞いた瞬間,スペインの陽光が溢れてくるような気分になり,とても良い曲だと思いました。後半のタランテラの部分での技巧的な部分も気持ちよく楽しまてくれました。

ピアノのジュヌゥ・パクさんの演奏には,マイルドな包容力が感じられ,若松さんをしっかりとサポートしていました。

終演後の拍手も大変暖かいものでした。若松さんは,OEK入団後,「金沢が大好きになりました」と語っていましたが,金沢のOEKファンにもしっかりと愛されているなぁと実感しました。今後もソロや室内楽での活躍にも期待したいと思います。

2017/07/12

石川県立音楽音楽堂 室内楽シリーズ。2017年度第1回は,OEKメンバーによる七重奏曲×2曲。ベートーヴェンと「ほぼジャズ」のマルサリスの曲の組み合わせは最高。ジャズも演奏できてしまうOEKメンバーに感服 #oekjp

石川県立音楽音楽堂で行われる室内楽公演シリーズ。2017年度の第1回は,OEKメンバー等による,七重奏曲2曲が演奏されました。もともとこのシリーズでは,「大きめの室内楽」が取り上げられることが多いのですが,管・弦・打が全部揃った室内楽となると,司会の柳浦さんが語っていたとおり,「オーケストラの最少のエッセンス」のように感じられ,大変聞きごたえがありました。

前半に演奏された,ベートーヴェンの七重奏曲は,各パート1人ずつの「超室内オーケストラ」的な響きのする曲です。若い時期のベートーヴェンの作品らしく,どの楽章にも生き生きとした推進力と,前向きの明るさがありました。

この演奏で良かったのは,各メンバーの存在感がしっかりと発揮されていたことです。第1ヴァイオリンの活躍が目立つ曲なので,坂本さんが全体を引っ張っていましたが,大澤さんのチェロ,今野さんのコントバスなど,要所要所で熱い響きを聴かせてくれました。

そして,金星さんが演奏していた,バルブの付いていないホルンも威力満点でした。スケルツォをはじめとして,要所で野趣たっぷりの音を聞かせたり,ゲシュトップフト奏法による,不思議な響きを聞かせたり,これまでに聞いたことのない雰囲気を味わわせてくれました。この響きと対照的だったのが,遠藤さんのクラリネットで,大変気持ちよく,流れるような歌を聞かせてくれました。

後半に演奏された,ウィントン・マルサリス作曲の「フィードラーズ・テール」の演奏は,「OEKが本格的なジャズを演奏してしまった!」という点で画期的な演奏だったと思います。もともとは,ストラビンスキーの「兵士の物語」の組曲版と組み合わせるためにマルサリスが作曲した作品ということで,「兵士の物語」と全く同じ楽器編成(7人編成)です。ストーリー展開も,兵士の物語のパロディのような感じになっています。

「兵士の物語」でもヴァイオリンが活躍していたので,オリジナルの風味も残っていたのですが,曲が進むにつれて,マルサリス色,というかジャズ色が強くなっていくように感じました。ベートーヴェンの七重奏曲の時同様に,各奏者のソリスティックな活躍が印象的でしたが,特に藤井さんのトランペットの,マルサリスに成り切ったような,濃い演奏が最高でした。多彩なリズムを刻んでいた渡邉さんのドラムスも見事でした。

全員で演奏すると,ちょっとしたビッグバンド風に聞こえるのも面白いところでした。皆さん,当然のことながら,楽譜を見て演奏されていましたが,譜面通り演奏すると「ジャズ」になってしまうマルサリスの曲もすごいと思いました。そして,何よりも,しっかりジャズも演奏できてしまう,OEKのメンバーの適応力の高さにも感服しました。よくぞこの曲を選んでくれた,と感謝したくなりました。

アドリブがなかったのが,やはりクラシック音楽だったのかもしれませんが,今回の演奏は,是非,ジャズ音楽のファンにも聴いてもらいたかったと思います。お客さんと演奏者との距離の近さもジャズに通じる部分があると思いました。

というわけで,今後,ジャズ・ファンとクラシック音楽ファンの相互乗り入れ可能な演奏会というのを企画しても面白いかもと感じました。

2017/07/08

OEK定期Mは,「しゃべって振れる」 #辻博之 さん指揮による,モーツァルト作品集。#鳥木弥生 さん,#鷲尾麻衣 さんの華やいだ声と雰囲気とともに,名曲から珍しい曲までを堪能しました #oekjp

OEKの2016/2017定期公演マイスターシリーズでは,モーツァルトの作品を取り上げてきました。その「トリ」は,辻博之さん指揮による,モーツァルトのオペラのアリアを中心としたプログラムでした。今回の特徴は,有名アリアではなく,ソプラノとメゾ・ソプラノによる二重唱を中心とした,比較的知られていないアリアを集めていた点にあります。特にモーツァルトが14歳の時に書いた,歌劇「ポントの王ミトリダーテ」の中の二重唱で締めるというのは,考えてみると,とても大胆でした。

辻さんによる明るく,分かりやすい解説に加え,鷲尾麻衣さん,鳥木弥生さんという「華のある」2人の歌手が加わり,辻さんが語っていた「初めてモーツァルトを聞く人でも,何十年も聞いて来た人とでも楽しめるプログラム」という意図はしっかり実現されていたと思います。

演奏会の前半では,モーツァルトの交響曲第25番が演奏されました。6月末には,アビゲイル・ヤングさんの弾き振りで29番を聞いたばかりでしたが,その時同様に,室内オーケストラらしからぬ,力強さを感じさせてくれる演奏でした。辻さんは,トークの時などは大変にこやかで饒舌でしたが,この曲については,指揮棒を大きく振り下ろした瞬間に,シリアスでビシっと締まった音楽が始まり,「すごい!」と思いました。

2楽章の不安な静けさに溢れた音楽。第3楽章も悪夢に取り憑かれたような不安な気分がありましたが,トリオの部分では,完全に木管メンバーに任せ,現実にふっと戻ったような気分にさせてくれました。そして,すごく速いテンポの第4楽章,

この振幅の大きさは,実に「アマデウス的」だなぁと思いました。辻さんは,ネットで調べてみるとまだ30代前半ということです。「しゃべって振れる」指揮者ということで,今後活躍の場を広げていくのではないかと思います。

後半は「ドン・ジョヴァンニ」序曲で始まりました。辻さんとOEKは,今年の秋,映画『アマデウス』を生演奏付きで上映するという,注目の企画に参加しますが,この曲と交響曲第25番については,まさに「予告編」といったところでした。

続いて,鳥木さんと鷲尾さんが登場し,モーツァルトのオペラの中の二重唱を2曲歌いました。最初の「フィガロ」の中の「けんかの二重唱」については,どうしても,数年前に井上道義さん指揮,野田秀樹演出で観た例の和風「フィガ郎」を思い出してしまいます。その時の過激な和訳を思い出すと,今回の2人の重唱は,「女の戦い」を大変優雅に表現していたと思いました。きっと今回の方が本来の歌なのだと思います。

ちなみに今回の字幕についても,辻博之さんが担当されていました。イタリア語は分からないのですが,「超訳」といった感じの,大変分かりやすい訳だったと思います。

「コジ・ファン・トゥッテ」の中の二重唱「私あの栗色のほうがいいわ」の方は,「女子会トーク」(予告の解説の文言です)といった趣きがありました。コンサートホールで聞くお2人の声には,たっぷりとした余裕とみずみずしさがあり,2人の声がしっかり絡み合うにつれで,どこか艶っぽい気分にさせてくれました。機会があれば,是非,この2人で「コジ」の全曲を期待したいと思います。

後半の後半では,スネアドラムなどが活躍する,コントルダンス「雷雨」が間奏曲的に演奏された後,鷲尾さんによる「コジ」の中のデスピーナのアリア,鳥木さんによる,「皇帝ティートの慈悲」の中のアリアが歌われました。特に特に鳥木さんの歌ったアリアの方は,OEKのクラリネット奏者の遠藤さんによるオブリガートが,鳥木さんのドラマを秘めた声としっかり絡んでいました。これだけクラリネットが大々的に活躍するアリアも珍しいと思います。演奏会用アリアという感じの聞きごたえのある歌を楽しませくれました。

最後,上述のとおり,「ポントの王、ミトリダーテ」の中の二重唱「私が生きることがかなわなくても」が演奏されました。辻さんが「いちばん好きな二重唱」と語っていた通り,14歳の作品とは思えない立派な曲でした。段々と,2人の歌手によるコロラトゥーラの応酬のような感じになり,充実した気分で全曲を締めてくれました。

個人的には,やはり「交響曲で終わる」定期演奏会というのが好みですが,こういう「知られざる曲」を再発見させてくれる企画も面白いと思います。例えば,5月の「新音楽祭」のワクの中にあると,ぴったり来るのでは?と思わせるような演奏会でした。
というわけで,辻さんについては,企画力も含め,今後のOEKとの共演に期待したいと思います。とりあえずは11月の「アマデウスLive」が大変楽しみです。

2017/06/24

音楽堂室内楽シリーズ2017。今年は本格的な室内楽中心。最後はNAXOSでお馴染みの指揮者登場

日,OEKの定期公演に行った時,2017年度の音楽堂室内楽シリーズのチラシが置いてありました。今年は次の4回で,例年よりは「こだわりの室内楽」「やや大きめの編成の室内楽」を楽しめそうです。

以下のとおりです。

7月12日(水)19:00~ 石川県立音楽堂交流ホール
OEKチェンバー・コレクションI
マルサリス:フィドラーズ・テール
ベートーヴェン:七重奏曲
*マルサリスの曲は,ジャズ・トランペット奏者のウィントン・マルサリスが「兵士の物語」に触発されて作った曲です。OEKのメンバーを中心に,次のメンバーが登場します。
坂本久仁雄(ヴァイオリン),石黒靖典(ヴィオラ),大澤明(チェロ),今野淳(コントラバス),渡邉昭夫(打楽器),遠藤文江(クラリネット),柳浦慎史(ファゴット),金星眞(ホルン),村岡俊昴(トロンボーン)

8月22日(火)19:00~ 石川県立音楽堂交流ホール
IMA&OEKチェンバーコンサート
ラヴェル:弦楽四重奏曲
ラヴェル:序奏とアレグロ
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
フランク:ピアノ五重奏曲
*フランス系の室内楽で統一された魅力的なプログラムです。次の方々が出演します。レジス・パスキエ,ロラン・ドガレイユ,ファン・モンラ,神谷美千子,原田幸一郎(ヴァイオリン),毛利伯郎(チェロ),ハエスン・パイク(ピアノ)+OEKメンバー,平尾祐紀子(ハープ)

11月21日(火)19:00~ 石川県立音楽堂交流ホール
OEKチェンバー・コレクションII
ニールセン:木管五重奏曲
プーランク:ピアノ六重奏曲
*OEKの管楽器メンバーを中心としたプログラムです。次の方々が出演します。
松木さや(フルート),加納律子(オーボエ),遠藤文江(クラリネット),柳浦慎史(ファゴット),金星眞(ホルン),鶴見彩(ピアノ)

2月25日(日)14:00~ 石川県立音楽堂コンサートホール
ビートルズ・ゴー・バロック
ビートルズ合奏協奏曲ほか
*NAXOSレーベルにビートルズやエルヴィス・プレスリーの曲をバロック音楽風に編曲した企画ものがありますが,その編曲をしたピーター・ブレイナーさんをゲストに招き,このCDと同様の内容の演奏会が行われます。

第1回~第3回は1回2500円,第4回は3500円ですが,お得な4回セット券というのもあります。こちらは7000円です。3回以上行くならば,こちらの方が得ですね。
Chamber_music_series2017_2

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