OEKのCD

2020年9月
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コンサート

2020/09/18

新様式によるOEK新シーズンスタート。三ツ橋敬子さん指揮,北村朋幹さんのピアノによる高貴な光に包まれたような「Eフラット・ナイト」。ピアノの音もOEKの音も美しかったですね。特別な1年の開幕に相応しい希望に満ちた演奏会でした。

コロナ禍が続く中,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2020/21の定期公演シリーズが新様式でスタートしました。指揮者は,当初ユベール・スダーンさんの予定でしたが,三ツ橋さんに交替になり,プログラムは当初のプログラムから,エグモント序曲を除いた,ベートーヴェンの「皇帝」とモーツァルトの交響曲第39番の2曲となりました。

変ホ長調の曲が2つのプログラム並ぶ,「Eフラット・ナイト」。三ツ橋さん指揮OEKの音色はいつもにも増して透明感があり,どこか,高貴な明るさに包まれたような70分でした。特別な1年の開幕に相応しい,希望に満ちた演奏会でした。

「皇帝」のソリスト,北村朋幹さんがOEKと共演するのは2回目ですが,前回は代理での登場でしたので,実質的には今回がOEK定期公演初登場と言えるかもしれません。そのピアノは,「センス抜群」でした。冒頭の華やかなカデンツァ風の部分から,大げさな雰囲気は全くないのに,北村さんの意図がしっかりと伝わってくるような演奏でした。どの部分にも北村さんのこだわりがあり,音に込められたメッセージが伝わってくるようでした。「ベートーヴェンはロマン派だな」と思わせる部分が随所にありました。

その一方で,三ツ橋さん指揮OEKともども,演奏全体の流れは大変スムーズでした。この日のOEKは,バロックティンパニを使っていたのですが,そのカラッとした音が随所で効果を出しており,全体の印象がとても新鮮でした。

第2楽章も速目のテンポでしたが,すべての音に透明感があるので,ちょっとしたニュアンスの変化がとても魅力的に響いていました。最終楽章もノリに乗った演奏。曲の最後,ティンパニとピアノだけになる部分では,その後の大きな間が印象的。若々しい雰囲気の中で全曲が締められました。

その後,北村さんのピアノ独奏によるアンコールがありました。この日はアンコールの曲名の紹介の案内がなかったので曲名は不明でしたが,明らかに「現代音楽」。ドビュッシーや武満徹のピアノ曲に通じるような詩的な雰囲気が漂い,「皇帝」の演奏の中で感じられた,泥臭くならないセンスの良さに通じるものを感じました。その共感にあふれた演奏を聞きながら,「いいなぁ」と思いました。

後半はモーツァルトの交響曲第39番。個人的にモーツァルトの作品の中でも特に好きな作品です。第1楽章の冒頭は,往年のモーツァルトで有名な指揮者,ブルーノ・ワルターやカール・ベームの時代には,重々しく演奏されていましたが,近年はその倍ぐらいのテンポで演奏されることが増えています。本日の演奏も,速めのテンポ。新シーズンの開幕を祝うような祝典的な気分で始まりました。ここでもカラッとしたティンパニの音が生きていました。主部も端正な透明感と勢いのある音楽。この曲の魅力である,木管楽器が彩りを加え,俗世間から離れたような,高貴さのある世界が広がっていると思いました。第2楽章も速めのテンポでしたが,しっとりとした味もあり,落ち着きを感じました。

第3楽章のメヌエットは,三ツ橋さんの指揮の動作のとおりの,「円運動」を感じさせる生きた演奏。お楽しみのトリオの部分での遠藤さんのクラリネットもニュアンス豊かでした。最終楽章は慌てすぎることなく,明快に締めてくれました。

ちなみに今回,各楽章とも呈示部の繰り返しを行っていませんでした。近年では珍しいと思いますが,これも「休憩なしで行う新様式」の影響でしょうか。大好きな曲ということで,「音楽が終わって欲しくないなぁ」という気分を特に感じました。

というわけで,コロナ禍を忘れさせてくれるような,新シーズン開幕に相応しい明るさのある公演でした。

PS.この日は「皇帝」。そして,9月22日は同じホールで,藤田真央さんの独奏によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。今年の秋の連休は,若手ピアニストによるベートーヴェンの競演を楽しみたいと思います。

2020/09/06

いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2020 秋の陣オープニングコンサート。昨日に続き #川瀬賢太郎 さん指揮OEK,#菊池洋子さんのピアノ,#石川公美さんのソプラノ 他で楽しんで来ました。これから12月まで,音楽に親しむ人が少しでも増えるきっかけになってくれると良いと思います。

本日の午後は,いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2020 秋の陣 特別公演 オープニングコンサートを聞いてきました。今年の春に予定されていた「いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭(ガル祭)」は,コロナ禍の影響で実施できなくなったのですが,ガル祭のサイトには音楽祭自体「中止」になったとは書いてなく,「延期」となっています。その言葉どおり,ガル祭2020が秋の陣としてスタートする,記念すべきオープニングコンサートでした。

谷本石川県知事,山野金沢市長,池辺晋一郎音楽祭実行委員長が出席する,オープニング・セレモニーまで行われたのは驚いたのですが,この挨拶で池辺さんが語っていたとおり,金沢には芸術文化に関する底力のようなものがあると言えるのかもしれません。

今年のガル祭全体のコンセプト自体,「世界の国からこんにちは(ちょっと違ったか?)」で,何でもありでしたので,この日の公演も,世界各国の音楽が地元のアーティストも交えて演奏されるガラコンサートとなっていました。

最初にヴィヴァルディの協奏曲集「四季」の中の「秋」の第1楽章が演奏されました。ここでのポイントは,OEKと箏が共演する編曲だった点です。これが実によい感じでした。箏の音が加わることで,何とも言えない雅な華やかさが加わり,「ちょっと控えめに祭りのオープニング祝う」という感じにぴったりでした。ちなみにこの日のOEKのコンサートミストレスはベルリン・フィルの町田琴和さんでした。お名前に「琴」が入っているということで,絶妙の「琴つながり」のヴィヴァルディでした。

続いて,川瀬賢太郎さん指揮OEKによる,ストレートに聞かせるベートーヴェンの交響曲第5番の第1楽章,菊地洋子さんのピアノが加わってのモーツァルトのピアノ協奏曲第21番の第2,3楽章が演奏されました。ピアノ協奏曲の方は,キャンセルになった7月のOEK定期公演のリベンジ。真っ赤なドレスで登場した菊池さんの鮮やかな演奏と華やかな雰囲気は音楽祭の気分を盛り上げてくれました。それにしてもモーツァルトの2楽章の美しいメロディは染みますね。実演で聞くと,少々大げさですが「生きていて良かった」という気分になります。

この日の司会は,おなじみの石川公美さんだったのですが(大変スムーズな進行でした),1曲だけ歌手としての出番があり,プッチーニの「私のお父さん」が歌われました。この歌も素晴らしかったですね。安心して美しいメロディに身を任せることのできる歌でした。

続くモンティのチャールダーシュは,石川県出身のヴァイオリン奏者,坂口昌優さんとOEK名誉団員のルドヴィート・カンタさんのチェロをフィーチャーしての演奏でした。この音楽祭のコンセプトの一つは,地元アーティストの活躍の場を作ることがあります。その実力をしっかりと聞かせてくれるような,緩急自在の演奏でした。

榊原栄作曲「キッチン・コンチェルト」は,どういう流れでこの曲なのかな?と思っていたら,「コロナ禍でお父さんが台所に立つことが増えたので...」という素晴らしい説明でした。リロイ・アンダーソン的なリラックスした雰囲気の中,OEK打楽器奏者の渡邉昭夫さんが,各種台所用品を楽器として叩きまくる(?)楽しい曲で,OEKのレパートリーの中でも隠れた名作だと思います。途中のカデンツァでは,指揮の川瀬さんがキッチンタイマーで「そろそろ切り上げてくれ」と督促するなど,年々パフォーマンスも進化している曲です。

ビゼーの「カルメン」前奏曲と第3幕への間奏曲が演奏された後(松木さんのフルート,ホール内に染み渡っていました),最後に古関裕而作曲の「オリンピック・マーチ」が演奏されました。東京オリンピックについては,「本当に実現するのだろうか?」という思いもあるのですが,この曲の素晴らしさには変わりがありません。聞いているうちに,「派手でなくてよいから,実現して欲しいものだ」という気分になりました。

というわけで,ガル祭秋の陣については,短期集中型とは違う,12月までの「長丁場」音楽祭になります。OEKの定期公演と並行して行われるので,定期公演のシリーズがもう一つ増えるような感じでもあります。金沢に音楽文化をさらに根付かせる「実験の一つ」として期待をしています。この間,音楽に親しむ人が少しでも増えるきっかけになってくれると良いですね。


2020/09/05

岩城宏之メモリアルコンサート2020。川瀬賢太郎さん指揮OEKによるシューベルトの「グレート」は,まさに天国的長さでしたが,全く退屈することのない生命感あふれる天国。岩城賞受賞の塚田尚吾さんによる安定感抜群のリストともども,「通常の長さの定期公演」を聞いたのと同様の聞き応えのある公演でした。#oekjp

本日は午後から,OEKの新シーズン開始恒例の岩城宏之メモリアルコンサート2020を聞いてきました。毎回,この公演では,その年の岩城宏之音楽賞を受賞したアーティストと共演することになっています。今年は富山県出身のピアニスト,塚田尚吾さんが受賞されました。

塚田さんは,まだ20代の若手ピアニストですが,OEKと共演したり,北陸地方各地で演奏活動を行ったり,活発に活動されている点が評価されたようです。今回演奏した曲は,リストのピアノ協奏曲第1番でした。過去,塚田さんの演奏で,リストの他の曲を何回か聞いたことがありますので,「いちばん得意とする作曲家」なのだと思います。今回の演奏も安定感抜群で安心して,リストならではの起伏に富んだ音楽を楽しむことができました。

超絶技巧のピアニストでもあったリストらしく,この曲にも華やかな技巧やきらびやかな音も沢山出てくるのですが,それが浮ついた感じにならず,「美しい音楽」としてたっぷりと聞かせてくれたのがとても良かったと思いました。その分,少々真面目過ぎるのかなとも思いましたが,この辺はこれから演奏活動を重ねていくうちにどんどん,「塚田さんらしい味」のようなものが出てくるのではないかと思いました。この受賞を機会に,これからますます,金沢での演奏の機会も増えるのではないかと期待しています。

そして後半。当初予定していたユベール・スダーンさんの代理で登場した川瀬賢太郎さん指揮で,シューベルトの交響曲第7番「グレート」が演奏されました。コロナ禍に対応した新スタイルということで,今回の公演全体の長さも70分程度なのかな...と思っていたのですが,川瀬さんの「グレート」は,本当に「グレート」で1時間ぐらい演奏時間が掛かっていたのではないかと思います(公演全体の長さも,岩城賞の授賞式も含めて90分以上になっていました)。

ただし,この長さには退屈する部分は全くなく,この曲の魅力である,同一音型の繰り返しと流れるような歌との相乗効果を存分に楽しむことができました。恐らく,楽譜に書いてある繰り返しは,しっかりと行ってたのではないかと思います(第1楽章の繰り返しは分かったのですが,他の楽章は未確認です)。

テンポはやや速めで,第1楽章冒頭のホルンの部分などは,そっけないぐらいでしたが,各楽器の音はしっかりと澄んだ音を聞かせており,聞き応え十分でした。この日のプログラム解説(渡辺和さんによる,ちょっとマニアックな感じの解説。面白く読むことができました)では,第1楽章の序奏から主部へのテンポの変化がチェックポイントと書かれていたのですが,その移行が大変スムーズで,主部のテンポとのバランスを考えた序奏のテンポだったのだなと思いました。

全曲を通じて,川瀬さんらしく,どの部分も基本的には率直にパーンとした音楽を聞かせてくれるのですが,随所に「こだわりの歌わせ方」が出てきたり,リズムが常に生き生きと動いていたり,全体を通じて大変新鮮でした。そして,加納さんのオーボエをはじめとした,OEKのソリスティックな演奏も大変チャーミングでした。演奏時間的には「天国的」な長さでしたが,それは悪い意味ではなく,全く退屈することのない「生命感あふれる天国」だったと思いました。今回の演奏は,川瀬さんが思い描いている「グレート」がストレートかつ存分表現された,素晴らしい演奏だったと思いました。

というわけで,終わってみれば「通常の長さの定期公演」を聞いたのと同様の聞き応えのある公演でした。

2020/08/23

本日は富山県上市町で行わた,栁沢寿男さん指揮におるOEK富山特別公演へ。「GO TO 富山 with OEK」ツァーと勝手に名付け,5か月ぶりに県外へ。合唱団OEKとやまの出番は無くなったのは残念でしたが,ソプラノの韓錦玉さんの,癒しの気分のある歌と威厳たっぷりのモーツアルトの「ジュピター」を楽しむことができました。

本日は午後から富山県上市町まで車で出かけ,栁沢寿男さん指揮による,オーケストラ・アンサンブル金沢富山特別公演を聞いて来ました。「GO TO 富山 with OEK」ツァーと勝手に名前を付け,この夏いちばんの遠出をしてきました。考えてみると,石川県外に出るのは,3月以来なので,5か月ぶりということになります。

この公演は,当初は夏休み後半恒例の「合唱団OEKとやま」とOEKがミサ曲などを共演する内容でしたが,業界ガイドラインに従うと,合唱曲を取り上げるのは今の時点では難しいということで,合唱団なしの公演になってしまいました。合唱団の皆さんにとっては大変残念なことになりましたが,予定曲を変更して特別公演が実現したことは特筆すべきことかと思います。当初歌われるはずだった,ラターのレクイエム(この曲を取り上げるのは2回目ぐらいだと思いますが,聞きたかったです)がモーツァルトの「ジュピター」交響曲に変更になり,休憩時間なしで,約70分の公演となりました。

最初に演奏された,ディーリアスの「夜明け前の歌」は,恐らく,当初のプログラムのラターに合わせて,英国の作曲家の作品を選んだのだと思います。今回,かなり前の方の座席で聞くことができたので(1時間前に到着したので,座席選び放題でした),夜明けの景色を思わせる響きにしっかりと浸ることができました。ディーリアスらしく,全編を通じて,基本的に穏やかなムードに包まれていたのですが,どの楽器の音にもゴージャスさが感じられました。たまに間近で聞くのも良いなぁと思いました。

続いて,当初からソリストとして予定されていた,韓錦玉さんのソプラノを交えて4曲歌われました。当初予定されていた「千の風になって(同じ詞を韓国語に訳し,曲は新井満さんとは別のもの)」と「いのちの歌」の2曲に加え,フォーレのレクイエムの中の「ピエ・イエズ」,You raise me upが歌われました。フォーレのレクイエムは,ラターのレクエムを補う意味もあったのかもしれませんが,今回のコロナ禍で亡くなられた方を追悼した上で,それを乗り越えていけるようにという思いを込めた選曲だったようです。

考えてみると,4曲とも言語が別々でしたが(ラテン語,韓国語,日本語,英語),曲想自体は結構似た感じがあり,「思いは万国共通」という感じがありました。「千の風になって」の曲は,日本語版で秋川雅史さんが歌っているものと違うものですが,雰囲気自体はよく似ていました。You raise me upはフィギュアスケートの音楽として聞いたことはありますが,ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)と似た部分があることに気付きましたが,意図的な引用のようですね。

韓さんの歌には,どの曲にも優しい情感が満ちていました。今回,韓さんの目の前に透明アクリル板が設置されていたので,オーケストラと重なり合う部分では,声がかき消されるような部分もありましたが,暖かで前向きな気分になることができました。

後半は(休憩なしですが),モーツァルトの「ジュピター」が演奏されました。栁沢さん指揮OEKでは,年末の「メサイア」公演は何回か聞いたことはありますが,交響曲を指揮するのを聞くのは今回が初めてかもしれません。全体に大げさな身振りは全くなく,「ジュピター」という名曲中の名曲に備わっている「威厳」を,そのままストレートに聞かせてくれるような演奏だったと思いました。第1楽章の冒頭から,ゆるぎない響きが続き,少し堅い感じかなとも思ったのですが,第4楽章などは,最後の大団円に向けて,色々なパーツががっちりと組みあっていく感じをしっかり味わわせてくれ,改めて,この曲の素晴らしさを実感できました。

最後に文部省唱歌「ふるさと」が演奏されたのですが,これについては,「皆さんハミングで歌ってください」とのことでした。今回,合唱団として参加できなかった皆さんは,今回の公演の運営の補助をされたりしていました。最後,ハミングではありますが,「合唱」する機会を作ってくれたことはとても良かったと思いました。

来年のこの公演に向けて,「合唱団員募集」のチラシが早くも置かれていましたが,来年は何としてでも行えると良いですね。2021年8月1日,富山市のオーバードホール,曲目はボブ・チルコット作曲「レクエイム」などが予定されているようです。

2020/08/20

今晩は #田中祐子 さん指揮OEKによる「ありがとうコンサート」を石川県立音楽堂で聞いてきました。OEK十八番のフィガロとハフナー,どちらも立派さの感じられる演奏。#金田直道 さんによるファゴット協奏曲は,日常の美を感じさせてくれる透明感のある演奏が魅力的

本日は,久しぶりに「夜の石川県立音楽堂コンサートホール」に出かけ,「オーケストラ・アンサンブル金沢 ありがとうコンサート」を聞いて来ました。この公演は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の賛助会員及びコロナ禍でキャンセルになった公演チケットの払い戻しをせず寄付に回してくれたお客さんを対象としたもので,文字通り,OEKからの「ありがとう」の気持ちを音で表現した公演でした。

この公演は,YouTubeで同時配信も行っていたのですが(どんな感じで映っていたのか見てみたいものです),「寄附文化」に加え,「ネット配信」というのは,今回のコロナ禍後も定着していくのではないかと私は思います。その意味で,アフター・コロナに向けた新スタンダードのスタートとなる公演だったと思いました。

今回の指揮は,7月26日の「再開公演」に続いて,田中祐子さんで,プログラムはすべてモーツァルトの曲でした。前回のプロコフィエフの古典交響曲もそうだったのですが,公演再開後,OEKの基本レパートリーを一つずつチェックしているような選曲が続いている感じです。コロナ禍後,ステージ上の奏者間の距離を開けるなど試行錯誤を続けていますが,その是非を演奏し慣れた曲で,確認し,調整をしているようにも思えます。

今回演奏された,「フィガロの結婚」序曲と「ハフナー」交響曲は,私自身,OEKの演奏で毎年のように聞いている気がします。OEKは演奏旅行が多い(多かったと書くべきでしょうか)ので,どちらも「旅行カバンの中に入っている曲」と言えます。

今回の演奏ですが,7月26日の公演での古典交響曲同様,田中さんはテンポを比較的遅めに取り,要所要所でティンパニやトランペットを強く聞かせていました。滑らかに流れていくというよりは,ゴツゴツとした力感を感じさせるような,非常に立派な演奏だったと思いました。ただし,OEKの引き締まった音がコンサートホールいっぱいにしっかりと響く心地よさはあったのですが,「ハフナー」の終楽章あたりについては,もっとドタバタした感じの「遊び」がある方が個人的には好みです(この辺は,井上道義さんの得意とするところですね)。

いずれにしても,OEKの基本中の基本のレパートリーを充実した音で楽しむことができ,「やっぱり,OEKのハフナーは良い」と感じました。例えば,第1楽章呈示部の最後の方で木管楽器が一斉に音階を駆け上がっていくような部分があるのですが,この部分の色彩感と生きの良さを聞いて,「OEKのモーツァルトだな」と思いました。コロナに加えて,猛暑が続く中,ホール内でのひと時ではありますが,元気が出ました。

今回の公演のもう一つの注目は,ファゴット協奏曲のソリストとして登場した,OEKに入団したばかりの金田直道さんの演奏でした。入団早々,公演休止が続き,金田さんにとってはもどかしい日々が続いていたと思いますが,それを逆手に取り,OEKの公演の常連のお客さんにしっかりとアピールする機会が出来たことはとても良かったと思います。

モーツァルトのファゴット協奏曲を実演で聞く機会はあまりないのですが,音楽自体に大げさ過ぎる部分がなく,「日常の中の美」のようなものを感じることができました。コロナ以前には見過ごしていたような美しさを日常の中に改めて発見!そんな感じの曲だと思いました。

金田さんのファゴットは,まだ新人ということで,多少遠慮があった気はしましたが(ただし,「押しの強いファゴット」というのは楽器のイメージとは違うかもしれませんね),音に透明感が感じられ,演奏全体に安心感がありました。特に第2楽章は,モーツァルトのオペラのアリアにそのまま出てきそうな雰囲気があり聞き応え十分でした。全曲を通じて,思いがけず出会った好青年に,さりげなく優しくしてもらって感激,といった感じ(個人の感想です)で聞いおりました。

以上のように,金田さんの音には気品のある透明感が感じられたので,今後,OEKメンバーとの室内楽でフランスの作曲家の作品などを聞いてみたいと思いました。

9月以降のOEKの定期公演シリーズでは,ベートーヴェンに加え,モーツァルトの曲も毎回のように取り上げられます。恐らく,色々なタイプのモーツァルトを楽しめるのではないかと思います。そのことへの期待が高まるような「ありがとう公演」でした。

2020/07/26

2月以来久しぶりのOEKスペシャル公演は,新様式でのスタートとなる公演。石川県立音楽堂コンサートホールの中でオーケストラの生音を聴けただけで満足。 #神尾真由子 さんのチャイコフスキー,#田中祐子 さん指揮による古典交響曲等,たっぷりと聴かせてくれました。

2月の定期公演以来,久しぶりの公演となる,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のスペシャルコンサート「いま,届けたいクラシック!」を石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。OEKが出来てから30年あまり,これだけ長い期間,オーケストラの音を生で聴けなかったのは初めてのことです。

今回の公演は,様々なガイドラインを踏まえての「新スタイル」での演奏会でした。まず,「オーケストラの生の音を聴きたい」というシンプルな願いを,多くの方々の努力と工夫により,満たしてくれたことに感謝したいと思います。

この日の公演は,様々な点で通常の公演とは違っていました。入口での体温チェック,チケットはセルフもぎり,公演は休憩無しの1時間余り,座席は半分のみ使用,掛け声禁止,カフェなし,クロークなし...しばらくは定期公演もこのスタイルになるので,その試行のような感じでした。お客さんの数が少ない分,拍手の量は少ないのですが,その質は変わっていないと感じました。

最初に演奏された曲は,ペルトのカントゥス(ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌)。久しぶりにホールに響いた最初の一音は,打楽器の渡邉さんによる鐘の音でした。そこに弦楽器による繰り返し音型が加わり,次第に暖かい響きに包まれていきました。田中祐子さん指揮OEKの演奏は,コロナ禍で亡くられた方への追悼であると同時に,音楽できることへの感謝の気持ちが溢れたような演奏だったと思います。「普通の音楽」とは一味違う分,「耳を慣らす」にも最適の音楽だと思いました。

2曲目は,OEKとも過去何回か共演をしているヴァイオリニストの神尾真由子さんが登場し,チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏しました。今回の演奏を聴いて,「神尾さんは,堂々とした存在感を感じさせる,スケールの大きな演奏を聴かせてくれるアーティストに成長したなぁと思いました。テンポは全般に遅め(かなり遅かったと思います),弱音での情感たっぷりのヴィブラートから力強く盛り上がる部分での強烈な音まで。音の美しさ以上に,表現の幅の広さが強く印象に残りました。特に第3楽章のコーダの部分の重音の部分での,もの凄い激しさ。素晴らしい迫力でした。こういった幅広い表現のすべてがチャイコフスキーにぴったりマッチしていました。堂々とした押しの強さに加え,迷いのない安定感もあり,大曲を聴いたという充実感が残りました。

最後に演奏されたプロコフィエフの古典交響曲は,OEKが1988年末に創設されて以降,岩城宏之さん指揮で繰り返し演奏してきた曲です。今回の公演をこの曲で締めてくれたことも,とても良かったと思いました。OEKは,これから少なくとも1年ぐらいは(もっと?),新様式で定期公演を続けることになります。その新様式への試金石のような曲と言えると思います。

田中祐子さんのテンポ設定は大変ゆったりとしたものでした。この日のOEKは,これまでの公演よりも奏者間の距離をたっぷり取っており(1人1譜面台),ステージにぴったり納まるぐらいの配置でした。見た目的には,違和感はなく,「この方がぴったりかも」と感じるぐらいでした。このことは,他のフル編成オーケストラの場合とは違う点で,コロナ対応の点からすると,OEKの強みと言えると思います。

演奏の方もしっかりと音と音の「距離感」を取っている感じで,すべての声部がくっきりと聞こえてくるような心地よさやどっしりとした聞き応えを感じました。プログラムの最後の曲に相応しい堂々とした聞き応えのある演奏になっていました。この曲の魅力である,小粋な感じについては,特に最終楽章で発揮されていました。キラキラしたフルートの音をはじめ,各パートが瑞々しく絡み合う,「新しいスタートへの期待」を象徴するような演奏になっていました。

恐らく,半年前,世界全体がこういう状況になることを予想していた人は誰もいなかったでしょう。それでも,人間が自然界に棲む生物である限りは,その変化に対応する努力をしながら,生きていかざるを得ないと思います。多少の戸惑いはありますが,これからしばらくは新しいスタイルでのOEKの生演奏を楽しんでいきたいと思います。

2020/02/20

鈴木優人指揮OEK定期公演。自然な息遣いと抑揚が感じられたメンデルスゾーンの「イタリア」。前半の川久保賜紀さんによる「揚げひばり」は息を呑むような美しさ。バーバーの協奏曲とともにCD化に大いに期待しています。

鈴木優人さん指揮によるOEKの定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。鈴木さんがOEKを指揮するのは2回目のことですが,後半で演奏されたメンデルスゾーンの「イタリア」交響曲を中心に,どの曲についても,自然なしなやかさが息づく魅力的な演奏を聞かせてくれました。

今回のもう一つの期待は,ソリストとしてヴァイオリンの川久保賜紀さんが登場することでした。前半の2曲が協奏曲的作品というのは,少し珍しい構成でしたが,川久保さんのヴァイオリンもお見事でした。

まず,選曲が素晴らしいと思いました。最初に演奏されたヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」,次に演奏されたバーバーのヴァイオリン協奏曲は,どちらも20世紀前半に書かれた叙情性のある作品という点で共通点がありました。川久保さんは,この両曲を完璧といって良いぐらい見事に抑制された美しさで聞かせてくれました。

「揚げひばり」では,ヴァイオリン単独で演奏する部分がかなりあったのですが,そういった部分での,全く揺らぐことのない安定した静けさが本当に見事でした。息を呑むような美しさにあふれた演奏でした(その分,結構,会場のノイズもよく聞こえてきたのですが....)。鈴木さん指揮OEKの演奏も,春がすみを思わせるようなデリケートな気分を作っており,一足早く,春の気分を感じさせてくれました。

バーバーの方も抒情的な部分が多かったのですが,3楽章からなる協奏曲ということで,より変化に富んだ曲想を楽しむことができました。実演で聞くと,冒頭から隠し味のように入っているピアノの音がよく効いていることが分かります。静かな部分では,特に不思議な透明感が感じられました。

川久保さんの演奏は,この曲でも安定感たっぷりで,不安定な部分が全くありませんでした。しっかりと歌い込まれているのに,ふやけた感じはなく,全編,抑制された美しさに溢れていました。OEKの演奏も素晴らしく,管楽器などがソリスティックに鮮やかに活躍する面白さも楽しむことができました。

第3楽章だけは,急にテンポが速くなるのですが,ヴァイオリンだけでなく,トランペットやホルンなども華やかに活躍し,オーケストラのための協奏曲のようにクールに盛り上がっていくのが良いなと思いました。

この日のステージにはマイクが沢山立ち並んでいましたが,前半2曲についてはライブ録音を行っていたようでした。非常に完成度の高い演奏でしたので,このCDは発売されたら絶対聞き逃せないものになることでしょう。今から大変楽しみです。

後半はメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」が演奏されました。鈴木さんは,古楽の専門家のイメージがあったのですが,近年はレパートリーをどんどん拡大しているようですね。本日の「イタリア」も,歌う喜びに溢れたような演奏でした。第1楽章冒頭から力んだところはなく,柔らかく音楽が流れて行きました。鈴木さんの呼吸がそのまま音楽の抑揚となっているような自然さがあり,聞きながら一緒になって身体を動かしてしまいたくなるような演奏でした。こちらもまた春のような音楽だと思いました。

第2楽章の方は,低音部と高音部とが独立的に動いていくような感じで始まりますので,結構,バロック音楽に通じる雰囲気があるのではと思いながら聞いていました。第1楽章同様,自然な息づかいで流れる第3楽章の後,気分が一転してキビキビとした音楽が続く第4楽章になります。鈴木さんの音楽は,荒れ狂うような感じにはならないのですが,そのベースには,常に「熱い思い」が感じられました。「イタリア」はこうでなければ,と思わせる,生き生きとした演奏でした。

ちなみに本日の「イタリア」ですが,通常の楽譜とは違う新版(ツイッターの情報によると,クリストファー・ホグウッド校訂による版)で演奏されていたようです。確かに第1楽章のティンパニの感じなど「どこか違うなぁ」と思いました。

プログラムは後半やや短めだったので,「何かアンコールはあるだろう」と思っていたらやはりありました。考えてみればこれしかない,バーバーの弦楽のためのアダージョがアンコール曲。暖かさと痛切さとが同居しているような素晴らしい演奏でした。このアンコールの時までそのままマイクが立っていたので,もしかしたら川久保さんのヴァイオリンの「埋め草」としてこの曲もCD化されるのかもしれません。

世の中全体が,新型コロナウィルス騒動にかき乱されている中,演奏会の間だけは,別世界が広がっているようでした。金沢では今のところ感染者が出ていませんが,少しでも早く,世界的な感染の拡大が納まることを願っています。

2020/02/16

2019年度全国共同制作オペラ ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」金沢公演。圧倒的な映像の力が作るスタイリッシュな気分の中,キャラの立った主要3人が存分の力を発揮。特にアルフレード役の宮里直樹さんの若々しい声がお見事。#oekjp

本日は午後から2019年度全国共同制作オペラ ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」公演を金沢歌劇座で観てきました。主役のヴィオレッタはエカテリーナ・バカノヴァさん,アルフレードが宮里直樹さん,ジェルモンが三浦克次さん。オーケストラは,ヘンリク・シェーファーさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK),そして演出は初めてのオペラ演出となった矢内原美邦さんでした。

今回の公演のいちばんの特色は,何と言っても映像の目覚ましい効果だったと思います。各幕ごとに,色々なイマジネーションを喚起させる意味深かつ美しい映像を背景に投影し,オペラ全体にスタイリッシュな基調を作っていました。1年半前に観たミンコフスキさん指揮によるドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」での使い方と似た部分もありましたが,オペラと映像を結びつけるのはトレンドと言っても良いのかもしれませんね。

歌手の中ではアルフレード役の宮里さんの声が素晴らしかったですね。第1幕では有無を言わさぬ声の力でヴィオレッタを魅了し,第2幕ではヴィオレッタとの別れに際しての直情径行的な気分を声でも表現していました。終幕では,少し宗教音楽的な雰囲気を感じさせるような雰囲気の中,ヴィオレッタとの透明感あふれる二重唱を聞かせてくれました。

主役のバカノヴァさんも声に力があり,幕を追うごとに役と一体化し,終幕の最後の部分での別世界への「昇天」を思わせるような崇高な気分を感じさせてくれました。第1幕の聞きものの「ああ,そは彼の人か~花から花へ」については,後半の「花から花へ」の部分が,ちょっと重い感じかなと思いました。慣例的に超高音を出すことの多い最後の部分は,「楽譜どおり」という形になっていました。

オペラ全体のドラマの核といっても良いジェルモン役の三浦さんは,ちょっと篭もったような独特の声で,それが老いた父親の雰囲気にマッチしていました。第2幕を中心に説得力のある歌を聞かせてくれました。

今回,この主要キャスト3人の「キャラ」が立っていたのが,とても良かったと思いました。その他のキャストについても,鮮やかな色合いの衣装を着ており(ももクロ風?),遠くから見ても誰が演じているのか良くわかりました。この辺の作り方も巧いと思いました。

そして今回の上演で特徴的だったのは,5人のダンサーを要所要所で使っていたことです。音楽の流れに乗って,その場その場の気分を盛り上げるようなパフォーマンスを続けていました。この辺は矢内原さんの本領発揮といった部分だったと思います。

合唱団と合わせて特に印象的だったのは,第2幕第2場です。ジプシー風の踊りと合唱が続いた後,ヴィオレッタにひどい仕打ちをするアルフレードを責める部分がありますが,この部分については,現代社会を風刺するような作りになっていました。アルフレードを責める民衆たちは,手にスマホを持って(遠くからだったのでよく分からなかったのですが,多分),アルフレードとヴィオレッタを撮影。スキャンダルを追って,悪役を作り上げ,炎上させる...「道を外れたもの(ラ・トラヴィアータ)」を許さない民衆の持つ「怖さ」を風刺的に伝えていました。その点で,今回の上演のタイトルは「ラ・トラヴィアータ」でないといけないのかなとおもいました。

ヘンリク・シェーファーさん指揮OEKは万全の演奏だったと思います。主役にしっかりと寄り添い,各場面場面を雄弁に盛り上げていました。第2幕の途中,クラリネットのソロがひっそりと続く中,ヴィオレッタが別れの手紙を書く場面がありますが,こういった部分の共感溢れる演奏が素晴らしいと思いました。

全国共同制作のオペラもすっかり恒例になっていますが,昨年の森山開次さんによる「ドン・ジョヴァンニ」同様,新鮮な演出を披露するステージになってきているのが嬉しいですね。次作が何なのか期待したいと思います。

2020/02/11

#広上淳一 さん指揮OEKによる白山市の #第9。総勢170名の特別合唱団とともに堂々たる演奏を聞かせてくれました。ソリストも皆さん瑞々しい声で本日の快晴の空のようでした。#鈴木玲奈 #高野百合絵 #吉田浩之 #岡昭宏 #oekjp

本日は午後から白山市松任文化会館ピーノまで出かけ、広上淳一さん指揮OEKと総勢170名の特別合唱団による、べートーヴェンの第9を中心とした公演を聞いてきました。白山市は、松任市、鶴来町、白山麓の町や村が合併して出来た市ですが、本日はその市制15周年記念の演奏会でした。ちなみに市が誕生した時にも第9を歌い、その後、5年ごとに演奏しているとのことでした。

今回この公演を聞きに行こうと思ったのは、広上さんの第9が聞けること、若手を中心としたソリストの声を聞けることに加え、白山市松任文化会館ピーノに一度行ってみたかったことがあります。かなり前に一度、来た記憶はあるのですが、OEKの演奏をこのホールで聞くのは,私自身,初めてでした。

今回の公演は、市民合唱団が出演するとあって、会場は超満員でした。ステージ上にも客席にも人が溢れていました。そのこともあるのか、ホールの響きが非常にデッドだと感じました。弦楽器の音など、いつも聞いているOEKよりはかなり痩せた感じで、奏者にとっては少々つらかったのではと思いました。その分、木管楽器を中心に各楽器の音が非常に鮮明に聞こえてきました。

第1楽章の最初の方の弦楽器の刻みの音なども生々しく聞こえてきました。広上さんのテンポ設定もじっくりした感じで、堂々としていると同時に,非常に精妙な演奏に聞こえました。第2楽章も落ち着いたテンポでクリアに始まったので、「大人のスケルツォ」といったところでした。対照的に中間部は流れるように爽やかでした。第3楽章も静かだけれども、一つ一つの音がしっかりと聞こえてくる演奏で、いろいろな曲想がクリアに描き分けられていました。

第4楽章は、特に面白く聞くことができました。広上さんは大合唱団をしっかり伸び伸びと歌わせており、聞いていて大変爽快でした。行進曲風になる直前の”Vor Gott"と長く伸ばす部分などでは、広上さん自身、大きく反り返るように指揮をしており(後ろに倒れないか心配)、気持ちよさそうだなぁと思いました。

第4楽章では、4人のソリストの皆さんも素晴らしかったですね。テノールの吉田浩之さんはお馴染みのベテラン歌手ですが、その明るい声は全く変わりなく、晴れやかそのものでした。行進曲風の部分は、非常に速いテンポでしたが、その若々しい表現が素晴らしいと思いました。

その他の3人の歌手は、いずれも近年、注目を集めている歌手ばかりで、瑞々しい声の競演となっていました。特に岡昭宏さんの独唱部分は、堂々とした力と若々しさに溢れ、大変聞き応えがありました。鈴木玲奈さん、高野百合絵さんの女声2人の方は、男声に比べると、独唱的な部分は少なかったので、是非、また違った曲でOEKとの競演を聞いてみたいものです。お二人とも最近、日本コロンビアからCDを出された注目の歌手ということで、これからの活躍が非常に楽しみです。

曲の最後の部分では、熱狂的にテンポを上げるのではなく、どっしりとしたテンポ感のまま、沸き立つようなリズムを感じさせてくれ、充実感満点でした。さすが広上さんの指揮だと思いました。

全体的には、やはり、石川県立音楽堂コンサートホールで聞くOEKの音の方が好きなのですが、いつもと違った角度から第9を楽しむことができた演奏でした。

前半では、白山市の小学生も加わった大合唱団との共演で、「ふるさと」「夕焼小焼」「大地讃頌」が歌われました。子どもたちの声が加わることで、おなじみの曲にさらに親しみやすさが増していたように思いました。「夕焼小焼」は三善晃編曲版ということで(合唱組曲の中の1曲でしょうか)、素朴に始まった後、どんどん多彩な響きになっていき、特に面白いなぁと思いました。

我が家からだと、車で片道1時間ほど掛かったのですが(意外に道路や駐車場が渋滞していたので)、午後からは予想以上の快晴に恵まれ、ドライブも楽しむことができました。オーケストラ+大編成の合唱をいつもとは少し違った角度から楽しむことのできた午後でした。

2020/01/25

マキシム・パスカル指揮OEK定期公演。理詰めだけれども雄弁なベルクの室内協奏曲。輝かしさと堂々たる聞きごたえのあった挟間美帆さんの「南坊の誓い の世界初演。そして記念の年のスタートに相応しい生きの良さのあったベートーヴェンの交響曲第2番。若い世代による新鮮さ溢れる公演 #oekjp

本日は午後から,フランスの若手指揮者,マキシム・パスカルさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演を聞いて来ました。プログラムは,前半は,ベルクの室内協奏曲と挟間美帆さんの新曲,後半はベートーヴェンの交響曲の中でも比較的演奏される機会の少ない第2番という非常に冒険的な内容。若い世代のアーティストたちによる新鮮さ溢れる公演となりました。

ベルクの室内協奏曲をOEKが演奏するのは今回が初めてかもしれません。。ピアノとヴァイオリンがソリスト的,それ以外は13管楽器という変則的な編成で,その名のとおり,協奏曲的要素と室内楽的要素が混ざったような作品でした。新ウィーン楽派のベルクの作品ということで,モチーフの設定やその組み合わせ方は理詰めで(ベルク,シェーンベルク,ウェーベルンの名前を読み込んだモチーフなどは,ちょっとショスタコーヴィチを思わせる感じかも),単純に感情移入するのは難しい曲ではあるのですが,パスカルさんの作る音楽には,明晰さと同時にしなかやかさがあり,どこか詩的な気分やドラマが漂っているように感じました。ユージュン・ハンさんのヴァイオリン,アルフォンセ・セミンさんのピアノは,技巧的に鮮やかであると同時に,音で対話をするような雰囲気があり,とっつきにくい音楽ではあったのですが,曲の最後の部分など,どこか意味深く,ミステリアスな雰囲気を持っていました。

続いて,OEKのコンポーザー・オブ・ザ・イヤーの挟間美帆さんの「南坊の誓い」が世界初演されました。この作品は,安土桃山時代に加賀藩に滞在していたことのあるキリシタン大名,高山右近をモチーフにした作品で,タイトルの「南坊」というのも,高山右近が名乗っていた名前とのことです。挟間さんは,最新のアルバムがグラミー賞にノミネートされているとおり,現在最も注目度の高いジャズ作曲家の一人です。実は,もう少しジャズ的な要素のある軽い感じの作品になるのでは,と予想していたのですが,本日初演された曲は,爽快で輝かしい部分と内省的な部分のメリハリがしっかりと付けられた,分かりやすさと同時に堂々たる聞きごたえを持ったオーケストラ作品でした。OEKの編成ぴったりで演奏できる辺りも含め,OEK側の期待どおりの作品に仕上がっていたのではないかと思いました。

曲は3つのパートに分かれているように思いました。両端部分はがっちりとした感じ+生き生きとした感じ,中間部がしっとりとした感じでしたので,ガーシュインの「パリのアメリカ人」の金沢版といった趣きがあると思いました("Ukon in Kanazawa"といったところでしょうか)。最初の部分で,同じリズムパターンが何回も繰り返されたり,ポリフォニックに絡んだりする辺りも面白かったのですが,中間部でヴィオラが深々とした歌を聞かせる辺りが,個人的には特によいなぁと思いました。終演後のサイン会の時に挟間さんにこのことを話してみたところ,「ヴィオラで高山右近を描いた」とおっしゃられていました。やっぱり主役だったんですね。

最後の部分は,輝かしい響きで締められ,演奏後は盛大な拍手に包まれました。とても演奏効果の上がる曲だったので,今後,この曲はOEKの基本レパートリーとして,国内の演奏旅行などで再演しても面白いのでは,と思いました。

後半はベートーヴェンの交響曲第2番が演奏されました。パスカルさんの作る音楽は,全曲を通じて若々しいものでした。第1楽章の主部や第4楽章などは,かなりのスピード感で,一気に駆け抜けていく感じでした。両楽章ともアビゲイル・ヤングさんを中心とした弦楽器が,いつもどおりの切れ味の良い演奏でしっかりとこたえていました。対照的に,第1楽章の序奏部や第2楽章では,しっかりと歌い込まれた,豊かなニュアンスを持った演奏を聞かせてくれました。特に停滞することなく,伸び伸びと歌い込まれた2楽章が良いなぁと思いました。

両端楽章については,個人的には,ちょっと慌て過ぎに感じたのですが,ベルクの時とはまた違った,率直な音楽を聞かせてくれました。ベートーヴェン生誕250年の記念の年のスタートに相応しい生きの良い演奏だったと思います。

挟間美帆さんがノミネートされているグラミー賞は,アメリカ時間の1月26日に発表されるので,公演後,挟間さんはロサンゼルスに移動するとのことでした。今回の定期公演は,その前祝い公演だったのではと思っています。大相撲初場所の優勝の行方も気になっていますが,グラミー賞の結果発表も益々楽しみになってきました。

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