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コンサート(OEK以外)

2017/08/06

東京大学音楽部管弦楽団サマーコンサート2017金沢公演。充実のロシアプログラムを三石精一さん指揮で見事に聞かせてくれました。

本日は,東京大学音楽部管弦楽団のサマーコンサートが石川県立音楽堂コンサートホールで行われて来たので聞いてきました。東京大学音楽部管弦楽団は,数年前のラ・フォル・ジュルネ金沢に出演されたことがありますが,演奏旅行(学生オーケストラでツァーというのがまず,凄いのですが)で金沢に来られたのは...初めてのことかもしれません。

今回聞きに行こうと思ったのは,やはりラ・フォル・ジュルネ金沢での好印象が残っているからです(それと,ツイッターの力です)。調べてみると2011年の「シューベルト」の時に来られています。その時も,聞いているうちに「大学生が演奏している」ということを忘れそうでしたが,今回も同様でした。どのパートにも不安定なところはなく,ロシア音楽を集めた充実のプログラムをしっかり楽しむことができました。

最初のグリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲は,プログラムの解説には「速弾きの練習の成果をお楽しみに」と書かれていましたが,そこまで猛烈な速さではなかったと思います。しっかりと音を鳴らし切った余裕のある演奏でした。冒頭からティンパニの野性的な強打が素晴らしく,低弦を中心とした重心の低いサウンドがグリンカにぴったりだと思いました。

2曲目のショスタコーヴィチの交響曲第9番は,今回,特に楽しみにしていた曲です。もともとディヴェルティメント風の軽さのある曲ですが,第1楽章の冒頭から気負ったところのない,脱力感が素晴らしいと思いました。今回の指揮者は,東大のオーケストラを長年指揮されている,超ベテラン指揮者の三石精一さんでしたが,その落ち着きのある指揮ぶりが,自然な「軽み」を生んでいたと思いました。

この曲には,ソリスティックな部分も沢山出てきます。要所で出てくるピッコロの存在感。印象的な音型を「お呼びでない?」という感じで何回も演奏するトロンボーンのとぼけた味。切れ味良く演奏されていたコンサートマスターのソロ。どれもイメージどおりの演奏でした。

さらには,しっとりした味のある第2楽章でのクラリネット,第3楽章でのトランペットの気持ちの良い音,第4楽章でのトロンボーンとテューバの荘重なファンファーレ。どれも充実した演奏でした。そして第5楽章への導入となるファゴット。このソロは,とても長く,意味深のものでしたが,見事に聞かせてくれました。

第5楽章では,後半,タンブリンなどのパーカッションが盛大に加わって,ちょっとチープな感じで盛り上がった後,本当に軽やかに締めてくれました。東大メンバーの演奏も素晴らしかったのですが,三石さんの若々しさも素晴らしいと思いました。

後半はチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」でした。チャイコフスキーの交響曲については,アマチュア・オーケストラが頻繁に取り上げるレパートリーですが,熟練の演奏という感じで,特に安心して楽しむことができました。

この曲についても,第1楽章の冒頭から深刻になり過ぎることなく,しっかりとした美しい音を楽しませてくれました。特にヴィオラの音が美しいなぁと思いました。第2主題も甘く成り過ぎることなく,ロマンの香りをほのめかせつつ,美しく聞かせてくれました。ppppppの弱音の後に始まる強烈な展開部も神経質になり過ぎることなく,鮮やかに決めてくれました(今回は,プログラムの曲目解説が非常に充実していたので,それを見ながら書いています)。その後,金管が炸裂する部分は,一瞬ちょっとヒヤリとする部分がありましたが,凄味のある盛り上げを聞かせてくれました。

第2楽章の暖かみのあるチェロの音と中間部でのちょっと不吉な雰囲気のあるヴァイオリンも良い味わいを出していました。第3楽章は堂々たる演奏でした。安定感のあるテンポでクリアに始まった後,次第に熱くなり過ぎることなく,巨大に盛り上がって行きました。この部分では,個人的には大太鼓の腹に応える強打とシンバルの強打の連携をいつも楽しみにしているのですが,迫力と鋭さのある素晴らしい音で◎でした。

楽章の後,間違って「拍手がはいるかな?」とも思ったのですが,無事入りませんでした。そのお蔭で,楽章の後の「静寂」をたっぷり味わうことができました。プログラムには第3楽章最後の部分の楽譜が掲載されていましたが,最後に休符が入っていることの意味が分かりました。祭りの後の静寂のような気分になりました。

そして,第4楽章に入っていきますが,クールかつ盛大に盛り上がった第3楽章の後だと,大変情感豊かでウェットに響いていました。見事なコントラストでした。クライマックスの部分では,ミュートを付けたホルンの不気味な音が大変効果的でした。銅鑼の音は大変静かでした。その後,しんみりとした気分になっていきます。最後部分での力をふり搾るように続く,コントラバスの鼓動のような音も印象的でした。

最後,東大オーケストラ伝統となっているアンコールがありました。プログラムの裏表紙に「歌声ひびく野に山に」というドイツ民謡の譜面が印刷されていたので,何かあるな?と思っていたのですが,最後にこれを会場のお客さんと一緒に輪唱をするという楽しい趣向でした。こういう「伝統」があるのも良いですね。

今回の演奏会については,東大オーケストラのツイッターの宣伝の力で聞きに行こうと思ったようなところもあるのですが,SNSの活用については,恐らく,プロオーケストラの方が学ぶべきところが多いと思いました。北陸新幹線の開通後は,東京と金沢の距離も縮まったので,機会があれば,また金沢公演を期待したいと思います。

2017/07/15

#大阪フェスティバルホール で #井上道義 指揮大阪フィル他による #バーンスタイン の「ミサ」全曲を聞いてきました。ジャンルを超えた多彩な音楽に浸りながら,平和と権威のはかなさを実感。深く刺激的な作品でした

本日は大阪フェスティバルホールまで遠征し,大阪フィル70周年記念及びフェスティバルシティ・オープン記念として行われた,レナード・バーンスタン作曲の「ミサ」の全曲公演を聞いてきました。

この公演を聞きに行こうと思ったのは,何といってもSNSでの広報の力です。春頃から繰り返し,充実した公演情報や出演者のインタビュー動画などの情報が流れてきて,「四半世紀に1回ぐらいのビッグイベントかも」という気分が自然に盛り上がってしまいました。もちろんOEK音楽監督でもある,井上道義さんが本気で取り組んでいる難曲であること,そして金沢でもお馴染みの若手の歌手たちが大勢出演していること,そして...3連休初日であることもその理由です。さらには新しくなった大阪フェスティバルホールに行ってみたいという気持ちもありました。

このバーンスタインの「ミサ」は,大まかに言うと,ミサを取り仕切る司祭の苦悩とミサの自体の崩壊。そして回復。これらを歌あり,踊りありの約2時間のシアターピースのスタイルで描いています。いちばんの特徴は,クラシック音楽の枠に留まらない多彩な音楽を使っている点です。バーンスタインの生まれたアメリカは,民族的に多様なルーツを持つ国です。民族面と同様の音楽面での多彩さを表現した作品と言えます。

録音された無調音楽,親しみやすいミュージカル風の曲,ロック,ブルース,行進曲,荘重なクラシック音楽,慰めるような音楽,扇情的な音楽....。演奏の編成についても,独唱,合唱,少年合唱と多彩です。オーケストラのうち弦楽器と打楽器はピットに入り,木管楽器,金管楽器がそれぞれ下手袖,上手袖にバンダのような感じで配置。ステージ上中央に祭壇。その両脇にロックバンドとブルースバンド。そしてステージ奥に合唱団が配置していました。

歌手については,役が決まっているのは司祭役ぐらいで,その他の歌手は,アンサンブルで歌を歌ったり,ダンスや演技をしたりするストリートコーラスということになっていました。

というわけで,「こんな作品他にない」という構成・編成の作品でした。この曲が滅多に演奏されないのは,まず,このことが理由でしょう。それに加え,「ミサ」というタイトルでありながら,キリスト教を冒涜するような場面が出てくることも演奏回数が少ない理由となっているようです。

曲全体として,明確なストーリーはありません。伝統的な権威の象徴である司祭が,民衆たちからの激しい突き上げに合って,ミサ自体が崩壊してしまいます。最後はボーイソプラノの声が象徴する大きな存在の力(この辺はよくわかりませんが)で,平和は回復されるのですが,宗教的な儀式を司祭が放棄してしまう,という展開は前代未聞だったようです。

司祭がミサを放棄した理由については,初演当時のアメリカの抱えていた社会問題を象徴的に表現しているようですが,今回の井上道義さん演出(今回は指揮だけではなく,全体も取り仕切っていました)による公演を観て,もっと普遍的な理由を感じました。現代人の多くが共通して抱えている心の中に秘めた葛藤のようなものが,多彩な音楽の積み重ねを通じて,段々と高まって行くような印象を持ちました。そして,作曲者レナード・バーンスタイン自身の心の葛藤を描いていたと感じました。

実際,今回の司祭役の大山大輔さんは,レナード・バーンスタインがよく首に巻いていたマフラーをつけていました。大山さんの声には,司祭にふさわしい立派さだけではなく,弱さを持った等身大の人間らしい優しさと柔らかさを持った歌を聞かせてくれました。特にアニュスデイでの「狂乱の場」は,音楽自体の異様な迫力(照明も結構すごいことになっていました)も相俟って,客席にいながら,「これは大変な場に遭遇してしまったな」と思いました。

最後の「平和の回復」の部分でも,シアターピースならではの,「見せる演出」がありました。ステージ奥の高いところにフルート奏者が登場。いつの間にかそこに滑り台(!)ができていました。ボーイソプラノの少年が1人滑り降り,取り壊された祭壇の下から出てきた白いピアノの上へ。そこで文字通り「天使のような歌」を聞かせてくれました。今回の公演の成功は,この最後の歌と演出に負うところが大きかったと思います。ブラーヴォ。

もちろん,前半の多彩な音楽が次々と登場するのも魅力的でした。特にストリート・コーラスのメンバーが,ビートを聞かせたエレキ・ギターや電子オルガン(この音を聞くと,どこか1960~70年代のアメリカといった気分になりますね)などと一緒に歌う曲は,通常のクラシック音楽にはない魅力を感じました。

それにしても,今回のメンバーは豪華メンバーでした。私がこれまで金沢で実演を聞いたことのある人を列挙すると,小川里美、小林沙羅、鷲尾麻衣(先週聞いたばかり!)、藤木大地、久保和範、与那城 敬、ジョン・ハオ...記念公演ならではの,華やかさでした。

背後で歌っていた大阪フィルハーモニー合唱団の皆さんは,「民衆の声」という感じで,ドラマの要所要所で音楽を盛り上げてくれました。特にグローリアの中のトロープス(この公演のプロモーション動画で使っていた曲)の力強さが印象的でした。余談ですが...この曲を聞くと,どうも「ひょっこりひょうたん島」のテーマ曲を思い浮かべてしまいます。私だけでしょうか?
http://blog.osakafes.jp/archives/2453

全曲を振り返ってみると,司祭が最初に歌っていた「シンプルソング」の美しさが,懐かしく思いだされます。べートーヴェンの第9の4楽章ではありませんが,こういったシンプルな曲が音楽の原点なのかもしれません。そして,最後,ボーイソプラノの声で救済されたことも意味深だと思います。ボーイソプラノという声自体,非常に儚いものだからです。世界の平和は儚さの上に成り立っている,,,ということになります。司祭が語っていた「何事もすぐに崩れやすい」とやすい,という言葉はやはり解決されないのだな,と思いました。深い作品だなと思いました。

音楽の性格としては,本当のミサではなく,「ミサ」というタイトルの「ほとんどミュージカル」といった作品だと思います(キリスト教を題材にし,ロックを使ったミュージカルという点では,「ジーザス・クライスト・スーパースター」と共通する部分もあるかもしれません)。音楽自体に魅力があるので,レパートリーとして定着していってもよい作品だと思いました。
PS 久しぶりに出かけた大阪フェスティバルホールは,大変豪華な雰囲気がありました。赤じゅうたんと大階段がそのまま残っていたのも嬉しかったですね。今回は,”安い”席を最近買ったので,最後列(いちばん”高い”席)になりました。この席からだと,まさに”神”のような視点で,全体を見渡すことができました。音もよく聞こえたし,今回の公演には,最適のホールだった気がしました。

2017/07/11

本日は,第1回ベストオブアンサンブル in Kanazawaでグランプリを受賞したTrio RFR(トリオアルファ)の演奏会へ。ピアノ三重奏の世界は良いです。3曲を正攻法で楽しませてくれました

本日は,昨年行われた「第1回ベストオブアンサンブル in Kanazawa(BOE)」でグランプリを受賞した,桐朋学園大学院大学での同期生3人によるピアノ三重奏団「Trio RFR(トリオアルファ)」の演奏会が行われたので聴いてきました。先週末から頻繁に演奏会に出かけているので,「どうしようかな」と迷っていたのですが,金沢でピアノ三重奏の演奏会が行われることは多くないこと,そして,昔から好きな曲だった,シューベルトのピアノ三重奏曲第1番が演奏されることを目当てに聞きに行くことにしました。

プログラムは,ハイドン,ベートーヴェン,シューベルトというウィーン古典派から初期ロマン派の作曲家によるピアノ三重奏曲を集めた大変聞きごたえのあるものでした。Trio RFRの演奏は,BOEのグランプリらしく,正攻法の誠実な演奏で,各曲を楽しませてくれました。

ヴァイオリンの青木さんの力感のある響き,ピアノの浅井さんのクリアで煌めきのある音にチェロの富田さんの柔らかみのある音が加わり,室内楽的な密度の高さと同時に,外に広がって行くような開放感も感じさせてくれました。

最初に演奏されたハイドンの曲は,曲の最初,朝礼とかでお辞儀をする時の「チャン・チャン・チャン」というような和音で始まり,思わず嬉しくなりました。その後も明るく,どこか可愛らしい雰囲気があり,気持ちよく楽しむことができました。第2楽章は大変美しいメロディでした。ベートーヴェン,シューベルトと引き継がれるウィーン風の伝統のようなものを感じました。

続くベートーヴェンのop.70-2の三重奏曲を聞くのは初めてのことでした。ベートーヴェンの三重奏曲といえば「大公」が有名で,この曲については,「傑作の森」の真ん中にあるけれども「イマイチの作品」などと(失礼なことを)書かれている解説を読んだことがあるのですが,今回,初めて実演で効いてみて,「そんなことはない」良い作品だなとと思いました。

全曲を通して深刻な感じはなく,とても健康的な雰囲気がありました。特に(アンコールでももう一度演奏されたのですが)第3楽章の親しみやすいメロディが印象的でした。この楽章の途中に出てくる,「ヴァイオリン+チェロ」と「ピアノ」とが対話をするように進んでいく辺りでの絶妙の「間」の取り方も良いなと思いました。

後半は,シューベルトのピアノ三重奏曲第1番が演奏されました。冒頭からキビキビとした感じで進んだあと,これぞシューベルトという感じのメロディが出てきます。第2楽章は昔から特に好きな楽章です。テンポはやや速目でしたが,しっかり熱く歌われていました。好みとしては,もう少し耽美的な感じが好みですが,十分に堪能させてくれました。

第3楽章スケルツォの後の第4楽章は,シューベルトらしく(?)同じフレーズが何回も繰り返される最終楽章です。このしつこい繰り返しが,シューベルトの器楽作品の魅力の一つかもしれませんね。

年季を積んだ室内楽グループに比べると,どこか「真面目すぎるかな」という部分はありましたが,これまで金沢では実演で聴く機会の少なかった,ピアノ三重奏曲の世界をじっくりと楽しませてくれました。ピアノ三重奏というのは,同じ室内楽でも弦楽四重奏などに比べると,ソリスティックな部分が多く,外向的な感じがします。それと「何でも表現できる最小限の編成」といったオールマイティな性格もあると思います。

Trio RFRのメンバーは,実は金沢出身者が含まれていないのですが,そういうメンバーが金沢で演奏活動を始めたというのは,とても嬉しいですね。是非,これからの活動に期待したいと思います。昨年はTBSドラマ「カルテット」が話題になりましたが...次は「ピアノ・トリオ」の時代かもしれないですね。

PS. 演奏会の後,外に出てみると...ホール内の調和の取れた世界とは全く別のものすごい豪雨。傘を持ってこなかったので,ひどい目に会って帰宅することになってしまいました。やはり梅雨ですね。

2017/07/09

ルドヴィート・カンタ バースディ・リサイタル。バッハの無伴奏チェロ組曲全6曲を聴いてきました。熟成されたスロバキアワインの味わい。全曲通すことで,各曲の個性も際立っていました。

OEK首席チェロ奏者ルドヴィート・カンタさんによる,バッハの無伴奏チェロ組曲の全曲演奏会が石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。実は,7月9日,まさに本日がカンタさんの60歳の誕生日でした。チェロ奏者としての活動の総決算となるような,素晴らしい内容の「バースデイ・リサイタル」となりました。

バッハの無伴奏チェロ組曲は,プロのチェロ奏者ならば必ず演奏する,バイブルのような曲集です。カンタさん自身も,過去何回か演奏しており,全曲のCD録音も行っています。今回は2回の休憩をはさみ,約3時間の演奏会となりましたが,まさに熟成されたスロバキアワインといった趣きのある,味わい深い演奏を聞かせてくれました。そして,改めてこの曲集は面白いと実感できました。

この6曲は,アルマンド-クーラントーサラバンドージーグというバロック時代の組曲の「定番の配列」の最初に,いろいろな形にプレリュードが加わり,サラバンドとジーグの間に,少し新しいタイプのメヌエット,ブーレ,ガヴォットという舞曲が加わるという構成になっています。

一見したところ,どれも同じように思えるのですが,今回のような形で,じっくり最初から聞いて行くと,各曲の個性が際立って聞こえました。それが全曲演奏会の面白さです。個人的な印象としては,ト長調の第1番が「春」のイメージ,ニ短調の第2番が「秋」のイメージ,ハ長調の第3番が「夏」のイメージだなと思いました。

第4番は,プログラムの解説にあったとおり,弦楽器には珍しい♭系の変ホ長調で書かれていることもあり,異次元の曲といった感じがありました。一面雪の別世界とすれば,これが「冬」でしょうか。

最後の第5番と第6番については,4番までとは別格の曲だと思いました。今回は2曲ごとに休憩が入ったのですが,最後に第5番と第6番を連続してきくと,ハ短調からニ長調への暗と明の対比が鮮やかでした。

カンタさんの演奏は,ベテラン奏者らしく,バリバリと演奏するような部分はなく,どの曲についても,スッと自然に音楽に入り込み,余裕をもってバッハの音楽を粋に表現していました。その要所要所で,ぐっと沈み込むような深さがあったり,不思議な浮遊感があったり,変化に富んだ音楽を聞かせてくれました。

特に今回印象に残ったのは,やはり最後の第5番と第6番でした。第5番からは,これぞバッハという感じの深さ,渋さを。第6番からは,突き抜けた感じの明るさを感じました。第6番は,特に難技巧の作品で,ずっと前にカンタさんの演奏で聞いた時は,相当苦闘しているような印象を持ったのですが,今回は常に高みを目指す高揚感が伝わってくる,感動的な演奏でした。

個々の楽章では,やはり各曲のサラバンドの味わいが素晴らしいと感じました。第2番のサラバンドの深く自分の意識の奥の中に入り込んでいくようでした。第6番のサラバンドは,無伴奏ヴァイオリン・パルティ―タの中の有名な「シャコンヌ」とちょっと似ていると感じました。対照的に,シンプルな「線の音楽」の第5番のサラバンドのしみじみとした味も印象的でした。

途中,30分の休憩があり,スロバキアワイン飲み放題(?)だったのですが,あれだけ大勢の人がワインを飲んでいる光景を見るのも珍しいことです。OEKメンバーも大勢参加しており,とても暖かな雰囲気がありました。

全6曲を演奏した後,最後は「ハッピバースディ」の合唱が自然と沸き起こりました。こちらも「無伴奏」の合唱でした。その光景を見ながら,こういう風に年齢を重ねることができたら,いいなぁとしみじみ思いました。今月は18日にカンタさんとOEKが共演し,サン=サーンスのチェロ協奏曲を演奏しますが,そちらの方も大変楽しみですね。

2017/06/25

#金沢大学フィルハーモニー管弦楽団 サマーコンサート。シューベルトの「ザ・グレート」とチャイコフスキーの5番というボリューム感たっぷりのプログラム。曲に掛ける思いがしっかり伝わる名演だったと思います。

この時期恒例の金沢大学フィルハーモニー管弦楽団のサマーコンサートを金沢歌劇座で聴いてきました。このコンサートについては,前半は序曲と中規模なオーケストラ作品,後半にベートーヴェンかロマン派の交響曲というパターンが多かったのですが,今回は,前半にシューベルトの「ザ・グレイト」,後半にチャイコフスキーの交響曲第5番ということで,どちらも「トリ」を取っても良さそうな曲2曲を並べるという,チャレンジングなプログラムでした。

昨年のグラズノフのように,マイナーな曲にチャレンジするのも大歓迎ですが,大曲2曲に一気にチャレンジというのも,素晴らしいことだと思います。雰囲気的には,「チャーハンを食べた後,カレーライスを食べる」といった感じになるかな,と思ったのですが,2曲聞いた感じでは,それほど胃にもたれる感じはなく,どちらもしっかり味わって楽しむことができました。特に後半のチャイコフスキーの5番の方は,サマーコンサート史上(全部聞いているわけではないので,推測ですが)に残るような名演だったのでは,と思いました。

前半の「ザ・グレイト」の方は,第1楽章の序奏部は,やや緊張しているかな,という雰囲気はありましたが,その後主部に入ると,堂々とした歩みが始まり,正攻法で大曲を聞かせてくれました。全曲を通じて,同じような音型を執拗に繰り返すような部分の多い曲ですが,そういった部分でも,キビキビと地道にレンガを積み重ねて行くような律義さが感じられ(実は,最近そういった部分が好きなのです),若い人たちの演奏は良いなぁと思いながら聞いていました。

楽器の中では,要所要所で出てくる,ティンパニの力強い響きが印象的でした。最終楽章のクライマックスあたりは,個人的には,もう少し金管楽器に暴れて欲しい気はしましたが,全曲を通じて堂々とした立派さのある演奏だったと思います。

後半のチャイコフスキーの第5番の方は,前半長い曲を1曲弾いた後ということもあるのか,オーケストラの音がさらにこなれている気がしました。チャイコフスキーの音楽自体,「山あり,谷あり」なのですが,その起伏を非常に克明に演奏し,全曲を通じて,ロマンティックな気分を思い切り出していたのが素晴らしいと思いました。

学生指揮者の正村さんは,過去私が見て来た学生指揮者の中でも,特に”派手”な指揮ぶりで,大きく手を伸ばしたり,楽器へのキューを頻繁に出したり,観ているだけで音楽が伝わってくるようでした。実際,金大フィルの音もその通りの音を出しており,素晴らしい統率力だと感じました。チャイコフスキーならではの音楽と連動した情感の揺れが,熱く自然に伝わって来ました。冒頭のクラリネットから,暗いムードと広がりのある空気感がたっぷり感じられ,やっぱりこの曲は良いなぁと思いました。

第2楽章はホルンのソロが,聞きどころになります。低弦による深い音の上に,どこか控えめで,素朴さと温かさのあるソロが続きました。何ともいえず,良い味だなぁと思いました。この楽章も本当じっくりと聞かせてくれました。「運命のモチーフ」の当たりになると出てくる,強烈なティンパニの炸裂もすごいと思いました。

第3楽章のワルツも色々なイマジネーションに溢れているようで,じっくりと聞かせてくれました。第4楽章は,そのまま間を置かず始まりました。この楽章では,まず弦の響きが良いと思いました。プレーンな音の美しさがストレートに伝わってきました。その後の山あり谷ありの部分も,思う存分演奏していたように見えました。何より素晴らしいのは,音楽がきちんと設計されていているので,どの部分も非常に克明で,曖昧さがないところです。

というようなわけで,素晴らしく説得力のある演奏だったこともあり...これは予想していたのですが..第4楽章のコーダに入る直前,大きく盛り上がって,全休符が入る部分で,拍手が入ってしまいました。この拍手については,ある意味「当然」という感じだったかもしれませんね。一種「勲章」のようなものと前向き(?)に捉えてもらった方が良いと思います。

そして,その後の部分の弦楽器のヴィブラートがたっぷりとかかった歌にもしびれました。この部分は,指揮者のこだわりがしっかりと音になっていたのだと思います。濃い音楽を聞いたなあという実感が残りました。その後は,「やりたいことをやり尽くした」感のある,爽やかな気分で全曲を締めてくれました。会場からは,ブラボーの声が飛んでいましたが,まさにそういう演奏だったと思います。

学生オーケストラの場合,メンバーが毎年毎年入れ替わり,学生指揮者も定期的に変わると思いますが,「この1曲」に掛ける思いの伝わってきた,素晴らしい演奏会だったと思いました。

2017/03/26

石川県ジュニアオーケストラ,今年の定期公演は「100万回生きたねこ」,スターウォーズ,ダンサー付きのバレエ音楽。「これで無料?」と思わせるほど豪華で変化に富んだ充実した内容でした

この時期恒例の石川県ジュニアオーケストラの定期演奏会を聞いてきました。この演奏会も今回で23回目となります。毎回,趣向を凝らしたプログラムになっていますが,今回は特に豪華で,「これで無料?」というぐらいの充実感と変化に富んだ内容でした。

最初に演奏された「100万回生きたねこ」は,昨年の夏に続いての再演です。前回と違うのは,ナレーションがジュニア・オーケストラのメンバーの女子高校生が担当したことです。前回の太郎田真理さんによるナレーションも素晴らしかったのですが,今回の南部真奈さんのナレーションも別の良さが出ていたと思います。大げさになり過ぎることなく,しっかりとドラマが伝わっただけでなく,トラネコが白ネコに「一緒に暮らそう」と語るあたりでは,物語にぴったりの初々しさを感じました。高校生がナレーションをする点では,武満徹の「系図」を思わせるようなムードも感じましたが,個人的には,今回の作品の方が好みです。

ジュニア・オーケストラの演奏も2回目の演奏ということで,安心して聞くことができました。ナレーションの「行間」の気分をしっかりと盛り上げてくれました。

その後,ジョン・ウィリアムズ作曲の映画「スター・ウォーズ」のメインタイトルが演奏されました。オーケストラ・メンバーによる演奏したい曲の人気投票では,いつも上位に来る曲とのことです。今回はこの難曲に挑戦し,見事に聞かせてくれました。

曲の最初の方のトランペットのハイトーンなど,かなり大変だったと思いますが,しっかりと聞かせてくれ,しかも,爽やかさを感じさせてくれました。弦楽器の滑らかな演奏も印象的でした。木管楽器の人数もとても沢山いたこともあり,予想以上に充実した演奏を聞かせてくれました。

後半は,エコール・ドゥ・ハナヨ・バレエの皆さんのバレエを加えてのステージでした。こちらも大変楽しいステージでした。

最初にオッフェンバックの「天国の地獄」の中のカンカンの部分が演奏されました。ステージ奥を少し高くして,そこでバレエを踊る形になっていましたが,大変華やかで,しかも格好良いものでした。ダンサーたちがステージ中央の扉からスーっと入って来るだけで,嬉しくなりました。スピード感のある音楽に合わせて,ぴったりと揃った群舞を見せ,さらに,ソロのダンサーたちがフェッテ(連続回転)を見事に見せる部分があるなど,予想以上にハイレベルな踊りで感激しました。

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の方は,5曲の抜粋でしたが,このバレエ音楽らしく,親しみやすい音楽に乗って,次から次へとダンサーが登場してきて,会場の気分がさらに盛り上がりました。やはりダンスの力は偉大です。

クララ(?)が大勢出て来た「行進曲」,ハイジャンプが素晴らしかった「トレパック」,これぞバレエという優雅さのあった「あし笛の踊り」,そして小さい子どもたちが大きなスカートの下からゾロゾロ出てくる「ギゴーニュおばさんと子どもたち」。過去,鈴木織衛さん指揮OEKで,「くるみ割り人形」の全曲を見たことがありますが,その時の幸福感たっぷりの気分が蘇ってきました。

最後は「終幕のワルツとアポテオーズ」ということで,全員が出てきて,一緒に踊る曲になります。ワルツの最後の方で,音楽が盛り上がり,「全員で踊る」ところは特に好きな部分です。

このワルツの最初の「ジャーン」という音を聞くと,華やかだけれども「もうすぐ全曲が終わってしまうなぁ」というちょっと切ない気分になります。今回は5曲だけだったのですが,しっかりそういう気分になりました。ジュニアオーケストラの音は,包容力のある音で,見事に全曲を締めてくれました。

というわけで,今年の定期公演は,ナレーション付きの曲,スターウォーズ,ダンサー付きのバレエ音楽と,特に豪華で充実した内容だったと思います。

2017/03/15

鶴見彩ピアノリサイタル。20年に渡る活動の総決算になるような,曲の良さが率直に伝わる,聞きごたえのある演奏の連続でした

この一週間で3回目の演奏会になったのですが,今晩は,金沢を中心に活躍しているピアニスト,鶴見彩さんのリサイタルが行われたので聞いてきました。鶴見さんは,約20年前に第1回石川県新人登竜門コンサートでOEKと共演して以来,多彩な活動をされています。特にチェロ奏者のルドヴィート・カンタさんをはじめとしたOEKメンバーとの共演も頻繁に行っています。恐らく,金沢でもっとも信頼されているピアニストの一人ではないかと思います。

その鶴見さんのリサイタルですが,ブラームスとベートーヴェンの晩年の作品とリストの大曲,ピアノ・ソナタ ロ短調を組み合わせた,大変聞きごたえのある内容でした。どの曲も難曲と言って良い作品だと思いますが,重く気負い過ぎることなく,各曲の美しさ,立派さ,魅力を率直に伝えてくれる見事な演奏を聞かせてくれました。

ブラームスの6つの小品については,もっと暗く,渋い印象を持っていたのですが,鶴見さんの演奏にはセンチメンタルになることのない,かっちりとまとまった質実さのようなものがあると思いました。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番は,「風と緑 楽都音楽祭」でも鶴見さんが演奏する曲です。第3楽章の最初に「嘆きの歌」と呼ばれる有名な部分がありますが,この部分でも情緒的になり過ぎることなく,むしろ淡々とした雰囲気がありました。そのことで,よりリアルな悲しみが伝わってくるようでした。フーガの部分での次第に昇華されていくような気分も素晴らしいと思いました。

最後に演奏されたリストのピアノ・ソナタは,鶴見さんのこの20年の活動の総決算になるような,スケールの大きさのある演奏でした。この曲は,最初の方に出てくる,いくつかの主要モチーフが,その後,何回も手を変え品を変え展開されていくような作品です。静かで清らかな部分,キラキラとした速いパッセージ,大きく盛り上がる強打の連続...非常に変化に富んでいます。鶴見さんは,どんなに音楽が変化しても,形が崩れることはなく,しっかりと地に足のついた安定感のある音楽を聞かせてくれました。

鶴見さんの作る音楽自体は,強打で圧倒するような感じでないのですが,曲が終盤になるにつれて,演奏全体に凄味が出てきて,音楽全体がどんどん深みを増していくようでした。

金沢では今回演奏されたような渋めの曲を聞く機会は多くありません。今回の鶴見さんのような,曲を歪めない,誠実な演奏で聞くと,その良さをしっかりと味わうことができます。終演後のお客さんの暖かく,盛大な拍手を聞いて,改めて,鶴見さんのピアノへの信頼の厚さを実感できた演奏会でした。

2017/01/28

音楽堂室内楽シリーズ ヤノシュ・オレイニチャク ピアノ・リサイタル。サロン風を意識した,余裕たっぷり,安心して楽しめる大人のショパン。プログラムも雰囲気に応じてどんどん変更

本日は午後から,「音楽堂室内楽シリーズ Vol.4 ヤノシュ・オレイニチャク:エスプリ・ショパン:知られざる珠玉の名曲とともに」が石川県立音楽堂で行われたので聞いてきました。室内楽シリーズは,通常は交流ホールで行われているのですが,今回は,ポーランドを代表するショパン弾きの一人,ヤノシュ・オレイニチャクさんが登場するとあって,ゆったりとコンサートホールで行われました(ただし,3階は使っていませんでした)。

オレイニチャクさんは,2002年度のアカデミー賞受賞作映画「戦場のピアニスト」のサウンドトラックを演奏した方で,ショパンコンクールの審査員,ワルシャワ国立ショパン音楽院の教授でもあります。というわけで,正真正銘の「ショパンのスペシャリスト」ということになります。

ただし,この日のプログラムは,「サロンのショパンを再現したい」というコンセプトに基づくもので,ポロネーズ2曲,スケルツォ,バラード以外は,短めの作品が10曲ぐらい並んでいました。演奏の方も堅苦しさよりは,たっぷりとした余裕を感じさせてくれるものでした。もちろん,コンサートホールでの演奏ということで,十分なスケール感や力強さもありました。「さすが」という感じの,安定感のある演奏を堪能させてくれました。

プログラムの方は,かなり変更になっていました。オレイニチャクさんは,客席の雰囲気に応じて,後半になるに連れて,気分の赴くままにプログラムを変更していたようです。さらにアンコールは,ショパン以外の曲も含む4曲。この自由さは,アルトゥール・ルービンシュタイン(オレイニチェクさんの師匠に当たります)などに通じる,エンターテイナー的なキャラクターも持った巨匠ピアニストの系譜につらなると思いました。

キレの良いテクニックで力強く弾きまくる若手ピアニストの演奏も素晴らしいのですが,オレイチェニクさんのような存在は,これからますます貴重になるのではないかと思いました。

最後に本日演奏された曲目です。私も全部分からなかったのですが,会場に案内が出ていませんでしたので,分かる範囲でご紹介しましょう。この日は,浦久俊彦さんがナビゲーター役として登場し,前半最後にインタビューコーナーがあったのですが(この内容もとても面白いものでした),恐らく,正式なプログラムは浦久さんのWebサイトの方で発表されるのでないかと思います。

ショパン/軍隊ポロネーズ
ショパン/ノクターン 嬰ハ短調「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」
ショパン/ノクターンホ短調
ショパン/2つのマズルカ,op.24-1,2
ショパン/3つのマズルカ,op.63
ショパン/幻想即興曲 → バラード第1番に変更
ショパン/前奏曲 ホ短調,op.28-4
ショパン/スケルツォ第2番 → 英雄ポロネーズに変更
(休憩)
ショパン/ワルツ イ短調,op.34-2 → ワルツop.69-1「告別」に変更
ショパン/2つのワルツ,op.64-2,1 → 小犬のワルツは演奏せず
ショパン/ワルツ ホ長調
ここで,ワルツ イ短調 op.34-2を演奏
ショパン/ワルツ イ長調 → マズルカ(番号不明)に変更
ショパン/ポロネーズ変イ長調, op.53 → スケルツォ第2番に変更

(アンコール)
ピアソラ/オブリビオン
ショパン/小犬のワルツ
ドビュッシー/前奏曲集第2巻~花火
ショパン/前奏曲集第7番(太田胃酸のCMでおなじみ。胃腸調ならぬイ長調です)

これだけ,自在にプログラムが変わると,楽しくなってきますね。

2017/01/21

ルドヴィート・カンタ チェロ・リサイタル ボーリングのチェロとジャズ・ピアノ・トリオのための組曲を中心にリラックスして楽しめました

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の首席チェロ奏者,ルドヴィート・カンタさんのリサイタルが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。カンタさんのリサイタルも今回で19回目となりますが,プログラムに趣向が凝らされており,同じ曲というのがほとんど出てきていないのがすごいところです。

今回もまた,「新曲」が入っていました。後半に演奏された,ボーリングという現代の作曲家による,チェロとジャズ・ピアノ・トリオのための組曲という1984年の作品です。曲は,タイトル通りの作品で,チェロとピアノが擬似バロック音楽的な親しみやすい音楽を演奏しているうちに,コントラバスとドラムスが加わり,心地よいジャズの雰囲気になっていくといったとても面白い作品でした。

かつて人気のあった,ジャック・ルーシェトリオによる,「プレイ・バッハ」のような気分があり,とても新鮮でした。バロック音楽の組曲のように6曲からなっていたのですが,1曲ずつが結構長かったので,50分ぐらい演奏時間があったと思います。各曲の雰囲気に変化があり,大変リラックスして楽しむことができました。

カンタさんといえば,OEKに入る直前頃,NAXOSレーベルにジャズ風のカデンツァの入るハイドンとボッケリーニのチェロ協奏曲のCD録音を行っています。その面目躍如たる演奏でした。ちなみにジャズ・ピアノ・トリオのメンバーは,Julian,Rita,Umechuとクレジットされていましたが...ユリアン・リイムさんのピアノ,OEKのコントラバス奏者のマルガリータ・カルチェヴァさん,端谷博人さんのドラムスでした。リイムさんの軽快なピアノを始め,爽快なジャズを聞かせてくれました。

前半に演奏された2曲も,楽しむことができました。ドビュッシーのチェロ・ソナタはちょっと捉えどころがないけれども,ユーモアが漂うような,演奏でした。

フランクのチェロ・ソナタは,オリジナルはヴァイオリン・ソナタです。名曲中の名曲で,チェロでも時々演奏される曲ですが,やはり音域が少し下がることで,ヴァイオリンの時とは一味違った,落ち着きが感じられました。ヴァイオリン版がスウィートだとすれば,チェロ版はビター・スウィートといったところでしょうか。いつもどおり,さりげないけれども滑らかに流れるカンタさんのチェロの歌を楽しむことができました。第2楽章や第4楽章での勢いのある自信に満ちた音楽も見事でした。リイムさんのピアノは重苦しい感じはなく,フランス風味が感じられました。

それにしても,カンタさんのリサイタルの選曲は素晴らしいですね。次回は60歳記念の演奏会になるということで,どういう内容になるのか今から大変楽しみです。

2016/12/27

2016年の演奏会通いの締めは,大山平一郎指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団による定期演奏会。非常に挑戦的な雰囲気の「悲愴」交響曲を聞かせてくれました。

2016年も沢山の演奏会に出かけてきましたが,その最後(予定)に,金沢大学フィルの定期演奏会を石川県立音楽堂で聞いてきました。指揮はベテラン指揮者の大山平一郎さんでした。プログラムは,ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲,スメタナの交響詩「モルダウ」,チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」という,ロマン派のオーケストラの名曲3曲でした。

例年,この定期演奏会は,年が明けたセンター試験の頃に行うのが恒例でしたが,今年は年末に行われました。平日の18:30開演ということで,ちょっと慌ただしくなりましたが,今年の「締め」のオーケストラ公演を楽しんできました。

大山さんの指揮ぶりには,弛緩したところがなく,たっぷりとしたボリューム感よりは,ちょっと辛口の引き締まった演奏を聞かせてくれました。特に「悲愴」は,過度に甘くなったり,思い入れたっぷりになったりすることなく,悲しさに挑むような強さを感じました。第1楽章冒頭のファゴットや展開部の直前の弱音などでは,ピリピリするような弱音で演奏されることがありますが,今回の演奏では,積極性のようなものを感じました。

反対に第3楽章は,やや遅めのテンポで,非常に冷静でくっきりとした演奏を聞かせてくれ,ただのお祭り騒ぎとは一線を画していました。第4楽章は,また速目のテンポになり,運命に立ち向かっていくような強さを感じさせてくれました。

「悲愴」と言えば,悲しさとロマンティシズムに溢れた,たっぷりとした大曲という印象を持っていたのですが,それを裏切るような挑戦的な演奏だったと思います。

金大フィルの演奏では,透明感を感じさせてくれる弦楽器の演奏が特に印象的でした。管楽器の方は,やや粗が目立つところはありましたが,冒頭のファゴットであるとか,要所で活躍するフルートなどが特に立派な演奏を聞かせてくれたと思いました。第3楽章でのティンパニ,大太鼓,シンバルの演奏も安定感があり,楽章全体を大変聞きごたえのあるものにしていました。

前半のワーグナーとスメタナの方も,スケールの大きなロマンティックな演奏というよりは,引き締まったテンポでぐいぐい攻めてくるような雰囲気があり,大変若々しいと思いました。どの曲もそうだったのですが,大山さんのエネルギーが金大フィルの演奏に非常によく反映していると思いました。

というわけで,今年の演奏会通いもこの演奏会でおしまいにする予定です。

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