OEKのCD

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コンサート(OEK以外)

2020/02/24

牛田智大ピアノリサイタル@北國新聞赤羽ホール。バッハとショパンの聞き応えのある曲の並ぶ充実感満点のプログラム。磨き抜かれた音,考え抜かれた構成で,どの曲も非常に洗練された音楽になっていました。

本日は北國新聞赤羽ホールで行われた,牛田智大さんのピアノリサイタルを聞いてきました。牛田さんは,12歳でデビューして話題を集めましたが,2018年に浜松国際ピアノコンクールで2位を受賞してからは,さらにスケールの大きなピアニストとして活躍の場を広げています。「聞き逃せないピアニスト」ということで会場はほぼ満席でした。

今回のプログラムは,バッハのイタリア協奏曲で始まった後,ショパンの曲がずらっと並び,最後は舟歌で締めるというプログラムでした。東京オペラシティ風にいうと,B&Cプログラムといったところでしょうか。牛田さんのトークによると,バッハとショパンには共通する部分が多く,2人とも憧れを持っていた「イタリア風の曲」を最初と最後に置いたとのことでした。

ショパンの曲では,前半にソナタ第2番が演奏されたのに加え,英雄ポロネーズ,幻想曲,バラード第4番,舟歌など,10分前後の長さのある中規模の充実した曲が次々と登場。非常に聞き応えのあるプログラムになっていました。

牛田さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが,本当に素晴らしいピアニストだなぁと感嘆しました。牛田さんはまだ20歳ぐらいのはずですが,曲のキャラクターをしっかりと把握した上で,磨き抜かれた音,考え抜かれた構成で,どの曲についても非常に洗練された音楽を聞かせてくれました。

どの曲も大変鮮やかに演奏されていましたが,慌てるような部分は皆無。バッハのイタリア協奏曲など,どちらかというとゆったりと余裕を持って演奏し,温かみのあるピアノの音の美しさをしっかりと聞かせてくれました。

牛田さんのピアノの音ですが,ピアノの弦の音がしっかり響いているのが分かるような美しさがありました。聞いていて牛田さんの世界にぐっと引き込まれていきました。しかも,曲想に応じて,多彩な音を聞かせてくれました。どの部分についても,しっかり自分で選び取った音を自然な流れで聞かせてくれました。

ピアノソナタ第2番をはじめ,規模の大きな曲では堂々としたスケール感もありました。さらには,どの曲についても,お客さんに媚びるような甘い感じがなく,どこか高貴な感じが漂っているのも素晴らしいと思いました。ついつい「ピアノ王子」といった風に呼んでしまいたくなるのですが...そう呼ばせないような,芯の強さのようなものも感じました。

牛田さん自身,「今日演奏した曲は,一生掛けて引き続ける曲ばかり」と語っていましたが,これからまた違った形で成長をしていうのではないかと思います。王子を超えて,王道を行くピアニストに成長していって欲しいと思いました。

2020/02/05

音楽堂カルチャーナビ 三毛猫ホームズの好きな曲は?クラシック音楽好きのベストセラー作家,赤川次郎さんから,池辺晋一郎さんが色々と興味深いお話を引き出してくれました。出待ちをしてサインもいただいてしまいました

本日は,石川県立音楽堂交流ホールで行われた「音楽堂カルチャーナビ」の2019年度第4回を聞いてきました。ゲストは作家の赤川次郎さん,進行役はお馴染みの池辺晋一郎さんでした。

私にとって,赤川さんは「大変多作で,息長く活躍されている,現代を代表するベストセラー作家の代名詞」というイメージです。クラシック音楽の大ファンということで,「有名人に会ってみたい」という野次馬的精神に「どういう音楽が好きなのだろう」という好奇心を加えて,参加してきました。

赤川さんと池辺さんは旧知の仲ということで,少々硬い雰囲気のあった赤川さんから池辺さんが色々な観点から面白い言葉を引き出すという感じで進んでいきました。赤川さんは,作家になりたくて作家になったのではなく,文章を書きたくてたまらなかったので,何でも仕事を引き受けているうちに,作家としてやっていけるようになった,と言ったことを語っていました。赤川さんの淡々とした雰囲気からも,ベストセラーを書いて有名になってやろう,といった野心のようなものは感じられず,本当に文章や物語を作るのが好きな方なのだなぁと思いました。推理小説を書く場合も特に綿密な構想を練って書き始めるわけではなく(さすがに登場人物リストは作っているとのこと),「最後に辻褄をあわせるだけ」といったことを語っていました。なんというか,作家としての天性の資質を持った方なのだなぁとまじめで物静かな雰囲気から自然に伝わってきました。

クラシック音楽については,作家になってLPレコードを買う余裕ができてから特に好きになったとのことでした。メロディが美しい,ドヴォルザークやチャイコフスキーなどがお好きとのことで,本日はドヴォルザークのユモレスク(田島睦子さんのピアノ独奏),ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」の第1楽章(坂口昌優さんのヴァイオリン等による弦楽四重奏)が演奏されました。改めて,両曲とも美しいメロディが湧き出てくるような作品だと思いました。

その他,色々と面白い話題が出てきましたが,最後に,これから書いてみたいものとして,「現代は若い人にとって生きづらい時代。若い人たちに希望を持ってもらえるような作品を書きたい」と語っていたことが特に印象的でした。赤川さんは,若い頃から,社会問題についての姿勢は変化していない,とも語っていました。将来を担う若者のことを第1に考えてながら,淡々とブレずに活動されているすごい作家だなぁと改めて思いました。

これを機会に,池辺さんが橋渡しとなって,OEKとのつながりが出来てくれると面白そうと思いました。超有名作家のお話を間近で聞くことができた,大変有意義な90分でした。

PS.終了後,しばらく待っていると,赤川さんが出てこられたので,念のため持参していた「三毛猫ホームズの狂死曲」にサインをいただきました。これは家宝にしておきたいと思います。

2020/01/29

冨田一樹オルガン・リサイタル「真冬のバッハ」バッハの多彩なオルガン曲のキャラクターを鮮やかに弾き分けた素晴らしい演奏。トークも分かりやすく,大満足の公演でした。

本日は,「真冬のバッハ」と題された,冨田一樹さんのオルガン・リサイタルを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。冨田さんのオルガン・リサイタルが音楽堂で行われるのは2回目ですが,前回以上に楽しめる演奏会になっていたと感じました。演奏された曲はタイトルどおり,バッハの曲が中心でしたが,トッカータとフーガ ニ短調,小フーガト短調という有名曲を交えながら,演奏会の最初と最後に,聞き応え十分の内容と構成を持つ,前奏曲とフーガを配置するという,万全のプログラムという感じでした。

特に最後に演奏された,前奏曲とフーガホ短調BWV.548でのクライマックスに向けてのスケール感満点の盛り上がりが見事でした。バッハに圧倒された,という感じの演奏でした。その他の曲についても,それぞれの曲の持つキャラクターを最大限に活かすような,演奏ばかりでした。

トッカータとフーガ ニ短調では,CDなどで聞き慣れている演奏よりは,即興的な要素が多く入っているようで,自由奔放なエネルギーの動きを感じることができました。中間部では,映画「ファンタジア」の1シーンを思い出すような,千変万化の色合いの変化を実感しました。演奏後のサイン会の時に,この曲の演奏について尋ねてみたのですが,「楽譜は同じだが,トッカータという曲の性格上(演奏者の裁量の部分が多い)」といったことをおっしゃられていました。なるほど,と思いました。

コラールなども数曲演奏されましたが,こちらでは,息の長いメロディをヴィブラートたっぷりの甘い感じの音でじっくり聞かせてくれました。こちらもまた,各曲の性格の核心を突くような演奏だと思いました。

その他,バッハに影響を与えた,パッヘルベル,ベーム,ブクステフーデの曲も加えたり,バッハがアレンジした曲(マルチェッロのオーボエ協奏曲の第2楽章)やアレンジされたバッハの曲(グノーのアヴェ・マリア)を加えたり,プログラムにアクセントが加えられていました。

冨田さんのトークも大変流暢で分かりやすく,一見取っ付きにくいところのあるオルガン音楽を大変親しみやすく楽しませてくれました。お客さんの反応も素晴らしく,大満足の公演になっていたと思いました。冨田さんは,「大きなパイプオルガン」を演奏できる機会は少ない,と語っていましたが,是非,今回のような感じの演奏会の続編を期待したいと思います。今年の金沢は暖冬なので,「真冬?のバッハ」という感じでありましたが,今後,「秋のバッハ」そして「春のバッハ(「春の小川」ですね)」にも期待したいと思います。

終演後の冨田さんのサイン会も大盛況でした(冨田さんのセールストークがよく効いていたと思います)。この際,石川県立音楽堂コンサートホールのパイプオルガンを使ったバッハのレコーディングにも期待したいと思います。

2020/01/18

山下一史さん指揮の第80回金大フィル定期演奏会は充実のロシア・プログラム。メインのラフマニノフの交響曲第2番を聞きながら若者たちの前途に広がる明るい未来のようなものを感じました。

本日は金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聞いてきました。確か昨年は年末に行われたと思いますが,今年は以前と同じ「センター試験の日」に戻りました。この定期公演ですが,今年で80回目です。この回数も考えてみると凄いですね。年1回行っているはずなので,金沢大学の創設の頃からずっと続いている伝統のイベントということになります。

その記念すべき回の指揮者は,OEKでもお馴染みの山下一史さんでした。金大フィルとのつながりも30年近くになるのではないかと思います。そして演奏された曲は,オール・ロシア(ソ連)プログラム。メインとしてラフマニノフの交響曲第2番,前半はグラズノフの祝典序曲とハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」組曲の抜粋が演奏されました。ここ数年,金大フィルは,ロシア音楽をよく演奏している気がしますが,その総決算といったところでしょうか。

やはり最後に演奏された,ラフマニノフの交響曲第2番の演奏が大変聞き応えがありました。55分近くかかる大曲ですが,全く長さを感じさせない,前向きなエネルギーを感じさせる演奏でした。山下一史さんは,常にエネルギッシュな指揮をされる印象があったのですが,曲全体の設計が素晴らしく,冷静に各楽章を構築しているように感じました。そこに若い大学生たちの演奏が加わり,各楽章の聞かせどころでは,自然に熱気を帯びた盛り上がりがありました。

第1楽章の最初の方で,木管楽器の和音がパーンとバランス良くくっきりと登場したのを聞いて,「素晴らしい演奏になりそう」と感じ,そのとおりになりました。随所に出てくる,ラフマニノフ節といってもよい弦楽合奏だけでなく,管楽器のソロもしっかりと決まっており,安心して練り上げられた音楽に浸ることができました。特に第3楽章に出てくる,クラリネットの長いソロはお見事でした。

全曲を通じて,暗く沈み込むような感じではなく,前向きな明るさを感じました。こうやって生きのよい演奏で聞いてみる,最終楽章はタランテラといった感じに聞こえました。若い学生たちの前に広がる未来を祝福するような音楽だったと思いました。

前半に演奏された2曲も楽しめました。グラズノフの祝典序曲は,初期のチャイコフスキーの交響曲に通じるような雰囲気のある明るい親しみやすさのある曲でした。「祝典」という感じはあまりしなかったのですが,とても品良くまとまっていたと思いました。

ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」組曲からの4曲は,最初に演奏された「ワルツ」が,女子フィギュアスケートの浅田真央さんが使ってから一気に有名になった作品です。個人的には,もっと重苦しく憂鬱で退廃的なイメージを持っていたので,少々軽いかなと感じたのですが,曲が進むにつれてノリの良さが出てきた気がします。ビシッと引き締まった,最後の「ギャロップ」は大変鮮やかでした。その前の「ロマンス」での,しっとしとした気だるい気分も魅力的でした。それとトランペットのソロの音が素晴らしいと思いました。

金大フィルの今後の予定として,6月のサマーコンサートでは,チャイコフスキーの「悲愴」と書いてありました。3月のカレッジコンサートにも金大フィルのメンバーが多数参加しますが,ここではショスタコーヴィチの交響曲第5番。ロシア3大作曲家を代表する名曲を立て続けに演奏する感じですね。学業を行いながら,取り組むにはハードな曲ばかりですが,逆に考えると,そういう学生生活を送ることができるのもうらやましいなぁという気もします。是非,これらの公演も聞きにいってみたいと思います。

2019/12/21

今年最後の演奏会通いは金沢市安江金箔工芸館で行われたOEKの首席第2ヴァイオリン奏者,江原千絵さんとピアノの白河俊平さんによる「きらめきコンサート:イタリアに憧れて」。新しさと古さが混ざった絶妙のプログラムを江原さんのトークとともに楽しんできました。

本日は金沢市安江金箔工芸館で行われた,OEK首席第2ヴァイオリン奏者の江原千絵さんとピアノの白河俊平さんによる,「きらめきコンサート:イタリアに憧れて」を聞いて来ました。今年の「演奏会通い」の締めになる見込みです。

金箔工芸館では,入口付近の多目的スペースを使って定期的にミニ演奏会を行っていますが,今回で48回目とのことです。金沢市内には色々な博物館や文芸館があり,金沢蓄音器館などでも定期的に公演を行っていますが,スペース的には金箔工芸館のこのスペースがいちばん行いやすいのではないかと思います。

プログラム(+曲目解説も)は,江原さんが考えたもので,とてもよく考えられたものでした。サブタイトルは,「イタリアに憧れて」でしたが,演奏された3曲は,バロック~古典派的な雰囲気を持つイタリア的な雰囲気のある3曲で,見事に統一感が取れていました。

最初のシュニトケの「古典様式による組曲」だけは,イタリアと一見関係なさそうでしたが,最後に演奏されたストラヴィンスキーの「イタリア組曲」と同じようなアイデアで書かれた曲で,現代の作曲家が過去の作品に,新鮮な光を当てて,蘇らせたような新古典派的な気分がありました。最初のシュニトケは,OEKの小松定期公演・秋で,弦楽合奏版を聞いたばかりでしたので,その点でも,ストラヴィンスキーの「プルチネルラ」と,それをヴァイオリンとピアノ用に編曲して「イタリア組曲」としたパターンと似ているなと思いました。

今回聞いた場所は,かなり前の方だったこともあり,ヴァイオリンとピアノの音を本当に間近で聞くことができました。白川さんのピアノの音は,会場内にたっぷりと染み渡り,江原さんの音は,曲想の変化に合わせて,多彩なニュアンスの変化を楽しませてくれました。シュニトケもストラヴィンスキーも,大半は明るく心地良い響きなのですが,特にシュニトケの方では,小松定期で聞いた時同様,突然不協和音が長く出てきて,音楽の雰囲気が一転するなど,捻りが効いていました。江原さんのヴァイオリンの音には,甘さよりは,引き締まった密度の高さのようなものがあり,これらの曲想にマッチしていると思いました。

この2曲の間に演奏されたのが,タルティーニのヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」でした。江原さんのトークによると,「ヴァイオリニストならば,一度は取り上げてみたいと思う曲」ということで,満を持しての演奏でした。この曲は,純正のバロック~古典派の曲ですが,「夢の中に悪魔が出てきて...」というエピソードがある点で,ロマン派的なアプローチも可能な曲かもしれません。実際,クライスラー版というのもあるようですが,今回の演奏は,センチメンタルな気分にはならず,快活さと壮麗さが交錯するような聴きごたえのある演奏を聞かせてくれました。

最初の楽章は,シチリアーノ風だったのですが,シュニトケの組曲の最初の曲もパストラーレで,少し似た感じだったので,その点でも「連想ゲームのようにつながったプログラムだなぁ」と思いました。

アンコール演奏されたのも,イタリアの作曲家プニャーニによる,ラルゴ・エスプレッシーヴォという甘いデザートのような小品。我が家では,今年はクリスマスケーキを食べる予定はないのですが,クリスマス気分にもぴったりと思いました。

今回は江原さんのトークも歯切れが良く,気持ちよく楽しむことができました。白河さんは,江原さんにとっては,「ほとんど我が子のような感じ」とのことで,これからの活動を応援したいとのことでした。今回の選曲は,「古くて新しいイタリア・プログラム」でしたが,是非また,一捻りあるデュオの続編に期待したいと思います。

2019/11/19

アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック第2回 今回は宮田大さんがゲスト。リラックスした気分の中,チェロの音に酔ってきました。週末だったら...本当に酔いたかったところです。

今晩は,仕事が終わった後,夕食をサッと食べて,石川県立音楽堂で行われた,19:15開始の「アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック(夜クラ)第2回」を聞いてきました。このコンサートのコンセプトどおり,開始時間が15分遅いだけで,結構,ゆったりとした気分になるものです。

今回のアーティストは,チェロの宮田大さん,司会は加羽沢美濃さん,ピアノは,ジュリアン・ジュルネさんでした。演奏された曲は,「夜クラ」らしく,仕事帰りの大人向けの曲にぴったりの,ちょっと粋な感じの曲が並んでいました。カサド,ガーシュイン,ピアソラということで...お酒を飲みながら聞くのにぴったりの,ラテン系+アメリカの音楽が並んでいました。

宮田大さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが(トークによると,宮田さん自信,金沢に来るのは今回が初めてだったそうです),まず,その音が素晴らしいと思いました。あいさつ代わりに演奏されたカサドの「親愛なる言葉」での,明るく,引き締まった音に一気に引きつけられました。チェロの音の密度が高く,その音に浸っているだけで,充実した幸福感のようなものを感じました。

その後,加羽沢さんとのトークになったのですが,実は加羽沢さんは熱烈な宮田さんのファンで,プログラムに書いてなかったカッチーニのアヴェ・マリアが息長く,しっとりと演奏されました。

この日のメインのプログラムは,チェロとピアノ用に編曲されたガーシュインの「パリのアメリカ人」でした。オリジナルのオーケストラ版の沸き立つような雰囲気感じはなかったのですが,小粋で品の良い雰囲気が出ていたと思いました。中間部のブルースのような雰囲気が特に素晴らしいと思いました。

加羽沢さんによる,宮田さんに捧げるピアノ曲が演奏された後(どこかドビュッシーの曲を思わせるような,とても魅力的な空気感の漂う作品),最後にピアソラの「ブエノスアイレスの冬」と「ブエノスアイレスの秋」が演奏されました。抒情的でほのかに甘い雰囲気が漂う「冬」と,野性味や躍動感が溢れる「秋」。そのコントラストが面白いと思いました。

アンコールでは,加羽沢さんと宮田さんのデュオでポンセの「エストレリータ」が演奏されました。オリジナルはヴァイオリン用の曲ですが,チェロで演奏すると...夜の星という感じになりますね。このコンサートにぴったりの(アルコールを飲みたくなるような)気分を残しつつ,演奏会を締めてくれました。

終演後,宮田大さんとジュリアン・ジュルネさんのサイン会が行われましたが,コンサートの魅力に寄ったお客さんで大盛況でした。まだ火曜日ということで,真っすぐに家に戻ったのですが,とてもリラックスした気分にさせる演奏会でした。宮田さんのチェロは,また是非実演で聞いてみたいと思います。

2019/11/13

洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景。渡邊荀之助ファミリーとコンスタンチン・リフシッツさんを中心とした,アートの素晴らしさを讃えるような「展覧会の絵」。石川県立音楽堂邦楽ホールの機能を使いまくっていました。

今晩は,「洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景」という石川県立音楽堂ならではの演奏会(というよりはパフォーマンスといったところでしょうか)が行われたので聞いてきました。石川県立音楽堂には,洋楽用,邦楽用の2つのホールがありますが,その2つの要素をコラボさせようという試みです。同様のコンセプトの演奏会は,ホールの開館以来,毎年のように行われて来ましたが,今回の「能」と「ピアノ」を中心としたコラボレーションは,特に素晴らしい内容だったと思います。

演奏会の構成は,謡と囃子による居囃子「松風」,ピアノ独奏によるヤナーチェクの「草かげの小径にて」第2集,能舞とピアノのコラボによるバッハのパルティータ第6番のサラバンド。そして,能舞,モダンバレエ,ピアノ,笛によるムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」全曲というものでした。

最初の居囃子からステージの照明効果が素晴らしく,非常にドラマティックな雰囲気が出ていました。逆に言うと正統的な邦楽の世界とは別世界になっていたのですが,新しい切り口で邦楽を聞かせようという今回の演奏会のコンセプトにはぴったりでした。

その後の曲については,コンスタンチン・リフシッツさんのピアノと渡邊荀之助ファミリーの能舞が中心となっていました。何と言っても,後半に演奏された「展覧会の絵」が素晴らしかったですね。渡邊荀之助さん,茂人さん,さくらさんの親子孫3代に川瀬隆士さんが加わった4人による舞が実に華やかでした。そこに,中村香耶さんのモダン・バレエが絡み,和洋が渾然一体となって,芸術を賛美するようなパフォーマンスとなっていました。

リフシッツさんのピアノは,冒頭のプロムナードから大変堂々とした歩みでスタート。私がこれまで聞いたこの曲の演奏でも特に遅いテンポでしたが,その中に精緻な表現から豪快な表現まで,多彩な音楽が詰まっていました。「バーバヤガーの小屋」の前の「カタコンベ」の部分では,意表を突いて謡も加わり,死者の霊を弔うような,何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていました。

最後の「キエフの大門」は,出演者総出演の壮麗な「大団円」という感じでした。その点では,本来の能とは全く違う,能のキャラクターを活かした総合芸術といった趣きでしたが,その辺に他では見たことのないオリジナリティを感じました。

邦楽ホールのステージは,色々な部分が,「上がったり,下がったり」させることができるのですが,それを駆使して,次は誰がどこから出てくるのだろう,というわくわくとした気分にさせてくれました。邦楽ホールでしか実現できない,金沢ならではのパフォーマンスだったと思います。

この「華やかなステージ」と対照的だったのが,バッハのサラバンドのステージでした。渡邊荀之助さんは出家した尼さんのような面+衣装で登場。リフシッツさんの演奏する,悲しみと甘美さに満たされたようなピアノ演奏の雰囲気そのままの舞を見せてくれました。
以上以外にも,リフシッツさんの独奏でヤナーチェクのピアノ曲が演奏されました。どこかジャズのピアノ曲を聞くような自在さが感じられると同時に,精緻で多様なタッチの素晴らしさを堪能できる演奏でした。

邦楽ホールの機能を使い尽くしたような,工夫に溢れたパフォーマンスに触れながら,石川県立音楽堂の素晴らしさも実感できた演奏会でした。

2019/11/02

今週末も富山に出かけ,岡田博美ピアノ・リサイタルを聞いてきました。平静かつ完成度の高い,凄い演奏の連続に感動しました。

先週の金曜日に続いて,仕事が終わった後,車で富山市まで出かけ,ピアニスト,岡田博美さんのリサイタルを聞いてきました。岡田さんについては,1980年代前半,日本音楽コンクールで1位になった頃から注目をしていたピアニストですが,金沢ではその演奏を聞く機会はありませんでした。先週同様,富山市で岡田さんのリサイタルのチラシをたまたま見つけたのをきっかけに,「これは行かねば」と思い,聞いてきました。ちなみに,岡田さんは富山県出身。「そういえば,そうだったな」と思い出しました。

今回,岡田さんの演奏を初めて聞いて,その凄さに感嘆しました。岡田さんはステージ上での動作は非常にさり気なく,ピアノに向かうとすぐに演奏をはじめ,表情を変えることも,大きな身振りで身体を動かすこともありません。常に平常心・自然体で演奏する中から,前向きな音楽が広がって来ました。

岡田さんのピアノの音には,常にバランスの良い暖かみと,弱音でもしっかりと聞こえる明確さがありました。ピアノの音の鳴り方も素晴らしく,大きな身振りはないのに,曲のクライマックスでは,どの曲でも力と余裕のある音に包まれました。驚くほど完成度の高い演奏の連続に感動しました。

前半演奏されたのは,ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4番とブラームスのパガニーニ変奏曲でした。岡田さんの演奏で聞くと,どの曲でも曲の姿がストレートに伝わってくるのですが,特にソナタ形式の楽章を持つ作品については,ステージ上に彫刻が立っているような,存在感を感じさせてくれました。

ブラームスのパガニーニ変奏曲は,特に技巧的な作品でしたが,岡田さんは,この曲でも多彩な技巧と音色を平然と聞かせてくれました。非常に鮮やか,かつ,力強い演奏で,この曲の持つ迫力を,ハッタリなしで,ストレートに伝えてくれる素晴らしい演奏でした。

後半の最初は,三善晃のアン・ヴェールという作品でした。今回のプログラムの中では唯一の現代曲でしたが,他の曲同様,曲の魅力がストレートに伝わってきました。決して親しみやすい雰囲気の作品ではなかったのですが,岡田さんのピアノの音の明快さ,透明感。演奏全体に漂う,ピリッと締まった雰囲気などが相俟って,物語性のようなものを感じました。

最後にショパンのピアノソナタ第2番が演奏されました。前半のベートーヴェンやブラームスに比べると,ロマン派の曲らしい感情の揺れのようなものが伝わって来たのですが,甘いムードに溺れるような部分はなく,前半同様のガッチリとした構築感を感じました。

この曲で特に印象的だったのは,後半の2つの楽章でした。有名な葬送行進曲については,その和音の響きが美しく,暗く落ち込むような感じでなはく,弔いの鐘が美しく響いているように感じました。中間部のデリケートな歌も素晴らしいと思いました。

この楽章の後に続く第4楽章は,メロディが全然ない,非常に不思議な楽章なのですが,今回の演奏は,寒々とした雰囲気というよりは,繊細で軽やかなヴェールに会場全体が覆われたような独特の美しさに覆われました。曲の最後の和音も非常に立派な響きで,満ち足りた雰囲気をもった「葬送」のような印象を持ちました。

上述のとおり,どの曲についても,曲の魅力がストレートに伝わって来ました。この日,会場では,岡田さんがレコーディングした沢山のCDを販売していましたが,音楽にストレートに向き合う岡田さんのレパートリーの広さを改めて実感しました。岡田さんが富山で演奏会を行うのは9年ぶりとのことですが,「1回も聞き逃せない」ピアニストではと思いました。機会があれば,また聞きに行きたいと思います。

2019/10/25

とやま室内楽フェスティバル2019 スペシャルコンサート。”ほぼ東京カルテット”+練木繁夫+毛利伯郎でシューマンのピアノ五重奏曲。豊かな音楽に感激。レジェンドの皆さんからサインもいただいてしまいました。若手奏者たちの演奏も素晴らしいものでした。

本日は仕事が終わった後,北陸自動車道で富山市まで行き,とやま室内楽フェスティバル2019のスペシャルコンサートを聞いてきました。9月上旬に富山市に行った時に,このコンサートのことを知ったのですが,原田幸一郎,池田菊衛,磯村和英という元東京クヮルテットのメンバー3人+チェロの毛利伯郎さん,ピアノの練木繁夫さんという,いわば,室内楽のレジェンドが揃って,シューマンのピアノ五重奏曲を演奏するということで,これは聞かねばなるまいと思い出かけてきました。

その演奏ですが...期待をはるかに上回る,素晴らしいものでした。冒頭からどっしりと重厚。枯れた雰囲気もあるけれども,音楽が大きく息づいていているような豊かさを感じさせる部分が随所にありました。テンポはゆっくり目でしたが,音楽の裏には常に熱い情熱があり,レジェンドたちの心意気が感じられました。

前半は,レジェンドたちから指導を受けている,若手奏者による室内楽曲が3曲(いずれも抜粋)演奏されました。こちらも素晴らしい演奏の連続でした。今回の会場の富山市民プラザ アンサンブルホールに来たのは初めてでしたが,その名のとおり,室内楽の「アンサンブル」にぴったりのホールで,各楽器が音が非常によく聞こえる一方,天井が高いこともあり,適度な残響もあり音楽が伸びやかに聞こえます。若手奏者たち演奏には,音楽の緻密さと生きの良さが同居しており,集中して楽しむことができました。

特に最初に,クァルテット・インテグラが演奏した,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番の抜粋は,4人が一体となって有機的な音楽を作り上げており,素晴らしいと思いました(全曲を聞いてみたかったところです)。

この「とやま室内楽フェスティバル」は,若手アーティストに対しての教育プログラムも行っているせいか,すべてが無料公演というのが特徴です。今回の公演も,無料というのが信じられないぐらいのレベルの高い演奏でした(さすがに入場整理券が必要でしたが)。

本日は17:30ぐらいに金沢を出発したので,間に合うか微妙なところでしたが,無事開演5分前にホールに到着。高速料金は,金沢森本IC~富山IC片道1260円(軽自動車),それに駐車料金500円(意外に安かったです)ということで,総額約3000円ぐらい掛かったのですが,来年度も同様な感じで聞きに行っても良いかなと思いました。

さらに,「何とかサインをもらおう」と思い,「出待ち」をして,伝説の元東京カルテットの3人から,うまい具合にサインをいただけました。こちらもまた良い思い出になりました。

2019/10/24

若松みなみ ソンジュン・キム ジヌウ・パク ピアノトリオの夕べ。ピアノ三重奏曲4曲が盛り込まれた,聴きごたえ十分の演奏会でした。

今晩は石川県立音楽堂では,楽都音楽祭「秋の陣」の「声楽の日」コンサートも行われていたのですが...そちらの方は断念し,金沢市アートホールで行われた,OEKのヴァイオリン奏者,若松みなみさん,同じくチェロ奏者のソンジュン・キムさん,そして,ジヌウ・パクさんのピアノによるピアノトリオの夕べの方を聞いてきました。金沢でピアノ三重奏曲をこれだけまとめて聞ける機会は少ないと思い,こちらを選択したのですが,期待以上にボリューム感満点の演奏会となりました。

演奏されたのは,ベートーヴェン,ブラームス,ドビュッシーのピアノ三重奏曲のそれぞれ「第1番」でした(ドビュッシーの曲は,「1番」ではないのですが,これ1曲しか作っていません)。いずれも若い時の作品ですが,今回の3人の演奏にも若々しさがありました。

今回,ゲストのような形で参加したジヌゥ・パクさんのピアノには,速いパッセージになるほど精気が増してくるような鮮やかさがありました。ベートーヴェンの1番(この曲は,作品1の1ということで,「1尽くし」です)は特に若々しい気分のある曲で,特にその演奏が冴え渡っていました。

最後に演奏されたブラームスの1番の方は,ソンジュン・キムさんの朗々とした伸びやかさのあるソロで始まった後,若松みなみさんのヴァイオリンを加えて,気持ちよくぐいぐいと進んで行きました。最終楽章のほの暗い熱さのある演奏が特に印象的でした。

ドビュッシーの曲については,そもそもピアノ三重奏曲があったことを今回初めて知ったのですが,「こんな素直で分かりやすい曲を作っていたのだなぁ」と思わせるほど,親しみやすい作品でした。ヴァイオリンとチェロを中心とした「しあわせ感」たっぷりの響きが,本当に心地よく響いていました。

この3曲とも,25分以上はかかる作品だったのですが,さらにもう1曲,間奏曲のような形で,シューベルトのノットゥルノが演奏されました。この曲は対照的にシューベルト最晩年の作品で,美しく透明感のあるハモリの中に不思議な寂しさが漂っていました。

ピアノ三重奏というスタイルは,室内楽でありながら,ヴァイオリンとチェロがソリスティックに活躍したり,二重奏のように美しくハモったり,各楽器が名人芸を聞かせたり...他の室内楽にはない,華やかさがあると感じました。演奏会の最後で,若松さんは,「ピアノ三重奏曲には名曲が沢山あります。これからもこの3人で演奏していきたい」といったことを語っていました。是非,今後も続けていって欲しいと思います。

ソンジュン・キムさんが最後に「本日は好きな曲を盛り込みすぎたので,アンコールはありません」と語っていましたが,その言葉どおり,充実の4曲を充実の演奏で楽しませてくれました。この3人による,ピアノ三重奏曲シリーズには,今後も期待したいと思います。

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