OEKのCD

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コンサート

2022/05/28

本日は加納律子オーボエ・リサイタル Vol.2「ラプソディ」へ。加納さんの充実した音楽活動の積み重ねを伝えてくれるような充実した内容。ダニイル・グリシンさん,鶴見彩さんとともに聴きごたえのある演奏を楽しませてました。秘密兵器ルポフォンも初めて聴きました。結構重そうでしたね。

本日はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のオーボエ奏者,加納律子さんのオーボエ・リサイタルを金沢市アートホールで聴いてきました。この公演は,コロナ禍の影響で順延になっていたもので,加納さんのリサイタルとしては2回目。「ラプソディ」というサブタイトルがついていました。

「オーボエ・リサイタル」という名称でしたが,前半・後半とも,OEKの客演首席ヴィオラ奏者のダニイル・グリシンさんが演奏する曲があったり,この日のピアノ担当だった鶴見彩さんによる独奏曲が入っていたり,「加納律子と仲間たち」といった室内楽公演のような雰囲気もありました。そして,何より最後のヒンデミットの三重奏曲に登場した,ルポフォンという楽器(初めて見ました)が「目玉」となっていました。

この公演に行こうと思ったのは,加納さんのオーボエの音を間近でしっかり聴いてみたいという思いがあったからです。そして期待どおり,どの曲でも,バランスの良い暖かみのある,安定感抜群の音を楽しませてくれました。今回演奏された曲は,どれも複数楽章からなる15分程度ぐらいの曲ばかりだったのですが,グリシンさんや鶴見さんの力のこもった演奏との相乗効果もあり,大きなものに包み込まれるような,スケールの大きさを感じさせてくれるような演奏の連続でした。

まず,最初に演奏されたシューマンの3つのロマンスから見事な演奏でした。染み渡るようなオーボエが一気に浪漫の世界に導いてくれました。次のブリテンの世俗的変奏曲は初めて聴く曲でしたが,「ド#・レー」というモチーフが何かに取り憑かれたように何回も出てきて,最後の部分では鬼気迫るような空気が漂っていました。

前半最後のレフラーの2つのラプソディは,演奏会全体のタイトルが「ラプソディ」でしたので,全体の核となるような曲だったと思います。グリシンさんのヴィオラの深い音と合わせて,神秘的な世界に誘ってくれました。

後半最初のサン=サーンスのオーボエ・ソナタはこの日演奏された曲の中でいちばん気楽に聞ける作品でした。古典的な清澄さと自由でロマンティックな気分とが重なり,聞く方も,とても優しい気分にさせてくれました。

続いて,鶴見さんのピアノ独奏で,ブラームス最晩年の間奏曲が2曲演奏されました。ブラームスがクララために書いた作品ということで,最初に演奏された3つのロマンスとうまくバランスが取れているなと思いました。クララへの思いがストレートに伝わってくるような誠実な演奏だったと思います。

そして最後に,加納さんがオーボエからルポフォンに楽器を持ち替え,ヒンデミットの三重奏曲が演奏されました。ルポフォンという楽器は,オーボエよりも1オクターブ音域が低い楽器で,2009年に発表されたバス・オーボエとのことです。ヒンデミットのこの曲は本来,ヘッケルフォンとヴィオラとピアノのための三重奏だったのですが(それにしても,ヒンデミットは変な(?)組み合わせを思いついたものです),今回はヘッケルフォンの代わりにルポフォンで演奏されました。

楽器の感じとしては,サクソフォンのような感じでした。サックスよりは,かなり重そうな感じで,加納さんは両手を使って運搬していました。音の感じもサックスに似たところがあり,暖かで柔らかな感じでした。

ヒンデミットのこの曲は,ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチの曲を思わせるような狂気をはらんだようなところがあったり,結構晦渋な感じもありましたが,加納さんのルポフォンに加え,グリシンさんと鶴見さんの演奏の迫力が素晴らしく,大変充実した音楽となっていました。特に曲の最後の部分は,何かフリー・ジャズを聴くような不穏な空気をまとった狂気があり凄いなと思いました。

この日は客席を1個おきにしていたこともありチケットは完売でした。演奏会の最後,アンコールに代えて,加納さんが金沢で演奏活動を行えることについて感謝の言葉を述べていましたが,お客さんの方からすると,そのまま加納さんへの感謝の言葉として返したいと思いました。加納さんの充実した音楽活動の積み重ねを伝えてくれるような充実した演奏会でした。

2022/05/21

#アンジェラ・ヒューイット さんのオーラがホール内に溢れる弾き振りで,バッハの協奏曲5曲が演奏された #oekjp 定期公演。素晴らしかったです。ピアノと弦楽器の音の溶け合いが素晴らしく,2年越しの待望の演奏を楽しむことができました。

本日午後は,アンジェラ・ヒューイットさんのピアノ弾き振りによる,OEK定期公演マイスターシリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。この公演は,2年前の5月に予定されていたのですが,コロナ禍の影響で中止。今回,仕切り直しで開催された念願の公演でした。

プログラムはヒューイットさんが得意とするバッハのピアノ協奏曲を5曲。OEKの定期公演で,協奏曲ばかり5曲というプログラムは大変珍しいことです(バッハのブランデンブルク協奏曲6曲というのが一度ありましたね)。もう一つ,バッハの協奏曲をピアノで演奏するのも,近年珍しいと思います。私自身,これらの曲のうちのいくつかは,チェンバロ協奏曲として聴いたことはありましたが,ピアノで聴くのは今回初めてだと思います。

OEKの編成は,全曲弦楽セクションのみ。ヒューイットさんは,ステージ中央に斜めにピアノを置き,要所要所でコンサートマスターのヤングさんなど,各パートに合図を出しながらの弾き振りでした。

演奏された協奏曲は,前半が3番,5番,7番,後半が2番,1番でした。ヒューイットさんのピアノには,バリバリと技巧を聴かせるような派手なパフォーマンスはないのですが,赤いドレスでステージに登場した瞬間から,ステージがパッと明るくなるようなオーラがあり,その安定感と暖かさのあるピアノに,すべてのお客さんが魅了されていたのではと思いました。

何よりヤングさんを中心としたOEKメンバーの音としっかりバランスを取りながら生き生きとしたアンサンブルを楽しませてくれたのが良かったですね。ピアノと弦楽器の音が融合した時の,軽すぎず,重すぎずの心地良い暖かさを持ったサウンドが素晴らしいと思いました。

5曲の中では,後半最後に演奏された1番が曲の構成的にも,いちばんガッチリとした聴きごたえがありました。ピリッとした切れ味の良い音,くっきりとした歌が続く第2楽章,疾走感のある第3楽章と,次のモーツァルトの時代などにつながるような,協奏曲らしい協奏曲となっていました。

それ以外の曲もすべて,急ー緩ー急の構成で,2楽章だけがアダージョになったり,ラルゴになったり,シチリアーノになったり...とバリエーションがありました。元々は他の楽器のための協奏曲をクラヴィーア用に編曲したものばかりで,第3番と第7番はそれぞれ,ヴァイオリン協奏曲第2番と1番が原曲です。ヴァイオリン版は実演で何回か聴いたことがありますが,やはり,ヒューイットさんの演奏の作り出す音楽が何とも言えず優雅で,ヴァイオリンで聴く時とは一味違った,たっぷりした質感が良いなと思いました。

ヒューイットさんは全曲の演奏が終わった後,大きく手を広げたまま,しばらくストップモーションになっていましたが,そのポーズにぴったりの高貴な雰囲気が曲の後にスッと残るような心地よさがありました。

第5番の第2楽章「ラルゴ」は,特に有名な曲です。スイングルシンガーズというヴォーカルグループがこの楽章を歌ったもので馴染んでいたので,実は「ダバダー」という声が頭の中で鳴ってしまっていたのですが,シンプルで静謐な美しさのある原曲の味わいも絶品だと思いました。チェンバロで聴くよりも,少しロマンティックな香りが香る感じだったかもしれません。

というわけで,「2年間待っていた」待望の公演をしっかりと楽しむことができました。今回の共演をきっかけに,ヒューイットさんには是非,金沢にもう一度来ていただきたいですね。

2022/05/17

今晩は1週間前に続いて,アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズ第2夜@金沢市アートホールへ。ブラームスの五重奏曲2曲を中心に,弦楽四重奏プラス・ワンの音の厚みと楽しさを実感できる選曲。ヤングさんを中心とした熱いアンサンブルで会場もヒートアップ。遠藤文江さんの表情豊かなクラリネットも素晴らしかったですね。

今晩は,1週間前に続いて,アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズと題した室内楽公演の第2夜を金沢市アートホールで聴いてきました。出演者は,OEKのコンサートマスター,アビゲイル・ヤングさん,首席第2ヴァイオリンの江原千絵さん,ヴィオラ客演首席奏者のダニイル・グリシンさん,チェロ奏者のソンジュン・キムさん,クラリネット奏者の遠藤文江さん。そして,客演のヴィオラ奏者の般若佳子さんの6人でした。

本日もブラームスの室内楽が中心でしたが,その前にシェーンベルクの若い時の室内楽曲が1曲入っていたのがヤングさんらしいところかもしれません。後年の無調音楽時代とは一味違った,ブラームスの音楽につながるような,ちょっとゴツゴツした感じの音楽がイントロダクションとして演奏されました。

その後は,クラリネット五重奏曲と弦楽五重奏曲第2番という五重奏曲2曲が演奏されました。先週は六重奏曲第1番が演奏されましたが,改めて,ブラームスの「やや大きめ」の室内楽作品の魅力を実感できました。それぞれ,弦楽四重奏プラス・ワンという編成でしたが,1つ加わることで音の厚みが増し,演奏の楽しさや起伏の大きさも増幅されている感じでした。

ブラームスのクラリネット五重奏曲を実演で聴くのは久しぶりのことです。ブラームスが作曲活動から引退していた時期(といってもまだ50代ですが)の作品ということで,全体的に物悲しい気分が溢れているのですが,遠藤さんのクラリネットの表現は大変多彩かつ力があり,ぐっと心に迫ってくるような瞬間が沢山ありました。この曲は結構暗いイメージを持っていたので,CDなどではあまり聞いてこなかったのですが,本日の演奏を聴いて,聞きどころに溢れた名曲だなぁと認識を新たにしました。

後半に演奏された,弦楽五重奏曲第2番はCDも持っておらず,聴くのもほぼ初めての作品でしたが,プログラムの解説(ヤングさんによる解説。大変充実したに内容でした)に書かれていたとおり,交響曲を思わせる充実した気分があり,演奏会の最後を締めるのに相応しい熱さがありました。

まず第1楽章の最初の輝かしい響きが素晴らしかったですね。ブラームスは,この曲を自分の最後の作品にしようとしていたらしいのですが,そのことが実感できるような全力をつぎ込んだようなエネルギーが溢れていました。中間の2つの楽章は哀愁の漂う穏やかさや懐かしさがあり,リラックスして聴くことができました。

最終楽章はどこかエキゾティックなハンガリー風のムード。楽章の最後はどんどんテンポを上げていくスリリングな演奏。ブラームス晩年の作品と思えない熱狂が素晴らしく,演奏会全体も大きく盛り上げてくれました。演奏後の拍手も大変盛大でした。アンコールでは,この熱狂をクールダウンするように,ブラームスの「子守歌」。すべてがピタリとはまった選曲でした。

アビゲイル・ヤングさんを中心とした2週連続の室内楽公演企画は,大成功だったと思います。ファンとしては続編を期待したいですね。シューマンやシューベルトでも同様の企画は実現可能だと思います。というわけで,是非,よろしく(?)お願いたします。

2022/05/15

第20回北陸新人登竜門コンサート 弦・管・打楽器部門はモーツァルト尽くし。#ユベール・スダーン さん指揮OEKによる充実の演奏の上で,2人の若い奏者による初夏の気分に相応しいクラリネットとフルートを楽しむことができました。#藤田菜月 #安嶋美裕

本日は,20回目となる北陸新人登竜門コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。今年は,弦・管・打楽器部門でしたが,OEKと共演したのは,クラリネットの藤田菜月さんとフルートの安嶋美裕さんのお2人。しかも2人ともモーツァルトの協奏曲を演奏。恐らく,それとコーディネートしたのだと思いますが,OEKが単独で演奏した曲もモーツァルトの曲ばかり。今回の指揮者は,古典派音楽をプログラムの中心としているユベール・スダーンさんでしたので,定期公演を思わせるようなオールモーツァルト・プログラムとなりました。

藤田さんが演奏した曲はクラリネット協奏曲,安嶋さんが演奏した曲はフルート協奏曲第2番という,どちらも有名な作品。連休が終わった初夏の日曜の午後に聴くにはぴったりの両曲でした。ユベール・スダーンさん指揮OEKによる万全の演奏の上で,それぞれ気持ちの良いソロを聴かせてくれました。

藤田さんの演奏は,スムーズなテンポ感で演奏されていました。時々デリケートで柔らかい雰囲気で演奏される弱音が美しいなと思いました。明るさの中に淡い悲しみを滲ませたような部分も良いなと思いました。

安嶋さんの演奏は,曲の性格にもよると思いますが,より外向的な演奏で,勢いのあるOEKの演奏にぴったりマッチした活気のある演奏を聴かせてくれました。第1楽章のカデンツァでは,一瞬,「フィガロの結婚」のフレーズが出てくるなど,生き生きとした雰囲気のある演奏でした。

そして,今回の公演で良かったのは,最初と最後に演奏されたスダーンさん指揮OEKによる交響曲2曲でした。交響曲第1番は全体の序曲のよう,最後に演奏された31番「パリ」は,楽器編成がフル編成になり全体を締める華やかさがありました。

# 「パリ」の第2楽章は2つの版があるとプログラムの解説に書いてありましたが,本日演奏されたのは,3拍子版(多分)でした。この版で聴くのは初めてかもしれません。

両曲とも,アーティキュレーションや強弱の変化が明快な,インテンポによる自信に溢れた演奏。瑞々しさと堂々とした安定感があり,短めの曲でしたが両曲とも聴きごたえ十分でした。今回は,図らずもモーツァルト尽くしになったのだと思いますが,連休中の楽都音楽祭での大活躍に続き,さすがスダーンさんという演奏を楽しむことができました。

2022/05/10

今晩は ,アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズ第1夜@金沢市アートホールへ。OEKファンとしては,「こういう公演を聴きたかった」という,#oekjp のコンサートマスターのヤングさんを中心とした色々な編成によるブラームスの室内楽尽くしの公演。1週間後の第2夜も聞き逃せません。

今年のガル祭が終わってまだ1週間も経っていないのですが,OEKのコンサートマスター,アビゲイル・ヤングさんを中心とした「アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズ」という大変魅力的な室内楽公演が行われたので聴きに行ってきました。この公演は2週連続で金沢市アートホールで行われ,本日は第1夜でした。

プログラムは2回ともブラームスの室内楽がテーマです。出演は,ヤングさんの仲間たちということで,本日はOEKメンバーを中心に次のような方々か登場しました。江原千絵(ヴァイオリン),ダニイル・グリシン,般若佳子(ヴィオラ),ルドヴィート・カンタ,ソンジュン・キム(チェロ),藤田めぐみ(ピアノ)。全部で7人登場しましたが,全員が登場する曲はなく,色々な組み合わせの室内楽が演奏されるという趣向でした。

演奏されたのは,ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番,ヴィオラ,チェロとピアノのための三重奏曲イ短調, op.114,弦楽六重奏曲第1番の3曲でした。ブラームスの室内楽というと,「渋い」「秋のイメージ」という先入観を持ってしまうのですが,小ホールで聴く演奏は迫力満点。どの曲も新鮮で切れば血が出るような熱い演奏を楽しませてくれました。

何よりヤングさんのヴァイオリンが素晴らしかったですね。まず,1曲目のソナタ第2番で,たくましく安定感抜群の音を楽しむことができました。そして,美しい歌に溢れたこの曲の魅力を存分に楽しませてくれました。ヤングさんと学生時代からの知人でもある,藤田めぐみさんの柔らかく包容力のあるピアノも大変魅力的でした。

2曲目の三重奏は,元々はクラリネット,チェロ,ピアノのための曲なのですが,ヴィオラで演奏しても良いという曲です。この曲ではヴィオラのダニイル・グリシンさんとチェロのソンジュン・キムさんの多彩な表現力が素晴らしかったですね。ヴィオラとチェロのための二重ソナタといった感じがあり,この二人の音が作り出す音のテクスチュアを楽しむことができました。特にグリシンさんの音の幅の広さに改めて感動しました。いちばん地味な曲かなと思っていたのですが,大変スリリングな演奏となっていました。

後半は弦楽六重奏曲第1番。ブラームスが若い時に作った曲で,編成が大きい分,他の2曲よりも,曲に込められた感情の幅が特に大きいと思いました。ロマンティックな気分が溢れるカンタさんのチェロで始まった後,第1楽章は,今年のガル祭のテーマ同様,「ロマンのしらべ」に包まれました。第2楽章は特に有名な楽章ですがが,一転して大変力強い演奏でした。もがき苦しむような切ない曲,という印象を持っていた楽章でしたが,本日の演奏は,かなり速いテンポで荒々しいほどの力強さ。それが大変新鮮に響いていました。

第3楽章スケルツォは途中から,限界に挑むような猛スピードにテンポアップ。ヤングさんと仲間たちが,真剣に楽しんでいるような鮮やかな演奏でした。第4楽章は色々なメロディが次々と出てくる多彩な雰囲気。最後の喜びにあふれた雰囲気も良かったですね。

というわけで,OEKファンとしては,「こういう公演を聴きたかった」という内容の公演だったと思います。1週間後の第2夜はクラリネットも加わり,また別のブラームスの世界が楽しめそうです。

2022/04/22

#田中祐子 指揮 OEK定期公演は,ミヨー,イベールのフランス音楽+藤倉大の作品。#上野耕平 さんの粋で艶っぽいサックスが協奏曲以外でも大活躍。エキストラの #藤原功次郎 さんのTbが炸裂したイベールの「パリ」を聞いて,この1週間の憂さ(?)が吹き飛んだ感じでした。

本日は,田中祐子さん指揮によるOEK定期公演を石川県立音楽堂で聞いてきました。田中さんは,ここ数年,OEKを何回も指揮されていますが,金沢で行われる定期公演に登場するのは今回が初めてです。本来は,丁度2年前の4月の定期公演に登場予定でしたが,コロナ禍で中止になってしまいましたので,今回はその「リベンジ」公演ということになります。

本日のプログラムは,ミヨー,イベールといった20世紀フランスの作曲家の作品と近年人気の藤倉大さんの作品を組み合わせたもので,田中さんの意欲がしっかりと前面に出た生き生きとした公演となりました。本日のもう一つの注目は,若手サクソフォン奏者,上野耕平さんとの共演でした。イベールの協奏曲に加え,藤倉さんの作品以外の2曲でも「OEKのメンバー」として演奏される大活躍でした。その美しく艶っぽい音色と粋な演奏ぶりを,演奏会全体を通じて堪能できました。

最初に演奏された,ミヨーの「世界の創造」は,1989年4月のOEKの記念すべき第1回定期公演でも演奏された作品です。定期公演で取り上げられるのは...もしかしたら,その時以来かもしれません。冒頭から上野さんのサックスの音を中心とした甘く蠱惑的な響きに包まれた後,ガーシュインのような雰囲気になったり,ストラヴィンスキーの「兵士の物語」のような雰囲気になったり,変化に富んだ,この曲でしか聞けないような響きを楽しむことができました(弦楽器の数が少なく,管楽器の方が多いというオーケストラとしては異色の編成)。田中さんの作り出す音楽には,何とも言えぬ密度の高さとクリアで生き生きとした鮮やかさとがありました。

続くイベールの「アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲」も,各楽器1名程度の編成で,ミヨーの編成とかなり似ていました。絶妙のカップリングだと思いました。冒頭,どこか雑然とした感じで始まった後,上野さんのサックスが入ってくると,一瞬にして空気が颯爽とした感じに変貌。これが粋で格好良かったですね。軽快で若々しい雰囲気に溢れた演奏でした。

第2楽章はサクソフォンのモノローグで開始。上野さんの音は,どこを取っても美しいのですが,この部分では特にその魅力を味わうことができました。しつこくなり過ぎず,シュッとした感じなのに,しっかりとしたボリューム感と艶っぽさのある素晴らしい響きを楽しむことができました。最後の部分は,有無を言わさぬ鮮やかさで終了。チェロ以外,全員立ったまま演奏していたOEKメンバーの演奏も鮮やかで,タイトル通りの「室内楽的な気分のある協奏曲」をしっかりと楽しむことができました。

後半最初は藤倉大さんによる「UMI(海)」という作品でした。ここまで弦楽器の数が室内楽程度の数でしたので,ここで初めてオーケストラっぽい編成になりました。最近,藤倉さんのお名前を色々なところで聞くのですが,実はその作品を実演で聴くのは今回が初めてでした。第1楽章冒頭,弦楽器の静かな音がグリッサンドで動いていくような響きから,「初めて聞く音」の連続でした。寄せてくる波を思わせるように音が変化したり,チェレスタの上で色々な楽器が次々と音をつないでいったり,その多彩な響きに浸ること自体が面白い作品でした。第2楽章は,最後大きく盛り上がる感じで,心地よい世界に入っていく感じでした。ドビュッシーに交響詩「海」という名曲がありますが,それを21世紀的に表現したらこんな感じになるのかなと,思わせるような作品でした。

演奏会の最後は,イベールの交響組曲「パリ」でした。実演で聴くのは初めての曲でしたが,個性的な小品が6つならんだとても楽しい作品でした。定期公演の「トリ」を締めるには,やや雑然とした感じかなという気はしましたが,オーケストラの各楽器がソリスティックに活躍する部分も多く,日常の憂さばらしにはぴったりといった曲でした。

1曲目は,映画音楽「ジョーズ」を思わせるような列車の描写,5曲目は汽船の描写。クラリネットの音が本物の汽笛のようでした。どちらも乗り物好きには「たまらない」曲だったと思います。第3曲「パリのイスラム寺院」では,加納さんのオーボエを中心に,怪しいけれどもクールな雰囲気が漂っていました。

第2曲「郊外」「ブローニュの森のレストラン」では,トランペットやトロンボーンののびのびとした響きが爽快でした。第4曲ではここでも上野さんのサックスが活躍。スピード感のあるワルツが快適でした,そして,このところ頻繁にOEKの公演に加わっている藤原功次郎さんのトロンボーン!実はこの第4曲はアンコールでも演奏されたのですが,ソロパートでは立ち上がっての演奏。その,遊び心満載の大らかな演奏で,一気に主役になってしまいました。第6曲「祭の行列」はさらに上機嫌な作品。ここでも藤原さんのトロンボーンの伸びやかさが印象的でした。

というわけで,上野さんのサックス,藤原さんのトロンボーンなど気持ちよく響く管楽器の音を中心に,この1週間の嫌なことをすべて忘れさせてくれるような,金曜日の夜に聴くのにぴったりの演奏会でした。

2022/04/17

本日は #カムカウム ロスを埋めるため石川県立音楽堂で行われた #森山良子 さんと #渡辺俊幸 さん指揮 #oekjp の公演を聞いてきました。エネルギーとジャズのテイストの溢れる歌唱と平和への祈り,そしてカムカムでの激走の話題などの楽しいトーク。渡辺俊幸さん編曲のハリウッド風モーツァルトも最高でした

本日の午後は,石川県立音楽堂で行われた,森山良子さんと渡辺俊幸さん指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢による,ファンタスティック・オーケストラコンサートを聞いてきました。森山さんといえば,4月8日に最終回を迎えたNHKの朝ドラ「カムカム・エヴリバディ」の終盤を大きく盛り上げた「アニー・ヒラカワ」役として感動的なシーンの数々に加わっていました。ので...本日は正直なところ,その「ロス」を埋めるために聴きにきました。そしてその「ロス」を”ほぼ”埋めてくれるようなパフォーマンスの数々を楽しませてくれました(”ほぼ”というのは,あの曲が歌われなかったからなのですが,これは今後の楽しみにしたいと思います)。

この日のプログラムは前半は,渡辺俊幸さんの作曲・編曲による,映画音楽やテレビドラマ音楽を集めたもので,渡辺さんの鮮やかな編曲の数々を楽しむことができました。途中,「もしもモーツァルトがハリウッドの映画音楽家だったら」という曲が演奏されたのですが,そのアレンジの職人技が素晴らしいと思いました。モーツァルトのジュピター交響曲の4楽章のテーマ(主役),クラリネット協奏曲の2楽章のテーマ(愛のテーマ),交響曲25番の冒頭のテーマ(敵役)という構想どおりの面白さでした。

後半は森山良子さんの歌を中心としたステージでした。約1時間,すべての曲を歌い,間にはトーク...ということで,まず,その体力が素晴らしいと思いました。トークの中で,「カムカム」の中で,何回も走らされたエピソードが紹介されていましたが,本日の公演を聞いて,そういう森山さんを見越しての設定だったのではと思わせるほどでした。

# カムカムの話題など,まだまだお話を伺いたかったですが,この辺は森山さんが担当しているラジオ番組「オールナイトニッポン」でも聞けそう。

まず最初に予定を変更して,オーケストラ演奏なし,森山さん自身のギターのみで「さとうきび畑」が歌われました。ロシア軍のウクライナ侵攻という状況に対して,平和を祈るメッセージが込められた,感動的な歌でした。

その後,森山さんの名刺代わりのように「この広い野原いっぱい」と「涙そうそう」の「人気曲(森山さんの曲の中でこの2曲+「ざわわ」がいつも上位に来るそうです)」が歌われた後,この日のテーマだった,映画の中の曲,さらにはオペラアリアまで歌われました。私が森山さんの声を聞くのは...15年ぶりぐらいなのですが,その時と変わらぬ,安心して聴ける声でした。特に高音がしっかりと出ているのが素晴らしいと思いました。

ヴェルディの「椿姫」の乾杯の歌は,本来は男性と女性が交互に歌う曲ですが,本日は森山さんが一人で担当。1回目はイタリア語,2回目は日本語で歌う感じで,「飲みごたえ満点」の歌を聞かせてくれました。その後に,飲み過ぎた「酔っぱらい」の歌が続くという楽しい構成。この曲はシュトラウスの「アンネンポルカ」に歌詞をつけたものですが,森山さんのキャラクターにぴったりだと思いました。

「私お気に入り」などでは,英語の発音が素晴らしいと思いました。私が書くまでもないことですが,「さすがアニーさんだ」と思いました。ジャズのテイストもしっかりと漂っていましたので,アンコールで,「On the sunny side of the street」を歌ってくれないかなとも思ったのですが,今回アンコールで歌われたのは,「聖者の行進」でした。サッチモつながりの楽曲かもしれませんが,これがまた驚きのパフォーマンスでした。OEKがすっかりビッグバンド化し,厚みのある音を聞かせた後,森山さんと楽器ソロとが掛け合いを続けるという趣向。森山さんが色々な楽器の声色で歌うあたりが素晴らしかったですね。大盛り上がりでコンサートは終了しました。

改めて「平和な世界」で音楽を楽しめることの喜びを感じさせてくれるような公演でした。唯一の心残りについては,是非,「森山良子ジャズを歌う」みたいな感じの続編でお願いしたいと思います。

2022/03/17

川瀬賢太郎指揮 #oekjp 定期公演。深い感動を感じさせてくれた杉山洋一さんの新曲。20歳の亀井聖矢さんによる美しく完成されたショパン。そして清々しく思い切りの良いスコットランド。充実感溢れる公演でした

今晩は川瀬賢太郎さん指揮,亀井聖矢さんのピアノによる,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)定期公演フィルハーモニー・シリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。前回3月5日の鈴木雅明さん指揮による定期公演は,ベートーヴェンの第九のみという短めの公演でしたが,本日の公演はアンコールが2曲演奏されたこともあり,対照的に終演時間は9:15を過ぎるかなり長い公演。演奏された各曲も充実感溢れる演奏ばかりでした。

今回のプログラムは,基本的には,川瀬さんが前回登場した2021年9月の定期公演同様,メンデルスゾーンとショパンの曲を並べた「同世代&初期ロマン派」プログラムでしたが,本日はその前に,OEKの「2021~2022年コンポーザー・オブ・ザ・イヤー」である杉山洋一さん作曲による「揺籃歌(自画像Ⅱ):オーケストラのための」が演奏されました。もちろん世界初演です。まず,この曲が大変充実した作品でした。

コロナ禍をモチーフにしており,Covid-19の「懸念される変異株」が発見された国(中国,英国,南アフリカ,ブラジル,インド)の「寝かせ歌」を盛り込んだ曲となっていました。全体として,ずっと晴れないような不安気な不協和音に包まれたような雰囲気なのですが,その複雑な和音の持続と遷移が,妙に耳に染みました。常に苦みを感じさせるような重みのある雰囲気を持った曲を聞いた後には,何とも言えない感動が残りました。現代音楽らしく(?)とっつきにくい部分も多いのですが,その中から,各国の「寝かせ歌」のメロディの断片が見え隠れすると,かすかな希望のようなものを感じました。管楽器を中心にソロが活躍する部分も多く,聴きどころの多い作品となっていました。

この作品は,「自画像II」ということで,コロナ第1波の時に書いた「自画像」に続く作品とのことです。「自画像III」があるとすれば,コロナ禍後を描いた作品ということになって欲しいものです。

続いて,20歳のピアニスト,亀井聖矢さんとの共演でショパンのピアノ協奏曲第1番が演奏されました。ショパンがこの曲を書いたのも20歳頃(ちなみに石川県立音楽堂も現在20歳)なのですが,今回の亀井さんの演奏を聞いて,とてもリアルなショパンだと思いました。亀井さんのピアノは,タッチが非常に美しく,荒っぽい感じが全くしませんでした。情感の動きを鮮やかに伝えるような繊細な表現,速いパッセージでの音の粒立ちの良さ,そして瑞々しさを感じさせる切れ味の良い技巧。

ショパン本人が現代に蘇って,現代のコンサートホールで演奏したらこんな感じかも,と勝手に想像を膨らませながら聴いてしまいました。特に第1楽章の第2主題や第2楽章などでの,静けさの中に色々な思いが溢れてくるような表現。OEKのバックアップともども,しみじみと聞き入ってしまいました。第3楽章の生き生きとしたリズム感と安定感も素晴らしいと思いました。思わず,ショパン・コンクールのファイナルでの「慣例」のように,ピアノのパートが終わった瞬間に拍手を入れたくなる衝動にかられてしまいました。

演奏前後,お客さんに挨拶する感じは,結構堅い感じで,「やはり20歳のピアニストだな」とちょっとホッとしたのですが,全曲を通じて,若々しさと同時に,きっちりと完成された充実の音楽を聴かせてくれたのが本当に見事だったと思いました。亀井さんの活動にはこれからも注目していきたいと思います。

プログラム後半で演奏されたのは,メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」でした。川瀬さん指揮OEKの演奏を聴くといつも,竹を割ったような清々しさを感じます。そのキャラクターにぴったりの曲であり演奏でした。第1楽章冒頭でのしっとりとした情感に続いて出てくる,生き生きとした動き。第2楽章でのキビキビとしたリズムの上に息の長~いがメロディが続いたり,自然体だけれども思い切りの良い表現が次々と出てきました。この楽章を中心に,全曲を通じて遠藤さんのクラリネットが大活躍でした。

第3楽章ではアビゲイル・ヤングさんを中心とした第1ヴァイオリンの音が美しかったですね(確かヤングさんはスコットランド出身だったはず)。大きく歌い上げる感じも素晴らしいと思いました。第4楽章はキリっとした表情で開始。激しく音をぶつけてくるような厳しさとノスタルジックな気分が交錯する音楽が大変魅力的でした。

お楽しみのコーダの部分は,中音域を中心に大らかに始まった後,ホルン4本が締まった音でバシッと加わり,音楽にさらに精彩が加わります。最後は,「やっぱりスコットランドは良いなぁ」と旅情に通じるような余韻を感じさせるようにゆったりと終結。最後にアンコールとして,バッハのアリアが演奏されたのは意図がやや分かりにくかったのですが(ロシアのウクライナ侵攻の犠牲者追悼?),どの曲の演奏にも充実感があり,OEKらしさ満載のフルコースを堪能したような満足感を味わうことができた演奏会でした。

2022/03/05

鈴木雅明指揮 #oekjp による第9公演。個人的には...過去実演で聴いた第9の中でも最高でした。プロの合唱団の素晴らしさ,そして4人のソリストによるオペラのような声の饗宴。その中から平和を希求するメッセージが伝わってきました。 #森谷真理 #池田香織 #小堀勇介 #大西宇宙 #東京混声合唱団

本日は鈴木雅明さん指揮によるOEK定期公演を石川県立音楽堂で聴いてきました。本来は,OEK芸術監督のマルク・ミンコフスキさん指揮による,ベートーヴェン全交響曲チクルスの「締め」の公演となるはずでしたが,今年もまた,コロナ禍の影響で指揮者は鈴木さんに交代となりました。

演奏されたのはベートーヴェンの第九 1曲のみ。その演奏は...個人的に過去実演で聴いた第9中,最高の演奏でした(比較できるほど何回も第9を聴いてはいるわけではないのですが...)。ソプラノ:森谷真理,アルト:池田香織,テノール:小堀勇介,バリトン:大西宇宙という素晴らしい4人のソリストに加え,合唱は東京混声合唱団。プロの合唱団による第9を聴くこと自体がまず大変貴重なことですが,すべてが高次元・異次元の第9を聴かせていただいた気がしました。

この日のOEKの編成は,かなり大きく,弦楽器は第1ヴァイオリン10,第2ヴァイオリン8,ヴィオラ6,チェロ6,コントラバス4という特別編成。そのこともあり,どの部分を取っても音に力がありました。鈴木雅明さんのテンポは,第1楽章冒頭から,全く弛緩することのない,ぐいぐい迫ってくるようなやや速目の設定。各パートがくっきりと聞こえ,そこには,意志の強さを感じさせる熱気が常に漂っていました。この日も,アビゲイル・ヤングさん,水谷晃さん,松井直さんの3人のコンサートマスターが揃っていましたが,いつもにも増して,表現の幅が広く,力強い弦の響きを聞かせてくれました。

第2楽章も,キビキビとしたテンションは継続。この日はバロック・ティンパニを使っていましたが,全楽章を通じて力感のある見事な音で,OEKの音を引き締めていました。トリオの部分での流れるようなスピード感も印象的でした。そして,後半,通常カットされることの多い,繰り返しも行っており,「おおっ」と思ったのですが,全く弛緩することはありませんでした。

第3楽章では,弦楽器の歌いっぷりが印象的でした。テンポはやや速目ぐらいだったと思いますが,しっかりとした歌を堪能した感じでした。途中,ホルンが音階のようなフレーズを演奏する部分が印象的です。この音も爽快。その後,テンポが少し上がって,さわやかな感じになる部分が好きなのですが,その期待どおりの演奏でした。楽章最後に警告するように加わるトランペットのピリッとした感じも良かったですね。

そして,第4楽章。やはり,この日の最大の聴きものでした。まず,合唱団の皆さんですが,この楽章に入る時に「特製マスク?」を着用。この時点では4人のソリストは入っていませんでした。これまでの楽章同様,オーケストラは気合十分の音で(ただし荒れ狂う感じではなく),始まった後,「歓喜の歌」が低音パートにさらっとした感じで登場。それが段々盛り上がったところで,いよいよバリトンなのですが...どこ?

ここで上手のドアがパッと開いて,大西宇宙さんが登場。「O Freunde...」と歌っては歩き,歌っては歩きという感じでステージ中央へ。大西さんにパッとスポットライトが当たったような鮮やかな出方でした。そして,声がまた素晴らしく,「この場の主役!」というオペラの一場面を観るような雰囲気になりました。そして,その他の3人の歌手も入場。

この日出演した4人の歌手は,今日本で最も活発に活動されている歌手ばかりということで,4人で歌う部分には,まさに声の饗宴のような華やかさがありました。ステージにいちばん近い場所で,歌っていたこともあり,「お客さんにしっかりメッセージを伝えよう」という気分がビシビシと伝わってきました。続いて,テノールのソロへ。小堀さんは,大変軽やか,そして,よく通る声で,会場は清々しい気分に。トルコ行進曲風の部分もとても爽快でした。

「歓喜の合唱」が力強く出てくる部分は,怒涛のような(?)素晴らしさ。何だか分からないけれども,凄いものが伝わってくるぞ,という「さすがプロ」という合唱でした。その後,満を持してトロンボーンが登場し,再度気分が変わりますが,この部分での合唱も見事でした。アマチュアの合唱団だと,どうしても「高音部が大変そう」という感じになりますが,美しさと輝きのある余裕の合唱でした。フーガの部分になると,宗教音楽を思わせる雰囲気に。そういえば,この宗教音楽は鈴木さんの専門の世界だったなぁと改めて思い出しました。

この部分が終わると,再度,4人のソリストによるオペラのアンサンブルのような気分に。第9の4楽章は,この日のプログラムで飯尾洋一さんが書かれていたとおり,多様式な音楽なのですが,本日の演奏は,そのことを生き生きと感じさせてくれました。

全曲の最後は,十分盛り上げつつも,しっかりと噛みしめるような落ち着きも感じられました。鈴木さんは,今回の公演について,「平和を希求する第9に」といったコメントを述べられていますが,ただのお祭り騒ぎではない,力強いメッセージが伝わってくるような終結部でした。

今回の第9については,昨年末の第5波が収まっていた時点では,「コロナ禍収束記念の第9にならないかな」と個人的には期待していたのですが,そういうわけには行きませんでした。そして,ロシアのウクライナ侵攻という,新たな世界的な危機を迎える中で演奏されることになりました。OEKがこの曲を本拠地で演奏する機会は他のプロオーケストラに比べると非常に少ないのですが,それだからこそ,色々なことを感じさせてくれる公演になったと思いました。

PS. ミンコフスキさん指揮OEKによる第9...これは本当にコロナ明けにリベンジで聴いてみたいものです。

2022/02/17

雪の中,井上道義指揮 #oekjp 定期公演へ。メンバーへのねぎらいの気分の溢れたハイドンの「告別」,こんなに面白い曲だったのかと魅力を再認識させてくれたショスタコーヴィチの15番。素晴らしい公演でした

本日の金沢は一日中,雪が降ったり止んだりという天候でしたが,幸い大雪という感じではなく,予定通り,井上道義指揮OEK定期公演フィルハーモニー・シリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。

コロナ禍後,井上さんが代役でOEKに登場する機会が増えているのですが,この公演は当初から井上さんが登場予定で,お得意のショスタコーヴィチとハイドンの交響曲を組み合わせた,井上さんこだわりのプログラムを楽しむことができました。

前半演奏された,ハイドンの交響曲第45番「告別」は,演奏されるならば,演奏会の最後ということの多い作品ですが,今回は前半に演奏されました。そこには井上さんの意図があり,「お別れ」というよりは,団員とお客さんへの「感謝」の気持ちが込められていました。

ハイドンの「シュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)」時代の作品ということで,第1楽章から暗くキリッと締まった表情が印象的でしたが(そういえば,前回の鈴木秀美さん指揮の定期公演では,44番「悲しみ」が演奏されたことを思い出しました。続き番号というのも珍しいことかもしれません),終楽章の後半の「告別」のパフォーマンスの部分では,気分が一転しました。

この曲の時は第1楽章の最初から,譜面台のところに本物の火のついたロウソクがセットされていましたが,4楽章途中,ステージ上の照明が消え,ロウソクの火だけに。この雰囲気が実に暖かで,音楽の気分とマッチしていました。各奏者が自分の出番が終わると,立ち上がって退出するというおなじみの趣向でしたが,井上さんはその各奏者を丁寧にねぎらっていました。この団員に感謝をするパフォーマンスが狙いだったように感じました。

最後はコンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんと第2ヴァイオリン首席奏者の江原千絵さんの2人だけで演奏。最後の音とロウソクが消えると井上さんだけに。拍手とともに,全メンバーが呼び戻され,ステージ最前列にずらっと並んで,お客さんの方に向かって挨拶。この全員が並ぶという光景がとても新鮮で,見ていて嬉しくなりました。この「お客さんへの感謝」というのも,もう一つの意図でした。

後半はショスタコーヴィチの交響曲第15番が演奏されました。恐らく,石川県で演奏されるのは今回が初めてではないかと思います。この日は演奏会の時間がやや短めでしたので,井上さんがこの曲について語る15分近くのプレトークがありました。まず,この内容が「最高」でした。曲の構成と聴きどころが生き生きと説明され,謎めいた引用だらけのこの曲への期待がさらに高まりました。

第1楽章最初,グロッケンの音がくっきりと鮮やかな音で聞こえてくると,一気にショスタコーヴィチの人生に入り込んでいく感じでした。その後,松木さんによるフルート,柳浦さんのファゴットと井上さんのプレトークどおり,生き生きとした会話が続くような音楽が続きました。編成自体は結構大きい曲ですが,全員で演奏するよりは,ソロが活躍する部分が多い曲で,OEKファンには特に楽しめたのではないかと思います。ちなみに,クラリネットには先日土岐公演でOEKとモーツアルトのクラリネット協奏曲を共演したばかりの吉田誠さんが参加。遠藤さんと一緒に,ものすごく存在感のある音を聴かせていました。

第2楽章は金管合奏で開始。第1楽章とは一転して,深い表情を持った葬送行進曲。ここでは,客演首席奏者の山本裕康さんのチェロの雄弁さも印象的でした。途中,トロンボーンの客演奏者の藤原功次郎さんによる気だるい雰囲気のあるソロ。さらに7人も奏者がいた打楽器を交えての壮大な盛り上がり。最後は井上さんが「天使のような」と語っていたチェレスタが出てくるなど,静かな空気感に包まれました。

いかにもショスタコーヴィチらしい悪魔的な感じの第3楽章スケルツォに続いて,ワーグナーの「神々の黄昏」のモチーフの引用で始まる第4楽章へ。金管合奏が活躍する点で,第2楽章の再現のような感じがありました。その後に続く,ヴァイオリン演奏するメロディは清冽な美しさ。この日は,ヤングさんに加え,水谷晃さん,松井直さんと「3人のコンサートマスター」が揃う豪華メンバーでしたが,その威力が発揮された美しさでした。

井上さんのプレトークで,ハイドンの「ロンドン」交響曲の冒頭のモチーフが出てくることも紹介されたのですが,「なるほど」という感じでした。「交響曲の父」へのオマージュの意味もあるのかなと思いました。

そして曲の最後の部分は打楽器チームの見せ場。時を刻むような精緻な音がクールに長く続きました。この曲を実演で聴くのは2回目なのですが,「こんなに面白い曲だったのか」とショスタコーヴィチの人生を締めくくる作品の魅力をしっかり伝えてくれました。

演奏後のお客さんの拍手も盛大でした。井上さんは,ソロを取った奏者を順に立たせていましたが,何か前半の「告別」の最終楽章での「ねぎらい」と重なるようでした。

というようなわけで,井上さんの得意のレパートリーで曲の魅力を鮮やかに伝えると同時に,OEKメンバーとの結びつきの強さを感じさせてくれた,素晴らしい公演でした。

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