OEKのCD

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コンサート

2018/10/13

#oekjp #ユベール・スダーン 指揮OEKの10月の定期公演は,シューベルト,モーツァルト,ハイドンの作品。「太鼓連打」の引き締まった力強さをはじめ,自信に溢れた立派な演奏。久しぶりの #堀米ゆず子 さんとは,モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番を共演。こんなに良い曲だった!と曲の魅力を再発見

ユベール・スダーン指揮OEKの10月のマイスター定期公演は,シューベルトの交響曲第5番,モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番,ハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」というウィーン古典派の作品集でした(シューベルトの5番も古典派と言っても良いでしょう)。9月の川瀬賢太郎さん指揮によるフィルハーモニー定期もウィーン古典派特集だったので,丁度セットになるようなプログラムだったと思います。

スダーンさんとOEKの組み合わせについては,9月上旬に行われた岩城メモリアルコンサートで,その相性の良さは証明済みでしたが,今回のプログラムでは,さらにスダーンさんらしさが徹底した充実した音楽を聞かせてくれたと思います。

最初に演奏された,シューベルトの交響曲第5番は,OEKのベーシックなレパートリーの1つで過去何回も演奏してきている曲です。今回の演奏は,基本的にテンポは速めでインテンポでしたので,コンパクトでかっちりとまとまった古典的な曲という印象が残りました。シューベルトの曲らしい叙情味を要所要所に聞かせてくれながら,曲全体としては,揺るぎない構築感を感じさせてくれる素晴らしい演奏でした。

2曲目は,ベテランのヴァイオリン奏者,堀米ゆず子さんをソリストに迎えてのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番でした。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲については,圧倒的に3番と5番。その次に4番が演奏される機会が多いのですが,第1番を実演で聞くのは...初めてのような気がします。

CDなどでは,やはり3,4,5番の印象が強く,どういう曲か覚えていなかったのですが,今回,堀米さんによる演奏を聞いて,良い曲だなぁと思いました。堀米さんがOEKと共演するのは,20数年ぶりのことです。その音色には自然に円熟味が漂っており,モーツァルト19歳の時の作品を,味わい深く聞かせてくれました。両端楽章などは,速いパッセージを鮮やかに聞かせてくれたのですが,そこには常に余裕がありました。第2楽章のアダージョは音楽自体に深みがあり,底光りするような美しさを感じさせてくれました。

今シーズン,OEKはフォルクハルト・シュトイデさんとの共演で,モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番も演奏しますが,この際,第2番もどなたかと演奏してもらい,「全集」にしてもらたいものです。

後半はハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」1曲でした。編成的には,実はこの曲がいちばん大きいので,今回のプログラムの場合,トリにぴったりでした。何よりも,スダーンさんの作る音楽に折り目正しさと同時に力感が溢れ,壮麗さすら感じさせる気分の中で演奏会を締めてくれました。

この曲については,ニックネームが付けられているとおり,第1楽章冒頭などに出てくる「太鼓連打」がまず聞き所になります。英語だと「Drum Roll」となりますが,まさに本日の演奏はバロック・ティンパニによる,コロコロコロ...といった心地良いロールのクレシェンド,デクレッシェンドで始まりました。第1楽章は,このロールにしっかり縁取られて,躍動感溢れる音楽を聞かせてくれました。

変奏曲形式の第2楽章も大変力強い歩みでした。その間にサイモン・ブレンディスさんによる鮮やかなソロが活躍していました。第3楽章のメヌエットもゴツゴツとした感じで始まりましたが,トリオの部分は対照的に夢見るような心地よさ。クラリネットの音がとろけるように響いていました。そしてホルンの信号で始まる,推進力のある第4楽章。改めて,ハイドンは良いなぁと思いました。どの曲を聞いても楽しめるというのは,実はとてもすごいのでは,と思っています。

というわけで,9月に続いて,スダーンさんとOEKの強い信頼感に結ばれたような充実の演奏を楽しむことができました。

ちなみに,この日は,客演の首席チェロ奏者として,マルタ・スドゥラバさんが参加していました。コントラバスのルビナスさん,ヴィオラのグリシンさんと合わせて,クレメラータ・バルティカ出身のメンバーで低弦が支えられていた形になります。今回,とても低音が充実して感じられたのは,このこともあったのかなと思いました。

2018/10/09

#石川県立音楽堂 室内楽シリーズ 木管アンサンブルの響き。OEKの木管メンバーを中心とした「木管祭り」。オリジナル・アレンジの「牧神の午後」,「スペイン奇想曲」をはじめ,木管アンサンブルの多彩な魅力を伝えてくれました。#oekjp

今晩は,石川県立音楽堂室内楽シリーズ「木管アンサンブルの響き」を聞いてきました。昨年度までの室内楽シリーズは,交流ホールで行われることが多かったのですが,今年度はコンサートホールで行う方針になったようで,ゆったりと楽しんで来ました。つくづく,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の木管パートの音色は美しいなぁと思いました。交流ホールの方がステージが近いメリットはありますたが,やはり,響きの美しさの点では,コンサートホールが上回っていますね。

今回の編成は,OEKの松木さん,加納さん,遠藤さん,柳浦さん,金星さんによる「木管五重奏」がベースで,そこに,クラリネット(各種)担当の松永彩子さん,アルト・サックスの角口圭都さん,ピアノの倉戸テルさんが加わっていました。

今回のプログラムで素晴らしかったのが,7曲全部,楽器編成が違っていた点です。最初のハイドンのディヴェルティメントは,基本メンバー5人。その後,クラリネットを中心としたメンデルスゾーンの曲,フルートのソロで始まるドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」の編曲版,オーボエを中心としたピアソラの「アディオス・ノニーノ」。そして後半は,ヤナーチェクの木管六重奏曲「青春」,最後に全員勢揃いのリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の編曲版。曲目の傾向もバラエティに富んでおり,木管アンサンブルの楽しさを味わうのに絶好の演奏会だったと思います。

今回の目玉だったのは,やはり今回の編成のために,松永彩子さんが編曲した「牧神の午後への前奏曲」と「スペイン奇想曲」だったと思います。通常の木管五重奏にアルト・サックスやバス・クラリネット。さらにはピアノやパーカッションも加わり,オリジナルのオーケストラ版とは一味違った,柔らかな響き,明快な躍動感...などを楽しませてくれました。

「牧神の午後」は,フルートの松木さやさんのソロで始まりましたが,その音を聞いただけで,別世界に連れて行ってくれるようでした。編曲者の松永さんへのインタビューでは,管楽器は弦楽器のようなロングトーンは苦手なので,いくつかの楽器に分担させた,といったことを語っていました。その色々な音の積み重ねや切り替わりも面白いと思いました。

ヤナーチェクの「青春」は,少々つかみ所のない雰囲気のない作品でしたが,管楽アンサンブル版の「スペイン奇想曲」は,オーケストラ版とは違った鮮やかさとまろやかさがあり,演奏会全体を楽しく締めてくれました。

最後,アンコールとして,ちょっとビッグ・バンド風の趣きのある,「アイ・ガット・リズム」が演奏されてお開きとなりました。この曲では,ソロを演奏した,角口圭都さんのアルト・サックスの柔らかく艶のある音も印象的でした。

このシリーズでは,メンバーのトークが入るのも楽しみですが,今回は「入れ替わり立ち替わり」だったのも,OEKファンには嬉しかったですね。そういったことも含め,「OEK木管祭り」といった明るい雰囲気に包まれ,会場全体にリラックスした空気があったのがとても良かったと思います。この木管シリーズは,是非,続編を期待したいと思います。

2018/10/06

OEK小松定期公演「秋」は #田中祐子 さん指揮によるフランス・プログラム。#サン=サーンス の2番,#松木さや さんの独奏によるイベールのフルート協奏曲といった隠れた名曲を凜々しい演奏で楽しみました。#辰巳琢郎 さんの語りによる絵本風 #動物の謝肉祭 も良い味わい #oekjp

半年に一度,春と秋に行われている小松定期公演の「秋」を聞いてきました。「春」の方は,川瀬賢太郎さん指揮によるチャイコフスキー・プログラムでしたが,今回は,田中祐子さん指揮によるフランス音楽プログラムでした。演奏されたのは,辰巳琢郎さんのナレーションを交えた,サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」,OEKのフルート奏者,松木さやさんの独奏によるイベールのフルート協奏曲,そして最後に,サン=サーンスの交響曲第2番イ短調が演奏されました。

今回の「動物の謝肉祭」は,絵本のような雰囲気のストーリーだったのに対し,他の2曲は金沢でも滅多に演奏されない曲ということで,「子供からマニア(?)まで」楽しめる内容ということになります。

最初に演奏された「動物の謝肉祭」は,少年が夢の中で動物園を一回りするという,「くるみ割り人形」を思わせるような,「夢落ち」のストーリーになっていました。田中祐子さんの指揮にも,元気の良さだけでなく,どこかファンタジーを思わせる気分がありました。

今回は,総勢十人程度の,オリジナルの室外楽編成による演奏でした。今回のメンバーは,ブレンディスさん,江原千絵さんのヴァイオリン,グリシンさんのヴィオラ,カンタさんのチェロ,ルビナスさんのコントラバス,岡本さんのフルート...ということで,各曲ごとにOEKメンバーのソロを楽しむことができました。お馴染み,田島睦子さんと松井晃子さんのピアノも息がぴったりで(例の「ピアニスト」では,故意にずらしていましたが),「OEKファミリー=気心の知れた仲間たち」による,謝肉祭を楽しむことができました。

やはり,聞きものの「白鳥」は,カンタさんならではの,しっとりとした詩的な演奏でした。今回のファンタジー風「謝肉祭」にぴったりでした。ピアノ2台伴奏による,オリジナルの「白鳥」は意外に聞く機会がないのですが,やはり,良いですねぇ。

辰巳さんの語りは,とても落ち着きのあるもので,子供向けファンタジー的な内容にも関わらず,大人が聞いても自然に楽しむことができました。「生の辰巳さん」を見るのは,初めてだったのですが(百万石まつりに出演されていたのを見たかも...),テレビで見るよりもずっとスマートで長身に見えました。辰巳さんもそろそろ「還暦」とのことでしたが,そうは見えず,「やさしいお父さん」が読み聞かせをするような若々しさを感じました。

後半はまず,イベールのフルート協奏曲から始まりました。実は,今回の公演のお目当てはこの曲でした。第1楽章の最初の方は,ちょっととっつきにくい感じもありましたが,ラヴェルの「パヴァーヌ」辺りに通じるようなしっとりとした気分のある第2楽章,無窮動のような第3楽章と,松木さんの安定感抜群のくっきりとした気持ちのよいフルートを楽しむことができました。田中祐子さんの生き生きとした指揮ぶりと合わせ,凜々しさを感じさせてくれる演奏だったと思います。

演奏会の最後は,サン=サーンスの交響曲第2番でした。演奏される機会の少ない作品ですが,OEKの編成とキャラクターにぴったりの作品で,演奏会全体をキリっと締めてくれました。サン=サーンスの曲らしく,短調でありながら,本気で暗くなるような感じはなく,古典的な構成の中で,心地良い躍動感と流動性を感じさせてくれました。

第2楽章の静かで豊かな歌,ちょっとフランス風味のある第3楽章スケルツォ,そして,タランテラを思わせるような最終楽章と,楽章ごとのキャラが大変分かりやすく,初めてこの曲を聞く人にも十分に楽しむことができたのではないかと思います。滅多に演奏されない曲ですが,数年に1回ぐらいは,OEKの定期公演で取り上げて欲しい曲だと思いました。

この日は,各曲の演奏時間自体はそれほど長くなかったので(3曲合わせても1時間程度だったと思います),その分,辰巳さんと田中さんのトーク,さらにはフルートの松木さんへのインタビューもありました。個人的には,松木さんがフルートを始めたきっかけのお話などが特に興味深く感じました。

というわけで,これで2回連続で小松定期公演を聞いたことになります。こまつ芸術劇場は,石川県立音楽堂コンサートホールよりもコンパクトなホールで,演奏者が身近に感じられますので,金沢での定期公演とはまた違った魅力があると思います。都合がつけば,是非,また聞きに期待と思います。

2018/09/23

9/20の定期に行けなかったので,本日は大阪 #ザ・シンフォニー・ホール まで遠征し #川瀬賢太郎 指揮OEKを聞いてきました。筋肉質で引き締まってクリア,全身全霊を込めたベートーヴェン「運命」。さすがとしか言えない #小山実稚恵 さんのモーツァルト。大満足です。 #oekjp

9月20日に石川県立音楽堂コンサートホールで行われた,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2018/19シーズンの開幕の定期公演に残念ながら行けませんでしたので,大阪への日帰り小旅行を兼ねて,ザ・シンフォニー・ホールでの大阪公演を聞いて来ました。指揮は,9月からOEKの常任客演指揮者に就任した川瀬賢太郎さん,ピアノ独奏は,日本を代表するピアニストの一人,小山実稚恵さんでした。

本当は,金沢の定期公演がそのまま大阪公演に振り替えてもらえるとともて良かったのですが,金沢公演のチケットを返却して音楽堂マネーに交換した上で,改めてチケットぴあで購入しました。その席ですが,私自身,これまで座った中でも「最高!」と思える席になってしまいました(自分で選んだのですが...)。図らずも,OEKの素晴らしさと同時に,日本初のクラシック音楽専用ホールの素晴らしさも実感できました。

今回のプログラムですが,常任客演指揮者に就任した川瀬さんの,ご挨拶がわりのプログラムであると同時に,OEKファンからすると,川瀬さんはOEKのコアなレパートリーであるウィーン古典派の作品でどういう解釈を聞かせてくれるのだろうか,という試金石のような内容でした。そしてその結果は...期待を上回るような,素晴らしさでした。

メインで演奏されたのは,クラシック音楽のコア中のコアである,ベートーヴェンの交響曲第5番でしたが,冒頭の「運命のモチーフ」からスリムに引き締まっており,無骨だけれども新鮮さのある音を聞かせてくれました。テンポはそれほど速い感じではなく,最終楽章などでは,じっくり,しっかりと音を鳴らし切りましょう,といったメッセージが指揮全体から伝わってきました。そして,実際,そのとおりの音が出ていました。

演奏後,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんが,疲れ切った感じで川瀬さんと握手をしていましたが,見ていて(今回,かなり近くの席だったのです),音に対する集中度の高さとそこから出てくる熱量の高さが凄いと思いました。それでいて,音楽全体としては,がっちりと無骨にまとまった古典派の交響曲を聞いたなぁという実感が残りました。

OEKメンバーの個人技を聞かせる部分もしっかり作り(オーボエの加納さんの演奏など,協奏曲のカデンツァを思わせるボリューム感がありました),要所要所では,パンチ力とスパイスを効かせていました。第4楽章のピッコロなど,ピリーッとしていましたね。

この作品については,「今さら「運命」?」と思われることもあるかもしれませんが(ただし,トロンボーン3本とコントラファゴットが入るので,OEKは比較的演奏していないかもしれません),改めて,OEKの中心レパートリーとなる重要な作品だなぁと思いました。

最初に演奏されたハイドンの交響曲第90番についても,基本的なコンセプトは,「運命」と同じで,例えば,第1楽章に出てくる「タタタタタタ」という基本モチーフが,緻密にクリアに演奏されて,音楽ががっちりかつ瑞々しく構築されていくのが心地良かったですね。この曲では,いつものことながら,フルートの松木さんの高級なシルクの肌触り(...何となく書いているのですが)といった感じの音が素晴らしかったですね,聞く人の気持ちを幸せにするような音でした。

そしてこの曲の最大のポイントは最終楽章です。ここではネタをばらしてしまいますが,「終わった!」と見せかけて,「まだ続くよー」というハイドンならではのユーモアが入っています。川瀬さんはご丁寧に「終わりましたよー」と客席を振り返る動作を見せ,しっかり拍手が入ったのを確認した後,「ノーノーノー...実はまだ続くんです」という動作を見せて,曲を再開。この時の,オーボエの水谷さんによる「引っかかりましたねヘッヘッヘー(私にはそう聞こえました)」という感じのユーモラスな演奏も最高でした。「川瀬さん,おぬしも人が悪いのぉ」と言いたくなるような役者ぶりでした。

さらに「今度こそおしまい」と思わせて,再度拍手が入ったのですが...再度「ノーノーノー」の動作。楽譜の指定がどうなっているのか知らないのですが,いつもより多めに騙された感じです。というわけで,今回のハイドンの90番にニックネームを付けるならば,「二度あることは三度ある」「三度目の正直」もしくは「人間不信」といったところでしょうか。大変楽しいパフォーマンスに1曲目から大きく盛り上がりました。

そして2曲目には,小山実稚恵さんのソロを交えてのモーツァルトのピアノ協奏曲第20番が演奏されました。小山さんについては,ラフマニノフの大曲などもバリバリ弾きこなすロマン派の大曲がレパートリーのメインのピアニストだと思っていたのですが,今回のモーツァルトもお見事でした。

モーツァルトならではのシンプルなメロディをさらりと弾くだけで味がありました。この曲については,ベートーヴェンがカデンツァを書いており,ほぼデフォルトになっています(この日もこのカデンツァでした)。曲全体にもベートーヴェンに通じる気分が漂っています。小山さんのしっかりとした強さのあるタッチは,そのムードにぴったりでした。第1楽章,第3楽章終盤のカデンツァから終結部にかけての,音の迫力が特に素晴らしいと思いました。

その一方,第2楽章で聞かせてくれた軽みのある清潔感のある歌も印象的でした。小山さんはアンコールで,バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の第1曲のプレリュードを本当に美しいタッチで聞かせてくれましたが,古典回帰,バロック回帰の新境地を築きつつあるのかもしれません。というわけで,この曲もまた大満足でした。

今回の公演では,ハイドン,モーツァルト,ベートーヴェンの3人の大作曲家の「持ち味」を聞かせつつ,その上に川瀬さんらしさ,小山さんらしさも楽しませてくれました。10月の定期公演でも,ユベール・スダーンさん指揮,堀米ゆず子さんのヴァイオリンで,ウィーン古典派の曲を中心としたプログラムが取り上げられます。ミンコフスキさん指揮による,フランス音楽なども楽しみですが,OEKで古典派の曲を聞き比べる楽しみも期待できそうです。

PS.大阪のザ・シンフォニー・ホールに来たのは...恐らく15年ぶりぐらいだと思います。日本初のクラシック音楽専用ホールとして1980年代前半に開館した後,とても良い感じでエイジングが進んでいると思いました。日常生活としっかりと切り離された,良い意味での「敷居の高さ」があるホールだなぁと思いました。

2018/09/08

OEKのプリンシパル・ゲストコンダクターに就任した #ユベール・スダーン 指揮による,正真正銘の #岩城宏之メモリアルコンサート。#吉田珠代 さんの上質な声,#池辺晋一郎 作曲の新作 #この風の彼方へ 。どちらも素晴らしいと思いました #oekjp

本日は9月上旬恒例の「岩城宏之メモリアルコンサート」を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。このコンサートでは,毎回,その年の岩城宏之音楽賞受賞者とオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が共演していますが,今年は,福井県出身のソプラノ歌手,吉田珠代さんが登場しました。さらに今回の注目は,9月からOEKのプリンシパル・ゲストコンダクターに就任したばかりの,ユベール・スダーンさんが指揮をすることです。そしてOEKのコンポーザー・オブ・ザ・イヤーである,お馴染み池辺晋一郎さんの新作が初演されました。

新作の初演,新しいアーティストの発掘というだけで岩城さんらしいのですが,今回は,その他に演奏された曲が,プロコフィエフの古典交響曲とモーツァルトのハフナー交響曲ということで,岩城&OEKの「お家芸」と言ってよい作品が並びました。過去の「メモリアルコンサート」の中でももっとも,岩城さんらしさの漂う演奏会になりました。

まず,ユベール・スダーンさんの指揮が素晴らしかったと思います。古典交響曲もハフナー交響曲も,既にOEKと何回も演奏してきたような自然さで,気負ったところのない正統的な演奏を聞かせてくれました。

最初に演奏された古典交響曲は,風刺を効かせて,結構毒のある感じで演奏することもできると思いますが,スダーンさんの指揮は,どっしりと聞かせる部分と,さらりと聞かせる部分のメリハリが効いており,「正調・古典交響曲」といった感じでした。

ハフナー交響曲の方は,ガル祭の時にリッカルド・ミナーシさん指揮のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団による,盛大に花火を打ち上げるような感じの演奏もありましたが(これはインパクトのある演奏でした),スダーンさんの指揮は,古典交響曲同様に楽章間のバランスがよく,現代のスタンダードといった感じの洗練されたモーツァルトを聞かせてくれました。

第2楽章については,ロマンティックに演奏されるのも実は好きなのですが(私の原点はブルーノ・ワルターの指揮の録音なので),今回は「文字通りアンダンテです」というリズム感を感じさせる演奏で,とても新鮮に感じました。第3楽章のメヌエットも速めの演奏でしたが,中間部では時々,人を食ったように長~く伸ばす部分があったり余裕たっぷりのウイットを感じました。曲全体に感じられる,神経質になりすぎない,緻密さも素晴らしいと思いました。

これから,スダーンさんはOEKと,ウィーン古典派の曲を多く取り上げてくれると思いますが,「万全の演奏を聞かせてくれそう。安心」という期待感が湧きました。

ソプラノの吉田珠代さんとの共演もモーツァルトの作品でした。「どうしてあなたを忘れられましょう」というコンサート・アリアだったのですが(初めて聴く曲でした),ソプラノに加え,第2のソリストという感じでピアノが加わる変わった編成の作品でした。最初しっとりとした弦楽器の演奏に続いて,吉田さんの声が入ってくるのですが,その音にぴったりのしっとり感で,「素晴らしい!」と思いました。上質な声といった余裕と品の良さのを感じました。

後半は華やかさを増してくるのですが,コロラトゥーラ的な要素は,ピアノにお任せしている感じで,全曲を通じて,落ち着いた美しさを感じさせてくれました。ピアノは居福健太郎さんという方が担当していましたが,吉田さんの声にしっかりと絡み,曲を盛り上げてくれました。

そして,池辺さんの新作です。これもまた,素晴らしい作品でした。「この風の彼方へ」ということで,ちょっと武満徹の曲のタイトルを思わせる感じでしたが,詩的な要素を素材にしている点でも共通する部分があると思いました。

曲の最初の部分はピチカートっぽい弦楽器の音と打楽器各種が混ざったような音で始まり,フルートやクラリネットがそれぞれ,意味深でソリスティックなフレーズを演奏します。この出だしの部分から,強くひかれました。その後も色々な楽器のソロが出てきたりしましたが,池辺さん自身が演奏前に語っていたとおり,OEKのメンバーの顔をイメージして書いたのではと思わせるほど,OEKにフィットした音を聞かせてくれました。

曲の後半では,弦楽器が不協和音でザッザッザッザッザッ....といった「春の祭典」を思わせるようなリズムで演奏する部分があったり,池辺さん自身プログラムノートで「3.11以降の僕のライトモチーフ」と書かれていた,何かを深く語りかけるようなフレーズが出てきたり,現代の社会に漂う漠然とした不安をしっかり伝えてくれるような「力」を感じました。

演奏前のトークで,「スダーンさんはとても細かく練習を行っていたので,イメージどおりの音が響いた。一音も修正の必要がなかった」と池辺さんは語っていましたが,池辺さんの会心の作品ではないかと思いました。この作品は,機会があれば,再演していって欲しいものです。

というわけで,プログラム的には一見地味目で,時間的にも短めでしたが,メモリアル・コンサートの趣旨にぴったりの内容だったと思います。特にスダーンさんの指揮が素晴らしかったですね。岩城メモリアルであると同時に,スダーンさんへの期待がさらに広まる,「襲名披露」公演だったと思いました。

2018/08/26

OEK富山特別公演 今年はベートーヴェンの #ミサ・ソレムニス。#山下一史 さんの指揮,#合唱団OEKとやま の歌唱はバランスよく爽快。ゲストコンサートマスター #荒井英治 さんのソロもお見事 #oekjp

本日は富山市で行われた,合唱団OEKとやまとオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)富山特別公演を聞いてきました。昨年はヴェルディのレクイエムが演奏されましたが(あれから早くも1年なんですね),今年はそれに匹敵する大作ベートーヴェンのミサ・ソレムニスが演奏されました。

金沢では,石川県音楽文化協会の合唱団が毎年12月に第9とセットでこの曲を演奏していますので,個人的にはお馴染みの作品ですが(この年末公演のおかげで大好きな作品になりました),オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)にとっては,演奏するのは久しぶりだと思います。

今回は,「富山での夏のミサ」公演ではお馴染みの山下一史さん指揮でこの大曲が演奏されました。大曲といいつつ,実は,本日の演奏は,予想以上にテンポの速い演奏で,CD1枚に収まるテンポだったと思います。会場での事前アナウンスでは80分を予定と言っていましたが,75分ぐらいだったと思います。その一方で,慌てた感じはなく,じっくりとこの曲を楽しませてくれた,という実感が残りました。

山下さんは,若い頃,往年の大巨匠,ヘルベルト・フォン・カラヤンのアシスタントをされていましたが,その師匠譲りの充実感の残るミサだったと思います(カラヤンはこの曲を何回もレコーディングしていますね)。冒頭「キリエ」の和音から,合唱のボリューム感がホールのサイズにぴったりで,バランスよく,しっかりと祈りの音楽へと導いてくれました。

ソリストの方は,昨年同様,藤原歌劇団の皆さんでしたが,ソプラノの川越塔子さんとテノールの中鉢聡さんについては,「押しが強すぎ」といったところがあり,ややバランスが悪い気がしました。恐らく,オペラならば丁度良かったと思うのですが,声がダイレクトに飛び込んでくる富山県民会館で聞くと,特に川越さんの声は,かなり大仰な感じに聞こえました。その一方,お馴染みメゾ・ソプラノの鳥木弥生さんの声は,最終楽章の「ミゼレーレ」の部分をはじめ,染みこむような声を聞かせてくれました。バリトンの豊嶋祐壹さんは,他の3人に比べると,ややインパクトが弱い印象でした。

今回の演奏では,グローリアやクレドの後半に出てくる,フーガの部分のテンポの速さが特徴だったと思います。その点で「合唱団OEKとやま」の皆さんは大変だったと思うのですが,その躍動感のある表現からは,「晩年のベートーヴェン」というよりは,「フランス革命の時代のベートーヴェン」といった前向きの気分伝わってきました。

今回の公演のMVPと言っても良いのは,サンクトゥスの途中「ベネディクゥス」の部分に出てくる,コンサートマスターのヴァイオリン・ソロだったかもしれません。プログラムに名前がクレジットされていなかったのが大変残念だったのですが,東京フィルのコンサートマスターの荒井英治さんがゲストコンサートマスターで(だったと思います),安定感たっぷりの「至上のオブリガード」を聞かせてくれました。最初はフルートと一緒に出てくるのですが,OEKの岡本さんとの息もぴったりで,天井から精霊がそっと降りてくるようなミステリアスな美しさのある音楽を聞かせてくれました。

最終楽章の「平和への祈り」は,もしかしたら「8月に聞く」のに相応しいのかもしれません。ティンパニとトランペットがフランス革命的なムードを盛り上げた後に続く,平和への祈りを込めた音楽は,ベートーヴェンの作品の中でも特に好きな部分です(交響曲第6番「田園」の最終楽章と通じる気分があると思います)。本日の演奏には,爽快な爽やかさを感じました。

というわけで,今年もまた「大曲」をしっかりと楽しむことができました。OEKの夏休み企画として,是非,これからも定着していって欲しいと思いました。

PS. 本日はせっかく富山市に来たので,演奏会の前に,富山県水墨美術館にも寄ってきました。平屋建ての贅沢さを感じさせる,大人向けの素晴らしい美術館でした。これにつては,また別途ご紹介しましょう。

2018/08/19

本日は石川県立音楽堂で講談&オペラ「卒塔婆小町」(神田松之丞+田中祐子指揮OEK,家田紀子,小林由樹他)とIMAライジングスター・コンサートをハシゴ

本日は午後から久しぶりに石川県立美術館に出かけ,講談&オペラ「卒塔婆小町」といしかわミュージック・アカデミー(IMA)のライジングスター・コンサートをハシゴしてきました。

石川県立音楽堂の邦楽ホールでは,年1回ぐらいのペースで,「日本人作曲家による室内オペラ」の上演を行っています。昨年は,落語の「死神」と池辺晋一郎さん作曲によるオペラ版「死神」を組み合わせた公演がありましたが,今年は,「卒塔婆小町」がテーマです。

この作品は,もともとは能として作られたものですが,三島由紀夫が「近代能楽集」の1つとして戯曲に翻案したものもあります。今回のオペラも,この三島版に基づいたもので,作曲者は石桁眞禮生です。演奏時間は45分程度ということで,それと組み合わせる形で,前半では,講談師の神田松之丞さんによる,新作講談「卒塔婆小町」が披露されました。

この松之丞さんの講談ですが,オリジナルの能を翻案したものでした。この点については,すべて松之丞さんに「お任せ」になっていたようで,その辺の裏話(1週間前に完成!)が,「アフター・トーク」で披露されました(アフター・トークは,演劇の後に行われることが近年増えているのですが,とても良い企画だと思いました)。

講談を聞く機会は,金沢では非常に少ないのですが,まず松之丞さんの声に惹かれました。マイクは使っていましたが,小さな声の部分でもクリアに染み渡るようにセリフが聞こえました。「講談は,ストーリーを克明に表現するもの」と説明されていましたが,まさにそのとおりでした。スラスラとセリフが連なっていくのを聞くのが心地良かったですね(「男はつらいよ」の寅さんのイメージ)。要所要所で,台をパンパンと叩くのも講談ならではの手法です。これもまた新鮮でした。「ストーリーの流れを作り,盛り上げていく」という点で,オペラに共通する部分もあると思いました。

ストーリーの方は,オリジナルの能に基づいているだけあって,ひんやりとした感触のある深さのようなものを感じました。マクラの部分は,落語を聞くような面白さでしたが,その後は,しっかりと古典を聞いたような充実感が残りました。

後半のオペラの方は,小編成のOEKがピットに入り,かなりしっかりとした大道具のある舞台で演じられました。衣装の方も現代風になったり鹿鳴館風になったり,変化に富んでいました(1回だけの上演にはもったいないぐらい)。全体は1幕構成でしたが,途中,鹿鳴館時代にワープする(この辺の時空を超える辺りが,能と共通する部分ですが)場が入っていましたので,全体は3部構成という感じでした。

音楽の方は,覚えやすいメロディが出てくる感じではなかったので,「現代音楽」風の難解さもありましたが,特に中間の鹿鳴館の場では,ワルツが出てきたり(男女ペアのダンサーも登場していました),小町と詩人の熱い歌が出てきたり,聞き応えがありました。歌手については,この小町(老婆)役の家田紀子さんと詩人役の小林由樹さんを中心に迫力のある声を聞かせてくれました。コンパクトな大きさの邦楽ホールならではの良さだと思います。特に家田さんの方は,最初と最後は老婆役,中間部ではドレスを来た「小町」役ということで,45分の間で,若さと老いと演じ分けており見事でした。

田中祐子さん指揮のOEKは,小編成の割に打楽器と沢山使っていたこともあり,大変ダイナミックで色彩的なサウンドを聞かせてくれました。邦楽ホールでのオペラ上演は,この点でもメリットがあると思います。

「三島作品を通して存在する「命」とそこにつながる「愛と美」を考えさせてくれる」と演出の知久晴美さんは,プログラムに書かれていました。実のところ,なかなかそこまで理解できなかったので,講談の内容と合わせて,今からしっかりと反芻してみようと思います。

アフタートークの中で,講談とオーケストラのコラボのことが半分冗談交じりで語られていましたが,実際,この邦楽ホールに特にぴったりだと思うので,実現することを期待したいと思います。既存のオペラを講談+室内オペラに編曲するというのもありだと思います(「ガル祭」の企画でも良いかも)。

アフタートークの後,今度は交流ホールに移動し,IMAライジングスターコンサートを聞いてきました。このコンサートも毎年恒例です。今年も,IMAで講習を受けている,日本と韓国等の若手演奏家たちの水準の高い演奏を楽しむことができました。

今回登場したのは次の人たちです。
ナキョン・カン,外村理紗,エイミー・M・オ,吉江美桜,ドンヒュン・キム(ヴァイオリン),牟田口遙香(チェロ),ジュヒ・イム(ピアノ)

昨年に続いて登場した方も多かったのですが,技術的には全く問題がなく,安心してその表現を楽しむことができました。特に印象に残ったのは,吉江美桜さんが演奏した,エルンストの「魔王」でした。シューベルトの「魔王」の歌唱部分と伴奏部分を一人で演奏するような凄い曲です。以前にも聞いたことはありますが,ヴァイオリンの作り出す多彩な音を駆使した音のドラマになっていました。

最後に演奏されたショーソンの「詩曲」も,このコンサートによく出てくる曲ですが,次第に熱気を帯びてくるように盛り上がるドンヒュン・キムさんの演奏は迫力十分でした。

IMAについては,あさって火曜日に,講師の先生方による室内楽公演があるので,こちらも聞きに行こうと思います。

2018/07/31

#マルク・ミンコフスキ 指揮OEKの ドビュッシー #ペレアスとメリザンド 公演@石川県立音楽堂。ボルドー直輸入の映像の力が圧倒的。歌手も万全。謎は謎のままだけれども説得力十分の演奏。 #oekjp

9月からオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の芸術監督の就任する,マルク・ミンコフスキさん指揮による,ドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」の公演が石川県立音楽堂コンサートホール行われたので聞いてきました。この公演は,今年1月,ボルドー国立歌劇場で行われた公演を,ほぼそのまま持ってきた公演ということで,ミンコフスキさんの「就任記念」公演に相応しい内容でした。

今回は,「ステージ・オペラ形式」ということで,オーケストラがピットに入るのではなく,ステージに乗ったまま,その周辺で,歌手たちが歌い,演じるというスタイルでした。ボルドー公演の内容は知らないのですが,今回の公演は,映像を大々的に使っていた上,衣装の方は通常のオペラと同様でしたので,通常のオペラを観たのと同様の印象が残りました。「ペレアスとメリザンド」は,メーテルランクの象徴主義文学が原作ということで,具体的な大道具などを使って上演するのは,むしろ変な気がしますので,今回のような,半分抽象的な映像を使った演出は,この作品の性格にぴったりなのではと思いました。

何よりも,ステージ上で演奏することで,オーケストラの音や細かいニュアンスがしっかりと聞こえてくるのが良かったと思います(何と言っても「定期公演」なので)。さすがに長い作品でしたが,映像の力と相俟って,全く退屈することなく,ドビュッシーとメーテルランクの世界を楽しむことができました。

ミンコフスキさん指揮OEKは,冒頭の前奏部分から大変じっくりと演奏していました。映像を使っていたこともあり,場面ごとの切り替えに時間がかからず,音楽の流れも非常にスムーズでした。

スクリーンはステージ奥と,ステージ前(オーケストラの前)の2カ所にありました。前の方のスクリーンは,可動式の半透明(?)なので,オーケストラが透けて見えます。この2つを組み合わせることで,本当に多彩なイメージが広がっていました。映像の色合いは,基本的にモノトーンで,「森」「泉」「城」といった,メーテルランクの原作で象徴されているものが映像として投影されていました。映像の方は,動画になっており,時々揺らぎがあるのが面白い効果を出していました。

そして,公演ポスターのビジュアルにも使われていたとおり,人の顔(特に目の部分)のアップも随所に使われていました。ストーリーの中には,見つめ合うシーンや,覗いたりするシーンがありますが,そのことを象徴していたのかもしれません。

この映像については,音楽と連動して鮮やかに変化する部分もありました。特に印象的だったのは,第2幕第3場,洞窟の中に月明かりが刺すシーンで,音楽の効果と相俟って陶然としてしまいました。ドラマ展開のヤマ場と言っても良い,ゴローがペレアスを刺す場では,映像が赤く変わっていました。ここまでモノトーン中心だったので,非常にドラマティックに感じられました。

メリザンドが塔の上で髪の毛を垂らす場,ペレアスとメリザンドの「愛のシーン」などでは,「長い髪」が見事に映像化されていました。石川県立音楽堂コンサートホールのオルガンステージも効果的に使っており,「このホールにぴったりの演出(少し小林幸子風?)だな」と思いました。

今回の歌手の皆さんも素晴らしい歌を聞かせてくれました。主役のメリザンドとペレアスは,若いイメージの役柄です。特にメリザンドの方は,半分,妖精のようなイメージがあります。キアラ・スケラートさんの声には,瑞々しさの中に落ち着きがあり,安心して楽しむことができました。スタニスラフ・ドゥ・バルベラックさんによるペレアスは,より直線的で,大変瑞々しい声でした。2人とも,これから,どんどん活躍の場を広げていくことでしょう。

ゴローについては,この人が出てくるとドラマが巻き起こる感じで,意外にヴェリズモ・オペラに近いキャラクターなのではと思いました。アレクサンドル・ドゥハメルさんの声は説得力&迫力十分でした。国王アルケルについては,原作を読んだ感じでは,非常に老いたキャラクターだと思っていたのですが,ジェローム・ヴァルニエさんの歌は,どこか知的で,「いいこと言っているなぁ」という感じの賢者という印象を持ちました。その他の歌手たちも,オペラの雰囲気にぴったりだったと思います。

全曲を通じてみると,映像の力で分かりやすくなっていたとはいえ,色々と謎な部分はあります。メリザンドの死因は?その後,ゴローはどうなる?ゴローとペレアスの父はいるのか?...そういった謎を謎のまま残しつつも,音楽の方は安らかな和音で解決しているのが面白いところです。

それにしても,この最後の部分の雰囲気は素晴らしいと思いました。管楽器のデリケートな弱音が続くので,管楽器奏者の皆さんはプレッシャーだったと思いますが,精緻さと温かみが合わさったような音世界は,ミンコフスキさんならではなのかな,と思いました。

というわけで,初「ペレアスとメリザンド」をしっかりと楽しむことはできましたが,やはり,オペラは総合芸術ということで,音楽のウェイトが相対的に下がります。芸術監督就任後については,先日の記者会見で語っていたとおり,オペラ公演に期待する一方で,是非,次回はミンコフスキさん指揮による,古典派の交響曲などをストレートに聞いてみたいものだと思いました。

2018/07/12

今年の #北陸新人登竜門コンサート は,管・弦・打部門。クラリネットの #安田菜々子さん マリンバの #稲瀬祐衣 さん コントラバスの #西田裕貴 さんが #田中祐子 指揮 #OEK と共演。例年以上に華やかさとたくましさのある演奏会で聞いていて元気が出ました #oekjp

恒例の北陸新人登竜門コンサートが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。ここ数年,5月頃に行われることが多かったのですが,今年は井上道義さんが音楽監督を退任した関係もあるのか,例年より遅く,7月に行われました。

今年は,管・弦・打楽器部門で,クラリネットの安田菜々子さん,マリンバの稲瀬祐衣さん,コントラバスの西田裕貴さんが,ソリストとして登場し,田中祐子指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と共演しました。指揮者もソリストも全員女性というのは,今回が初めてです。演奏後,登場した独奏者たちに田中さんが,とてもリラックスした雰囲気でインタビューをされたのですが,演奏会全体に「女子会的な華やかさ」があるなぁと思いました。ちなみに公演チラシの方も「カラー」になり,華やかになりましたね。

今回の,「管・弦・打楽器部門」というのは,昨年までとは割り振りが違っています。従来は,「ピアノ部門」「弦楽器部門」「管・弦・声楽部門」でしたが,応募者数のバランスを考えてのことでしょうか。クラリネット,マリンバ,コントラバスと,協奏曲を演奏するには,ややマイナーな楽器ばかりだったのですが,その分,どこか大らかな雰囲気を感じた演奏会でした。

安田さんが演奏した,ウェーバーのクラリネット協奏曲第2番では,まず,田中さん指揮OEKによる堂々とした序奏部から素晴らしかったですね。その上で,安田さんは,伸び伸びとした,思い切りの良い演奏を聞かせてくれました。突き抜けて聞こえてくる高音を聞くだけで演奏に引き込まれました。第2楽章のオペラのアリアのような気分と両端楽章の対比も素晴らしいと思いました。

稲瀬さんの演奏した,コッペルの曲は,この日演奏された曲の中ではいちばん新しい作品でしたが,稲瀬さん自身,この曲を何回かオーケストラと共演された実績があるということで,しっかり手の内に入った演奏になっていました。演奏する姿も堂々としており,見ていて格好良いなと思いました。

稲瀬さんは,インタビューの中で,「マリンバの温かみのある音が好き」とおっしゃっていましたが,その言葉どおり,コンサートホールの中に「木」を叩く,まろやかな音が心地よく広がっていました。曲全体としては,ミステリアスな部分があったり,たっぷり聞かせるカデンツァがあったり,大変変化に富んだ曲で,現代曲にしては,とても聞きやすい作品でした。

この登竜門コンサート(特に打楽器部門)では,コッペルの作品のような,「聞いたこともない作品」が出てくるのも楽しみの一つです。

最後に演奏された,西田さんの独奏による,クーセヴィツキーのコントラバス協奏曲は,チャイコフスキーのテイストが漂う作品でした。西田さんのコントラバスの音にも,「憂愁のロシア音楽」といったメランコリックな気分がありました。曲の最初に出てくるホルンの音の野性味が,まず素晴らしかったのですが,それを受ける,優しい音が良いなぁと思いました。

この3曲に先だって,田中さん指揮OEKで,モーツァルトの交響曲第25番が演奏されました。この前の「楽都音楽祭」で演奏されなかった曲なので,その補遺ということになります(モーツァルトには珍しく,ホルンが4本も入る曲なので,クーセヴィツキーの曲の編成に合わせて,選ばれた曲かもしれません)。有名な冒頭部から,ビシっと引き締まり,硬い雰囲気を出していました。その後の楽章は速めのテンポで,一気に悲しみが走り抜けるようでした。

今回の登竜門コンサートでは,田中祐子さん指揮OEKによる,「しっかりサポートしますよ。大船に乗った気分で演奏してね」という雰囲気もとても良かったと思います。田中さんによる,インタビューによって,ソリストたちの素顔の一端を知ることができたことにもよると思いますが,3人とも大変たくましい演奏を聞かせてくれたと思いました。みんな頑張っているんだなぁと元気が出てくるような演奏会でした。

2018/07/07

2017/18 OEK定期公演マイスターシリーズのトリは,#アレクサンダー・リープライヒ さんの指揮。メタモルフォーゼンとジークフリト牧歌の対象的な気分に加え,「ベートーヴェンは爆発だ!」といった感じの新鮮な交響曲第1番。室内オーケストラらしい素晴らしい内容でした #oekjp

全国的に梅雨前線による大雨が続く中,2017/2018のOEK定期公演マイスターシリーズのトリとなる,アレクサンダー・リープライヒさん指揮による演奏会を聞いてきました。リープライヒさんは,毎年のようにOEKに客演している,ドイツ出身の「常連」指揮者です。

今回のプログラムは,マイスターシリーズの通しテーマ「ドイツ,音楽の街」にちなみミュンヘンがテーマでした。リープライヒさん自身,ミュンヘンで活躍されていたということがまずポイントになりますが,今回演奏された3曲の中では,特にリヒャルト・シュトラウスの「メタモールフォーゼン」がミュンヘンにちなんだ作品です。それに加えて,ワーグナーの「ジークフリート牧歌」とベートーヴェンの交響曲第1番が演奏されました。

今回の公演は,「協奏曲なし」で,シュトラウスについては弦楽合奏のみ,ワーグナーについては,管楽器が少なめ。さらにトリがベートーヴェンの交響曲第1番ということで,かなり地味目の内容でしたが,その分,室内オーケストラとしてのOEKの本領が発揮された公演だったと思います。

まず,前半に演奏されたメタモルフォーゼンですが,「23の独奏弦楽器のための」とサブタイトルに書かれているとおり,一見、普通の弦楽合奏のように見えながら,実は23人全員が独立したパートを弾くという独特の書法で書かた作品です。今回は,配置も変わっており,正面奥にコントラバス3人,上手側の奥にヴィオラ5人,その前にチェロ5人。下手側にヴァイオリン10人が並ぶというレイアウトでした。チェロ以外は全員立ったままで,「全員がソリスト」的な扱いになっていました。

この編成のとおり,小編成の割に中低音が充実しており,演奏全体にもほの暗い気分が漂っていました。そして,戦争の記憶についての「悲しみ」を秘めた,「滅びの美」のようなものが緻密に描かれていると感じました。途中,音楽がやや明るくなる部分でも,「タタタ・ター」というベートーヴェンの「英雄」の葬送行進曲を思わせるモチーフが執拗に繰り返され,色々な音が飛び交っていました。その立体感が素晴らしいと思いました。実演ならではの面白さでした。最後の部分では,本物の「葬送行進曲」のモチーフが出てきて,荘厳な感じで締めてくれました。確かに,重苦しい作品でしたが,その中に時折,シュトラウスならではの甘さが入り,「ビター&スイート」風味になっていたのも良かったと思いました。

続くワーグナーの「ジークフリート牧歌」の方は,ワーグナーにしては例外的に爽やかな作品です。妻ゴジマへの「朝起きたらびっくり。サプライズ誕生日プレゼント」ということで,冒頭から朝のすがすがしさがあると思いました。前半に演奏された「メタモルフォーゼン」とは対照的な澄んだ世界が広がりました。

この曲をOEKが演奏するのは,意外に少ないのですが,OEKにぴったりの作品です。透明感のあるクールな弦に,ソリスティックに管楽器が彩りを加える感じが最高でした。さらにホルンのソロが加わると,ワーグナーの楽劇の気分がほのかに漂うのも良いですね。最後の方ではトランペットも加わるのですが,他の楽器に溶け合いながらもしっかり聞こえてくる音色が素晴らしいと思いました。

全曲を通じて,平穏な世界をしっとりと描いた「誠実な思い」の籠もったプレゼントになっていたと思いました。

トリに演奏されたのは,ベートーヴェンの交響曲第1番でした。考えてみると,作曲された年代はだんだん古い作品になる並びのプログラム構成でしたが,古い作品ほど,編成が大きいというのが,とても面白いと思いました。そして,このベートーヴェンはトリにふさわしい聞き応えがありました。リープライヒさんの個性が大変よく現れた素晴らしい演奏だったと思います。

第1楽章の冒頭から,音楽全体にしなやかさ,力強さ,勢いがありました。リープライヒさんの指揮は過去何回か聞いてきましたが,常に音楽がビシッと引き締まっており,クールな雰囲気があります。その感じが実に新鮮でした。第3楽章は一応「メヌエット」楽章ですが,スケルツォそのものでした。トリオの部分の木管のハーモニーの部分が大好きなのですが,この部分での美しいレガートも素晴らしいと思いました。

この演奏では,バロックティンパニを使っていました。時折聞かせるその強烈な響きも大変効果的でした。第3楽章の後,その勢いのまま,アタッカで第4楽章に入っいましたが,その最初のティンパニの一撃には驚きました。第1交響曲にして「あっと言わせてやろう」というベートヴェンの気概が伝わってくるような力強さがありました。

全体の響きはクールで硬質だけれども,音楽の底には常に熱いものが流れている。そして時折,思いが爆発する。そういう感じの演奏だったと思います。

アンコールでは,モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲が演奏されました。ベートーヴェンの交響曲第1番に通じる,前向きで,カチッと引き締まった気分があり,この日のアンコールにぴったりだと思いました。

OEKは前日の夜(!)に名古屋公演を行い,その後,移動し,本日の午後に金沢公演を行ったのですが,大雨のせいで移動は大変だったのではないかと思います(楽器の搬送も)。関係者の皆様お疲れ様でした。

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