OEKのCD

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コンサート(OEK以外)

2020/10/25

仙台フィルのヴァイオリン奏者,小川有紀子さんを中心としたハナミズキ室内合奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番を中心とした演奏会@石川県立音楽堂邦楽ホール。お客さんの数がものすごく少なかったのが残念でしたが,ベートーヴェン最晩年の澄み切った境地に浸ることができ,大変贅沢な時間を過ごすことができました。

本日午後は,仙台フィルのヴァイオリン奏者,小川有紀子さんを中心としたハナミズキ室内合奏団による,弦楽四重奏曲を中心とした演奏会を,石川県立音楽堂邦楽ホールで聞いてきました。残念ながら,お客さんの入りは非常に悪く,私が過去経験した中でもこれだけお客さん間の「ディスタンス」が長かったことのは初めてのことです。コロナ禍の影響で十分な広報を行うことが難しかったのだと思います。

しかし,演奏の方は素晴らしく,逆説的に言うと,大変贅沢な気分を味わうことができました。私たちのためだけに演奏してくれている,という感じが強く伝わってきました。

プログラムは前半が,あいさつ代わりのグリーグの抒情小曲集。その後,小川さんのトークを交えて曲が演奏されました。ベートーヴェンの若い時代に掛かれたヴィオラとチェロによる二重奏,ピアソラのヴァイオリン二重奏の作品と続き,最後はピアソラの"Four, for Tango"で締められました。私自身,石川県立音楽堂邦楽ホールに入るのは久しぶりのことだったのですが,各楽器の音がくっきりと聞こえ,音の残響も適度にあり,とても良い音のバランスで楽しむことができました。

ヴァイオリン奏者として,先日のOEK定期でコンサートマスターを務められていた水谷晃さんも参加していたのですが,その時のクライスラー同様,暖かみのある充実感のある音を聞かせてくれました。ベートーヴェンの二重奏では,ヴィオラの村田恵子さんの豊かな音が特に印象的でした。この若い2人を,小川さんとチェロの山本裕康さんがしっかり支えるような前半でした。

前半最後に演奏されたピアソラの曲は初めて聞く曲でしたが,「もしもバルトークの弦楽四重奏曲をピアソラがアレンジしたら」という感じの曲。おなじみの技がしっかり出てきて,スリリングかつ楽しい演奏でした。

後半はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番の全曲が演奏されました。金沢で,ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲が演奏される機会はめったにないので,今回はこの作品を目当てに聞きに行きました。この演奏は,是非,もっと多くの方に聞いていただきたかったですね。「大フーガ」として知られる15分ぐらいの曲を最終楽章(第6楽章)として入れるかどうかが演奏者に任されているようなところのある作品ですが,今回は通常の第6楽章が演奏されました。

全曲を通じて,小川さんのヴァイオリンを中心にベートーヴェンの最晩年の澄み切った境地がすっきりと出ているような演奏でした。第1楽章の最初のユニゾンの音から美しいなぁと思いました。途中の舞曲風の楽章のリラックスしたしなやかさの後の有名な第5楽章のカヴァティーナは,内省的な気分を保ちながら,聴衆の方にしっかりとメッセージが伝わってくるようでした。最終楽章はベートーヴェンの「最後に作った曲」と言われているものです。非常に晴れやかな気分があり,コロナ禍がダラダラと続く,今聞くと「先が見えてきたな」という「希望」を感じさせてくれました。

というわけで,観客が少なかったことも含め,忘れられない演奏会となりました。いつかコロナ禍が明けた後,またベートーヴェンの別の弦楽四重奏曲を同じ場所で聞いてみたいなと思いました。演奏者の皆様ありがとうございました。

2020/10/08

#石川県立音楽堂 #夜のクラシック 第5回のゲストは #鈴木優人さん。本日はチェンバロ奏者としてバッハと武満徹の作品などを演奏。チェンバロの音を聞くと「耳の洗濯」といった感じになりますね。#加羽沢美濃 さん即興のピアノ曲「鈴木さんち」も見事な作品でした。

今晩は石川県立音楽堂コンサートホールで行われた,「アフターセブンコンサート2020 夜のクラシック」第5回を聞いてきました。ゲストは鈴木優人さん,司会は加羽沢美濃さんでした。鈴木さんといえば,チェンバロ奏者,オルガン奏者,指揮者,音楽祭のプロデューサーなど多彩な仕事をされていますが,本日はチェンバロ奏者として登場しました。金沢でチェンバロ独奏の演奏会が行われる機会は少ないので,純粋に「週末の疲れた心身にチェンバロを!」という気分で聞きに行ってきました。

さすがにコンサートホールでチェンバロ1台というのは,広すぎた印象で,私の席(かなり前でしたがサイドの席)からだと,ちょっと音が遠く感じられました。それでも,繊細な音の変化や音の歯切れよさはしっかりと感じとることができ,しばらくの間,非日常的な音世界に入ることができました。耳の洗濯という感でした。

演奏された曲はバッハのチェンバロ作品が中心でした。中でもパルティータ第1番の全曲が演奏されたのが嬉しかったですね。この曲は,ディヌ・リパッティのピアノによる大昔の演奏で馴染んでいたのですが,チェンバロで聞くと音の透明感が大変心地よく感じられました。鈴木さんの演奏は,どちらかというと速目のテンポで,柔軟性のある生き生きとした演奏を聴かせてくれました。特に大きな間を取った後始まった,サラバンドの新鮮な空気感が良いなぁと思いました。

最後に武満徹作曲の唯一のチェンバロ曲,「夢見る雨」が演奏されました。現代曲らしく,不協和音も沢山出てくるのですが,その不協和音が刺激的にならず,不思議な色合いとなって感じられました,武満徹の隠れた名作なのでは,と思いました。

最後,アンコールで加羽沢さんのピアノと鈴木さんのチェンバロの二重奏で,バッハの「主よ人の望みの喜びよ」が演奏されました。最初のトークの中で,「ピアノとチェンバロではピッチが違います。チェンバロの方が半音低くなっています」というような話をされていたので,二重奏できるのだろうか?と思ったのですが,その微妙にずれている感じが不思議な立体感を作っていたり,チェンバロの音が装飾的にキラキラ輝く感じに聞こえたり,体験したことのないような味わい深い世界を作っていました。

加羽沢さんと鈴木さんのトークも楽しかったですね。特に印象的だったのは,鈴木さんの自宅には,「チェンバロ3台,ピアノ2台,クラヴィコード3台に加え小型のパイプオルガンもある...」といった凄い話です。これにちなんで,加羽沢さんが「鈴木さんち」というタイトルで即興演奏を披露。繊細な音から大らかな音まで多彩な音が詰まった,美しい作品でした。

来年1月,鈴木さんは今度は指揮者兼オルガン奏者としてOEK定期公演に登場します。この公演のPRもされていましたが,ますます楽しみになりました。

2020/09/09

朝日新聞プレゼンツ OEKおしゃべりクラシック@石川県立音楽堂交流ホール。今回は若松みなみさんのヴァイオリンと井口愛弓さんのピアノ。ヴァイオリンに加えて,若松さんのおしゃべりが冴えまくっていました。

本日は休暇を取って,朝日新聞プレゼンツ OEKおしゃべりクラシックの11:00からの部を石川県立音楽堂交流ホールで聞いて来ました。コロナ禍後初めてということで,「交流ホールなのに指定席」で行われました。出演されたのは,OEKの第2ヴァイオリン奏者若松みなみさんとピアニストの井口愛弓さんでした。

プログラムに書かれていた曲は3曲だけ。ベートヴェンのヴァイオリン・ソナタ「春」も第1楽章だけだったので,時間が余るのでは?と思ったのですが...その心配はなく若松さんが沢山おしゃべりをしてくれました。この雰囲気は交流ホールならではだと思いますが,コロナ自粛期間中のことを中心に,若松さんのキャラクターが大変よく分かるトークでした。

演奏された曲は,上述のベートーヴェンに加えて,モーツァルトのロンド ハ長調K.373。若松さんは明るい感じのするハ長調が大好きと語っていましたが,その言葉どおりの明快な演奏でした。 最後に演奏された,サン=サーンス作曲,イザイ編曲による「ワルツ形式の練習曲による奇想曲」は,コロナ自粛期間中にしっかり練習をされていた曲とのことでした。練習曲というよりは,とても優雅な曲として楽しませてくれました。

最後にベートーヴェンの「春」の3楽章,クライスラーの「美しいロスマリン」がアンコールで演奏され,ちょうど1時間ぐらいで終了しました。

公演の最初に若松さんが「みなさんおはようございます」とあいさつをされていましたが,考えてみると平日午前中の演奏会に行くのは大変珍しいことです。交流ホールの客席の方は例によって,間隔をあけて配置されていましたが,久しぶりにアーティストの方と「身近に交流」できたな,と感じさせてくれるような演奏会でした。

2020/08/24

本日のお昼は石川県立コンサートホールで行われた「ランチタイムコンサート:チェロとピアノの調べ」を聞いてきました。大澤明さんと木米真理恵さんによる,ベートーヴェンのチェロ・ソナタ5番,ピアソラのル・グランタンゴ他の充実のプログラム。コンサートホールでの室内楽にも注目ですね。

本日は休暇を取って,石川県立音楽堂コンサートホールで行われた,OEKのチェロ奏者,大澤明さんと木米真理恵さんのピアノによるランチタイムコンサートを聞いて来ました。

コロナ禍の影響で,クラシック音楽の演奏会の開催についても大きな影響を受けていますが,演奏者自体が密にはならず,発声も伴わない公演については,ほぼ問題ないと言えます。本日の公演も,チェロとピアノによる室内楽を広々としたコンサートホールで行うもので,客席の方も「市松模様」配置でしたので,安心して参加してきました。

今回,聞きに行こうと思ったのは,まず,演奏曲目に引かれたからです。ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第5番とピアソラのル・グラン・タンゴという,いかにも聞き応えのありそうな曲が並んでいました。

最初に演奏されたベートーヴェンの曲は,木米さんによる,明快な美しさのあるピアノで鮮やかに始まった後,大澤さんの大らかな渋さの感じられるチェロが続き,後期のベートーヴェンの深い世界へと導いてくれました。この曲をこれまでじっくり聞いたことはあまりなかったのですが,人生を振り返るようなしみじみとした線の太い歌が続く第2楽章の後,チェロとピアノが一体になったフーガが延々と続くあたり,ピアノ・ソナタの大作,「ハンマークラヴィーア」に通じる世界があると思いました。

2曲目は,大澤さんの独奏(唱)で,ソッリマの「嘆き」が演奏されました。数年前の「ふだん着ティータイムコンサート」で大澤さんの演奏で聞いてインパクトを受けたのですが,コンサートホールで聞くとさらに楽しめた気がしました。チェロがどこかの民族音楽風のシンプルなメロディを演奏する一方,大澤さんが謎めいた雰囲気の歌を歌います。チェロとは全く関係ないメロディなので,合わせずに歌うのは難易度が高いのではないかと思います。その後,曲想が激しくなり,どこかロックを思わせる感じになります。コンサートホールの空間いっぱいに響くのが心地良く感じました。

最後に演奏されたのは,ピアソラのル・グラン・タンゴでした。往年の名チェリスト,ロストロポーヴィチのために書かれた作品ということで,そのエピソードが紹介された後,演奏が始まりました。

ピアソラらしく,純粋に踊るためのタンゴではなく,中間部はかなりセンチメンタルな気分になります。この部分では,木米さんのピアノの怪しくも美しい雰囲気が良いムードを作っていました。両端部分は,ダイナミックなタンゴで,最後はピアノとチェロが一体となって,格好良く締めてくれました。

約1時間の演奏会だったのですが,アンコールも2曲演奏されました。最初の曲は,「くまばちの飛行」を思わせるような高音域の速い動きが延々と続く技を見せる曲,2曲目はバッハのいわゆる「G線上のアリア」でした。「チェロの場合,何線になるのだろう?」と思いながら聞いていました。

というわけで,コンサートホールで行う室内楽公演には,今後も注目したいと思います

2020/02/24

牛田智大ピアノリサイタル@北國新聞赤羽ホール。バッハとショパンの聞き応えのある曲の並ぶ充実感満点のプログラム。磨き抜かれた音,考え抜かれた構成で,どの曲も非常に洗練された音楽になっていました。

本日は北國新聞赤羽ホールで行われた,牛田智大さんのピアノリサイタルを聞いてきました。牛田さんは,12歳でデビューして話題を集めましたが,2018年に浜松国際ピアノコンクールで2位を受賞してからは,さらにスケールの大きなピアニストとして活躍の場を広げています。「聞き逃せないピアニスト」ということで会場はほぼ満席でした。

今回のプログラムは,バッハのイタリア協奏曲で始まった後,ショパンの曲がずらっと並び,最後は舟歌で締めるというプログラムでした。東京オペラシティ風にいうと,B&Cプログラムといったところでしょうか。牛田さんのトークによると,バッハとショパンには共通する部分が多く,2人とも憧れを持っていた「イタリア風の曲」を最初と最後に置いたとのことでした。

ショパンの曲では,前半にソナタ第2番が演奏されたのに加え,英雄ポロネーズ,幻想曲,バラード第4番,舟歌など,10分前後の長さのある中規模の充実した曲が次々と登場。非常に聞き応えのあるプログラムになっていました。

牛田さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが,本当に素晴らしいピアニストだなぁと感嘆しました。牛田さんはまだ20歳ぐらいのはずですが,曲のキャラクターをしっかりと把握した上で,磨き抜かれた音,考え抜かれた構成で,どの曲についても非常に洗練された音楽を聞かせてくれました。

どの曲も大変鮮やかに演奏されていましたが,慌てるような部分は皆無。バッハのイタリア協奏曲など,どちらかというとゆったりと余裕を持って演奏し,温かみのあるピアノの音の美しさをしっかりと聞かせてくれました。

牛田さんのピアノの音ですが,ピアノの弦の音がしっかり響いているのが分かるような美しさがありました。聞いていて牛田さんの世界にぐっと引き込まれていきました。しかも,曲想に応じて,多彩な音を聞かせてくれました。どの部分についても,しっかり自分で選び取った音を自然な流れで聞かせてくれました。

ピアノソナタ第2番をはじめ,規模の大きな曲では堂々としたスケール感もありました。さらには,どの曲についても,お客さんに媚びるような甘い感じがなく,どこか高貴な感じが漂っているのも素晴らしいと思いました。ついつい「ピアノ王子」といった風に呼んでしまいたくなるのですが...そう呼ばせないような,芯の強さのようなものも感じました。

牛田さん自身,「今日演奏した曲は,一生掛けて引き続ける曲ばかり」と語っていましたが,これからまた違った形で成長をしていうのではないかと思います。王子を超えて,王道を行くピアニストに成長していって欲しいと思いました。

2020/02/05

音楽堂カルチャーナビ 三毛猫ホームズの好きな曲は?クラシック音楽好きのベストセラー作家,赤川次郎さんから,池辺晋一郎さんが色々と興味深いお話を引き出してくれました。出待ちをしてサインもいただいてしまいました

本日は,石川県立音楽堂交流ホールで行われた「音楽堂カルチャーナビ」の2019年度第4回を聞いてきました。ゲストは作家の赤川次郎さん,進行役はお馴染みの池辺晋一郎さんでした。

私にとって,赤川さんは「大変多作で,息長く活躍されている,現代を代表するベストセラー作家の代名詞」というイメージです。クラシック音楽の大ファンということで,「有名人に会ってみたい」という野次馬的精神に「どういう音楽が好きなのだろう」という好奇心を加えて,参加してきました。

赤川さんと池辺さんは旧知の仲ということで,少々硬い雰囲気のあった赤川さんから池辺さんが色々な観点から面白い言葉を引き出すという感じで進んでいきました。赤川さんは,作家になりたくて作家になったのではなく,文章を書きたくてたまらなかったので,何でも仕事を引き受けているうちに,作家としてやっていけるようになった,と言ったことを語っていました。赤川さんの淡々とした雰囲気からも,ベストセラーを書いて有名になってやろう,といった野心のようなものは感じられず,本当に文章や物語を作るのが好きな方なのだなぁと思いました。推理小説を書く場合も特に綿密な構想を練って書き始めるわけではなく(さすがに登場人物リストは作っているとのこと),「最後に辻褄をあわせるだけ」といったことを語っていました。なんというか,作家としての天性の資質を持った方なのだなぁとまじめで物静かな雰囲気から自然に伝わってきました。

クラシック音楽については,作家になってLPレコードを買う余裕ができてから特に好きになったとのことでした。メロディが美しい,ドヴォルザークやチャイコフスキーなどがお好きとのことで,本日はドヴォルザークのユモレスク(田島睦子さんのピアノ独奏),ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」の第1楽章(坂口昌優さんのヴァイオリン等による弦楽四重奏)が演奏されました。改めて,両曲とも美しいメロディが湧き出てくるような作品だと思いました。

その他,色々と面白い話題が出てきましたが,最後に,これから書いてみたいものとして,「現代は若い人にとって生きづらい時代。若い人たちに希望を持ってもらえるような作品を書きたい」と語っていたことが特に印象的でした。赤川さんは,若い頃から,社会問題についての姿勢は変化していない,とも語っていました。将来を担う若者のことを第1に考えてながら,淡々とブレずに活動されているすごい作家だなぁと改めて思いました。

これを機会に,池辺さんが橋渡しとなって,OEKとのつながりが出来てくれると面白そうと思いました。超有名作家のお話を間近で聞くことができた,大変有意義な90分でした。

PS.終了後,しばらく待っていると,赤川さんが出てこられたので,念のため持参していた「三毛猫ホームズの狂死曲」にサインをいただきました。これは家宝にしておきたいと思います。

2020/01/29

冨田一樹オルガン・リサイタル「真冬のバッハ」バッハの多彩なオルガン曲のキャラクターを鮮やかに弾き分けた素晴らしい演奏。トークも分かりやすく,大満足の公演でした。

本日は,「真冬のバッハ」と題された,冨田一樹さんのオルガン・リサイタルを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。冨田さんのオルガン・リサイタルが音楽堂で行われるのは2回目ですが,前回以上に楽しめる演奏会になっていたと感じました。演奏された曲はタイトルどおり,バッハの曲が中心でしたが,トッカータとフーガ ニ短調,小フーガト短調という有名曲を交えながら,演奏会の最初と最後に,聞き応え十分の内容と構成を持つ,前奏曲とフーガを配置するという,万全のプログラムという感じでした。

特に最後に演奏された,前奏曲とフーガホ短調BWV.548でのクライマックスに向けてのスケール感満点の盛り上がりが見事でした。バッハに圧倒された,という感じの演奏でした。その他の曲についても,それぞれの曲の持つキャラクターを最大限に活かすような,演奏ばかりでした。

トッカータとフーガ ニ短調では,CDなどで聞き慣れている演奏よりは,即興的な要素が多く入っているようで,自由奔放なエネルギーの動きを感じることができました。中間部では,映画「ファンタジア」の1シーンを思い出すような,千変万化の色合いの変化を実感しました。演奏後のサイン会の時に,この曲の演奏について尋ねてみたのですが,「楽譜は同じだが,トッカータという曲の性格上(演奏者の裁量の部分が多い)」といったことをおっしゃられていました。なるほど,と思いました。

コラールなども数曲演奏されましたが,こちらでは,息の長いメロディをヴィブラートたっぷりの甘い感じの音でじっくり聞かせてくれました。こちらもまた,各曲の性格の核心を突くような演奏だと思いました。

その他,バッハに影響を与えた,パッヘルベル,ベーム,ブクステフーデの曲も加えたり,バッハがアレンジした曲(マルチェッロのオーボエ協奏曲の第2楽章)やアレンジされたバッハの曲(グノーのアヴェ・マリア)を加えたり,プログラムにアクセントが加えられていました。

冨田さんのトークも大変流暢で分かりやすく,一見取っ付きにくいところのあるオルガン音楽を大変親しみやすく楽しませてくれました。お客さんの反応も素晴らしく,大満足の公演になっていたと思いました。冨田さんは,「大きなパイプオルガン」を演奏できる機会は少ない,と語っていましたが,是非,今回のような感じの演奏会の続編を期待したいと思います。今年の金沢は暖冬なので,「真冬?のバッハ」という感じでありましたが,今後,「秋のバッハ」そして「春のバッハ(「春の小川」ですね)」にも期待したいと思います。

終演後の冨田さんのサイン会も大盛況でした(冨田さんのセールストークがよく効いていたと思います)。この際,石川県立音楽堂コンサートホールのパイプオルガンを使ったバッハのレコーディングにも期待したいと思います。

2020/01/18

山下一史さん指揮の第80回金大フィル定期演奏会は充実のロシア・プログラム。メインのラフマニノフの交響曲第2番を聞きながら若者たちの前途に広がる明るい未来のようなものを感じました。

本日は金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聞いてきました。確か昨年は年末に行われたと思いますが,今年は以前と同じ「センター試験の日」に戻りました。この定期公演ですが,今年で80回目です。この回数も考えてみると凄いですね。年1回行っているはずなので,金沢大学の創設の頃からずっと続いている伝統のイベントということになります。

その記念すべき回の指揮者は,OEKでもお馴染みの山下一史さんでした。金大フィルとのつながりも30年近くになるのではないかと思います。そして演奏された曲は,オール・ロシア(ソ連)プログラム。メインとしてラフマニノフの交響曲第2番,前半はグラズノフの祝典序曲とハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」組曲の抜粋が演奏されました。ここ数年,金大フィルは,ロシア音楽をよく演奏している気がしますが,その総決算といったところでしょうか。

やはり最後に演奏された,ラフマニノフの交響曲第2番の演奏が大変聞き応えがありました。55分近くかかる大曲ですが,全く長さを感じさせない,前向きなエネルギーを感じさせる演奏でした。山下一史さんは,常にエネルギッシュな指揮をされる印象があったのですが,曲全体の設計が素晴らしく,冷静に各楽章を構築しているように感じました。そこに若い大学生たちの演奏が加わり,各楽章の聞かせどころでは,自然に熱気を帯びた盛り上がりがありました。

第1楽章の最初の方で,木管楽器の和音がパーンとバランス良くくっきりと登場したのを聞いて,「素晴らしい演奏になりそう」と感じ,そのとおりになりました。随所に出てくる,ラフマニノフ節といってもよい弦楽合奏だけでなく,管楽器のソロもしっかりと決まっており,安心して練り上げられた音楽に浸ることができました。特に第3楽章に出てくる,クラリネットの長いソロはお見事でした。

全曲を通じて,暗く沈み込むような感じではなく,前向きな明るさを感じました。こうやって生きのよい演奏で聞いてみる,最終楽章はタランテラといった感じに聞こえました。若い学生たちの前に広がる未来を祝福するような音楽だったと思いました。

前半に演奏された2曲も楽しめました。グラズノフの祝典序曲は,初期のチャイコフスキーの交響曲に通じるような雰囲気のある明るい親しみやすさのある曲でした。「祝典」という感じはあまりしなかったのですが,とても品良くまとまっていたと思いました。

ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」組曲からの4曲は,最初に演奏された「ワルツ」が,女子フィギュアスケートの浅田真央さんが使ってから一気に有名になった作品です。個人的には,もっと重苦しく憂鬱で退廃的なイメージを持っていたので,少々軽いかなと感じたのですが,曲が進むにつれてノリの良さが出てきた気がします。ビシッと引き締まった,最後の「ギャロップ」は大変鮮やかでした。その前の「ロマンス」での,しっとしとした気だるい気分も魅力的でした。それとトランペットのソロの音が素晴らしいと思いました。

金大フィルの今後の予定として,6月のサマーコンサートでは,チャイコフスキーの「悲愴」と書いてありました。3月のカレッジコンサートにも金大フィルのメンバーが多数参加しますが,ここではショスタコーヴィチの交響曲第5番。ロシア3大作曲家を代表する名曲を立て続けに演奏する感じですね。学業を行いながら,取り組むにはハードな曲ばかりですが,逆に考えると,そういう学生生活を送ることができるのもうらやましいなぁという気もします。是非,これらの公演も聞きにいってみたいと思います。

2019/12/21

今年最後の演奏会通いは金沢市安江金箔工芸館で行われたOEKの首席第2ヴァイオリン奏者,江原千絵さんとピアノの白河俊平さんによる「きらめきコンサート:イタリアに憧れて」。新しさと古さが混ざった絶妙のプログラムを江原さんのトークとともに楽しんできました。

本日は金沢市安江金箔工芸館で行われた,OEK首席第2ヴァイオリン奏者の江原千絵さんとピアノの白河俊平さんによる,「きらめきコンサート:イタリアに憧れて」を聞いて来ました。今年の「演奏会通い」の締めになる見込みです。

金箔工芸館では,入口付近の多目的スペースを使って定期的にミニ演奏会を行っていますが,今回で48回目とのことです。金沢市内には色々な博物館や文芸館があり,金沢蓄音器館などでも定期的に公演を行っていますが,スペース的には金箔工芸館のこのスペースがいちばん行いやすいのではないかと思います。

プログラム(+曲目解説も)は,江原さんが考えたもので,とてもよく考えられたものでした。サブタイトルは,「イタリアに憧れて」でしたが,演奏された3曲は,バロック~古典派的な雰囲気を持つイタリア的な雰囲気のある3曲で,見事に統一感が取れていました。

最初のシュニトケの「古典様式による組曲」だけは,イタリアと一見関係なさそうでしたが,最後に演奏されたストラヴィンスキーの「イタリア組曲」と同じようなアイデアで書かれた曲で,現代の作曲家が過去の作品に,新鮮な光を当てて,蘇らせたような新古典派的な気分がありました。最初のシュニトケは,OEKの小松定期公演・秋で,弦楽合奏版を聞いたばかりでしたので,その点でも,ストラヴィンスキーの「プルチネルラ」と,それをヴァイオリンとピアノ用に編曲して「イタリア組曲」としたパターンと似ているなと思いました。

今回聞いた場所は,かなり前の方だったこともあり,ヴァイオリンとピアノの音を本当に間近で聞くことができました。白川さんのピアノの音は,会場内にたっぷりと染み渡り,江原さんの音は,曲想の変化に合わせて,多彩なニュアンスの変化を楽しませてくれました。シュニトケもストラヴィンスキーも,大半は明るく心地良い響きなのですが,特にシュニトケの方では,小松定期で聞いた時同様,突然不協和音が長く出てきて,音楽の雰囲気が一転するなど,捻りが効いていました。江原さんのヴァイオリンの音には,甘さよりは,引き締まった密度の高さのようなものがあり,これらの曲想にマッチしていると思いました。

この2曲の間に演奏されたのが,タルティーニのヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」でした。江原さんのトークによると,「ヴァイオリニストならば,一度は取り上げてみたいと思う曲」ということで,満を持しての演奏でした。この曲は,純正のバロック~古典派の曲ですが,「夢の中に悪魔が出てきて...」というエピソードがある点で,ロマン派的なアプローチも可能な曲かもしれません。実際,クライスラー版というのもあるようですが,今回の演奏は,センチメンタルな気分にはならず,快活さと壮麗さが交錯するような聴きごたえのある演奏を聞かせてくれました。

最初の楽章は,シチリアーノ風だったのですが,シュニトケの組曲の最初の曲もパストラーレで,少し似た感じだったので,その点でも「連想ゲームのようにつながったプログラムだなぁ」と思いました。

アンコール演奏されたのも,イタリアの作曲家プニャーニによる,ラルゴ・エスプレッシーヴォという甘いデザートのような小品。我が家では,今年はクリスマスケーキを食べる予定はないのですが,クリスマス気分にもぴったりと思いました。

今回は江原さんのトークも歯切れが良く,気持ちよく楽しむことができました。白河さんは,江原さんにとっては,「ほとんど我が子のような感じ」とのことで,これからの活動を応援したいとのことでした。今回の選曲は,「古くて新しいイタリア・プログラム」でしたが,是非また,一捻りあるデュオの続編に期待したいと思います。

2019/11/19

アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック第2回 今回は宮田大さんがゲスト。リラックスした気分の中,チェロの音に酔ってきました。週末だったら...本当に酔いたかったところです。

今晩は,仕事が終わった後,夕食をサッと食べて,石川県立音楽堂で行われた,19:15開始の「アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック(夜クラ)第2回」を聞いてきました。このコンサートのコンセプトどおり,開始時間が15分遅いだけで,結構,ゆったりとした気分になるものです。

今回のアーティストは,チェロの宮田大さん,司会は加羽沢美濃さん,ピアノは,ジュリアン・ジュルネさんでした。演奏された曲は,「夜クラ」らしく,仕事帰りの大人向けの曲にぴったりの,ちょっと粋な感じの曲が並んでいました。カサド,ガーシュイン,ピアソラということで...お酒を飲みながら聞くのにぴったりの,ラテン系+アメリカの音楽が並んでいました。

宮田大さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが(トークによると,宮田さん自信,金沢に来るのは今回が初めてだったそうです),まず,その音が素晴らしいと思いました。あいさつ代わりに演奏されたカサドの「親愛なる言葉」での,明るく,引き締まった音に一気に引きつけられました。チェロの音の密度が高く,その音に浸っているだけで,充実した幸福感のようなものを感じました。

その後,加羽沢さんとのトークになったのですが,実は加羽沢さんは熱烈な宮田さんのファンで,プログラムに書いてなかったカッチーニのアヴェ・マリアが息長く,しっとりと演奏されました。

この日のメインのプログラムは,チェロとピアノ用に編曲されたガーシュインの「パリのアメリカ人」でした。オリジナルのオーケストラ版の沸き立つような雰囲気感じはなかったのですが,小粋で品の良い雰囲気が出ていたと思いました。中間部のブルースのような雰囲気が特に素晴らしいと思いました。

加羽沢さんによる,宮田さんに捧げるピアノ曲が演奏された後(どこかドビュッシーの曲を思わせるような,とても魅力的な空気感の漂う作品),最後にピアソラの「ブエノスアイレスの冬」と「ブエノスアイレスの秋」が演奏されました。抒情的でほのかに甘い雰囲気が漂う「冬」と,野性味や躍動感が溢れる「秋」。そのコントラストが面白いと思いました。

アンコールでは,加羽沢さんと宮田さんのデュオでポンセの「エストレリータ」が演奏されました。オリジナルはヴァイオリン用の曲ですが,チェロで演奏すると...夜の星という感じになりますね。このコンサートにぴったりの(アルコールを飲みたくなるような)気分を残しつつ,演奏会を締めてくれました。

終演後,宮田大さんとジュリアン・ジュルネさんのサイン会が行われましたが,コンサートの魅力に寄ったお客さんで大盛況でした。まだ火曜日ということで,真っすぐに家に戻ったのですが,とてもリラックスした気分にさせる演奏会でした。宮田さんのチェロは,また是非実演で聞いてみたいと思います。

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