OEKのCD

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コンサート

2021/04/09

今晩は渡邉康雄さんのピアノ・指揮OEK+地元のピアニストたちによる ガル祭 2021 プレコンサートを聞いてきました。渡邉さんの貫禄のサン=サーンスは聴きごたえ十分でした。#oekjp

今晩は,いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2021のプレコンサートとして行われた,渡邉康雄さんのピアノ・指揮+地元のピアニストたちによる,スペイン,フランスの作曲家による演奏会を聞いてきました。

前半,山岸奈央さんによるグラナドス/演奏会用アレグロ,松永みなみさんによるラヴェル/水の戯れ,北林多香子と本多春奈さんの連弾によるサン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」~バッカナールが演奏されました。この日は,「とてもよい席」で聴けたこともあり,ラテン系の音楽ならではの華やかさと,しっとりとした音の流れを楽しむことができました。特に,松永さんの演奏した,「水の戯れ」には,くっきりとした明るい音と異国情緒があふれている感じで,やっぱりラヴェルの音楽は良いなぁと思わせてくれました。

休憩の後は,以前からOEKと頻繁に共演し,CD録音も行っている渡邉康雄さんが登場し,渡邉さんの弾き振りでサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」が演奏されました。ロマン派以降のピアノ協奏曲の弾き振りは,比較的珍しいのですが,ベテラン・ピアニストらしい貫禄に溢れた,どっしりとした音楽を聞かせてくれました。第3楽章の最後,ピアノが音階を上がっていく部分などでは,千両役者がどうだと見得を切るような充実感がありました。サン=サーンスといえば,どちらかというと軽い印象のある作曲家なのですが,ピアノの音が突出しすぎることなく,地に足の着いたような音楽を聞かせてくれました。OEKの方も,弦楽パートの豊かな音の上に木管楽器群が随所で彩りを加えており,南欧よりもさらに南の「地中海~アフリカ」に掛けてのエキゾティックな気分を思わせるような演奏を聞かせてくれました。

アンコールでは,南欧から離れて,ストラヴィンスキーのペトルーシュカの中の「ロシアの踊り」をがっちりと聞かせてくれました。ちょっと不器用な感じのリズムがとても魅力的な演奏でした。この日の公演は,プログラム的にも演奏的にも,楽都音楽祭の気分を盛り上げるための「プレコンサート」にふさわしい内容でした。ここ数日,石川県でもコロナ感染者が徐々に拡大しているのが少々気がかりですが,無事に開催できることを祈っています。

 

2021/03/18

鈴木雅明指揮OEKのベートーヴェン交響曲シリーズ。最終楽章でのスケールの大きな雰囲気が印象的だった第6番「田園」。生き生きとした推進力と雄弁さのあった第5番。どちらも弦楽器の澄んだ美しさと各楽器のニュアンスの豊かさが印象的。充実の3月の定期公演でした。

3月のOEKの定期公演は鈴木雅明さん指揮によるベートーヴェンの交響曲4曲。3月13日の2番,8番に続いて,本日は5番,6番の「超有名曲」2曲を聴いてきました。

この2曲の組み合わせですが...私自身,聴くのは初めてかもしれません。初演の時と同じ組み合わせということになりますが,こうやって並べて聞くと,この2曲は「セットなのだな」ということを感じました。後半の楽章が連続していること,トロンボーンやピッコロが入ることが共通する一方で,同じモチーフを使いまくり,力強く盛り上がる5番と標題音楽的で穏やかな気分のある6番というのは,好対照です。

鈴木さんは,OEKが何回も演奏してきたこの2曲から,大変新鮮な響きを引き出していました。最初に演奏された「田園」の冒頭から,響きがクリアで特に弦楽器を長~く伸ばした時のヴィブラートの入らない真っすぐ澄んだ音がとても印象的でした。両曲とも,第1楽章の第1主題には,フェルマータが入るのですが,その部分の響きが本当に瑞々しいと感じました。その一方で,前回の2番・8番の時同様,どの部分を取ってもニュアンスが豊かで,とても雄弁な演奏でした。「田園」の第2楽章の木管楽器の美しさ,第3楽章でのちょっと意表を突くような感じのアクセントの入れ方が印象的でした。

第4楽章も切れの良いコントラバス,表情豊かなティンパニなど,しっかり聞かせる音のドラマとなっていました。そして,大変じっくりと演奏された第5楽章。じわじわと感動があふれてくるような表現で,スケール感たっぷりの演奏を聞かせてくれました。

後半に演奏された第5番の方も,音のクリアさ美しさが印象的でした。第1楽章から,生き生きとした推進力と音の美しさが両立していました。第2楽章では落ち着きがあるけれども,停滞しないテンポで始まり,途中力強い歩みを聞かせてくれました。第3楽章も超高速のコントラバスの演奏を中心に生き生きとした表現を聞かせてくれました。楽譜のことはわからないのですが,第1楽章,第4楽章に加え,第3楽章も前半部分を繰り返していたようで,いつもと少し違った感じに聞こえました。

そして若々しい第4楽章。奇をてらうことのない颯爽とした雰囲気がありました。それでいて,全力を使い切ったような熱さ。コンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんの力強い演奏姿を見るといつも,「我々も頑張らなければなぁ」と思います。この曲には,コントラファゴットが入り,お馴染みの柳浦さんが演奏されていましたが,いつもに増して,その音がしっかりと聞こえてくるのも新鮮でした。

今回,鈴木雅明さんはミンコフスキさんの代役で登場したのですが,体の内側からエネルギー溢れ出てくるような演奏は,ベートーヴェンにぴったりだと思いました。というわけで,4曲演奏したからには,他の曲も鈴木さんの指揮で聴いてみたいものだと思いました。期待をしています。

2021/03/13

3月のOEK定期公演は鈴木雅明さん指揮によるベートーヴェンの交響曲シリーズ。その前半,2番と8番。知・情・意のすべてが高いレベルで統合されたような,熱量と情報量が非常に大きい,聴きごたえのある演奏。感服しました。

OEKの3月の2つの定期公演には当初,芸術監督のマルク・ミンコフスキさんが登場する予定でしたが,コロナ禍による入国制限が続いているため来日ができず,代役として鈴木雅明さんが登場することになりました。プログラムはそのままで,ベートーヴェンの交響曲を4曲。本日は,その中の第2番,第8番の2曲を聴いてきました。

その演奏ですが,期待通りの素晴らしい演奏でした。鈴木さんは,昨年末のNHK交響楽団の公演でもブロムシュテットさんの代役で指揮をされており,ハイドン,モーツァルト,シューベルトの交響曲の演奏をNHKで観たのですが,それらの演奏と共通する,知・情・意のすべてが高いレベルで統合されたような,熱量と情報量が非常に大きい,聴きごたえのある演奏。感服しました。

考えてみると,生誕250年と言われていた割に,昨年1年間は実演ではベートーヴェンの交響曲を1曲も聞いていなかったので(皇帝は2回聞きましたが),久しぶりにベートーヴェンの交響曲を聴いて,妙に元気が出た気がしました。

第2番も第8番もベートーヴェンの9つの交響曲の中では,ややマイナーな位置づけではあるのですが,個人的には年々好きになってきている2曲です。鈴木さんの指揮の下,この両曲の斬新さやキャラクターを改めて浮き彫りにしてくれるような演奏だったと思います。

第2番の方は,冒頭の引き締まった力強い響きと澄んだ弦の響きのコントラストが印象的でした。アビゲイル・ヤングさんのリードの下,細かい部分までニュアンスの変化が付けられており,鈴木さんのプランが鮮やかに表現されていました。その一方,ライブならではの感情が爆発するような,アクセントの強さも随所にあり,非常にスリリングでした。第4楽章の終結部の切れ良く,強烈な弦の響きには痺れました。

休憩の後(定期公演で20分の休憩が入るのは,コロナ後初でしょうか)の第8番も同様に,強烈な部分と流れるような部分の対比が鮮やかで,充実感がありました。第2楽章のメトロノーム風のリズムを刻む部分は,木管楽器のきっちり整った端正さと,弦楽器の表情豊かな歌が見事に溶け合い,何とも言えず幸福な時が流れていました。第3楽章の揺らぎのある音楽の後の第4楽章は速過ぎるテンポではないけれども,切れ味十分で,前曲にふさわしい熱い音楽を聞かせてくれました。

というわけで,来週木曜日3月18日の公演も聞き逃せません。

2021/03/09

伝統芸能&室内オペラ「おしち」公演@石川県立音楽堂邦楽ホール。池辺晋一郎作曲のオペラ版と立川談笑さんによる落語版,どちらもひねりがある展開。オペラ版の方は幸田浩子さん,高柳圭さんの2人を中心とした純愛オペラの気分が良かったですね。合唱団も大活躍でした。

今晩は,伝統芸能&室内オペラ「おしち」公演を石川県立音楽堂邦楽ホールで観てきました。落語や講談と日本人作曲家による室内オペラを組み合わせる企画もすっかり定着してきましたが,今回の池辺晋一郎作曲の「おしち」は,特にオペラ向きの作品だと思いました。熱い純愛ものオペラをしっかりと堪能した実感が残りました。

恋人に再び会いたい一心で放火し,火刑になる「八百屋お七」の物語は,江戸時代の実話に基づくようですが,その後,色々なバリエーションが作られており,今回の室内オペラ版,立川談笑さんによる落語版は,ともにひねりが入っていました。

ヒロインが火に包まれて終わるオペラといえばワーグナーの「神々の黄昏」のブリュンヒルデを思い出すのですが...今回のオペラ版「おしち」では,相手役の吉三郎が重要な役割を果たしており,ブリュンヒルデのような感じではありませんでした。実はこの辺が少々釈然としなかったのですが...クライマックスに向けての音楽の流れには説得力があり,「こういうのもありか」という思いにもなりました。

主役のおしちは,ソプラノの幸田浩子さんでした。幸田さんの歌を実演で聴くのは今回が初めてだったのですが,最初の方の純真な町娘風の雰囲気から,狂乱の場を思わせるような「火付け」の部分まで,一貫して芯の強さを感じさせながらも,「おしち」の持つ色々なキャラクターを聞かせてくれました。

吉三郎役の高柳圭さんは,「金沢オリジナル・オペラ」ではすっかりおなじみの方です。その明るく伸びやかな声は,おしちの相手役にぴったりでした。幸田さん,高柳さんともに軽やかな声なので,最初の出会いの場で名前を名乗り合うシーンなどは,「ラ・ボエーム」に通じるような瑞々しさがあるなと思いました。「夢の中でのニ重唱」での高揚感も良いなぁと思いました。

最後の火刑執行人役で登場した森雅史さんの凄みのある声,途中ドラマの展開を説明するような瓦版売り役の門田宇さんの軽妙な雰囲気もオペラの展開を盛り上げていました。

そして色々な役柄でドラマの展開を支えていた12人の合唱団(それ以外にも歌唱のみの合唱団の方もいらっしゃいました)の皆さんは,ええじゃないかを踊ったり,金色の扇子を持って踊ったり,火付け改め方になったり...大活躍でした。

音楽は,本当に色々なタイプの音楽が次々と出てきて,「さすが池辺さん」という感じでした。個人的には,おしちが火付けをして回る時の,不規則な感じのリズムの曲が,焦燥感のようなものが出ていた良いなぁと思いました。松井慶太さん指揮OEKは通常の半分ぐらいの人数でしたが,邦楽ホールで聴くにはちょうど良い感じでした。2人の打楽器奏者が色々な楽器を持ち替えて効果音的な音を含む多彩な音を聞かせたり,コンサートマスターの松井さんのソロが随所に出てきたり,変化に富んだ音楽を聞かせてくれました

舞台の方は,中央に橋のようなものがあり,ドラマの要所要所のクライマックスで効果的に使われていました。

というわけで,音楽・美術・演技・物語の展開...と色々な面で楽しむことができました。終演後の拍手も大変盛大でした。

落語の方は「八百屋お七:比翼塚の由来」という,立川談笑さんが昨年作った新作でした。ややサイドの席だったせいか,少し聞きにくい部分もあったのですが,最後の部分には「エーッ?」という感じの設定。プログラムの裏面には,「八百屋お七」を素材として,さまざまな作品が作られてきたことが紹介されていましたが,そこにまた一つ新たな「お七」が加わったのだなぁと思いました。

2021/03/07

1年前,コロナ禍で中止となったOEKと石川県学生オーケストラによる合同公演「カレッジコンサート」のリベンジ公演。OEKが首席になる形の合同演奏で,壮麗かつ丁寧なショスタコーヴィチを聞かせてくれました。久しぶりに大編成オーケストラの響きを浴びてきました #oekjp

本日午後は,1年前コロナ禍で中止になったOEKと石川県学生オーケストラによる合同公演「カレッジコンサート」を石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。指揮はOEKを指揮するのは初めてとなる横山奏さんでした。

この時期恒例のカレッジコンサートですが,昨年の丁度今頃から,全国的にほとんどすべての演奏会が中止になってしまいました。そのあおりを受け,直前まで開催予定だったこの公演も中止になりました。出演するはずだった学生オーケストラのメンバーは大変悔しい思いをされたことでしょう。その後も各大学のオーケストラは,お客さんを入れての演奏会はほとんど行っていないようなので,本日の公演は,色々な意味で感慨深いものになったのではないかと思います。本当に実施できてよかったと思います。

演奏曲目は,昨年合同演奏する予定だった曲がそのまま今年にスライドし,ヴェルディの歌劇「ナブッコ」序曲とショスタコーヴィチの交響曲第5番が演奏されました。休憩時間なしの丁度1時間ぐらいの公演でしたが,私自身,久しぶりに大編成のオーケストラ・サウンドに浸ることができ,大変爽快でした。

例年のカレッジコンサートと違う点は,2曲ともOEKの奏者が首席奏者を務めていた点です。例年,メインの曲は学生側が首席を務めるのですが,さすがにショスタコーヴィチを限られた練習時間で仕上げるのは難しかったのかもしれません(練習についても,例年とは違った感じになったのではないかと思います)。

ナブッコの方は,有名な「行け,我が想いよ,金色の翼に乗って」のメロディが途中に出てきて,最後はヴェルディならではの躍動感の中で終わる曲です。冒頭のトロンボーンとチューバの和音から音のバランスが良く,「春ももう間近」という気分にさせてくれるような心地よい演奏でした。

ショスタコーヴィチの方も,OEKメンバーがトップ奏者ということで,アビゲイル・ヤングさんのヴァイオリン,松木さんのフルートなど,要所要所でたっぷりとプロの技と味を聞かせてくれました。全体的に荒々しく熱狂的に盛り上がるという感じはなく,最終楽章のコーダの部分なども,じっくりとしたテンポで壮麗かつ丁寧な演奏を聞かせてくれました。OEKは過去,この曲を演奏したことはありませんが,「OEKがショスタコを演奏するならこんな感じかも」と思わせる演奏だった気がしました。各楽章とも弦楽器の音が非常に美しく,どこか妖艶な気分が漂っている感じでした。第4楽章終盤,弦楽器が同じ音を演奏し続ける部分も大変鮮烈でした。

指揮の横山さんは,合同オーケストラを気持ちよく鳴らし,非常に完成度の高い音楽を聞かせてくれました。今後のOEKとの共演に期待をしたいと思います。

2021/02/27

川瀬賢太郎さん指揮OEK定期公演は,酒井健治さんの新曲「ジュピターの幻影」で始まる「モーツアルト不在のモーツァルト」プログラム。サン=サーンスが15歳で作った交響曲で締めるなど,マイナーでひねりの効いたプログラムを考え,それを気持ちよく聞かせてくれた川瀬さんらしさ満載のプログラムでした

本日の午後は,川瀬賢太郎さん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演フィルハーモニー・シリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。プログラムは,OEKの2019~2020年のコンポーザー・オブ・ザ・イヤー,酒井健治さんの新曲「Jupiter Hallucination(ジュピターの幻影)」が演奏された後,チャイコフスキーの組曲第4番「モーツァルティナーナ」,サン=サーンスの交響曲イ長調と続く,新曲と無名の曲が続く,チャレンジングな内容でした。

そのテーマは,プログラムで飯尾洋一さんが書かれているとおり「モーツァルト不在のモーツァルト・プロ」。モーツァルト自身の曲は演奏されないけれども,モーツァルトの作品を引用・編曲した曲が並ぶという趣向でした。というわけで,「モーツァルトらしさ」であるとか「モーツァルトの曲(特に「ジュピター」交響曲)についての知識がある方が楽しめる,一種「知的なプログラム」とも言えたのですが,どの曲についても,川瀬さん指揮OEKの演奏には,瑞々しさとエネルギーが溢れており,予備知識なしでも楽しめたのではないかと思います。

最初に演奏された酒井さんの曲は,タイトルどおり,「ジュピター」交響曲のフレーズが断片的に出てくる曲でした。雰囲気としては,ある映像の中に,突然,ザザザと砂嵐的なノイズが入り込み,一瞬別の映像が見えてくるけれども,すぐにまた元に戻るといった感じがあったのが面白いと思いました。現実と非現実が交錯する感じには,複線的で不安げなところもあり,コロナ禍の気分を表現しているようにも感じました。ただし,最後の部分は,酒井さんのプログラムノートに書かれていたとおり,「アーメン終止」となっており,コロナ禍収束に向けての祈りの気分がありました。

OEKの編成は「ぴったり定員どおり」(酒井さんは「注文に合わせて作曲するのが仕事」と言われていましたが,そのとおりだと思いました)で,打楽器も2名だったのですが,ものすごく沢山の種類の打楽器を使っており,演奏全体に色々な表情を加えていました。オーケストラ全員で厚く演奏するというよりは,色々な楽器が次々出てきて,明快に絡み合うすっきりした感じが,モーツァルトのすっきり感と通じるような気もしました。

今回は「モーツァルト不在」での演奏でしたが,一度,「ジュピター」とセットにしたプログラムにも期待したいと思いました。

次の「モーツァルティアーナ」も,モーツァルトの曲をチャイコフスキーが編曲した組曲なのですが,飯尾さんの解説を読んで,モーツァルトがバッハの影響を受けて作った曲であったり,グルックの作った曲の変奏曲であったり,リストがアレンジした曲であったり...結構,ひねりの効いた「二重のオマージュ作品」だと分かりました。

酒井さんの作品との取り合わせもぴったりという感じでした。アヴェ・ヴェルム・コルプスをアレンジした第3曲の暖かな響きも良かったのですが,グルックの主題による変奏曲をさらに編曲した第4曲の多彩な色合いも面白いと思いました。最後の方,アビゲイル・ヤングさんによるかなり長大なヴァイオリン独奏が入るのですが,さすがといった感じの語り口の巧さでした。曲の最後のところで,目が覚めるような鮮やかなソロを聞かせてくれた遠藤さんのクラリネットも印象的でした。

そして演奏会の最後は,サン=サーンスが15歳の時に作曲したという交響曲イ長調。サン=サーンスの交響曲は3曲だと思っていたのですが,それ以外に番号なしの曲が2曲あるとのことです。その一番最初の作品が本日演奏されたイ長調。

この日の「コンセプト」どおり,いきなりモーツァルト「ジュピター」の「ドーレーファーミー音型」が第1楽章の序奏部から登場(低弦の透明感のある響きが美しかったです),主部に入ってからもまず,「ドーレーファーミー」が出てくるなど,「元祖・ジュピターの幻影」というタイトルを付けたくなるような雰囲気がありました。

その他の楽章についても,確かに先人の影響を沢山受けて「公式どおり」作曲したような作品だったのですが(シューベルトやメンデルスゾーンの曲を聞いたような雰囲気),その完成度は非常に高く,魅力的なメロディが次々と湧き上がってくる親しみやすさに溢れていました。特に第2楽章は,ベートーヴェンの曲を思わせる,秘めた強さを感じさせるような美しさがあると思いました。

最終楽章の最後の部分など,ティンパニの一撃でノックアウトを決める,ような気持ち良さがあり,演奏会の最後を締めるのに相応しい爽快感がありました。

というわけで,こういう,マイナーでひねりの効いたプログラムを考え,それを気持ちよく聞かせてくれた川瀬さんは,さすがだなぁと思いました。今年はサン=サーンス没後100年(何というか意外に新しい人だということが新鮮な驚きです)ということなので,色々な曲を発掘して,聞いてみた

2021/02/14

本日午後は広上淳一さん指揮のOEKと京響による「和洋の響」公演。金剛龍勤さんの能舞などを加えた和洋コラボ,旭井翔一さんの楽しめる新曲,両オケ得意のプログラム...盛り沢山なプログラムはどの曲も充実の演奏。さらにはお楽しみプレゼントにも当選ということで,言うことなしの公演でした。#oekjp

本日午後は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と京都市交響楽団による合同公演「和洋の響き」を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。指揮は京都市交響楽団の常任指揮者で,OEKにも頻繁に客演している広上淳一さんでした。

OEKは過去何回も色々なオーケストラとの合同公演を行ってきましたが,本日の公演は,その中でも特に充実し,かつ楽しい内容でした。前半はOEK,後半は京響という分担で,両オーケストラの良さを十分に楽しむことのできる曲が選ばれていたのが良かったですね。後半に演奏された,チャイコフスキーの交響曲第4番をはじめ,すべての演奏が充実していました。

OEKは,過去,現代の作曲家による和洋楽器のコラボ作品も定期的に演奏してきましたが,本日の公演のタイトルは「和洋の響」ということで,この要素も含まれていました。今回演奏された和洋コラボ作品は,今回の公演のために公募で選ばれた新作,旭井翔一さんによる「雲烟縹渺(うんえんひょうびょう)」という作品でした。タイトルだけ見ると難しそうですが,音楽の雰囲気としては,荘重な雰囲気で始まった後,大河ドラマのテーマ曲を思わせるような,華やかでリズミカルな部分が続き,会場は大いに盛り上がりました。この演奏での目玉は,北川聖子さんの箏,今藤長龍郎さんの三味線といった邦楽器との組み合わせに加え,金剛流の金剛龍勤さんの能舞が加わっていたことです。

先日行われたプレイベントで,金剛さんによる能の楽しみ方についての講座を聞いていたこともあり,能舞の型,手に持っている木の枝(?)の意味であるとか,能面の意味であるとか,色々なことを考えながら楽しむことができました。旭井さんの音楽には,豪快な雰囲気もあったのですが,このことは,金剛流の能舞の特徴ともうまく合致していたのでは,と感じました。とても分かりやすい作品でしたので,OEKのレパートリーとして,今度は加賀宝生との共演をしても面白いのでは,と思いました。

続いてOEKの単独演奏で,シューベルトの交響曲第5番から第1,2楽章とロザムンデ間奏曲第3番が演奏されました。OEKの得意とする曲で,広上さんも大変楽しそうに指揮をされていました。春の一日,のどかで幸福感に溢れているけれども,ふっともの悲しくなる。そんな感じが漂う,言うことなしの演奏でした。交響曲の方は,時間の関係で,前半の2つの楽章だけだったのが大変残念でしたが,こうやって2つだけ切り出してみると「未完成交響曲」のような感じにも聞こえてくるのも新鮮でした。

ロザムンデの方もOEKのアンコール曲の定番なので,何度も聞いてきた曲ですが,今回の演奏は特に最後の部分で,テンポぐっと遅くし,これまで味わったことの内容な深い情緒を感じさせてくれました。さすが広上さんという指揮でした。

後半は京響のステージで,まず,池辺晋一郎作曲による「ワルツと語ろう」という作品が演奏されました。井上道義さんによる委嘱作品と書いてあったのですが,ダンス好きの井上さんにぴったりの曲と思いました。ファンファーレ風に始まった後,ロシア風のワルツが出てきたり,五拍子の「ワルツ」が出てきたり,池辺さん自身,楽しみながら作っていたのでは,と感じさせるような,ウィットのある作品でした。

最後に,今回の曲の中で特に楽しみにしていた,チャイコフスキーの交響曲第4番が演奏されました。金沢で演奏されるのは,数年前の楽都音楽祭でのユベール・スダーンさん指揮による演奏以来だと思います。

冒頭のホルン4本によるファンファーレから,クリアな音がバチッと決まっていました。テンポは速すぎず,遅すぎず。十分な余裕をもって,しっかりと美しいサウンドを聞かせるような演奏でした。まず,金管パートの音のまとまりとボリューム感が素晴らしく,聞いていて幸せな気分になりました。第1ヴァイオリンを中心とした弦楽パートのクリアな美しさ,曲に彩りを加える木管楽器の鮮やかさ...久しぶりに聞く,フル編成オーケストラの音の魅力に浸ることができました。

第2楽章での深みのある表現,第3楽章での余裕のあるウィットも良かったですね。そして,第4楽章では,冷静でありながら,要所要所で熱く盛り上げる見事な設計。コーダの部分では,音楽に全く乱れを見せず,常に余裕を感じさせながら,どんどん音楽が巨大化していくスケールの大きさを堪能できました。

終演後,各オーケストラの事務方トップと広上さんによるトークがあった後,バレンタインのプレゼント代わりにアンコールが演奏されました。演奏された曲が...先週,最終回だったNHK大河ドラマ「麒麟が来る」のテーマ曲!確か,広上さんが指揮をされていたはず。個人的には「うれしいサプライズ」といったアンコールでした。この曲だけは,両オケ合同演奏。大編成で聞くと,壮大な交響詩といった感じのスケール感がありました。

さらには各オーケストラや金沢駅百番街提供の商品などの当たる「お楽しみプレゼント」。プログラムの表紙裏に赤いシールの貼ってある人が当選ということで...見事当たりました(百番街の1000円分商品券でした)。

というわけで,和洋コラボの盛り沢山なプログラム,聞き応え十分の演奏,さらにはプレゼントにも当選という,言うことなしの公演でした。

2021/02/03

今晩は平原綾香さんと渡辺俊幸指揮オーケストラ・アンサンブル金沢のコンサートへ。昨年4月11日から延期された待望の公演。平原さんの声と表現力の多彩さを生オーケストラとの共演でしっかり味わってきました。

今晩は,コロナの影響で昨年4月11日から延期されていた,歌手の平原綾香さんと渡辺俊幸指揮オーケストラ・アンサンブル金沢によるファンタスティック・オーケストラコンサートを聞いてきました。半年以上待たされたことになりますが,自粛気味の生活が続いていることもあり,この間振り返ってみても「一体何をしていたのだろう?何もしていなかったなぁ」という気分ですね。

3月にこの公演のチケットを買ったときは「4月になれば,OEKの公演も再開するだろう」と(今から思えば呑気に)思っていたのですが,第2波,第3波と続き,影響が1年以上になることは必至という状況。それでも,「コロナの要所」に注意しつつ,クラシック音楽系のコンサートについては,対策を取れば再開できる状況になってきていることには感謝したいと思います。

今回のプログラムは,平原さんの代名詞でもある「クラシック音楽のカバー曲」を中心に8曲。オーケストラのみで2曲演奏が演奏されました。平原さんの歌を生で聞くのは今回が初めてだったのですが,表現力豊かな歌唱の連続で,聴きごたえたっぷりでした。平原さんの声は,音域が非常に広く,音域ごとに表情が変わるようなところが魅力だと思いました。ドスの効いた低音,輝きと力強さのある中音域,可愛らしさを感じさせる高音。さらには,聴き手の耳に絡みついてくるような少し粘り気のあるような声。こういった声を使い分けて,安定感たっぷりの歌を聞かせてくれました。

平原さんについては,「音楽大学卒業の歌手」ということで,声楽科卒だとずっと思っていたのですが,実はサックスが専攻,その後ジャズの勉強をしていたということで,「クラシック音楽の専門家ではない」とのことでした。言われてみれば,歌唱法はジャズっぽい感じですね。音楽大学時代,朝早い1限目の授業でたまたま聞いたホルストの「木星」がきっかけとなって,クラシック音楽のカバー曲でデビューして,大当たりしたという話を聞いて,世の中のめぐりあわせというのは面白いものだと思いました。

最後に,この「Jupiter」が歌われましたが,それ以外にも一つとして同じスタイルの曲はなく,変化に富んだ歌唱の連続でした。渡辺俊幸さんをはじめとした各曲のオーケストレーションも変化に富んでおり,平原さんが途中何回も語っていた「生オーケストラと共演できる喜び」を実感することができました。個人的に特に印象に残ったのは,前半の最後歌われた「明日」という曲でした。「今はおかしな世界になっているが,心の豊かさだけは失いたくはない」といった思いが込められた,「しみる歌」でした。

考えてみれば,クラシック音楽以外のコンサートに行くのは本当に久しぶりのことでした。クラシック音楽系以外については,クラシック音楽以上に大変な状況なのかもしれませんが,平原さんの力強い歌を聴きながら,「希望」を感じることができました。

2021/01/30

#三浦文彰 さんの指揮とヴァイオリンによるOEK定期公演。K200台のモーツアルトの作品3曲を楽しんできました。特に仲間との楽しいセッションのようなセレナータ・ノットゥルナが精気あふれる楽しい演奏でした。ヴァイオリン協奏曲3番では大らかで晴れやかな気分を堪能

本日は石川県立音楽堂コンサートホール行われた,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)第437回定期公演マイスター・シリーズを聞いてきました。指揮とヴァイオリン独奏は,三浦文彰さんで,プログラムはすべてモーツアルトのK.200番台の作品という,OEKならではと言っても良い構成でした。

三浦さんとOEKは,過去何回か共演していますが,弾き振り+指揮者としての登場は初めてのことです。プログラムのプロフィールにも「近年は指揮活動も行っている」といった記述はなかったので,本日の公演は,三浦さんにとっても,大きなチャレンジだったのではないかと思いました。

今回,最後の交響曲第29番だけは,三浦さんはヴァイオリンを持たず純粋に指揮者として登場しました。きっと,コンサートマスターの位置で「弾き振り」としてリードするのだろうと思っていたので,ヴァイオリンなしで指揮棒を持って登場された時は,「おお」と思いました。29番については,1週間ほど前に,「指揮者なし,アビゲイル・ヤングさんのリード」という形で三島市で演奏したばかりなので,プレッシャーもあったと思うのですが,特に両端楽章ではしっかりとした音が鳴り,推進力のある音楽をOEKから引き出していました。三浦さんの指揮ぶりは,この曲を熟知しているヤング+OEKを指揮するには,やや指示が多すぎるるように見えましたが,この辺は仕方がないところかもしれません。

演奏内容的には,2曲目に演奏されたセレナータ・ノットゥルナが大変ノリの良い楽しい演奏で特に素晴らしかったと思いました。バロック時代の合奏協奏曲のようなスタイルで,ヴァイオリン2,ヴィオラ1,コントラバス1がソリストグループとして登場し,それ以外の「トゥッティ」のティパニ+弦楽合奏と交互に演奏していくような,独特のスタイルの曲です。

三浦さんは第1ヴァイオリンのソロも担当していたのですが,その滴るような音がオーケストラの上に重なり,他のソリストとコミュニケーションを取りながら,ニュアンス豊かな音楽が展開していきました。推進力のある速いテンポ設定で,冒頭の行進曲風の部分も野暮ったくなることなく,全体としてオーケストラの仲間と作る楽しいセッションといった雰囲気を作っていました。このパターンで,色々な曲を聞いてみたいと思いました。

演奏会の最初に演奏されたヴァイオリン協奏曲第3番では,三浦さんのたっぷり,しっかりとした音を存分に楽しめました。ヴァイオリンの音がとてもよく鳴り,神経質な雰囲気は全くないので,心置きなくモーツァルトの音楽に浸ることができました。この曲は,第2楽章だけフルートが入るのですが,三浦さんのヴァイオリンと一体となって,何ともいえない晴れやかな気品のようなものが漂わせていたのが良いなぁと思いました。

三浦さんとOEKは,今後も共演を繰り返していくと思いますが,OEKファンとしては,セレナータ・ノットゥルナでの演奏のような,OEKメンバーとの室内楽などを期待したいと思いました。

2021/01/09

大雪の中,結構苦労して,2021年最初のOEKの定期公演へ。モーツァルトの「パリ」とハイドンの「ロンドン」の間にヘンデルのオルガン協奏曲が入る「GO TOヨーロッパ」的構成。指揮とオルガンは鈴木優人さん。王道を行くような立派さと,鈴木さんならではのアイデアに溢れた素晴らしい演奏。鈴木家から持ち込んだポジティフオルガンの音も疲れを癒してくれました

大雪の中,2021年最初のOEKの定期公演を聴いてきました。指揮は鈴木優人さんで,オルガン協奏曲でのオルガンの演奏も担当しました。

まず本日の金沢ですが,約30cmの積雪があり,市内の交通はかなり混乱していたようでした。我が家の方も幹線道路までの道路の除雪が行われておらず,下手に車を出すと動けなくなりそうだったので,一番確実な「徒歩」で石川県立音楽堂に行くことにしました。約1時間歩いたので,音楽を聴く前に,到着しただけで「達成感+疲労感」を感じてしまいました。

公演の方は,モーツァルトの交響曲第31番「パリ」,ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」という2つのニ長調の交響曲の間に,ヘンデルのオルガン協奏曲第4番が入る「音楽堂でGO TOヨーロッパ」的な構成。昨年のニューイヤーコンサートとは違い,「普通の」定期公演でしたが,2曲のニ長調の交響曲の演奏には,何とも言えない品の良い華やかな気分があり,新年を祝う気分には相応しいと思いました。

「パリ」を聴くの方は久しぶりです。第1楽章の冒頭の雰囲気から大らかな華やかさがありました。鈴木さんのテンポ設定には慌てた感じはなく,OEKの各楽器がしっかり聞こえてきて,充実感がありました。しっとりとした脱力感のある第2楽章に続く,第3楽章でも各パートの絡み合いがとても面白く,立体感のある盛り上がりを作っていました。

その後,ヘンデルのオルガン協奏曲が演奏されました。もともとオラトリオの幕間に演奏された曲ということで,今回も演奏会の真ん中に置かれたのだと思います。オルガンの方は,音楽堂のパイプオルガンではなく,鈴木さん所蔵のポジティフオルガンという小型のオルガン(チェレスタと同じぐらいの大きさでしょうか。譜面立てがなかったので,見た感じ「立派な机=演台」のようでした)が使われました。OEKのSNSにこの楽器の仕組みを鈴木さんが説明する動画が上がっていましたが,可愛らしい感じの音が鳥の鳴き声のように聞こえたり,シンプルで素朴な音が夢見心地にさせてくれたり,大変楽しめました。本日は徒歩で歩いてきて,少々疲れていたこともあり,絶好の癒しの音楽になりました。

後半の「ロンドン」は,OEKが頻繁に演奏している曲ですが,本日の演奏は,王道を行くような立派さと,鈴木さんならではのアイデアに溢れた,素晴らしい演奏だったと思います。第1楽章冒頭の序奏部の鋭く切れ込むような感じのインパクトがまず素晴らしかったですね。主部に入ると,ゆったりとしたテンポ感になり,高級な音楽に身をひたしているような優雅な気分にさせてくれました。「パリ」同様,OEKの各楽器の音がソリスト集団のような感じでしっかり聞こえて来て,大交響曲を聴いた充実感を感じました。

落ち着いた気分をベースに,雰囲気が生き生きと変化する第2楽章。輝きのあるメヌエットの後,トリオの部分では別世界に連れて行ってくれるような気分を楽しめた第3楽章。第4楽章ではリラックスした気分でスタートした後,次第にキビキビと音楽が絡み合う充実感のある音楽に。最後の部分では,大きくテンポを落として,「おしまい」と語りかけるような感じで終わっていました。音楽全体から,自然なユーモアも漂ってくるような余裕を感じました。

OEKの定期公演では,コンサートマスターを中心に全員が「礼」をしてお開きになるのですが,本日のコンサートマスターは,定期公演に登場するのは,本当に久しぶりのアビゲイル・ヤングさん。その笑顔を見てこちらも嬉しくなりました。OEKメンバーにとっても,最高のスタートを切れた2021年最初の定期公演だったのではないかと思いました。

終演後は,恒例の「たろうのどら焼き」のプレゼントもありました(OEKメンバーからの手渡しではなかったのですが仕方がないですね)。こちらも嬉しかったですね。今から食べてみたいと思います。毎年違う味なので楽しみです。

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