OEKのCD

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コンサート

2022/09/18

OEKの2022/23定期公演シリーズ開幕!そして,広上淳一さんのアーティスティック・リーダー就任記念演奏会。遅めのテンポ設定で,広上さんの掌の上に載ってのびのびと演奏してるような「英雄」。デシャトニコフ版の「ブエノスアイレスの四季」での神尾真由子さんの表現の幅広さ。OEKどら焼きプレゼント,広上さん等身大パネル各種出現!...等々新リーダーの存在感がさらにアップした公演でした。

本日はOEKの2022/23定期公演シリーズの幕開け,そして,広上淳一さんのアーティスティック・リーダー就任記念の演奏会を聴いてきました。広上さんは,ここ数年,頻繁にOEKを指揮されていましたので,登場回数的にはそれほど変わらないのかもしれないのですが,本日の公演を含め,9月になってから一気に「広上さんらしさ」が浸透し始めたなぁと実感しています。ここしばらくは,”リーダーのリーダー・シップにワクワク”という感じが続きそうだと思いました。

本日はこの”就任記念”ということで,演奏会に先立ちセレモニーがありました。演奏会の前の「あいさつ」というのは,個人的にはあまり好きではないのですが,本日の馳石川県知事,村山金沢市長の挨拶を聞いて,広上さんとのコラボレーションで,結構色々大きく(良い方に)変わっていくのでは,という期待を持ってしまいました。そして,広上さんの「ことば」がいつもどおり素晴らしいですね。自然に前向きな気持ちにさせてくれます。金沢市の人口規模,観光資源の上にOEKが重なり,さらには,このコンパクトな距離感を活かして,団員と市民の個人レベルでのつながりが強まっていけば,現在以上にOEKは金沢市民に親しまれる存在になるのでは,という期待感を持ってしまいました。そんな就任あいさつでした。

演奏会の方は,コダーイのガランタ舞曲で始まりました。7月の広上さん指揮によるOEK定期公演は,ハンガリー狂詩曲がトリでしたが,それの続編のような緩急自在の楽しい音楽でした。広上さんの先ほどの挨拶の中で,「団員個人のファンになって欲しい」という言葉があったのですが,きっと,クラリネットの遠藤さんのファンが増えたのではと思わせるような演奏でした。

2曲目は神尾真由子さんのヴァイオリンとの共演で,ピアソラ(デシャトニコフ編曲)の「ブエノスアイレスの四季」でした。OEKはマイケル・ダウスさんの弾き振りでこの曲のCD録音を残していますが,そのスタイリッシュな恰好良さのある演奏とは一味違い,全般にテンポは遅めに設定し,この曲集の持つ,「怪しい楽しさ」のようなものを,広上さん指揮OEKと一体になって,より鮮明に伝えてくれました。神尾さんのヴァイオリンでピアソラを聞くのは初めてでしたが,演歌の世界に近いようなむせぶような情感を感じさせてくれたかと思えば,ヴィルトーゾ風の華やかさを聞けせてくれたり,神尾さんの表現力の幅の広さを存分に味わうことができました。

今回この曲を聞いて感じたのは,この曲はピアソラ作曲というよりは,編曲者のデシャトニコフの力が大きいのではということです。ヴィヴァルディの「元祖・四季」のパロディのようなフレーズはデシャトニコフのオリジナルだし,「夏」の最後の部分(本日は,秋・冬・春・夏の順に演奏)に出てくる,ヴィヴァルディの「夏」を不協和音で聞かせたり,最後は腰砕けになるような脱力した感じで締めたり...ウィットが効いたアレンジになっています。プログラムの飯尾洋一さんの解説によると,デシャトニコフは1955年,ウクライナ生まれの作曲家ということで,他にもこの方の作品を聞いてみたくなりました。

演奏後は神尾さんの独奏によるアンコールがありました。パガニーニのような感じの曲でしたが...もう息をする暇がないのではという急速な音の動きが続く演奏で,会場は茫然という感じになっていました。お見事でした。

公演の最後は,ベートーヴェンの「英雄」でした。OEKも色々な指揮者と演奏してきた曲ですが,恐らく,過去OEKが演奏してきた「英雄」の中で最長だったと思います。広上さんのテンポ設定はかなり遅め,しかも,第1楽章の繰り返しをしっかり行っていましたので,全体で1時間ぐらいかかっていたのではないかと思います。

というわけで,まさに巨匠の「英雄」でした。広上さんの手のひらの上で,OEK団員がのびのびと演奏しつつ,要所要所でビシッと引き締める,そういった感じの演奏だったと思います。キビキビとした熱い「英雄」も良いのですが,この日の「英雄」を聞いて,さすがリーダーと思いを新たにした会員も多かったのではないかと思います。

特に印象的だったのは,第4楽章の後半部です。この部分について,岩城宏之さんは,「遅いしたテンポで演奏した方が絶対良い」という持論を著書で披露されており,私もその説に同感なのですが,それと同じテンポ感でした。それに加え,ティンパニの強打(バロックティンパニで,カラッとした感じ),ホルンの強奏も印象的で,個人的に「こういう「英雄」を聞いてみたかった」と思っていた演奏が実現した感じでした。

というわけで,本日の公演も終わってみると2時間30分くらいでした(最初のセレモニーも含めてですが)。9月以降,広上さんの登場する演奏会を2回聞きましたが,改めて,「良いクラシックの音楽会」というのは,純粋に「良い音楽」だけでは成り立たないのだなと感じてします。演奏者と聴衆の時間と空間の共有をどれだけ楽しく,濃密なものにできるか,ということに掛かってるのではと思いました。9月以降,ものすごい行動力で動きまわっている広上さんの姿を見ながら,一気に石川県立音楽堂という場が,何か良いことがありそうな場に変わってきているのを多くの人は実感している気がします。

これから広上OEKは,このプログラムで全国各地でツァーを行いますので,是非,全国各地でファンを増やしていって欲しいと思います。

PS. この日,音楽堂で目についたのは...広上さんの等身大パネル(各種)。一緒に写真を撮っている人の姿も見かけましたが,音楽堂の新名物になりそうです。そして...就任記念のどら焼き。終演後,全員にプレゼントされました。色々な広上グッズが出てきても楽しそうです。個人的に期待しているのは,「広上モデル,鍵盤ハーモニカ」です。広上さんと皆で合奏する機会があれば,参加してみたいですね。

2022/09/10

OEK新シーズン開幕に先立ち,岩城宏之メモリアルコンサートへ。竹多倫子さんによるプリマドンナのオーラ全開の素晴らしい歌,尾高惇忠「音の旅」(オーケストラ版)の全曲初演,広上淳一さん指揮による熟練のモーツァルト「リンツ」。新コンビへの期待が大きく広がる演奏会でした

本日はOEKの定期公演新シーズン開幕の時期に毎年行われている,岩城宏之メモリアルコンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。毎年,その年度の岩城宏之音楽賞受賞者との共演がまず注目です。今年は,金沢市出身のソプラノ,竹多倫子さんが受賞されました。それに加え,今年の場合は「OEKアーティスティック・リーダー」という肩書きで,広上淳一さんが登場するのも注目です。そして,その期待どおり...というか期待以上に楽しめる公演となりました。

まず,音楽堂に入ると,何だか華やいだ雰囲気。玄関付近から大勢の人が行き来していました。さらに,ホワイエにあるカフェ・コンチェルトが久しぶりに営業をしていました。以前のANAホテルではなく,BLUE MONDAYコーヒーさんの営業。ここにも大勢の人が入っており,久しぶりに私も開演前に1杯飲んでみました。その味わいが口の中に残る中,公演を待つのも良いものです。

もう一つ期待以上だったのが,1曲目に演奏された尾高惇忠作曲の「音の旅」(オーケストラ版)の全曲演奏でした。もともとカワイ音楽教室の機関誌向けに作曲したピアノ連弾曲集に宮沢賢治の童話を題材として作曲した連弾曲を追加した組曲で,全部で16曲もあります。今回は,それをオーケストラ用に編曲した版が演奏されました。これまで抜粋版が広上さん指揮で演奏されただけで,全曲演奏されたのは今回が初めてとのことです。

この組曲が,ものすごく楽しめました。最初の方の曲は,いかにも子供向け小品といった,聴いていて頬が緩む感じの曲が多かったのですが,宮沢賢治の世界に入ってくると,少しずつミステリアスな気分も加わってきました。どの曲も親しみやすいメロディを持ち,短い曲ばかりなのですが,それぞれにオーケストレーションに工夫がされており,全く飽きることなく楽しめました。念入りに作られた小品がギュッと詰まっている感じで,「音のおせち料理」といった趣があると感じました。トロンボーン3本,テューバ,打楽器多数が入る曲で,編成的にはOEK向きではないのですが,広上&OEKのレパートリーとして定着していって欲しい曲だと思いました。

この曲が予想以上の大作だったので,前半はこの曲だけでした。岩城賞を受賞した竹多さんは,後半の最初のステージに登場し,ヴェルディ,コルンゴルト,ワーグナーの3つのアリアを歌いました。まさに圧巻のステージでした。キラキラした鮮やかな青のドレスで竹多さんが登場すると(ヴェルディの「ドン・カルロス」のアリアの序奏の後,登場),プリマドンナのオーラが全開に。声量豊かに,スパッと率直に切り込んでくるような竹多さんの声が飛び込んでくると,一気にヴェルディの世界になりました。このオペラ,全く観たことはないのですが,何か全部観たような気分にさせてくれました。広上さん指揮OEKの作る気分ともぴったりと合致し,役柄のキャラクターがリアルに伝わってきました(ストーリーは知らなくても,リアルさを感じました)。

コルンゴルトのアリアは,この作曲家のマジックのような音楽も素晴らしく,たっぷりと酔わせるような音楽を聴きながら,スローモーションの叙情的な映像を観ているような気分になりました。ワーグナーの「タンホイザー」のアリアは,竹多さんの十八番の曲ですね。ホルンの歯切れの良い音による序奏部聴くだけで気分が沸き立つのですが,それを受けて,突き抜けて飛び込んでくる竹多さんの声も爽快。何か,このまま演奏会が終了しても良いような充実感がありました。

その後,広上さん指揮OEKでモーツァルトの「リンツ」交響曲が演奏されました。これもまた素晴らしい演奏。広上さんとOEKはすでに何回も共演していますので,すでに熟練の味が感じられる演奏となっていました。

第1楽章の序奏部は,気骨のある率直な雰囲気で開始。その後は,基本的にゆったりと構えながらも,広上さんのやりたいことが鮮やかに伝わってくるような味わい深い演奏でした。陰りを感じさせる部分での自然なニュアンスの変化も美しく,全く退屈することなく楽しむことができました。

第3楽章のメヌエットは大らかな雰囲気で開始。トリオになるとさらにひなびた感じになるのですが,この部分での慈しむような雰囲気の中でのオーボエと弦楽器の絡み合いが美しかったですね。

第4楽章も落ち着いた雰囲気で始まった後,だんだんと色々な音が絡み合ってくる楽しさが高まってくるような演奏。途中,フォゴットやオーボエの音がねっとりとした感じで絡んでくるのが面白かったですね。最後は,大げさになり過ぎない感じで華やかさをアップして,気持ちよく終了。熟練のモーツァルトという感じでした。

この日の公演は,プログラムを見た感じだと「短い?」と思ったのですが,終わってみると2時間以上の充実感でした(「リンツ」は各楽章の提示部の繰り返しを全部行っていたと思います)。色々な点で,新コンビへ期待が高まった公演でした。

PS.演奏会に先立って,記念式典があり,馳石川県知事から竹多さんに賞状等が授与されました。馳知事の挨拶は,堅苦しくならない簡潔な言葉で,竹多さんに加え,バランスよく関係者全員に感謝をしており,「さすが」と思いました。

2022/09/06

本日は夏休みをとって「ランチタイムコンサート:#oekjp の名手たちによる木管アンサンブルの調べ」を石川県立音楽堂で聴いてきました。心地よい華やかさのある響きに包まれた充実の1時間でした。

本日の金沢は台風の接近に伴うフェーン現象気味で午前中から猛暑。その中,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の3人の木管楽器奏者(フルート:松木さや,オーボエ:加納律子,クラリネット:遠藤文江)と倉戸テルさんのピアノによるランチタイム・コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。

実は,今回,「夏休み」をわざわざ取って聴いてきました。その理由は,今年の春の「楽都音楽祭」でこの3人による室内楽公演を聞き逃した「無念さ」があったからです。そのリベンジの思いで聴いてきました。

ただし公演内容は全く違うものでした。,楽都音楽祭の時は,各楽器のソロだったのに対し,今回はすべて,3つの木管楽器が入る室内楽曲でした。演奏されたのは,フマガッリの演奏会用大三重奏曲, ボールの4つの舞曲,そして,サン=サーンスのデンマークとロシアの歌による奇想曲...知らない曲ばかり,しかも,フマガッリとボールについては,作曲者名自体聴くのは初めてでした。

言ってみれば,演奏者の方がやってみたい曲を集めた,”攻めた”プログラムだったのですが,聴いているとどれも親しみやすい曲ばかりで,大変充実した時間を過ごすこともできました。暑さにもかかわらず,お客さんは良い感じで入っており,私同様,「この3人の演奏なら悪いはずはない」という期待感と満足感が合わさった雰囲気の演奏会となりました。

まず,フマガッリの作品の冒頭の3楽器のハモリを聴いただけで華やかな気分になりました。素晴らしいバランス,素晴らしい音響(本日は1階席の真ん中で聴きました)。イタリア・オペラの幕が開いたようなワクワク感がありました。その後,各楽器のソロが出てきたり,絡み合って盛り上がっていったり...大変良くできた作品でした。3人の奏者の余裕のある技巧と美音に彩られた,とても気持ちの良い作品でした。

2曲目のボールの作品では,ピアノは入らず,純粋に木管三重奏となりました。ボールという人は20世紀の英国の指揮者・作曲家ということでしたが,フマガッリ以上に親しみやすさのある作品でした。曲は,第1曲「陽気なダンス」,第2曲「叙情的なダンス」,第3曲「輪舞」,第4曲「スクェア・ダンス」の4曲から成っていました。

2曲目がゆったりとした音楽(加納さんのオーボエがエキゾティック),3曲目がはねるようなスケルツォ的な音楽,でしたので,全体的な構成としては4楽章の交響曲に近い面もあったかもしれません。4曲目は遠藤さんのクラリネットがなんともユーモラスで,ラグタイムなどに通じるような素朴な楽しさがありました。曲の終わり方も常套的な「チャン,チャン」という感じだったのも楽しかったですね。

3曲目の作品は,演奏前の加納さんのトークによると,デンマークとロシアの王室の友好を意図して作られた作品とのことでした。その気分で聴いたせいか,冒頭から「ロイヤル!」な気分がっただよい,倉戸さんのピアノのフレーズなど,ベートーヴェンの「皇帝」を思わせる優雅な華やかさがありました。デンマーク民謡とロシア民謡をそれぞれ展開させた作品ということで,松木さんによる主題の提示部分(どっちがどっちかは分からなかったのですが)から魅力的でした。

最後の方で,ユニゾンで演奏する部分が出てきたのが印象的でしたが,戦争がまだ継続している昨今,「ウクライナとロシアの歌による○○」といった曲があれば聴いてみたいものだと思いました。

演奏後のアンコールはなかったのも良かったと思います。トークを合わせて,1時間弱の公演でしたが,3人の奏者の作り出す,軽やかな華やかさに包まれた,心地の良い公演でした。外に出ると...急にムッとした空気に包まれ,現実に戻されてしまいましたが。

2022/08/21

お盆明け恒例の #oekjp K&合唱団OEKとやまによる富山特別公演をオーバードホールで聞いてきました。ドブロコスのレクイエムの新鮮な癒しの気分,角口圭都さんのアルト・サクソフォン独奏によるグラズノフの協奏曲、木村綾子さんのソプラノを交えてのヤイロのドリームウィーヴァー...多彩で魅力的な作品の数々。さらに富山県美術館で充実の「ミロ展」も鑑賞。久しぶりに旅行気分を味わうことができました。

本日の午後は、毎年お盆休み明けの日曜日恒例のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と合唱団OEKとやまによる富山特別公演を、富山駅前のオーバードホールで聞いてきました。同じ時間帯、金沢ではいしかわミュージックアカデミーの講師による室内楽公演を行っており、そちらにも行きたかったのですが、8月になってOEKを聞いていないことと、久しぶりに富山市に行ってみたくなり、こちらを選択しました。今年の夏もコロナ禍の影響が続いており、気軽に行楽に出かける気分になりにくいので、「せめて富山でも」という思いで聞きに行ってきました。

毎年この公演では20世紀以降の作曲家による宗教曲を取り上げるのが恒例で、今年はドブロゴスという作曲家による,テ・デウムなどが後半に演奏されました。それに加え、前半、富山市出身のサクソフォン奏者,角口圭都さん、金沢市出身のソプラノ歌手木村綾子さんが出演したのが新趣向だったかもしれません。

目玉の「新しめの宗教曲」ですが、今年もまた素晴らしい曲を楽しむことができました。聞く前は、最後に演奏されたドブロゴスの曲だけを注目していたのですが、実は前半最後のヤイロ作曲の「ドリームウィーバー」、後半最初の「テ・デウム」も素晴らしい曲。どの曲も親しみやすさと新鮮さがある点で共通するムードがあり、全体として,とてもまとまりの良いプログラムとなっていました。この日のOEKの編成は、弦楽メンバーのみ(レクイエムとドリームウィーバーでは、ピアノも参加)でした。おそらく、レクイエムの編成に合わせて、他の曲も選んだのだと思いますが、これも統一感を作るのに役だっていました。

最後に演奏されたドブロゴスのミサは、作曲者自身がジャズピアニストということもあり、随所にジャズのテイストが含まれていました。合唱に加え、特にピアノが活躍しており、曲のサウンドの核になっている感じでした。ミュージカルを思わせる雰囲気になったり,ジャズのテイストが出てきたり,合唱とピアノがシリアスな対話をしたり...全く退屈することがありませんでした。最後のアニュス・デイには,静かな感動を秘めつつも,どこか気軽にラウンジで演奏を楽しんでいるような雰囲気もあり,最後まで新鮮でリラックスした癒やしの気分を楽しむことができました。まさに新鮮なレクイエムでした。「合唱の世界では人気の曲」ということも納得という曲だと思いました。

「テ・デウム」の方は,全曲を通じて静かな雰囲気。「ドリームウィーヴァー」はピアノが入っていた点でレクイエムと共通する気分がありましたが,木村さんのソプラノを加え,素朴な暖かみのようなものを感じました。どの曲も,同じ音型の繰り返しが印象的で,「現代の癒し」とミニマルミュージックにどこか通じるものがあるのでは,と思いました。

合唱団メンバーは、今回はマスクをしたままの歌唱でした。そのせいか,どの曲についても,柔らかなまろやかさを感じました。レクイエムでの多彩な表現 テ・デウムでの落ち着き,ヤイロの曲での親しみやすさが良いなと思いました。

前半に演奏されたグラズノフのサクソフォーン協奏曲も、今回楽しみにしていた作品でした。落ち着いた感じの弦のユニゾンの後、角口さんのサクソフォーンが入ってくると、すっと色あいが増したよう。要所要所で,鮮やかな技巧を楽しませてくれつつも、オーケストラと激しく競い合うような感じはなく、オーケストラと一体となって、哀愁のある暗さと甘さの漂う音楽をしっとりと聞かせてくれました。

最初に演奏された,同じグラズノフの「弦楽のための主題と変奏」とも雰囲気はぴったり。西欧風とスラブ風が融合した弦楽合奏曲ということで、チャイコフスキーの弦楽セレナードのテイストを引き継いでいるような魅力を感じました。

最後に指揮者の山下さんから、今回は,平和を祈って「レクイエム」を演奏したといった挨拶があった後、アンコールでは恒例の「ふるさと」が演奏されました。マスクの中で、一緒にハミングしながら,レクイエムの後で聞くと、賛美歌のように聞こえるな,と思いました。

本日は、演奏会の前に富山県美術館(ホールから徒歩15分ぐらいのところにあります)で「ジョアン・ミロ展」を満てきました。こちらも大変充実した内容(別途、紹介します)。というわけで,久しぶりに,石川県の外で美術と音楽をセットで楽しむことができました。お土産も色々と購入し,久しぶりに旅行気分を味わうことのできた一日でした。

2022/08/07

本日夕方は,新石川県立図書館で行われた #oekjp の木管五重奏によるミニコンサートへ。イベールの3つの小品をはじめ,日曜夕方の憂鬱(?)な気分を吹き消してくれるような上機嫌な曲の数々でした。

本日の夕方,7月に新しく開館したばかりの石川県立図書館でOEKメンバーによる,入場無料・申込不要の木管五重奏のミニコンサートが行われたので出かけてきました。公演のタイトルは「家族で楽しく夕涼み!」。そのタイトルどおり,親子連れで賑わう,夏休み中の日曜日の午後,涼しい館内でのんびりと過ごしてきました。

登場したのは,岡本さん(フールト),加納さん(オーボエ),遠藤さん(クラリネット),金田さん(ファゴット),金星さん(ホルン)の5人で,いちばん若い金田さんがMCを担当していました。最初に演奏されたのは,イベールの「3つの小品」でした。木管五重奏の定番曲ですが,最近ではテレビ朝日「題名の音楽会」の挿入曲として知られている曲だと思います。演奏されたのは,図書館のメイン入口の隣にある,「だんだん広場」というスペースでした。閲覧スペースのすぐ隣で,音も少し漏れていたと思いますが,もともと館内の大半は「会話可能」というのがルールですので,特にお客さんの迷惑になるようなことはなかったと思います。

この「だんだん広場」は,天井は高いのですが,天井に反響板はなく,音を全部吸収する感じでしたので,ほぼ残響はゼロでした。その分,くっきりとした音がダイレクトに耳に飛び込んできました。イベールの第1曲などは,刺激的なくらいキレの良い音の絡み合いを楽しむことができました。夕暮れ気分にぴったりの静かな第2曲の後は,再び上機嫌な第3曲。日曜日の夕方といえば...憂鬱になる人も多そうですが,そういう気分を吹き飛ばしてくれそうでした。

その後は,ディズニー映画「リトル・マーメイド」の中の「アンダー・ザ・シー」,「ねこ踏んじゃった」を楽しくアレンジした「ねこ,ステップ踏んじゃった!」,最後に「日本の四季メドレー」が演奏されました。どの曲も各楽器のソロも楽しめる,変化に富んだものでした。「ねこ,ステップ踏んじゃった!」は,ボサノヴァっぽく始まった後,だんだピアソラ風のほの暗いタンゴっぽくなるのが面白かったのですね。

「日本の四季メドレー」については,どの曲がどの季節なのか思い浮かべながら聴いてください,ということで,曲をメモしながら聴いていました(ちなみに私の座席は,閲覧机でした)。「早春賦」「夏は来ぬ」「赤とんぼ」など定番曲の間を,「春の声」など西洋のクラシック音楽の断片が埋めるような感じで,編曲者も楽しんで作っているような曲でした。最後の方は,ベートーヴェンの第9とクリスマス,正月関係の曲が絡みあい,まさに「日本の師走」といった忙しい雰囲気が出ていました。

半分予告されていたアンコールでは,YOASOBIの「夜に駆ける」という曲が演奏されました。個人的に最も「知識のない」音楽ジャンルなのですが,若い人たちに人気のある曲なのだと思います。細かい音の動きがカチッと組み合った感じが心地よい演奏でした。

県立図書館の「だんだん広場」は雰囲気としては,石川県立音楽堂の交流ホールのようなオープンでカジュアルな感じなので,図書館を使いながら気分転換に音楽鑑賞するのにぴったりの場所だと思います。唯一注意が必要なのは...駐車場の混み具合でしょうか。土日は,相当混んでいるので,ゆとりをもってお出かけすることをお勧めします。

 

2022/07/15

#oekjp の2021/22年シーズンを締めくるフィルハーモニー定期は,広上淳一さん指揮による,バッハ,ブルックナー,リストの編曲ものという独特のプログラム。そして,OEKを自在にドライブした,濃厚かつ楽しさの溢れる,新シーズンの期待を高める演奏ばかり。ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲での小林美樹さん演奏にもすっかり魅せられました。

本日はOEK2021/2022年シーズンを締めくる定期公演フィルハーモニー・シリーズを石川県立音楽堂で聴いてきました。指揮は,9月からOEKのアーティスティック・リーダーに就任する広上淳一さん,ヴァイオリンは小林美樹さんでした。このプログラムが決まった時には,就任のことは決まっていなかったと思いますが,広上さんらしさが存分に発揮された,楽しく・新鮮・聴きごたえのある公演となりました。

まずプログラムが非常に個性的でした。通常,定期公演の場合,「交響曲で締める」のが定番ですが,この公演に交響曲はなく。その代わりにOEK単独で演奏したのは,編曲作品ばかり。ウェーベルン編曲のバッハは以前に定期公演で取り上げられたことがありますが,それ以外の作品は初めて聴く曲ばかりでした。それぞれにキャラクターが違う曲ばかりで,新しくスタートを切る広上&OEKコンビの魅力のエッセンスをデモンストレーションするようでした。

最初に演奏された,ウェーベルン編曲のバッハの「音楽の捧げもの」の6声のリチェルカーレは,飯尾洋一さんがプログラムに書かれていたとおり,私にとっても,かつてNHK-FMで放送していた「現代の音楽」という番組のテーマ曲のイメージがいまだにあります。冷たく不気味な雰囲気というイメージを持っていたのですが,広上さん指揮OEKの演奏には,暖かみのような空気感があり,絶妙の調和のある音楽となっていた気がします。石川県立音楽堂の音響の力もあると思いますが,この曲も「古典」になったのだなぁと感じさせてくれました。

その後,ヴァイオリンの小林美樹さんとの共演による,ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲でした。意外なことに。OEKがこの曲を取り上げるのは今回が初めてとのことです。トロンボーンが入らない曲で,チャイコフスキーの協奏曲などとほぼ同じ編成なので,「なぜか盲点になっていた」としか言いようがない感じです。そして,今回初めて演奏を聴いた,小林美樹さんのヴァイオリンがお見事でした。すっかりファンになってしまいました。小林さんのヴァイオリンには,技をひけらかすような感じはなく,音色も落ち着いた感じでした。演奏全体に堂々とした自信ががあふれ,安心してドヴォルザークの音楽に浸ることができました。

第3楽章は次々と多彩なメロディが湧き上がってくる,ドヴォルザークらしい音楽です。小林さんは,広上&OEKの作り出す表情豊かな音楽にぴたりと絡み合い,曲の終結部に向けて,どんどんテンションが上がっていくのがスリリングでした。室内楽を演奏するような密度の高さと同時に,演奏全体に漂う雰囲気には,何とも言えない「華」もあり,「良い音楽を楽しませてくれたなぁ」という充実感が後に残りました。

鳴りやまない拍手に応えて演奏された,品格が高く,ホール全体に染み渡るようなバッハも素晴らしい演奏でした。

後半最初に演奏されたのは,ブルックナーの弦楽五重奏曲ヘ長調の中のアダージョ楽章を,ベルリンフィルのホルン奏者,ラデク・バボラークが弦楽合奏用に編曲したものでした。恐らく,OEKが初めて演奏したブルックナーですね。曲自体が素晴らしく美しい作品でした。交響曲作曲家であるブルックナーの「隠れた名曲」ですね。「アダージョ」というほど,テンポが遅い感じはせず,色々な楽想が次々出てる感じの親しみやすさがありました。途中,首席ヴィオラ奏者のダニイル・グリシンさんによる,非常に雄弁なソロが出てきたり,メロディの美しさだけでなく,何かを語りかけてくるような意味深さも感じました。中間部では,広上さんの大きな指揮の動作に合わせて,ぐわーっと盛り上がりました。濃厚さはあるけれども爽やかさも漂うような演奏だったと思います。

演奏会の締めは,トバーニ編曲によるリストのハンガリー狂詩曲第2番でした。非常に有名な,いわば「通俗名曲」といっても良い作品なので,定期公演のトリとして演奏されることは,ほとんどない曲ですが,ブルックナーの後で聴くと,その静と動のコントラストの面白さが際立つ感じでした(開放感を感じました)。トバーニの編曲ですが,楽器の使い方は,通常耳にすることの多い版(飯尾さんの解説によると,ミュラー=ベルクハウス版)とほぼ同じで,楽器編成がコンパクトになっただけ(=OEKのための版)といった印象でした。

冒頭の弦楽器の音からゴージャスで,前半は,遅いテンポをぐっとキープする広上さんの楽しそうな顔が目に浮かぶようでした。後半は軽快な感じになりますが,それでも慌てる感じはなく,ケレン味たっぷりにもったいぶったり,やんちゃな感じで特定の弦楽器を強調したり,オーケストラ音楽の楽しさがあふれ出てくるような演奏でした。広上さんを含め,メンバー皆が音楽を楽しんでいるような演奏だったと思います。

その後,広上さんから一言あいさつがあった後(定期公演に大勢の人に来てもらい,「心の居酒屋」のようになって欲しい...といった言葉が印象的でした),シベリウスの「悲しいワルツ」がアンコールで演奏されました。この曲もまた,じっくりとしたテンポと抑制された音で開始。体全体を使った,広上さんならではの指揮で,OEKを見事にコントロールしていました。最初の方は弦楽合奏なのですが,途中,パッと光が差し込むように,松木さんのフルートが入ってきます。この部分でのゾクッとするような気分の変化が素晴らしいと思いました。

広上さんのアイデア満載の選曲と演奏ということで,新シーズンへの期待が一層広がった演奏会でした。

2022/07/09

#oekjp 定期マイスターシリーズ2021/22の最終公演は,プリンシパル・ゲストコンダクターとしての登場が本日で最後となるユベール・スダーンさん指揮。シューマンの2番では,その思いが力強い音になっていた。ラヴェルの協奏曲での見事にコントロールされた,三浦謙司さん美しいピアノも見事でした。

本日はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演マイスターシリーズ2021/2022の最終公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。指揮はユベール・スダーンさん,ピアノは三浦謙司さんでした。

OEKは今度の9月から指揮者陣の体制が変更になりますので,スダーンさんが,プリンシパル・ゲストコンダクターとしてOEKを指揮するのは本日が最後ということになります。そのことも反映してか,いつもにも増してスダーンさんの「思い」がOEKの音に強く反映しているように思えました。

この日のプログラムは,前半がフォーレの「ペレアスとメリザンド」組曲とラヴェルのピアノ協奏曲というフランス音楽。後半はシューマンの交響曲第2番。すべて聴きごたえのある演奏でしたが,特に,最後に演奏されたシューマンの交響曲第2番は,これからもスダーンさんとセットで強く記憶に残るような演奏だったと思いました。

この曲については,シューマンの不健康な精神状態が反映した曲と言われています。確かに,第1楽章などはハ長調なのに,冒頭の金管のファンファーレからどこか沈んだ雰囲気が漂っています。しかし,本日の演奏は,楽章を追うに連れて,健康的な気分に変わっていくように思えました。スダーンさんの指揮ぶりは,急速なテンポでも,手綱をビシッと締めており,第2楽章などはずっしりとした安定感を感じました(この楽章の終了後,スダーンさん自信,オーケストラに向かって拍手をしてびっくり)。

第3楽章の美しく自然な歌も素晴らしかったですね。第4楽章は迷いのない力強い音で開始。ドイツ風の行進曲を聴くような充実感がありました。コーダの部分では,ティンパニが曲全体を支配するような素晴らしい強打を聴かせてくれて,見事に締めてくれました。

この日は,前半のフランス音楽の時は通常のティンパニ,後半のシューマンではバロックティンパニを使っていましたが,その独特の落ち着きのある音が威力を発揮していました(演奏後,スダーンさんは各奏者を立たせていたのですが,ティンパニの方を立たせるのを忘れていたようですね)。

前半では,三浦謙司さんと共演したラヴェルのピアノ協奏曲が素晴らしい演奏でした。OEKは過去何回も演奏してきた曲ですが,今回の三浦さんのピアノは,どこを取っても言うことなし,という素晴らしい演奏でした。無駄な力は入っていないので,どの音もくっきりと聞こえ,この曲の持つ多彩なニュアンスが大げさに演奏しなくてもしっかりと伝わってきました。そして急速なパッセージでの鮮やかさ。平然と演奏するクールさがラヴェルにぴったりだと思いました。第2楽章もしっとりとしているけれども,ベトつくことはなく,底光りするような美しさを感じました。第3楽章も切れ味が良かったですね。

OEKの方は,管楽器を中心に,各パートがソリストになったような演奏を聴かせてくれました。特に小クラリネットを演奏していた,この日のエキストラ吉田誠さんの明るく主張する音が印象的でした。急速なテンポということで,楽器によっては,少々,雑然とした感じに聞こえるような部分もあったのですが,これもまたこの曲のキャラクターとも言えると思いました。両端楽章で,賑々しく活躍していた打楽器チームも,ムチの音をはじめ,要所要所でビシッと演奏を引き締めていました。

アンコールでは三浦さんの独奏でマルチェロのオーボエ協奏曲の第2楽章が演奏されました。ピアノ独奏版で聴くのは初めてでしたが,その淡々とした音の美しさにすっかり魅了されました。三浦さんのソロ・リサイタルの聴いてみたいと思いました。

最初に演奏されたフォーレの「ペレアスとメリザンド」組曲もOEKは何回も演奏してきている曲です。松木さんの爽やかなフルートが楽しめた「シシリエンヌ」も良かったですが,最後の「メリザンドの死」のその最後の部分,音楽がパタっと止まって静寂が訪れる部分が「すごい」と思いました。

全曲の演奏後,スダーンさんは英語で挨拶をされて,アンコールを1曲演奏しました。シューマンのトロイメライを管弦楽用に編曲したものでした。ヨーゼフ・シュトラウスという人名が耳に残りましたが,どこか後期ロマン派風のトロイメライという美しさがありました。スダーンさんの「置き土産」という感じの演奏でした。

スダーンさんがプリンシパル・ゲストコンダクターとしてOEKを指揮するのは今回で最後となりますが,まだまだ,OEKと演奏して欲しい曲はありますね。

2022/06/18

本日は第34回教弘クラシックコンサートへ。鈴木恵理奈さん指揮,ソプラノ木村綾子さんによる,ジュピターとオペラアリアを中心とした,オール・モーツァルトプログラム。やっぱり #oekjp の原点はモーツァルトかなと思わせてくれる,充実した演奏会でした。お2人のトークも聴く楽しみが増えるような内容でした。

本日の午後は,第34回教弘クラシックコンサートを石川県立音楽堂で聴いてきました。この公演は,OEK創設時から毎年この時期に行われている日本教育公務員弘済会石川支部主催による入場無料の演奏会です。昨年までは「県教弘クラシックコンサート」という名称でしたが,今年からは「教弘クラシックコンサート」に変更になりました。が,回数としては34回目となります。

出演は,今年の1月に新作オペラ「禅」を指揮した,鈴木恵理奈さん,ソプラノは楽都音楽祭でも大活躍されていた木村綾子さん。そして,オーケストラはOEKでした。

演奏会に先立って主催者の方からひとことご挨拶があり,今年度から演奏会の名称を変えたので,原点に立ち返って,OEKや若手演奏家を応援する内容にしたとのことです。OEKファンとしては大変うれしいポリシーですね。OEKが何回も演奏してきたモーツァルトを若手指揮者と地元で活躍する歌手の演奏で楽しむオーソドックスな煮ようとなりました。

演奏された曲目は,前半が歌劇「フィガロの結婚」から序曲と「恋とはどんなものかしら」,歌劇「魔笛」から「ああ私にはわかる、消え失せてしまったことが」,コンサート用アリア「偉大な魂、高貴な心を」。後半は交響曲第41番「ジュピター」ということで,実質的な演奏時間はやや短めでしたが,曲の間に鈴木さんと木村さんによるトークが入っていましたので,休憩も含めて90分ぐらいの公演でした。

鈴木さんの指揮には,慌てた感じは全くなく,テンポが速くなっても,常に音楽に余裕が感じられるような,気持ちの良い演奏を聴かせてくれました。演奏前にトークにあったとおり,「ジュピター」交響曲では,各楽章のキャラクターをしっかり,的確に描き分けていました。第4楽章最後のフーガの部分は,巨大な音楽が立ち上がるというよりは,澄み渡った晴れた夜空に美しく星がきらめくような爽快さを感じました。これは,個人の勝手な感想ですが,鈴木さんのトークを聴いて,色々とイメージを広げながら聴いてしまいました。

前半の木村さんの歌も充実した内容でした。今回歌われたアリアについては,少年ケルビーノの恋する気持ちや,恋人に振られたと思って絶望的に落ち込むパミーナの気持ちが歌われていたのですが,鈴木さんが語っていたとおり,「こういう感情は普遍的だなぁ」と思いました。アリアだけを切り取って聴いただけで,全曲へのイメージが大きく広がるような演奏でした。

ちなみに鈴木さんは「恋とはどんなものかしら」の曲目解説の時に,イタリア語の歌詞をいくつか事前に紹介されていましたが,これがとても良かったですね。イタリア語の熱さが伝わって来て,聴く前にテンションが上がりました。鈴木さんは,ケルビーノのことを「ズボン役」として紹介されていましたが,鈴木さんの指揮ぶりにもケルビーノを彷彿とさせるような瑞々しさを感じました。

木村さんは,楽都音楽祭の司会でもおなじみですが,今回の歌唱も素晴らしく,特にパミーナのアリアでの凛とした感じと,深く落ち込んだ感じの対比が素晴らしいと思いました。

アンコールは2曲ありましたが。木村さんの歌を交えてアヴェ・ヴェルム・コルプスが演奏されましたが,合唱以外で聴くのは...多分初めてでしたが,天上の音楽というよりは,人間的な情感のあふれた音楽に聞こえました。

アンコール2曲目は,ディヴェルティメントK.136の第3楽章。鈴木さんは指揮台まで走るような感じで登場しましたが,何かそのテンポ感とぴったりで,若々しさが溢れていました。

というわけで,やっぱりOEKのモーツァルトは良いなぁと原点に立ち返ったような気分にさせてくれました。

2022/05/28

本日は加納律子オーボエ・リサイタル Vol.2「ラプソディ」へ。加納さんの充実した音楽活動の積み重ねを伝えてくれるような充実した内容。ダニイル・グリシンさん,鶴見彩さんとともに聴きごたえのある演奏を楽しませてました。秘密兵器ルポフォンも初めて聴きました。結構重そうでしたね。

本日はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のオーボエ奏者,加納律子さんのオーボエ・リサイタルを金沢市アートホールで聴いてきました。この公演は,コロナ禍の影響で順延になっていたもので,加納さんのリサイタルとしては2回目。「ラプソディ」というサブタイトルがついていました。

「オーボエ・リサイタル」という名称でしたが,前半・後半とも,OEKの客演首席ヴィオラ奏者のダニイル・グリシンさんが演奏する曲があったり,この日のピアノ担当だった鶴見彩さんによる独奏曲が入っていたり,「加納律子と仲間たち」といった室内楽公演のような雰囲気もありました。そして,何より最後のヒンデミットの三重奏曲に登場した,ルポフォンという楽器(初めて見ました)が「目玉」となっていました。

この公演に行こうと思ったのは,加納さんのオーボエの音を間近でしっかり聴いてみたいという思いがあったからです。そして期待どおり,どの曲でも,バランスの良い暖かみのある,安定感抜群の音を楽しませてくれました。今回演奏された曲は,どれも複数楽章からなる15分程度ぐらいの曲ばかりだったのですが,グリシンさんや鶴見さんの力のこもった演奏との相乗効果もあり,大きなものに包み込まれるような,スケールの大きさを感じさせてくれるような演奏の連続でした。

まず,最初に演奏されたシューマンの3つのロマンスから見事な演奏でした。染み渡るようなオーボエが一気に浪漫の世界に導いてくれました。次のブリテンの世俗的変奏曲は初めて聴く曲でしたが,「ド#・レー」というモチーフが何かに取り憑かれたように何回も出てきて,最後の部分では鬼気迫るような空気が漂っていました。

前半最後のレフラーの2つのラプソディは,演奏会全体のタイトルが「ラプソディ」でしたので,全体の核となるような曲だったと思います。グリシンさんのヴィオラの深い音と合わせて,神秘的な世界に誘ってくれました。

後半最初のサン=サーンスのオーボエ・ソナタはこの日演奏された曲の中でいちばん気楽に聞ける作品でした。古典的な清澄さと自由でロマンティックな気分とが重なり,聞く方も,とても優しい気分にさせてくれました。

続いて,鶴見さんのピアノ独奏で,ブラームス最晩年の間奏曲が2曲演奏されました。ブラームスがクララために書いた作品ということで,最初に演奏された3つのロマンスとうまくバランスが取れているなと思いました。クララへの思いがストレートに伝わってくるような誠実な演奏だったと思います。

そして最後に,加納さんがオーボエからルポフォンに楽器を持ち替え,ヒンデミットの三重奏曲が演奏されました。ルポフォンという楽器は,オーボエよりも1オクターブ音域が低い楽器で,2009年に発表されたバス・オーボエとのことです。ヒンデミットのこの曲は本来,ヘッケルフォンとヴィオラとピアノのための三重奏だったのですが(それにしても,ヒンデミットは変な(?)組み合わせを思いついたものです),今回はヘッケルフォンの代わりにルポフォンで演奏されました。

楽器の感じとしては,サクソフォンのような感じでした。サックスよりは,かなり重そうな感じで,加納さんは両手を使って運搬していました。音の感じもサックスに似たところがあり,暖かで柔らかな感じでした。

ヒンデミットのこの曲は,ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチの曲を思わせるような狂気をはらんだようなところがあったり,結構晦渋な感じもありましたが,加納さんのルポフォンに加え,グリシンさんと鶴見さんの演奏の迫力が素晴らしく,大変充実した音楽となっていました。特に曲の最後の部分は,何かフリー・ジャズを聴くような不穏な空気をまとった狂気があり凄いなと思いました。

この日は客席を1個おきにしていたこともありチケットは完売でした。演奏会の最後,アンコールに代えて,加納さんが金沢で演奏活動を行えることについて感謝の言葉を述べていましたが,お客さんの方からすると,そのまま加納さんへの感謝の言葉として返したいと思いました。加納さんの充実した音楽活動の積み重ねを伝えてくれるような充実した演奏会でした。

2022/05/21

#アンジェラ・ヒューイット さんのオーラがホール内に溢れる弾き振りで,バッハの協奏曲5曲が演奏された #oekjp 定期公演。素晴らしかったです。ピアノと弦楽器の音の溶け合いが素晴らしく,2年越しの待望の演奏を楽しむことができました。

本日午後は,アンジェラ・ヒューイットさんのピアノ弾き振りによる,OEK定期公演マイスターシリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。この公演は,2年前の5月に予定されていたのですが,コロナ禍の影響で中止。今回,仕切り直しで開催された念願の公演でした。

プログラムはヒューイットさんが得意とするバッハのピアノ協奏曲を5曲。OEKの定期公演で,協奏曲ばかり5曲というプログラムは大変珍しいことです(バッハのブランデンブルク協奏曲6曲というのが一度ありましたね)。もう一つ,バッハの協奏曲をピアノで演奏するのも,近年珍しいと思います。私自身,これらの曲のうちのいくつかは,チェンバロ協奏曲として聴いたことはありましたが,ピアノで聴くのは今回初めてだと思います。

OEKの編成は,全曲弦楽セクションのみ。ヒューイットさんは,ステージ中央に斜めにピアノを置き,要所要所でコンサートマスターのヤングさんなど,各パートに合図を出しながらの弾き振りでした。

演奏された協奏曲は,前半が3番,5番,7番,後半が2番,1番でした。ヒューイットさんのピアノには,バリバリと技巧を聴かせるような派手なパフォーマンスはないのですが,赤いドレスでステージに登場した瞬間から,ステージがパッと明るくなるようなオーラがあり,その安定感と暖かさのあるピアノに,すべてのお客さんが魅了されていたのではと思いました。

何よりヤングさんを中心としたOEKメンバーの音としっかりバランスを取りながら生き生きとしたアンサンブルを楽しませてくれたのが良かったですね。ピアノと弦楽器の音が融合した時の,軽すぎず,重すぎずの心地良い暖かさを持ったサウンドが素晴らしいと思いました。

5曲の中では,後半最後に演奏された1番が曲の構成的にも,いちばんガッチリとした聴きごたえがありました。ピリッとした切れ味の良い音,くっきりとした歌が続く第2楽章,疾走感のある第3楽章と,次のモーツァルトの時代などにつながるような,協奏曲らしい協奏曲となっていました。

それ以外の曲もすべて,急ー緩ー急の構成で,2楽章だけがアダージョになったり,ラルゴになったり,シチリアーノになったり...とバリエーションがありました。元々は他の楽器のための協奏曲をクラヴィーア用に編曲したものばかりで,第3番と第7番はそれぞれ,ヴァイオリン協奏曲第2番と1番が原曲です。ヴァイオリン版は実演で何回か聴いたことがありますが,やはり,ヒューイットさんの演奏の作り出す音楽が何とも言えず優雅で,ヴァイオリンで聴く時とは一味違った,たっぷりした質感が良いなと思いました。

ヒューイットさんは全曲の演奏が終わった後,大きく手を広げたまま,しばらくストップモーションになっていましたが,そのポーズにぴったりの高貴な雰囲気が曲の後にスッと残るような心地よさがありました。

第5番の第2楽章「ラルゴ」は,特に有名な曲です。スイングルシンガーズというヴォーカルグループがこの楽章を歌ったもので馴染んでいたので,実は「ダバダー」という声が頭の中で鳴ってしまっていたのですが,シンプルで静謐な美しさのある原曲の味わいも絶品だと思いました。チェンバロで聴くよりも,少しロマンティックな香りが香る感じだったかもしれません。

というわけで,「2年間待っていた」待望の公演をしっかりと楽しむことができました。今回の共演をきっかけに,ヒューイットさんには是非,金沢にもう一度来ていただきたいですね。

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