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コンサート(OEK以外)

2019/10/12

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として #室生犀星記念館 主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサート@金沢21世紀美術館へ。詩と音楽のどちらも楽しめました。金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として室生犀星記念館主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサートが金沢21世紀美術館で行われたので,夕方から参加してきました。行けるかどうか,微妙な状況でしたが,金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

個人的には,オンド・マルトノという楽器を一度,生で見てみたい,聞いてみたい。しかも演奏は原田節さん。というあたりが注目ポイントだったのですが,谷川賢作さん作曲による,犀星・朔太郎・中也の詩につけた曲を原田さんが,オンド・マルトノを弾きながら,味わい深く歌うというのが実に良かったですね。

企画の趣旨としては,「犀星の詩」が主役で,「動物詩集」の詩につけられた,ユーモアあふれる曲を聞きながら,日本版「動物の謝肉祭」が作れるかも,と思いました。その他の詩人の曲では,ちょっと自虐的な感じのする,中也の「詩人は辛い」が面白かったですね。クラシック音楽の鑑賞にも通じるような内容だったので,じっくりと読んでみたいと思いました。

谷川さんの父上の俊太郎さんの詩,武満徹の曲による「ぽつねん」も,聞かせる曲でした。老婆を描いた作品で,ユーモアと同時に身につまされるような,怖さのようなものもありました。

谷川さんの曲は,ジャズ,タンゴ,クラシック,シャンソンなど色々なテイストが合わさったもので,多彩な詩の雰囲気にぴったりでした。そこに原田さんのオンド・マルトノの音が重なります。この楽器の音を生で聞くのは初めてでしたが,妙に艶めかしいヴィブラートがかかったり,邪悪な激しさがあったり,とても表現力が豊かで,人間の声に近い表情を持った楽器だと思いました。もちろんこれは,原田さんの技巧によるものだと思います。自分の声の一部になったような感じで,自由自在に多彩な音を出していました。

そして,原田さんの歌。「日本版トム・ウェイツ」と谷川さんは紹介されていましたが(実は...よく分からないのですが),不思議な味と力のある歌でした。最後のコーナーでは,原田さんはフランス語で色々な曲(夢見るシャンソン人形,いつものように(マイウェイのオリジナル版))を歌ったのですが,正真正銘,人生の悲哀を感じさせるシャンソンだなぁと思いました。
谷川さんと原田さんによる,CDを販売していたので,記念に買ってみようかな...と思ったのですが...うっかりほとんどお金を持っていないことに気付き,何も買わずにおきました(駐車場料金だけは確保しておかないといけないので)。

谷川さんは,大変おしゃべりの好きな方で,実は東京の自宅のことが大変気になっていますということでした。谷川さんの自宅に限らないことですが,何とか今晩を切り抜け,災害が少しでも少なくなることを祈っております。

2019/10/06

石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会。バーンスタイン,スターウォーズ組曲,マーラーの「巨人」という素晴らしいプログラム。大編成オーケストラの魅力をしっかり楽しめました。

本日は,2019ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一貫で行われた,石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。本日は同じ時間帯に,話題のピアニスト,藤田真央さんのリサイタルが市内で行われるなど,いくつか演奏会が競合しており(ついでに言うと大相撲金沢場所もやっていましたね),どれに行くか迷ったのですが,マーラーとジョン・ウィリアムズに惹かれて,石川フィルの演奏会を選びました。公演パンフレットにも書かれていたとおり,石川フィルさんは,通常の定期公演とビエンナーレの特別公演の場合とで方針を変えているようで,今回は大編成の難曲に挑戦する形になりました。

プログラムの前半は,バーンスタインのキャンディード序曲とウィリアムズのスターウォーズ組曲でした。キャンディード序曲は,長年,開幕にぴったりの充実感のある演奏でした。最初の元気のよい部分も良かったのですが,中間部に出てくる「求婚のテーマ」にも落ち着いた味があって特に印象的でした。それにしても...この曲は結構長い間「題名の音楽会」のテーマ曲だったので,曲が始まると,佐渡裕さんの顔が浮かんできてしまいますね。

「スターウォーズ」の音楽については,ベルリン・フィルが取り上げたり,グルターヴォ・ドゥダメルが取り上げたり,徐々にクラシック音楽化して来ている印象もあるのですが,金沢で「メインタイトル」以外の曲をまとめて聞く機会は少ないと思います。今回演奏された組曲は,作曲者自身が選曲した5曲で,1970年代から1980年代に公開された最初の三部作の音楽から成っていました。

メイン・タイトルについては,最初のファンファーレが鳴った途端,サントラと同じだと嬉しくなりました。途中,ホルストの「惑星」のような感じになっていくのですが,この辺は実演で聞くと,特に良いですね。組曲を通じて,フルートが素晴らしい演奏だったと思いました。SFにぴったりのクールな音でした。

「レイア姫のテーマ」と「ヨーダのテーマ」は,しっかり意識して聞いたことはなかったんですが,プログラムの解説を読みながら聞くと,「なるほど」と思いました。ライトモチーフをしっかりと組み合わせて,意味を込めていたり,素直な調性にして,健全な響きを出していたり,という作曲者の意図がよく伝わってきました。

「ダース・ベイダーのテーマ」は,「帝国のマーチ」ということで,メイン・タイトルの次に有名な曲ですね。指揮者の花本さんは,指揮棒を指揮台の下に用意してあったライトセイバー(それとも,日本刀のおもちゃ?遠くからだと判別できませんでした)に持ち替えての指揮でした。弦楽器のトップ奏者の頭を叩けそうな感じでした。この曲は,結構,色々な場所で聞くようになってきたので,曲想とは別に,聞くと妙に嬉しくなってしまうところがあります(個人の感想です)。

最後は,「王座の間」の音楽でした。この音楽には,落ち着きと華やかさがあり,映画同様,組曲の最後に聞くとしっかりと締まりますね。5曲セットで,小型交響曲を聞いたような充実感のある演奏でした。

後半のマーラーの交響曲第1番「巨人」が演奏されました。石川フィルは11年前にもこの曲を演奏しており,花本さんの指揮で聞いたことがあるのですが,熟練の指揮ぶりで,第4楽章のクライマックスに向けて大きく盛り上がる音楽を聞かせてくれました。

プレトークで,第1楽章の冒頭は弦楽器のフラジオレットを使っていること,第3楽章にはコントラバスとテューバという低音楽器による珍しいソロがあること,などオーケストラのメンバーを交えて紹介をしてくれました。プログラムの解説もとても充実しており,曲をさらに楽しむことができました。

第1楽章では,楽章の後半で,一気に目が覚めて,「自然」が動き出すような感じが鮮やかに表現されていると思いました。ホルン全員で力強く演奏する部分がバシッと決まっていて良かったですね。第2楽章は落ち着いたテンポのレントラー舞曲でした。トリオでの弦楽器の優しい音も非常に魅力的でした。第3楽章のコントラバス・ソロからは,素直な民謡風のメロディから,自然に哀愁がにじみ出ていました。テューバのソロは,実はこれまであまり意識して聞いたことはなかったのですが,良い味を出しているなぁと思いました。

第4楽章は,まず冒頭のシンバルの強烈の響きが良かったですね。その後は,プログラムの解説に書いてあった,「半音階で下がっていく不吉なモチーフ」に注目してみたのですが,このモチーフが結構しつこく何回も出てくるのが分かり大変面白く聞くことができました。途中対照的に弦楽器による美しいメロディが出てきますが,こちらの方は非常にねっとりと演奏されており,「マーラーの音だ!」と思いました。このメロディを聞くといつもずっと浸っていたいと思います。その辺の対比が続いた後,最後の大きな盛り上がりへとつながっていきます。

この日は,前半のジョン・ウィリアムズの時から「トランペットが大変」というプログラムということもあって,7人もトランペットがいましたが,この最後の部分では全員一斉に演奏していました(多分)。ティンパニ2台を中心とした打楽器の激しい連打と一体となって,滅多に味わえないような強烈な響きで全曲を締めてくれました。こういう響きを聞くと,アマチュアオーケストラの熱い演奏はいいねぇと思います。

マーラーの交響曲の後だったので,アンコールはないかも,とも思ったのですが,何と「花の章」(「巨人」のオリジナル版にあった楽章)が演奏されました。そうなってくると,最初から「花の章付き」で演奏しても良かった気もしましたが,今回の演奏を聞いて,アンコールにぴったりの曲だと思いました。

とてもリラックスした感じの曲なので,大曲の演奏の後にぴったりでした。トランペットが大活躍する曲なので,「お疲れのところ,もうひと頑張り」という感じもあったのですが,今回は7人も奏者がいたので,「花の章」のトランペットのパートを全員で分担して演奏していました。こういうのもとても良いと思いました。

というわけで,大編成のオーケストラ作品を,熱い演奏で気持ちよく楽しめた演奏会でした。

2019/10/03

念願の #イ・ムジチ合奏団 with #小松亮太 金沢公演。2つの「四季」を中心に,お客さんは大喜び。昭和時代からの念願がようやく叶い,イ・ムジチの魅力を体感できた演奏会でした。終演後の大サイン会も大盛況

本日はイ・ムジチ合奏団の来日公演の金沢公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。ゲストはバンドネオン奏者の小松亮太さんでした。

イ・ムジチ合奏団は,私がクラシック音楽を聞き始めた昭和時代から,クラシック音楽やバロック音楽の定番中の定番でした。特にヴィヴァルディの「四季」については,イ・ムジチの名前とセットになって,日本に定着していったのではないかと思います。その後,古楽器による演奏や古楽奏法によるバロック音楽の演奏が定着していく中で,イ・ムジチについては,やや影が薄くなって来た印象を持っていたのですが,本日の演奏を聞いて,「さすが,イ・ムジチ。永遠に不滅かも」という実感を持ちました。

あえて元号で言うと,昭和時代,皆で同じものを聞いて楽しんでいた時代の良さのようなものを思い出させてくれる気がしました。もちろん,イ・ムジチの「四季」についても,コンサートマスターが変わるたびに,演奏のスタイルがどんどん変化してきており,今回の演奏も,私が最初に聞いた,フェリックス・アーヨの時代のロマンティックと言っても良いような甘さが漂う演奏とは全く違うのですが,お客さんに対する姿勢というのはずっと一貫しているのでは,と思いました。イ・ムジチの演奏を聞くのは,実は今回が初めてだったので,「長年の念願がかなった!」といううれしさと同時に,明るく健康的なイタリア音楽を品良く楽しませてくれる,というスタイルが一貫していることが何よりも素晴らしいと思いました。

イ・ムジチについては,来日直前にコンサートマスターのアントニオ・アンセルミさんが亡くなるという予期せぬ出来事があり,今回のコンサートマスターはマッシモ・スパダーノさんが担当していました。その交代によって演奏のスタイルに変化があったのかは分からないのですが,近年の古楽奏法を取り入れたような解釈や,くっきりとメリハリをつけた,モダンな感覚があり,時代とともにマイナーチェンジを続けているのだなと思いました。

それが過激にはならず,健全でバランスの良い品の良さに支えられているのがイ・ムジチの良さだと思います。今回の「四季」も,たっぷりと歌わせるというよりは,やや速めのテンポの演奏で,しっかりと抑制を聞かせながらも,スパダーノさんを中心とした名技をしっかり聞かせ,全体として,明るくスタイリッシュに楽しませてくれるような演奏だったと思いました。

前半は,バンドネオンの小松亮太さんとの共演でした。小松亮太さんは,石川県立音楽堂ができて間もないころ,一度,OEKと共演していた記憶がありますが,演奏を聞くのはその時以来です。イ・ムジチの「四季」とバランスを取るかのように,ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」を中心にラテン系の曲を聞かせてくれました。

ピアソラの「四季」の方は,オリジナルは室内楽的な編成のはずですが,クラシック音楽の演奏会で演奏される機会も増えて来ています。特にイ・ムジチとの共演で聞くと,後半のヴィヴァルディと全く違和感なく,クラシック音楽として楽しむことができました。その分,ギラギラとした生々しさのようなものは消えていたのかもしれませんが,「本家・四季」からのれん分けした,新たなブランドを楽しむような面白さを感じました。

それにしても,小松さんのバンドネオンの音は耳と心に染みます。まっすぐな純真さとちょっと怪しげな空気が同居しているような魅力を感じました。ピアソラの曲以外に,小松さん自身による「夢幻鉄道」という作品が演奏されましたが,そのタイトルどおりの気分に惹かれました。

そして,この演奏会では,アンコールが大変充実していました。

前半では,小松さんがアンセルミさんを偲んでピアソラの「オビリビオン」を演奏しました。亡き人を静かに,しかし強く偲ぶような深い音楽でした。

後半でも,アンセルミさんを偲んでのヴェルディのアヴェ・マリア(「4つの聖歌」の中の1曲を弦楽合奏にアレンジしたもの)が素晴らしい演奏でした。美しいハーモニーにいつまでも浸っていたいと思いました。

そして,それ以外に何と3曲もアンコールが演奏されました。「夕焼け小焼け」を弦楽合奏用にアレンジした曲は,日本公演向け(もしかしたら定番曲なのでしょうか)のアンコールですが,お客さんも大喜びでした。最後の「1分で終わる」(チェロの方の紹介の言葉です)アンコールの後は,イ・ムジチの皆さんが客席に向かって手を振り,多くのお客さんがステージに向かって手を振り返すという,しあわせ感一杯の雰囲気で終了。

さらに,メンバー全員+小松亮太さんによるサイン会も行われました。これまで何回もサイン会に参加してきましたが,総勢13人がずらっと並ぶサイン会というのは...前例がないかもしれません。イ・ムジチ合奏団の日本での人気の高さは,こういう部分にもあるのかなと思いました。

何というか...昭和時代からの念願がようやくかなったような演奏会でした。

2019/08/31

#若林工房 創立15周年記念 #イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル(富山県民会館ホール)。CDの公開録音を兼ねた無料公演で,非常に完成度の高い内容。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

本日は午後から富山市に出かけ,イリーナ・メジューエワさんのピアノ・リサイタルを聞いてきました。会場は富山県民会館ホールでした。このリサイタルですが,通常のリサイタルとは違い,若林工房という富山県にあるCD制作会社の公開録音を兼ねたものでした。入場料自体は無料(要整理券)だったのですが,本日の演奏を収録したライブCDを会場で先行予約できるなど(実演販売ですね),CD制作・販売とリサイタルを連動させることで,アーティストと聴衆とのつながりを深める効果があると感じました。「これは面白い」と思いました。

そして何より,メジューエワさんの演奏が素晴らしかったですね。CD収録だからということもあったと思いますが,非常に完成度の高い演奏の連続で,こんなに素晴らしいピアニストだったのか,と感嘆しました。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

逆に言うと,そういうアーティストだからこそ,レコーディング向きと言えます。本日のプログラムの巻末に,若林工房制作のディスコグラフィが付いていましたが,15年の間に(本日は若林工房創立15周年記念イベントでした)100セット以上のタイトルを発売しており壮観でした。その核となっているアーティストがメジューエワさんです。

今回のプログラムは,前半がモーツァルトとメンデルスゾーン,後半がショパンとスクリャービンという構成でした。20分以上の曲はなく(15分程度のモーツァルトのピアノ・ソナタK.280がいちばん長い曲だったと思います),5~10分程度の小品中心だったのですがよく考えられた選曲になっており,それほど知名度の高い曲はなかったにも関わらず,聴きごたえ十分の充実感が感じられました。

メジューエワさんについては,ジャケット等の写真の印象からすると,柔らかく軽やかな演奏をされるのかなと予想していたのですが,むしろカッチリとした剛性感とクリアさのある演奏に特徴があると思いました。速いパッセージでも乱れる部分は皆無,曖昧な部分や甘い部分はなく,限りなくパーフェクトに近づこうという意志の強さを感じさせる演奏だったと思いました。

ただし,堅苦しくピリピリ張り詰めたような緊張感はなく,あくまでも自然体でバシッと決めてくれる,気持ちの良さがありました。演奏する時の雰囲気は常に平静で,全体に優雅なオーラも持っています。左手が空いている時,指揮をするような感じで手を動かすのが「癖」のようでしたが,音楽と奏者とがしっかり一体化しているような集中度の高さを感じました。

メジューエワさんについてはジャケットの顔写真でのしっかりとしたまなざしが印象的ですが,そのイメージどおり,「この方に任せておけば間違いない」と感じさせる安定感があると思いました。

今回演奏曲は,次のとおりでした。
モーツァルト/幻想曲ニ短調,K.397
モーツァルト/ピアノ・ソナタへ長調,K.280
メンデルスゾーン/無言歌(6曲)
ショパン/2つのノクターン, op.27
ショパン/スケルツォ第2番,op.31
スクリャービン/左手のための2つの小品, op.9
スクリャービン/2つの詩曲, op.32
スクリャービン/練習曲, op.42から2曲
スクリャービン/焔に向かって, op.72

どの曲も素晴らしかったのですが,特にショパンとスクリャービンを並べた後半が面白かったですね。演奏された曲は,基本的には古い曲→新しい曲の順に並んでいましたが,ショパンとスクリャービンを続けて演奏すると,スクリャービンの曲のムードが「ショパンそっくり」の雰囲気から,だんだんと神秘的になり,最後はメロディ中心の音楽から脱却していく変化を実感できました。

ショパンの曲については,しっかりと強く歌われるメロディが印象的でした。スクリャービンでは,最後に演奏された「焔に向かって」が凄い曲でした。実演で聞くのは初めてでしたが,その狂気に満ちた気分に魅力を感じてしまいました(危険かも?)。ただし,メジューエワさんの演奏は,完全にのめり込んでしまっているのではなく,燃える焔を外から描いているような冷静さがまだ残っていると思いました。その辺が,聞きやすさとなっていた気がしました。

アンコールは3曲も演奏されたのですが,最後にショパンのノクターンop.9-2をスクリャービンの後に改めて聞くと,何とシンプルで清々しい歌なのだろうと,ショパンの良さも再発見できました。

前半に演奏された,モーツアルトとメンデルスゾーンについても,軽やかに流れていく感じの演奏ではなく,それぞれに確固たるメッセージが込められている感じで,聴きごたえがありました。

というわけで...若林工房さんの戦略どおり,「会場限定!本日のライブ音源収録CDを特別価格で先行予約」に飛びついてしまいました。もともと入場無料でしたので,CD特別価格2000円でも安いぐらいです。来年1月に郵送されてくる予定ですが,それを再度聞くのが非常に楽しみです。

さらに...予約者には「非売品」のメジューエワさんの録音をCD-Rプレゼントという,マニアックな特典もありました。今回配布されたプログラムも(恐らく,そのままCDの解説に使う内容だと思います),大変分かりやすい内容でした。

その他,今回の使用ピアノは「1925年製スタインウェイCD135」というヴィンテージ物だという点をアピールするなど,色々な点でお客さんを喜ばせようという工夫がありました。もちろん,終演後メジューエワさんのサイン会もあり参加。

若林工房さんの活動については,今後も注目していきたいと思います。

2019/08/12

おなじみの #ルドヴィート・カンタ さんと #鶴見彩 さんによる #フランス近代絵画と珠玉のラリック展 記念コンサート@ #石川県立美術館 展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。それにしても美術館は避暑にぴったり。カンタさんは連日の大活躍です。

本日は,石川県立美術館で行われている「フランス近代絵画と珠玉のラリック展」に合わせて,「移りゆく時代,挑戦する作曲家」と題して行われた無料コンサートを聞いてきました。演奏は,お馴染みのルドヴィート・カンタさんのチェロと鶴見彩さんのピアノによるデュオでした。

# それにしてもカンタさんは,連日,兼六園周辺で大活躍です。

演奏会のコンセプトは,展覧会の出展内容に合わせ,ドビュッシー,サティ,フォーレなど19世紀から20世紀初頭のフランスの作品が中心でしたが,もう少し幅を広げ,同時代に活躍した瀧廉太郎,成田為三,山田耕筰といった日本人作曲家の作品も取り上げていました。展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。

県立美術館のホールは,ややデッドですが,非常に音がクリアに聞こえますので,室内楽の演奏会にはぴったりです。曲想に応じて,2人の奏者の音の変化の面白さをしっかり楽しむことができました。

ドビュッシー最晩年のチェロ・ソナタには,楽章ごとにちょっとひねったようなキャラクターのある曲です。カンタさんの演奏は,枯れたような味,ユーモアを持った味から伸びやかな気分まで,色々な音を聞かせてくれました。サティの「ジムノペディ第1番」は,空調のよく効いた室内で効く快適音楽という感じでした。鶴見さんのクリアですっきりとした演奏は,猛暑の中の清涼剤になっていました。サティのジュ・トゥ・ヴの方は,チェロとピアノによるデュオで演奏されました。珍しい組み合わせだと思いますが,これが良かったですね。どこか2人の男女が粋な会話をしているようなムードがありました。

そしてお馴染みの日本歌曲,3曲。過去にもカンタさんの演奏で聞いたことがありますが,何というかカンタさんの十八番といっても良いと思います。落ち着きと味わい深さのある,誰もが納得という演奏でした。

最後のコーナーでは,イザイの無伴奏チェロの中の1楽章が暗くじっくり演奏された後(カンタさんは「暗い曲,イザイもそんな人」と言っていましたが,好きな曲なのだと思います),カサドの「愛の言葉」で熱く締めてくれました。どこかラテンの気分があり,夏の気分にもぴったりでした。

アンコールでは,フォーレのシチリアーノが演奏されました。一般的にはフルートのイメージのある曲ですが,チェロで演奏するとよりしっとり感が増す感じです。

それ以外に,テーマから外れる形でシューマンの「アダージョとアレグロ」が演奏されました。これもまた素晴らしい演奏でした。チェロの音は人間の声に近いと言われていますが,まさにそういう演奏で,前半は秘めた思いがしっかりと歌われ,後半ではそれが一気に湧き上がってきました。お二人の息もぴったりでした。

展覧会の方は,既に別の日に観ていたのですが,印象派,エコール・ド・パリなどの絵画作品に加え,ルネ・ラリックによるガラス工芸作品が多数展示されているのが特徴です。それにしても,夏の美術館は,避暑にも最適ですね。石川県立美術館は21美ほど混雑していないのも良いですね。

2019/08/01

#鈴木雅明 オルガン・リサイタル:真夏のバッハ どの季節に聴いてもバッハの音楽の素晴らしさには揺らぎがありません。立派さだけでなく甘美さもあるのがオルガン音楽の魅力だと実感 #石川県立音楽堂

梅雨が明け,連日,金沢でも暑い日が続いています。その中,「真夏のバッハ」と題した鈴木雅明さんによるオルガン・リサイタルが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。真夏といっても,ホールの中は空調が効いていて快適。バッハはどの季節に聴いてもバッハ。ということで,”バッハの権威”による,夏の暑さにも負けない,バッハのオルガン音楽の揺るぎない素晴らしさに浸って来ました。

今回演奏されたのは,タイトルどおりバッハの音楽ばかりでしたが,有名なトッカータとフーガ,小フーガといった曲は入っておらず,鈴木さんが本当に演奏したい曲が選ばれていた印象でした。最後に演奏された,パッサカリアとフーガは,有名な作品ですが,それ以外は,聴いたことのない作品ばかりでした。

今回は,鈴木さんのトークと合わせての演奏会でした。各曲について,しっかりと解説をしていただきましたが,それが全く邪魔にならず,バッハの音楽を聴いた印象だけがしっかりと残ったのがとても良かったと思いました。

プログラムの構成は,複数楽章からなるガッチリした感じの作品とコラール風の作品とがうまく組み合わされていました。個人的には,「プレリュード,トリオとフーガ,BWV.545+529//2」のような,急緩急の構成の作品がいちばんしっくりと来ると思いました。鈴木さんは,ヨーロッパを中心に世界各地のオルガンで演奏されていますが,その土地土地での経験を踏まえた,揺るぎのない自信に満ちた音楽を聴かせてくれました。

輝きのある生命力に溢れたプレリュードとオーケストラ曲を思わせる華麗さのあったフーガの間で,しっとりとトリオが演奏されましたが,この部分での「一人で室内楽」といった感じが絶品だと思いました。どこか甘美な気分を感じました。

後半最初に演奏された,パストラーレBWV.590も初めて聴く作品でしたが,クリスマスの気分にぴったりの気分を持った組曲で,すっかり気に入りました。バグパイプを思わせる楽章に続いて,繊細の愛らしさのある第2楽章,声楽曲のような美しさのあった第3楽章。そして,ブランデンブルク協奏曲第6番の終楽章を思わせるような第4楽章。とても魅力的な作品でした。

ファンタジアというタイトルの曲は2曲演奏されましたが,ドイツの重厚な音楽とは一味違う透明感のある美しさを感じました。特にBWV.562(フーガの部分がないので,全体的に静かな曲でした)の落ち着いた澄んだ響きが特に気に入りました。個人的には...夜,アルコールを飲みながら聴くのに丁度良さそうな曲だと思いました。

コラール作品では,前半,コラール・パルティータというかなり長い作品が演奏されました。鈴木さんの選んだ音は,派手過ぎることはなく,シンプルな美しさがありました。演奏会全体を通じても,音量に圧倒されるような威圧的な感じがなかったのがとても良いと思いました。

さすがにコラール・パルティータについては,昼間の疲れが出て(本日は暑い中,野外で活動していたもので...),少々ウトウトしかけたのですが,後半に演奏されたコラール「おお人よ,汝の罪の大いなるを嘆け」では,一つ一つの音が染みこむように耳に入ってきました。ヴィブラートが掛かったような音が大変魅力的でした。

最後はパッサカリアとフーガで締められました。恐らく,この曲はオルガン・リサイタルの「トリ」の曲の定番だと思います。鈴木さんの演奏は,深々と落ち着いた雰囲気で主題が演奏された後,全く揺らぐことのないテンポで一つ一つの変奏が演奏されて行きました。これが素晴らしかったですね。その揺るぎのなさが,ヒタヒタと終末に近づいていくような迫力を生んでいると思いました。最後の,世界が大きく広がるようなフーガの華麗さも素晴らしいと思いました。

パイプオルガンの演奏会は,ここ何年かは少なかったのですが,昨年ぐらいから少しずつ公演が増えてきていると思います。このことを歓迎したいと思います。夏でも冬でも,季節を問わずに楽しめるバッハのオルガン曲は定番ですが,鈴木さんがトークの中で「フランスのオルガンは少し鼻にかかったような音がする」とおっしゃられるのを聴いて,「フランスのオルガン」の特集(音楽堂のオルガンで表現できるか分からないのですが)も聴いてみたいものだ思いました。

2019/05/25

OEKの #ソンジュン・キム さんと #ダニエリス・ルビナス さんによる「きらめきコンサート:魅惑のチェロ&コントラバス」を #金沢市立安江金箔工芸館 で聞いてきました。この2つの楽器でこんなに多彩で迫力のある音楽を作れるのだなぁと感激。内容の詰まった1時間でした。


本日は全国的に夏のような暑さになっています。金沢も快晴で恐らく30度ぐらいあったのではないかと思います(ただし,それほど湿気は高くないですね)。その中,金沢市立安江金箔工芸館で行われた,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のチェロ奏者,ソンジュン・キムさんとコントラバス奏者,ダニエリス・ルビナスさんの二重奏の演奏会を聞いてきました。

その内容ですが,予想を上回る充実度でした。予定時間の1時間,ぎっしりとチェロとコントラバスの音が詰まった,素晴らしい内容でした。会場は,工芸館の入口入ってすぐ横の多目的展示ホールでした。非常に間近で聞けたこともあり,お二人の素晴らしい音の迫力に包み込まれました。

もともと,チェロとコントラバスのための作品というのはほとんどないので,大半は別の編成からの編曲だったのですが,テレマンなどのバロック時代の作品から,20世紀の音楽まで。各楽器の超絶技巧を聞かせる曲。各楽器の独奏...という感じで多彩な作品が選ばれていました。

キムさんのチェロは,後半の曲に行くほど音の輝きが増し,歌が熱くあふれ出てくるようで,会場の「金箔」のイメージに重なるような「黄金のチェロ」を聞かせてくれました。ルビナスさんのコントラバスは,まず,その音の深さに圧倒されました。ボンとピツィカートを演奏するだけでも多彩なニュアンスがあることが分かりました。

最後にこの編成の曲ではいちばん有名な曲である,ロッシーニのチェロとコントラバスのための二重奏で締められました。ダイナミックな動きやユーモアな気分を交えた,緩急自在の音楽を楽しませてくれました。

本日の演奏を聞いて,この2つの楽器で,こんなに多彩で迫力のある音楽を作れるのだなぁと感激しました。内容のぎっしりと詰まった充実の1時間でした。

2019/03/13

#ファビオ・ルイージ 指揮 #デンマーク国立交響楽団 金沢公演。#横山幸雄さんのピアノによる鮮やかな「皇帝」,見事に構築されたチャイコフスキーの交響曲第5番に感服

本日は,石川県立音楽堂コンサートホールで,この時期恒例の東芝グランドコンサートを聞いてきました。今年登場したオーケストラは,ファビオ・ルイージ指揮のデンマーク国立交響楽団でした。今年の連休に行われる楽都音楽祭は,北欧がテーマの一つですので,それを先取りするような感じもありました。

プログラムは,まず,デンマークのオーケストラの挨拶代わりのような感じで,ニルセンの歌劇「仮面舞踏会」序曲が明快に演奏された後,横山幸雄さんをソリストに迎えて,ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。後半はチャイコフスキーの交響曲第5番が演奏されました。個人的には「これまで実演で聞いたことのない大編成の曲」を聞いてみたかったという思いもありましたが,「必ず楽しめる鉄板プログラム」とも言えます。そして,そのとおりでした。特に後半に演奏された,チャイコフスキーは,ルイージさんの本領発揮が発揮された,立派な建物のように見事に構築された素晴らしい演奏だったと思います。

ベートーヴェンの「皇帝」は,冒頭,オーケストラの予想外に柔らかな音で始まった後,横山さんの鮮やかなピアノの音が入ってきました。横山さんのピアノは,全曲を通じて,高音を美しく聞かせる部分が特に印象的でした。表現の引き出しも多く,自由自在にスマートな演奏を聞かせてくれました。今回,ステージからかなり遠い席で聞いたので,やや音が遠く,ソツがなさ過ぎる感じに聞こえる部分もありましたが,さすが横山さんという演奏だったと思います。

ルイージさんの作る音楽も印象的でした。後半のチャイコフスキーでも同様だったのですが,力づくで暴力的に大きな音を聞かせるようなところはなく,かなり抑制された感じで始まった後,音楽が進むにつれて,どんどん歌が溢れてくるといった感じの音楽になっていました。OEKの演奏で何回も聞いてきた曲ですが,大編成でゆったりと聞くのも良いものだと思いました。

後半のチャイコフスキーは,冒頭の2本のクラリネットの演奏から,暗~い情感が漂っていました。しかも非常に遅いテンポ。その徹底した表現が素晴らしいと思いました。第2楽章冒頭のホルンも憂いに満ちた深い味がありました。楽章の後半になると熱いカンタービレも出てきましたが,しっかりと引き締まっており,すべて「ルイージさんの表現」となっていたのが素晴らしいと思いました。

熟成された味わいのある第3楽章に続く,第4楽章も,どこか威厳の高さを感じさせるような雰囲気で始まりました。主部に入ってからもじっくりとしたテンポで進み,各パートがしっかりと絡み合った密度の高い音楽が続きました。楽章の後半になると,徐々に音楽に解放感が出てきます。コーダの部分は,反対に軽快な感じの行進になりました。それでも浮ついた感じはなく,全曲を振り返ってみると,見事に「暗から明へのドラマ」になっていました。しっかりと設計された聞き応え十分の音楽になっていると同時に,自然に燃えるようなカンタービレも随所にある,大変魅力的な音楽になっていました。

盛大な拍手に応えて演奏されたアンコールが,コンチネンタルタンゴの名曲「ジェラシー」。この曲の作曲家のゲーデは,デンマーク出身ということで,最後もお国もので締められました。どこか古いミュージカル映画の1シーンを見るような暖かみのある演奏でした。

ルイージさんの演奏を聞くのは初めてでしたが,チャイコフスキー以外でも,構築感のある音楽を聞かせてくれるのではと思いました。是非,また聞いてみたい指揮者です。

2019/01/29

石川県立音楽堂室内楽シリーズは,OEKチェロセクション+αによる「チェロ・アンサンブル・スペシャル」。やはり,特にオリジナル作品は聞き応えがあるなぁと思いました

本日は,今年度第4回目の石川県立音楽堂室内楽シリーズとして行われた「チェロ・アンサンブル・スペシャル」を聞いてきました。登場したのは,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のチェロ・セクションの大澤明さん,早川寛さん,ソンジュン・キムさん+名誉団員のルドヴィート・カンタさん。さらに福野桂子さん,佐古健一さんを加えた6人のチェリストでした。グループ名としては,I Cellisti di Kanazawaということになります。「金沢のいいチェリストたち」といったところですね。

数年前,OEKメンバー4人によるアンサンブルを聞いたことはありますが,今回は6名編成ということで,より充実感のある響きを楽しむことができた気がします。6人のうち,カンタさんだけは常に最高音を担当し,それ以外のメンバーは曲によって低音部に移ったり,中音部に移ったり...「席替え」をしていました。

前半はグリーグの「ホルベアの時代から」,ヨハン・シュトラウスの「こうもり」序曲,ビゼーの「カルメン幻想曲」ということで,もともとはチェロ・アンサンブル用ではない曲が演奏されました。曲自体,親しみやすい名曲ばかりだったこともあり,チェロだけでどれだけにオリジナルに迫れるかという面白さを感じました。もともとチェロ用でない曲でない分,「大変そう」という部分もありましたが,改めて,チェロという楽器の広い音域と表現力の多彩さを実感できました。

曲の充実感としては,もともとチェロ・アンサンブルのための曲だった,後半の3曲の方があったと思いました。バンディング作曲の「ベートーヴェンの主題による6本のチェロのためのフーガ」は,ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番の冒頭部の主題を基にしたフーガで,じっくりと音が組み合いながら進んでいきました。最後の輝かしさも印象的でした。

ポッパーのレクイエムは,それほど暗い作品ではなく,「アヴェ・マリア」といった趣きのある癒やし系の気分が溢れていました。染み渡るような充実感がありました。

最後に演奏された,ヴィラ=ローボスのブラジル風バッハ第1番は,特に聞き応えがありました。ラテン的なリズムや気分を感じさせつつ,ストレートに曲の美しさが伝わってくる演奏でした。ところどころ,ユニゾンのような感じで美しい歌が聞こえてくるのが新鮮でした。最後の楽章はフーガでしたが,どこか軽妙で粋な雰囲気もあり,不思議な壮麗さの中で締められました。

アンコールでは,「本家」バッハのG線上のアリアが演奏されました。ヴィラ=ローボスとの対比がとても面白い,美しい演奏でした。

恐らく,オーケストラのパートの中で,同一楽器だけでオーケストラ的な響きを作ることができるのはチェロ・パートだけだと思います。その面白さと充実感を実感できた公演でした。

2018/12/27

今年最後の「演奏会通い」は,太田弦指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演。チェイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたこだわりのプログラムを楽しませてくれました。

今年最後の「演奏会通い」は,金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演でした。今回は,金大フィル初登場となる,太田弦さんの指揮で,チャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたプログラムが演奏されました。この曲が金沢で演奏されるのは,私の記憶にある限りでは初めてのことです。今回は,この曲と太田弦さんの指揮ぶりを楽しみに聞きに行くことにしました。

最初に演奏されたのは,シューベルトの「ロザムンデ」序曲でした。ゆっくりとした序奏の後,軽快なリズムに乗って,美しいメロディが次々出てくる曲で,個人的にとても好きな曲の一つです。太田さんはとても落ち着いた指揮ぶりで,この魅力的な作品を,すっきりと聞かせてくれました。

次に演奏されたのは,スメタナの連作交響詩「わが祖国」の中の第3曲「シャールカ」でした。「わが祖国」といえば,「モルダウ」が定番中の定番ですが,それを敢えて外すあたり,今回のプログラミングは,「一捻りあるなぁ」といったところです。この曲の演奏ですが,まず冒頭の一撃が大変鮮やかでした。非常に集中力の高い音で,一気にボヘミアの伝説に出てくる「復讐を誓った乙女」の激しい世界に引き込んでくれました。このドラマティックな雰囲気に続いて,行進曲調になったり,クラリネットの意味深なソロが出てきたり,次々と場面が変わって行きます。

太田さんの指揮は,要所要所をビシッと引き締めるメリハリの効いたもので,各部分が鮮やかに描き分けられていました。曲の最後の部分は,ホルンの不気味な信号に続いて,一気に戦闘開始という感じになり,爽快さの漂う雰囲気で締められました。実演では聞く機会はそれほど多くない曲ですが,楽しめる曲だなぁと思いました。

後半は,チャイコフスキーの交響曲第3番1曲だけでした。全体で45分ぐらいかかる大曲です。チャイコフスキーの交響曲の中では,5楽章形式であること,長調である点で,一味違った作品となっています。「ポーランド」というニックネームは,最終楽章がポロネーズになっている,という以上の意味はないようです。

第1楽章と第5楽章が堂々とした交響曲的楽章。その間に舞曲的な楽章と緩徐楽章が3つ入る構成の作品です。頻繁に演奏される後期3大交響曲に比べると,緊密感の点ではやや薄い気はしましたが,チャイコフスキーお得意のバレエ音楽を思わせるような,親しみやすさや鮮やかさのある作品だと感じました。

第1楽章,ほの暗い序奏に続き,折り目正しく進む主部に入っていきます。金大フィルの演奏は,所々でアラの見える部分はありましたが,前半の演奏以上にスケールの大きな演奏を聞かせてくれました。中間の3つの楽章は,管楽器がソリスティックに活躍する部分も多く,それぞれ楽しませてくれました。特に,軽快だけれども,とても難しそうな音の動きの続く第4楽章は,どこかメンデルスゾーンの曲の雰囲気があり面白いなと感じました。

第5楽章は,最初に出てくるテーマの颯爽とした雰囲気が良かったですね。その後,フーガ風になった後,最後は華やかに盛り上がります。太田さんの指揮ぶりからは,落ち着いた冷静さを感じました。熱狂的に聞かせるというよりは,すっきりと整理された音楽が,くっきりと盛り上がってくる語り口の上手さのようなものを感じました。

チャイコフスキーの管弦楽曲の最後の部分については,交響曲第4番に代表されるように,何回もジャンジャンジャンジャン...と連打されるパターンが多いのですが,この第3番はその中でも特に連打回数が多い曲なのでは?と思いました。ティンパニの強打がワンランク上がる中,気合いのこもった音が10回ぐらい(多分)続きました。それでもしつこさよりは,爽やかさを感じさせてくれるのが,学生オーケストラの良さだと思います。

演奏会の方は,アンコールなしでお開き。こちらも方もすっきりとしていました。金大フィルや石川県学生オーケストラの演奏会では,考えてみると,ロシアや北欧方面の交響曲が演奏される機会が多いのですが,今後もこの路線で色々な交響曲を取り上げていって欲しいものです。期待しています。

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