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コンサート(OEK以外)

2019/11/19

アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック第2回 今回は宮田大さんがゲスト。リラックスした気分の中,チェロの音に酔ってきました。週末だったら...本当に酔いたかったところです。

今晩は,仕事が終わった後,夕食をサッと食べて,石川県立音楽堂で行われた,19:15開始の「アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック(夜クラ)第2回」を聞いてきました。このコンサートのコンセプトどおり,開始時間が15分遅いだけで,結構,ゆったりとした気分になるものです。

今回のアーティストは,チェロの宮田大さん,司会は加羽沢美濃さん,ピアノは,ジュリアン・ジュルネさんでした。演奏された曲は,「夜クラ」らしく,仕事帰りの大人向けの曲にぴったりの,ちょっと粋な感じの曲が並んでいました。カサド,ガーシュイン,ピアソラということで...お酒を飲みながら聞くのにぴったりの,ラテン系+アメリカの音楽が並んでいました。

宮田大さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが(トークによると,宮田さん自信,金沢に来るのは今回が初めてだったそうです),まず,その音が素晴らしいと思いました。あいさつ代わりに演奏されたカサドの「親愛なる言葉」での,明るく,引き締まった音に一気に引きつけられました。チェロの音の密度が高く,その音に浸っているだけで,充実した幸福感のようなものを感じました。

その後,加羽沢さんとのトークになったのですが,実は加羽沢さんは熱烈な宮田さんのファンで,プログラムに書いてなかったカッチーニのアヴェ・マリアが息長く,しっとりと演奏されました。

この日のメインのプログラムは,チェロとピアノ用に編曲されたガーシュインの「パリのアメリカ人」でした。オリジナルのオーケストラ版の沸き立つような雰囲気感じはなかったのですが,小粋で品の良い雰囲気が出ていたと思いました。中間部のブルースのような雰囲気が特に素晴らしいと思いました。

加羽沢さんによる,宮田さんに捧げるピアノ曲が演奏された後(どこかドビュッシーの曲を思わせるような,とても魅力的な空気感の漂う作品),最後にピアソラの「ブエノスアイレスの冬」と「ブエノスアイレスの秋」が演奏されました。抒情的でほのかに甘い雰囲気が漂う「冬」と,野性味や躍動感が溢れる「秋」。そのコントラストが面白いと思いました。

アンコールでは,加羽沢さんと宮田さんのデュオでポンセの「エストレリータ」が演奏されました。オリジナルはヴァイオリン用の曲ですが,チェロで演奏すると...夜の星という感じになりますね。このコンサートにぴったりの(アルコールを飲みたくなるような)気分を残しつつ,演奏会を締めてくれました。

終演後,宮田大さんとジュリアン・ジュルネさんのサイン会が行われましたが,コンサートの魅力に寄ったお客さんで大盛況でした。まだ火曜日ということで,真っすぐに家に戻ったのですが,とてもリラックスした気分にさせる演奏会でした。宮田さんのチェロは,また是非実演で聞いてみたいと思います。

2019/11/13

洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景。渡邊荀之助ファミリーとコンスタンチン・リフシッツさんを中心とした,アートの素晴らしさを讃えるような「展覧会の絵」。石川県立音楽堂邦楽ホールの機能を使いまくっていました。

今晩は,「洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景」という石川県立音楽堂ならではの演奏会(というよりはパフォーマンスといったところでしょうか)が行われたので聞いてきました。石川県立音楽堂には,洋楽用,邦楽用の2つのホールがありますが,その2つの要素をコラボさせようという試みです。同様のコンセプトの演奏会は,ホールの開館以来,毎年のように行われて来ましたが,今回の「能」と「ピアノ」を中心としたコラボレーションは,特に素晴らしい内容だったと思います。

演奏会の構成は,謡と囃子による居囃子「松風」,ピアノ独奏によるヤナーチェクの「草かげの小径にて」第2集,能舞とピアノのコラボによるバッハのパルティータ第6番のサラバンド。そして,能舞,モダンバレエ,ピアノ,笛によるムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」全曲というものでした。

最初の居囃子からステージの照明効果が素晴らしく,非常にドラマティックな雰囲気が出ていました。逆に言うと正統的な邦楽の世界とは別世界になっていたのですが,新しい切り口で邦楽を聞かせようという今回の演奏会のコンセプトにはぴったりでした。

その後の曲については,コンスタンチン・リフシッツさんのピアノと渡邊荀之助ファミリーの能舞が中心となっていました。何と言っても,後半に演奏された「展覧会の絵」が素晴らしかったですね。渡邊荀之助さん,茂人さん,さくらさんの親子孫3代に川瀬隆士さんが加わった4人による舞が実に華やかでした。そこに,中村香耶さんのモダン・バレエが絡み,和洋が渾然一体となって,芸術を賛美するようなパフォーマンスとなっていました。

リフシッツさんのピアノは,冒頭のプロムナードから大変堂々とした歩みでスタート。私がこれまで聞いたこの曲の演奏でも特に遅いテンポでしたが,その中に精緻な表現から豪快な表現まで,多彩な音楽が詰まっていました。「バーバヤガーの小屋」の前の「カタコンベ」の部分では,意表を突いて謡も加わり,死者の霊を弔うような,何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていました。

最後の「キエフの大門」は,出演者総出演の壮麗な「大団円」という感じでした。その点では,本来の能とは全く違う,能のキャラクターを活かした総合芸術といった趣きでしたが,その辺に他では見たことのないオリジナリティを感じました。

邦楽ホールのステージは,色々な部分が,「上がったり,下がったり」させることができるのですが,それを駆使して,次は誰がどこから出てくるのだろう,というわくわくとした気分にさせてくれました。邦楽ホールでしか実現できない,金沢ならではのパフォーマンスだったと思います。

この「華やかなステージ」と対照的だったのが,バッハのサラバンドのステージでした。渡邊荀之助さんは出家した尼さんのような面+衣装で登場。リフシッツさんの演奏する,悲しみと甘美さに満たされたようなピアノ演奏の雰囲気そのままの舞を見せてくれました。
以上以外にも,リフシッツさんの独奏でヤナーチェクのピアノ曲が演奏されました。どこかジャズのピアノ曲を聞くような自在さが感じられると同時に,精緻で多様なタッチの素晴らしさを堪能できる演奏でした。

邦楽ホールの機能を使い尽くしたような,工夫に溢れたパフォーマンスに触れながら,石川県立音楽堂の素晴らしさも実感できた演奏会でした。

2019/11/02

今週末も富山に出かけ,岡田博美ピアノ・リサイタルを聞いてきました。平静かつ完成度の高い,凄い演奏の連続に感動しました。

先週の金曜日に続いて,仕事が終わった後,車で富山市まで出かけ,ピアニスト,岡田博美さんのリサイタルを聞いてきました。岡田さんについては,1980年代前半,日本音楽コンクールで1位になった頃から注目をしていたピアニストですが,金沢ではその演奏を聞く機会はありませんでした。先週同様,富山市で岡田さんのリサイタルのチラシをたまたま見つけたのをきっかけに,「これは行かねば」と思い,聞いてきました。ちなみに,岡田さんは富山県出身。「そういえば,そうだったな」と思い出しました。

今回,岡田さんの演奏を初めて聞いて,その凄さに感嘆しました。岡田さんはステージ上での動作は非常にさり気なく,ピアノに向かうとすぐに演奏をはじめ,表情を変えることも,大きな身振りで身体を動かすこともありません。常に平常心・自然体で演奏する中から,前向きな音楽が広がって来ました。

岡田さんのピアノの音には,常にバランスの良い暖かみと,弱音でもしっかりと聞こえる明確さがありました。ピアノの音の鳴り方も素晴らしく,大きな身振りはないのに,曲のクライマックスでは,どの曲でも力と余裕のある音に包まれました。驚くほど完成度の高い演奏の連続に感動しました。

前半演奏されたのは,ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4番とブラームスのパガニーニ変奏曲でした。岡田さんの演奏で聞くと,どの曲でも曲の姿がストレートに伝わってくるのですが,特にソナタ形式の楽章を持つ作品については,ステージ上に彫刻が立っているような,存在感を感じさせてくれました。

ブラームスのパガニーニ変奏曲は,特に技巧的な作品でしたが,岡田さんは,この曲でも多彩な技巧と音色を平然と聞かせてくれました。非常に鮮やか,かつ,力強い演奏で,この曲の持つ迫力を,ハッタリなしで,ストレートに伝えてくれる素晴らしい演奏でした。

後半の最初は,三善晃のアン・ヴェールという作品でした。今回のプログラムの中では唯一の現代曲でしたが,他の曲同様,曲の魅力がストレートに伝わってきました。決して親しみやすい雰囲気の作品ではなかったのですが,岡田さんのピアノの音の明快さ,透明感。演奏全体に漂う,ピリッと締まった雰囲気などが相俟って,物語性のようなものを感じました。

最後にショパンのピアノソナタ第2番が演奏されました。前半のベートーヴェンやブラームスに比べると,ロマン派の曲らしい感情の揺れのようなものが伝わって来たのですが,甘いムードに溺れるような部分はなく,前半同様のガッチリとした構築感を感じました。

この曲で特に印象的だったのは,後半の2つの楽章でした。有名な葬送行進曲については,その和音の響きが美しく,暗く落ち込むような感じでなはく,弔いの鐘が美しく響いているように感じました。中間部のデリケートな歌も素晴らしいと思いました。

この楽章の後に続く第4楽章は,メロディが全然ない,非常に不思議な楽章なのですが,今回の演奏は,寒々とした雰囲気というよりは,繊細で軽やかなヴェールに会場全体が覆われたような独特の美しさに覆われました。曲の最後の和音も非常に立派な響きで,満ち足りた雰囲気をもった「葬送」のような印象を持ちました。

上述のとおり,どの曲についても,曲の魅力がストレートに伝わって来ました。この日,会場では,岡田さんがレコーディングした沢山のCDを販売していましたが,音楽にストレートに向き合う岡田さんのレパートリーの広さを改めて実感しました。岡田さんが富山で演奏会を行うのは9年ぶりとのことですが,「1回も聞き逃せない」ピアニストではと思いました。機会があれば,また聞きに行きたいと思います。

2019/10/25

とやま室内楽フェスティバル2019 スペシャルコンサート。”ほぼ東京カルテット”+練木繁夫+毛利伯郎でシューマンのピアノ五重奏曲。豊かな音楽に感激。レジェンドの皆さんからサインもいただいてしまいました。若手奏者たちの演奏も素晴らしいものでした。

本日は仕事が終わった後,北陸自動車道で富山市まで行き,とやま室内楽フェスティバル2019のスペシャルコンサートを聞いてきました。9月上旬に富山市に行った時に,このコンサートのことを知ったのですが,原田幸一郎,池田菊衛,磯村和英という元東京クヮルテットのメンバー3人+チェロの毛利伯郎さん,ピアノの練木繁夫さんという,いわば,室内楽のレジェンドが揃って,シューマンのピアノ五重奏曲を演奏するということで,これは聞かねばなるまいと思い出かけてきました。

その演奏ですが...期待をはるかに上回る,素晴らしいものでした。冒頭からどっしりと重厚。枯れた雰囲気もあるけれども,音楽が大きく息づいていているような豊かさを感じさせる部分が随所にありました。テンポはゆっくり目でしたが,音楽の裏には常に熱い情熱があり,レジェンドたちの心意気が感じられました。

前半は,レジェンドたちから指導を受けている,若手奏者による室内楽曲が3曲(いずれも抜粋)演奏されました。こちらも素晴らしい演奏の連続でした。今回の会場の富山市民プラザ アンサンブルホールに来たのは初めてでしたが,その名のとおり,室内楽の「アンサンブル」にぴったりのホールで,各楽器が音が非常によく聞こえる一方,天井が高いこともあり,適度な残響もあり音楽が伸びやかに聞こえます。若手奏者たち演奏には,音楽の緻密さと生きの良さが同居しており,集中して楽しむことができました。

特に最初に,クァルテット・インテグラが演奏した,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番の抜粋は,4人が一体となって有機的な音楽を作り上げており,素晴らしいと思いました(全曲を聞いてみたかったところです)。

この「とやま室内楽フェスティバル」は,若手アーティストに対しての教育プログラムも行っているせいか,すべてが無料公演というのが特徴です。今回の公演も,無料というのが信じられないぐらいのレベルの高い演奏でした(さすがに入場整理券が必要でしたが)。

本日は17:30ぐらいに金沢を出発したので,間に合うか微妙なところでしたが,無事開演5分前にホールに到着。高速料金は,金沢森本IC~富山IC片道1260円(軽自動車),それに駐車料金500円(意外に安かったです)ということで,総額約3000円ぐらい掛かったのですが,来年度も同様な感じで聞きに行っても良いかなと思いました。

さらに,「何とかサインをもらおう」と思い,「出待ち」をして,伝説の元東京カルテットの3人から,うまい具合にサインをいただけました。こちらもまた良い思い出になりました。

2019/10/24

若松みなみ ソンジュン・キム ジヌウ・パク ピアノトリオの夕べ。ピアノ三重奏曲4曲が盛り込まれた,聴きごたえ十分の演奏会でした。

今晩は石川県立音楽堂では,楽都音楽祭「秋の陣」の「声楽の日」コンサートも行われていたのですが...そちらの方は断念し,金沢市アートホールで行われた,OEKのヴァイオリン奏者,若松みなみさん,同じくチェロ奏者のソンジュン・キムさん,そして,ジヌウ・パクさんのピアノによるピアノトリオの夕べの方を聞いてきました。金沢でピアノ三重奏曲をこれだけまとめて聞ける機会は少ないと思い,こちらを選択したのですが,期待以上にボリューム感満点の演奏会となりました。

演奏されたのは,ベートーヴェン,ブラームス,ドビュッシーのピアノ三重奏曲のそれぞれ「第1番」でした(ドビュッシーの曲は,「1番」ではないのですが,これ1曲しか作っていません)。いずれも若い時の作品ですが,今回の3人の演奏にも若々しさがありました。

今回,ゲストのような形で参加したジヌゥ・パクさんのピアノには,速いパッセージになるほど精気が増してくるような鮮やかさがありました。ベートーヴェンの1番(この曲は,作品1の1ということで,「1尽くし」です)は特に若々しい気分のある曲で,特にその演奏が冴え渡っていました。

最後に演奏されたブラームスの1番の方は,ソンジュン・キムさんの朗々とした伸びやかさのあるソロで始まった後,若松みなみさんのヴァイオリンを加えて,気持ちよくぐいぐいと進んで行きました。最終楽章のほの暗い熱さのある演奏が特に印象的でした。

ドビュッシーの曲については,そもそもピアノ三重奏曲があったことを今回初めて知ったのですが,「こんな素直で分かりやすい曲を作っていたのだなぁ」と思わせるほど,親しみやすい作品でした。ヴァイオリンとチェロを中心とした「しあわせ感」たっぷりの響きが,本当に心地よく響いていました。

この3曲とも,25分以上はかかる作品だったのですが,さらにもう1曲,間奏曲のような形で,シューベルトのノットゥルノが演奏されました。この曲は対照的にシューベルト最晩年の作品で,美しく透明感のあるハモリの中に不思議な寂しさが漂っていました。

ピアノ三重奏というスタイルは,室内楽でありながら,ヴァイオリンとチェロがソリスティックに活躍したり,二重奏のように美しくハモったり,各楽器が名人芸を聞かせたり...他の室内楽にはない,華やかさがあると感じました。演奏会の最後で,若松さんは,「ピアノ三重奏曲には名曲が沢山あります。これからもこの3人で演奏していきたい」といったことを語っていました。是非,今後も続けていって欲しいと思います。

ソンジュン・キムさんが最後に「本日は好きな曲を盛り込みすぎたので,アンコールはありません」と語っていましたが,その言葉どおり,充実の4曲を充実の演奏で楽しませてくれました。この3人による,ピアノ三重奏曲シリーズには,今後も期待したいと思います。

2019/10/12

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として #室生犀星記念館 主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサート@金沢21世紀美術館へ。詩と音楽のどちらも楽しめました。金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として室生犀星記念館主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサートが金沢21世紀美術館で行われたので,夕方から参加してきました。行けるかどうか,微妙な状況でしたが,金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

個人的には,オンド・マルトノという楽器を一度,生で見てみたい,聞いてみたい。しかも演奏は原田節さん。というあたりが注目ポイントだったのですが,谷川賢作さん作曲による,犀星・朔太郎・中也の詩につけた曲を原田さんが,オンド・マルトノを弾きながら,味わい深く歌うというのが実に良かったですね。

企画の趣旨としては,「犀星の詩」が主役で,「動物詩集」の詩につけられた,ユーモアあふれる曲を聞きながら,日本版「動物の謝肉祭」が作れるかも,と思いました。その他の詩人の曲では,ちょっと自虐的な感じのする,中也の「詩人は辛い」が面白かったですね。クラシック音楽の鑑賞にも通じるような内容だったので,じっくりと読んでみたいと思いました。

谷川さんの父上の俊太郎さんの詩,武満徹の曲による「ぽつねん」も,聞かせる曲でした。老婆を描いた作品で,ユーモアと同時に身につまされるような,怖さのようなものもありました。

谷川さんの曲は,ジャズ,タンゴ,クラシック,シャンソンなど色々なテイストが合わさったもので,多彩な詩の雰囲気にぴったりでした。そこに原田さんのオンド・マルトノの音が重なります。この楽器の音を生で聞くのは初めてでしたが,妙に艶めかしいヴィブラートがかかったり,邪悪な激しさがあったり,とても表現力が豊かで,人間の声に近い表情を持った楽器だと思いました。もちろんこれは,原田さんの技巧によるものだと思います。自分の声の一部になったような感じで,自由自在に多彩な音を出していました。

そして,原田さんの歌。「日本版トム・ウェイツ」と谷川さんは紹介されていましたが(実は...よく分からないのですが),不思議な味と力のある歌でした。最後のコーナーでは,原田さんはフランス語で色々な曲(夢見るシャンソン人形,いつものように(マイウェイのオリジナル版))を歌ったのですが,正真正銘,人生の悲哀を感じさせるシャンソンだなぁと思いました。
谷川さんと原田さんによる,CDを販売していたので,記念に買ってみようかな...と思ったのですが...うっかりほとんどお金を持っていないことに気付き,何も買わずにおきました(駐車場料金だけは確保しておかないといけないので)。

谷川さんは,大変おしゃべりの好きな方で,実は東京の自宅のことが大変気になっていますということでした。谷川さんの自宅に限らないことですが,何とか今晩を切り抜け,災害が少しでも少なくなることを祈っております。

2019/10/06

石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会。バーンスタイン,スターウォーズ組曲,マーラーの「巨人」という素晴らしいプログラム。大編成オーケストラの魅力をしっかり楽しめました。

本日は,2019ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一貫で行われた,石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。本日は同じ時間帯に,話題のピアニスト,藤田真央さんのリサイタルが市内で行われるなど,いくつか演奏会が競合しており(ついでに言うと大相撲金沢場所もやっていましたね),どれに行くか迷ったのですが,マーラーとジョン・ウィリアムズに惹かれて,石川フィルの演奏会を選びました。公演パンフレットにも書かれていたとおり,石川フィルさんは,通常の定期公演とビエンナーレの特別公演の場合とで方針を変えているようで,今回は大編成の難曲に挑戦する形になりました。

プログラムの前半は,バーンスタインのキャンディード序曲とウィリアムズのスターウォーズ組曲でした。キャンディード序曲は,長年,開幕にぴったりの充実感のある演奏でした。最初の元気のよい部分も良かったのですが,中間部に出てくる「求婚のテーマ」にも落ち着いた味があって特に印象的でした。それにしても...この曲は結構長い間「題名の音楽会」のテーマ曲だったので,曲が始まると,佐渡裕さんの顔が浮かんできてしまいますね。

「スターウォーズ」の音楽については,ベルリン・フィルが取り上げたり,グルターヴォ・ドゥダメルが取り上げたり,徐々にクラシック音楽化して来ている印象もあるのですが,金沢で「メインタイトル」以外の曲をまとめて聞く機会は少ないと思います。今回演奏された組曲は,作曲者自身が選曲した5曲で,1970年代から1980年代に公開された最初の三部作の音楽から成っていました。

メイン・タイトルについては,最初のファンファーレが鳴った途端,サントラと同じだと嬉しくなりました。途中,ホルストの「惑星」のような感じになっていくのですが,この辺は実演で聞くと,特に良いですね。組曲を通じて,フルートが素晴らしい演奏だったと思いました。SFにぴったりのクールな音でした。

「レイア姫のテーマ」と「ヨーダのテーマ」は,しっかり意識して聞いたことはなかったんですが,プログラムの解説を読みながら聞くと,「なるほど」と思いました。ライトモチーフをしっかりと組み合わせて,意味を込めていたり,素直な調性にして,健全な響きを出していたり,という作曲者の意図がよく伝わってきました。

「ダース・ベイダーのテーマ」は,「帝国のマーチ」ということで,メイン・タイトルの次に有名な曲ですね。指揮者の花本さんは,指揮棒を指揮台の下に用意してあったライトセイバー(それとも,日本刀のおもちゃ?遠くからだと判別できませんでした)に持ち替えての指揮でした。弦楽器のトップ奏者の頭を叩けそうな感じでした。この曲は,結構,色々な場所で聞くようになってきたので,曲想とは別に,聞くと妙に嬉しくなってしまうところがあります(個人の感想です)。

最後は,「王座の間」の音楽でした。この音楽には,落ち着きと華やかさがあり,映画同様,組曲の最後に聞くとしっかりと締まりますね。5曲セットで,小型交響曲を聞いたような充実感のある演奏でした。

後半のマーラーの交響曲第1番「巨人」が演奏されました。石川フィルは11年前にもこの曲を演奏しており,花本さんの指揮で聞いたことがあるのですが,熟練の指揮ぶりで,第4楽章のクライマックスに向けて大きく盛り上がる音楽を聞かせてくれました。

プレトークで,第1楽章の冒頭は弦楽器のフラジオレットを使っていること,第3楽章にはコントラバスとテューバという低音楽器による珍しいソロがあること,などオーケストラのメンバーを交えて紹介をしてくれました。プログラムの解説もとても充実しており,曲をさらに楽しむことができました。

第1楽章では,楽章の後半で,一気に目が覚めて,「自然」が動き出すような感じが鮮やかに表現されていると思いました。ホルン全員で力強く演奏する部分がバシッと決まっていて良かったですね。第2楽章は落ち着いたテンポのレントラー舞曲でした。トリオでの弦楽器の優しい音も非常に魅力的でした。第3楽章のコントラバス・ソロからは,素直な民謡風のメロディから,自然に哀愁がにじみ出ていました。テューバのソロは,実はこれまであまり意識して聞いたことはなかったのですが,良い味を出しているなぁと思いました。

第4楽章は,まず冒頭のシンバルの強烈の響きが良かったですね。その後は,プログラムの解説に書いてあった,「半音階で下がっていく不吉なモチーフ」に注目してみたのですが,このモチーフが結構しつこく何回も出てくるのが分かり大変面白く聞くことができました。途中対照的に弦楽器による美しいメロディが出てきますが,こちらの方は非常にねっとりと演奏されており,「マーラーの音だ!」と思いました。このメロディを聞くといつもずっと浸っていたいと思います。その辺の対比が続いた後,最後の大きな盛り上がりへとつながっていきます。

この日は,前半のジョン・ウィリアムズの時から「トランペットが大変」というプログラムということもあって,7人もトランペットがいましたが,この最後の部分では全員一斉に演奏していました(多分)。ティンパニ2台を中心とした打楽器の激しい連打と一体となって,滅多に味わえないような強烈な響きで全曲を締めてくれました。こういう響きを聞くと,アマチュアオーケストラの熱い演奏はいいねぇと思います。

マーラーの交響曲の後だったので,アンコールはないかも,とも思ったのですが,何と「花の章」(「巨人」のオリジナル版にあった楽章)が演奏されました。そうなってくると,最初から「花の章付き」で演奏しても良かった気もしましたが,今回の演奏を聞いて,アンコールにぴったりの曲だと思いました。

とてもリラックスした感じの曲なので,大曲の演奏の後にぴったりでした。トランペットが大活躍する曲なので,「お疲れのところ,もうひと頑張り」という感じもあったのですが,今回は7人も奏者がいたので,「花の章」のトランペットのパートを全員で分担して演奏していました。こういうのもとても良いと思いました。

というわけで,大編成のオーケストラ作品を,熱い演奏で気持ちよく楽しめた演奏会でした。

2019/10/03

念願の #イ・ムジチ合奏団 with #小松亮太 金沢公演。2つの「四季」を中心に,お客さんは大喜び。昭和時代からの念願がようやく叶い,イ・ムジチの魅力を体感できた演奏会でした。終演後の大サイン会も大盛況

本日はイ・ムジチ合奏団の来日公演の金沢公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。ゲストはバンドネオン奏者の小松亮太さんでした。

イ・ムジチ合奏団は,私がクラシック音楽を聞き始めた昭和時代から,クラシック音楽やバロック音楽の定番中の定番でした。特にヴィヴァルディの「四季」については,イ・ムジチの名前とセットになって,日本に定着していったのではないかと思います。その後,古楽器による演奏や古楽奏法によるバロック音楽の演奏が定着していく中で,イ・ムジチについては,やや影が薄くなって来た印象を持っていたのですが,本日の演奏を聞いて,「さすが,イ・ムジチ。永遠に不滅かも」という実感を持ちました。

あえて元号で言うと,昭和時代,皆で同じものを聞いて楽しんでいた時代の良さのようなものを思い出させてくれる気がしました。もちろん,イ・ムジチの「四季」についても,コンサートマスターが変わるたびに,演奏のスタイルがどんどん変化してきており,今回の演奏も,私が最初に聞いた,フェリックス・アーヨの時代のロマンティックと言っても良いような甘さが漂う演奏とは全く違うのですが,お客さんに対する姿勢というのはずっと一貫しているのでは,と思いました。イ・ムジチの演奏を聞くのは,実は今回が初めてだったので,「長年の念願がかなった!」といううれしさと同時に,明るく健康的なイタリア音楽を品良く楽しませてくれる,というスタイルが一貫していることが何よりも素晴らしいと思いました。

イ・ムジチについては,来日直前にコンサートマスターのアントニオ・アンセルミさんが亡くなるという予期せぬ出来事があり,今回のコンサートマスターはマッシモ・スパダーノさんが担当していました。その交代によって演奏のスタイルに変化があったのかは分からないのですが,近年の古楽奏法を取り入れたような解釈や,くっきりとメリハリをつけた,モダンな感覚があり,時代とともにマイナーチェンジを続けているのだなと思いました。

それが過激にはならず,健全でバランスの良い品の良さに支えられているのがイ・ムジチの良さだと思います。今回の「四季」も,たっぷりと歌わせるというよりは,やや速めのテンポの演奏で,しっかりと抑制を聞かせながらも,スパダーノさんを中心とした名技をしっかり聞かせ,全体として,明るくスタイリッシュに楽しませてくれるような演奏だったと思いました。

前半は,バンドネオンの小松亮太さんとの共演でした。小松亮太さんは,石川県立音楽堂ができて間もないころ,一度,OEKと共演していた記憶がありますが,演奏を聞くのはその時以来です。イ・ムジチの「四季」とバランスを取るかのように,ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」を中心にラテン系の曲を聞かせてくれました。

ピアソラの「四季」の方は,オリジナルは室内楽的な編成のはずですが,クラシック音楽の演奏会で演奏される機会も増えて来ています。特にイ・ムジチとの共演で聞くと,後半のヴィヴァルディと全く違和感なく,クラシック音楽として楽しむことができました。その分,ギラギラとした生々しさのようなものは消えていたのかもしれませんが,「本家・四季」からのれん分けした,新たなブランドを楽しむような面白さを感じました。

それにしても,小松さんのバンドネオンの音は耳と心に染みます。まっすぐな純真さとちょっと怪しげな空気が同居しているような魅力を感じました。ピアソラの曲以外に,小松さん自身による「夢幻鉄道」という作品が演奏されましたが,そのタイトルどおりの気分に惹かれました。

そして,この演奏会では,アンコールが大変充実していました。

前半では,小松さんがアンセルミさんを偲んでピアソラの「オビリビオン」を演奏しました。亡き人を静かに,しかし強く偲ぶような深い音楽でした。

後半でも,アンセルミさんを偲んでのヴェルディのアヴェ・マリア(「4つの聖歌」の中の1曲を弦楽合奏にアレンジしたもの)が素晴らしい演奏でした。美しいハーモニーにいつまでも浸っていたいと思いました。

そして,それ以外に何と3曲もアンコールが演奏されました。「夕焼け小焼け」を弦楽合奏用にアレンジした曲は,日本公演向け(もしかしたら定番曲なのでしょうか)のアンコールですが,お客さんも大喜びでした。最後の「1分で終わる」(チェロの方の紹介の言葉です)アンコールの後は,イ・ムジチの皆さんが客席に向かって手を振り,多くのお客さんがステージに向かって手を振り返すという,しあわせ感一杯の雰囲気で終了。

さらに,メンバー全員+小松亮太さんによるサイン会も行われました。これまで何回もサイン会に参加してきましたが,総勢13人がずらっと並ぶサイン会というのは...前例がないかもしれません。イ・ムジチ合奏団の日本での人気の高さは,こういう部分にもあるのかなと思いました。

何というか...昭和時代からの念願がようやくかなったような演奏会でした。

2019/08/31

#若林工房 創立15周年記念 #イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル(富山県民会館ホール)。CDの公開録音を兼ねた無料公演で,非常に完成度の高い内容。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

本日は午後から富山市に出かけ,イリーナ・メジューエワさんのピアノ・リサイタルを聞いてきました。会場は富山県民会館ホールでした。このリサイタルですが,通常のリサイタルとは違い,若林工房という富山県にあるCD制作会社の公開録音を兼ねたものでした。入場料自体は無料(要整理券)だったのですが,本日の演奏を収録したライブCDを会場で先行予約できるなど(実演販売ですね),CD制作・販売とリサイタルを連動させることで,アーティストと聴衆とのつながりを深める効果があると感じました。「これは面白い」と思いました。

そして何より,メジューエワさんの演奏が素晴らしかったですね。CD収録だからということもあったと思いますが,非常に完成度の高い演奏の連続で,こんなに素晴らしいピアニストだったのか,と感嘆しました。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

逆に言うと,そういうアーティストだからこそ,レコーディング向きと言えます。本日のプログラムの巻末に,若林工房制作のディスコグラフィが付いていましたが,15年の間に(本日は若林工房創立15周年記念イベントでした)100セット以上のタイトルを発売しており壮観でした。その核となっているアーティストがメジューエワさんです。

今回のプログラムは,前半がモーツァルトとメンデルスゾーン,後半がショパンとスクリャービンという構成でした。20分以上の曲はなく(15分程度のモーツァルトのピアノ・ソナタK.280がいちばん長い曲だったと思います),5~10分程度の小品中心だったのですがよく考えられた選曲になっており,それほど知名度の高い曲はなかったにも関わらず,聴きごたえ十分の充実感が感じられました。

メジューエワさんについては,ジャケット等の写真の印象からすると,柔らかく軽やかな演奏をされるのかなと予想していたのですが,むしろカッチリとした剛性感とクリアさのある演奏に特徴があると思いました。速いパッセージでも乱れる部分は皆無,曖昧な部分や甘い部分はなく,限りなくパーフェクトに近づこうという意志の強さを感じさせる演奏だったと思いました。

ただし,堅苦しくピリピリ張り詰めたような緊張感はなく,あくまでも自然体でバシッと決めてくれる,気持ちの良さがありました。演奏する時の雰囲気は常に平静で,全体に優雅なオーラも持っています。左手が空いている時,指揮をするような感じで手を動かすのが「癖」のようでしたが,音楽と奏者とがしっかり一体化しているような集中度の高さを感じました。

メジューエワさんについてはジャケットの顔写真でのしっかりとしたまなざしが印象的ですが,そのイメージどおり,「この方に任せておけば間違いない」と感じさせる安定感があると思いました。

今回演奏曲は,次のとおりでした。
モーツァルト/幻想曲ニ短調,K.397
モーツァルト/ピアノ・ソナタへ長調,K.280
メンデルスゾーン/無言歌(6曲)
ショパン/2つのノクターン, op.27
ショパン/スケルツォ第2番,op.31
スクリャービン/左手のための2つの小品, op.9
スクリャービン/2つの詩曲, op.32
スクリャービン/練習曲, op.42から2曲
スクリャービン/焔に向かって, op.72

どの曲も素晴らしかったのですが,特にショパンとスクリャービンを並べた後半が面白かったですね。演奏された曲は,基本的には古い曲→新しい曲の順に並んでいましたが,ショパンとスクリャービンを続けて演奏すると,スクリャービンの曲のムードが「ショパンそっくり」の雰囲気から,だんだんと神秘的になり,最後はメロディ中心の音楽から脱却していく変化を実感できました。

ショパンの曲については,しっかりと強く歌われるメロディが印象的でした。スクリャービンでは,最後に演奏された「焔に向かって」が凄い曲でした。実演で聞くのは初めてでしたが,その狂気に満ちた気分に魅力を感じてしまいました(危険かも?)。ただし,メジューエワさんの演奏は,完全にのめり込んでしまっているのではなく,燃える焔を外から描いているような冷静さがまだ残っていると思いました。その辺が,聞きやすさとなっていた気がしました。

アンコールは3曲も演奏されたのですが,最後にショパンのノクターンop.9-2をスクリャービンの後に改めて聞くと,何とシンプルで清々しい歌なのだろうと,ショパンの良さも再発見できました。

前半に演奏された,モーツアルトとメンデルスゾーンについても,軽やかに流れていく感じの演奏ではなく,それぞれに確固たるメッセージが込められている感じで,聴きごたえがありました。

というわけで...若林工房さんの戦略どおり,「会場限定!本日のライブ音源収録CDを特別価格で先行予約」に飛びついてしまいました。もともと入場無料でしたので,CD特別価格2000円でも安いぐらいです。来年1月に郵送されてくる予定ですが,それを再度聞くのが非常に楽しみです。

さらに...予約者には「非売品」のメジューエワさんの録音をCD-Rプレゼントという,マニアックな特典もありました。今回配布されたプログラムも(恐らく,そのままCDの解説に使う内容だと思います),大変分かりやすい内容でした。

その他,今回の使用ピアノは「1925年製スタインウェイCD135」というヴィンテージ物だという点をアピールするなど,色々な点でお客さんを喜ばせようという工夫がありました。もちろん,終演後メジューエワさんのサイン会もあり参加。

若林工房さんの活動については,今後も注目していきたいと思います。

2019/08/12

おなじみの #ルドヴィート・カンタ さんと #鶴見彩 さんによる #フランス近代絵画と珠玉のラリック展 記念コンサート@ #石川県立美術館 展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。それにしても美術館は避暑にぴったり。カンタさんは連日の大活躍です。

本日は,石川県立美術館で行われている「フランス近代絵画と珠玉のラリック展」に合わせて,「移りゆく時代,挑戦する作曲家」と題して行われた無料コンサートを聞いてきました。演奏は,お馴染みのルドヴィート・カンタさんのチェロと鶴見彩さんのピアノによるデュオでした。

# それにしてもカンタさんは,連日,兼六園周辺で大活躍です。

演奏会のコンセプトは,展覧会の出展内容に合わせ,ドビュッシー,サティ,フォーレなど19世紀から20世紀初頭のフランスの作品が中心でしたが,もう少し幅を広げ,同時代に活躍した瀧廉太郎,成田為三,山田耕筰といった日本人作曲家の作品も取り上げていました。展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。

県立美術館のホールは,ややデッドですが,非常に音がクリアに聞こえますので,室内楽の演奏会にはぴったりです。曲想に応じて,2人の奏者の音の変化の面白さをしっかり楽しむことができました。

ドビュッシー最晩年のチェロ・ソナタには,楽章ごとにちょっとひねったようなキャラクターのある曲です。カンタさんの演奏は,枯れたような味,ユーモアを持った味から伸びやかな気分まで,色々な音を聞かせてくれました。サティの「ジムノペディ第1番」は,空調のよく効いた室内で効く快適音楽という感じでした。鶴見さんのクリアですっきりとした演奏は,猛暑の中の清涼剤になっていました。サティのジュ・トゥ・ヴの方は,チェロとピアノによるデュオで演奏されました。珍しい組み合わせだと思いますが,これが良かったですね。どこか2人の男女が粋な会話をしているようなムードがありました。

そしてお馴染みの日本歌曲,3曲。過去にもカンタさんの演奏で聞いたことがありますが,何というかカンタさんの十八番といっても良いと思います。落ち着きと味わい深さのある,誰もが納得という演奏でした。

最後のコーナーでは,イザイの無伴奏チェロの中の1楽章が暗くじっくり演奏された後(カンタさんは「暗い曲,イザイもそんな人」と言っていましたが,好きな曲なのだと思います),カサドの「愛の言葉」で熱く締めてくれました。どこかラテンの気分があり,夏の気分にもぴったりでした。

アンコールでは,フォーレのシチリアーノが演奏されました。一般的にはフルートのイメージのある曲ですが,チェロで演奏するとよりしっとり感が増す感じです。

それ以外に,テーマから外れる形でシューマンの「アダージョとアレグロ」が演奏されました。これもまた素晴らしい演奏でした。チェロの音は人間の声に近いと言われていますが,まさにそういう演奏で,前半は秘めた思いがしっかりと歌われ,後半ではそれが一気に湧き上がってきました。お二人の息もぴったりでした。

展覧会の方は,既に別の日に観ていたのですが,印象派,エコール・ド・パリなどの絵画作品に加え,ルネ・ラリックによるガラス工芸作品が多数展示されているのが特徴です。それにしても,夏の美術館は,避暑にも最適ですね。石川県立美術館は21美ほど混雑していないのも良いですね。

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